JP2017135985A - B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病新規キメラ遺伝子 - Google Patents
B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病新規キメラ遺伝子 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017135985A JP2017135985A JP2014123261A JP2014123261A JP2017135985A JP 2017135985 A JP2017135985 A JP 2017135985A JP 2014123261 A JP2014123261 A JP 2014123261A JP 2014123261 A JP2014123261 A JP 2014123261A JP 2017135985 A JP2017135985 A JP 2017135985A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fusion
- polynucleotide
- znf384
- polypeptide
- gene
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/46—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
- C07K14/47—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/68—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
Landscapes
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Immunology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Zoology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Hematology (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Urology & Nephrology (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Biophysics (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Food Science & Technology (AREA)
- Pathology (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Plant Pathology (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
Abstract
【課題】白血病などのがんにおいて予後を判定する指標となりうる変異を同定すること、当該変異を検出する手段を提供することなど。
【解決手段】遺伝子融合の検出方法であって、被験者由来の単離された試料におけるEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドを検出する工程を含む、方法。
【選択図】なし
【解決手段】遺伝子融合の検出方法であって、被験者由来の単離された試料におけるEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドを検出する工程を含む、方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、がんの責任変異である遺伝子融合の検出方法、当該遺伝子融合の存在に基づきがんの予後を判定する方法などに関する。
がんは日本における死因の第一位を占める疾病である。がん細胞は、遺伝的変化により悪性化することが知られている。がんのタイプに特徴的な遺伝的変化を特定することは、発がん機構の解明のみならず、がんの診断および予後予測、がんの治療法の開発および選択などにも貢献することが期待されている。
キメラ遺伝子(本明細書中、融合遺伝子とも称する)は、本来は全く別個の分子として機能しているタンパク質をコードする2つの遺伝子が染色体転座等の異常にともなって融合することにより形成され、その結果として異常な機能を有する融合タンパク質を産生する。キメラ遺伝子は、白血病やその他のがんの発生の原因となることが知られており、診断における指標および創薬の標的として利用されている。特に近年、がん化に関与するシグナル伝達経路の構成因子(例えば、キナーゼ)に関連するキメラ遺伝子を有するがんに対して、分子標的療法の成功例が増加している。例えば、ALKタンパク質を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、クリゾチニブ)がEML4-ALK融合遺伝子を有する肺がん患者の治療に有効であること、BCR-ABL融合遺伝子によってコードされるタンパク質を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ)が当該融合遺伝子を有する白血病患者の治療に有効であることなどが示されている。
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、リンパ球が幼若な段階で悪性化して、異常に増加するがんの一種である。ALLは、小児から成人までのどの年齢層にも発生するが、小児においては最も一般的ながんとして知られている。ALLについても遺伝的変化として多数のキメラ遺伝子が報告されている。例えば、小児ALLの約8割を占めるB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALLまたはBCP-ALLともいう)では、その約半数に既知のキメラ遺伝子を認める。最も頻度が高いのはETV6-RUNX1で約1/4の症例に検出される。この他、MLL-AF4を始めとするMLL遺伝子を含んだキメラ遺伝子、TCF3-PBX1、BCR-ABL1がそれぞれ5%程度、TCF3-HLFが1%未満に検出される。いずれも、白血病発症に関与すると推測されるが、機能的な作用が明らかにされているBCR-ABL1を除いては、その役割については未解明である。しかし、これらのキメラ遺伝子は、治療反応性と良く相関し、ETV6-RUNX1陽性症例は予後良好であるが、それ以外は予後不良であることから、現在は初期診断に必須の項目となっており、その検査結果は治療強度の決定に用いられている。また、上記以外にも様々なキメラ遺伝子が非常に低い頻度で検出され、非特許文献1には、IKZF1変異を有しBCR-ABL1陰性であり予後不良であるALL(Ph-like ALL)における遺伝的変化を特定するために、Ph-like ALLとして特定されたBCP-ALLの症例についてRNAシーケンシングおよび全ゲノムシーケンシングを行い、NUP214-ABL1、EBF1-PDGFRB、BCR-JAK2、STRN3-JAK2、PAX5-JAK2、ETV6-ABL1、RANBP2-ABL1、およびRCSD1-ABL1のインフレーム融合を特定したことが記載されている。またEBF1-PDGFRB、BCR-JAK2、およびNUP214-ABL1が、チロシンキナーゼ阻害剤による治療における標的となる可能性があることも示されている。BCP-ALLでは、上記キメラ遺伝子に加えて、約1/4の症例に染色体の数的異常が明らかにされている。しかし、残りの約1/4の症例では、発症の原因となり得る異常は明らかにされていない。
EP300/E1A binding protein p300は、転写因子と結合し、転写コアクチベーターとして多くの遺伝子の転写活性を調節しており、細胞増殖、細胞分裂、細胞の成熟、分化などに関与すると考えられている。またEP300は、B細胞分化に関連する因子の一つであると考えられている。EP300と他の遺伝子とのキメラ遺伝子としては、急性骨髄性白血病に関連して、染色体転座t(11;22)(q23;q13)によって生じるMLL-EP300(非特許文献2)、t(8;22)(p11;q13)によって生じるMYST3(MOZ)-EP300(非特許文献3)などがこれまでに報告されている。
ZNF384は、C2H2-型のジンクフィンガータンパク質であり、転写調節因子として機能し、MMP1、MMP3、MMP7、COL1A1等の細胞外マトリックスをコードする遺伝子のプロモーター活性を調節していると考えられている。ZNF384と他の遺伝子とのキメラ遺伝子としては、t(12;17)(p13;q11)によって生じるTAF15-ZNF384がALL患者において見つかっており、またALLから急性骨髄性白血病(AML)へのスイッチ、マウス線維芽細胞のトランスフォームなどに関与することが報告されている(非特許文献4〜8)。また急性白血病に関連して、t(12;22)(p13;q12)によって生じるEWSR1-ZNF384(非特許文献4および5)、t(12;19)(p13.3; p13.3)によって生じるE2A-ZNF384(非特許文献9)などが報告されている。
Roberts KG et al., Cancer Cell, 2012, 22(2), 153-66.
Ida K et al., Blood, 1997, 90(12), 4699-704.
Kitabayashi I et al., Leukemia, 2001, 15(1), 89-94.
Martini A et al., Cancer Res, 2002, 62(19), 5408-12.
Janssen H and Marynen P, Exp Cell Res, 2006, 312(7), 1194-204.
Grammatico S et al., Leuk Lymphoma, 2013, 54(8), 1802-5.
Thorsen J et al., Cancer Genet, 2011, 204(8), 458-61.
Nyquist KB et al., Cancer Genet, 2011, 204(3), 147-52.
Zhong CH et al., Leukemia, 2008, 22(4), 723-9.
ALLを含む白血病などのがんにおける変異の同定はいまだ十分になされているとはいえず、がんの予後を判定する指標となりうる変異などのさらなる同定が望まれているのが現状である。
したがって本発明は、ALLを含む白血病などのがんにおいて予後を判定する指標となりうる変異を同定すること、当該変異を検出する手段を提供することなどを目的とする。
したがって本発明は、ALLを含む白血病などのがんにおいて予後を判定する指標となりうる変異を同定すること、当該変異を検出する手段を提供することなどを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)において発現している新規融合遺伝子としてEP300-ZNF384遺伝子を同定した。EP300-ZNF384遺伝子融合の出現頻度は、BCP-ALLの約1%と推定された。EP300遺伝子およびZNF384遺伝子のそれぞれについて、他の遺伝子との融合遺伝子が報告されていたものの、EP300-ZNF384融合遺伝子の存在についてはいずれの先行技術を考慮しても全く予想外であった。
またEP300-ZNF384遺伝子融合が検出されたALL患者は、観察期間5年以上にわたり初回寛解を維持しており、当該遺伝子融合は予後良好因子である可能性が高い。
本発明者らは、これら知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
またEP300-ZNF384遺伝子融合が検出されたALL患者は、観察期間5年以上にわたり初回寛解を維持しており、当該遺伝子融合は予後良好因子である可能性が高い。
本発明者らは、これら知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]遺伝子融合の検出方法であって、被験者由来の単離された試料において、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むEP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドを検出する工程を含む、方法。
[2]融合ポリペプチドが、下記(i)〜(iii)のいずれかである、[1]に記載の方法:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[3]融合ポリヌクレオチドが下記(i)〜(iii)のいずれかである、[1]または[2]に記載の方法:
(i)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(ii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
(iii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
[4]遺伝子融合が、がんの責任変異(ドライバー変異)である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]がんがB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病である、[4]に記載の方法。
[6]がんの予後を判定する方法であって、下記の工程を含む、方法:
(1)被験者由来の単離された試料において、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むEP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドを検出する工程;ならびに
(2)前記融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドが検出された場合に、前記被験者においてがんの予後が良好であると判定する工程。
[7]遺伝子融合の検出用キットであって、下記(A)〜(C)のいずれかのポリヌクレオチドまたは抗体あるいはそれらの組合せを含む、キット:
(A)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチド;
(B)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド;あるいは
(C)EP300-ZNF384融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体。
[8]遺伝子融合が、がんの責任変異(ドライバー変異)である、[7]に記載のキット。
[9]EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含む、単離されたEP300-ZNF384融合ポリペプチドまたはその断片。
[10]融合ポリペプチドが、下記(i)〜(iii)のいずれかである、[9]に記載の融合ポリペプチドまたはその断片:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[11][9]または[10]に記載の融合ポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチド。
[2]融合ポリペプチドが、下記(i)〜(iii)のいずれかである、[1]に記載の方法:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[3]融合ポリヌクレオチドが下記(i)〜(iii)のいずれかである、[1]または[2]に記載の方法:
(i)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(ii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
(iii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
[4]遺伝子融合が、がんの責任変異(ドライバー変異)である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]がんがB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病である、[4]に記載の方法。
[6]がんの予後を判定する方法であって、下記の工程を含む、方法:
(1)被験者由来の単離された試料において、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むEP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドを検出する工程;ならびに
(2)前記融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドが検出された場合に、前記被験者においてがんの予後が良好であると判定する工程。
[7]遺伝子融合の検出用キットであって、下記(A)〜(C)のいずれかのポリヌクレオチドまたは抗体あるいはそれらの組合せを含む、キット:
(A)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチド;
(B)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド;あるいは
(C)EP300-ZNF384融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体。
[8]遺伝子融合が、がんの責任変異(ドライバー変異)である、[7]に記載のキット。
[9]EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含む、単離されたEP300-ZNF384融合ポリペプチドまたはその断片。
[10]融合ポリペプチドが、下記(i)〜(iii)のいずれかである、[9]に記載の融合ポリペプチドまたはその断片:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[11][9]または[10]に記載の融合ポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチド。
本発明によれば、本願発明によりはじめて明らかとなった特定のがんの未知の責任変異を検出することが可能となり、当該責任変異の存在に基づきがんの予後を判定することが可能となる。
また成人も含めて急性リンパ芽球性白血病の場合には、遺伝子異常の有無と種類が治療反応性と密接に関係しており、その検出によって治療の層別化が行なわれている。本発明のEP300-ZNF384キメラ遺伝子を検出することによって患者が他の予後不良なキメラ遺伝子を有する可能性が否定されれば、治療リスクを上げる必要性はないという判断が可能になる。また例えば、非キナーゼ関連キメラ遺伝子である本発明のEP300-ZNF384キメラ遺伝子が検出された場合には、基本的にチロシンキナーゼ阻害剤の適応にはならないと判断することが可能になり、ALL患者に対してより適切な治療方針を決定することが可能となる。
さらに、BCP-ALLの中でEP300-ZNF384キメラ遺伝子の出現頻度は1%と、他のキメラ遺伝子のものと比較しても非常に高いことから、EP300-ZNF384キメラ遺伝子の検出は、初期診断のルーチンな検査項目などとして、その臨床的意義は極めて大きいものである。
また成人も含めて急性リンパ芽球性白血病の場合には、遺伝子異常の有無と種類が治療反応性と密接に関係しており、その検出によって治療の層別化が行なわれている。本発明のEP300-ZNF384キメラ遺伝子を検出することによって患者が他の予後不良なキメラ遺伝子を有する可能性が否定されれば、治療リスクを上げる必要性はないという判断が可能になる。また例えば、非キナーゼ関連キメラ遺伝子である本発明のEP300-ZNF384キメラ遺伝子が検出された場合には、基本的にチロシンキナーゼ阻害剤の適応にはならないと判断することが可能になり、ALL患者に対してより適切な治療方針を決定することが可能となる。
さらに、BCP-ALLの中でEP300-ZNF384キメラ遺伝子の出現頻度は1%と、他のキメラ遺伝子のものと比較しても非常に高いことから、EP300-ZNF384キメラ遺伝子の検出は、初期診断のルーチンな検査項目などとして、その臨床的意義は極めて大きいものである。
後述の実施例において示す通り、本発明者らは、がん組織において、がんの責任変異(ドライバー変異)としてEP300-ZNF384遺伝子融合を初めて見出した。本発明はかかる知見に基づき、当該遺伝子融合の検出方法、当該責任変異の存在に基づくがんの予後を判定する方法等を提供する。
本発明において「がんの責任変異」とは、ドライバー変異と互換的に使用される用語であるが、がん組織に存在する変異であって、細胞に対するがん化能を有する変異をいう。典型的には、ある変異が見出されたがん組織において、既知のがん遺伝子変異がいずれも存在しない場合(すなわち、当該変異が前記既知のがん遺伝子変異と相互排他的に存在する場合)、当該変異はがんの責任変異であるということができる。
<具体的ながんの責任変異>
以下、具体的な遺伝子融合について説明する。なお本明細書中、融合ポリヌクレオチドにおける「融合点」とは、5’側の遺伝子部分と3’側の遺伝子部分とが接続される境界を意味し、これは2つのヌクレオチド残基の間の境界である。また融合ポリペプチドにおける「融合点」とは、N末端側のポリペプチドとC末端側のポリペプチドとが接続される境界を意味し、これは2つのアミノ酸残基の間の境界であるか、または遺伝子融合が1つのコドン内で生じた場合には当該コドンによりコードされる1つのアミノ酸残基自体である。
以下、具体的な遺伝子融合について説明する。なお本明細書中、融合ポリヌクレオチドにおける「融合点」とは、5’側の遺伝子部分と3’側の遺伝子部分とが接続される境界を意味し、これは2つのヌクレオチド残基の間の境界である。また融合ポリペプチドにおける「融合点」とは、N末端側のポリペプチドとC末端側のポリペプチドとが接続される境界を意味し、これは2つのアミノ酸残基の間の境界であるか、または遺伝子融合が1つのコドン内で生じた場合には当該コドンによりコードされる1つのアミノ酸残基自体である。
EP300-ZNF384遺伝子融合は、EP300タンパク質とZNF384タンパク質の融合タンパク質(以下、EP300-ZNF384融合ポリペプチドとも称する)の発現を生じる変異であり、ヒト染色体においては22q13.2および12p13.31の領域内に切断点を有する転座(t(12;22))により生じる変異である。
EP300(E1A binding protein p300)タンパク質は、ヒトにおいては22q13.2に存在する遺伝子にコードされるタンパク質であり、典型的には配列番号4で表されるアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001429.3(20-Apr-2014))からなるタンパク質である。EP300タンパク質は、B細胞分化に関連する因子の一つであると考えられている。EP300タンパク質は、2つのTAZ型ジンクフィンガードメイン、CREB-binding site、ブロモドメイン、ZZ型ジンクフィンガードメイン、および核内受容体コアクチベータードメインを有することを特徴としている(図1)。N末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインは、例えば、ヒトであれば配列番号4で表されるアミノ酸配列の347〜416位のアミノ酸配列に該当する。
ZNF384タンパク質は、ヒトにおいては12p13.31に存在する遺伝子にコードされるタンパク質であり、典型的には配列番号6で表されるアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_597733.2(26-Feb-2014))からなるタンパク質である。ZNF384タンパク質は、TAZ型ジンクフィンガードメインを有することを特徴としている(図1)。TAZ型ジンクフィンガードメインは、例えば、ヒトであれば配列番号6で表されるアミノ酸配列の208〜394位のアミノ酸配列に該当する。
EP300-ZNF384融合ポリペプチドは、EP300タンパク質のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384タンパク質のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むポリペプチドである。EP300-ZNF384融合ポリペプチドには、EP300タンパク質のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部が含まれてもよいし、その一部が含まれてもよい。EP300-ZNF384融合ポリペプチドには、ZNF384タンパク質のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部が含まれてもよいし、その一部が含まれてもよい。
本発明において、EP300-ZNF384融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドとも称する)は、EP300タンパク質のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384タンパク質のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドは、mRNA、cDNAおよびゲノムDNAのいずれであってもよい。
本発明におけるEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドは、例えば、下記のポリペプチドをコードするEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドであり得る:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
配列番号2で表されるアミノ酸配列は、後述の実施例において示すように、ヒトがん組織由来のサンプル中に見出されたEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列である。
上記(ii)において、「1若しくは複数のアミノ酸」とは、通常、1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1〜数個(例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1若しくは2個、または1個)のアミノ酸を意味する。
上記(iii)において、「80%以上の配列同一性」とは、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、さらにより好ましくは97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を意味する。アミノ酸配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)に基づくBLASTXまたはBLASTPと呼ばれるプログラム(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)を利用して決定することができる。BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は当業者にはよく知られている(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
また本発明におけるEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドは、例えば、下記のいずれかのポリヌクレオチドであり得る:
(i)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(ii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
(iii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
(i)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(ii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
(iii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
配列番号1で表される塩基配列は、後述の実施例において示すように、ヒトがん組織由来のサンプル中に見出されたEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドの塩基配列である。
上記(ii)において、「ストリンジェントな条件下」とは、特に記載した場合を除き、中程度または高程度にストリンジェントな条件をいう。
中程度にストリンジェントな条件は、例えば、対象となるポリヌクレオチドの長さに基づき、当業者であれば容易に設計することができる。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、第6〜7章、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示されている。典型的には、中程度にストリンジェントな条件は、ニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5%SDS、1.0 mM EDTA(pH8.0)の前洗浄条件;約40〜50℃での、約50%ホルムアミド、2〜6×SSC(または、約42℃での、約50%ホルムアミド中のStark's solutionなどの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件;および約40℃〜60℃、0.5〜6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件を含む。中程度にストリンジェントな条件は、好ましくは、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件を含み、前述の洗浄条件および/または洗浄条件を含んでいてもよい。
高程度にストリンジェントな条件(高ストリンジェントな条件)もまた、例えば、対象となるポリヌクレオチドの長さに基づき、当業者であれば容易に設計することができる。高ストリンジェントな条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度が含まれる。典型的には、約65℃、0.2〜6×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、さらに好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション条件を含む。いずれの場合も、約65〜68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄条件を含むことが好ましい。
いずれの場合も、ハイブリダイゼーション、前洗浄および洗浄のための緩衝液として、SSC(1×SSCは、0.15 M NaClおよび15 mM クエン酸ナトリウムである。)の代わりにSSPE(1×SSPEは、0.15 M NaCl、10 mM NaH2PO4、および1.25 mM EDTA、pH7.4である。)を代用することができる。いずれの場合も、洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後、約15分間行うことができる。
上記(iii)において、「80%以上の配列同一性」とは、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、さらにより好ましくは97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を意味する。塩基配列の同一性は、前記アルゴリズムBLASTに基づくBLASTNと呼ばれるプログラム(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)を利用して決定することができる。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。
<遺伝子融合の検出方法>
本発明は、EP300-ZNF384遺伝子融合の検出方法(以下、本発明の検出方法とも称する)を提供する。当該遺伝子融合は、好ましくはがんの責任変異(ドライバー変異)を生じる。本発明の検出方法は、被験者由来の単離された試料におけるEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドを検出する工程を含む。
本発明は、EP300-ZNF384遺伝子融合の検出方法(以下、本発明の検出方法とも称する)を提供する。当該遺伝子融合は、好ましくはがんの責任変異(ドライバー変異)を生じる。本発明の検出方法は、被験者由来の単離された試料におけるEP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドを検出する工程を含む。
本発明の検出方法において、被験者は、哺乳動物であれば特に限定されない。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、シマリス、モルモット等のげっ歯類、ウサギ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク、イヌ、ネコ、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることができるが、ヒトが好ましい。
被験者は、がんに罹患している被験者のみならず、がんに罹患している疑いのある被験者、又は将来がんになるリスクを有する被験者であってもよい。本発明の検出方法を適用する対象となる「がん」としては、EP300-ZNF384遺伝子融合が検出され得るがんであれば特に限定されないが、好ましくは白血病であり、さらに好ましくは急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、特に好ましくはB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)である。
被験者由来の「単離された試料」は、生体試料(例えば、細胞、組織、臓器(例えば、小腸、脾臓、腎臓、肝臓、胃、肺、副腎、心臓、脳、膵臓、大動脈等)、体液(例えば、血液、リンパ液、骨髄液等)、消化液、喀痰、肺胞・気管支洗浄液、尿、便)のみならず、これらの生体試料から得られる核酸抽出物(ゲノムDNA抽出物、mRNA抽出物、mRNA抽出物から調製されたcDNA調製物やcRNA調製物等)やタンパク質抽出物も含む。ゲノムDNA、mRNA、cDNA又はタンパク質は、当業者であれば、前記試料の種類及び状態等を考慮し、それに適した公知の手法を選択して調製することが可能である。また、前記試料は、ホルマリン固定処理、アルコール固定処理、凍結処理又はパラフィン包埋処理が施してあるものでもよい。
また「単離された試料」は、前記がんが存在するか又は存在すると疑われる組織、臓器、または体液由来であることが好ましく、より好ましくは前記がんが存在するかまたは存在すると疑われる血液または骨髄液由来である。そのような「単離された試料」としては、例えば、白血病(好ましくはALL、より好ましくはBCP-ALL)患者または白血病に罹患している疑いのある被験者の血液または骨髄液由来の細胞、当該細胞から抽出した全RNAなどが挙げられる。
また「単離された試料」は、前記がんが存在するか又は存在すると疑われる組織、臓器、または体液由来であることが好ましく、より好ましくは前記がんが存在するかまたは存在すると疑われる血液または骨髄液由来である。そのような「単離された試料」としては、例えば、白血病(好ましくはALL、より好ましくはBCP-ALL)患者または白血病に罹患している疑いのある被験者の血液または骨髄液由来の細胞、当該細胞から抽出した全RNAなどが挙げられる。
本発明の検出方法において、融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドの検出は、自体公知の手法を用いて行なうことができる。
ゲノムDNAからの転写産物(mRNAまたはmRNAから調製したcDNA)を対象とする場合、例えば、RT-PCR法、シークエンシング、TaqManプローブ法、ノーザンブロッティング、ドットブロット法、cDNAマイクロアレイ解析等を利用してmRNA又はcDNAである融合ポリヌクレオチドを検出することができる。
またゲノムDNAを対象とする場合、例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)、ゲノムPCR法、シークエンシング、TaqManプローブ法、サザンブロッティング、ゲノムマイクロアレイ解析等を利用してゲノムDNAである融合ポリヌクレオチドを検出することができる。
またゲノムDNAを対象とする場合、例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)、ゲノムPCR法、シークエンシング、TaqManプローブ法、サザンブロッティング、ゲノムマイクロアレイ解析等を利用してゲノムDNAである融合ポリヌクレオチドを検出することができる。
これらの手法はそれぞれ単独で利用することができるが、組み合わせて利用してもよい。例えば、EP300-ZNF384遺伝子融合は、融合ポリペプチドを発現することによりがん化に寄与すると考えられることから、ゲノムDNAである融合ポリヌクレオチドを検出する場合(例えばin situハイブリダイゼーション等による)には、転写産物またはタンパク質が生成することをさらに確認すること(例えばRT-PCR、免疫染色法等による)も好ましい。
ハイブリダイゼーション技術(例えば、TaqManプローブ法、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、ドットブロット法、マイクロアレイ解析、in situハイブリダイゼーション(ISH)など)により融合ポリヌクレオチドを検出する場合には、前記融合ポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチドを使用することができる。ここで「融合ポリヌクレオチドを特異的に認識する」とは、ストリンジェントな条件で、当該融合ポリヌクレオチドの融合点から5’末端側及び3’末端側の部分が由来する野生型遺伝子を含めて当該融合ポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドから、当該融合ポリヌクレオチドを識別して認識することをいう。
本発明の検出方法においては、治療又は診断の過程で得られる生体試料(生検サンプル等)は、ホルマリン固定されていることが多いため、検出対象であるゲノムDNAがホルマリン固定下においても安定しており、検出感度が高いという観点から、in situハイブリダイゼーションを用いることが好適である。
in situハイブリダイゼーションにおいては、前記生体試料に、融合ポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチドとして少なくとも15塩基の鎖長を有する下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより、融合ポリペプチドをコードするゲノムDNA(融合ポリヌクレオチド)を検出することができる。
(a)5’側融合パートナー遺伝子(EP300遺伝子)の塩基配列にハイブリダイズするプローブ及び3’側融合パートナー遺伝子(ZNF384遺伝子)の塩基配列にハイブリダイズするプローブからなる群から選択される少なくとも一つのプローブであるポリヌクレオチド
(b)5’側融合パートナー遺伝子と3’側融合パートナー遺伝子との融合点を含む塩基配列にハイブリダイズするプローブであるポリヌクレオチド。
(a)5’側融合パートナー遺伝子(EP300遺伝子)の塩基配列にハイブリダイズするプローブ及び3’側融合パートナー遺伝子(ZNF384遺伝子)の塩基配列にハイブリダイズするプローブからなる群から選択される少なくとも一つのプローブであるポリヌクレオチド
(b)5’側融合パートナー遺伝子と3’側融合パートナー遺伝子との融合点を含む塩基配列にハイブリダイズするプローブであるポリヌクレオチド。
本発明にかかるEP300遺伝子は、ヒト由来のものであれば、典型的にはGenbankアクセッション番号 NC_000022.11で特定されるゲノムの配列のうち41092302から41180083番目のDNA配列からなる遺伝子である。
本発明にかかるZNF384遺伝子は、ヒト由来のものであれば、典型的にはGenbankアクセッション番号 NC_000012.12で特定されるゲノムの配列のうち6666477から6689572番目のDNA配列(相補鎖にコードされる)からなる遺伝子である。
しかしながら、遺伝子のDNA配列は、その変異等により、自然界において(すなわち、非人工的に)変化しうる。従って、このような天然の変異体も本発明の対象になりうる(以下、同様)。
本発明の(a)に記載のポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドの標的塩基配列である、5’側融合パートナー遺伝子(EP300遺伝子)の塩基配列および/または3’側融合パートナー遺伝子(ZNF384遺伝子)の塩基配列にハイブリダイズすることにより、前記生体試料における融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAの存在を検出できるものであればよいが、好ましくは、下記(a1)〜(a3)に記載のポリヌクレオチドである:
(a1) 5’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも5’側の上流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)と、3’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも3’側の下流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)との組み合わせ;
(a2) 5’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも5’側の上流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)と、5’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも3’側の下流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5’融合パートナー遺伝子プローブ2」とも称する)との組み合わせ;
(a3) 3’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも5’側の上流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3’融合パートナー遺伝子プローブ2」とも称する)と、3’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも3’側の下流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)との組み合わせ。
(a1) 5’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも5’側の上流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)と、3’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも3’側の下流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)との組み合わせ;
(a2) 5’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも5’側の上流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)と、5’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも3’側の下流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5’融合パートナー遺伝子プローブ2」とも称する)との組み合わせ;
(a3) 3’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも5’側の上流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3’融合パートナー遺伝子プローブ2」とも称する)と、3’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも3’側の下流領域の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3’融合パートナー遺伝子プローブ1」とも称する)との組み合わせ。
上記(a1)〜(a3)において、5’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも5’側の上流領域の塩基配列には、典型的にはEP300タンパク質のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部または一部のコード領域が含まれる。
上記(a1)〜(a3)において、3’側融合パートナー遺伝子の切断点よりも3’側の下流領域の塩基配列には、典型的にはZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部または一部のコード領域が含まれる。
前記(a1)に記載のポリヌクレオチドとしては、例えば、以下の(a1-1)のポリヌクレオチドの組み合わせが挙げられる:
(a1-1)EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部または一部のコード領域にハイブリダイズするポリヌクレオチドと、ZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部または一部のコード領域にハイブリダイズするポリヌクレオチドの組み合わせ。
(a1-1)EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部または一部のコード領域にハイブリダイズするポリヌクレオチドと、ZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインの全部または一部のコード領域にハイブリダイズするポリヌクレオチドの組み合わせ。
本発明において、in situハイブリダイゼーションに用いられる前記(a)に記載のポリヌクレオチドがハイブリダイズする領域(標的塩基配列)としては、標的塩基配列に対する特異性及び検出の感度の観点から、5’側融合パートナー遺伝子(EP300遺伝子)と3’側融合パートナー遺伝子(ZNF384遺伝子)との融合点から1000000塩基以内の領域であることが好ましい。
また、本発明において、in situハイブリダイゼーションに用いられる前記(b)に記載のポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドの標的塩基配列である、5’側融合パートナー遺伝子と3’側融合パートナー遺伝子との融合点を含む塩基配列にハイブリダイズすることにより、前記生体試料における融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAの存在を検出できるものであればよいが、典型例としては、配列番号1に記載の塩基配列中の融合点を含む塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドである。
また、本発明において、in situハイブリダイゼーションに用いられる前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドは、標的塩基配列に対する特異性及び検出の感度の観点から、前記標的塩基配列全体をカバーすることのできる、複数種のポリヌクレオチドからなる集団であることが好ましい。かかる場合、該集団を構成するポリヌクレオチドの長さは少なくとも15塩基であるが、100〜1000塩基であることが好ましい。
in situハイブリダイゼーションに用いられる前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドは、検出のため、蛍光色素等によって標識されていることが好ましい。かかる蛍光色素としては、例えば、DEAC、FITC、R6G、TexRed、Cy5が挙げられるが、これらに制限されない。また、蛍光色素以外に放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C、33P、32P等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン、3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)等)、によって、前記ポリヌクレオチドを標識してもよい。
in situハイブリダイゼーションにおいて、5’側融合パートナー遺伝子プローブ1と3’側融合パートナー遺伝子プローブ1とを用いる場合、5’側融合パートナー遺伝子プローブ1と5’側融合パートナー遺伝子プローブ2とを用いる場合、または3’融合パートナー遺伝子プローブ2と3’融合パートナー遺伝子プローブ1とを用いる場合、これらプローブは互いに異なる色素にて標識されていることが好ましい。そして、このように異なる色素にて標識したプローブの組み合わせを用いてin situハイブリダイゼーションを行った場合、5’側融合パートナー遺伝子プローブ1の標識が発するシグナル(例えば、蛍光)と3’側融合パートナー遺伝子プローブ1の標識が発するシグナルとの重なりが観察された際に融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出できたと判定することができる。一方、5’側融合パートナー遺伝子プローブ1の標識が発するシグナルと5’側融合パートナー遺伝子プローブ2の標識が発するシグナルとの分離、3’側融合パートナー遺伝子プローブ2の標識が発するシグナルと3’側融合パートナー遺伝子プローブ1の標識が発するシグナルとの分離が観察された際に融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出できたと判定することができる。
なお、ポリヌクレオチドの標識は、公知の手法により行うことができる。例えば、ニックトランスレーション法やランダムプライム法により、蛍光色素等によって標識された基質塩基をポリヌクレオチドに取り込ませ、該ポリヌクレオチドを標識することができる。
in situハイブリダイゼーションにおいて、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドと前記生体試料とをハイブリダイズさせる際の条件は、当該ポリヌクレオチドの長さ等の諸要因により変動し得るが、高ストリンジェンシーなハイブリダイズの条件として、例えば、0.2xSSC、65℃という条件が挙げられ、低ストリンジェンシーなハイブリダイズの条件として、例えば、2.0xSSC、50℃という条件が挙げられる。なお、当業者であれば、塩濃度(SSCの希釈率等)と温度の他、例えば、界面活性剤(NP−40等)の濃度、ホルムアミドの濃度、pH等の諸条件を適宜選択することで、前記条件と同様のストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件を実現することができる。
前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを用いて、融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出する方法としては、前記in situハイブリダイゼーション以外に、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング及びドットブロッティングが挙げられる。これら方法においては、前記生体試料から得られる核酸抽出物を転写したメンブレンに、前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより、前記融合遺伝子を検出する。前記(a)のポリヌクレオチドを用いた場合、5’側融合パートナー遺伝子の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドと3’側融合パートナー遺伝子の塩基配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドとが、メンブレンにおいて展開された同一のバンドを認識した場合に、融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出することができたと判定することができる。
前記(b)のポリヌクレオチドを用いて融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出する方法としては、さらに、ゲノムマイクロアレイ解析やDNAマイクロアレイ解析が挙げられる。これら方法においては、前記(b)のポリヌクレオチドを基板に固定したアレイを作製し、当該アレイ上のポリヌクレオチドに前記生体試料を接触させることにより、当該ゲノムDNAを検出する。基板としては、オリゴまたはポリヌクレオチドを固相化できるものであれば特に限定されず、例えばガラス板、ナイロンメンブレン、マイクロビーズ、シリコンチップ、キャピラリーなどを挙げることができる。
本発明の検出方法においては、PCRを利用して融合ポリヌクレオチドを検出することも好ましい。
PCRにおいては、前記生体試料から調製したDNA(ゲノムDNA、cDNA)やRNAを鋳型として融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチドを使用することができる。ここで「融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅できる」とは、当該融合ポリヌクレオチドの融合点から5’末端側及び3’末端側の部分が由来する野生型遺伝子を増幅することなく、当該融合ポリヌクレオチドのみを増幅できることをいい、当該融合ポリヌクレオチドの全部が増幅されてもよいし、融合点を含む当該融合ポリヌクレオチドの一部が増幅されてもよい。
PCR等で利用する「一対のプライマーであるポリヌクレオチド」は、標的となる融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅するセンスプライマー(フォワードプライマー)とアンチセンスプライマー(リバースプライマー)とからなり、センスプライマーは当該融合ポリヌクレオチドの融合点から5’末端側の塩基配列から設計し、アンチセンスプライマーは当該融合ポリヌクレオチドの融合点から3’末端側の塩基配列から設計する。またこれらのプライマーは、PCR法による検出の精度や感度の観点から、通常PCR産物が5 kb以下になるよう設計される。プライマーの設計は、公知の手法により適宜行なうことができ、例えば、Primer Express(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems)を利用することができる。これらのポリヌクレオチドの長さは、通常15塩基以上(好ましくは16、17、18、19または20塩基以上、より好ましくは21塩基以上)であり、100塩基以下(好ましくは90、80、70、60、50または40塩基以下、より好ましくは30塩基以下)である。
「一対のプライマーであるポリヌクレオチド」の好適な例としては、配列番号8で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと配列番号9で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとからなるプライマーセットが挙げられる。
PCRを利用して融合ポリヌクレオチドを検出する場合、PCR産物を対象としてシークエンシングを行い、融合点を含む塩基配列を決定することで、5’側の遺伝子部分と3’側の遺伝子部分とがインフレームで連結されていることおよび/または融合ポリヌクレオチド中に所定のドメインが含まれていることを確認することができる。シークエンシングは公知の手法により行うことができ、シークエンサー(例えば、ABI-PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems Inc.)などを)を取扱説明書に従って使用することにより、簡単に実施することができる。
またPCRを利用して融合ポリヌクレオチドを検出する場合、TaqManプローブ法により、5’側の遺伝子部分と3’側の遺伝子部分とがインフレームで連結されていることおよび/または融合ポリヌクレオチド中に所定のドメインが含まれていることを確認することができる。TaqManプローブ法において使用するプローブとしては、例えば前記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドが挙げられる。プローブは、レポーター色素(例えば、FAM、FITC、VIC等)とクエンチャー(例えば、TAMRA、Eclipse、DABCYL、MGBなど)で標識される。
上記プライマー及びプローブは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。またその一部又は全部において、PNA(polyamide nucleic acid、ペプチド核酸)、LNA(登録商標、locked nucleic acid、Bridged Nucleic Acid、架橋化核酸)、ENA(登録商標、2'-O,4'-C-Ethylene-bridged nucleic acids)、GNA(Glycerol nucleic acid、グリセロール核酸)、TNA(Threose nucleic acid、トレオース核酸)等の人工核酸によって、ヌクレオチドが置換されているものであってもよい。また上記プライマー及びプローブは、二本鎖であっても一本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖である。
また上記プライマーおよびプローブは、標的配列に特異的にハイブリダイズし得る限り、1又は複数のヌクレオチドのミスマッチを含んでいてもよく、標的配列の相補配列に対して通常80%以上、好ましくは90、91、92、93、94%以上、より好ましくは95、96、97、98、99%以上の同一性を有し、最も好ましくは100%の同一性を有する。
上記プライマー及びプローブは、例えば、本明細書に記載された塩基配列の情報に基づいて、DNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って合成することができる。
本発明の検出方法においては、全トランスクリプトームシークエンシング(RNAシークエンシング)またはゲノムシークエンシングにより融合ポリヌクレオチドを検出してもよい。これらの手法は、例えば、次世代シークエンサー(例えば、ゲノムアナライザーIIx(Illumina社)、ハイセックシークエンサー(HiSeq2000、イルミナ社)、ゲノムシークエンサー FLX System(Roche社)など)を使用して製造者の説明書に従って行なうことができる。RNAシークエンシングは、例えば、市販のキット(例えば、mRNA-Seqサンプル調製キット(Illumina社)など)を用いて製造者の説明書に従ってトータルRNAからcDNAライブラリーを調製し、これを次世代シークエンサーを使用するシークエンシングに供することにより行なうことができる。
本発明の検出方法において、融合ポリヌクレオチドの翻訳産物(すなわち、融合ポリペプチド)を対象とする場合、例えば、免疫染色法、ウェスタンブロッティング法、RIA法、ELISA法、フローサイトメトリー法、免疫沈降法、抗体アレイ解析などを利用して当該翻訳産物を検出することができる。これらの方法においては、融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体が用いられる。ここで「融合ポリペプチドを特異的に認識する」とは、当該融合ポリペプチドの融合点からN末端側及びC末端側の部分が由来する野生型タンパク質を含めて当該融合ポリペプチド以外のタンパク質を認識することなく、当該融合ポリペプチドのみを認識することをいう。本発明の検出方法において使用される「融合ポリペプチドを特異的に認識する」抗体は、1つの抗体であってもよいし、2つ以上の抗体の組み合わせであってもよい。
「融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体」としては、融合ポリペプチドの融合点を含むポリペプチドに特異的な抗体(以下、「融合点特異的抗体」とも称する)が挙げられる。ここで、「融合点特異的抗体」とは、前記融合点を含むポリペプチドに特異的に結合するが、N末端側及びC末端側の部分が由来する野生型タンパク質には結合しない抗体を意味する。
また「融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体」としては、融合ポリペプチドの融合点からN末端側の領域からなるポリペプチドに結合する抗体と融合ポリペプチドの融合点からC末端側の領域からなるポリペプチドに結合する抗体の組み合わせも挙げられる。これら2つの抗体を用いてサンドイッチELISA、免疫染色法、免疫沈降法、ウェスタンブロッティング法などを行なうことにより、融合ポリペプチドを検出することができる。
本発明において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換え技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、およびこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前記抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばFab、Fab'、F(ab')2、Fv、及び単鎖抗体などが挙げられる。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEなどのいずれのアイソタイプを有する抗体であってもよいが、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
「融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体」は、当業者であれば適宜公知の手法を選択して調製することができる。かかる公知の手法としては、前記融合ポリペプチドの融合点を含むポリペプチド、前記融合ポリペプチドの融合点からN末端側の領域からなるポリペプチド、または前記融合ポリペプチドの融合点からC末端側の領域からなるポリペプチドを免疫動物に接種し、該動物の免疫系を活性化させた後、該動物の血清(ポリクローナル抗体)を回収する方法や、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法等のモノクローナル抗体の作製方法が挙げられる。市販の抗体を利用してもよい。また標識物質を結合させた抗体を用いれば、当該標識を検出することにより、標的蛋白質を直接検出することが可能である。標識物質としては、抗体に結合することができ、検出可能なものであれば特に制限されることはなく、例えば、ペルオキシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)、アルカリホスファターゼ、ビオチン、及び放射性物質などが挙げられる。さらに、標識物質を結合させた抗体を用いて標的タンパク質を直接検出する方法以外に、標識物質を結合させた二次抗体、プロテインGまたはプロテインA等を用いて標的タンパク質を間接的に検出する方法を利用することもできる。
<遺伝子融合の検出用キット>
以上のように、EP300-ZNF384遺伝子融合により生じる融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドを、前記プライマー、プローブ、または抗体、あるいはそれらの組み合わせを用いて検出することができ、それにより当該遺伝子融合を検出することができる。したがって、本発明は、下記のいずれかのポリヌクレオチドまたは抗体あるいはそれらの組み合わせを含む、遺伝子融合(好ましくは、がんの責任変異(ドライバー変異)である遺伝子融合)の検出用キット(以下、本発明のキットとも称する)を提供する:
(A)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチド;
(B)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド;あるいは
(C)EP300-ZNF384融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体。
以上のように、EP300-ZNF384遺伝子融合により生じる融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドを、前記プライマー、プローブ、または抗体、あるいはそれらの組み合わせを用いて検出することができ、それにより当該遺伝子融合を検出することができる。したがって、本発明は、下記のいずれかのポリヌクレオチドまたは抗体あるいはそれらの組み合わせを含む、遺伝子融合(好ましくは、がんの責任変異(ドライバー変異)である遺伝子融合)の検出用キット(以下、本発明のキットとも称する)を提供する:
(A)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチド;
(B)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド;あるいは
(C)EP300-ZNF384融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体。
本発明のキットには、ポリヌクレオチドや抗体に加えて、ポリヌクレオチドや抗体に付加した標識の検出に必要な基質、陽性対照(例えば、EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチド、EP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはこれらを保持する細胞等)や陰性対照、PCR用試薬、in situハイブリダイゼーション等において用いられる対比染色用試薬(DAPI等)、抗体の検出に必要な分子(例えば、二次抗体、プロテインG、プロテインA)、試料の希釈や洗浄に用いる緩衝液等を適宜組み合わせて含めることができる。本発明のキットには、使用説明書を含めることもできる。本発明のキットを使用することにより、上記本発明の検出方法を容易に実施することが可能である。
本発明の検出方法及び検出用キットは、がんの責任変異として新たに見出した遺伝子融合の検出を可能にするものであり、後述のように当該遺伝子融合の陽性例を同定し、がんの予後の判定、個別化医療の適用などを行う上で極めて有用である。
<がんの予後を判定する方法>
EP300-ZNF384遺伝子融合が検出された3名のALL患者は、いずれも観察期間5年以上にわたり初回寛解を維持しており、当該遺伝子融合は予後良好因子である可能性が高い。したがって、本発明は、EP300-ZNF384遺伝子融合の存在に基づく、がんの予後を判定する方法を提供する(以下、本発明の判定方法とも称する)。
EP300-ZNF384遺伝子融合が検出された3名のALL患者は、いずれも観察期間5年以上にわたり初回寛解を維持しており、当該遺伝子融合は予後良好因子である可能性が高い。したがって、本発明は、EP300-ZNF384遺伝子融合の存在に基づく、がんの予後を判定する方法を提供する(以下、本発明の判定方法とも称する)。
本発明の判定方法は、下記の工程を含む:
(1)被験者由来の単離された試料において、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むEP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはそれによりコードされるポリペプチドを検出する工程ならびに
(2)前記融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドが検出された場合に、前記被験者においてがんの予後が良好であると判定する工程。
(1)被験者由来の単離された試料において、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むEP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはそれによりコードされるポリペプチドを検出する工程ならびに
(2)前記融合ポリヌクレオチドまたはそれによりコードされるポリペプチドが検出された場合に、前記被験者においてがんの予後が良好であると判定する工程。
本発明の判定方法において、「被験者」は、がんに罹患しているか、またはがんに罹患している疑いのある哺乳動物、好ましくはヒトである。本発明の同定方法を適用する対象となる「がん」としては、EP300-ZNF384遺伝子融合が検出され得るがんであれば特に限定されないが、好ましくは白血病であり、さらに好ましくは急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、特に好ましくはB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)である。
本発明の判定方法における工程(1)は、前記本発明の検出方法に含まれる工程と同様に実施することができる。
本発明の判定方法における工程(2)において、がんの予後が良好であるとは、初回寛解後、1年以上(好ましくは2年以上、3年以上、または4年以上、より好ましくは5年以上)にわたって当該がんが再発しないことをいう。
本発明の判定方法によれば、がんの患者またはがんに罹患している疑いのある被験者についてがんの予後を判定することが可能となり、がん患者に対して適切な治療を行うことが可能になる点で有用である。
<単離された融合ポリペプチドまたはその断片、およびそれらをコードするポリヌクレオチド>
本発明は、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含む、単離されたEP300-ZNF384融合ポリペプチド(以下、本発明の融合ポリペプチドとも称する)またはその断片を提供する。
本発明は、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含む、単離されたEP300-ZNF384融合ポリペプチド(以下、本発明の融合ポリペプチドとも称する)またはその断片を提供する。
本明細書中、「単離された」物質とは、ある物質が天然に存在する環境(例えば、生物体の細胞内)の他の物質(好ましくは、生物学的因子)(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。本明細書において「単離された」とは、好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上、よりさらに好ましくは95重量%以上、そして最も好ましくは96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、又は100%の純度を有することを意味する。「単離された」ポリヌクレオチドおよびポリペプチドには、標準的な精製方法によって精製されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれ、また化学的に合成したポリヌクレオチドおよびポリペプチドも含まれる。
「断片」とは、本発明の融合ポリペプチドの断片であって、融合点の上流および下流の配列を含む連続した部分配列からなるものをいう。当該部分配列に含まれる融合点の上流の配列は、融合点から1アミノ酸残基以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100アミノ酸残基以上)を含み、本発明の融合ポリペプチドのN末端までを含みうる。当該部分配列に含まれる融合点の下流の配列は、融合点から1アミノ酸残基以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100アミノ酸残基以上)を含み、本発明の融合ポリペプチドのC末端までを含みうる。断片の長さは、特に限定されないが、通常8アミノ酸残基以上(例えば、9、10、11、12、13、14、15、20、25、50、100アミノ酸残基以上)である。
また本発明の融合ポリペプチドは、例えば下記の単離された融合ポリペプチドであり得る。
(i)配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいは
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(i)配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいは
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。
本発明の融合ポリペプチドに関する各用語の意味については、上記<具体的ながんの責任変異>において記載した通りである。
さらに本発明は、上記本発明の融合ポリペプチドまたはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドとも称する)を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、mRNA、cDNAおよびゲノムDNAのいずれであってもよい。また二本鎖であっても一本鎖であってもよい。
EP300-ZNF384融合ポリペプチドをコードするcDNAの典型例は、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
EP300-ZNF384融合ポリペプチドをコードするcDNAの典型例は、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
本発明のポリヌクレオチドは、自体公知の方法により作製することができる。例えば、EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを保持するがん組織等から調製したcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーから公知のハイブリダイゼーション技術を利用して抽出することができる。また、前記がん組織等から調製したmRNA、cDNAまたはゲノムDNAを鋳型として公知の遺伝子増幅技術(PCR)を用いて増幅することにより調製することもできる。さらに、EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドの5’末端側及び3’末端側の部分が由来する野生型遺伝子のcDNAを材料とし、PCR、制限酵素処理、部位特異的変異誘発(site-directed mutagenesis)法(Kramer, W. & Fritz, HJ., Methods Enzymol, 1987, 154, 350.)等の公知の遺伝子増幅技術や組換え技術を利用して調製することもできる。
本発明の融合ポリペプチドまたはその断片も、自体公知の方法により作製することができる。例えば、上記のようにして調製したポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを無細胞タンパク質合成系(例えば、網状赤血球抽出液、小麦胚芽抽出液)に導入してインキュベーションすることにより、また該ベクターを適当な細胞(例えば、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞)に導入し、得られた形質転換体を培養することにより、本発明の融合ポリペプチドを調製することができる。
本発明の融合ポリペプチドまたはその断片は、本発明の検出方法等におけるマーカーとして使用することができ、また本発明の融合ポリペプチドに対する抗体の作製等にも使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<サンプル>
急性リンパ芽球性白血病(B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)などを含む)の患児より得た白血病細胞から、miRNeasy mini kit(QIAGEN社)を使用して全RNAを抽出した。なお、この研究は、本研究に係る組織の倫理審査員会の承認を得て進められた。
急性リンパ芽球性白血病(B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)などを含む)の患児より得た白血病細胞から、miRNeasy mini kit(QIAGEN社)を使用して全RNAを抽出した。なお、この研究は、本研究に係る組織の倫理審査員会の承認を得て進められた。
<RNAシークエンシング>
RNAシークエンシングのためのcDNAライブラリーは、製造者の標準プロトコールに従い、TruSeq RNA sample preparation kit v2 Set B(Illumina社)を使用して作製した。全RNA配列の解析は、次世代シーケンサー(HiSeq1000 Illumina)によりペアエンド法で行なった。
RNAシークエンシングのためのcDNAライブラリーは、製造者の標準プロトコールに従い、TruSeq RNA sample preparation kit v2 Set B(Illumina社)を使用して作製した。全RNA配列の解析は、次世代シーケンサー(HiSeq1000 Illumina)によりペアエンド法で行なった。
<融合転写産物の検出>
融合転写産物の検出は、がん細胞における融合遺伝子検出専用のアルゴリズムであるDeFuse (http://sourceforge.net/apps/mediawiki/defuse/index.php?title=DeFuse)を用いて行った。
融合転写産物の検出は、がん細胞における融合遺伝子検出専用のアルゴリズムであるDeFuse (http://sourceforge.net/apps/mediawiki/defuse/index.php?title=DeFuse)を用いて行った。
<RT-PCR、サンガーシークエンシング>
被験者の白血病細胞から抽出した全RNAから、ReverTra Ace(登録商標) qPCR RT Master Mix(東洋紡社)を使用してcDNAを合成した。得られたcDNAをrTaq DNA Polymerase(東洋紡社)を用いたPCR増幅に供した。目的とするサイズの遺伝子断片の増幅をアガロースゲル電気泳動で確認した。増幅された遺伝子断片をpGEM-T easyベクター(PROMEGA社)にTAクローニングした。このベクター上のマルチクローニングサイトの5’側のT7配列および3’側のSP6配列をプライマーとして用いて、BigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)とABI 3130xl Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)を用いて塩基配列を決定した。
被験者の白血病細胞から抽出した全RNAから、ReverTra Ace(登録商標) qPCR RT Master Mix(東洋紡社)を使用してcDNAを合成した。得られたcDNAをrTaq DNA Polymerase(東洋紡社)を用いたPCR増幅に供した。目的とするサイズの遺伝子断片の増幅をアガロースゲル電気泳動で確認した。増幅された遺伝子断片をpGEM-T easyベクター(PROMEGA社)にTAクローニングした。このベクター上のマルチクローニングサイトの5’側のT7配列および3’側のSP6配列をプライマーとして用いて、BigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)とABI 3130xl Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)を用いて塩基配列を決定した。
(実施例)
本実施例は、白血病細胞における新規融合転写産物の同定について記載する。
ALLにおける新規融合転写産物を同定するため、106例の小児白血病(急性リンパ芽球性白血病)の患児より得た白血病細胞のトランスクリプトーム解析を行った。
RNAシークエンシングで得られたペアエンドリードを解析した結果、1例において、配列番号7で表される塩基配列が検出された。この塩基配列についてBLASTサーチを行った結果、5'末端側の領域はEP300をコードする配列(染色体22q13.2)と一致し、3'末端側の領域はZNF384をコードする配列(染色体12p13.31)と一致した。一致した配列のアクセッション番号の例を以下に示す。
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X6, mRNA
Select seq ref|XM_006718968.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X5, mRNA
Select seq ref|XM_006718967.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X4, mRNA
Select seq ref|XM_006718966.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X3, mRNA
Select seq ref|XM_006718965.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X2, mRNA
Select seq ref|XM_006718964.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X1, mRNA Sequence ID: ref|XM_006718963.1|またはref|XM_005253671.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant 2, mRNA Sequence ID: ref|NM_133476.4|(配列番号5)
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant 6, mRNA Sequence ID: ref|NM_001039920.2|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant 7, mRNA Sequence ID: ref|NM_001135734.2|
Homo sapiens E1A binding protein p300 (EP300), transcript variant X1, mRNA Select seq ref|XM_006724165.1|
Homo sapiens E1A binding protein p300 (EP300), mRNA Sequence ID: ref|NM_001429.3|(配列番号3)
本実施例は、白血病細胞における新規融合転写産物の同定について記載する。
ALLにおける新規融合転写産物を同定するため、106例の小児白血病(急性リンパ芽球性白血病)の患児より得た白血病細胞のトランスクリプトーム解析を行った。
RNAシークエンシングで得られたペアエンドリードを解析した結果、1例において、配列番号7で表される塩基配列が検出された。この塩基配列についてBLASTサーチを行った結果、5'末端側の領域はEP300をコードする配列(染色体22q13.2)と一致し、3'末端側の領域はZNF384をコードする配列(染色体12p13.31)と一致した。一致した配列のアクセッション番号の例を以下に示す。
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X6, mRNA
Select seq ref|XM_006718968.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X5, mRNA
Select seq ref|XM_006718967.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X4, mRNA
Select seq ref|XM_006718966.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X3, mRNA
Select seq ref|XM_006718965.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X2, mRNA
Select seq ref|XM_006718964.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant X1, mRNA Sequence ID: ref|XM_006718963.1|またはref|XM_005253671.1|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant 2, mRNA Sequence ID: ref|NM_133476.4|(配列番号5)
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant 6, mRNA Sequence ID: ref|NM_001039920.2|
Homo sapiens zinc finger protein 384 (ZNF384), transcript variant 7, mRNA Sequence ID: ref|NM_001135734.2|
Homo sapiens E1A binding protein p300 (EP300), transcript variant X1, mRNA Select seq ref|XM_006724165.1|
Homo sapiens E1A binding protein p300 (EP300), mRNA Sequence ID: ref|NM_001429.3|(配列番号3)
配列番号7で表される塩基配列では、EP300のエクソン6からZNF384のエクソン3に融合していた。なお、ZNF384のコード領域はエクソン3の6塩基目から開始するため、検出された当該塩基配列には、野生型ZNF384遺伝子では本来は翻訳されない5塩基が含まれるが、当該塩基配列ではEP300をコードする配列は、当該5塩基を挟んで、ZNF384をコードする配列とインフレームで融合されていた。当該塩基配列にコードされるEP300-ZNF384融合タンパク質のドメイン構造を図1に示す。
以上の結果から、BCP-ALL患者の白血病細胞に、新規融合遺伝子であるEP300-ZNF384遺伝子が存在することが明らかとなった。
この最初に見出されたEP300-ZNF384陽性症例は、細胞マーカーに関して、CD10(common-ALL抗原)の発現が弱く、骨髄球系抗原陽性という特徴を有していた。そこで、344例の連続したALL登録症例の集団(293例のBCP-ALL以外に41例のT-ALL等も含む)のうち、32例のCD10(common-ALL抗原)陰性〜弱陽性のBCP-ALL(上記1例を含む)について、下記プライマーを用いてRT-PCRを行った。その結果、上記1例を含めて3例のCD10弱陽性のBCP-ALLで、EP300-ZNF384遺伝子の存在を示す441 bpの断片が増幅された(図2)。さらに、既知のキメラ遺伝子が検出された症例および解析用の試料が保存されていなかった症例を除く、全例について同様にRT-PCRにより確認を行なったが、最終的に344例の中で、上記3例以外には陽性症例は認められなかった。
フォワードプライマー:agctctctaggggtgggtca(配列番号8)
リバースプライマー:cagctggtctgacttggact(配列番号9)
フォワードプライマー:agctctctaggggtgggtca(配列番号8)
リバースプライマー:cagctggtctgacttggact(配列番号9)
上記PCR産物の塩基配列をサンガー法により解析した結果、融合部位の塩基配列は上記3例において完全に一致することが確認された(図3)。さらに、上記3例のうちの1例において、EP300-ZNF384融合遺伝子のコード領域の全配列を決定した(配列番号1)。
以上の結果から、EP300-ZNF384融合遺伝子は、BCP-ALLに特異的であると考えられ、またその出現頻度は、BCP-ALLの約1%(293例中3例)と推定された。なお、3例中2例で染色体G-バンド法では正常核型(残りの1例は核盤(metaphase plate)が得られず検査不能)であることから、EP300-ZNF384遺伝子融合はクリプティックトランスロケーションにより生じたと考えられる。
また、EP300-ZNF384遺伝子融合が検出された3例は、CD10弱陽性の症例であった。CD10陰性を特徴とする亜群としては、MLL関連のキメラ陽性群が良く知られている。EP300-ZNF384陽性群は、そのようなMLL関連のキメラ陽性群とは別の、MLL関連キメラ陰性かつCD10弱陽性の1亜群を形成すると考えられる。EP300-ZNF384遺伝子融合が検出された3例は、いずれも中間危険群に分類されたが、観察期間5年以上にわたり初回寛解を維持しており、当該遺伝子融合は予後良好因子である可能性が高い。したがって、EP300-ZNF384遺伝子を検出することにより、これまでに知られていなかったALLの予後良好亜群を特定できる可能性が示された。
本発明によれば、がんの責任変異として新たに見出したEP300-ZNF384遺伝子融合を検出すること、当該遺伝子融合の存在に基づきがんの予後を判定すること、さらには当該遺伝子融合陽性のがんの患者に適した治療(個別化医療)を行うことが可能となる。
配列番号1:EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチド
配列番号2:EP300-ZNF384融合ポリペプチド
配列番号3:EP300 cDNA
配列番号4:EP300ポリペプチド
配列番号5:ZNF384 cDNA
配列番号6:ZNF384ポリペプチド
配列番号7:EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチド部分配列
配列番号8:フォワードプライマー
配列番号9:リバースプライマー
配列番号2:EP300-ZNF384融合ポリペプチド
配列番号3:EP300 cDNA
配列番号4:EP300ポリペプチド
配列番号5:ZNF384 cDNA
配列番号6:ZNF384ポリペプチド
配列番号7:EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチド部分配列
配列番号8:フォワードプライマー
配列番号9:リバースプライマー
Claims (11)
- 遺伝子融合の検出方法であって、被験者由来の単離された試料において、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むEP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドを検出する工程を含む、方法。
- 融合ポリペプチドが、下記(i)〜(iii)のいずれかである、請求項1に記載の方法:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。 - 融合ポリヌクレオチドが下記(i)〜(iii)のいずれかである、請求項1または2に記載の方法:
(i)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(ii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
(iii)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド。 - 遺伝子融合が、がんの責任変異(ドライバー変異)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- がんがB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病である、請求項4に記載の方法。
- がんの予後を判定する方法であって、下記の工程を含む、方法:
(1)被験者由来の単離された試料において、EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含むEP300-ZNF384融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドを検出する工程;ならびに
(2)前記融合ポリペプチド、またはそれをコードする融合ポリヌクレオチドが検出された場合に、前記被験者においてがんの予後が良好であると判定する工程。 - 遺伝子融合の検出用キットであって、下記(A)〜(C)のいずれかのポリヌクレオチドまたは抗体あるいはそれらの組合せを含む、キット:
(A)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチド;
(B)EP300-ZNF384融合ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド;あるいは
(C)EP300-ZNF384融合ポリペプチドを特異的に認識する抗体。 - 遺伝子融合が、がんの責任変異(ドライバー変異)である、請求項7に記載のキット。
- EP300のN末端側のTAZ型ジンクフィンガードメインおよびZNF384のTAZ型ジンクフィンガードメインを含む、単離されたEP300-ZNF384融合ポリペプチドまたはその断片。
- 融合ポリペプチドが、下記(i)〜(iii)のいずれかである、請求項9に記載の融合ポリペプチドまたはその断片:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド。 - 請求項9または10に記載の融合ポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチド。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014123261A JP2017135985A (ja) | 2014-06-16 | 2014-06-16 | B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病新規キメラ遺伝子 |
PCT/JP2015/067243 WO2015194524A1 (ja) | 2014-06-16 | 2015-06-16 | B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病新規キメラ遺伝子 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014123261A JP2017135985A (ja) | 2014-06-16 | 2014-06-16 | B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病新規キメラ遺伝子 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017135985A true JP2017135985A (ja) | 2017-08-10 |
Family
ID=54935509
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014123261A Pending JP2017135985A (ja) | 2014-06-16 | 2014-06-16 | B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病新規キメラ遺伝子 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017135985A (ja) |
WO (1) | WO2015194524A1 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111808959A (zh) * | 2020-07-17 | 2020-10-23 | 杭州艾迪康医学检验中心有限公司 | 检测tcf3-hlf融合基因的引物和方法 |
CN112522403A (zh) * | 2020-12-09 | 2021-03-19 | 济南艾迪康医学检验中心有限公司 | 使用多重荧光pcr技术检测znf384相关融合基因的引物、探针及应用 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2307330A1 (en) * | 1997-10-21 | 1999-04-29 | The University Court Of The University Of Glasgow | Jmy, a co-activator for p300/cbp, nucleic acid encoding jmy and uses thereof |
-
2014
- 2014-06-16 JP JP2014123261A patent/JP2017135985A/ja active Pending
-
2015
- 2015-06-16 WO PCT/JP2015/067243 patent/WO2015194524A1/ja active Application Filing
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2015194524A1 (ja) | 2015-12-23 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US9216172B2 (en) | Method for determining effectiveness of cancer treatment by assessing the presence of a KIF5B-RET chimeric gene | |
JP6493681B2 (ja) | 肺がんで見出された新規融合遺伝子 | |
KR101828290B1 (ko) | 자궁내막암 마커 | |
EP2890815B1 (en) | Methods for diagnosis and treatment of cancer | |
US9109259B2 (en) | Detection method for novel ROS1 fusions | |
US20150191791A1 (en) | Fgfr2 fusion gene | |
WO2016084883A1 (ja) | 胆道がんにおける新規治療標的融合遺伝子 | |
WO2013141266A1 (ja) | 新規ret融合体の検出法 | |
WO2015093557A1 (ja) | 胃がんの責任因子としての新規融合遺伝子 | |
WO2010100113A1 (en) | Bank1 related snps and sle and/or ms susceptibility | |
WO2015194524A1 (ja) | B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病新規キメラ遺伝子 | |
JP7150018B2 (ja) | 新規なcip2aバリアント及びその使用 | |
JP2004187620A (ja) | 腎疾患の疾患マーカーおよびその利用 | |
KR20170124683A (ko) | 담도암 진단용 신규 바이오마커로서의 융합 유전자 및 융합 단백질 | |
CA2650379A1 (en) | Composition and methods for the detection of cripto-3 | |
KR101683961B1 (ko) | 방광암 재발 진단 마커 | |
CN110714081B (zh) | 定量检测oc-stamp基因表达水平的成套试剂及其应用 | |
WO2022244807A1 (ja) | Ltk融合遺伝子 | |
JP5354484B2 (ja) | がん検出方法 | |
US20050013817A1 (en) | Human SMAPK3-related gene variants associated with cancers | |
JP2006254830A (ja) | Sept11遺伝子発現抑制物質 |