JP2017132867A - ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、特定のアルキルケテンダイマー(B)と、特定のポリエーテル誘導体(C)と、グリセリン脂肪酸エステル(D)とを含有してなり、該アルキルケテンダイマー(B)の量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.1〜1.5重量部であり、該ポリエーテル誘導体(C)の量が0.1〜1.0重量部であり、該グリセリン脂肪酸エステル(D)の量が0.1〜0.8重量部である、ポリカーボネート樹脂組成物。【効果】ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の性質である透明性、衝撃強度等を大きく損なうことなく、優れた摺動性を備えたものであることから、電気、電子、IT等各種分野における軽量・薄肉化、意匠性、あるいは磨耗性等が要求される製品に対して好適に使用することが可能であり工業的利用価値が極めて高い。【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の性質である透明性、衝撃強度等を大きく損なうことなく、優れた摺動性を備えたポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の性能に優れ、このことから電気、電子、IT等の分野の数多くの製品に広く使用されている。また、当該分野においては、摺動性を必要とする用途も数多くあり、これらの特性をバランス良く具備した材料が市場において要求されている。
ポリカーボネート樹脂に摺動性を付与する手法としてポリカーボネート系樹脂に粘度が1000〜20000cpのシリコーンオイルを配合する方法(特許文献1)が提案されている。
しかしながら、シリコーンオイルを配合する方法においては、シリコーンオイルの滲みだしに起因する成形品の外観不良が発生したり、さらには長期的な摺動性の維持という面でも必ずしも十分ではないという問題があり、改良が求められていた。
また、摺動性を付与する手法としてポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合した樹脂組成物が提案(特許文献2)されている。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合する事で摺動性は改良されるものの、ポリカーボネート樹脂の長所である透明性を大きく低下させると共に、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が損なわれるという問題があり、さらなる改良が求められていた。
特開2000−143965号公報 特開平1−259059号公報
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する透明性、衝撃性等を保持したまま、摺動性を著しく改善したポリカーボネート組成物およびそれからなる成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に特定のアルキルケテンダイマー、特定のポリエーテル誘導体、及びグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ特定量含有させることにより、驚くべきことに透明性と衝撃強度を維持しながら摺動性にも優れたポリカーボネート樹脂脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、下記一般式(1)で表されるアルキルケテンダイマー(B)と、下記一般式(2)で表されるポリエーテル誘導体(C)と、グリセリン脂肪酸エステル(D)とを含有してなり、該アルキルケテンダイマー(B)の量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.1〜1.5重量部であり、該ポリエーテル誘導体(C)の量が0.1〜1.0重量部であり、該グリセリン脂肪酸エステル(D)の量が0.1〜0.8重量部であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(1):
Figure 2017132867
(一般式(1)において、Rは、同一でも異なっても良いが、炭素数14〜16のアルキル基を示す。)
一般式(2):
O−(X−O)m(Y−O)n−R
(一般式(2)において、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の性質である透明性、衝撃強度等を大きく損なうことなく、優れた摺動性を備えたものであることから、電気、電子、IT等各種分野における軽量・薄肉化、意匠性、あるいは磨耗性等が要求される製品に対して好適に使用することが可能であり工業的利用価値が極めて高い。
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであってこれらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、特定のアルキルケテンダイマー(B)と、特定のポリエーテル誘導体(C)と、グリセリン脂肪酸エステル(D)を含有するものである。なお、本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じてその他の成分を配合してもよい。
本発明にて使用される芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは16000〜30000、さらに好ましくは18000〜24000の範囲である。また、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
本発明にて使用される特定のアルキルケテンダイマー(B)は、下記一般式(1)にて示されるアルキルケテンダイマーである。
一般式(1):
Figure 2017132867
一般式(1)において、Rは、同一でも異なっても良いが、炭素数14〜16のアルキル基である化合物が使用できる。
本発明にて使用される特定のアルキルケテンダイマー(B)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.1〜1.5重量部である。0.1重量部未満では摺動性に劣り、1.5重量部を越えると熱安定性が悪くなり黄色身の着色が顕著となるために好ましくない。好ましい配合量は、0.1〜0.8重量部、更に好ましくは0.2〜0.6重量部である。
本発明にて使用される特定のポリエーテル誘導体(C)は、下記一般式(2)で表される。
一般式(2):
O−(X−O)m(Y−O)n−R
(一般式(2)において、RおよびR1’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
また、このようなポリエーテル誘導体の中でも、とりわけ下記一般式(3)で表されるポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコールが好適であり、さらに重量平均分子量1000〜4000のポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコールが好適である。
一般式(3):
HO−(CHCHCHCHO)m(CHCH(CH)O)n−H
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
上記ポリエーテル誘導体としては、ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコールの他にも、ポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコール、テトラメチレングリコールユニットと2-メチルテトラメチレングリコールユニットからなる変性テトラメチレングリコール誘導体(例えば、HO−(CHCHCHCHO)(CHCHCH(CH)CHO)−H等)等が好適である。
商業的に入手可能なポリエーテル誘導体として、ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、例えば、日油(株)製の、ポリセリンDCB−2000(重量平均分子量2000)(ランダムタイプ)、ポリセリンDCB−1000(重量平均分子量1000)(ランダムタイプ)等(「ポリセリン」は登録商標)、ポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコールとしては、日油(株)製の、ポリセリンDCD−2000(重量平均分子量2000)、変性テトラメチレングリコール誘導体としては、保土谷化学工業(株)製のPTG−L1000、PTG−L2000、又はPTG−L3000等が挙げられる。その中でも、特に、ポリセリンDCB−2000、ポリセリンDCB−1000等が好適に使用され得る。
本発明にて使用されるポリエーテル誘導体として好適なポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコールの重量平均分子量は、上記したとおり、1000〜4000、さらには2000〜3000であることが好ましい。
本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜1.0重量部であり、さらに0.5〜1.0重量部であることが好ましい。ポリエーテル誘導体の量が0.1重量部未満の場合は、摺動性の向上効果が不充分である。逆にポリエーテル誘導体の量が1.0重量部を超える場合は、衝撃強度が低下してしまう。
本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物には、特定のアルキルケテンダイマー(B)と特定のポリエーテル誘導体(C)と、グリセリン脂肪酸エステル(D)とが配合されている。これら3成分の併用が透明性、衝撃強度、摺動性をバランスよく向上させるのに有益である。
本発明にて使用されるグリセリン脂肪酸エステル(D)としては、通常の脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物を用いることができる。
前記脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。なお、該脂肪族カルボン酸には、脂環式カルボン酸も含まれる。これらの中でも、炭素数6〜36の、モノカルボン酸及びジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。
前記脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
前記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられ、これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素数30以下の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の、脂肪族飽和一価アルコール及び脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、脂肪族アルコールには、脂環式アルコールも含まれる。
前記アルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステル(D)の具体例としては、例えば、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート等のステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールステアレート、グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレートが好適であり、例えば、理研ビタミン(株)製のリケマールS−100A、理研ビタミン(株)製のリケマール HC-100(グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレート)、日油(株)製のユニスターH476DP(ペンタエリスリトールジステアレート)、コグニス社製ロキシオールVPG861(ペンタエリスリトールテトラステアレート)等が商業的に入手可能である。
本発明にて使用されるグリセリン脂肪酸エステル(D)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.1〜0.8重量部である。0.1重量部未満では衝撃強度に劣り、0.8重量部を越えると、光線透過率や衝撃特性などの物性が低下するため好ましくない。好ましくは0.2〜0.7重量部である。
また、グリセリン脂肪酸エステル(D)は、2種類以上を混合して用いると有効であり、特に、ペンタエリスリトールテトラステアレートとグリセリンモノ12−ヒドロキシステアレートを併用することでより好ましい透明性と摺動性が得られるとともに、流動性が改良され衝撃強度も向上する。
グリセリン脂肪酸エステル(D)として、ペンタエリスリトールテトラステアレートおよびグリセリンモノ12−ヒドロキシステアレートを併用する場合の好ましい重量比は、4/3〜5/2である。
また、本発明のポリカーボネート組成物から射出成形された厚み3mmの成形片のJIS K7361に準拠した光線透過率は、80%以上であることが好ましく、当該光線透過率が85%であるとより好ましい。光線透過率が80%を下回ると、当該ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品が、表示装置を遮蔽し視認性を阻害し悪影響を及ぼす虞がある。
本発明の各種配合成分(A)、(B)、(C)および(D)の配合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で溶融混練することができる。また、これら配合成分の配合順序や一括混合、分割混合を採用することについても特に制限はない。
また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)や強化材(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ等)、他の樹脂を配合することができる。
本発明の成形方法については、主として射出成形方法が用いられる。数個若しくは十数個等複数の成形品が同時に成形できるような金型と100〜200Tクラスの射出成形機が用いられる。射出成形温度は、成形加工性の面から260〜290℃が望ましい。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
原料として以下を使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(商品名 カリバー200−13、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はトリンゼオ ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:21000、(以下、「PC」と略記))
2.アルキルケテンダイマー(B):
Figure 2017132867
上式においてRが炭素数14〜16のアルキル基であるもの
(商品名 AKD1840、平原永恒化工有限公司製 以下、「AKD」と略記)
3.ポリエーテル誘導体(C):(テトラメチレングリコール誘導体)
ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダムタイプ)
(商品名、ポリセリンDCB−2000日油(株)製、重量平均分子量:2000、以下「化合物C」と略記)
4.グリセリン脂肪酸エステル(D):
4−1.ペンタエリスリトールテトラステアレート
(商品名 オキシオールVPG861 コグニス社製(以下、「PETS」と略記)
4−2.グリセリンモノ12−ヒドロキシス
(商品名 リケマールHC−1 理研ビタミン社製(以下、「GMS」と略記)
(実施態様)
(実施例1〜6、比較例1〜8)
前記各原料を表1および2に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所製KTX37)を用いて、溶融温度260℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
(摺動性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ115℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度280℃、射出圧力1600kg/cmにて試験片(63x63x3mm)を作成した。
得られた試験片をJIS K−7125に準じ、400g荷重をかけ相手材がポリカーボネート樹脂に対する動摩擦係数を測定し、0.3以下を良好(○)とし、それを満足出来ない場合には不良(×)とした。
当該相手材の作成条件は、次のとおり:
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−13 粘度平均分子量:21000)を用いた。これを125℃で4時間乾燥した後、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度280℃、射出圧力1600kg/cmにて相手材(150x90x3mm)を作成した。
(透明性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物の試験片を用いてJIS K7361に準じ、試験片厚み3mmの光線透過率を測定した。光線透過率が80%以上を良好(○)とし、それを満足出来ない場合には不良(×)とした。
(ノッチ付きシャルピー衝撃強度の評価)(衝撃強度)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ105℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度280℃、射出圧力1600kg/cmにてISO試験法に準じた試験片を作成し、得られた試験片を用いてISO179−1、ISO75−2に準じノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。ノッチ付きシャルピー衝撃強度が30KJ/m以上を良好(○)とし、それを満足出来ない場合には不良(×)とした。
(イエローネスインデックス(YI)の評価)
上記得られた試験片を用いてASTM D−1925に準拠して、試験片厚み2mmのイエローネスインデックス(YI)を測定した。3以下を良好(○)とし、それを満足出来ない場合には不良(×)とした。
Figure 2017132867
Figure 2017132867
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足する場合(実施例1〜6)にあっては、透明性、衝撃強度及び摺動性のそれぞれに亘って良好な結果を示した。
一方、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合(比較例1〜8)においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は化合物C(ポリエーテル誘導体)の量が本発明の定める範囲より少ない場合で、摺動性が劣っていた。
比較例2は化合物C(ポリエーテル誘導体)の量が本発明の定める範囲より多い場合で、衝撃強度が劣っていた。
比較例3はAKD(アルキルケテンダイマー)の量が本発明の定める範囲よりも少ない場合で、摺動性に劣っていた。
比較例4はAKD(アルキルケテンダイマー)の量が本発明の定める範囲より多い場合で黄色身が強くなりYIが劣っていた。また衝撃強度と透過率も劣っていた。
比較例5はグリセリン脂肪酸エステルの量(PETS(ペンタエリスリトールテトラステアレート)の量とGMS(グリセリンモノ12−ヒドロキシス)の量の和)が本発明の定める範囲より少ない場合で、摺動性に劣っていた。
比較例6はグリセリン脂肪酸エステルの量(PETS(ペンタエリスリトールテトラステアレート)の量とGMS(グリセリンモノ12−ヒドロキシス)の量の和)が、本発明の定める範囲より多い場合で、透過率と衝撃強度が劣っていた。
比較例7はグリセリン脂肪酸エステルを含まない場合で、摺動性に劣っていた。
比較例8はグリセリン脂肪酸エステルの量(PETS(ペンタエリスリトールテトラステアレート)が、本発明の定める範囲より多い場合で透過率と衝撃強度が劣っていた。
以上のように、本発明における技術の例示として実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
従って、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の性質である透明性、衝撃強度等を大きく損なうことなく、優れた摺動性を備えたものであることから、電気、電子、IT等各種分野における軽量・薄肉化、意匠性、あるいは磨耗性等が要求される製品に対して好適に使用することが可能であり工業的利用価値が極めて高い。

Claims (6)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、下記一般式(1)で表されるアルキルケテンダイマー(B)と、下記一般式(2)で表されるポリエーテル誘導体(C)と、グリセリン脂肪酸エステル(D)とを含有してなり、該アルキルケテンダイマー(B)の量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.1〜1.5重量部であり、該ポリエーテル誘導体(C)の量が0.1〜1.0重量部であり、該グリセリン脂肪酸エステル(D)の量が0.1〜0.8重量部であることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
    一般式(1):
    Figure 2017132867
    (一般式(1)において、Rは、同一でも異なっても良いが、炭素数14〜16のアルキル基を示す。)
    一般式(2):
    O−(X−O)m(Y−O)n−R
    (式中、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
  2. 前記ポリエーテル誘導体(C)が、下記一般式(3)で表されるポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコールである、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    一般式(3):
    HO−(CHCHCHCHO)m(CHCH(CH)O)n−H
    (式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
  3. 前記ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコールの重量平均分子量が1000〜4000である、請求項2記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記グリセリン脂肪酸エステル(D)が、ペンタエリスリトールテトラステアレートおよび/またはグリセリンモノ12−ヒドロキシステアレートである、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記樹脂組成物から射出成形された厚み3mmの成形片のJIS K7361に準拠した光線透過率が80%以上である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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