JP2017131894A - 構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 紫外光が十分でない環境下においても光触媒機能を維持させる。
【解決手段】 一実施形態に係る構造体は、基材上に形成された非晶質炭素膜と、この非晶質炭素膜上に形成された二酸化チタン膜とを備え、二酸化チタン膜の光触媒作用を用いた様々な用途に適用され得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、構造体に関し、詳しくは、光触媒膜を備える構造体に関する。
従来より、二酸化チタンなどの光触媒は強い抗菌性や有機物分解能を示し、強い親水性を発現することで知られており、汚れの付かない窓ガラス、グラビア印刷用ドクターブレードや印刷用スキージ、抗菌陶磁器などの皮膜として活用されている。二酸化チタンなどの光触媒は、そのバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を受けると価電子帯の電子が伝導帯に励起され価電子帯には電子が抜けた正孔が残る。生成された励起電子と正孔は光触媒の表面を拡散することになる。光触媒表面に拡散した励起電子が、光触媒面に吸着した他の物質に移行するとその物質は還元され、正孔がその物質に移行するとその物質は酸化される化学反応を引き起こすことになる。
二酸化チタン膜などの光触媒を樹脂などの有機物を基材として形成する場合には、光触媒の有機物分解能によって基材自体が分解、劣化してしまう恐れがある。そこで、光触媒膜と基材との間に中間保護膜を形成することが考えられ(例えば、特許文献1参照)、中間保護膜としては、例えば、非晶質炭素膜を用いることが考えられる。非晶質炭素膜は、高い硬度と耐摩耗性、摺動性、ガスバリア性などの特徴を有している。
特開2010−260551号公報
しかしながら、中間保護膜として非晶質炭素膜を用いる場合、非晶質炭素膜は耐酸化性に劣るため二酸化チタン膜の酸化還元作用によって分解、劣化してしまう恐れがある。また、二酸化チタン膜などの光触媒膜をゾル−ゲル法などを用いて形成すると、光触媒物質の形成温度が400℃以上に達し、非晶質炭素膜が熱により分解され、耐摩耗性などの機能が低下してしまう恐れがある。光触媒の有機物分解能によって基材や中間保護膜が分解、劣化するのを防止しつつ、簡便性や量産性に優れたゾル−ゲル法などを用いて光触媒膜を形成できるようにするのが望ましい。
また、こうした光触媒作用は、主に紫外光領域の光によって発現されるため、暗所や屋内での用途や、屋外であっても曇天や雨天の際には十分に発現され難い。例えば、紫外線を意図的にカットした照明を使用するクリーンルーム内で使用される印刷用スキージの表面に酸化チタン膜などの光触媒膜を形成する場合、紫外線不足によって強い親水性を十分に発現することができず、印刷ペーストのローリング不足に起因するチクソ性変動を招いてしまう。また、例えば、ステンレスメッシュ製のストレーナ等の表面に酸化チタン膜などの光触媒膜を抗菌のために形成しても、光の届きにくい配水管内等で使用する場合には、紫外線不足によってその抗菌性を十分に発現することができない。紫外光が十分でない環境下であっても、光触媒作用を発現できるようにするのが望ましい。
なお、非晶質炭素膜は、近年は太陽光発電素子としての活用も試みられているように光起電力を有する。また、光触媒で生じた励起電子を例えば白金(Pt)のように電子貯蔵性を有する金属にて蓄え、正孔との再結合なく利用すれば、光化学ダイオードなどの電子デバイスを形成することもできる。こうした光触媒における起電力の活用も検討されている。
本発明は、光触媒膜を備える構造体において、光触媒作用によって基材や中間保護膜が分解、劣化するのを防止することを目的の一つとする。また、本発明は、紫外光が十分でない環境下においても光触媒機能を維持させることを目的の一つとする。本発明の他の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
本発明の一実施形態に係る構造体は、非晶質炭素膜と、前記非晶質炭素膜に少なくとも一部が接する光触媒膜と、前記非晶質炭素膜または前記光触媒膜の少なくとも一方に少なくとも一部が接する導電体と、を備える。非晶質炭素膜は可視光を含む領域の光で起電力を生じるから、紫外光が十分でない環境において光触媒作用を補うことができる。また、非晶質炭素膜または光触媒膜の少なくとも一方に一部が接する導電体を備えるから、この導電体によって、光触媒膜や非晶質炭素膜に生じた電子や正孔を取り出して活用することができる。ここで、光触媒膜としては、少なくとも二酸化チタン膜、カチオンまたはアニオンをドーピングした二酸化チタン膜、酸化亜鉛膜を含むがこれらに限定されない。
本発明の一実施形態に係る構造体において、前記非晶質炭素膜はケイ素を含有するものとすることもできる。非晶質炭素膜がケイ素を含有することにより、非晶質炭素膜の耐酸化性や耐熱性が向上し、光触媒膜の光触媒作用によって非晶質炭素膜が分解、劣化するのを抑制すると共に形成温度が高温となるゾル−ゲル法などを用いて光触媒膜を形成することができる。この態様の本発明の構造体において、前記非晶質炭素膜はケイ素に加え酸素を含有するものとすることもできる。こうすれば、非晶質炭素膜の親水性(含水性)を向上させることができ、光触媒膜の親水性を補うことも可能となる。
本発明の他の実施形態に係る構造体は、ケイ素を含有する第1の非晶質炭素膜と、前記第1の非晶質炭素膜上に形成された光触媒膜と、を備える。非晶質炭素膜は可視光を含む領域の光で起電力を生じるから、紫外光が十分でない環境において光触媒作用を補うことができる。また、非晶質炭素膜が耐酸化性や耐熱性に優れるケイ素を含有することにより、光触媒膜の光触媒作用によって非晶質炭素膜が分解、劣化するのを抑制すると共に形成温度が高温となるゾル−ゲル法などを用いて光触媒膜を形成することができる。ここで、光触媒膜としては、少なくとも二酸化チタン膜、カチオンまたはアニオンをドーピングした二酸化チタン膜、酸化亜鉛膜を含むがこれらに限定されない。
本発明の他の実施形態に係る構造体において、基材を備え、前記第1の非晶質炭素膜は、前記基材上に形成されるものとすることもできる。光触媒膜と基材との間に第1の非晶質炭素膜を備えるから、光触媒作用によって基材が分解、劣化するのを抑制することができる。この態様の本発明の構造体において、前記第1の非晶質炭素膜は、前記ケイ素に加え酸素を含有するものとすることもできる。こうすれば、非晶質炭素膜の親水性を向上させることができ、光触媒膜の親水性を補うことも可能となる。
本発明の他の実施形態に係る構造体において、前記第1の非晶質炭素膜と前記光触媒膜との間にケイ素を含有しない第2の非晶質炭素膜を備えるものとすることもできる。こうすれば、ケイ素を含有しない非晶質炭素膜(通常は、水素と炭素、または炭素のみを含有する)は、ケイ素を含有する非晶質炭素膜と比較して小さなエネルギーの光に反応して起電力を生じるから、紫外光が十分でない環境において光触媒作用をより一層補うことができる。さらにケイ素を含有する非晶質炭素膜に比べ、高い耐摩耗性や軟質金属凝着防止性などを有し、構造体に優れた耐摩耗性、摺動性を付与することができる。この態様の本発明の他の実施形態に係る構造体において、前記第2の非晶質炭素膜と前記光触媒膜との間にケイ素を含有する第3の非晶質炭素膜を備えるものとすることもできる。こうすれば、
光触媒作用によって第2の非晶質炭素膜が分解、劣化するのを防止することができる。この態様の本発明の他の実施形態に係る構造体において、前記第3の非晶質炭素膜は、前記ケイ素に加え酸素を含有するものとすることもできる。こうすれば、非晶質炭素膜の親水性(含水性)を向上させることができ、光触媒膜の親水性を補うことも可能となる。
本発明の他の実施形態に係る構造体において、前記第1の非晶質炭素膜と前記光触媒膜との間に、当該第1の非晶質炭素膜側に位置するケイ素を含有しない非晶質炭素膜と当該光触媒膜側に位置するケイ素を含有する非晶質炭素膜とを有する複合層を1つまたは複数備えるものとすることもできる。
本発明の様々な実施形態によって、光触媒膜を備える構造体において、光触媒作用によって基材や中間保護膜が分解、劣化するのを防止したり、紫外光が十分でない環境下においても光触媒機能を維持させることができる。
本発明の一実施形態に係る構造体を模式的に表す断面図。 本発明の他の実施形態に係る構造体を模式的に表す断面図。 明るい場所における実施例1〜6及び比較例の試料の水との接触角の測定結果を示すグラフ。 暗い場所における実施例1〜6及び比較例の試料の水との接触角の測定結果を示すグラフ。
本発明の様々な実施形態について添付図面を参照して説明する。これらの図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付し、その同一又は類似の構成要素についての詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る構造体10を模式的に表す断面図である。一実施形態に係る構造体10は、図示するように、基材12上に形成された非晶質炭素膜14と、この非晶質炭素膜14上に形成された二酸化チタン膜16とを備え、二酸化チタン膜16の光触媒作用(起電力、強い酸化還元作用、強い親水作用)を用いた様々な用途に適用され得る。例えば、汚れの付かない窓ガラス、グラビア印刷用ドクターブレードや印刷用スキージ、抗菌陶磁器、ステンレスメッシュ製のストレーナ、オフセット印刷用の感光体材料、光化学ダイオードなどの電子デバイス、太陽光発電素子材料として適用され得る。基材12は、構造体10の用途によって様々な材料で形成され、導電性を有する基材、半導体よりなる基材、絶縁性を有する基材の何れも適用可能である。導電性を有する基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、チタニウム、タングステン、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金などの様々な金属、もしくはチタニウム合金、銅合金、アルミニウム合金、ステンレス合金、タングステン合金、インコネルなど様々な合金、炭素繊維、グラフェン、CNT、グラファイトなどの炭素素材、さらには、スパッタリング法等の乾式めっき法で形成される各種金属膜、ITO透明導電膜(InO−SnO)、ZnO導電膜など、湿式メッキ法で形成されるCuやNi、Sn、Au、Agなどの金属めっき皮膜、その他Ni―Co、Ni−Wなどの各種メッキ合金膜、ピロール等の導電性樹脂などを挙げることができるが、これらに限定されない。半導体基材としては、Si、SnO、ZnS、CeO、ZnO、WO、SrTiO、SiC、ZnSe、CdS、Fe、GaP、CdSe,GaAs,Geなどが挙げられる。なお、導電性を有する基材、半導体よりなる基材はアモルファス状のものであってもかまわない。絶縁性を有する基材としては、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、もしくはビニル、プラスチック等の化学合成樹脂、レーヨン等の混紡繊維、ガラス、粘土等の無機材料、または羊毛、絹、綿、もしくはセルロース等の天然素材、天然ゴム、合成ゴム等などが挙げられる。また、スパッタリング法等の乾式めっき法、ゾルーゲル法等で形成される各種金属酸化物であっても良いが、これらに限定されない。基材12は必ずしも平板状である必要はなく、ビーズなどの球体面状、不定形の微粒子、ワイヤ状、スプリング状、コイル状、メッシュ状、不織布状等様々な形状の基材とすることができる。
なお、本発明の一実施形態にかかる構造体10を光化学ダイオードなどの電子デバイスとして活用する場合において、構造体10が基材12を伴わず、非晶質炭素膜14と二酸化チタン膜16(光触媒膜)のみで構成される場合、さらには、構造体10を構成する基材12が絶縁物である場合は、非晶質炭素膜または光触媒膜の少なくとも一方に少なくとも一部が接する導電体(半導体を含む)等にて非晶質炭素膜14又は二酸化チタン膜16の少なくとも一方にて生成される励起電子や正孔などを取り出す必要がある。この場合、例えば導電体は、ITO、Au、Ag、Cu等のプラズマスパッタリング膜や蒸着膜(配線)、Ag、Cuなどのペーストを印刷した膜(配線)など公知の方法で形成することができる。
非晶質炭素膜14は、公知のPVD法やCVD法等のプラズマプロセスにて形成することができる。非晶質炭素膜14は、水素と炭素からなる非晶質炭素膜とすることができ、この場合、アセチレン、エチレン、メタンなどの炭化水素系のガスを原料ガスとしたプラズマCVD法で形成することができる。また、非晶質炭素膜14は、炭素からなる非晶質炭素膜とすることもでき、この場合、固形の炭素ターゲットを配し、アルゴン等の不活性ガスをプラズマ化して炭素をスパッタリングするプラズマPVD法等で形成することができる。さらに、非晶質炭素膜14は、ケイ素(Si)を含む非晶質炭素膜とすることもでき、この場合、例えばテトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどのケイ素(Si)を含有する炭化水素系のガスを原料ガスとして使用するプラズマCVD法にて形成することができる。また、非晶質炭素膜14は、ケイ素(Si)および酸素(O)を含有するものとすることもでき、この場合、例えばテトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどのケイ素(Si)を含有する炭化水素系ガスを原料ガスに使用し、予めケイ素(Si)を含む非晶質炭素膜を形成した後、酸素ガス、または酸素ガスを含むガスをさらに前記ケイ素を含む非晶質炭素膜にプラズマ照射するプラズマCVD法によって形成することができる。さらに、ケイ素(Si)および酸素(O)を含有する非晶質炭素膜14は、前述したテトラメチルシランなどのケイ素を含有する炭化水素系ガスと、酸素、または炭酸ガスなどの酸素を含む原料ガスとを混合しながら形成する方法でも形成することができ、この場合、酸素の混合量を調整することによって、非晶質炭素膜14を透明な膜として形成することも可能である。このような非晶質炭素膜14の形成方法は、あくまでも例示であり、これらに限定されるものではなく、様々なプラズマプロセスにて適宜形成することが可能である。
非晶質炭素膜14がケイ素(Si)及び酸素(O)を含有する場合には、非晶質炭素膜の表層に水酸基(シラノール)が形成され蓄水性に優れたものとなると共に、ケイ素(Si)を含む炭化水素系の原料ガス、例えばテトラメチルシランガスに酸素を一定の爆発限界までの範囲で混合しながら透明に形成することが可能となる。この結果、酸化チタン膜16の親水性を補強する共に、非晶質炭素膜14が透明となる場合は構造体10の意匠性が向上する。
非晶質炭素膜14の膜厚は、特に限定されず、例えば1nm−30μmの範囲で適宜選定され、好適には50nm−3μmの範囲で形成される。この好適な膜厚の範囲は、基材12の表面粗さにも依存するが、非晶質炭素膜14の膜厚が薄いと膜の連続性が阻害され、また膜厚が厚いと内部応力が大きいため基材12からの剥離などを引き起こす可能性があることに基づく。非晶質炭素膜14がケイ素(Si)を含有する場合においても、またはケイ素(Si)および酸素(O)を含有する場合においても膜厚は特に限定されず、例えば1nmから30μmで適宜選定され、好適には50nm−3μmの範囲で形成される。さらに、ケイ素(Si)、またはケイ素(Si)および酸素(O)を含有する非晶質炭素膜14は、基材の材質や表面粗さにもよるが、例えばRa:0.09μmのステンレス鋼基材上で厚さ50−120nmの範囲(例えば、厚さ約60−90nm、100−120nmの範囲)で形成された場合、二酸化チタン膜16との境界面を紫色−青色とすることもできる。
また、非晶質炭素膜14は、例えば、DCパルスプラズマCVD装置において、炭化水素系ガスの炭素濃度と水素濃度の比率を調整することによって、この非晶質炭素膜14に含まれる炭素のSP2結合とSP3結合の割合(非晶質炭素膜14中のグラファイト成分の形成割合)を調整することができ、この結果、紫外光領域と比較してエネルギーの低い可視光領域の光によって光起電力を生じるようなバンドギャップとなるように調整することができる。例えば、水素に対するメタン濃度を3%−40%まで増加させることによって、非晶質炭素膜14のバンドギャップの範囲を3.0eV−0.5eVとすることができるとされている。また、例えば、真空中で非晶質炭素膜14に電子を加速照射して加熱することにより、非晶質炭素膜中にグラファイト成分をより多く形成するなど、非晶質炭素膜14中に形成されるグラファイト成分を調整することも可能である。
さらに、非晶質炭素膜14は、基材由来または意図的に、表層に凹凸構造を形成しても良い。表層に凹凸構造を有する非晶質炭素膜14上に二酸化チタン膜16を形成することにより、外部からの摩擦力などに対して、非晶質炭素膜14の凹部に形成された二酸化チタン膜16は、その周辺の硬い非晶質炭素膜14の凸部に保護されるから、二酸化チタン膜16の外部応力に対する耐久性を向上させることができる。
二酸化チタン膜16は、例えば、チタンニウム(Ti)のアルコキシド溶液を出発原料とし、アルコールなどを溶媒としたチタンニウム(Ti)のアルコキシド溶液中に基材12及び非晶質炭素膜14をディップ法にて塗布した後、加熱する公知のゾル−ゲル法によって形成される。また、チタンニウム(Ti)のアルコキシド溶液に代えてキレート溶液を出発原料とすることも可能である。ゾル−ゲル反応を利用しての塗布方法としては、他にスピンコート法やスプレーコート法、その他、二酸化チタン膜16を形成する基材の材質や形状、必要な皮膜の均一性や密着性に応じた各種の塗布方法を適宜選択することが可能である。
ここで、光触媒機能を発現可能な二酸化チタン膜16をゾル−ゲル法によって形成する場合には、概ね400℃以上での加熱処理が必要となるが、一実施形態に係る構造体10の非晶質炭素膜14がケイ素(Si)を含有する場合には、非晶質炭素膜14は概ね450℃−500℃程度の耐熱性を有し、水素と炭素からなる通常の非晶質炭素膜に比べ耐熱性に優れ、二酸化チタン膜16の形成工程における加熱による劣化を防止することができる。さらに、酸化チタン膜16は、TIPTや、TiCl4を原料ガスとするプラズマCVD法、Tiターゲットを酸素雰囲気中でArなどの不活性ガスでスパッタリングするプラズマスパッタ法、不活性ガスを通電して形成したプラズマジェット中に粉末TiOを投入して皮膜を形成するプラズマ溶射法、Ti、またはTi合金を陽極とした陽極酸化法などの公知のプロセスにて形成することも可能であり、さらには、常温にてTiO微粒子、無機バインダー、アルコール、水からなる溶液を基材にスプレーして膜を形成することもできる。この場合、基材12や非晶質炭素膜14を低温状態に保ったまま二酸化チタン膜16を形成することができる。なお、一実施形態においては、光触媒性を発現する光触媒として二酸化チタンを採用し、その化学量論的組成をTi:O=1:2のTiOとした。
ゾル−ゲル法に基づくディップ法によって形成される二酸化チタンの膜厚は、チタニウムアルコキシド溶液の濃度や環境温度、ディップ法の引き上げ速度などにも依存するが概ね1回のディップで0.1μm−0.3μmの膜厚で基材上にゲルコーティングを行うことができる。したがって、ディップ、引き上げ、加熱の工程を必要に応じて繰り返すことにより、所望の二酸化チタン膜の膜厚を得る事が可能である。二酸化チタンの膜厚は、抗菌性やセルフクリーニング性、超親水皮膜など様々な機能や用途、用法、外観上の要求に応じて適宜選定することが可能である。例えば、本発明の一実施形態にかかる二酸化チタン膜16を電気化学膜として利用する場合には、電極等に印加するバイアス電圧が一定の場合、二酸化チタンの膜厚が大きい方が光電流は大きくなるため膜厚を1.8μm程度まで厚く形成する場合もある。
二酸化チタン膜16は、可視光応答性を向上させたものであってもかまわない。具体的な例としては、二酸化チタンの価電子帯と伝導帯は、それぞれ主として酸素の2p軌道、チタンの3p軌道から構成されており、このバンドギャップを低減することにより、二酸化チタンの可視光応答性を向上させることができる。バンドギャップを低減する方法の例としては、遷移金属元素などのカチオン(陽イオン)を二酸化チタンにドーピングし、不純物準位を二酸化チタンの伝導帯の下端よりプラス側に形成する方法が有り、さらには、窒素(N)、炭素(C)、フッ素(F)、硫黄(S)などのアニオン(陰イオン)を二酸化チタン膜にドーピングすることで、二酸化チタンの価電子帯の上端よりマイナス側に不純物準位を形成する方法等を挙げることができる。
なお、一実施形態では、非晶質炭素膜14上に二酸化チタン膜16を形成したが、非晶質炭素膜14と二酸化チタン膜16の中間に、光に対するバンドギャップが「非晶質炭素膜14以上」である半導体層、光触媒層などを設置するなど、本発明の趣旨に反しない範囲で中間層や接着層を形成してもかまわない。本発明の一実施形態にかかる非晶質炭素膜14上に二酸化チタン膜16を形成した構造体が二酸化チタン膜側から受光した場合、波長の短く、エネルギーの大きい紫外線や紫外線領域に近接する可視光領域の電磁波(光)は二酸化チタンを活性化させ、一方、他の紫外線に比べ波長が長く、エネルギーの小さい光(電磁波)は、二酸化チタン膜16を透過し下地の非晶質炭素膜14を活性化させていると言える。よって、非晶質炭素膜を活性化させることが可能な波長の光(電磁波)を透過させる他の半導体層(光触媒層)を非晶質炭素膜14と二酸化チタン膜16の間に形成することも可能である。即ち、非晶質炭素膜14上の光触媒膜は複合膜として形成されていても構わない。なお、図1は、本発明の一実施形態に係る構造体の構成を模式的に表すものであり、その寸法は必ずしも正確に図示されていない点に留意されたい。
こうして構成された一実施形態に係る構造体10の二酸化チタン膜16の上方から光が照射されると、照射光に含まれる紫外光によって酸化チタン膜16の光触媒作用が発現する。これは、ニ酸化チタン膜16に光が照射されることによって励起電子や正孔が形成され、形成された電子や正孔がスーパーオキシドラジカルアニオンやヒドロキシルラジカルなどの酸化還元活性種を生成することに基づく。非晶質炭素膜14は耐酸化性に優れるケイ素(Si)を含有するから、ニ酸化チタン膜16の光触媒作用による非晶質炭素膜14の分解、劣化は抑制される。もとより、非晶質炭素膜14が酸化チタン膜16と基材12との間で中間保護膜として機能するから、ニ酸化チタン膜16の光触媒作用による基材12の分解、劣化は抑制される。
また、非晶質炭素膜14の二酸化チタン膜16との境界面(基材12に非晶質炭素膜14を形成した時点での非晶質炭素膜14の表面)を紫色−青色にて形成した場合、二酸化チタン膜16を透過した光のうち紫外光に波長が近い紫色−青色付近の光を反射してニ酸化チタン膜16に再照射する。この結果、紫外光が十分でない環境下における二酸化チタン膜16への光の照射を補って光触媒機能を補強する。なお、二酸化チタンのバンドギャップは、ルチル型で3.0eV、アナタース型で3.2eVであり、対応する波長は、ルチル型で412nm付近、アナタース型で388nm付近であり、可視光領域と紫外光領域の境界付近の波長に位置している。一方、可視光領域のうち、紫色領域の波長は380−450nm、青色領域の波長は450−495nmであることから、紫色−青色付近の光を再照射することにより、ニ酸化チタン膜16に光起電力を生じ光触媒機能を補強することができる。さらに、非晶質炭素膜14自身が、ニ酸化チタン膜16を透過した紫外光よりエネルギーの低い可視光によって起電力を生じるから、二酸化チタン膜16の光触媒作用を補強すると考えられる。
一実施形態に係る構造体10は、基材12上に形成された非晶質炭素膜14と、この非晶質炭素膜14上に形成された二酸化チタン膜16とを備えるものとしたが、基材12を電子貯蔵性の高いPtなどの様々な金属や、カーボン、ITO、Alなどの導電性蒸着膜や導電性ペーストの印刷膜などの導電体基板(一方電極)とし、二酸化チタン膜16側の表面に同様にAuやAgその他導電性物質から成る電極(他方電極)を蒸着、スパッタリング、印刷、メッキ析出、超音波圧着、その他の様々な方法で設置することで、さらには、必要に応じて一方の電極にバイアス電圧を印加することで、構造体10の光触媒機能層に発生する励起電子や正孔を取り出し、例えば水を電気分解し水素を発生させるなど、その他様々な方法で活用することができる。また、電極と非晶質炭素膜14の間、または、電極と二酸化チタン16の間にトンネル効果で通電可能な絶縁層などを形成してもかまわない。光触媒の励起電子や正孔を利用する目的であれば、金属やグラファイト、グラフェン、CNT等の導電体のみでなく、前述したSi等の半導体も導電物として扱うことができる。
一実施形態に係る構造体10は、基材12上に形成された非晶質炭素膜14と、この非晶質炭素膜14上に形成された二酸化チタン膜16とを備えるものとしたが、必ずしも基材12上に形成する必要はない。例えば、非晶質炭素の微粒子上に二酸化チタン層を形成した構造体なども含まれる。
一実施形態に係る構造体10は、光触媒機能を有する単一の構造体として説明したが、複数の構造体10各々を接触させて総体として本発明の一実施形態に係る構造体として機能させることもできる。例えば、微粒子より成る構造体10を膜状に形成して使用する場合などである。本発明の一実施形態として個々の構造体10の連なった総体としての構造体に生成される励起電子や正孔を利用する場合は、必ずしも個々の構造体10を構成する基材12の全部、または一部が導電性を有する基材である必要は無く、構造体10の総体から電流等を取り出せる導電物がその総体の少なくとも一部に接続された構造でも良い。また、基材12の上に非晶質炭素膜14とさらに二酸化チタン膜16が各々直接接し、非晶質炭素膜14と二酸化チタン膜がモザイク状など各々が島状に混在するものであっても構わない。
図2は、本発明の他の実施形態に係る構造体110を模式的に表す断面図である。他の実施形態に係る構造体110は、図示するように、基材112の上に非晶質炭素膜113、114、115とが順に形成され、非晶質炭素膜115の上に二酸化チタン膜116が形成されている。基材112と二酸化チタン膜116は、一実施形態に係る構造体10における基材12と二酸化チタン膜16と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
他の実施形態に係る非晶質炭素膜113は、ケイ素(Si)を含有し、例えば、厚さは約50nmとされる。非晶質炭素膜114は、例えば、アセチレン等の炭化水素ガスを原料ガスとして用いてプラズマCVD法により形成され、厚さは約550nmとされる。即ち、非晶質炭素膜114はケイ素(Si)を含有しない。非晶質炭素膜115は、ケイ素(Si)または、ケイ素(Si)および酸素(O)を含有し、厚さは約60〜90nmとされる。
ここで、他の実施形態に係る構造体110の耐摩耗性を向上させるため、ケイ素を含有する非晶質炭素膜に比べ耐摩耗性に優れるケイ素を含有しない非晶質炭素膜を構造体110に厚膜で形成したい場合がある。しかしながらケイ素を含有しない非晶質炭素膜は、特に金属やセラミクスで構成される基材112に対する密着性が悪い。一方、ケイ素を含有する非晶質炭素膜は広範な基材112と良好な密着力を有し、ケイ素を含有しない非晶質炭素膜との密着性も良く、加えて二酸化チタンの光触媒反応の補助効果も併せて有する。また、ケイ素を含有しない非晶質炭素膜上にさらにケイ素を含有する非晶質炭素膜を形成することで二酸化チタンの活性酸素等によるケイ素を含有しない非晶質炭素膜の酸化を防止することができる。こうした理由により、他の実施形態では、基材112の上にケイ素を含有する非晶質炭素膜113、ケイ素を含有しない非晶質炭素膜114、さらにケイ素を含有する非晶質炭素膜115と順に形成することにより、基材密着性や耐摩耗性に優れた構造体110を得ることが可能となる。
こうして構成された他の実施形態に係る構造体110の二酸化チタン膜116の上方から光が照射されると、照射光に含まれる紫外光によって二酸化チタン膜16の光触媒作用が発現する。非晶質炭素膜114は耐酸化性に優れるケイ素(Si)を含有するから、ニ酸化チタン膜116の光触媒作用による分解、劣化は抑制される。
また、非晶質炭素膜114は、ケイ素(Si)を含有せず、そのバンドギャップは概ね0.5−3.0eVであり、ケイ素(Si)を含有する非晶質炭素膜と比較して、エネルギーの低い光を含むより広い範囲の光に反応して起電力を生じる。従って、酸化チタン膜116の光触媒作用をより一層補強する。
上述した実施形態では、光触媒膜として二酸化チタン膜を用いたが、酸化亜鉛膜などの他の光触媒膜を用いることもできる。例えば、酸化亜鉛のバンドギャップは二酸化チタンと同様の3.0eVで、励起波長(λ)が387nmと紫外光領域である
なお、ケイ素を含有する非晶質炭素膜113、ケイ素を含有しない非晶質炭素膜114を1対とする複合層自体を必要に応じて複数層繰り返し積層することも可能である。
以下に述べる方法により、本発明の実施形態に係る構造体が、光触媒膜の光触媒作用を向上させることを確認した。
1.試料の作製
まず、表面粗さがRa:0.09μmのステンレス鋼(SUS304 2B)から成る基材を、各試料の基材として準備した。このステンレス鋼(SUS304 2B)基材は、40mm×100mmで厚さ1mmのものを準備した。
(1)実施例1の試料の作成
ステンレス鋼(SUS304 2B)基材に公知の方法でケイ素を含む非晶質炭素膜を厚さ約60〜90nmで青色に形成し、その上に二酸化チタン膜を形成した。二酸化チタン膜は、二酸化チタン膜をイソプロピルアルコール(IPA)を溶媒とし、IPAとの体積比で2%に希釈したチタン有機金属アルコキシドを主成分とする溶液(マツモトファインケミカル(株)の市販する「オルガチックスTA−25」)に、前述した非晶質炭素膜を形成した試料をディップ塗布した後、マッフル炉に投入して約400℃にて1時間加熱固化するゾル−ゲル法にて形成した。
(2)実施例2の試料の作成
ステンレス鋼(SUS304 2B)基材にケイ素を含む非晶質炭素膜を厚さ約50nmで形成し、その上にケイ素を含まない水素と炭素で構成される非晶質炭素膜を厚さ約550nmで黒色に形成し、その上に実施例1と同様に二酸化チタン膜を形成した。
(3)実施例3の試料の作成
ステンレス鋼(SUS304 2B)基材にケイ素を含む非晶質炭素膜を厚さ約50nmで形成し、その上にケイ素を含まない水素と炭素で構成される非晶質炭素膜を厚さ約550nmで黒色に形成し、更にケイ素を含む非晶質炭素膜を厚さ約60〜90nmで形成し、さらに酸素プラズマを約3分間照射したものの上に実施例1と同様に二酸化チタン膜を形成した。
(4)実施例4の試料の作成
ステンレス鋼(SUS304 2B)基材にケイ素を含む非晶質炭素膜を厚さ約60〜90nmで青色に形成し、さらに酸素プラズマを約3分間照射したものの上に実施例1と同様に二酸化チタン膜を形成した。
(5)実施例5の試料の作成
ステンレス鋼(SUS304 2B)基材にケイ素を含む非晶質炭素膜を厚さ約340nmで緑色〜赤色に形成し、その上に実施例1と同様に二酸化チタン膜を形成した。
(6)実施例6の試料の作成
ステンレス鋼(SUS304 2B)基材にケイ素を含む非晶質炭素膜を厚さ約340nmで緑色〜赤色に形成し、さらに酸素プラズマを約3分間照射したものの上に実施例1と同様に二酸化チタン膜を形成した。
(7)比較例1の試料の作成
ステンレス鋼(SUS304 2B)基材に二酸化チタン膜を実施例1と同様に形成した。
2.各試料の色の測定
酸化チタン膜を形成後の各試料について、以下の条件で色の測定を行った。

測定機 : 分光測色計 CM-508d (ミノルタカメラ社製)
測定光源: パルスキセノンランプ
測定径 : 直径8mm
測定視野: 2°(50cm離れたところから直径1.7cmを見る視野を示す)
測定光源: D65 (昼光の光源、ISOの基準光で色温度6504K)
測定種類: L* a* b* 表色計
(L* は明度、a* と b* は色相と彩度を表す)

測定結果を表1に示す。
Figure 2017131894
数値「a*」は、赤色−緑色を両極とした場合、数値が大きくなるほど「赤色」寄りの色であること(数値が小さくなるほど「緑色」寄りの色であること)を示す。数値「b*」は、黄色−青色を両極とした場合、数値が大きくなるほど「黄色」寄りの色であること(数値が小さくなるほど「青色」寄りの色であること)を示す。
3.各試料の水との接触角の測定
こうして形成された各試料について、(1)明るい場所(蛍光灯下の屋内環境)、および(2)暗い場所(暗室内)にて、水(純水)との接触角の測定を行った。これは、水との接触角を測定することにより各試料における酸化チタン膜の親水性を測定し、親水性を測定することにより酸化チタン膜の光触媒機能の発現状態を測定することができると考えられることに基づく。測定条件は以下の通りである。

(1)明るい場所(蛍光灯下の屋内環境):各試料を8月の正午前の約5時間天日に当てたのち、各試料を持ち込み、2分間以内に接触角測定を開始、各試料毎の測定所要時間は6点測定で1〜2分間程度である。
(2)暗い場所(暗室内):予め暗所に4日間各試料を保管し、各試料の測定を行っている。各試料毎の測定所要時間は6点測定で3分間程度である。

接触角計は、協和界面科学(株) ポータブル接触角計 PCA-1を使用し、概ね湿度6
0%、温度28℃の環境で測定を行った。なお、測定環境の明るさは下記内容にて測定を行っている。

測定機器: 東京硝子器械 Fineデジタル照度計 FLX-1330
測定範囲: 0.01〜20000ルクス(再現性±2%)
測定結果:(1)明るい場所・・・210〜230ルクス
(2)暗い場所・・・0.02ルクス(※接触角計の角度認識ライトは点灯状態)
(1)明るい場所における各試料の水との接触角の測定結果を図3に示す。図示するように、比較例においても20〜30°の接触角が測定されていることから、同条件にて二酸化チタン膜が各サンプル基材上に形成されたことが確認できる。実施例2を除く各実施例における水との接触角は0〜5°未満付近を示し、比較例と比較してより強力な親水性を発現していることが確認できた。またケイ素を含まない非晶質炭素膜を下層にした実施例2については、比較例と比較して強い親水性を示してはいるが、ケイ素を含む非晶質炭素膜を下層にした他の実施例に比べると高い接触角を示している。これは、光量が確保されている明所においては、3.0eV程度のバンドギャップを有する炭化ケイ素(SiC)を含む非晶質炭素膜の方が、約0.5〜3.0eVの範囲でバンドギャップを有し比較的エネルギーの低い可視光に反応する水素と炭素で構成される非晶質炭素膜よりも、酸化チタン膜の下層として光触媒作用の補完、補助機能が優れていることを示すと考えることができる。
次に(2)暗い場所における各試料の水との接触角の測定結果を図4に示す。図示するように、比較例においては80〜90°の接触角が測定され、通常のステンレス鋼の水との接触角と同程度である弱撥水性を示した。また、ケイ素を含む非晶質炭素膜(酸素は含まない)を下層として有する実施例1、5は暗所においても概ね60〜75°の接触角が測定され、弱撥水性から弱親水性へと改質されていることを確認した。さらに、ケイ素を含む非晶質炭素膜に酸素プラズマを照射した非晶質炭素膜を下層として有する実施例3、4、6は、暗所においても概ね60°未満の接触角が測定され、酸素プラズマを照射しない実施例1、5と比較して、10°程度低い接触角となっており、より強い親水性に改質されていることを確認した。
また、(2)暗い場所における実施例2の水との接触角は、実施例3、6と同程度の接触角を示している。実施例2は比較的エネルギーの低い可視光に反応する水素と炭素で構成される非晶質炭素膜を下層として有するから、光量の乏しい暗所においては、こうした実施例2が高い親水性を示していることを確認した。
以上説明した検証によって、バンドギャップの異なる二酸化チタンと非晶質炭素膜からなる光触媒(半導体)を積層し、二酸化チタン層を透過する波長の長い低エネルギーの光が下層の非晶質炭素膜を活性化させ、それぞれの光触媒(半導体)が光に反応して形成される励起電子や正孔は、他のバンドギャップを有する他方半導体への拡散を起こしていると考えることができる。なお、本検証において、ステンレス鋼基材の上に各種の非晶質炭素膜層を形成した後、二酸化チタン層をさらに積層形成した試料にて検証を行っているが、これは各種実施例の非晶質炭素膜層と二酸化チタン層の接する積層体の機能検証を簡便に行うためである。従って、このことを以って、本発明の実施形態が、基材がステンレス鋼板等であるものに限定されることはなく、基材を有する構造体に限定されることはない。
10、110 構造体
12、112 基材
14、113、114、115 非晶質炭素膜
16、116 二酸化チタン膜

Claims (11)

  1. 非晶質炭素膜と、
    前記非晶質炭素膜に少なくとも一部が接する光触媒膜と、
    前記非晶質炭素膜または前記光触媒膜の少なくとも一方に少なくとも一部が接する導電体と、
    を備える構造体。
  2. 前記非晶質炭素膜は、ケイ素を含有する請求項1記載の構造体。
  3. 前記非晶質炭素膜は、ケイ素に加え酸素を含有する請求項2記載の構造体。
  4. ケイ素を含有する第1の非晶質炭素膜と、
    前記第1の非晶質炭素膜上に形成された光触媒膜と、
    を備える構造体。
  5. 請求項4記載の構造体であって、
    基材を備え、
    前記第1の非晶質炭素膜は、前記基材上に形成される、
    構造体。
  6. 前記第1の非晶質炭素膜は、前記ケイ素に加え酸素を含有する請求項4または5記載の構造体。
  7. 前記第1の非晶質炭素膜と前記光触媒膜との間にケイ素を含有しない第2の非晶質炭素膜を備える請求項4ないし6いずれか記載の構造体。
  8. 前記第2の非晶質炭素膜と前記光触媒膜との間にケイ素を含有する第3の非晶質炭素膜を備える請求項7記載の構造体。
  9. 前記第3の非晶質炭素膜は、前記ケイ素に加え酸素を含有する請求項8記載の構造体。
  10. 前記第1の非晶質炭素膜と前記光触媒膜との間に、当該第1の非晶質炭素膜側に位置するケイ素を含有しない非晶質炭素膜と当該光触媒膜側に位置するケイ素を含有する非晶質炭素膜とを有する複合層を1つまたは複数備える請求項4ないし6いずれか記載の構造体。
  11. 前記光触媒膜は、少なくとも二酸化チタン膜、カチオンまたはアニオンをドーピングした二酸化チタン膜、酸化亜鉛膜を含む請求項1ないし10いずれか記載の構造体。
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