本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ベッドの背上げに追従して屈曲可能とされていると共に、ベッドの屈曲による配管や配線などの折れ曲がりが防止されて耐久性や信頼性の向上が図られる、新規な構造を備えた流体セル式のマットレスを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明の第一の態様は、使用者を載せる支持面の少なくとも一部が内部に流体室を備える拡縮変形可能なセルによって構成されていると共に、該支持面が長さ方向の中間に設けられた屈曲部で屈曲可能とされているマットレスであって、前記セルを備えて前記支持面を構成する頭部側支持体と脚部側支持体が該支持面側で相互に連結されてヒンジ状の前記屈曲部が連結部分に設けられており、それら頭部側支持体と脚部側支持体の相対傾動が該屈曲部を中心として許容されている一方、該頭部側支持体と該脚部側支持体に跨って長さ方向に延びる延設ラインが設けられており、該延設ラインが、該屈曲部から長さ方向に離れた位置で前記支持面と反対側に配された配索部と、該屈曲部において該支持面側に配された屈曲中心部と、該配索部と該屈曲中心部の間において変形を許容される変形許容部とを、有していることを、特徴とする。
本発明の第一の態様に従う構造とされたマットレスによれば、頭部側支持体と脚部側支持体の連結部分が支持面側を中心としてヒンジ状に屈曲する屈曲部とされていると共に、延設ラインが屈曲部において支持面側に配されていることにより、背上げ時に延設ラインの破断や過度な折れ曲がりなどが防止される。更に、延設ラインが屈曲部の長さ方向両側に変形を許容された変形許容部を有していることにより、延設ラインの引張りや折れ曲がりが変形許容部の変形によって低減される。
また、延設ラインがマットレスの屈曲部から長さ方向に離れた配索部において支持面と反対側に配されていることから、支持面上の使用者や介護者および看護者などが延設ラインに触れ難くなって、信頼性の向上が図られる。
さらに、マットレスが屈曲部で支持面を内側にして二つ折り可能とされている場合には、延設ラインが配索部において厚さ方向の外側に位置することから、延設ラインにおける配索部の頭部側と脚部側を繋ぐ部分(屈曲中心部および変形許容部)が、所定の曲率をもって緩やかに湾曲する形状とされ得る。これにより、マットレスの折畳みに際しても、延設ラインの過度な折れ曲がりや延設ラインに対する過大な引張力の作用が回避されて、延設ラインの耐久性が確保される。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載されたマットレスにおいて、前記延設ラインの前記変形許容部が滑らかに湾曲する弛みを有しているものである。
第二の態様によれば、変形許容部の変形が弛みによってより有利に許容されると共に、弛みをもった変形許容部が滑らかに湾曲していることから変形許容部の変形時に折れが生じ難く、延設ラインの耐久性や信頼性の向上が図られ得る。
本発明の第三の態様は、第一の又は第二の態様に記載されたマットレスにおいて、非屈曲状態において、前記延設ラインの前記変形許容部が、前記屈曲中心部付近において前記支持面側へ向けて凸となっていると共に、前記配索部付近において該支持面側へ向けて凹となっているものである。
第三の態様によれば、背上げや折畳みによるマットレスの屈曲に対して、延設ラインに対する引張りや折り曲げがより有利に低減されて、耐久性や信頼性の向上が実現される。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載されたマットレスにおいて、前記延設ラインの前記屈曲中心部が前記屈曲部の幅方向外側を通って配されているものである。
第四の態様によれば、延設ラインを屈曲部の幅方向外側に配することによって、延設ラインの支持面側への配設が容易になると共に、延設ラインが支持面上の使用者などに触れ難くなって、信頼性や安全性の向上が図られる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載されたマットレスにおいて、前記延設ラインが前記セルの伸縮を制御する制御装置に接続される電気配線と該セルの前記流体室に連通される配管との少なくとも一つを含んでいるものである。
第五の態様によれば、延設ラインが電気配線を含む場合には、マットレスの屈曲による電気配線の断線が防止される。更に、延設ラインが配管を含む場合には、マットレスの屈曲時に配管の折れ曲がりによる閉塞が回避される。
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか一つの態様に記載されたマットレスにおいて、前記頭部側支持体と前記脚部側支持体を収容するカバーが設けられて、前記延設ラインが該カバーに収容されていると共に、該カバーの該頭部側支持体を収容する部分と該脚部側支持体を収容する部分が前記支持面側において繋がっており、前記屈曲部が該カバーによって構成されているものである。
第六の態様によれば、頭部側支持体と脚部側支持体をカバーに収容することによって、それら頭部側支持体と脚部側支持体を屈曲可能な状態で容易に連結することができる。しかも、マットレスのヒンジ状の屈曲部が、カバーにおける頭部側と脚部側が支持面側で連結されていることにより、カバーにおける頭部側と脚部側の連結部分によって簡単な構造で実現される。
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか一つの態様に記載されたマットレスにおいて、前記頭部側支持体と前記脚部側支持体の各幅方向端部に長さ方向へ延びる端部クッションが配されており、該端部クッションに長さ方向へ延びる配索空所が設けられて、前記延設ラインの前記配索部の少なくとも一部が該配索空所に配設されていると共に、該延設ラインが前記屈曲部付近で該配索空所から該端部クッションよりも幅方向外側へ延び出しているものである。
第七の態様によれば、マットレスの幅方向端部に端部クッションを配することによって、使用者がマットレスの幅方向端部に座る場合や、介護者および看護者が手を突く場合などに、使用者や介護者および看護者などの姿勢が安定する。
また、端部クッションに形成された配索空所に延設ラインを配することにより、使用者などが延設ラインにより接触し難くなって、接触による延設ラインの破断や抜けなどの不具合が回避される。しかも、配索空所に配設された延設ラインが、屈曲部付近では配索空所から延び出して、端部クッションよりも幅方向外側に配されていることから、延設ラインを屈曲部において支持面側に配置し易くなる。
本発明によれば、頭部側支持体と脚部側支持体が支持面側に設けられるヒンジ状の屈曲部によって相対傾動可能に連結されており、延設ラインが屈曲部において支持面側に配されていると共に、延設ラインが屈曲部に対する長さ方向両側において変形を許容されていることから、頭部側支持体と脚部側支持体の相対傾動に対して延設ラインの引張りや折り曲げが低減されて、耐久性や信頼性の向上が図られる。更に、屈曲部から離れた延設ラインの配索部が支持面と反対側に配されていることから、使用者などが延設ラインに接触し難くなっていると共に、マットレスを折り畳む際にも延設ラインの過度な引張りや折り曲げが防止される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第一の実施形態としてのマットレス10が示されている。マットレス10は、図1に示すように、ベッド12上に配設されて使用者Aとベッド12の間に配されるものであって、頭部側支持体14と脚部側支持体16がカバー18に収容された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは図1中の上下方向を、幅方向とは図1中の紙面直交方向を、それぞれ言う。
より詳細には、頭部側支持体14は、複数のセルユニット20を長さ方向に並べて配した構造を有している。セルユニット20は、図2,3に示すように、幅方向に延びる長手板状の発泡弾性体とされた基体22上に、複数のセル24が幅方向で並ぶように配された構造を有しており、それら複数のセル24の幅方向外側には、それぞれ端部クッション26が設けられている。
セル24は、合成樹脂膜などで形成された中空袋状とされて、内部に空気などの流体を収容する流体室28を備えており、流体室28の流体量をポンプなどで調節することにより、上下方向に伸縮変形可能とされている。更に、セル24の上面が使用者Aを載せる支持面30の一部を構成しており、セル24の変形によって支持面30の変形が許容されている。本実施形態のセル24は、上部袋体32と下部袋体34を備える上下二段形状を有しており、上下方向の伸縮変形量が大きく確保されていると共に、上部袋体32と下部袋体34の首振り様の相対傾動によるセル24上面の傾斜によって、支持面30が使用者Aの体表面に追従して変形し易くなっている。
端部クッション26は、略矩形ブロック状の発泡ウレタンなどで形成されており、内部に制御装置36が配設されている。制御装置36は、バルブ38とコントローラ40を備えており、バルブ38の開閉などがコントローラ40によって調節制御されるようになっている。このバルブ38には、セル24の流体室28に連通された末端ホース42が接続されている。なお、制御装置36は、幅方向両側の端部クッション26にそれぞれ配設されていても良いが、何れか一方の端部クッション26だけに配設されていても良く、後述する配索空所57や延設ライン56も幅方向一方だけに設けられ得る。また、制御装置36は、必ずしも全てのセルユニット20において端部クッション26に配設されている必要はなく、例えば、1つ乃至は幾つかのセルユニット20の端部クッション26に対して選択的に配設されて、複数のセルユニット20のセル24の伸縮が共通の制御装置36によって制御されるようにしても良い。
このような構造を有するセルユニット20は、複数が長さ方向に並んで配設されている。即ち、発泡ウレタンなどで形成された板状の弾性ベース44に対して、複数のセルユニット20の基体22が重ね合わされて位置決めされている。そして、複数のセルユニット20のセル24の上面(図2,3中の上面)によって、マットレス10の支持面30が構成されている。また、各セルユニット20の端部クッション26が長さ方向に並んで配設されており、それら端部クッション26がマットレス10の幅方向端部において全体として長さ方向に延びている。
さらに、支持面30には、複数のセルユニット20に跨って広がる板状の上クッション体46が配設されていると共に、上クッション体46の上面に圧力分布センサ48が重ね合わされている。圧力分布センサ48は、特開2015−188698号公報や特開2012−168064号公報などに開示されているような静電容量型のセンサであって、セル24の上面に作用する圧力、換言すれば使用者の体に作用する圧力(体圧)を、静電容量の変化として検出できるようになっている。この圧力分布センサ48による圧力の検出結果の信号は、制御装置36のコントローラ40に送信されるようになっており、コントローラ40が圧力検出信号に基づいてバルブ38を制御するようになっている。なお、圧力分布センサ48は、静電容量型センサに限定されるものではなく、支持面30への作用圧力を電気抵抗の変化として検出する電気抵抗型センサや、電磁誘導作用に基づいて検出する電磁誘導型センサなどであっても良い。また、圧力分布センサ48からコントローラ40へ送られる検出信号は、有線によって送信されるようになっていても良いし、無線によって送信されるようになっていても良い。
一方、脚部側支持体16は、頭部側支持体14と略同じ構造を有していることから、ここでは詳細な説明を省略するが、頭部側支持体14に対して長さ方向に並んで配されるセルユニット20の数が異なるなどして長さが異なっていても良い。
そして、頭部側支持体14と脚部側支持体16は、カバー18に収容されている。カバー18は、合成樹脂シートや布などで形成されて全体として矩形袋状とされており、頭部側支持体14を覆う頭部側カバー部50と脚部側カバー部52とを備えている。更に、頭部側カバー部50と脚部側カバー部52には、頭部側支持体14と脚部側支持体16の長さ方向隣接側(長さ方向内側)の端面を覆う傾動許容部54が、頭部側カバー部50および脚部側カバー部52の下部と連続して設けられている。この傾動許容部54は、図2に示すように、頭部側カバー部50および脚部側カバー部52の上部までは至らない上下寸法で形成されており、カバー18の内部空間が傾動許容部54の形成部分において上下に狭窄されていると共に、カバー18の内部空間が傾動許容部54の形成部分においても長さ方向に連続している。これにより、頭部側カバー部50と脚部側カバー部52が支持面30側で一体的に繋がっていると共に、頭部側カバー部50に収容された頭部側支持体14と、脚部側カバー部52に収容された脚部側支持体16が、カバー18によって連結されて、かかる連結部分が支持面30側の端部に設定されている。
このような傾動許容部54が形成されていることにより、頭部側支持体14と脚部側支持体16の相対傾動による支持面30の屈曲が、カバー18の変形によって許容されている。即ち、カバー18は、頭部側カバー部50と脚部側カバー部52の連結部分において上下寸法が部分的に小さくされており、頭部側カバー部50と脚部側カバー部52の連結部分がヒンジ状に変形することによって、頭部側カバー部50と脚部側カバー部52の相対傾動が連結部分を中心として許容されている。これにより、頭部側カバー部50に収容された頭部側支持体14と、脚部側カバー部52に収容された脚部側支持体16が、カバー18における連結部分のヒンジ状の変形によって相対傾動を許容されている。このような頭部側支持体14と脚部側支持体16の相対傾動によって、頭部側支持体14で構成された支持面30の頭部側が、脚部側支持体16で構成された支持面30の脚部側に対して傾斜して、使用者Aの背上げが実現されるようになっている。
なお、上記の説明からもわかるように、本実施形態におけるマットレス10の屈曲部55が、カバー18における頭部側カバー部50と脚部側カバー部52の連結部分によって構成されており、ヒンジ状の屈曲部55が支持面30側となるマットレス10の上端部分に設けられている。また、マットレス10の屈曲中心は、カバー18の傾動許容部54と上部の間に位置している(図2参照)。
また、カバー18には、延設ライン56が収容されている。本実施形態の延設ライン56は、図示しないポンプに接続された柔軟な配管(ホース)と、同じく図示しない電源に接続された電気配線とを含んで構成されており、頭部側支持体14と脚部側支持体16に跨って長さ方向に延びている。この延設ライン56は、セルユニット20の端部クッション26に形成されて長さ方向に延びる配索空所57内に配設されて、長さ方向に延びている。更に、延設ライン56は、頭部側支持体14と脚部側支持体16の境界部分であるマットレス10の屈曲部55において、配索空所57から幅方向外側へ延び出しており、端部クッション26よりも幅方向外側で端部クッション26とカバー18の間に配設されている。なお、配索ラインは、複数の配管および電気配線によって構成されているが、図中では見易さのために1つの中実配線として示す。また、複数の配管および電気配線は、配索を容易とするために、結束バンドやコルゲートチューブなどによって予め結束され得る。また、本実施形態の配索空所57は、端部クッション26に対して下面に開口しながら長さ方向へ延びる凹溝状に形成されており、基体22で下側の開口部を覆われることにより長さ方向に延びるトンネル状とされている。
ここにおいて、延設ライン56は、マットレス10の屈曲部55から長さ方向に離れた部分が配索部58とされて配索空所57内に配されており、配索部58が頭部側支持体14および脚部側支持体16における支持面30と反対側の下端部分に沿って配設されている。本実施形態の配索部58は、支持面30と反対側においてマットレス10の長さ方向へ直線的に延びるように配設されているが、配索部58に弛みをもたせて、引張りなどに対する配索部58の変形を許容しても良い。
また、本実施形態では、図2,3に示すように、配索部58におけるマットレス10の屈曲部55に近い側の端部が、配索空所57から幅方向外側へ延び出しており、端部クッション26の幅方向外側に位置している。更に、カバー18の内側面に設けられたバンド60が、配索部58の配索空所57から幅方向外側へ延び出した部分に着脱可能に取り付けられており、当該部分において配索部58がカバー18に対して位置決めされている。なお、延設ライン56は、脚部側の配索部58よりも外側部分が、カバー18の脚部側端部を貫通して長さ方向外方へ延び出して、マットレス10の外部で図示しないポンプや電源に接続されている。
また、延設ライン56は、図2に示すように、マットレス10の屈曲部55においてカバー18の傾動許容部54の上方に配置されており、延設ライン56の当該部分が支持面30側に配された屈曲中心部62とされて、屈曲中心部62がマットレス10の屈曲部55に対して幅方向外側に位置している。延設ライン56の屈曲中心部62は、カバー18の傾動許容部54と上部との間で上下に挟まれていると共に、カバー18の側部と端部クッション26との間で幅方向に挟まれており、カバー18および端部クッション26に対して位置決めされている。
また、延設ライン56における配索部58と屈曲中心部62の間には、変形許容部64が設けられている。変形許容部64は、頭部側支持体14および脚部側支持体16とカバー18に対して固定されることなく変形および変位を許容されている。配索部58がマットレス10の支持面30と反対側に配されていると共に、屈曲中心部62が頭部側支持体14および脚部側支持体16の間(屈曲部55)においてマットレス10の支持面30側に配されていることから、それら配索部58と屈曲中心部62を繋ぐ変形許容部64は屈曲部55から長さ方向外側へ行くに従って下傾するテーパ形状とされている。
さらに、延設ライン56の変形許容部64が長さ方向で十分に長く確保されていることによって、図2に示すように、延設ライン56の変形許容部64は、滑らかに湾曲する弛みをもって延びている。特に本実施形態では、ベッド12が背上げされていないマットレス10の非屈曲状態において、変形許容部64が屈曲中心部62の付近において支持面30側へ向けて凸形状となっていると共に、変形許容部64が配索部58の付近において支持面30側へ向けて開口する凹形状となっている。
そして、延設ライン56は、長さ方向の複数箇所において、制御装置36に接続されている。即ち、延設ライン56の配管が制御装置36のバルブ38を介してセル24の流体室28に接続されており、セル24の流体室28が延設ライン56の配管とバルブ38と末端ホース42を介して図示しないポンプに接続されている。一方、延設ライン56の電気配線が制御装置36のバルブ38およびコントローラ40に接続されており、図示しない電源からバルブ38およびコントローラ40に対して電気配線を介して電力が供給されている。
かくの如き構造とされたマットレス10は、図1に示すように、ベッド12上に敷設されて、使用者Aを載せるようになっている。ベッド12は、図4に示すように、使用者Aの上体を支える部分が下体を支える部分に対して相対的に傾動可能とされており、使用者Aの上体を横臥姿勢から起こす背上げ機構を備えている。このベッド12における使用者Aの上体を支える部分に対して、マットレス10の頭部側支持体14が重ね合わされて配設されると共に、ベッド12における使用者Aの下体を支える部分に対して、マットレス10の脚部側支持体16が重ね合わされて配設される。
そして、背上げ機構によってベッド12の上体を支える部分が下体を支える部分に対して相対傾動すると、図4に示すように、マットレス10の頭部側支持体14がベッド12に追従して、頭部側支持体14が脚部側支持体16に対して相対傾動するようになっている。これにより、マットレス10の支持面30上に寝ている使用者Aは、マットレス10の頭部側支持体14の傾動によって、大きな筋力を要することなく上体を起こした姿勢に移行することができる。
かかるベッド12の背上げに際して、マットレス10では、頭部側支持体14と脚部側支持体16の相対傾動による延設ライン56の引張りや折れ曲がりが防止されている。
すなわち、マットレス10がカバー18による頭部側支持体14と脚部側支持体16の連結部分でヒンジ状に屈曲可能とされていると共に、支持面30側に位置する延設ライン56の屈曲中心部62がマットレス10の屈曲中心に近接していることにより、マットレス10の屈曲に際して延設ライン56の引張りが防止されている。
さらに、延設ライン56における屈曲中心部62の長さ方向両側が、頭部側支持体14および脚部側支持体16とカバー18によって実質的に拘束されることなく変形可能とされた変形許容部64とされていることから、マットレス10の屈曲の程度に応じて変形許容部64が変形することで、延設ライン56の過度な折れが回避されている。
しかも、延設ライン56の変形許容部64が、背上げ前の状態において弛みを有して滑らかに湾曲していることから、延設ライン56の引張りがより一層低減されると共に、背上げによる延設ライン56の折れ曲がりが有利に回避される。
また、マットレス10は、図5に示すように、保管時などに屈曲部55で二つに折り畳んで長さを短くすることで、収容し易くすることが可能とされている。マットレス10では、延設ライン56の配索部58がマットレス10の支持面30と反対側に配されていると共に、支持面30が内側になるように折り畳まれるようになっていることから、折り畳まれたマットレス10において延設ライン56の変形許容部64が曲率の小さい緩やかな湾曲形状となる。これにより、マットレス10を二つ折りにしても、過度な折れや引張りによる延設ライン56の損傷などが回避されて、耐久性が確保される。なお、図1,4,5では、カバー18内に収容された部材(頭部側支持体14,脚部側支持体16,制御装置36,延設ライン56)が、カバー18の側部を透視して図示されている。
また、延設ライン56がマットレス10の屈曲部55から離れた配索部58において支持面30から離れて配されていることから、配管が使用者Aによって押し潰されて遮断されるのを防ぐことができると共に、電気配線が使用者Aから遠ざけられることによる安全性の向上などが図られる。更に、使用者Aの荷重が大きく作用し易い領域に配される延設ライン56の配索部58が、支持面30から離れてベッド12側に配されていることにより、配索部58が剛性の大きなベッド12で安定して支持されて、荷重入力によるマットレス10の変形が配索部58に及ぼす悪影響を低減することができる。
また、延設ライン56の配索部58が広い範囲で端部クッション26の配索空所57に配設されていることから、配索部58が支持面30と反対側へ簡単に位置決めされている。しかも、延設ライン56が端部クッション26よりも幅方向外方に配される範囲を狭くすることによって、使用者Aや図示しない介護者および看護者などが延設ライン56に意図せずに触れてしまうのを防いで、延設ライン56の耐久性や信頼性の向上が図られる。加えて、本実施形態では、配索部58の変形許容部64側の端部付近がバンド60によって拘束されていることから、配索部58が変形許容部64とともに変形乃至は変位するのを防いで、支持面30と反対側に位置決めすることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、延設ライン56は、カバー18に収容される部分の全体が端部クッション26よりも幅方向外方に配されていても良く、端部クッション26の配索空所57は必須ではない。
また、延設ライン56は、必ずしも配管(ホース)と電気配線の両方を備えるものに限定されず、例えば配管と電気配線の何れか一方で構成されていても良い。また、前記実施形態では、延設ライン56が、ポンプとバルブ38を繋ぐ配管と、電源と制御装置36を繋ぐ電気配線とを含んで構成されているが、配管や電気配線によって繋がれる対象は限定されるものではない。具体的には、例えば、制御装置36がマットレス10の外部に配されており、制御装置36のバルブ38とセル24の流体室28を繋ぐ配管と、制御装置36のコントローラ40と圧力分布センサ48を繋ぐ電気配線との少なくとも一方を含んで延設ライン56が構成されるようにしても良い。
また、使用者Aの膝部付近において脚部側支持体16が長さ方向に分割されており、脚部側支持体16が分割部分において支持面30側へ向けて凸となるように屈曲可能とされていても良い。この場合にも、延設ライン56が脚部側支持体16の当該分割部分において支持面30と反対側の屈曲中心に近接して配置されており、引張り荷重や折れ曲がりなどによる延設ライン56の損傷等が防止される。
また、セル24は上部袋体32と下部袋体34を備える二段構造に限定されるものではなく、一段構造であっても良いし、三段以上の複数段構造であっても良い。また、セル24の具体的な形状やサイズ、配設数などは、何れもマットレス10全体のサイズや要求される性能などに応じて適宜に変更され得る。
また、ポンプによってセル24の流体室28内の空気量を調節可能とされた能動制御型の流体セル式マットレス10を例示したが、本発明は、ポンプを用いることなく、荷重入力に対してセル24の流体室28間で流体の移動を許容する受動型の流体セル式マットレスに対しても、好適に適用され得る。