JP2017129473A - 測定システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラム - Google Patents

測定システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 簡易的な構成により物体の反射特性を測定する。【解決手段】 互いに位相の異なる周期関数で変調した照明用画像に基づいて発光する複数の点光源により、測定物を照明する照明手段と、前記照明用画像に基づいて照明された測定物を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影した複数の画像に基づいて、各画素の輝度値の変化における振幅情報を算出する第一の算出手段と、前記振幅情報から前記測定物の光沢写像性の2次元分布を取得する第一の取得手段と、を有する測定装置。【選択図】 図2

Description

本発明は、物体の光学特性を測定する技術に関する。
光源の照明方向や観察方向に応じて、表面の見え方が変化する物体がある。これは、物体の表面に照射した光の反射光が、照明方向や観察方向に応じて異なる特性をもつためである。そこで、このような物体の反射特性を測定する技術が広く知られている。特許文献1は、複数の角度の反射光を測定する方法について開示している。まず光源の位置に対応する所定領域内で受光部をスキャンし、受光量が最大となる正反射光の位置を特定する。そして、特定した正反射光の位置を基準として複数の測定位置を決定し、受光部を移動させて測光することで、測定対象物の反射特性を測定している。
特開2008−249521号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法によれば、受光部を複数の位置に設定するために、モータやアームなどの機構を必要とするため、複雑な構成となる。
そこで本発明は、光源や受光部の位置を移動させるための機構を必要とせず、より簡易的な構成により物体の反射特性を測定することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明における測定装置は、互いに位相の異なる周期関数で変調した照明用画像に基づいて発光する複数の点光源により、測定物を照明する照明手段と、前記照明用画像に基づいて照明された測定物を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影した複数の画像に基づいて、各画素の輝度値の変化における振幅情報を算出する第一の算出手段と、前記振幅情報から前記測定物の光沢写像性の2次元分布を取得する第一の取得手段と、を有する。
本発明によれば、簡易的な構成により物体の反射特性を測定することができる。
実施形態1の測定装置の外観を示す模式図。 実施形態1の情報処理装置の構成を示すブロック図。 実施形態1の処理を示すフローチャート。 実施形態1の照明用画像の一例を示す模式図。 点光源と受光素子の関係を説明する模式図。 実施形態1の照明装置および各点光源の変調情報と照明輝度の関係を示す模式図。 照明光と撮影装置で受光する反射光との関係を説明する模式図。 位相の異なる変調信号の合成を説明する模式図。 測定対象の一例を説明する模式図。 光沢写像性変換テーブルの一例を示す模式図。 実施形態1の撮影装置の光学系を示す模式図。 撮影画像の輝度値の変化と振幅情報の関係を示す模式図。 楕円による光沢異方性の表現を説明する模式図。 実施形態2の照明用画像の一例を示す模式図。 実施形態2の処理を示すフローチャート 変形例2の照明装置を説明する模式図。 変形例2のテップS301の詳細手順を示すフローチャート。 変形例2のステップS302の詳細手順を示すフローチャート。 変形例3の照明装置の概略構成を説明する模式図。 実施形態2の機能構成を示すブロック図。 反射モデルにおける反射光の構成を説明する模式図。 反射モデルにおける光沢写像性αの算出手順を示すフローチャート。 実施形態3の測定装置の外観を示す模式図。 実施形態3の照明用画像の一例を示す図。 撮影画像の輝度値の変化と位相情報およびバイアス情報の関係を示す模式図。 鏡面反射変換テーブルの一例を示す模式図。 実施形態3の処理を示すフローチャート。 位相情報Bの補正処理を示すフローチャート。 実施形態3の機能構成を示すブロック図。
本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
[実施形態1]
まず、物体の反射特性について説明する。図21は、物体の反射特性を説明する模式図である。図21(a)は、矢印の方向から点1701に向かって光を照射したときの反射特性を示し、点1701と曲線1702上の点1703とを結ぶ線分の長さが、点1701から点1703の方向に反射する反射光の強度分布を示す。物体の表面を反射した光は、図21(b)に示す拡散反射成分と、図21(c)に示す鏡面反射成分とに分離できる。拡散反射成分とは、入射光が測定面の内部で乱反射することで生じる成分であり、あらゆる方向において均一の強度で観察される。一方鏡面反射成分とは、入射光が測定面の表面で鏡面反射することで生じる光沢感に係る成分であり、特定の方向に偏った強度で観察される。以下では、鏡面反射成分の強度が最大となる反射方向を最大反射方向と呼ぶ鏡面反射成分の強度は、典型的には、反射方向に関して最大反射方向を対称の中心とする鐘状の分布を示す。
図9は、実施形態1が測定対象とする加飾印刷物の一例を示す模式図である。図9(a)に示す加飾印刷物1001は、光沢写像性の小さい領域1002と光沢写像性の大きい領域1003(斜線部)とで構成される。光沢写像性は、光沢のある物体において、写りこむ像の鮮明さに関わる指標である。物体の光沢写像性の値が大きい場合、物体に写り込む照明の像は鮮明に観察され、逆に光沢写像性の値が小さい場合、物体に写り込む照明の像はぼけて観察される。図9(b)の曲線1004は領域1002における反射特性を表す。また、図9(c)の曲線1005は領域1003における反射特性を表す。いずれの反射特性においても、点1007の方向から点1006に向かって光を照射した場合、点1006から点1009へ向かう方向が最大反射方向になる。しかし図9(b)および(c)では、最大反射方向近傍の反射光強度の分布形状が異なっている。
曲線1005の方が、曲線1004に比べて、鏡面反射成分の角度範囲が狭く、反射方向に対して強度変化が急峻である。そのため最大反射方向およびその近傍方向から観察すれば領域1002と領域1003は異なる明るさで観察される。一方、鏡面反射成分を含まない方向(最大反射方向から離れた方向)、例えば点1008から点1006を観察すると、領域1002と領域1003の明るさは一致する。その結果、加飾印刷物1001は、観察方向によって均一面に見えたり模様が見えたりする。このように光沢写像性は、物体の見え方に作用する。特に図9(a)に示すような印刷物を測定物とする場合、光沢写像性の2次元分布を測定することで特定の方向から観察した時の見え方を把握できる。そこで実施形態1では、光沢写像性の2次元分布を測定する。
ここで光沢写像性は、鏡面反射方向およびその近傍方向の反射光の強度変化に関する値であり、JIS K 7374、ASTM D5767などの規格で定義されている。なお、本発明の測定システムが出力する光沢写像性を示す指標は、上記の規格に基づく値に限らない。照明方向に対して鏡面反射となる方向およびその近傍方向の反射光の強度変化に関する特徴量の値が使用できる。例えば、反射強度が最大値の半値となる角度範囲でもよいし、反射方向に関する反射強度の微分値でもよい。また、コンピュータグラフィック(以下CGとも言う)の反射モデルでは、物体表面が微小面の集合で構成されると仮定し、この微小面の法線方向分布を関数で近似して光沢写像性を表現する。法線方向の関数としては、正規分布やベックマン分布、Trowbridge−Reitzの提案した分布などが使用される。これらの分布のパラメータも光沢写像性と見なすことが可能であり、本測定システムは、これらの分布のパラメータを出力する形態としてもよい。なお、分布のパラメータによっては、パラメータの値の大小と光沢写像性の大小が反対になることもあるが問題はない。また、光沢写像性は物体表面の平滑性とも相関がある。物体の表面が平滑である場合、光沢写像性は大きくなり、物体の表面が凸凹であれば光沢写像性は小さくなる。よって、表面の平滑性に関する値も光沢写像性とみなすことが可能である。従って本測定システムは、表面の平滑性を測定する装置としても使用できる。
(測定装置の概要)
図1に本実施形態の測定システムの外観を示す。測定システム100は、平面状の照明装置11と撮影装置12と操作パネル13と情報処理装置14を有する。本実施形態の測定システムは、操作パネル13を用いたユーザ操作に基づき、照明装置11により照明された測定物15を撮影装置12が撮影する。情報処理装置14は、撮影装置12が撮影して得られる撮影画像に基づいて、測定物15における光沢写像性の2次元分布を導出する。なお、以下の説明において、X、Y、Z座標の方向と、照明方向、受光方向、法線方向に係る方位角φと天頂角θの方向は、図1に示すように定義する。X、Y、Z座標の原点は、撮影装置12の光軸と、測定物15との交点とし、測定物15の表面をXY平面とする。
照明装置11は、面上に配置した複数の点光源を用いて、測定物15を照明する。各点光源は、独立して輝度値を制御可能であり、点灯と消灯だけでなく、中間的な輝度で発光する。本実施形態では、照明装置11は、測定物側に対応して設定されたフラットパネルのディスプレイを有する。この場合、後述する照明用画像に基づいて各画素の輝度値を設定し発光させることにより、ディスプレイにおける各画素が点光源として機能する。なおディスプレイは、モノクロディスプレイでもよい。
撮影装置12は、光を集光するレンズと、受光するセンサを有するデジタルカメラである。レンズは、両側テレセントリックレンズであり、受光方向に係るレンズの光軸方向は、方位角φoが0度、天頂角θoが45度とする。レンズは、測定物15の像をセンサ面に結像する。測定物15の表面に対してレンズの光軸が傾斜しているため、センサ面およびレンズは、公知のシャインプルーフの原理を満足する位置に設置されている。図11は、シャインプルーフの原理を満足する位置に設置された、レンズおよびセンサを含む撮影装置12の光学系を示す模式図である。測定物15の表面を反射した光は、第一レンズの主面122、絞り124、第二レンズの主面123の順に通過して、センサ面121に結像する。センサは、受光素子からなるCCDやCMOSなどの2次元センサである。センサにおける各受光素子は、受光した光の光量を電気信号に変換する。その結果、受光した光量に比例する画素値の画素からなる画像が生成される。
第1レンズおよび第2レンジはテレセントリックレンズであるため、主光線は光軸に変更いなる。測定物15における全ての測定点において、受光方向は一定となる。従って線sなが生成する画像の各画素は、測定面の表面における1点に対応づくことになる。なおセンサが生成する画像における画素値の階調数は、10bit、センササイズは2/3インチ、撮影解像度は、X方向、Y方向共に800dpiとする。撮影装置12は、測定物15を斜め方向から撮影するため、一般に撮影解像度はX方向とY方向で異なる。X方向とY方向の解像度を一致させる解像度変換処理は、撮影直後に行ってもよいし、後述する画像処理の後、測定結果を出力する前に実施してもよい。また、行わなくてもよい。
操作パネル13は、ここではタッチパネルを用いる。測定システムのユーザは、操作パネル13状のユーザインタフェースを介して各種測定条件の設定や測定開始の指示を行う。また、操作パネル13は、表示用ディスプレイとしても機能し、設定されている測定条件や測定結果を表示する。
情報処理装置14は、操作パネル13を介して入力されたユーザの指示に基づき、照明装置11と撮影装置12を制御して測定物15の撮影画像を取得する。また、情報処理装置14は、撮影画像に後述する演算処理を施し、光沢写像性の2次元分布を算出する。すなわち実施形態1において情報処理装置14は、照明制御手段、撮影制御手段、画像処理手段として機能する。情報処理装置14は、演算処理の処理経過や処理結果を操作パネル13や図示しない外部装置に出力する。
(測定方法の概要)
ここで、実施形態1における測定システム100が測定物15の反射特性を測定する方法について概要を説明する。図5は、光源と撮影装置12で受光する反射光との関係を示す図である。撮影装置12のセンサ上の画素Pは、測定物15上の測定点151の位置において反射した光を受光している。また、測定点151において、画素Pで受光する反射光と、点光源Lnからの照明光が鏡面反射の関係であり、測定物15は鏡のように鏡面性の高い物体とする。この場合、点光源Lnから照射される光の強度を図5(b)に示すように変調させると、画素Pの輝度値は、図5(b)と同様に図5(c)に示すような正弦波状に変化する。
実施形態1では、最大反射方向と、さらにその近傍方向から照明された反射光の特性を測定する。そのため実施形態1における照明装置11は、図6に示すように複数の位置に点光源を配置したディスプレイを有する。図6は、点光源として利用される照明装置11のディスプレイにおける各画素と撮影装置12の位置関係を説明する模式図であり、測定システム100のXZ断面を示す。点光源Lj{j:1,2,..8}それぞれは、照明装置11のディスプレイにおける画素に対応する。各点光源Ljは、測定物15における測定点151を異なる方向θjから照明する。測定点151において反射した反射光は、撮影装置12における画素Pにより受光される。なおここでは説明のため、ディスプレイには1列8個の画素からなる例を示している。ここで各点光源の強度は、互いに位相の異なる正弦波状に変調させる。図6(b)は、各点光源L1,L2、L6からの照射光の強度変調の一例を示す模式図である。点光源L1,L2、L6はいずれも正弦波状に変調した光を照射するが、変調の位相は点光源L1の位相を基準として互いに異なっている。図6(c)は、各点光源の位置(照明方向を示す天頂角)と位相の関係を示す。点光源L1の位相は、0度とする。つまり点光源L1の強度は、K1cosθ+K2で変調される。なおK1およびK2は照明装置11が制御可能な強度(輝度値)に応じて設定される定数である。同様に、点光源L2の位相は、45であり、点光源L2の強度は、K1cos(θ―45)+K2で変調される。点光源L6の位相は225度であり、点光源L2の強度は、K1cos(θ―225)+K2で変調される。
このように各点光源の強度を互いに位相の異なる正弦波状に変調させながら、撮影装置12が測定物15を動画撮影したとする。このとき撮影装置12のセンサにおける画素Pの受光強度は、測定物15の光沢写像性に応じて変調の振幅が変化する。測定物の光沢写像性が大きい場合、画素Pが受光する光は、特定の点光源で照射された光の反射光が支配的となる。図7は、照明光と受光される反射光の関係を示す模式図であり、図7(a)は光沢写像性の大きい測定物の場合を示す。測定物の光沢写像性が大きい場合、測定物表面での散乱は小さく、特定の方向から照射された光は特定の方向に反射する。図7(a)において、画素Pは、点光源Lnからの照射光の反射光のみを受光するものとする。この場合、光源Ln−1からの照射光は全て方向Rn−1に反射し、撮影装置12における画素Pでは受光されない。従って光沢写像性が高い場合、画素Pが受光する光強度は、図5(b)のように点光源Lnのみに依存し、点光源Lnの照射強度の変化に応じて線形に変化する。以下では、このような点光源Lnを画素Pの主光源と呼ぶ。
一方、測定物の表面が凸凹で光沢写像性が小さい場合、反射光は多方向へ散乱する。その結果、画素Pは主光源以外の点光源からの光も受光する。図7(b)は、光沢写像性の小さい測定物における、照明光と受光される反射光の関係を示す。図7(b)において光源Ln−1からの照明光は、方向Rn−1だけでなく、その近傍方向に反射する。よって、撮影装置12の画素Pは、点光源Lnからの照明光の反射光に加えて、点光源Ln−1からの照明光の反射光も受光する。その結果、画素Pが受光する反射光は、異なる方向からの光の反射光を合成したものとなる。なお、光沢写像性が異なっても鏡面反射成分の総反射強度(体積)は等しいとする。例えば、図7(a)に係る光沢写像性の大きい測定物の測定において画素Pが受光する反射光は、点光源Lnからの光のみで、受光強度は1であるとする。また、図7(b)に係る光沢写像性の小さい測定物の測定おいて画素Pが受光する反射光は、点光源Ln(主光源)、点光源Ln−1および点光源Ln+1からの光で、受光強度はそれぞれ0.8、0.1、0.1(合計すると1)とする。なお鏡面反射成分の総反射強度が等しい場合、光沢写像性が小さいほど主光源からの反射光が占める割合は小さくなる。
図8は、測定物の光沢写像性と画素Pが受光する光強度の関係を示す模式図であり、横軸は位相に対応づけられた時間、縦軸は光強度を示す。図8(a)は、各点光源の光強度を同じ位相の正弦波で変調させていると仮定したときの受光強度の変化を示す。曲線802は、図7(b)に係る光沢写像性の小さい測定物の測定における、点光源Lnで照射された光の反射光の強度変化を示す。曲線803は、同様に、点光源Ln−1およびLn+1で照射された光の反射光の強度変化を示す。また、曲線801は、図7(a)に係る写像性の大きい測定物の測定における、点光源Lnで照射された光の反射光の強度変化を示す。曲線802の光強度と曲線803の光強度の2倍を足し合わせると、曲線801に一致する。すなわち、画素Pの輝度の変化は測定物の光沢写像性によらず一定となる。しかしながら実施形態1では、光沢写像性(鏡面反射成分の広がり)を推定するため、それぞれの点光源の光強度を、位相を異ならせた正弦波状に変調させる。図8(b)と(c)は、各点光源の光強度を異なる位相の正弦波で変調させたときの受光強度の変化を示す。図8(b)の曲線804、805、806は、それぞれ、図7(b)に係る光沢写像性の小さい測定物の測定における、点光源Ln−1、Ln、Ln+1からの光の反射光の強度変化を示す。図8(c)の曲線807は、曲線804、805、806が示す各点光源からの反射光の合成光の強度変化を示す。光沢写像性が小さい場合の受光強度(曲線807)は、光沢写像性が大きい場合の受光強度(曲線801)よりも振幅が小さくなる。このように、各点光源の光強度を異なる位相で変調させると、測定物の光沢写像性に応じて画素の輝度変化の振幅が変化する。そこで実施形態1における測定システムは、画素Pの輝度変化における振幅を算出して、測定点151における光沢写像性(鏡面反射成分の広がり)を推定する。これにより、測定物15の光沢写像性の2次元分布を導出する。
(情報処理装置の構成)
ここで、照明装置11および撮影装置12の制御、画像処理を実行する情報処理装置14の構成について説明する。図2(a)は、情報処理装置14のハード構成を示す。マイクロプロセッサ(CPU)201は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリ202をワークメモリとする。また、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶部203やリードオンリメモリ(ROM)204に格納されたプログラムを実行し、システムバス205を介して照明装置11や撮影装置12を制御する。なお、記憶部203やROM204には、測定を実現するプログラムや各種データが格納されている。USB(Universal Serial Bus)などの汎用インターフェース(I/F)206には、操作パネル13や、USBメモリやメモリカードなどの記録メディア(コンピュータが読み取り可能な記録媒体)207などが接続される。また、操作パネル13は、ビデオカード(VC)208にも接続され、CPU201によって、ユーザインタフェース(UI)や、後述する画像処理の処理経過や処理結果を示す情報が表示される。照明装置11は、ビデオカードなどの照明インターフェース(I/F)209を介してシステムバス205に接続される。撮影装置12は、USBやカメラリンクなどのカメラインターフェース(I/F)210を介してシステムバス205に接続される。CPU201は、例えば、操作パネル13を介して入力されるユーザ指示に従いROM204、記憶部203または記録メディア207に格納されたアプリケーションプログラム(AP)や各種データをメインメモリ202の所定領域にロードする。そして、APを実行し、APに従い操作パネル13にUIを表示する。CPU201は、UIを用いて入力したユーザ指示に従って照明装置11と撮影装置12を制御して測定面15を撮影し、撮影画像データをメインメモリ202や記憶部203に格納する。さらに、CPU201は、APに従いメインメモリ202に格納した撮影画像データに所定の演算処理を施す。そして、CPU201は、ユーザ指示に従い演算処理結果を操作パネル13に表示したり、記憶部203や記録メディア207に格納したりする。また、CPU201は、システムバス205に接続された図示しないネットワークI/Fを介して、有線または無線ネットワーク上のコンピュータ装置やサーバ装置との間でプログラム、データ、演算処理結果および中間処理データの送受信を行うこともできる。
(情報処理装置14の機能構成)
図2(b)は、本実施形態における情報処理装置14の機能構成を示すブロック図である。図2(b)を用いて、情報処理装置14の詳細な機能構成について説明する。情報処理装置14は、デバイス制御部1501とデータ格納部1502、撮影画像補正部1503を備える。デバイス制御部1501は、照明装置11に照明用画像を転送し、照明装置11のディスプレイに照明用画像を表示させる。また、照明用画像に基づいて照明された測定物15を撮影装置12に撮影させ、撮影装置12から得られる撮影画像をデータ格納部1502に格納する。撮影画像補正部1503は、データ格納部1502に格納された撮影画像に対して所定の階調補正を実行する。
振幅分布取得部1504は、撮影画像補正部1503によって補正された補正画像に基づいて、補正画像における各画素の振幅分布を取得する。振幅分布とは、各画素における輝度値の変化特性における振幅を格納した画像である。これは、各画素が受光した光は、いくつの点光源からの反射光が合成した光であるかを特定するための情報である。光沢写像性変換テーブル格納部1506は、各画素の振幅を、光沢写像性を評価する値に変換するテーブルを保持する。光沢写像性分布取得部1505は、光沢写像性変換テーブルを参照して、振幅分布に基づいて、各画素の振幅を光沢写像性に変換し、光沢写像性の2次元分布を導出する。
出力部1507は、光沢写像性の2次元分布を出力する。あるいは、撮影画像や中間データである振幅分布などを出漁してもよい。
(照明装置11の制御について)
次に、照明装置11に表示させる照明用画像について説明する。ディスプレイにおける各点光源(画素)は、上述の通り互いに位相の異なる正弦波状に変調された光を照射する。各点光源を正弦波状に変調させながら撮影装置12が測定物15を測定すると、撮影装置12が生成する画像における各画素は、点光源と同様、正弦波状に輝度値が変化する。情報処理装置14は、各画素の輝度変化における正弦波の振幅により、各測定点の光沢写像性を導出する。正弦波の振幅を算出するためには、少なくとも1周期において3回の測定点が必要である。実施形態1では、4回測定する。図4は、照明用画像を説明する図である。図4(a)は、ディスプレイを示し、矩形は画素である。図4(b)〜(e)は、照明用画像を示す。4回の測定で各点光源が1周期分の変調された輝度になるように、4つの照明用画像を生成している。情報処理装置14は、照明装置11に図4(b)〜(e)に示す照明用画像を順に送信する。照明装置11は、受信した照明用画像に基づいてディスプレイの各画素の輝度値を制御する。情報処理装置14は、照明用画像を切り替えることにより照明装置11のディスプレイにおける各画素(点光源)を変調させる。
ディスプレイにおける各画素の輝度値Lは、ある位相δ(Xd)の正弦波状に変調させるため、式(1)によって表される。
L(Xd,Yd,Δi)=K1×cos(Δi−δ(Xd))+K2・・・(1)
ここで、XdとYdは、照明装置11のディsプレイにおけるX軸方向およびY軸方向の位置に係る画素番号である。また、Δiは変調情報、K1およびK2は定数、δは初期位相に係る位相分布関数を示す。定数K1および定数K2は、それぞれ、照明用画像のコントラストと平均輝度のパラメータである。照明用画像の各画素の画素値が8bit(256階調)である場合には、例えば、定数K1および定数K2は127である。位相分布関数δは、式(2)で与えられる。
δ(Xd)=K3×Xd・・・(2)
ここでK3は定数であり、例えば1である。式(2)の位相分布関数は、X方向の位置に応じて位相が決定されることを意味する。式(1)における変調情報Δiの添え字iの値は、輝度変調の番号を示す。輝度の切り替え数(照明用画像の数)がn個の場合、iは1からnの値をとる。本実施形態ではn=4であり、1周期分の位相を4分割するため(Δ1,Δ2,Δ3,Δ4)=(0度,90度,180度,270度)となる。なお、図4はX方向に並ぶ点光源を互いの異なる位相となるように設定したが、位相を異ならせる方向はX方向に限らない。例えば、Y方向において各点光源を互いに異なる位相となるように設定しもよい。この場合、上記の式(1)および式(2)におけるδ(Xd)のXdは、Ydに置き換えられる。
(測定手順)
図3は、本実施形態の情報処理装置14が実行する測定手順を示すフローチャートである。ステップS302〜ステップS309は、情報処理装置14が有するCPUが以降に説明するフローチャートを実行するプログラムを読み出し、実行することにより実現する。
まず、ステップS301においてデバイス制御部1501は、図4(b)〜(e)に示す各照明用画像を順に照明装置11に転送し、表示させる。照明装置11が測定物15を照明する度、撮影装置12に測定物15を撮影させる。ここでは測定の結果、4つの撮影画像を取得する。照明装置11と測定物15および撮影装置12の位置関係は、照明用画像を切り替えても一定に保つ。データ格納部1502は、取得した撮影画像を記憶する。撮影画像補正部1503は、各撮影画像に対して所定の階調補正を実行する。
ステップS302において振幅分布取得部1504は、各撮影画像の画素値に対応する振幅を算出する。まず振幅分布取得部1504は、撮影画像における各画素の輝度値の変化を算出する。図12は、撮影画像におけるある画素の輝度値の変化を算出した結果の一例を示す図である。横軸は、撮影タイミングに対応する照明用画像の変調情報、縦軸は輝度値である。振幅分布取得部1504は、4つの撮影画像における処理対象画素の輝度値をプロットする。この測定結果は正弦波状に変化するので、4つのプロット点を式(1)の正弦波に近似する。ここでは、次の式(3)から式(5)を用いて測定結果を近似した正弦波を算出する。
ss(Xc,Yc)=Σ(Ii(Xc,Yc)×sin(Δi))・・・(3)
sc(Xc,Yc)=Σ(Ii(Xc,Yc)×cos(Δi))・・・(4)
ここで、XcおよびYcは、撮影画像の画素番号を示す。またΔiはi番目の変調情報、Iiはi番目の輝度変調の照明用画像で照明したときの撮影画像の輝度値を示す。式(3)と式(4)のΣは、添え字iに関する総和を求める。フィッティングした正弦波の振幅の値Aを振幅情報として算出する。
A(Xc,Yc)=(ss(Xc,Yc)^2+sc(Xc,Yc)^2)^(1/2)・・・(5)
振幅分布算出部1504は、全ての画素(Xc,Yc)について振幅情報を算出すると、各画素に振幅情報を格納した画像を振幅分布として出力する。
ステップS303において光沢写像性分布取得部1505は、振幅分布において測定物15の光沢写像性の2次元分布を取得する。光沢写像性の2次元分布は、撮影画像の各画素(Xc,Yc)に対応する光沢写像性の値Sを保持する画像である。各画素の光沢写像性の値Sは、あらかじめ作成しておいた光沢写像性変換テーブルを参照して算出する。図10は、光沢写像性変換テーブルの一例を示す模式図である。図10に示すように、光沢写像性変換テーブルは、離散的な振幅情報Aに対応する光沢写像性Sを記述したテーブルである。任意の振幅情報の値に対応する光沢写像性の値は、公知の補間方法を利用して計算される。また、光沢写像性変換テーブルは、光沢写像性が既知の測定物を測定することで作成し、光沢写像性変換テーブル格納部1506に格納しておく。なお、上述したように、光沢写像性を表す指標には種類がある。より好適には、複数の光沢写像性の指標に対応する光沢写像性変換テーブルを備えておき、ユーザの指示に応じて光沢写像性変換テーブルを切り替える構成とするとよい。例えば、JIS K 7374の規格に係る数値を光沢写像性の指標として振幅を変換する光沢写像性変換テーブルと、反射モデルの正規分布のパラメータをこ光沢写像性の指標として振幅を変換する光沢写像性変換テーブルを用意しておく。
ステップS304において出力部1507は、ステップS303で求めた測定物15の光沢写像性の2次元分布を出力して終了する。なお、出力項目は、撮影画像や振幅分布などの中間処理データを含んでもよい。
以上の通り、本実施形態では照明装置11の複数の点光源に互いの異なる正弦波状に変調させながら同時に発光させ、測定物15を照明する。撮影装置12は、各点光源の変調1周期分のうち複数回、測定物15を撮影し撮影画像を得る。撮影画像における各画素の輝度値は、点光源と同様に、正弦波状に変化する。さらに、各画素の輝度変化における正弦波の振幅は、測定物15の光沢写像性に対応づけることができる。そこで各画素の輝度変化における正弦波の振幅を用いて、測定物15の光沢写像性を推定する。特に前述の実施形態では、位相の異なる光量に変調させて各点光源を同時に発光させるので、1つ1つの点光源を順に発光させながらその都度測定物15を測定する方法に比べて大幅に時間を短縮できる。また、少なくとも3回異なる照明用画像のタイミングで撮影するだけで、各画素の輝度変化を検出できる。これにより撮影画像を保存するメモリ容量や、演算に係る時間を短縮することもできる。前述では、1周期分の位相を4回に分けて撮影した場合を例に説明したが、3回の場合は、変調情報iΔは、(Δ1,Δ2,Δ3)=(0度,120度,240度)と設定するとよい。ただし、照明用画像の切り替え(撮影回数)は多いほど、撮影画像に含まれるノイズの影響を抑制できる。そのため照明用画像の切り替え(撮影回数)は、ユーザによる測定精度などを考慮して設定することが望ましい。
なお、複数の点光源として用いるディスプレイは、表示可能な最大輝度と最初輝度の比である輝度コントラストが高く、輝度の時間変動が小さく、ディスプレイ内における各画素の輝度のムラが少ない方が、各点光源を識別しやすく望ましい。また、複数の点光源は密に配置され、連続的に位相をずらして各点光源に発光させることが望ましい。そのため実施形態1ではディスプレイを測定物15の照明に用いた。ディスプレイを用いる場合、ディスプレイの解像度は、点光源の配置密度でもあり、測定精度に関わる。また、ディスプレイのサイズは、撮影装置12が測定する測定面15における全ての測定点に対し、鏡面反射成分(最大反射方向からの反射光)を受光できることを考慮して設計されていることが望ましい。
なお、以上の説明では、全ての画素で振幅情報の値を求めた後に、光沢写像性の値を求める構成を説明したが、1画素毎に光沢写像性の値まで計算するように構成してもよいし、n画素毎に光沢写像性の値まで計算するように構成してもよい。
[変形例1]
実施形態1では、撮影画像の各画素の輝度値の変化を三角関数にフィッティングすることで振幅情報の値を計算する例を説明したが、変形例1では、最大輝度値と最小輝度値から振幅情報を計算する例について説明する。なお、実施形態1と同じ構成については、詳細な説明を省略する。変形例1の測定手順は、ステップS302の処理が実施形態1と異なる。変形例1のステップS302では、各画素の振幅情報Aは、次の式(6)で算出する。
A(Xc,Yc)=Max(Ii(Xc,Yc))−Min(Ii(Xc,Yc))・・・(6)
すなわち、振幅情報Aは、異なる照明用画像で撮影した輝度値Iiの最大値と最小値の差とする。また、変形例1の機能構成は、振幅分布取得部1504が実施形態1と異なる。変形例1の振幅分布取得部1504は、撮影画像補正部1503で補正された補正画像に基づいて上記の変形例1のステップS302の処理を行って振幅分布を取得する。すなわち、補正画像の各画素の輝度値から上記式(6)によって振幅分布の各画素の振幅情報の値を計算する。
変形例1は、三角関数にフィッティングする代わりに最大値と最小値を利用して振幅情報を計算する。これによって、複数の撮影画像の各画素の輝度変化を三角関数に近似する演算が不要となり、処理を高速化できる。
[変形例2]
実施形態1では、照明装置に面光源のディスプレイを利用する例を説明したが、変形例2ではライン光源を利用する例について説明する。なお、実施形態1と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
(照明装置)
図16は、変形例2の照明装置を説明する模式図である。図16に示すように、Xd方向に点光源を配したライン光源1801は、Yd方向に移動可能に構成されている。そこで変形例2では、実施形態1の照明装置11が照明する範囲と同じ範囲を照明するように、ライン光源をYd方向に操作しながら分割して照明する。なお、ライン光源の配置は、この例に限らない。例えば、Yd方向に点光源を配したライン光源をXd方向に移動可能に構成してもよい。ライン光源1801の各画素は、実施形態1と同様に、式(1)で与えられる輝度で発光する。
(測定手順)
変形例2は、ステップS301およびステップS302の処理が実施形態1と異なる。図17は、変形例2における測定手順ステップS301の詳細手順を示す説明するフローチャートである。まず、ステップS1901において、ライン光源の走査位置を指定する定数Cに0を設定する。次に、ステップS1902において、ライン光源をYd=Cの位置に移動する。次に、ステップS1903において、照明装置11に照明用画像を順に表示して、各照明用画像を表示したときの測定面15を撮影装置12で撮影する。表示する照明用画像は、実施形態1の照明用画像におけるYd=Cの位置のラインパターンである。次に、ステップS1904において、全ての走査位置Ydでの撮影が完了したか判断する。全ての走査位置における撮影が完了した場合は、終了する。他の場合は、ステップS1905に進む。ステップS1905では、定数Cをインクリメントして、次のライン光源の走査位置Ydを設定し、ステップS1902に戻る。この工程によって、「輝度変調の照明用画像数×ライン光源の走査位置の数」の個数の撮影画像が取得される。
図18は、変形例2における測定手順ステップS302の詳細手順を示すフローチャートである。まず、ステップS2001において、測定面15の振幅分布を取得する。変形例2では、ライン光源の走査位置毎に実施形態1のステップS302の処理を行い、ライン光源の走査位置の数の振幅分布を取得する。次に、ステップS2002において、測定面15の最大振幅分布を取得する。最大振幅分布は、ステップS2001で求めた振幅分布群の同じ画素位置における画素値(振幅情報)を比較し、最大の振幅情報を選択した画像である。変形例2では、実施形態1の振幅分布の代わりに、この最大振幅分布を使用する。
(機能構成)
変形例2は、デバイス制御部1501と振幅分布取得部1504が実施形態1と異なる。変形例2におけるデバイス制御部1501は、上述した変形例2の測定手順のステップS301の処理を行う。すなわち、ライン光源の各走査位置で、照明装置11に各照明用画像を表示して撮影装置12で測定面15を撮影する。そして、ライン光源の走査位置の数と照明用画像数の積に一致する数の撮影画像を取得する。変形例2における振幅分布取得部1504は、上述した変形例2の測定手順のステップS302の処理を行う。
以上説明したように、本変形例の測定装置は、面光源の代わりにムラや輝度安定性に優れるライン光源を利用する。これによって、アピアランスに係る光沢写像性の2次元分布を高精度に取得できる。
[変形例3]
実施形態1では、照明装置に面光源のディスプレイを利用する例を説明したが、変形例3ではプロジェクタとスクリーンを利用する構成について説明する。なお、実施形態1と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
(照明装置)
図19は、変形例3の照明装置を説明する模式図である。変形例3の照明装置11は、プロジェクタ2101と、裏面照射型の透過タイプのスクリーン2102からなる。なお、スクリーンは透過タイプに限らず反射タイプであってもよい。不図示の測定面15は、スクリーン2102に対してプロジェクタ2101の反対側にあり、スクリーン2102を透過した光によって照明される。本変形例では、このスクリーン2102の面上の点を点光源として利用する。スクリーン2102の面上の点は、プロジェクタ2101に入力する画像の画素に対応し、入力する画像の画素値に応じて、任意の中間レベルの輝度で発光する。スクリーン2102は、測定面15と平行に設置する。また、プロジェクタ2101は、入力する画像の画素番号を(Xp,Yp)とするとき、Ypの値が等しい画素に対応するスクリーン2102の面上の点が直線を構成し、その方向が測定装置のX軸方向と平行になるように設置する。同様に、Xpの値が等しい画素に対応するスクリーン2102の面上の点が直線を構成し、その方向が測定装置のY軸方向と平行になるように設置する。この場合、プロジェクタ2101に入力する画像の画素番号(Xp,Yp)を実施形態1の照明装置の画素番号(Xd,Yd)として、実施形態1と同じ処理で光沢写像性の2次元分布を取得できる。すなわち、実施形態1の説明におけるXdをXp、YdをYpに置き換えればよい。または、座標変換によって、プロジェクタに入力する画像の画素番号(Xp,Yp)と測定装置のX軸とY軸に対応した座標系を相互に変換してもよい。この場合、当該座標系による画素番号を実施例1の照明装置の画素番号(Xd,Yd)とすればよい。
以上説明したように、本変形例の測定装置は、ディスプレイの代わりに大型化が容易なプロジェクタを利用する。測定時のみスクリーンを設置する構成にすれば、使用しないときはコンパクトで、かつ、大きいサイズの測定が可能な測定装置が実現できる。
[実施形態2]
実施形態2は、光沢異方性の2次元分布を測定する構成について説明する。なお、実施形態1と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
(光沢異方性)
平面体の表面も微視的に見れば、多数の微小面の集合と見なすことができる。この微小面の法線方向が特定の方向に偏って分布する平面は、その法線を軸にして回転させたとき、照明方向と受光方向を固定していても観察される光量が変化する。このような平面は、異方性反射特性を表す面、または光沢異方性を表す面と呼ばれる。例えば、ヘアーライン加工された金属や、織目が規則的な凹凸構造を持つサテン刺繍などは、光沢異方性を表す。また近年、加飾印刷では、表面に微細な凹凸構造を形成して光沢異方性を発現させ、意匠性を向上させる技術が提案されている。これらの反射特性の品質管理のため、光沢異方性の簡易測定が求められている。
(測定対象)
光沢異方性を表す面は、微小面法線の方向のばらつきが、方位角によって変化する。また、微小面法線の方向のばらつきは、光沢写像性に対応する。例えば、JIS K 7374に基づく光沢写像性の値は、微小面法線の方向のばらつきが大きいほど値が小さくなる。すなわち、光沢異方性を表す面は、光沢写像性の値が方位角によって変化する。典型的には、光沢写像性が最も大きい方位角と、光沢写像性が最も小さい方位角が直交し、その間の方位角において光沢写像性は滑らかに変化する。この様な光沢異方性の特性は、楕円を使用したモデルで近似表現される。この楕円モデルによれば、光沢写像性が最大となる方位角を楕円の長軸方向とし、この方位角方向の光沢写像性の値を楕円の長軸の長さ、当該方位角に直交する方向の光沢写像性の値を楕円の短軸の長さに対応付ける。この時、任意の方位角φの方向の光沢写像性の値は、上記の楕円と、この楕円の中心を通る方位角φの直線との2つの交点を結ぶ線分の長さに対応付けられる。図13は、上記の楕円モデルによる光沢異方性の表現を説明する模式図である。楕円1401は、光沢写像性が最大となる方位角がφuであり、この方位角方向の光沢写像性の値がαu、φuに直交する方向の光沢写像性の値がαvの光沢異方性を表す。任意の方位角φの方向の光沢写像性は、線分abの長さに対応した値で与えられる。本実施形態の測定器は、上記楕円モデルのパラメータの2次元分布を測定する。すなわち、光沢写像性が最大となる方位角φuの値と、方位角φu方向の光沢写像性の値αuと、φuに直交する方向の光沢写像性の値αvの3つの値の2次元分布を測定する。
(照明用画像)
次に、照明装置11に表示する照明用画像について説明する。照明用画像は、実施形態1と同様に、周期関数で多階調に変調した輝度情報を画素毎に保持する画像であり、各画素の輝度Lは上記の式(1)で与えられる。ただし、光沢異方性の測定では、実施形態1と異なり、縞の方向の異なる3つのグループのパターンを使用する。そのため位相δ(Xd)は、Xd方向のみではなく、Yd方向にも依存し、位相δ(Xd、Yd)となる。これによって、方位角の異なる3つの光沢写像性を取得し、この3つの光沢写像性から上記方位角φuと上記楕円の長軸および短軸の長さに相当する光沢写像性の値を取得する。各グループの縞の方向は、例えば、X軸に直交する方向と、X軸と平行の方向と、X軸と−45度を成す方向である。これらの縞パターンで照明することで、それぞれ、方位角0度、方位角90度、方位角45度の光沢写像性を取得する。以下、この順で第一グループ、第二グループ、第三グループと呼ぶ。第一グループの照明用画像の位相分関数δは、上記の式(2)で与えられる。第二グループおよび第三グループの照明用画像の位相分布関数δは、それぞれ、次の式(7)および式(8)で与えられる。
δ(Xd,Yd)=K4×Yd・・・(7)
δ(Xd,Yd)=K5×(Xd/(2^0.5)−Yd/(2^0.5))・・・(8)
ここで、K4およびK5は定数であり、例えば1である。各グループとも輝度変調のための最少照明用画像数は3パターンであり、3グループ合わせて最少9パターンで光沢異方性を測定する。図14は、輝度変調のパターン数n=4のときの照明用画像の例を示す模式図である。図14(a)は、照明装置11と照明用画像の位置関係を示す。また、図14(b)乃至図14(e)は第一グループの照明用画像、図14(f)乃至図14(i)は第二グループの照明用画像、図14(j)乃至図14(m)は第三グループの照明用画像を示す。
(測定手順)
図15は、本実施形態の測定手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1701において、上述した実施形態2の照明用画像を照明装置11に表示して測定面15を撮影し、撮影画像を取得する。照明装置11と測定面15および撮影装置12の位置関係は、照明用画像を切り替えても一定に保つ。また、撮影装置12で撮影した画像データは、照明ムラやカメラの暗電流ノイズを補正し、画素値が受光量に比例するように補正する。
次に、ステップS1702において、測定面15の振幅分布を取得する。実施形態2では、照明用画像のグループ毎に実施形態1のステップS302の処理を行い、3つの振幅分布を取得する。次に、ステップS1703において、測定面15の光沢写像性の2次元分布を取得する。実施形態2では、照明用画像のグループ毎に実施形態1のステップS303の処理を行い、光沢写像性の2次元分布を3つ取得する。第一、第二、第三のグループの光沢写像性分布は、それぞれ、方位角0度、90度、45度の光沢写像性分布である。
次に、ステップS1704において、光沢異方性を表すパラメータの2次元分布を取得する。上述したように、光沢異方性を表すパラメータは、光沢写像性が最大となる方位角φuと、方位角φu方向の光沢写像性の値αuと、φuに直交する方向の光沢写像性の値αvの3つである。φuとαu、αvの値は、次の式(9)乃至式(11)で与えられる。
φu=arctan(P3/(P1−P2))/2・・・(9)
αu=1/(((P1+P2)−((P1−P2)^2+P3^2)^0.5)/2)^0.5・・・(10)
αv=1/(((P1+P2)+((P1−P2)^2+P3^2)^0.5)/2)^0.5・・・(11)
ただし、P1、P2、P3の値は、次の式(12)乃至式(14)による。
P1=−4xS90^2/P4・・・(12)
P2=−4xS0^2/P4 ・・・(13)
P3=−4x(S0^2+S90^2−2xS45^2)/P4・・・(14)
ただし、P4の値は、次の式(15)による。
P4=(S0^2+2*S0*S90+S90^2−2×S45^2)×(S0^2−2xS0xS90+S90^2−2×S45^2)・・・(15)
ここで、S0、S90、S45は、それぞれ、方位角0度、90度、45度の光沢写像性の値であり、ステップS1703で取得した光沢写像性分布の画素の値である。画素毎に、上記式(9)乃至式(11)を計算してφu、αu、αvの2次元分布を求める。
次に、ステップS1705において、光沢異方性分布画像を生成する。光沢異方性分布画像は、光沢異方性の2次元分布を表すカラー画像であり、各画素の色は、ステップS1704で求めたφu、αu、αvの2次元分布における対応する画素の値に基づいて決定する。例えば、光沢異方性分布画像の画素(Xc,Yc)の色の色相角hと彩度C*は、次の式(16)および式(17)で計算される値とする。
h(Xc,Yc)=φn(Xc,Yc)x2・・・(16)
C*(Xc,Yc)=Kc×(αu(Xc,Yc)−αv(Xc,Yc))・・・(17)
ここで、Kcは定数であり、φn(Xc,Yc)、αu(Xc,Yc)、αv(Xc,Yc)の値は、φu、αu、αvの2次元分布における画素(Xc,Yc)の値である。明度L*の値は中間値の50とするか、または、sRGBの色域において、各色相で彩度C*が最大となる明度の値とする。光沢異方性分布画像は、好適には、sRGBの値を保持する汎用的なカラー画像である。この画像は、公知の方法によって、上記のL*、h、C*が示す色に対応するsRGBの値を計算することで生成される。
次に、ステップS1706において、各種測定結果を出力して終了する。出力項目は、光沢異方性分布画像、光沢異方性パラメータであるφu、αu、αvの2次元分布の他、方位角0度、90度、45度の光沢写像性分布、振幅分布、撮影画像などの中間データを含んでもよい。
(機能構成)
図20は、本実施形態における測定装置100の機能構成を示すブロック図である。図21を用いて、情報処理装置14の行う処理について説明する。情報処理装置14は、デバイス制御部2201とデータ格納部2202、撮影画像補正部1503を備える。デバイス制御部2201および撮影画像補正部2203は、上述した測定手順のステップS1701の処理を行う。すなわち、デバイス制御部1701は、上述した実施形態2の照明用画像を照明装置11に表示して撮影装置12で測定面15を撮影する。そして、撮影した画像データを撮影装置12から入力してデータ格納部2202に格納する。撮影画像補正部2203は、データ格納部2202に格納された撮影画像データの階調補正を行う。また、情報処理装置14は、振幅分布取得部2204、光沢写像性分布取得部2205、光沢写像性変換テーブル格納部1506を備える。振幅分布取得部2204は、撮影画像補正部2203で補正された補正画像に基づいて上述した測定手順のステップS1702の処理を行って振幅分布を取得する。光沢写像性分布取得部2205は、振幅分布取得部2204で取得した振幅分布に基づいて上述した測定手順のステップS1703の処理を行って、光沢写像性の2次元分布を取得する。詳細には、光沢写像性変換テーブル格納部1506に格納された光沢写像性変換テーブルを参照し、公知の補間方法によって、振幅分布の各画素が保持する振幅情報の値を光沢写像性の値に変換する。また、情報処理装置14は、光沢異方性パラメータ取得部2206、光沢異方性分布画像生成部2207を備える。光沢異方性パラメータ取得部2206は、光沢写像性分布取得部2205で取得した光沢写像性分布に基づいて上述した測定手順のステップS1704の処理を行って光沢異方性を表すパラメータの2次元分布を取得する。光沢異方性分布画像生成部2207は、光沢異方性パラメータ取得部2206で取得した光沢異方性を表すパラメータの2次元分布に基づいて、上述した測定手順のステップS1705の処理を行って光沢異方性分布画像を生成する。また、情報処理装置14は、出力部2208を備える。出力部2208は、上述した測定手順のステップS1706の処理を行う。すなわち、ユーザの指示に基づき、光沢異方性分布画像、光沢異方性パラメータであるφu、αu、αvの2次元分布などの処理結果やその他の中間データを出力する。なお、以上の説明では、各機能構成の説明において、全ての画素の処理が完了して分布画像を取得または生成した後に、次の処理に移る構成を説明したが、1画素毎に処理するように構成してもよいし、複数画素毎に処理するように構成してもよい。
以上説明したように、本実施形態の測定装置によれば、最少9つの撮影画像からアピアランスに係る光沢異方性の2次元分布を測定できる。その結果、より多数の撮影が必要な従来法と比較して、短時間に物体のアピアランスが測定できる。
[実施形態3]
実施形態3は、BRDFの2次元分布であるSVBRDF(Spatially Varying BRDF)に係る反射モデルのパラメータを測定する構成について説明する。なお、上記実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。BRDFは、照明方向ωi(θi,φi)および観察方向ωo(θo,φo)の4次元の関数であり、物体表面に任意の方向から光が入射したとき、各方向へどれだけの光が反射されるのかを表す。SVBRDFは、上記のBRDFの4変数に位置変数Pxy(X,Y)を加えた6次元の関数である。次元数が大きいため、各変数を密に標本化すると大量のデータになり、測定には長い時間を要する。また、SVBRDFは、ノイズの影響を受けやすい微小な光量を検出する必要があるため難しい。一方、BRDFを少ないパラメータで表現する反射モデルが多数提案されている。このパラメータの2次元分布を測定すれば、反射モデルで近似したSVBRDFが得られる。本実施形態の測定装置は、反射モデルのパラメータを測定する。SVBRDFが得られると、任意の条件で照明し、任意の方向で観察したときの測定物の見え方を予測できる。その結果、メタリック塗装や加飾印刷の効果を実際のサンプルを使うことなくCGで確認できるようになる。
ここで、本実施形態の測定システムが算出するBRDFの反射モデルについて説明する。この反射モデルによれば、本測定装置が測定するパラメータを用いて、任意の照明条件および観察方向で観察される反射光が推定できる。本反射モデルは、次の式(18)で示すように、反射光Iを拡散反射成分Idと鏡面反射成分Isとの和で表現する。
I=Id+Is・・・(18)
図21は、拡散反射成分と鏡面反射成分を説明する模式図である。拡散反射成分は、入射光が測定面の内部で乱反射することで生じる成分であり、あらゆる方向において均一の強度で観察されると仮定する。Lambertのモデルを使用する本反射モデルでは、反射光の拡散反射成分Idは、次の式(19)によって与えられる。
Id(X,Y,θi,φi)=Rd(X,Y)×Ein(θi,φi)×cos(θi)・・・(19)
ここで、Einは照明光の強度である。Rdは、拡散反射成分の反射率(以下、拡散反射率と呼ぶ)であり、例えば、測定面に対して0度から照明し、45度で受光したときの輝度値Id_smpと、同じ条件で取得した基準拡散反射面からの輝度値Id_stdとの比率である。また、照明を消灯または遮光して撮影したときの輝度値Id_bkを用いて黒レベルを補正し、基準拡散反射面の0度照明45度受光における拡散反射率の値Cal_Rd045を用いてスケーリングする。この場合、拡散反射率Rdは、次の式(20)で与えられる。
Rd(X,Y)=(Id_smp(X,Y)−Id_bk(X,Y))/Id_std(X,Y)×Cal_Rd045・・・(20)
基準拡散反射面としては、硫酸バリウム粉末やPTFE粉末の圧着面が利用できる。また、好適には、Cal_Rd045の値は公的な計量機関で値付けされた値を使用する。
鏡面反射成分は、入射光が測定面の表面で反射することで生じる成分である。鏡面反射成分は、鏡面反射方向およびその近傍方向において大きな強度が観察される。Torrance−Sparrowのモデルを改変した本反射モデルでは、反射光の鏡面反射成分は、次の式(21)で与えられる。
Is(X,Y,θi,φi,θo,φo)=F(X,Y,θi)xD(X,Y,θi,φi,θo,φo)×Ein/cos(θo)・・・(21)
ここで、Einは照明光の強度、Fはフレネル反射を表す関数、Dは光沢写像性を表す関数である。フレネル反射は、入射光または反射光の方向によって反射率が変化し、天頂角が90度に近づくほど反射率が大きくなる現象である。関数Fは、次の式(22)で与えられる。
F(X,Y,θi,φi)=1−(1−Rs(X,Y))×W(θi,φi)・・・(22)
Rsは本測定装置で測定される鏡面反射率である。この反射率は、次の式(23)で与えられる天頂角θmにおける反射率である。
θm=arccos(V・Nv)・・・(23)
ここで、Vは受光方向を示すベクトルであり、本測定装置では天頂角45度、方位角0度である。また、Nvは本測定装置で測定される光学的法線方向を示すベクトルである。光学的法線方向は、入射光の方向と、受光される反射光の強度が最も大きくなる受光方向との組み合わせから推定される仮想的な面法線の方向である。この定義は、入射光の方向と受光方向を逆にしても成り立つ。すなわち、光学的法線方向は、受光方向と、受光される反射光の強度が最も大きくなる入射光の方向との組み合わせから推定される仮想的な面法線の方向である。なお、記号・はベクトルの内積を示し、θmはVとNvの成す角度である。
また、上記の式(22)のWは、測定される天頂角θmのフレネル反射の反射率と、照明方向ωi(θi,φi)と光学的法線方向Nvとの成す角度θvのフレネル反射の反射率との比であり、次の式(24)で与えられる。
W=(1−cos(θv))^5/(1−cos(θm))^5・・・(24)
ここで、θvは次の式(25)による。
θv=arccos(ωi・Nv)・・・(25)
ただし、ωiは照明方向を示すベクトルである。
上記の式(21)のDは、光沢写像性に係る微小面の法線分布を表す。Torrance−Sparrowの反射モデルでは、物体表面が完全な鏡面反射を生じる微小面の集合で構成されると仮定し、この微小面の法線方向の分布に基づいて各方向への散乱を表現する。本反射モデルは、この法線方向の分布を表現する関数に次の式(26)で与えられるTrowbridge−Reitzによって提案された分布モデルを使用する。
D=(α^2/(cos(θg)^2×(α^2−1)+1))^2・・・(26)
ここで、αは分布形状に関するパラメータであり、測定される光沢写像性を示す。αは1以下の値をとり、値が小さいほど大きな光沢写像性を示す。光沢写像性αの値は、実施形態2と同様に楕円モデルで表し、光沢異方性を表現する。本実施形態の測定装置は、光沢写像性が最大となる方位角φuと、方位角φu方向の光沢写像性αuとφuに直交する方向の光沢写像性αvを測定する。照明方向ωi、観察方向ωoにおける光沢写像性αは、上記のパラメータφu、αu、αvを用いて算出される。図23は、光沢写像性αの算出手順を示すフローチャートである。まず、ステップS2401において、照明方向を示すベクトルωiと観察方向を示すベクトルωoの2等分方向であるハーフベクトルHvを次の式(27)で算出する。
Hv=(ωi+ωo)/|ωi+ωo|・・・(27)
ここで、|ωi+ωo|は、ベクトル(ωi+ωo)の大きさを表す。
次に、ステップS2402において、ハーフベクトルHvの方位角成分φhを次の式(28)で算出する。
φh=arctan(Hv_y/Hv_x)・・・(28)
ただし、Hv_xおよびHv_yは、それぞれ、ベクトルHvのX成分およびY成分である。
次に、ステップS2403において、方位角φhに対応する光沢写像性αを次の式(29)で算出する。
α=(αwxαv)/(αv^2×(cos(φh))^2+αu^2×(sin(φh))^2)^0.5・・・(29)
上記の式(26)のθgは、ハーフベクトルHvと光学的法線方向を示すベクトルNvの成す角度であり、次の式(30)で与えられる。
θg=arccos(Hv・Nv)・・・(30)
以上説明したように、本反射モデルによれば、任意の照明方向および観察方向において観察される反射光の強度が、本測定装置で測定されるパラメータRd、Rs、φu、αu、αvおよびNvから算出できる。また、複数方向から照明されたときの反射光は、各照明方向の光に関する反射光の足し合わせによって求めることができる。よって、任意の照明条件で観察される反射光が算出できる。
(測定装置の構成)
図23に本実施形態の測定装置の外観を示す。測定装置2500は、実施形態1の構成に加えて、拡散反射率を測定するための照明装置2501を備える。照明装置2501は、測定面を天頂角0度方向から平行光で照明する。照明光源は、LED、ハロゲン、キセノンなどが利用できる。演色性が高く、明るく、輝度の時間変動が小さく、面内ムラの小さい光源が好適である。撮影装置12は、実施形態1と同じ構成である。照明装置11で照明した測定面15に加えて、照明装置2501で照明した測定面15を撮影する。照明装置11で照明して撮影するときは、照明装置2501は消灯するか遮光し、照明装置2501で照明して撮影するときは、照明装置11は消灯するか遮光する。また、照明装置11と照明装置2501の両方を消灯または遮光した状態でも撮影する。なお、以下では、照明装置11で照明して撮影した撮影画像を拡散反射撮影画像、照明装置2501で照明して撮影した撮影画像を鏡面反射撮影画像と言う。また、両者とも消灯もしくは遮光して撮影した画像データを黒レベル撮影画像と言う。本実施形態の情報処理装置14は、照明装置11と撮影装置12に加えて、上記照明装置2401を制御して測定面15の撮影画像を取得する。また、情報処理装置14は、撮影画像に後述する演算処理を施し、上述した反射モデルのパラメータを算出する。そして、演算処理の処理経過や処理結果を操作パネル13や図示しない外部装置に出力する。
(照明用画像)
照明装置2501は、全面均一な照明であり、パターンを表示しない。照明装置11に表示する照明用画像は、実施形態2で使用した、縞の方向が異なる3つのグループの照明用画像を使用する。
(測定方法の概要)
拡散反射率Rdは、照明装置2501で照明して撮影した測定面15の撮影画像に基づいて、上記の式(20)で算出する。また、光沢異方性に関するパラメータφu、αu、αvは、実施形態2と同様にして求める。ただし、光沢写像性の値には、上記式(26)のαの値を利用する。光沢写像性変換テーブルには、離散的な振幅情報Aに対応するαの値を記述する。
次に、光学的法線方向Nvの測定原理を説明する。図24は、光学的法線方向の測定原理を説明する模式図である。図24(a)において、2601は測定面15の面上の点、2602および2603は、それぞれ、点2601に関する受光方向および光学的法線方向を示す。また、2604は、光学的法線方向2603に関して受光方向2602と鏡面反射の関係となる照明方向を示し、2605は、この照明方向に対応する点光源を示す。また、点2601に対応する撮影画像の画素を2606(不図示)とする。受光方向2602は、測定装置の構成で決まる既知の情報である。また、撮影装置12は測定面15に焦点を合わせているため、撮影画像の画素と測定面15の面上の点は一対一に対応付られる。よって、画素2606の座標から点2601のXYZ座標が取得できる。ここで、仮に点光源2605のXYZ座標(Xill,Yill,Zill)が分かれば、点2601のXYZ座標(Xsmp,Ysmp,Zsmp)から照明方向2604(Xvi,Yvi,Zvi)が次の式(31)から式(33)で算出できる。
Xvi=(Xill−Xsmp)/norm・・・(31)
Yvi=(Xill−Xsmp)/norm・・・(32)
Zvi=(Zill−Zsmp)/norm・・・(33)
ただし、normは次の式(37)による。
norm=((Xill−Xsmp)^2+(Xill−Xsmp)^2+(Zill−Zsmp)^2)^0.5・・・(34)
このとき、光学的法線方向2603(Xvn,Yvn,Zvn)は、照明方向2604(Xvi,Yvi,Zvi)と受光方向2602(Xvc,Yvc,Zvc)から次の式(35)から式(36)で求められる。
Xvn=(Xvi+Xvc)/(2×norm)・・・(35)
Yvn=(Yvi+Yvc)/(2×norm)・・・(36)
Zvn=(Zvi+Zvc)/(2×norm)・・・(37)
ただし、normは次の式(38)による。
norm=(((Xvi+Xvc)/2)^2+((Yvi+Yvc)/2)^2+((Zvi+Zvc)/2)^2)^0.5・・(38)
本測定装置は、点光源2605のXYZ座標を画素2606の輝度変化の位相情報から求める。図25は、撮影画像の輝度値の変化を示す模式図である。図25の横軸は、照明用画像の変調情報、縦軸は対応する照明用画像で撮影したときの撮影画像の輝度値を示す。プロット点は、輝度変調のパターン数n=4のときの撮影画像の輝度値Ii{i:1,2,..n}を示し、曲線2701は、このプロット点を上記の式(1)の正弦波にフィッティングした結果を示す。位相情報Bは、フィッティングした正弦波の位相の値である。位相情報Bは、次の式(39)から式(42)で与えられる。
0≦ssかつ0≦scのとき、
B=arctan(ss/sc)・・・(39)
0≦ssかつsc<0のとき、
B=arctan(ss/sc)+180度・・・(40)
ss<0かつsc<0のとき、
B=arctan(ss/sc)+180度・・・(41)
ss<0かつ0≦scのとき、
B=arctan(ss/sc)+360度・・・(42)
ただし、ssおよびscの値は、次の式(43)、式(44)による。
ss=Σ(Iixsin(Δi))・・・(43)
sc=Σ(Iixcos(Δi))・・・(44)
ここで、Σは、添え字iに関する総和を求める記号である。式(39)から式(42)で計算した位相情報Bの値は、0度から360度の範囲であり、式(2)、式(7)および式(8)のδがこの範囲外の値を含む場合は、必要に応じて位相情報Bを補正する。詳細は、後述する。
図24(b)乃至(e)は、照明装置11に表示する照明用画像を示し、四角で囲った位置が点光源2605を示す。点光源2605の輝度値は、照明用画像によって変化する。このとき、点光源2605からの鏡面反射光を受光する画素2606の輝度値は、点光源2605の輝度値の変化に同期して変化する。よって、画素2606の輝度変化の位相は、点光源2605の輝度変化の位相と一致する。図24(b)乃至(e)の照明用画像は、Xd方向に位相δが変化したパターンであり、このパターンで照明した撮影画像から求めた位相情報Bの値Bxは、点光源2605のXd方向の画素番号Xdxに対応する位相δxに一致する。よって、Bxから点光源2605のXd方向の画素番号Xd’が求められる。同様に、図24(f)乃至(i)の照明用画像は、Yd方向に位相δが変化したパターンであり、このパターンで照明した撮影画像から求めた位相情報Bの値Byは、点光源2605のYd方向の画素番号Yd’に対応する位相δyに一致する。よって、Byから点光源2605のYd方向の画素番号Yd’が求められる。点光源の画素番号(Xd’,Yd’)が分かれば、測定装置の構成から、点光源2605のXYZ座標(Xill,Yil,Zill)が求められる。
次に、鏡面反射率Rsの測定原理を説明する。図25においてバイアス情報Cは、撮影画像の輝度値を正弦波にフィッティングしたときのバイアスの値である。バイアス情報Cは、次の式(45)で算出する。
C=Σ(Ii)・・・(45)
ここで、Σは、添え字iに関する総和を求める。バイアス情報Cは、鏡面反射方向周辺の反射光強度の平均値を示す。バイアス情報Cに対応する反射光には、拡散反射成分も含まれる。拡散反射成分を減じたバイアス情報Csは、測定面のバイアス情報CをCsmp、基準拡散反射面のバイアス情報CをCstd、測定面の拡散反射率RdをRd_smpとすると、次の式(46)で与えられる。
Cs=Csmp−Cstd×Rd_smp/Cal_R045・・・(46)
ただし、Cal_R045は、基準拡散反射面の0度照明45度受光における反射率である。
鏡面反射成分は、微小面の法線分布に基づいて鏡面反射方向周辺に分布し、求める鏡面反射率Rsは、分布の中心である鏡面反射方向の反射光に関係する。ここで、鏡面反射成分の分布形状は、上述した関数Dで与えられる。よって、関数Dを全ての反射方向について積分して平均値Daveを求めれば、この値と、関数Dの鏡面反射方向の値Dsとの比から、鏡面反射方向の反射光に対応するバイアス情報Csdが次の式(47)で与えられる。
Csd=Cs×Ds/Dave・・・(47)
関数Dが上記の式(26)で与えられるとき、Dsの値は1である。一方、αuとαvの値に依存するDaveの値は、離散的なαuとαvの値に対応するDaveの値を記述した鏡面反射変換テーブルを用意しておき、この変換テーブルを参照して公知の補間法によって計算する。図26は、鏡面反射変換テーブルの一例を示す。鏡面反射変換テーブルは、上記の式(26)に基づいて、あらかじめ作成しておく。鏡面反射率Rsの値は、測定面のCsdの値と、基準鏡面反射面のバイアス情報Cの値Cstd_sと、基準鏡面反射面の45度方向のフレネル反射率の値Cal_Rs45から次の式(48)で算出する。
Rs=Csd/Cstd_s×Cal_Rs45・・・(48)
基準鏡面反射面としては、光学ガラスBK7の黒色研磨ガラスが利用できる。好適には、Cal_Rs_45の値は公的な計量機関で値付けされた値を使用する。
(測定手順)
図27(a)は、本実施形態の測定手順を示すフローチャートである。まず、ステップS2901において測定装置の校正を行う。ここで校正とは、上述した基準面のデータおよび黒レベルを取得する処理を指す。この工程では、上記の黒レベル撮影画像、基準拡散反射面の拡散反射撮影画像、および、基準拡散反射面と基準鏡面反射面のバイアス分布を取得する。詳細は、後述する。
次に、ステップS2902において、測定面の撮影を行う。上述したように、本測定装置では、照明装置2501で照明した撮影と、照明装置11に第一グループ、第二グループ、第三グループの各照明用画像を表示した撮影を行う。すなわち、必要な最少撮影数は第2の実施形態と同じ9つである。ステップS2903において、測定面の振幅分布を取得する。振幅分布は、撮影画像の各画素に対応する振幅情報Aの値を格納した画像である。実施形態3では、実施形態2と同様にして、照明用画像のグループ毎に実施形態1のステップS302の処理を行い、3つの振幅分布を取得する。
次に、ステップS2904において、測定面の位相分布を取得する。位相分布は、撮影画像の各画素に対応する位相情報Bの値を格納した画像である。照明装置11に第一グループと第二グループの照明用画像を表示して撮影した撮影画像について、グループ毎に処理を行い、2つの位相分布を取得する。各画素の位相情報Bは、撮影画像の各画素の輝度値Iiと変調の情報Δiとから、上記の式(39)から式(42)で算出する。ステップS2905において、測定面のバイアス分布を取得する。バイアス分布は、撮影画像の各画素に対応するバイアス情報Cの値を格納した画像である。照明装置11に第一グループの照明用画像を表示して撮影した撮影画像について処理を行い、1つのバイアス分布を取得する。各画素のバイアス情報Cは、撮影画像の各画素の輝度値Iiから、上記の式(45)で算出する。
ステップS2906において、拡散反射率Rdの2次元分布を取得する。Rdの値は、上記の式(20)で算出する。式(20)において、Id_smpはステップS2902で取得した拡散反射画像の画素値、Id_bkおよびId_stdはステップS2901で取得した黒レベル撮影画像と基準拡散反射面の拡散反射撮影画像の画素値である。ステップS2907において、光学的法線方向Nvの2次元分布を取得する。光学的法線方向Nvは、天頂角θnと方位角φnで構成される。この工程で取得する2次元分布は、各画素にθnとφnの値を格納する画像である。図27(d)は、ステップS2907の詳細手順を説明するフローチャートである。まず、ステップS3101において、ステップS2904で求めた位相分布から、反射光の位相情報Bが照明光の位相δに一致する照明装置11の点光源(画素)の画素番号(Xd,Yd)を求める。撮影画像の各画素(Xc,Yc)に対応する照明装置11の点光源の画素番号は、式(2)および式(7)に基づき、次の式(49)および式(50)により与えられる。
Xd(Xc,Yc)=B(Xc,Yc)/K3・・・(49)
Yd(Xc,Yc)=B(Xc,Yc)/K4・・・(50)
式(49)および式(50)で計算される点光源の画素番号(Xd,Yd)は、一般に、整数に限らない。すなわち、本測定装置によれば、照明装置の画素密度よりも高い分解能で光学的法線方向を求めることができる。
次に、ステップS3102において、ステップS3101で求めた照明装置11の点光源の画素番号(Xd,Yd)に対応するXYZ座標(Xill,Yill,Zill)を求める。XYZ座標(Xill,Yill,Zill)は、次の式(51)から式(53)で与えられる。
Xill=Kill_11×Xd+Kill_13・・・(51)
Yill=Kill_22×Yd+Kill_23・・・(52)
Zill=Kill_33 ・・・(53)
ここで、Kill_11およびKill_22は、照明装置11の画素サイズに係る定数、Kill_13およびKill_23は、照明装置11の設置位置に係る定数、Kill_33は照明装置11と測定面15との距離に関する定数である。
次に、ステップS3103において、撮影画像の各画素に対応する測定面15の面上の点のXYZ座標(Xsmp,Ysmp,Zsmp)を求める。XYZ座標(Xsmp,Ysmp,Zsmp)は、次の式(54)から式(56)で与えられる。
Xsmp=Kcam_11×Xc+Kcam_13・・・(54)
Ysmp=Kcam_22×Yc+Kcam_23・・・(55)
Zsmp=0 ・・・(56)
Kcam_11およびKcam_22は撮影装置12の解像度に係る定数、Kcam_13およびKcam_23は、撮影装置12の解像度とセンサの画素数に係る定数である。ステップS3104において、照明方向ベクトル(Xvi,Yvi,Zvi)を求める。照明方向ベクトルは、上記の式(31)から式(33)で算出する。次に、ステップS3105において、光学的法線方向Nvの2次元分布を取得する。光学的法線方向を示す単位ベクトル(Xvn,Yvn,Zvn)は、ステップS3104で求めた照明方向ベクトルと受光方向ベクトル(Xvc,Yvc,Zvc)とから、上記の式(35)から式(37)で算出する。ただし、天頂角45度、方位角0度の受光方向ベクトル(Xvc,Yvc,Zvc)は、次の式(57)から式(59)で与えられる。
Xvc=1/√2・・・(57)
Yvc=0 ・・・(58)
Zvc=1/√2・・・(59)
光沢的法線方向の天頂角θnと方位角φnの値は、ベクトル(Xvn,Yvn,Zvn)から次の式(60)および式(61)で与えられる。
φn=arctan(Yvn/Xvn)・・・(60)
θn=arctan(Zvc/((Xvn^2+Ync^2)^0.5))・・・(61)
なお、光学的法線方向は、方位角と天頂角で表現する代わりに、ベクトルのX成分、Y成分、Z成分で表現しても構わない。この場合、光学的法線方向の2次元分布は、各画素にXvn、Yvn、Zvnの値を格納する画像である。このような画像データは、コンピュータグラフィックスのテクスチャデータである法線マップとして使用される。この場合、例えば、次の式(62)から式(64)によって、ベクトルのX成分とY成分の値(−1から1の範囲)をそれぞれ、R信号およびG信号の0から255に対応づけ、Z成分の値(0から1の範囲)をB信号の0から255に対応づける。
R=(Xvn+1)/2x255・・・(62)
G=(Yvn+1)/2x255・・・(63)
G=Zvnx255 ・・・(64)
図27(a)の測定手順の説明に戻る。次に、ステップS2908において、光沢異方性を表すパラメータの2次元分布を取得する。この工程では、ステップS2903で求めた振幅分布に基づいて、実施形態2のステップS1703の処理を行い、φu、αu、αvの2次元分布を求める。
次に、ステップS2909において、鏡面反射率Rsの2次元分布を取得する。図27(c)は、ステップS2909の詳細手順を説明するフローチャートである。まず、ステップS3201において、拡散反射成分を減じたバイアス情報Csの2次元分布を求める。Csの値は、上記の式(46)で算出する。式(46)において、CsmpはステップS2905で取得したバイアス分布の画素値、CstdはステップS2901で取得した基準拡散反射面のバイアス分布の画素値である。また、Rd_smpはステップS2906で取得した拡散反射率Rdの2次元分布の画素値である。ステップS3202において、関数Dの全ての反射方向の平均値Daveの2次元分布を求める。Daveの値は、上述した鏡面反射変換テーブルを参照して、ステップS2908で取得した異方性パラメータαu、αvの2次元分布の画素値から、公知の補間方法によって算出する。
ステップS3203において、鏡面反射方向の反射光に対応するバイアス情報Csdの2次元分布を求める。Csdの値は、上記の式(47)で算出する。式(47)において、CsはステップS3201で求めたCsの2次元分布の画素値であり、Dsの値は1であり、DaveはステップS3202で求めたDaveの2次元分布の画素値である。ステップS3204において、鏡面反射率Rsの2次元分布を求める。Rsの値は、上記の式(48)で算出する。式(48)において、CsdはステップS3203で求めたCsdの2次元分布の画素値、Cstd_sはステップS2901で取得した基準鏡面反射面のバイアス分布の画素値である。
図27(a)の測定手順の説明に戻る。最後に、ステップS2910において、ユーザの指示に基づいて、各種測定結果を出力して終了する。出力項目は、反射モデルのパラメータRd,Rs,Nv,φu,αu,αvの2次元分布の他、受光方向を示すベクトルVや、振幅情報分布、位相情報分布、バイアス情報分布、撮影画像などの中間データを含んでもよい。
次に、ステップS2901の校正の処理手順について説明する。図27(b)は、校正の処理手順を示すフローチャートである。まず、ステップS3001において、基準拡散反射面を照明装置2501で照明して撮影し、拡散反射撮影画像を取得する。ステップS3002において、照明装置11に第一グループの照明用画像を表示して基準拡散反射面を撮影する。ステップS3003において、照明装置11に第一グループの照明用画像を表示して基準鏡面反射面を撮影する。
ステップS3004において、照明装置11と照明装置2501を両方とも消灯または遮光した状態で撮影し、黒レベル撮影画像を取得する。ステップS3005において、基準拡散反射面のバイアス分布を取得する。バイアス分布は、上述したステップS2905の処理を行って取得する。ステップS3006において、基準鏡面反射面のバイアス分布を取得する。バイアス分布は、上述したステップS2905の処理を行って取得する。 校正処理に必要な最少の撮影数は、基準拡散反射面の拡散反射撮影画像の撮影に1、第一グループの照明用画像の撮影に3、基準鏡面反射面の第一グループの照明用画像の撮影に3、黒レベル撮影画像の撮影に1の合計8つである。すなわち、本測定装置によれば、測定面の撮影と合わせて、最少17の撮影画像からSVBRDFが取得できる。
次に、ステップS2904で求めた位相情報Bの補正手順について説明する。上述したように、式(39)から式(42)で計算した位相情報Bの値は、0度から360度の範囲であり、真の位相を360で割った余りである。よって、式(2)および式(7)のδがこの範囲外の値を含む場合は、位相情報Bを補正する。補正の原理は、次の通り。撮影画像の各画素が受光する受光方向と鏡面反射の関係となる、照明装置11の点光源(画素)の位置POSは、光学的法線方向によって変化する。しかし、光学的法線方向は測定面の法線方向周辺に分布する。よって、上記点光源は、光学的法線方向が測定面の法線に一致するときの点光源の周辺に存在すると想定される。よって、求めた位相情報Bの値が、光学的法線方向が測定面の法線に一致するときの上記点光源POSの位相に対して、±180度の範囲に入るまで、Bに360度を繰り返し加える。
図28は、位相情報Bの補正手順を説明するフローチャートである。まず、ステップS3301において、撮影画像の画素毎に、光学的法線方向が測定面の法線に一致するときの上記点光源POSの画素番号(Xd,Yd)を求める。この画素番号(Xd,Yd)は、次の式(65)および式(66)によって与えられる。
Xd(Xc,Yc)=(Kcam_11×Xc+Kcam_13−Kill_33−Kill_13)/Kill_11・・・(65)
Yd(Xc,Yc)=(Kcam_22×Yc+Kcam_23−Kill_23)/Kill_22・・・(66)
次に、ステップS3302において、式(65)および式(66)で求めたXdおよびYdを式(2)および式(7)に代入して、基準位相Psを求める。
次に、ステップS3303において、B+180度の値と、Psの値を比較する。前者が後者より小さい場合は、ステップS3304に進み、他の場合は、補正後の位相としてBを出力して処理を終了する。ステップS3304では、Bに360度を加えてステップS3303に戻る。
(機能構成)
図29は、本実施形態における測定装置2500の機能構成を示すブロック図である。図29を用いて、情報処理装置14の行う処理について説明する。情報処理装置14は、デバイス制御部3401とデータ格納部3402を備える。デバイス制御部3401は、測定手順のステップS2901およびステップS2902の処理を行う。すなわち、拡散反射測定用の照明装置2501と、鏡面反射測定用の照明装置11と、撮影装置12を制御して一連の撮影を行い、撮影した画像データを撮影装置12から入力してデータ格納部3402に格納する。また、情報処理装置14は、位相情報取得部3403、振幅情報取得部3404、バイアス情報取得部3405、拡散反射情報取得部3406を備える。位相情報取得部3403は、データ格納部3402に格納された第一グループおよび第二グループの照明用画像で照明された測定面の撮影画像に測定手順のステップS2904の処理を行って位相分布を取得する。振幅情報取得部3404は、データ格納部3402に格納された第一グループ乃至第三グループの照明用画像で照明された測定面の撮影画像に測定手順のステップS2903の処理を行って振幅分布を取得する。バイアス情報取得部3405は、データ格納部3402に格納された第一グループの照明用画像で照明された基準拡散反射面の撮影画像に校正手順のステップS3005の処理を行ってバイアス分布を取得し、校正データ格納部3413に格納する。また、データ格納部3402に格納された第一グループの照明用画像で照明された基準鏡面反射面の撮影画像に校正手順のステップS3006の処理を行ってバイアス分布を取得し、校正データ格納部3413に格納する。また、データ格納部3402に格納された第一グループの照明用画像で照明された測定面の撮影画像に測定手順のステップS2905の処理を行ってバイアス分布を取得する。拡散反射情報取得部3406は、データ格納部3402に格納された照明装置2501で照明された測定面の撮影画像に上述した測定手順のステップS2906の処理を行って拡散反射率Rdの2次元分布を取得する。また、情報処理装置14は、光学的法線方向取得部3407、光沢異方性パラメータ取得部3408、光沢写像性変換テーブル格納部3411を備える。光学的法線方向取得部3407は、位相情報取得部3403が取得した位相分布に測定手順のステップS2907の処理を行って光学的法線方向Nvの2次元分布を取得する。光沢異方性パラメータ取得部3408は、振幅情報取得部3404が取得した振幅分布に測定手順のステップS2908の処理を行って光沢異方性パラメータφu、αu、αvの2次元分布を取得する。このとき、光沢写像性変換テーブル格納部3411が格納する光沢写像性変換テーブルを参照する。また、情報処理装置14は、鏡面反射率分布取得部3409と鏡面反射変換テーブル格納部3412を備える。鏡面反射率分布取得部3409は、次のデータを使用して測定手順のステップS2909の処理を行って鏡面反射率Rsの2次元分布を取得する。鏡面反射率分布取得部3409は、校正データ格納部に格納された基準拡散反射面のバイアス分布と、基準鏡面反射面のバイアス分布を使用して鏡面反射率Rsの2次元分布を取得する。また、鏡面反射率分布取得部3409は、拡散反射情報取得部3406が取得した拡散反射率Rdの2次元分布と、光沢異方性パラメータ取得部3408が取得した光沢異方性パラメータαu、αvの2次元分布を使用して鏡面反射率Rsの2次元分布を取得する。また、鏡面反射率分布取得部3409は、バイアス情報取得部3405が取得した測定面のバイアス分布を使用して鏡面反射率Rsの2次元分布を取得する。さらに、鏡面反射率分布取得部3409は、鏡面反射率Rsの2次元分布を取得する処理において、鏡面反射変換テーブル格納部3412に格納される鏡面反射変換テーブルを参照する。また、情報処理装置14は、出力部3410を備える。出力部3410は、測定手順のステップS2910の処理を行う。すなわち、ユーザの指示に基づき、測定結果である反射モデルのパラメータRd,Rs,Nv,φu,αu,αvの2次元分布やその他の中間データを出力する。なお、以上の説明では、3403乃至3410の各機能構成の説明において、全ての画素の処理が完了して分布画像を取得した後に、次の処理に移る構成を説明したが、1画素毎に処理するように構成してもよいし、複数画素毎に処理するように構成してもよい。
以上説明したように、本実施形態の測定装置によれば、最少17の撮影画像からSVBRDが取得できる。
[その他の実施形態]
上記の実施形態では、照明装置として、平面または直線上に点光源を配置した例について説明したが、点光源は曲面や曲線上に配置してもよい。また、平面や直線上に点光源を配置する場合であっても、当該平面や直線は、測定面に平行でなくてもよい。この場合、照明装置の形状の自由度が広くなり、測定装置を小型化することができる。また、照明装置の光源は、モノクロでもよいしRGBカラーでもよい。さらに、マルチバンドカラーまたは分光光源でもよい。RGBカラーやマルチバンドカラー、分光光源の照明装置を使用した場合は、光沢写像性を色毎に取得できる。撮影装置は、モノクロカメラでもよいし、RGBカラーカメラでも良い。さらに、マルチバンドカメラでもよいし、分光カメラでもよい。照明装置の場合と同様に、RGBカラーカメラやマルチバンドカメラ、分光カメラを使用した場合は、光沢写像性を色毎に取得できる。また、撮影装置は、CCDやCMOSなどの2次元センサに限らず、ラインセンサを備えたものでもよい。レンズもテレセントリックレンズに限らないし、シャインプルーフ条件を満たすレンズでなくてもよい。例えば、広角レンズを使用し、光軸が測定面の法線方向と平行になるように設置し、光軸中心から外れた測定面をセンサ面に結像する構成でもよい。照明用画像は、正弦波パターンに限らない。例えば、三角波でもよい。また、照明用画像の縞の方向は、実施形態の例に限らず、他の方向でも構わない。また、異方性の方位角として光沢写像性が最大となる方位角を出力する例について説明したが、これに限らず、例えば、光沢写像性が最小となる方位角を出力する構成でもよい。また、光沢異方性の特徴を楕円モデルのパラメータで表す例について説明したが、これに限らず、例えば、多方向の方位角の光沢写像性で表すようにしてもよい。この場合、例えば、照明用画像の縞の方向を15度間隔にして24グループの照明用画像を用いれば、24方位角の光沢写像性が測定できる。また、測定装置は、測定結果や処理の中間データをネットワークI/Fを介して、インターネット上のサーバに登録するように構成してもよい。
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、システム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路によっても実現可能である。

Claims (10)

  1. 互いに位相の異なる周期関数で変調した照明用画像に基づいて発光する複数の点光源により、測定物を照明する照明手段と、
    前記照明用画像に基づいて照明された測定物を撮影する撮影手段と、
    前記撮影手段で撮影した複数の画像に基づいて、各画素の輝度値の変化における振幅情報を算出する第一の算出手段と、
    前記振幅情報から前記測定物の光沢写像性の2次元分布を取得する第一の取得手段と、
    を有する測定装置。
  2. 前記第一の算出手段は、前記複数の画像における各画素の輝度値の変化を、前記照明手段に用いられる周期関数に近似し、該近似した周期関数における振幅を算出することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
  3. 前記第一の取得手段は、前記振幅情報に基づいて、各画素が測定する測定点における光沢写像性に関わるパラメータに変換することを特徴とする請求項1または2に記載の測定装置。
  4. 前記照明手段は、平面に複数の点光源を備える面光源であり、前記複数の照明用画像を切り替えて表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の測定装置。
  5. 前記複数の照明用画像は、各画素位置における輝度値が前記周期関数に沿って変調するように生成され、前記複数の照明用画像はそれぞれ周期のあるパターンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定装置。
  6. 前記照明手段は、ディスプレイを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の測定装置。
  7. さらに、前記複数の光沢写像性の2次元分布から、光沢異方性を表すパラメータの2次元分布を取得する第二の取得手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の測定装置。
  8. さらに、前記光沢異方性を表すパラメータの2次元分布から、光沢写像性が最大または最小となる方位角と、当該方位角と当該方位角に直交する方位角における光沢写像性に応じたカラー画像である光沢異方性の分布画像を取得する第三の取得手段を有することを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
  9. コンピュータに読み込ませ実行させることで、前記コンピュータを請求項1乃至8の何れか一項に記載された測定装置として機能させることを特徴とするプログラム。
  10. 互いに位相の異なる周期関数で変調した照明用画像に基づいて発光する複数の点光源により、測定物を照明し、
    前記照明用画像に基づいて照明された測定物を撮影し、
    前記撮影した複数の画像に基づいて、各画素の輝度値の変化における振幅情報を算出し、
    前記振幅情報から前記測定物の光沢写像性の2次元分布を取得することを特徴とする測定方法。
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