JP2017123320A - 気圧補正を行う荷電粒子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】荷電粒子顕微鏡を用いる方法は、試料ホルダH上に試料を供する段階、試料へ照射するようにビーム源から照射体を介するように荷電粒子ビームCを案内する段階、照射に応じて試料から放出される放射線束を検出するために検出器を用いる段階、を有する。特に、顕微鏡に気圧センサBを供する段階、気圧センサBからの圧力測定信号を自動制御装置へ供する段階、制御装置に制御処理への入力として信号を用いさせることで、信号に基づいてビームC及び試料ホルダHの相対的な位置の誤差を補償する段階、を有する。
【選択図】図4B
Description
より詳細には以下の通りである。
− SEMでは、試料への走査電子ビームの照射が、2次電子、後方散乱電子、X線、及びフォトルミネッセンス(赤外、可視、及び/又は紫外の光子)として、試料からの「補助」放射線の放出を引き起こす。続いてこの放出放射線束の1つ以上の成分が、画像蓄積目的及び/又は(たとえばEDX(エネルギー分散X線分光)の場合には)分光解析で検出及び利用される。
− TEMでは、試料への照射に用いられる電子ビームは、試料(この目的のため、一般的にはSEM用試料の場合よりも薄くなる)へ侵入するのに十分高いエネルギーとなるように選ばれる。よって試料から放出される透過電子束は、画像の生成に用いられて良い。係るTEMが走査モード(よってSTEMとなる)で動作する場合、問題となる画像は、照射電子ビームの走査運動中に蓄積される。
http://en.wikipedia.org/wiki/Electron_microscope
http://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_electron_microscope
http://en.wikipedia.org/wiki/Transmission_electron_microscopy
http://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_transmission_electron_microscopy
照射ビームとして電子ビームを用いる代わりとして、荷電粒子顕微鏡観察もまた、他の種類の荷電粒子を用いて実行されて良い。この点では、「荷電粒子」という語句は、たとえば電子、正イオン(たとえばGaイオン又はHeイオン)、負イオン、陽子、及び陽電子を含むものとして広義に解釈されなければならない。イオン系顕微鏡に関しては、さらなる情報は、たとえば以下のリンクと非特許文献1から収集することができる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_Helium_Ion_Microscope
撮像に加えて、荷電粒子顕微鏡はまた、他の機能−たとえば分光の実行、ディフラクトグラムの検査、(局在化した)表面改質(たとえばミリング、エッチング、堆積)等の実行−をも有して良いことに留意して欲しい。
− 放射線源(たとえばショットキー電子源若しくはイオン銃)
− 照射体。線源からの「生の」放射線ビームを操作し、かつ、その放射線に対してある作用−集束、収差の緩和、(アパーチャによる)トリミング、フィルタリング等−を実行するように機能する。照射体は一般的に、1つ以上の(荷電粒子)レンズを有し、かつ、他の種類の(粒子)光学部品をも有して良い。望ましい場合には、照射体には、調査中の試料にわたる走査運動を出力ビームに実行させることのできる偏向器システムが供されて良い。
− 上に調査中の試料が保持及び位置設定(たとえば傾斜、回転)され得る試料ホルダ。望ましい場合には、このホルダは、試料に対するビームの走査運動を実現するように動かされて良い。一般的には、係る試料ホルダは、たとえば機械ステージのような位置設定システムに接続される。
− (被照射試料から放出される放射線を検出する)検出器。前記検出器は、単体であって良いし又は事実上複合体/分配されても良く、かつ、検出される放射線に依存して多くの異なる形態をとって良い。例には、光電子増倍管(固体光電子増倍管SSPMを含む)、フォトダイオード、CMOS検出器、CCD検出器、光電池等が含まれる。これらはたとえば、シンチレータ膜と併用されて良い。
− 基本的には、試料(面)を透過する荷電粒子を取り込み、かつ、解析装置へ案内する(集束させる)結像系。結像系とはたとえば、検出/撮像装置、分光装置(たとえばEELSモジュール)等である。上述の照射体については、結像系は他の機能−収差の緩和、トリミング、フィルタリング等−をも実行して良い。照射体は一般的に、1つ以上の荷電粒子レンズ及び/又は他の種類の粒子光学部品をも有して良い。
− 当該顕微鏡に気圧センサを供する段階、
− 前記気圧センサからの圧力測定信号を自動制御装置へ供する段階、
− 前記制御装置に制御処理への入力として前記信号を用いさせることで、前記信号に基づいて前記ビーム及び前記試料ホルダの相対的な位置の誤差を補償する段階、
を有することを特徴とする。
− 当該顕微鏡は、自動制御装置、及び、前記制御装置へ圧力測定信号を供することが可能な気圧センサからの入力インターフェース、を有する。
− 前記制御装置は、制御処理への入力として前記信号を用いることで、前記信号に基づいて前記ビーム及び前記試料ホルダの相対的な位置の誤差を補償するように起動し得る。
(a)気圧センサはたとえば以下のように設定されて良い。
− 前記気圧センサは、前記試料ホルダに隣接して−たとえば前記試料ホルダの外部に突出した部分(たとえば位置設定機構)(付近)にて−設けられて良い。
− 前記気圧センサは、当該顕微鏡の外側表面/フレーム上に設けられて良く、前記試料ホルダからある程度(たとえば前記試料ホルダの50〜100cmの範囲内で)離れて良い。
− 前記気圧センサは、当該顕微鏡からある程度離れているが、依然として当該顕微鏡と大気をやり取りして良い。たとえば前記気圧センサは、当該顕微鏡を含む閉じ込められた空間(たとえば部屋又は機室)内に設けられ、かつ、当該顕微鏡に隣接するように(たとえば当該顕微鏡の5〜10メートル範囲内)設置されて良い。
− 前記気圧センサは、複数の顕微鏡によって共有/に接続されて良い。たとえば前記気圧センサは、複数の顕微鏡を含む部屋内の相対的に中心をとる位置に設置され、かつ、信号キャリア−たとえば電気ケーブル、光ファイバ等−を介してこれらの1つ以上に接続されて良い。
(b) 前記自動制御装置は単一的又は複合的性質を有して良く、かつ、たとえば協働する複数の制御装置からなる群を有して良い。前記複数の制御装置の各々には、特定の処理が割り当てられて良い。前記自動制御装置はたとえば、特別に設計されたアナログ又はデジタル電子回路であって良い。あるいは前記自動制御装置はコンピュータプロセッサ(の一部)を有して良い。前記コンピュータプロセッサは、ソフトウエア又はファームウエアで書かれたコマンドを実行し得る。前記自動制御装置は、当該CPM内での自動処理を一般的に調整するのに用いられるマスター制御装置の一部であって良い。あるいは前記自動制御装置は専用の装置であって良い。
(c) 当該CPMには、前記入力インターフェースを介して前記圧力センサによって供される測定機能が供される。前記インターフェースはたとえば、
− 前記圧力センサに接続される信号キャリア、
− 外部圧力センサが信号キャリアを介して接続可能なジャック/ソケット、
− 前記圧力センサが接続される外部コンピュータからデータを伝えるバス(データケーブル)等
を含んで良い。
− 専用気圧センサを用いることによって、前記試料ホルダの前記外部アクチュエータ/サスペンションユニットの位置で測定された(公称圧力に対する)大気圧変化を表す下側曲線。グラフは115秒の時間間隔を示している。115秒の時間間隔のほとんどの間に異常なジッタが測定されている。特に興味深いのは、最後の15秒である。上述のスライド式ドアを故意に開閉することで、単位Paで表される(図の右縦軸参照のこと)明確な圧力の上下振動が生じた。
− 同じ115秒の時間間隔でのSi<110>試料の画像内での(前記ビームに対して法線方向である所与の参照方向に対して平行で、かつ、所与の参照位置に対する)相対変位を示す上側の黒色曲線。前記相対変位は単位pmで表される(図の左縦軸参照のこと)。前記変位は、ビーム/試料(ホルダ)の位置のずれに起因する撮像された規則的なSi<110>格子構造内でのずれを表し、かつ、前記ずれの指標とみなされ得る。前記下側曲線との明確な相関に留意して欲しい。前記相関は、前記下側曲線を反転/縮尺変更し、かつ、前記黒色曲線に重ねることによってさらに明確になり、その結果としてグレーの点線が得られる。
(i) 第1の取り組みでは、本願発明者等は、使用された前記圧力センサからの信号が、試料ホルダと荷電粒子ビームとの相対位置のその場補正の基礎として用いられた制御ループを開発した。より詳細には、たとえばこれまでの校正手順(及び/又は荷電粒子ビームに対する試料ホルダ位置への圧力変化の影響モデル)に基づいて、以下のことを行って良い。
− 前記気圧センサを用いた圧力揺らぎの追跡
− これらの圧力測定を利用したこれらの圧力測定に係る前記(相対的な)試料ホルダ位置の変化の計算
− 前記の揺らぐ圧力の効果を緩和するように前記計算に基づく前記位置の能動的調節
(ii) 第2の取り組みでは、本願発明者等は以下の態様による事後補正を開発した。
− 当該顕微鏡には、前記ビームと前記試料の相対走査運動を生じさせるために走査手段が供される。
− 前記制御装置は、前記試料上での走査座標位置の関数として検出器出力の表を構築するように起動する。
− 補償は、点毎に前記走査座標位置の遡及的補正を有する。
上述したように、走査型顕微鏡の場合での撮像は基本的に、上述の表を蓄積し、かつ、前記表への入力事項を、座標位置に対する検出器出力の2次元プロットへ変換することによって起こる。前記表自体は基本的に、順序を表す増大する値nを有する連続するサンプリング/画素点の列で発生する複数のデータ対{Dn,(xn,yn)}からなる組に対応する。ここでDnは座標位置(xn,yn)での検出器出力を表す。この実施例では、使用された前記気圧センサからの出力信号は−たとえばこれまでの校正手順(及び/又は前記荷電粒子ビームに対する試料ホルダ位置への圧力変化の影響のモデル)と共に−、各座標位置(xn,yn)に係る位置の誤差(Δxn,Δyn)を計算するのに用いられる。よって以下のような形式の補正マッピング/変換が実行されて良い。
(xn,yn)→(xn+Δxn,yn+Δyn)=(x’n,y’n)
また修正されたデータ組{Dn,(x’n,y’n)}の基底での補正画像がまとめられてよい。この文脈では、「点毎」という条件は必ずしも、各座標点すべてを個別的に補正することを要することを意味しない。その代わりに、(より選択的な)補正が、複数の座標位置からなる群/部分群について一度に実行されて良い。特に、前記条件は、「線毎の」補正を含むものとして解されなければならない。この理由は、本発明によって処理される圧力変化の周波数は一般的に、撮像において一般的に用いられている(ラスタ)走査運動の走査周波数と比較して相対的に低いので、「線毎」の補正で十分となり得るからである。
本発明による補償の典型的な結果が図3Bに表されている。図3Bでは以下が示されている。
− グレーの曲線は基本的に、図3Aの上側の黒色曲線に対応する補正されていないビーム/試料(ホルダ)位置の誤差を表す。
− 前記黒色曲線は、図3Aの前記下側曲線を本発明によって規定された制御手順−この場合、上述の(II)型の遡及型手法を指称する−への入力として用いることによって補償されたホルダ位置を示している。この補正された黒色曲線は、補正されていないグレーの曲線よりも小さくかつ低頻度の変動を含むことがすぐに明らかになる。
− 前記試料ホルダには、該試料ホルダの位置を調節するのに用いられ得るアクチュエータ機構が供される。
− 前記制御装置は、前記信号に応じて前記アクチュエータ機構へ供される位置設定点を調節するように起動する。
前記アクチュエータ機構は一般的に、多数の自由度−直線自由度(たとえば試料上での解析のための特定の領域を選ぶ)と角度自由度(照射ビームに対する特定の試料傾斜を実現する)の両方を含む−で前記試料ホルダを位置設定/移動することが可能である。前記アクチュエータ機構はたとえば、複数のモータ(たとえば圧電コイルモータ又はボイスコイルモータ)、ニューマティックアクチュエータ、静水圧アクチュエータ等を含んで良い。モータは、相対的に速い応答時間及び優れた位置設定精度のため、本発明の文脈においては特に有利である。
− 前記照射体には、前記ビームの偏向を調節するのに用いられ得る偏向子機構が供される。
− 前記制御装置は、前記信号に応じて前記偏向子機構へ供給される変更設定点を調節するように起動する。
ここで述べた偏向子機構はたとえば以下のうちの1つ以上を有して良い。
− 電流を流すコイルを用いて荷電粒子ビームを偏向させる磁気ビーム偏向ユニット
− 容量板を用いて荷電粒子ビームを偏向させる静電ビーム偏向ユニット
一般的には、前者は、遅くて振幅の大きな偏向により役立つ傾向にある一方で、後者は、速くて小さな振幅の偏向により役立つ傾向にある。走査型顕微鏡−たとえばSEM又はSTEMの場合では、前記偏向子機構は一般的に、前記試料全体にわたる前記ビームの走査運動を実行するためにいずれにせよ存在する。よってそのような場合、前記偏向子機構はさらに、本実施例のその場での位置補正を実行するのに簡便に用いられて良い。
− 当該顕微鏡には、前記試料を透過して前記検出器へ向かうように荷電粒子束を案内するために結像系が供される。
− 前記結像系には、前記束の経路を調節するのに用いられ得る操作モジュールが供される。
− 前記制御装置は、前記信号に応じて前記操作モジュールに供給される操作設定点を調節するように起動する。
この実施例は特に、上述の照射体に加えて結像系を有する透過型顕微鏡−たとえば(S)TEM−に関する。前記照射体と共に、この結像系の粒子光学鏡筒もまた、前記結像系を通過する荷電粒子束を操作(偏向、案内)するのに用いられ得る偏向装置−ここでは操作モジュールと呼ばれる−を有して良い。繰り返しになるが、前記操作モジュールは、上述しら磁気及び/又は静電偏向ユニットを利用して良い。
− そのような低周波数の揺らぎが測定/記録されないように前記気圧センサ(の測定回路)内でフィルタを用いる
− (前記圧力センサからの)前記入力信号の低周波趨勢分が位置設定の補正にとって無視される/用いられない前記制御手順においてフィルタを用いる
本発明の異なるがそれでも関連する実施例では、音響的現象−人が聴取可能な周波数範囲(約20〜20kHz)の音(たとえば装置、人の活動/発話等によって生じる当該CPM周辺の(相対的に)一定の周囲の音)−に係る相対的に高い周波数の圧力変化の効果を緩和する(ローパス)フィルタが用いられる。ある周波数を超えると、当該CPMへのそのような音の効果は一般的には、(本発明が基本的に関連する)上述した中程度の周波数の揺らぎの効果とは異なる。これは、当該CPM内の各異なる素子/サブシステムの(一般的には異なる)共鳴する機械的/力学的挙動に起因する。そのような挙動を緩和するため、たとえば(約)100Hzより高い大気圧変化周波数を緩和する(ローパスフィルタ)が用いられて良い。
− 0.0001〜0.1Hzで、好適には0.001〜0.1Hzで、より好適には0.0.01〜0.1Hzの範囲内である低周波カットオフ点
− 8〜100Hzで、好適には8〜50Hzで、より好適には10〜30Hzの範囲内である高周波カットオフ点
先の2つの段落で説明した効果を同時に実現するため、適切なバンドパスフィルタが利用されて良い。様々なフィルタリング法についてのさらなる情報は以降の実施例4で与えられる。
− 検出器19は、試料Sから放出される出力電子束(の少なくとも一部)を検出するのに用いられる固体検出器である。
− 検出器21は、(ビームCの通過を可能にする)中央開口23の周りに設けられる複数(たとえば4つ)の独立した検出部を含む区分化された電子検出器である。係る検出はたとえば、試料Sから放出される出力(2次又は後方散乱)電子束の角度依存性を調査するのに用いられて良い。
図示されているように、検出器19と21のいずれも電子を検査するのに用いられる。しかしこれは純粋に設計/実装上の選択であり、必要な場合には、電子に加えて又は電子の代わりに試料Sから放出される他の種類の放射線(たとえばX線、カソードルミネッセンス)束を検出するように選ばれて良い。
− デュアルビーム−たとえば撮像用の電子ビームCと試料Sの加工(場合によっては撮像)様のイオンビーム−の使用
− 試料Sでの−たとえば(所謂環境制御型SEMで用いられているような)数mbarの圧力を維持するか、又は、気体−エッチング気体又は前駆体気体−を収容することによる−制御された環境の使用
等。図1に図示された走査型顕微鏡はSEMだが、図1に図示された走査型顕微鏡は、本発明においては、たとえばSTEMも有効なものとしてあり得る(以降の実施例3参照)。
− 図3Aは、ビーム/試料の位置の誤差と気圧における中程度の周波数の揺らぎとの間の相関を示している。
− 図3Bは、本発明の制御手順がこの相関のある効果を緩和するのに用いられ得る有効性を表している。
図3Aと図3Bの具体的詳細は既に上で述べたので、さらなる説明はここではしない。
− A:ホルダH用のアクチュエータ(台)
− D:使用された荷電粒子ビームの偏向器(システム)
− AD:A用の駆動装置。この駆動装置の入力は位置設定点XASである。
− DD:D用の駆動装置。この駆動装置の入力は位置設定点XDSである。
− P:Aの大気圧の揺らぎへの影響
− XAG:Aから得られた位置
− XDG:Dから得られた位置
− dX:位置の誤差
この概略図では、Pの効果を補償する手段がないことがわかる。
− Pはここでは気圧センサBへ供給され、気圧センサBは出力を制御装置Eへ通過させる。
− PSはPの参考値である。たとえばPSは“DC”又は「バックグラウンド」(気象学上の)圧力値である。PSは、Bによって記録される“AC”又は「フォアグラウンド」圧力の揺らぎが重ね合わせられる。参考値Ps(又は上のP0)がここで示した方法でPから減じられない他の制御手法も可能であることに留意して欲しい。そのような方法では、センサBは、たとえば独自の(複数の)(内部)フィルタを利用して良い。
− Eからの出力は、D用の駆動装置D0へ向かって通過する。
従ってこれは、本発明による補償が偏向器(システム)Dを介して適用される実施例である。
− TEMカメラ30。カメラ30では、電子束は、制御装置Eによって処理され、かつ、たとえばフラットパネルディスプレイのような表示装置(図示されていない)上に表示可能な静的画像(ディフラクトグラム)を生成し得る。必要ないときには、カメラ30は、(矢印30’によって概略的に示されているように)軸C’から外れるように引き出され/引き込められてよい。
− STEM記録装置32。記録装置32からの出力は、試料S上のビームCの走査位置(X,Y)の関数として記録され、かつ、X,Yの関数としての記録装置32からの出力の「マップ」である画像が構築されて良い。記録装置32は、カメラ30内に固有に存在する複数の画素からなるマトリックスとは対照的に、たとえば20mmの直径を有する単一画素を有して良い。しかも記録装置32は一般的に、カメラ30の取得速度(たとえば102点/秒)よりもはるかに高い取得速度(たとえば106点/秒)を有する。繰り返しになるが、必要ないときには、記録装置32は、(矢印32’によって概略的に示されているように)軸C’から外れるように引き出され/引き込められてよい(係る引き出しはドーナツ形状の環状暗視野記録装置32の場合には必要だが、たとえば係る装置では、その装置が使用されないときには中央孔がビームの通過を可能にする)。
− カメラ30又は記録装置32を用いた撮像の代わりに、分光装置34−たとえばEELS(EELS=電子エネルギー損失分光)モジュール−を起動させても良い。
30、32、及び34の順序/位置は厳密ではなく、多くの可能な変化型が考えられることに留意して欲しい。たとえば分光装置34は、結像系24に組み込まれても良い。
− (たとえば(長期の)天気に起因する)大気圧の遅い(低周波数)変化
− (たとえば突風、ドアの開閉等に起因する)典型的には秒の時間スケールでの圧力の過渡的な(中程度の周波数の)外乱
− たとえば音に起因する音響的な(高周波数の)圧力の外乱
これらの様々な原因に対応する典型的な周波数範囲は以降で詳述する。
− 可聴範囲(「音」)−人の耳の感度に関する−は20Hz〜30Hzの範囲内に属する。
− この可聴範囲外では、超音波(>20kHz)と超低周波範囲(<20Hz)が存在する。
この定義を用いると、上述した低周波数の圧力変化と中程度の周波数の圧力変化は超低周波とみなされて良い。CPMは、最大数kHzの周波数の音に敏感であり得る。音がCPMの(撮像)性能を妨害する物理的機構は、低周波数の圧力波に係る機構とは異なる。
一のフィルタリング方法は、信号経路内で電子フィルタ−たとえばドアの開放行為に関連する周波数範囲を選択するように実施される1次バンドパスフィルタ−を用いることである。そのようなフィルタ設計の概略図が図7に示されている。図7は、受動的1次線形ハイパスフィルタ及びローパスフィルタの組み合わせを示している。
− R1とR2は電気抵抗値(便宜上R2>>R1)である。
− C1とC2は電気キャパシタンス値である。
− UiとUoはそれぞれ入力電位と出力電位を表す。
このフィルタのハイパス及びローパスカットオフ周波数(−3dBポイント)はそれぞれ、fhp=(1/2π)・(1/(2・R1・C1))及びflp=(1/2π)・(1/(2・R2・C2))によって与えられる。成分値を以下のように選択する結果、たとえば0.027〜27Hzの周波数帯を選択する(通過させる)バンドパスフィルタとなる。
R1=680Ω
C1=4400μF
R2=6800Ω
C2=0.88μF
当業者は、必要に応じて異なるバンドパスフィルタを実現するように他の値を選択することができる。
他の(及び/又は補助的)フィルタリング方法が図8に表されている。圧力センサはたとえば、ゴム(又は他の可撓性)部材84が伸張する(剛性の)殻/容器82を有するように実施されて良い。周辺圧力の変化に応じて、膜84は変形する。距離センサ86(たとえば光エンコーダ、容量センサ等)は、膜84の中心での高さを測定するのに用いられて良い。記録された高さの変化は殻82の(外部)環境と内部との間での差圧に比例する。小さな開口部(ダクト)88が、殻82の内部と環境との間に意図的に生成される場合、空気は、この開口部88を介して殻82へ流入/殻82から流出することが可能となる。開口部88が十分小さい場合、環境圧力変化への応答は遅くなり、かつ、センサへの効果はハイパスフィルタのようになる。これは以下のようにさらに説明することができる。
dPs=(dVg/V0)P0=(Q・dt/V0)P0
Qについてハーゲン・ポアズイユの式を挿入すると、次式が得られる。
dPs/dt=(Q/V0)・P0
=(Cr・ΔP/V0)・P0=(Cr/V0)・P0・(P−Ps)
これは以下のように書き直すことができる。
(V0/(Cr・P0))・(dPs(t)/dt)+Ps(t)=P(t)
この式は、次式のRC回路の線形微分方程式と等価であることに留意して欲しい。
RC・(dVout(t)/dt)+Vout(t)=Vin(t)
ここで、Rは抵抗、Cはキャパシタンス、VinとVoutはRCフィルタの入力電圧と出力電圧である。
RCフィルタとの類推で、漏れによる圧力容器の応答は次式で表される。
GP=|PS/P|=(1+(ω・V0/(Cr・P0))2)−1/2
よって漏れはローパスフィルタの機能を有し、かつ、容器内の圧力はゆっくりと環境に適合することが可能であることがわかる。そのような圧力容器に基づく圧力は、環境圧力と内部圧力との間の差に比例する出力信号に基づくことに留意して欲しい。従ってセンサの応答は次式のようなハイパス型となる。
GS=|(P−PS)/P|=(1+(ω・V0/(Cr・P0))−2)−1/2
この式は、f−3dB=(1/2π)・(Cr・P0/V0)でカットオフ周波数(−3dB点)を有する。上の検討は、図8の膜84を、剛性を有する壁に置き換えた。ここでパラメータAを導入し、剛性を有する壁ではA=0で、かつ、非常に柔軟性のある膜ではA=1であるとすると、過渡オフ周波数fcについて、fc(A)=(1−A)fc(A=0)が得られる。実際には、本願発明者等は、A≧0.86が膜の挙動を現実的に表すことを発見した。V0=3.5リットル、L=10mm、D=0.4mm、及びA=0.86のようにパラメータを選択する結果、カットオフ周波数は0.0022Hzとなる。これはたとえば、天気に関連する変化を抑制するのに適しているが、ドアの開閉行為に起因する圧力変化を見逃してしまう。
繰り返しになるが、当業者は、必要に応じて異なるカットオフ周波数を実現するように他の値を選択することができる。
1 粒子光学鏡筒
C 荷電粒子ビーム
C’ 粒子光学軸
5 真空チャンバ
H 試料ホルダ
A 台/アクチュエータ
S 試料
9 電子源
11 レンズ
13 レンズ
15 偏向ユニット
17 電源
19 検出器
21 検出器
23 中央開口
E 制御装置/コンピュータ処理装置
E’ 制御ライン(バス)
27 表示装置
V 真空筐体
4 荷電粒子ビーム源
6 電子光学照射体
S 試料
H 試料ホルダ
12 設置装置(台)
14 冷却装置
22 解析装置
24 結像系
26 蛍光スクリーン
26’ 矢印
28 ビューポート
30 カメラ
30’ 矢印
32 記録装置
32’ 矢印
34 分光装置
B 大気圧センサ
Claims (11)
- 荷電粒子顕微鏡を用いる方法であって:
試料ホルダ上に試料を供する段階;
前記試料へ照射するようにビーム源から照射体を介するように荷電粒子ビームを案内する段階;
前記照射に応じて前記試料から放出される放射線束を検出するために検出器を用いる段階、
を有し、
当該顕微鏡に気圧センサを供する段階;
前記気圧センサからの圧力測定信号を自動制御装置へ供する段階;
前記自動制御装置に制御処理への入力として前記信号を用いさせることで、前記信号に基づいて前記荷電粒子ビーム及び前記試料ホルダの相対的な位置の誤差を補償する段階、
をさらに有することを特徴とする方法。 - 前記制御処理が制御ループを有し、
前記補償が、前記ビームと前記試料ホルダの相対位置のその場調節を有する、
請求項1に記載の方法。 - 前記試料ホルダには、該試料ホルダの位置を調節するのに用いられ得るアクチュエータ機構が供され、
前記自動制御装置は、前記信号に応じて前記アクチュエータ機構へ供される位置設定点を調節するように起動する、
請求項2に記載の方法。 - 前記照射体には、前記ビームの偏向を調節するのに用いられ得る偏向子機構が供され、
前記自動制御装置は、前記信号に応じて前記偏向子機構へ供給される変更設定点を調節するように起動する、
請求項2又は3に記載の方法。 - 当該顕微鏡には、前記試料を透過して前記検出器へ向かうように荷電粒子束を案内するために結像系が供され、
前記結像系には、前記束の経路を調節するのに用いられ得る操作モジュールが供され、
前記自動制御装置は、前記信号に応じて前記操作モジュールに供給される操作設定点を調節するように起動する、
請求項2乃至4のうちのいずれか一項に記載の方法。 - 当該顕微鏡には、前記ビームと前記試料の相対走査運動を生じさせるために走査手段が供され、
前記自動制御装置は、前記試料上での走査座標位置の関数として検出器出力の表を構築するように起動し、
前記補償は、点毎に前記走査座標位置の遡及的補正を有する、
請求項1に記載の方法。 - 天気現象に係る相対的に低周波数の圧力変化の効果及び音響的現象に係る相対的に高い周波数の圧力変化の効果うちの少なくとも1つを緩和するのにフィルタが用いられる、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の方法。
- 前記フィルタが、0.0001〜0.1Hzで、好適には0.001〜0.1Hzで、より好適には0.0.01〜0.1Hzの範囲内である低周波カットオフ点、及び、8〜100Hzで、好適には8〜50Hzで、より好適には10〜30Hzの範囲内である高周波カットオフ点からなる群から選ばれる少なくとも1つのカットオフ点を有する、請求項7に記載の方法。
- 前記フィルタが、当該顕微鏡が格納される筐体の壁内のドアの開閉の結果生じる圧力波に係る周波数を通過させる、請求項7又は8に記載の方法。
- 前記フィルタが、前記気圧センサからの信号経路内の電子RC回路、前記気圧センサの壁内の圧力開放ダクト、及び上記の組み合わせ、からなる群から選ばれる、請求項7乃至9のうちのいずれか一項に記載の方法。
- 試料を保持する試料ホルダ;
荷電粒子ビームを生成するビーム源;
前記試料へ照射するように前記ビームを案内する照射体;
前記照射に応じて前記試料から放出される放射線束を検出する検出器、を有する荷電粒子顕微鏡であって、
自動制御装置;及び、
前記自動制御装置へ圧力測定信号を供することが可能な気圧センサからの入力インターフェース、をさらに有し、
前記自動制御装置は、制御処理への入力として前記信号を用いることで、前記信号に基づいて前記ビーム及び前記試料ホルダの相対的な位置の誤差を補償するように起動し得る、ことを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
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