以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の典型的な実施形態を具体的に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る片ロッド形複動式の油圧シリンダ装置1は、略円筒形のシリンダ2と、シリンダ2の円柱形空間部(中空部)に嵌入された略円柱形のピストン3と、ピストン3の下側に取り付けられた細長い円柱形のピストンロッド4とを備えている。油圧シリンダ装置1は、シリンダ2、ピストン3又はピストンロッド4の中心軸が上下方向(鉛直方向)を向くように配置された縦置き型の油圧シリンダ装置である。そして、ピストンロッド4の下端部は、油圧シリンダ装置1によって、例えば上下方向に移動させられる負荷5(例えば、水門の扉体等)に連結されている。
ピストン3は、シリンダ2の円柱形空間部内で上下方向に摺動ないしは滑動することができ、シリンダ2の円柱形空間部は、ピストン3によって上下に仕切られ、ピストン3の上側に第1油室6が形成され、ピストン3の下側に第2油室7が形成されている。そして、油圧シリンダ装置1においては、加圧された作動油が第1油室6に供給されたときには、作動油の圧力によってピストン3及びピストンロッド4が下向きに移動させられ、加圧された作動油が第2油室7に供給されたときには、作動油の圧力によってピストン3及びピストンロッド4が上向きに移動させられ、これによって負荷5が下向き又は上向きに移動させられるようになっている。なお、油圧シリンダ装置1には、後で詳しく説明する、シリンダ2内の作動油中の気泡ないしは異物を除去する油室連通機構8と、油圧シリンダ装置1ないしは該油圧シリンダ装置1に作動油を給排する作動油給排装置10の油漏れを検出する油漏れ検出機構9とが付設されている。
油圧シリンダ装置1に対して、加圧された作動油を該油圧シリンダ装置1の任意の一方の油室(すなわち、第1油室6又は第2油室7)に供給するとともに、他方の油室(すなわち、第2油室7又は第1油室6)から作動油を排出する作動油給排装置10が設けられている。作動油給排装置10には、4ポート3位置方向制御弁である電磁式の油路切換弁11が設けられている。油路切換弁11の第1ポートP1及び第2ポートP2は、それぞれ、第1油路12及び第2油路13を介して、油圧シリンダ装置1の第1油室6及び第2油室7に接続されている。また、油路切換弁11の第3ポートP3及び第4ポートP4には、それぞれ第3油路14及び第4油路15が接続され、これらの第3油路14及び第4油路15の先端(油路切換弁11に接続されていない方の端部)は、作動油を貯留する作動油タンク16内に導入されている。
第3油路14の先端には、該第3油路14に吸入される作動油中の異物を除去するオイルフィルタ17が取り付けられ、このオイルフィルタ17は、常時、作動油タンク16内に貯留された作動油に浸漬されている。さらに、第3油路14には、電動機18(又はガソリンエンジン等の原動機)によって駆動される油圧ポンプ19が介設されている。油圧ポンプ19は、作動油タンク16内の作動油を吸入し、加圧して油路切換弁11の第3ポートP3に供給する。作動油の流れ方向に関して、油圧ポンプ19より下流側(油路切換弁側)の第3油路14と第4油路15とを接続する第1バイパス油路20が設けられている。そして、第1バイパス油路20に、油圧ポンプ19から吐出された作動油の圧力を設定値以下に調整するリリーフ弁21が介設されている。
油路切換弁11は、油圧シリンダ装置1への作動油の給排経路を切り換える。詳しくは図示していないが、油路切換弁11は制御装置(図示せず)によって制御されるソレノイド弁であり、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第1油路12を介して油圧シリンダ装置1の第1油室6に供給する第1の状態と、第2油路13を介して油圧シリンダ装置1の第2油室7に供給する第2の状態と、油圧シリンダ装置1には作動油を供給しない第3の状態のいずれかにセットすることができる。
かくして、第1の状態では、第2油室7内の作動油は、第2油路13と第4油路15とを介して作動油タンク16に還流し、第2の状態では、第1油室6内の作動油は、第1油路12と第4油路15とを介して作動油タンク16に還流する。また、第3の状態では、第1油路12及び第2油路13の油路切換弁側の端部は閉止される。なお、油路切換弁11を、第3の状態では第3油路14と第4油路15とが連通するように構成してもよい。また、油路切換弁11を、第3の状態では第1油路12及び第2油路13が第4油路15と連通するように構成してもよい。
第1油路12には、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側に向かって順に、基本的には油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを係止(阻止)する第1パイロット操作式逆止弁25と、互いに並列に接続された流量調整弁26aと逆止弁26bとで構成される第1逆止弁付流量調整弁26とが直列に介設されている。第1逆止弁付流量調整弁26は、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側への作動油の流れはとくには規制しないが、油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流量を調整する。なお、第2油路13に設定圧以上の油圧(パイロット圧)がかかっているときには、第1パイロット操作式逆止弁25は、第1油路12における油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを許容する。
また、第2油路13には、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側に向かって順に、基本的には油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを係止(阻止)する第2パイロット操作式逆止弁27と、互いに並列に接続された流量調整弁28aと逆止弁28bとで構成される第2逆止弁付流量調整弁28とが直列に介設されている。第2逆止弁付流量調整弁28は、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側への作動油の流れはとくには規制しないが、油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流量を調整する。なお、第1油路12に設定圧以上の油圧(パイロット圧)がかかっているときには、第2パイロット操作式逆止弁27は、第2油路13における油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを許容する。
さらに、第1逆止弁付流量調整弁26より油圧シリンダ装置側において、第1油路12に第1開閉弁30が設けられる一方、第2逆止弁付流量調整弁28より油圧シリンダ装置側において、第2油路13に第2開閉弁31が設けられている。そして、第1、第2開閉弁30、31より油路切換弁側であり、かつ第1、第2逆止弁付流量調整弁26、28より油圧シリンダ装置側の位置において、第1油路12と第2油路13とを接続する第2バイパス油路32が設けられ、この第2バイパス油路32に第3開閉弁33が介設されている。
また、第1開閉弁30と油圧シリンダ装置1の間において、第1油路12には、油圧シリンダ装置側から油路切換弁側への作動油の流れを係止する第1逆止弁34が設けられている。さらに、該第1逆止弁34を迂回する迂回油路35に、第1逆止弁34とは並列に配置され、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側への作動油の流れを係止する第2逆止弁36が設けられている。なお、第1逆止弁34、迂回油路35及び第2逆止弁36は、本発明にとって必須のものではなく、省略することも可能である。
なお、第1逆止弁付流量調整弁26を、第1油路12ではなく、第2油路13に介設してもよい。この場合、第1逆止弁付流量調整弁26は、第2パイロット操作式逆止弁27と第2逆止弁付流量調整弁28の間に介設し、かつ逆止弁26bは、油路切換弁側から油圧シリンダ装置側への作動油の流れを係止するように配置される。
図2〜図4に示すように、油圧シリンダ装置1のシリンダ2は、略円筒形の円筒部材40と、円筒部材40のキャップ側(上側)の開口端を閉止する略円柱形の第1端板41と、円筒部材40のロッド側(下側)の開口端を閉止する略円柱形の第2端板42とを備えている。なお、以下では油圧シリンダ装置1の各構成要素の位置関係を簡明に示すため、油圧シリンダ装置1のキャップ側の位置を、適宜「上」といい、ロッド側の位置を「下」ということにする。また、シリンダ2、ピストン3ないしはピストンロッド4の中心軸の伸びる方向(上下方向)と垂直な方向を、適宜「横方向」又は「水平方向」ということにする。
そして、第1端板41の内部には、該第1端板41をその直径方向(横方向)に貫通して直線状に伸びる横穴43aと、該横穴43aの中央部(第1端板41の中心部に対応する)から分岐して下向きに伸び第1油室6に開口する縦穴43bとで構成される、立面視で略「T」字形の端板内油路43が形成されている。ここで、横穴43aの一方の端部は第1油路12に接続され、他方の端部は後で説明する油漏れ検出機構9(取付具内油路54)に接続されている。なお、第2油路13は、円筒部材40の下端部近傍に形成された孔部40aを介して、第2油室7と連通している。
ピストン3には、主としてピストン3が上向きに移動する際にピストン外周面と円筒部材内周面との間をシールする第1シール部材45と、主としてピストン3が下向きに移動する際にピストン外周面と円筒部材内周面との間をシールする第2シール部材46とが設けられている。また、ピストンロッド4は、第2端板42の中心部に形成されたピストンロッド挿通孔42aを通り抜けて下方に突出している。なお、ピストンロッド4とピストンロッド挿通孔42aの間は、Oリング47によりシールされている。
以下、油圧シリンダ装置1に付設されている油室連通機構8(気泡除去機構)の具体的な構成を説明する。油室連通機構8は、基本的には上下方向に伸びその上端部48a及び下端部48bがそれぞれ円筒部材40の内周面に開口する連通路48と、該連通路48に介設され作動油の下向きの流れを係止する連通路逆止弁49とを備えている。ここで、連通路48の大部分及び連通路逆止弁49は、円筒部材40の外周面に取り付けられた連通機構本体部8a内に設けられている。なお、連通路48の一部(上端近傍部及び下端近傍部)は、円筒部材40の壁面に形成されている。
連通路48は、ピストン3が最上部に位置しているときにおいて(図2に示す状態)、上端部48aがピストン上端面より上側で円筒部材内周面に開口し、下端部48bがピストン下端面より下側においてピストン下端面に隣接又は近接して円筒部材内周面に開口するように形成されている。具体的には、連通路48の下端部48bは、その最上部位がピストン下端面と同一位置又はピストン下端面から下側1cm以内のところに位置するように形成されている。なお、ピストン3が上下方向に移動するときに、第1、第2シール部材45、46が連通路48の下端部48bの開口部の縁に引っかかって損傷するのを防止するため、下端部48bの開口部の縁には面取り加工が施され、あるいは縁が丸められている。
図3から明らかなとおり、1つの連通路48と1つの連通路逆止弁49とからなる組立体は3組設けられ、これらの3組の組立体は、平面視で、円筒部材40の中心の周りに、中心角で120°ずつ隔てた位置に配置されている。なお、このような組立体の数は、3組に限られるわけではなく、これより多くてもよく(例えば、4組、5組…)、また少なくてもよい(例えば1組、2組)。
以下、油圧シリンダ装置1に付設されている油漏れ検出機構9の具体的な構成を説明する。油漏れ検出機構9には、油圧シリンダ装置1のシリンダ2に比べて、その寸法(直径、長さ、肉厚等)が大幅に小さい(例えば、0.05〜0.1倍)略円筒形の小シリンダ50と、小シリンダ50の円柱形空間部(中空部)内に嵌入された略円柱形の軽量の小ピストン51と、小ピストン51の下側に取り付けられた細長い円柱形のロッド52とを備えている。小シリンダ50は、第1端板41の外周部に固定された小シリンダ取付具53の下面に取り付けられている。小シリンダ取付具53内には、その一端が端板内油路43の横穴43aと連通する一方、他端が小シリンダ50の円柱形空間部の上部と連通する取付具内油路54が形成されている。小シリンダ50、小ピストン51及びロッド52は、その中心軸が上下方向(鉛直方向)を向くように配置されている。なお、ロッド52には負荷は連結されていない。
小ピストン51は、小シリンダ50の円柱形空間部内で上下方向に摺動ないしは滑動することができ、小シリンダ50の円柱形空間部は、小ピストン51によって上下に仕切られ、小ピストン51の上側に小油室55が形成され、小ピストン51の下側に空気室56が形成されている。ここで、小油室55は、取付具内油路54を介して、端板内油路43に接続されている。空気室56は、基本的には、該空気室56の下端部に接続された大気開放通路57を介して、大気に開放されている。大気開放通路57には、通路開閉弁58が介設されている。
さらに、油漏れ検出機構9には、小シリンダ50(空気室56)と通路開閉弁58の間の大気開放通路57と、小シリンダ50の上端部近傍において小油室55とに連通する小シリンダ連通路59が設けられている。そして、小シリンダ連通路59には、小油室側から大気開放通路側に作動油が流れるのを係止するチェックバルブ60が介設されている。小シリンダ連通路59及びチェックバルブ60は、小油室55内の作動油が、小シリンダ内周面と小ピストン外周面との間の間隙を経由して空気室56に侵入した場合に、空気室56の底部に溜まっている作動油を小油室55に還流させるためのものである。なお、小シリンダ連通路59及びチェックバルブ60は、本発明の必須の要素ではなく、省略することが可能である。また、チェックバルブ60に代えて、流動抵抗を生じさせるオリフィス等の流動抵抗体を設けてもよく、あるいは小シリンダ連通路59及びチェックバルブ60に代えて、小油室側から大気開放通路側への作動油の流れに対して流動抵抗となる細管又はキャピラリを設けてもよい。
また、油漏れ検出機構9には、小ピストン51又はロッド52の上下方向の位置を検出する位置センサ61が設けられている。位置センサ61としては、例えば、磁歪センサや、リニアエンコーダなどを用いることができる。なお、本発明において、位置センサ61の種類は、とくに限定されるわけではなく、小ピストン51又はロッド52の上下方向の位置を検出することができれば、どのような位置センサを用いてもよいのはもちろんである。また、位置センサ61は省略してもよい。
以下、油室連通機構8(気泡除去機構)及び油漏れ検出機構9の機能ないしは動作を説明する。
図5は、油圧シリンダ装置1において、ピストン3が最下位置に位置し、第1油室6及び第2油室7が常圧の作動油で満たされている状態を示している(油路切換弁11は第3の状態)。そして、油漏れ検出機構9においては、小ピストン51の上側の小油室55が常圧の作動油で満たされる一方、通路開閉弁58が開かれ、小ピストン51の下側の空気室56は大気開放通路57を介して大気に開放されている。油路切換弁11が第3の状態にあるので、作動油給排装置10の第1油路12及び第2油路13は、基本的には外部に対して閉じられた状態にある。なお、図5では小ピストン51は小シリンダ50内で最上位置に位置しているが、小ピストン51は小シリンダ50内のどの部位に位置していてもよい。
図6は、図5に示す状態を経て、作動油給排装置10によって、作動油タンク16から、第3油路14と第2油路13とを介して、第2油室7に加圧された作動油が供給されている状態を示している(油路切換弁11は第2の状態)。この状態においては、油路切換弁11が第2の状態にあるので、第2油室7内の作動油の圧力によりピストン3は上向きに移動する一方、第1油室6内の作動油の大部分は、端板内油路43と第1油路12と第4油路15とを介して作動油タンク16に還流する。
その際、第1油路12には、第2閉止弁36等による作動油に対する流動抵抗があるので、第1油室6内の作動油の一部が、端板内油路43と取付具内油路54とを介して、小シリンダ50内の小油室55に流入する。これにより、小型で軽量の小ピストン51は下向きに移動し、小シリンダ50内で最下位置まで移動する。このとき、通路開閉弁58が開かれているので、空気室56内の空気は大気開放通路57を介して大気中に放出される。なお、連通路48の上端部48a及び下端部48bがともに第1油室6と連通しているので、油室連通機構8(連通路48及び連通路逆止弁49)はとくには機能しない。
図7は、図6に示す状態を経て、ピストン3がシリンダ2内で最上位置に到達した状態を示している。この状態においては、ピストン3の上端面は連通路48の上端部48aより下側に位置する一方、ピストン3の下端面は連通路48の下端部48bより上側に位置する。すなわち、連通路48の下端部48bは加圧された作動油を収容している第2油室7と連通し、連通路48の上端部48aはほぼ常圧の作動油を収容している第1油室6と連通している。
このため、第2油室7内の加圧された作動油は、連通路48及び連通路逆止弁49を介して第1油室6に高速で流入し、さらに端板内油路43と第1油路12と第4油路15とを介して作動油タンク16に還流する。その際、第2油室7の上端部近傍ないしはピストン3の下面近傍において作動油中に滞留ないしは混在している気泡65ないしは異物が、作動油タンク16に還流する作動油とともに作動油タンク16に排出される。なお、油漏れ検出機構9の小ピストン51は、小シリンダ50内で最下位置に位置した状態を維持する。
前記のとおり、1つの連通路48と1つの連通路逆止弁49とからなる組立体が、平面視で円筒部材40の中心の周りに中心角で120°ずつ隔てた位置に配置されているので、第2油室7内の作動油中に滞留ないしは混在している気泡65あるいは異物は、作動油ともに、これらの3組の組立体の各連通路48の上端部48aから、円筒部材40の中心に向かって移動する。そして、気泡65ないしは異物を伴った作動油は、円筒部材40の中心に位置する端板内油路43の縦穴43bに流入するので、気泡65ないしは異物は効果的に作動油タンク16に排出される。
図8は、図7に示す状態を経て、作動油給排装置10によって、作動油タンク16から、第3油路14と第1油路12と端板内油路43を介して、第1油室6に加圧された作動油が供給されている状態を示している(油路切換弁11は第1の状態)。この状態においては、油路切換弁11が第1の状態にあるので、第1油室6内の作動油の圧力によりピストン3は下向きに移動する一方、第2油室7内の作動油は、第2油路12と第4油路15とを介して作動油タンク16に還流する。この場合、端板内油路43の作動油の圧力が油漏れ検出機構9の小油室55にかかるので、小ピストン51は下方に押され、小シリンダ50内で最下位置に位置した状態を維持する。
第1油室6に加圧された作動油を供給する場合において、その初期にはピストン3が最上位置又はその近傍に位置し、連通路48の上端部48aは加圧された作動油が供給される第1油室6と連通する一方、下端部48bはほぼ常圧の作動油を収容している第2油室7と連通する。しかしながら、連通路逆止弁49によって、連通路48を介しての第1油室6側から第2油室7側への作動油の流れが係止されるので、ピストン3は支障なく下向きに移動する。なお、図8に示す状態においては、連通路48の上端部48a及び下端部48bがともに第1油室6と連通しているので、油室連通機構8(連通路48及び連通路逆止弁49)はとくには機能しない。
図9は、図8に示す状態を経て、ピストン3がシリンダ2内において最下位置まで移動した後、油圧シリンダ装置1への加圧された作動油の供給が停止された状態を示している(油路切換弁11は第3の状態)。このとき、第1油室6及び第2油室7は常圧の作動油で満たされている。この場合、油漏れ検出機構9の小油室55には実質的には圧力が作用しないので、小ピストン51に上向きの力は作用せず、小シリンダ50内で最下位置に位置した状態を維持する。なお、この状態においては、第1油路12及び第2油路13は、基本的にはほぼ常圧の作動油で満たされつつ外部に対して閉じられた状態にある。
以下、油漏れ検出機構9による油圧シリンダ装置1ないしは作動油給排機構10における作動油漏れの検出手法を説明する。
図10は、ピストン3がシリンダ2内において最上位置と最下位置の間のある位置で停止し、油圧シリンダ装置1への加圧された作動油の供給が停止され、第1油室6及び第2油室7と、第1、第2油室6、7と連通する各作動油収容部(第1油路12、第2油路13、端板内油路43、小油室55、取付部内油路54等)とが常圧の作動油で満たされている場合において、第1油路12ないしは該第1油路12に介設され又はこれと連通するいずれかの部材に作動油の漏れ(以下「キャップ側油漏れ」という。)が発生した状態を示している。なお、油路切換弁11は第3の状態にある。
この場合、第1油路12内の空間と、該第1油路12と連通する油圧シリンダ装置1(油漏れ検出機構9を含む)内の各部の空間とを含む閉じられた空間(以下「キャップ側作動油収容空間」という。)に収容されている作動油の量は、作動油漏れ分だけ減少する。このとき、キャップ側作動油収容空間は、減少した作動油の体積分だけ減少するが、このようなキャップ側作動油収容空間の減少は、小ピストン51が上向きに移動することにより生じる。なお、キャップ側作動油収容空間が減少しなければ、キャップ側作動油収容空間内に局所的な真空空間が生じ、キャップ側作動油収容空間は減圧状態となることになるが、小ピストン51が上向きに移動してキャップ側作動油収容空間が減少するので、このような減圧状態は生じない。小ピストン51は小型かつ軽量であり、また小ピストン50の小シリンダ51に対する摺動抵抗は非常に小さいので、小ピストン51は容易に上向きに移動する。
なお、ピストン3も上向きに移動可能な部材、すなわちキャップ側作動油収容空間を減少させることが原理的に可能な部材であるが、ピストン3の質量及びピストン3のシリンダ2に対する摺動抵抗は、小ピストン51の質量及び小ピストン51の小シリンダ50に対する摺動抵抗に比べて格段に大きいので、キャップ側油漏れが生じたときには、小ピストン51のみが上向きに移動し、ピストン3は上向きに移動しない。
前記のとおり、小シリンダ50の内径(断面積)及び小ピストン51の外径(断面積)は、それぞれシリンダ2の内径(断面積)及びピストン3の外径(断面積)に比べて非常に小さいので(例えば、0.05〜0.1倍)、キャップ側油漏れが生じてキャップ側作動油収容空間が減少したときには、小ピストン51又はロッド52の上向きの移動量はかなり大きくなる。例えば、小シリンダ50の内径が40mmである場合、50mlのキャップ側油漏れが発生すると、小ピストン51又はロッド52は上向きに約40mm移動する。このため、位置センサ61によって検出される小ピストン51又はロッド52の移動量に基づいてキャップ側油漏れの発生を早期に確実に把握することができ、かつキャップ側油漏れによる作動油の漏れ量を正確に把握することができる。なお、位置センサ61を設けず、マニュアル操作又は目視でロッド52の移動量を把握することも可能である。
なお、図10に示す例では、ピストン3がシリンダ2内において最上位置と最下位置の間のある位置で停止した状態を示しているが、油漏れ検出機構9は、シリンダ2内におけるピストン3の位置の如何にかかわわらず、位置センサ61によって検出される小ピストン51又はロッド52の移動量に基づいて、キャップ側油漏れの発生及び作動油の漏れ量を正確に把握することができる。
図11は、ピストン3がシリンダ2内において最上位置と最下位置の間のある位置で停止し、油圧シリンダ装置1への加圧された作動油の供給が停止され、第1油室6及び第2油室7と、第1、第2油室6、7と連通する各作動油収容部(第1油路12、第2油路13、端板内油路43、小油室55、取付部内油路54等)とが常圧の作動油で満たされている場合において、第2油路13ないしは該第2油路13に介設され又はこれと連通するいずれかの部材に作動油の漏れ(以下「ロッド側油漏れ」という。)が発生した状態を示している。なお、油路切換弁11は第3の状態にある。
この場合、第2油路13内の空間と、該第3油路13と連通する油圧シリンダ装置1内の各部の空間とを含む閉じられた空間(以下「ロッド側作動油収容空間」という。)に収容されている作動油の量は、作動油漏れ分だけ減少する。このとき、ロッド側作動油収容空間は、減少した作動油の体積分だけ減少するが、このようなロッド側作動油収容空間の減少は、ピストン3が下向きに移動することにより生じる。なお、ロッド側作動油収容空間が減少しなければ、ロッド側作動油収容空間内に局所的な真空空間が生じ、ロッド側作動油収容空間は減圧状態となることになるが、ピストン3が下向きに移動してロッド側作動油収容空間が減少するので、このような減圧状態は生じない。
シリンダ2の内径(断面積)及びピストン3の外径(断面積)は比較的大きいので(例えば、200〜600mm)、ロッド側油漏れによりロッド側作動油収容空間が減少したときのピストン3の下向きの移動量は非常に小さい。なお、図11において、一点鎖線Lは、ロッド側油漏れが生じる前のピストン3の上端面の位置を示している。例えば、シリンダ2(円筒部材40)の内径が400mmである場合、50mlのロッド側油漏れが発生すると、ピストン3は下向きに約0.4mm移動する。しかしながら、このようなピストン3の下向きの小さな移動は、とくに注目していない限り、目視で発見することは極めて困難である。
このようにピストン3が下向きに移動すると、その分だけ第1油室6の体積が増加する。その結果、油漏れ検出機構9の小ピストン51が上向きに移動し、キャップ側作動油収容空間の体積は一定に維持される(変化しない)。なお、小ピストン51が上向きに移動しなければ、キャップ側作動油収容空間が拡大し、キャップ側作動油収容空間内に局所的な真空空間が生じ、キャップ側作動油収容空間は減圧状態となるが、小ピストン51が上向きに移動してキャップ側作動油収容空間が一定に維持される(増加しない)ので、このような減圧状態は生じない。
前記のとおり、小シリンダ50の内径(断面積)及び小ピストン51の外径(断面積)は、それぞれシリンダ2の内径(断面積)及びピストン3の外径(断面積)に比べて非常に小さいので、このようにピストン3が下向きに移動したときには、小ピストン51の上向きの移動量はかなり大きくなる。例えば、シリンダ2の内径が400mmであり、小シリンダ50の内径が40mmである場合、50mlのロッド側油漏れが発生してピストン3が下向きに約0.4mm移動すると、小ピストン51は上向きに約40mm移動する。このため、位置センサ61によって検出される小ピストン51又はロッド52の上向きの移動量に基づいて、ロッド側油漏れの発生を早期に確実に把握することができ、かつロッド側油漏れによる作動油漏れ量を正確に把握することができる。
なお、図11に示す例では、ピストン3がシリンダ2内において最上位置と最下位置の間のある位置で停止した状態を示しているが、油漏れ検出機構9は、シリンダ2内においてピストン3が最下位置又はその近傍に位置している場合を除き、ピストン3の位置の如何にかかわわらず、前記のプロセスによりロッド側油漏れの発生及び作動油の漏れ量を正確に把握することができる。
ところで、図11に示す例とは異なり、ピストン3がシリンダ2内において最下位置又はその近傍に位置している場合、すなわちピストン3が下向きに移動することができないか又は十分に移動することができない場合は、以下で説明するプロセスにより、ロッド側油漏れが検出される。例えば、ピストン3がシリンダ2内において最下位置に位置しているとき、すなわちピストン3が下向きに全く移動することができないときにロッド側油漏れが生じた場合、ロッド側作動油収容空間は、その体積は減少しないので、一時的ないしは過渡的に減圧状態となる。すなわち、過渡的には、ピストン3の上側の第1油室6は常圧である一方、ピストン3の下側の第2油室7は減圧状態となる。
このため、第1油室6内の作動油の一部は、ピストン3の外周面とシリンダ2(円筒部材40)の内周面の間のクリアランス(間隙)を介して第2油室7内に緩慢に流入する。このように第1油室6から第2油室7に流入する作動油の量は、最終的にはロッド側油漏れにより漏出する作動油の量とほぼ一致する。その結果、小ピストン51及びロッド52が上向きに移動して、キャップ側作動油収容空間は、第1油室6から第2油室7に流入した作動油の量、すなわちロッド側油漏れにより漏出する作動油の量に対応する分だけ減少する。つまり、小ピストン51及びロッド52は、ロッド側油漏れにより漏出する作動油の量に対応して上向きに移動する。したがって、この場合も、位置センサ61によって検出される小ピストン51又はロッド52の上向きの移動量に基づいて、ロッド側油漏れの発生を早期に確実に把握することができ、かつロッド側油漏れによる作動油の漏れ量を正確に把握することができる。
また、ピストン3がシリンダ2内において最下位置の近傍に位置している場合、すなわちピストン3が十分に下向きに移動することができない場合は、ピストン3が最下位置に到達するまでは、図11に示す例と同様のプロセスで小ピストン51及びロッド52が上向きに移動し、ピストン3が最下位置に到達した後は、ピストン3がシリンダ2内において最下位置に位置している場合と同様のプロセスで小ピストン51及びロッド52が上向きに移動する。したがって、この場合も、位置センサ61によって検出される小ピストン51又はロッド52の上向きの移動量に基づいて、ロッド側油漏れの発生を早期に確実に把握することができ、かつロッド側油漏れによる作動油の漏れ量を正確に把握することができる。
前記のとおり、キャップ側油漏れが生じた場合及びロッド側油漏れが生じた場合のいずれにおいても、小ピストン51が上向きに移動する。したがって、位置センサ61によって検出される小ピストン51又はロッド52の上向きの移動のみから、キャップ側油漏れであるか、それともロッド側油漏れであるかを判定することはできない。そこで、位置センサ61によって小ピストン51又はロッド52の上向きの移動が検出されたときには、ピストン3又はピストンロッド4の移動の有無を調べ、ピストン3又はピストンロッド4がわずかでも下向きに移動していることが認められた場合はロッド側油漏れであると判定し、それ以外の場合はキャップ側油漏れであると判定すればよい。
前記のとおり、ロッド側油漏れによるピストン3の下向きの移動量は非常に小さいが、小ピストン51及びロッド52の上向きの移動に基づいて作動油漏れが発生していることが判明した後においては、ピストン3又はピストンロッド4を注意深く観察することにより、ピストン3又はピストンロッド4の下向きの移動の有無を判定することは容易である。なお、ピストン3がシリンダ2内において最下位置に位置している場合は、ピストン3又はピストンロッド4が下向きに移動しないので、作動油給排装置10を操作して第2油室7に少量の作動油を供給し、ピストン3をある程度上向きに移動させた後、作動油の供給を停止して、ピストン3が下向きに移動するか否かを判定すればよい。
ところで、油圧シリンダ装置1の温度環境の変化、例えば周囲の気温の変化、日射状態の変化等により油圧シリンダ装置1の温度ないしは作動油の温度が変化した場合、熱膨張又は熱収縮によりキャップ側作動油収容空間もしくはロッド側動油収容空間の体積、又はこれらに収容されている作動油の体積が変化し、これに伴って小ピストン51及びロッド52が上向きに移動する可能性がある。したがって、小ピストン51又はロッド52が上向きに移動しても、その移動が作動油の漏れに起因するのではなく、温度環境の変化に起因するものである可能性がある。
しかしながら、作動油の漏れに起因する小ピストン51の移動と、温度環境の変化に起因する小ピストン51の移動とでは、その移動パターンないしは移動態様(挙動)が異なる。そこで、小ピストン51の移動パターンないしは移動態様(挙動)に基づいて、小ピストン51の上向きの移動が、作動油の漏れに起因するか、それとも温度環境の変化に起因するかを判定すればよい。その際、例えば以下のような要素ないしは事情を総合的に考慮して判定すればよい。なお、小ピストン51の上向きの移動が作動油の漏れに起因するものと判定された場合は、多機能弁(図示せず)などを用いて、作動油の漏れの有無を実際に確認し、作動油の漏れ箇所を特定することになる。
一般に、作動油の漏れに起因する小ピストン51の移動は、温度環境の変化に起因する小ピストン51の移動に比べて急速である。したがって、小ピストン51の移動速度が比較的大きい場合は、作動油の漏れに起因するものである可能性が高い。これ対して、小ピストン51の移動速度が比較的小さい場合は、温度環境の変化に起因するものである可能性が高い。
作動油の漏れに起因する小ピストン51の移動は一定速度で単調に上昇する傾向が強いが、温度環境の変化に起因する小ピストン51の移動は、温度の変化に伴って移動速度が変化する傾向が強く、ときによっては小ピストン51が下降することもある。したがって、ピストン51が一定速度で単調に上昇している場合は、作動油漏れに起因するものである可能性が高い。他方、小ピストン51の移動速度が変化したり、小ピストン51が下降したりする場合は温度環境の変化に起因するものである可能性が高い。
本発明に係る油圧シリンダ装置1が、比較的近い位置に複数設置されている場合、温度環境の変化に起因する小ピストン51の移動は、これらのすべての油圧シリンダ装置1において同様に起こるのが普通である。したがって、これらの油圧シリンダ装置1のうちの1つの油圧シリンダ装置1のみに小ピストン51の上向きの移動が生じたときは、作動油漏れに起因するものである可能性が非常に高い。
ところで、油漏れ検出機構9においては、小油室55内の作動油が、小シリンダ50の内周面と小ピストン51の外周面との間のクリアランス(間隙)を通って空気室56に侵入して、空気室56の底部に溜まる可能性がある。このように、空気室56の底部に溜まった作動油は、以下のような手順で小油室55に戻すことができる。
小ピストン51が小シリンダ50内において比較的下側の位置(例えば、最下位置)にある場合は、ロッド52に上向きの力を加えて、小ピストン51を比較的上側の位置、例えば上下方向の中央位置よりも上側の位置まで押し上げる。このとき、作動油給排装置10を、キャップ側作動油収容空間内の作動油が外部(例えば、作動油タンク16)にリークすることができるようにセットする。なお、小ピストン51が小シリンダ50内において比較的上側の位置にある場合は、このような操作は不要である。
次に、通路開閉弁58を閉じる。そして、ロッド52に下向きの力を加えて、小ピストン51を比較的下側の位置、例えば上下方向の中央位置よりも下側の位置まで移動させる。このとき、小油室55内は過渡的に減圧状態となるので、空気室56内に溜まっている作動油は、大気開放通路57と小シリンダ連通路59とを介して小油室55内に吸引される。なお、チェックバルブ60は、作動油の上向きの流れを許容する。このようにして空気室56内の作動油が除去された後、通路開閉弁58を開き、キャップ側作動油収容空間を再び外部に対して閉じられた状態にする。
本発明に係る油圧シリンダ装置1によれば、第2油室7に加圧された作動油を供給してピストン3を最上位置まで移動させたときに、ピストン3の下端面近傍において第2油室7内の作動油中に滞留ないしは混在している気泡あるいは異物を、連通路48と、第1油室6と、端板内油路43と、第1油路12と、第4油路15とを介して、作動油タンク16に排出することができるので、シリンダ2内に気泡又は異物が蓄積されず、油圧シリンダ装置1の動作を良好に維持することができる。さらに、作動油給排装置10ないしは油圧シリンダ装置1における作動油漏れの発生を早期に正確に把握することができ、かつ作動油の漏れ量を正確に把握することができる。