<第1実施形態>
以下、本発明におけるブローバイガス還元装置(以下「BGV装置」と言う。)の異常診断装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態におけるガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムを構成するエンジン1は、複数の気筒を含むエンジンブロック2を備える。各気筒には、それぞれピストン3が往復動可能に設けられる。エンジンブロック2の下部には、クランクケース4が設けられる。クランクケース4は、オイルパン5と共に構成される。クランクケース4の中には、クランクシャフト6が回転可能に支持され、各ピストン3がコンロッド7を介してクランクシャフト6に連結される。
各気筒にて、各ピストン3の上側には燃焼室8が形成される。各燃焼室8に対応して、エンジンブロック2の上部には、吸気ポート9及び排気ポート10がそれぞれ形成される。吸気ポート9には吸気バルブ11が、排気ポート10には排気バルブ12がそれぞれ設けられる。各吸気バルブ11及び各排気バルブ12は、周知の動弁機構13により、クランクシャフト6の回転に連動して開閉するように構成される。これら吸気バルブ11及び排気バルブ12が開閉することにより、吸気ポート9から燃焼室8へ外気が吸入され、燃焼室8から排気ポート10へ燃焼後の排気ガスが排出される。エンジンブロック2の上部には、動弁機構13等を覆うヘッドカバー14が設けられる。
吸気ポート9には、吸気通路15が接続される。この吸気通路15の入口には、エアクリーナ16が設けられる。吸気通路15には、スロットル弁17を含む電動式の電子スロットル装置18とサージタンク19が設けられる。電子スロットル装置18より下流の吸気通路15は、サージタンク19を含む周知の吸気マニホルド31から構成される。電子スロットル装置18は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示略)の操作に連動してモータ(図示略)によりスロットル弁17を開閉駆動させるように構成される。電子スロットル装置18は、本発明の吸気量調節手段の一例に相当する。サージタンク19は、吸気通路15を流れる吸気の脈動を抑える機能を有する。エアクリーナ16にて浄化された空気は、吸気通路15、電子スロットル装置18及び吸気ポート9を介して各燃焼室8に吸入される。この吸入される空気量(吸気量)は、スロットル弁17の開度に応じて調節される。エンジンブロック2には、各燃焼室8のそれぞれに燃料を噴射供給するためのインジェクタ20が設けられる。各インジェクタ20から各燃焼室8へ噴射された燃料は吸気と共に混合気を形成する。エンジンブロック2の上部には、各燃焼室8にて混合気に点火するための点火プラグ21が設けられる。点火プラグ21は、イグナイタ22から高電圧が印加されることで動作するようになっている。
排気ポート10には、排気マニホールドを含む排気通路23が接続される。各燃焼室8で生じた燃焼後の排気ガスは、排気ポート10及び排気通路23等を通じて外部へ排出される。
この実施形態において、このガソリンエンジンシステムは、各燃焼室8で発生したブローバイガスを電子スロットル装置18(スロットル弁17)より下流の吸気通路15(吸気マニホルド31)へ流してエンジン1へ還元するBGV装置を備える。この装置は、エンジン1で発生するブローバイガスを蓄積するためのブローバイガス蓄積部を備える。ブローバイガス蓄積部は、クランクケース4とヘッドカバー14とを含む。クランクケース4とヘッドカバー14は、エンジンブロック2に設けられた連通路2aを介して互いに連通する。クランクケース4には、オイルセパレータ24が設けられる。オイルセパレータ24は、クランクケース4の内部にてブローバイガスに混入した潤滑油等の油分をブローバイガスから分離して捕捉する機能を有する。このオイルセパレータ24と、スロットル弁17より下流の吸気通路15(吸気マニホルド31)との間には、クランクケース4から吸気通路15へブローバイガスを流すためのブローバイガス還元通路(以下「BGV通路」と言う。)26が設けられる。このBGV通路26は、ホース等の配管で構成される。また、吸気マニホルド31には、ブローバイガス流量を調節するためのPCV弁27が設けられる。ここで、PCV弁27は、開度可変に構成された周知の電動式の弁であり、吸気マニホルド31に対し、配管等を介さずに直接取り付け(直付け)られる。PCV弁27は、本発明のガス流量調節手段の一例に相当する。スロットル弁17より上流の吸気通路15とヘッドカバー14との間には、ヘッドカバー14及びクランクケース4の中のブローバイガスを掃気するためにヘッドカバー14の中へ新気(外気)を導入するための新気導入通路28が設けられる。ヘッドカバー14の中へ導入された新気は、この連通路2aを介してクランクケース4の中へ導かれる。
上記したエンジンシステムは、電子制御装置(ECU)50を更に備える。エアクリーナ16には、吸気通路15を流れる吸気量Gaを検出するためのエアフローメータ51が設けられる。エアフローメータ51は、本発明の吸気量検出手段の一例に相当する。電子スロットル装置18には、スロットル弁17の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ52が設けられる。サージタンク19には、吸気通路15における吸気圧力PMを検出するための吸気圧センサ53が設けられる。エンジンブロック2には、クランクシャフト6の回転角度(クランク角度)をエンジン回転速度NEとして検出するための回転速度センサ54が設けられる。エンジンブロック2には、その内部を流れる冷却水の温度(冷却水温度)THWを検出するための水温センサ55が設けられる。排気通路23には、排気中の酸素濃度Oxを検出するための酸素センサ56が設けられる。この酸素センサ56は、本発明の空燃比検出手段の一例に相当する。これら各種センサ等51〜56は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段の一例に相当する。ECU50は、各種センサ等51〜56により検出された吸気量Ga、スロットル開度TA、吸気圧力PM、エンジン回転速度NE、冷却水温度THW及び酸素濃度Oxに基づき、空燃比制御を含む燃料噴射制御、点火時期制御及びブローバイガス還元制御等を実行するようになっている。燃料噴射制御では、ECU50は、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ20を制御し、エンジン1へ燃料を供給するようになっている。エンジン1は、この燃料の供給を受けて駆動力を発生するようになっている。また、ECU50は、エンジン1の減速時には、所定の条件下で、インジェクタ20からの燃料噴射を停止してエンジン1に対する燃料の供給を遮断(燃料カット)するようになっている。点火時期制御では、ECU50は、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ22を動作させて点火プラグ21を制御するようになっている。ブローバイガス還元制御では、ECU50は、エンジン1の運転状態に応じてPCV弁27を制御するようになっている。この実施形態で、ECU50は、本発明の異常診断手段の一例に相当する。
上記したエンジンシステムは、BGV装置の異常を診断するための異常診断装置を更に備える。この異常診断装置は、BGV通路26及びPCV弁27の異常を診断するための異常診断手段を含む。この実施形態で、ECU50は、その異常診断手段の一例に相当する。ECU50は、BGV通路26及びPCV弁27の異常を診断するための異常診断制御を実行するようになっている。
ここで、BGV通路26及びPCV弁27の異常モードとして、BGV通路26を構成する配管(ホース等)の外れ、その配管の孔あき、その配管の詰まり、PCV弁27が開弁状態や閉弁状態で固着することなどを想定することができる。
次に、ECU50が実行する第1の異常診断制御について説明する。図2に、その異常診断制御の内容をフローチャートにより示す。図3に、異常診断のために使用される第1の判定データをグラフにより示す。図4に、異常診断のために使用される第2の判定データをグラフにより示す。図5に、第1の判定データと第2の判定データを一つにまとめてグラフにより示す。
処理が図2に示すルーチンへ移行すると、ステップ100で、ECU50は、異常診断フラグXOBDが「0」か否か、すなわち異常診断が未実行であるか否かを判断する。このフラグXOBDは、後述するように異常診断が実行された場合に「1」に設定されるようになっている。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ110へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ100へ戻す。
ステップ110では、ECU50は、減速燃料カット中であるか否かを判断する。すなわち、エンジン1の減速時、かつ、エンジン1へのインジェクタ20からの燃料の供給(燃料噴射)が遮断されるときであるか否かを判断する。ECU50は、エンジン1の減速時には、所定条件下で電子スロットル装置18を制御してスロットル弁17を閉弁すると共に、インジェクタ20からの燃料噴射を遮断するようになっている。従って、この減速燃料カット中は、エンジン1でトルクが発生せず、スロットル弁17が閉弁状態となりスロットル弁17を通過する吸気がソニック状態で一定となる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ120へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ100へ戻す。
ステップ120では、ECU50は、PCV弁27を開度ゼロOP0に制御する。すなわち、ECU50はPCV弁27を全閉に制御する。
次に、ステップ130で、ECU50は、PCV弁27の開度ゼロOP0に制御したときの吸気量Gaを、エアフローメータ51の検出値に基づき取り込む。
次に、ステップ140で、ECU50は、ステップ130で取り込まれた吸気量Gaを、0開度吸気量PCVGa0として設定する。この0開度吸気量PCVGa0は、本発明の第0の吸気量の一例に相当する。
次に、ステップ150で、ECU50は、PCV弁27を第1の開度OP1に制御する。ここで、第1の開度OP1は、開度ゼロOP0より大きく全開より小さい所定の開度を意味する。
次に、ステップ160で、ECU50は、PCV弁27を第1の開度OP1に制御したときの吸気量Gaを、エアフローメータ51の検出値に基づき取り込む。
次に、ステップ170で、ECU50は、ステップ160で取り込まれた吸気量Gaを、1開度吸気量PCVGa1として設定する。この1開度吸気量PCVGa1は、本発明の第1の吸気量の一例に相当する。
次に、ステップ180で、ECU50は、PCV弁27を第2の開度OP2に制御する。ここで、第2の開度OP2は、第1の開度OP1より大きく全開より小さい所定の開度を意味する。
次に、ステップ190で、ECU50は、PCV弁27を第2の開度OP2に制御したときの吸気量Gaを、エアフローメータ51の検出値に基づき取り込む。
次に、ステップ200で、ECU50は、ステップ190で取り込まれた吸気量Gaを、2開度吸気量PCVGa2として設定する。この2開度吸気量PCVGa2は、本発明の第2の吸気量の一例に相当する。
次に、ステップ210で、ECU50は、1開度吸気量PCVGa1と0開度吸気量PCVGa0との間の差を1開度吸気増量ΔPCVGa1として算出する。すなわち、0開度吸気量PCVGa0を基準吸気量とし、それに対する1開度吸気量PCVGa1の増量分を算出する。この1開度吸気増量ΔPCVGa1は、本発明の第1の吸気増量の一例に相当する。
次に、ステップ220で、ECU50は、2開度吸気量PCVGa2と0開度吸気量PCVGa0との間の差を2開度吸気増量ΔPCVGa2として算出する。すなわち、0開度吸気量PCVGa0を基準吸気量とし、それに対する2開度吸気量PCVGa2の増量分を算出する。この2開度吸気増量ΔPCVGa2は、本発明の第2の吸気増量の一例に相当する。
その後、ステップ230で、ECU50は、PCV弁27を第1の開度OP1に制御したときの1開度吸気増量ΔPCVGa1が、所定値A1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ240へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ280へ移行する。この所定値A1は、本発明の第3の所定値の一例に相当する。
次に、ステップ240では、ECU50は、PCV弁27を第2の開度OP2に制御したときの2開度吸気増量ΔPCVGa2が、所定値C1(C1>A1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ260へ移行する。この所定値C1は、本発明の第4の所定値の一例に相当する。
ステップ250では、ECU50は、ブローバイガスの流量と配管が正常であると判定する。ECU50は、その正常判定をメモリに記憶することができる。
この判定につき、図3に示す第1の判定データを参照して説明する。図3は、横軸がPCV弁27の流量(PCV弁27を流れるブローバイガスの流量(以下、同じ。))を示し、縦軸が1開度吸気増量ΔPCVGa1と2開度吸気増量ΔPCVGa2の値を示す。横軸における「(OP0),(OP1),(OP2)」は、開度ゼロOP0、第1の開度OP1及び第2の開度OP2に対応するPCV弁27の流量を意味する(以下、図4、図5、図12において同じ。)。ステップ240の判断結果が肯定となる場合、PCV弁27を第1の開度OP1に制御したときのPCV弁27の流量に対する1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1より大きく、かつ、PCV弁27を第2の開度OP2に制御したときのPCV弁27の流量に対する2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値C1より大きい。そして、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が、例えば、図3に示す「A1」と「C1」を結ぶ直線A1−C1(小孔判定)より上側に位置し、原点を通る直線L1(正常)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、BGV装置が正常であると判定することができる。
その後、ステップ270で、ECU50は、異常診断フラグXOBDを「1」に設定し、処理をステップ100へ戻す。
一方、ステップ240から移行してステップ260では、ECU50は、配管(BGV通路26)に小詰まりを有する配管小詰まり異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
この判定につき、図4に示す第2の判定データを参照して説明する。ステップ240の判断結果が否定となる場合、1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1より大きく、かつ、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値C1以下となる。そして、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が、例えば、図4に示す「C1」を通る曲破線(小詰まり判定)より下側に位置し、原点を通る曲破線L2(小詰まり)上にて曲線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が小詰まり異常であると判定することができる。
一方、ステップ230から移行してステップ280では、ECU50は、1開度吸気増量ΔPCVGa1が、所定値B1(C1>A1>B1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ290へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ320へ移行する。
ステップ290では、ECU50は、2開度吸気増量ΔPCVGa2が、所定値D1(C1>D1>A1>B1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ300へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ310へ移行する。
ステップ300では、ECU50は、配管(BGV通路26)に小孔を有する配管小孔異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ290の判断結果が肯定となる場合、1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1以下となり、かつ、所定値B1より大きくなり、かつ、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値D1(<C1)より大きい。そして、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が、例えば、図3に示す「B1」と「D1」を結ぶ直線B1−D1より上側に位置し、かつ、直線A1−C1(小孔判定)より下側に位置し、原点を通る直線L3(小孔)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が小孔異常であると判定することができる。
一方、ステップ290から移行してステップ310では、ECU50は、配管(BGV通路26)に大詰まりを有する配管大詰まり異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ290の判断結果が否定となる場合、1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1以下となり、かつ、所定値B1より大きくなり、かつ、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値D1(<C1)以下となる。そして、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が、例えば、図4に示す「A1」と「D1」を通る曲破線A1−D1(大詰まり判定)より下側に位置し、原点を通る曲破線L4(大詰まり)上にて曲線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が大詰まり異常であると判定することができる。
一方、ステップ280から移行してステップ320では、ECU50は、2開度吸気増量ΔPCVGa2が、所定値E1(C1>D1>A1>E1>B1)より小さく所定値F1(C1>D1>A1>E1>B1>F1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ330へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ340へ移行する。
ステップ330では、ECU50は、配管(BGV通路26)に大孔を有する配管大孔異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ320の判断結果が肯定となる場合、1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1以下となり、かつ、所定値B1以下となり、かつ、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値E1より小さく所定値F1より大きくなる。そして、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が、例えば、図3に示す「B1」と「E1」を結ぶ直線B1−E1(大孔判定)より下側に位置し、原点を通る直線L5(大孔)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が大孔異常であると判定することができる。
一方、ステップ320から移行してステップ340では、ECU50は、PCV弁27がある開度で固着する固着異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ320の判断結果が否定となる場合、1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1以下となり、かつ、所定値B1以下となり、かつ、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値E1より大きいか所定値F1より小さい。そして、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が、例えば、図3に示す「F1」と「F1」を結ぶ直線F1−F1(固着判定)より下側に位置し、原点を通る直線L6(固着)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、PCV弁27が固着異常であると判定することができる。
以上説明したこの実施形態におけるBGV装置の異常診断装置によれば、エンジン1の減速燃料カット時に、BGV装置の異常が診断される。ここで、減速燃料カット中は、エンジン1でトルクが発生せず、電子スロットル装置18のスロットル弁17が閉弁状態となりスロットル弁17を通過する吸気がソニック状態で一定となる。従って、PCV弁27を第1の開度OP1に制御したときに検出される1開度吸気量PCVGa1と、第2の開度OP2に制御したときに検出される2開度吸気量PCVGa2との差を比較的大きくとることが可能となる。また、吸気のソニック状態では、PCV弁27の開度を変化させても、電子スロットル装置18を通過する吸気量は変化することはなく、同弁27の開度変化が吸気量を直接変化させることになり、1開度吸気量PCVGa1と2開度吸気量PCVGa2との差が比較的大きくなる。このため、BGV通路26の配管に大小の孔があいているなどの孔あき異常判定に必要な流量変化を確保することができる。この結果、BGV通路26の配管に係る大小の孔あき異常を精度良く診断することができる。また、この異常判定の精度を確保するために、判定に時間をかける必要がなく、比較的短時間に異常診断を行うことができる。
この実施形態では、1開度吸気量PCVGa1及び2開度吸気量PCVGa2と基準となる0開度吸気量PCVGa0との差が、それぞれ1開度吸気増量ΔPCVGa1及び2開度吸気増量ΔPCVGa2として算出される。従って、これら1開度吸気増量ΔPCVGa1及び2開度吸気増量ΔPCVGa2では、エアフローメータ51の個体差の影響が軽減される。また、1開度吸気増量ΔPCVGa1が、それ専用の所定値A1,B1,F1と比較され、2開度吸気増量ΔPCVGa2が、それ専用の所定値C1,D1,E1,F1と比較されるので、PCV弁27を第1の開度OP1から第2の開度OP2へ変化させたときの吸気増量の変化が適正に確認される。このため、BGV装置の異常診断の精度を向上させることができる。
この実施形態では、1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1より大きく、かつ、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値C1より大きく、かつ、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が直線的変化となる場合に、BGV装置が正常であると判定する。また、1開度吸気増量ΔPCVGa1が所定値A1以下となり、かつ、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値C1以下となり、かつ、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が直線的変化となる場合に、BGV通路26が孔あき異常であると判定する。このような条件によりBGV通路26の孔あき異常が容易に判定される。この意味でも、BGV通路26における大小の孔あき異常を精度良く、比較的短時間で診断することができる。
この実施形態では、更に、2開度吸気増量ΔPCVGa2が所定値C1以下となり、かつ、1開度吸気増量ΔPCVGa1から2開度吸気増量ΔPCVGa2への変化が曲線的変化となる場合に、BGV通路26が詰まり異常であると判定する。このような条件によりBGV通路26の詰まり異常が容易に判定される。この意味でも、BGV通路26における詰まり異常を精度良く、比較的短時間で診断することができる。
この実施形態によれば、PCV弁27が吸気通路15を構成する吸気マニホルド31に直付けされるので、吸気マニホルド31とPCV弁27との間の配管がなくなり、その配管の分だけ孔あき異常の診断箇所が省略される。このため、その分だけBGV通路26における孔あき異常の診断を簡略化することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明におけるBGV装置の異常診断装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
この実施形態では、異常診断制御の内容の点で第1実施形態と構成が異なる。ここで、仮に、BGV通路26の配管に孔があいた場合は、燃焼室8に取り込まれる空気量がエアフローメータ51で検出される吸気量Gaより多くなることから、エンジン1の運転時に空燃比A/Fがリーン側へずれる。一方、BGV通路26の配管に詰まりが生じた場合は、エンジン1の運転時に空燃比A/Fがリーン側へずれることはない。そのため、第1実施形態の異常診断制御と併せて、空燃比A/Fのずれの判定による異常診断をすることにより、BGV通路26における孔あきと詰まりをより正確に診断することができる。この実施形態では、エンジン1のアイドル運転時に、空燃比A/Fのずれの影響を受け易いことから、アイドル運転時に空燃比A/Fのずれを診断するようになっている。
図6に、空燃比A/Fのずれに基づく孔あき異常診断制御の内容をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ400で、ECU50は、孔あき異常診断フラグXOBDAFが「0」か否かを判断する。このフラグXOBDAFは、後述するように、孔あき異常診断を実行した場合に「1」に、未実行の場合に「0」に設定される。従って、ECU50は、この判断結果が肯定となる(孔あき異常診断未実行)場合は処理をステップ410へ移行し、この判断結果が否定となる(孔あき異常診断実行)場合は処理をステップ400へ戻す。
ステップ410では、ECU50は、エンジン1がアイドルか否かを判断する。ECU50は、例えば、この判断をスロットルセンサ52の検出値及び回転速度センサ54の検出値に基づき行うことができる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ420へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ400へ戻す。
ステップ420では、ECU50は、空燃比A/Fがストイキであるか否かを判断する。ECU50は、この判断を酸素センサ56の検出値に基づき行うことができる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ430へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ400へ戻す。
ステップ430では、ECU50は、空燃比補正燃料増量比KFLを取り込む。この増量比KFLは、空燃比補正燃料量を増量したときの、空燃比補正燃料量の基準値に対する比を意味する。ここで、図7に、BGV通路26の配管の孔あき開口面積に対する、エアフローメータ51により検出される吸気量Gaの関係をグラフにより示す。このグラフからわかるように、配管の孔あき開口面積が大きくなるに連れ、検出される吸気量Gaは、基準となるアイドル時の吸気量Ga(孔のない場合)に対して徐々に減少する。この結果、燃料噴射制御において、インジェクタ20からの燃料噴射量は減少し、空燃比A/Fが基準値からリーン側へずれる。そのため、ECU50は、空燃比制御において、空燃比補正燃料量を増量することになり、この結果として空燃比補正燃料増量比KFLは増加する。この実施形態で、ECU50は、空燃比制御において、酸素センサ56の検出値に基づきこの空燃比補正燃料増量比KFLを算出するようになっている。この点、ECU50と酸素センサ56は、本発明の空燃比算出手段の一例に相当する。図8には、BGV通路26の配管の孔あき開口面積に対する、空燃比補正燃料増量比KFLの関係をグラフにより示す。このグラフからわかるように、配管の孔あき開口面積が大きくなるに連れ(検出される吸気量Gaが減少するに連れ)、空燃比補正燃料増量比KFLは、基準となる「1.0」から徐々に増加する。従って、このステップ430では、ECU50は、このときの空燃比補正燃料増量比KFLを取り込むのである。
次に、ステップ440で、ECU50は、取り込まれた空燃比補正燃料増量比KFLが所定値G1より小さいか否かを判断する。図8に示すように、この所定値G1は、配管の孔あき開口面積が小孔であることを判定するための基準値であり、空燃比補正燃料増量比KFLが所定値G1より小さい場合は、配管に孔が無いことを示す。従って、ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ450へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ470へ移行する。
ステップ450では、ECU50は、配管に孔無しと判定する。このとき、空燃比A/F判定は「正常」となる。ECU50は、この孔無し判定をメモリに記憶することができる。
次に、ステップ460で、ECU50は、孔あき異常診断フラグXOBDAFを「1」に設定し、処理をステップ400へ戻す。
一方、ステップ470では、ECU50は、取り込まれた空燃比補正燃料増量比KFLが所定値H1より小さいか否かを判断する。図8に示すように、この所定値H1は、配管の孔あき開口面積が大孔であることを判定するための基準値であり、空燃比補正燃料増量比KFLが所定値H1より小さい場合は配管に大孔が無いことを示す。従って、ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ480へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ490へ移行する。
ステップ480では、ECU50は、配管に小孔有りと判定する。このとき、空燃比A/F判定は「異常」となる。ECU50は、この小孔有り判定をメモリに記憶することができる。その後、ECU50は、処理をステップ460へ移行する。
一方、ステップ490では、ECU50は、配管に大孔有りと判定する。このとき、空燃比A/F判定は「異常」となる。ECU50は、この大孔有り判定をメモリに記憶することができる。その後、ECU50は、処理をステップ460へ移行する。
次に、ECU50が実行する第2の異常診断制御について説明する。図9、図10に、その異常診断制御の内容をフローチャートにより示す。図9、図10のフローチャートは、図2のフローチャートにおけるステップ100〜ステップ340の処理に、ステップ500〜ステップ560の処理を加えた点で図2のフローチャートと異なる。
処理が図9、図10のルーチンへ移行すると、ECU50は、ステップ100〜ステップ240、ステップ280、ステップ290及びステップ320の処理を実行する。そして、ステップ240から移行したステップ500では、ECU50は、BGV通路26の配管に孔無しか否かを判断する。ECU50は、この判断を、図6のルーチンで得られた判定結果を参照して行う。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ260へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、処理をステップ560へ移行する。
ステップ260では、ECU50は、配管小詰まり異常であると判定するが、ステップ500にて、配管に孔無しであることが確認されているので、このステップ260での小詰まり異常の判定がより確かなものとなる。
一方、ステップ500から移行してステップ560では、ECU50は、判定を保留し、処理をステップ100へ戻す。
また、ステップ240から移行してステップ510では、ECU50は、ステップ500と同様に配管に孔無しか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、処理をステップ560へ移行する。
ステップ250では、ECU50は、ブローバイガスの流量と配管が正常であると判定するが、ステップ510にて、配管に孔無しであることが確認されているので、このステップ250での正常判定がより確かなものとなる。
一方、ステップ290から移行してステップ520では、ECU50は、BGV通路26の配管に小孔有りか否かを判断する。ECU50は、この判断を、図6のルーチンで得られた判定結果を参照して行う。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ300へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、処理をステップ560へ移行する。
ステップ300では、ECU50は、配管小孔異常であると判定するが、ステップ520にて、配管に小孔有りであることが確認されているので、このステップ300での配管小孔異常であるとの判定がより確かなものとなる。
また、ステップ290から移行してステップ530では、ECU50は、ステップ500と同様に配管に孔無しか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ310へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、処理をステップ560へ移行する。
ステップ310では、ECU50は、配管大詰まり異常であると判定するが、ステップ530にて、配管に孔無しであることが確認されているので、このステップ310での配管大詰まり異常であるとの判定がより確かなものとなる。
一方、ステップ320から移行してステップ540では、ECU50は、配管に大孔有りか否かを判断する。ECU50は、この判断を、図6のルーチンで得られた判定結果を参照して行う。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ330へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、処理をステップ560へ移行する。
ステップ330では、ECU50は、配管大孔異常であると判定するが、ステップ540にて、配管に大孔有りであることが確認されているので、このステップ330での配管大孔異常であるとの判定がより確かなものとなる。
また、ステップ320から移行してステップ550では、ECU50は、ステップ500と同様に配管に孔無しか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ340へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、処理をステップ560へ移行する。
ステップ340では、ECU50は、PCV弁27がある開度で固着する固着異常であると判定するが、ステップ550にて、配管に孔無しであることが確認されているので、このステップ340での固着異常であるとの判定がより確かなものとなる。
以上説明したこの実施形態におけるBGV装置の異常診断装置によれば、第1実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、この実施形態では、ECU50は、検出される吸気量Gaに基づく異常診断と併せて、算出される空燃比A/Fの所定の基準値に対するずれに基づいてBGV通路26に孔あき異常があるか否かを診断するようになっている。従って、吸気量Gaに基づく異常診断と併せて、空燃比A/Fのずれに基づいてBGV通路26における孔あき異常の有無が診断されるので、孔あき異常に関する診断がより確かなものとなる。このため、BGV装置における孔あき異常診断の信頼性を向上させることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明におけるBGV装置の異常診断装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、異常診断制御の内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。前記各実施形態では、図2及び図9において、ステップ210,220では1開度吸気増量ΔPCVGa1と2開度吸気増量ΔPCVGa2を算出し、それ以降のステップ230〜ステップ340では、それら1開度吸気増量ΔPCVGa1及び2開度吸気増量ΔPCVGa2に基づいてBGV装置の異常を診断するように構成した。これに対し、この実施形態では、ステップ210,220の処理を省略し、単に吸気量Gaである1開度吸気量PCVGa1と2開度吸気量PCVGa2とに基づいてBGV装置の異常を診断するように構成している。
図11に、第3の異常診断制御の内容をフローチャートにより示す。図12に、異常診断のために使用される第3の判定データをグラフにより示す。図11に示すフローチャートでは、図2のフローチャートにおけるステップ210,220がなくなり、ステップ230、ステップ240、ステップ280、ステップ290及びステップ320の代わりにステップ235、ステップ245、ステップ285、ステップ295及びステップ325の処理が設けられた点で図2のフローチャートと異なる。
処理が図11に示すルーチンへ移行すると、ECU50は、ステップ100〜ステップ200の処理を実行し、ステップ235へ移行する。ステップ235では、ECU50は、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1より大きいか否かを判断する。この所定値a1は、本発明の第1の所定値の一例に相当する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ245へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ285へ移行する。
ステップ245では、ECU50は、2開度吸気量PCVGa2が所定値c1(c1>a1)より大きいか否かを判断する。この所定値c1は、本発明の第2の所定値の一例に相当する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ260へ移行する。
ステップ250では、ECU50は、ブローバイガスの流量と配管が正常であると判定する。ECU50は、その正常判定をメモリに記憶することができる。
この判定につき、図12に示す第3の判定データを参照して説明する。図12は、横軸がPCV弁27の流量を示し、縦軸が1開度吸気量PCVGa1と2開度吸気量PCVGa2を示す。ステップ245の判断結果が肯定となる場合、PCV弁27を第1の開度OP1に制御したときのPCV弁27の流量に対する1開度吸気量PCVGa1が所定値a1より大きく、かつ、PCV弁27を第2の開度OP2に制御したときのPCV弁27の流量に対する2開度吸気量PCVGa2が所定値c1より大きい。そして、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が、例えば、図12に示す「a1」と「c1」を結ぶ直線a1−c1(小孔判定)より上側に位置し、原点を通らない直線L11(正常)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、BGV装置が正常であると判定することができる。
その後、ステップ270で、ECU50は、異常診断フラグXOBDを「1」に設定し、処理をステップ100へ戻す。
一方、ステップ245から移行してステップ260では、ECU50は、配管小詰まり異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ245の判断結果が否定となる場合、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1より大きく、かつ、2開度吸気量PCVGa2が所定値c1以下となる。そして、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が、例えば、図12に示す「c1」を通る曲破線(小詰まり判定)より下側に位置し、原点を通らない曲破線L12(小詰まり)上にて曲線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が小詰まり異常であると判定することができる。
一方、ステップ235から移行してステップ285では、ECU50は、1開度吸気量PCVGa1が、所定値b1(c1>a1>b1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ295へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ325へ移行する。
ステップ295では、ECU50は、2開度吸気量PCVGa2が、所定値d1(c1>d1>a1>b1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ300へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ310へ移行する。
ステップ300では、ECU50は、配管小孔異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ295の判断結果が肯定となる場合、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1以下となり、かつ、所定値b1より大きくなり、かつ、2開度吸気量PCVGa2が所定値d1(<c1)より大きい。そして、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が、例えば、図12に示す「b1」と「d1」より上側に位置し、かつ、「a1」と「c1」を結ぶ直線a1−c1(小孔判定)より下側に位置し、原点を通らない直線L13(小孔)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が小孔異常であると判定することができる。
一方、ステップ295から移行してステップ310では、ECU50は、配管大詰まり異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ295の判断結果が否定となる場合、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1以下となり、かつ、所定値b1より大きくなり、かつ、2開度吸気量PCVGa2が所定値d1以下となる。そして、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が、例えば、図12に示す「d1」を通る曲破線(大詰まり判定)より下側に位置し、原点を通らない曲破線L14(大詰まり)上にて曲線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が大詰まり異常であると判定することができる。
一方、ステップ285から移行してステップ325では、ECU50は、2開度吸気量PCVGa2が、所定値e1(c1>d1>a1>e1>b1)より小さく所定値f1(c1>d1>a1>e1>b1>f1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ330へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ340へ移行する。
ステップ330では、ECU50は、配管大孔異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ325の判断結果が肯定となる場合、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1以下となり、かつ、所定値b1以下となり、かつ、2開度吸気量PCVGa2が所定値e1より小さく所定値f1より大きくなる。そして、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が、例えば、図12に示す「b1」と「e1」を結ぶ直線b1−e1(大孔判定)より下側に位置し、原点を通らない直線L15(大孔)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、BGV通路26が大孔異常であると判定することができる。
一方、ステップ325から移行してステップ340では、ECU50は、PCV弁27がある開度で固着する固着異常であると判定し、処理をステップ270へ移行する。ECU50は、その異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ325の判断結果が否定となる場合、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1以下となり、かつ、所定値b1以下となり、かつ、2開度吸気量PCVGa2が所定値e1より大きいか所定値f1より小さい。そして、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が、例えば、図12に示す「f1」と「f1」を結ぶ直線f1−f1(固着判定)より下側に位置し、原点を通る直線L16(固着)上にて直線的変化になると考えられる。この場合に、PCV弁27の固着異常であると判定することができる。
以上説明したこの実施形態におけるBGV装置の異常診断装置によれば、第1実施形態における第1の異常診断制御のように1開度吸気増量ΔPCVGa1と2開度吸気増量ΔPCVGa2に基づいて異常を診断するのではなく、エアフローメータ51の検出値(絶対値)である吸気量Ga(1開度吸気量PCVGa1、2開度吸気量PCVGa2)そのままに基づいて異常を診断するようにしている。従って、エアフローメータ51の個体差(ばらつき)やエンジンシステムの個体差(ばらつき)により検出される吸気量Gaにばらつきがあり、診断精度は若干低下するものの、第1実施形態の第1の異常診断制御とほぼ同等の作用効果を得ることができる。
この実施形態では、1開度吸気量PCVGa1が、それ専用の所定値a1,b1,f1と比較され、2開度吸気量PCVGa2が、それ専用の所定値c1,d1,e1,f1と比較されるので、PCV弁27を第1の開度OP1から第2の開度OP2へ変化させたときの吸気量Gaの変化が適正に確認される。このため、BGV装置の異常診断の精度を向上させることができる。
この実施形態では、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1より大きく、かつ、2開度吸気量PCVGa2が所定値c1より大きく、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が直線的変化となる場合に、BGV装置が正常であると判定する。また、1開度吸気量PCVGa1が所定値a1以下となり、かつ、2開度吸気量PCVGa2が所定値c1以下となり、かつ、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が直線的変化となる場合に、BGV通路26が孔あき異常であると判定する。このような条件によりBGV通路26の孔あき異常が容易に判定される。この意味でも、BGV通路26における大小の孔あき異常を精度良く、比較的短時間で診断することができる。
この実施形態では、更に、2開度吸気量PCVGa2が所定値c1以下となり、1開度吸気量PCVGa1から2開度吸気量PCVGa2への変化が曲線的変化となる場合に、BGV通路26が詰まり異常であると判定する。このような条件によりBGV通路26の詰まり異常が容易に判定される。この意味でも、BGV通路26における大小の詰まり異常を精度良く、比較的短時間で診断することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明におけるBGV装置の異常診断装置を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、BGV装置の機械的構成と異常診断制御の内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。図13に、この実施形態のガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。図13に示すように、この実施形態のBGV装置の機械的構成は、前述したBGV通路26及びPCV弁27の代わりに、第1の通路43、第2の通路44、第3の通路45、三方切替弁47、PCV弁48及び逆止弁49を備える。第1の通路43は、第1端43aと第2端43bを含み、第1端43aがオイルセパレータ24に連通する。第2の通路44は、第1端44aと第2端44bを含み、第2端44bが電子スロットル装置18より下流の吸気通路15(吸気マニホルド31)に連通する。第3の通路45は、第1端45aと第2端45bを含み、第1端45aから新気が導入されるようになっている。第3の通路45の第1端45aは、エアクリーナ16と電子スロットル装置18との間の吸気通路15に連通する。また、第3の通路45には、新気導入通路28が接続される。すなわち、新気導入通路28は、第1端28aと第2端28bを含み、その第1端28aが第3の通路45の途中に連通し、その第2端28bがヘッドカバー14に連通する。三方切替弁47は、第1の通路43の第2端43bと第2の通路44の第1端44aと第3の通路45の第2端45bとの間に設けられ、第2の通路44の第1端44aを、第1の通路43の第2端43b又は第3の通路45の第2端45bに選択的に連通させるために流路が切り替えられるようになっている。PCV弁48は、第2の通路44を流れる気体の流量を調節するようになっている。
三方切替弁47は周知の電動切替弁であり、電気的にONされることにより、第2の通路44の第1端44aが第1の通路43の第2端43bに連通するように流路が切り替えられ、スロットル弁17より下流の吸気通路15に対するブローバイガスの導入が許容されるようになっている。また、この三方切替弁47は、電気的にOFFされることにより、第2の通路44の第1端44aが第3の通路45の第2端45bに連通するように流路が切り替えられ、スロットル弁17より下流の吸気通路15に対する新気の導入が許容されるようになっている。PCV弁48は、開度可変に構成された周知の電動式の弁である。逆止弁49は、PCV弁48より下流の第2の通路44に設けられる。この逆止弁49は、吸気通路15からPCV弁48へ向かう気体の流れを規制し、その逆向きの流れを許容するように構成される。ここで、一般に三方切替弁47の開閉切り替えの応答性は、PCV弁48を所定開度から全閉に閉弁したり、全閉から所定開度に開弁したりするときの応答性より速いと考えられる。この実施形態では、第1の通路43と第2の通路44によりBGV通路が構成され、三方切替弁47とPCV弁48によりガス流量調節手段が構成される。また、第3の通路45の一部が、新気導入通路28を構成する。
この実施形態において、ECU50は、本発明の異常診断手段及び制御手段の一例に相当する。そして、ECU50は、エンジン1の運転状態に応じて電子スロットル装置18より下流の吸気通路15へブローバイガス又は新気を選択的に流すために、エンジン1の運転状態に応じて三方切替弁47とPCV弁48を制御するように構成される。この制御の詳しい説明はここでは省略する。
次に、ECU50が実行する第4の異常診断制御について説明する。図14に、その異常診断制御の内容をフローチャートにより示す。図14のフローチャートでは、図2のステップ110とステップ120との間にステップ500が設けられる点で図2のフローチャートと異なる。
処理がこのルーチンへ移行すると、ECU50は、ステップ100及びステップ110の処理を実行し、ステップ110の判断結果が肯定となる場合には、ステップ500で三方切替弁47の切り替え処理を実行する。この処理の内容の詳細を図15にフローチャートにより示す。
図15に示すように、ステップ501で、ECU50は、所定の異常診断条件が成立したか否かを判断する。ここで、ECU50は、例えば、「異常診断が未完了であること」又は、「減速・燃料カット時であること」などを条件とし、その成立を判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ502へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ504へ移行する。
ステップ502では、ECU50は、三方切替弁47をONからOFFへ切り替える。これにより、三方切替弁47が、吸気通路15へ新気を流すために、第2の通路44の第1端44aを第3の通路45の第2端45bに連通させるように流路が切り替えられる。
次に、ステップ503で、ECU50は、三方切替フラグX3WAYを「0」に設定し、処理をステップ501へ戻す。
一方、ステップ504では、ECU50は、三方切替フラグX3WAYを「0」に切り替えた後、「3秒」が経過したか否かを判断する。この「3秒」という時間は例示に過ぎない。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ505へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ501へ戻す。
ステップ505では、ECU50は、三方切替弁47をOFFからONへ切り替える。これにより、三方切替弁47が、吸気通路15へブローバイガスを流すために、第2の通路44の第1端44aを第1の通路43の第2端43bに連通させるように流路が切り替えられる。
次に、ステップ506で、ECU50は、三方切替フラグX3WAYを「1」に設定し、処理をステップ501へ戻す。
上記したステップ500の切り替え処理では、ECU50は、エンジン1が減速燃料カット中であって、異常診断条件が成立しているときに、すなわち、BGV装置の異常が診
断されるときに、吸気通路15へブローバイガスを流さず、新気を流すために三方切替弁
47を制御するようになっている。
その後、図14において、ECU50は、ステップ500からステップ120へ移行し、ステップ120〜ステップ340の処理を実行する。
以上説明したこの実施形態のBGV装置の異常診断装置によれば、エンジン1の運転状態に応じて三方切替弁47が制御されることにより、第2の通路44の第1端44aが、第1の通路43の第2端43b又は第3の通路45の第2端45bに選択的に連通され、電子スロットル装置18(スロットル弁17)より下流の吸気通路15(吸気マニホルド31)へブローバイガス又は新気が選択的に流される。従って、比較的応答性の高い一つの三方切替弁47を制御するだけで、吸気通路15へのブローバイガスと新気の導入が選択的に切り替えられる。このため、吸気通路15に対するブローバイガスの導入と新気の導入とを比較的簡素な構成により高応答に切り替えることができる。また、BGV装置としては、第1〜第3の通路43〜45、三方切替弁47及びPCV弁48のうち少なくとも一つの異常が診断される。このため、BGV装置の異常診断については、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
この実施形態では、BGV装置としては、第1の通路43、第3の通路45、三方切替弁47及びPCV弁48の異常が診断される。また、この異常診断時には、吸気通路15へ第1及び第3の通路43,45を介して、ブローバイガスではなく新気が流れる。このため、PCV弁48の開度を第1の開度OP1から第2の開度OP2へ変化させたときの新気の流量変化を、ブローバイガスの流量を変化させた場合よりも大きくすることができ、配管(第1の通路43及び第3の通路45)の孔あき異常の診断精度を向上させることができる。また、異常診断時には、吸気通路15へブローバイガスが流れないので、ブローバイガスと共にクランクケース4の中のオイルミストが吸気通路15へ流れることがない。このため、異常診断時におけるクランクケース4からのオイルの持ち去り量を低減することができる。
<第5実施形態>
次に、本発明におけるBGV装置の異常診断装置を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、BGV装置の機械的構成と異常診断制御の内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。図16に、この実施形態のガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。図16に示すように、この実施形態のBGV装置の機械的構成は、開度可変に構成された電動式のPCV弁27の代わりに、非電動式で圧力感応式(ばね作動式)のPCV弁29と、単に開弁及び閉弁可能に構成された電動式の開閉弁30とを備える。PCV弁29は、オイルセパレータ24の近傍にてBGV通路26に設けられる。オイルセパレータ24とBGV通路26との間には、PCV弁29を迂回するようにバイパス通路32が設けられる。開閉弁30は、このバイパス通路32に設けられる。開閉弁30は、ECU50に接続され、ECU50により開弁と閉弁が制御されるようになっている。開閉弁30は、非通電(オフ)のときに閉弁となり、通電(オン)されることで開弁するように構成される。この実施形態で、非電動式のPCV弁29と開閉弁30により、本発明のガス流量調節手段の一例が構成される。従って、エンジン1の運転時には、BGV通路26に作用する圧力に感応して非電動のPCV弁29が適宜開閉する。これにより、クランクケース4から吸気通路15へのブローバイガス流量が調節される。このとき、電動式の開閉弁30が閉弁することで、BGV通路26には、PCV弁29のみを通過したブローバイガスが流れる。これに対し、開閉弁30が開弁することで、バイパス通路32には、開閉弁30を通過したブローバイガスが流れる。このため、吸気通路15には、PCV弁29と開閉弁30の両方を通過したブローバイガスが流れ込む。このときのブローバイガス流量は、開閉弁30を閉弁したときのブローバイガス流量よりも多くなる。すなわち、この実施形態では、開閉弁30を開弁及び閉弁することで、BGV通路26には、小流量のブローバイガスと、大流量のブローバイガスとが選択的に流れることになる。
次に、ECU50が実行する第5の異常診断制御について説明する。図17に、その異常診断制御の内容をフローチャートにより示す。図18に、異常診断のために使用される第5の判定データをグラフにより示す。
処理が図17に示すルーチンへ移行すると、ステップ600で、ECU50は、異常診断フラグXOBDが「0」か否か、すなわち異常診断が未実行であるか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ610へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ600へ戻す。
ステップ610では、ECU50は、減速燃料カット中であるか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ620へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ600へ戻す。
ステップ620で、ECU50は、開閉弁30が閉弁(オフ)状態のときの吸気量Gaを、エアフローメータ51の検出値に基づき取り込む。開閉弁30は、非通電(オフ)時には、閉弁状態になっている。このとき、BGV通路26には、PCV弁29のみを通過した小流量のブローバイガスの流通可能となる。
次に、ステップ630で、ECU50は、ステップ620で取り込まれた吸気量Gaを、閉弁吸気量PCVGaOFFとして設定する。この閉弁吸気量PCVGaOFFは、本発明の第1の吸気量の一例に相当する。
次に、ステップ640で、ECU50は、開閉弁30を開弁(オン)する。ここで、開閉弁30を開弁することにより、BGV通路26には、PCV弁29と開閉弁30を通過した大流量のブローバイガスが流れることになる。
次に、ステップ650で、ECU50は、開閉弁30を開弁(オン)したときの吸気量Gaを、エアフローメータ51の検出値に基づき取り込む。
次に、ステップ660で、ECU50は、ステップ650で取り込まれた吸気量Gaを、開弁吸気量PCVGaONとして設定する。この開弁吸気量PCVGaONは、本発明の第2の吸気量の一例に相当する。
次に、ステップ670で、ECU50は、開弁吸気量PCVGaONと閉弁吸気量PCVGaOFFとの間の差を開弁吸気増量ΔPCVGaとして算出する。すなわち、閉弁吸気量PCVGaOFFを基準吸気量とし、それに対する開弁吸気量PCVGaONの増量分を算出する。
次に、ステップ680で、ECU50は、開閉弁30を閉弁(オフ)する。その後、ステップ690で、ECU50は、開弁吸気増量ΔPCVGaが、所定値G1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ700へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ720へ移行する。
ステップ700では、ECU50は、ブローバイガスの流量と配管(BGV通路26)が正常であると判定する。ECU50は、その正常判定をメモリに記憶することができる。
この判定につき、図18に示す第5の判定データを参照して説明する。図18は、横軸が開閉弁30の流量(開閉弁30を流れるブローバイガスの流量)を示し、縦軸が開弁吸気増量ΔPCVGaの値を示す。横軸における「(OPoff)」は、開閉弁30が閉弁(オフ)のときの流量を意味し、「(OPon)」は、開閉弁30が開弁(オン)のときの流量を意味する。この実施形態では、(OPoff)を便宜上「0」としている。ステップ690の判断結果が肯定となる場合、開弁吸気増量ΔPCVGaは所定値G1より大きいので、図18において、開弁吸気増量ΔPCVGaは、原点を通る小孔判定の破線より上側にて、原点を通る直線(太線)L21(正常)のように直線的に変化すると考えられる。この場合に、ブローバイガスの流量と配管(BGV通路26)が正常であると判定することができる。
その後、ステップ710で、ECU50は、異常診断フラグXOBDを「1」に設定し、処理をステップ600へ戻す。
一方、ステップ690から移行してステップ720では、ECU50は、開弁吸気増量ΔPCVGaが、所定値H1(<G1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ730へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ740へ移行する。
ステップ730では、ECU50は、ブローバイガスの配管(BGV通路26)に小さな孔(小孔)がある異常と判定し、処理をステップ710へ移行する。ECU50は、この異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ720の判断結果が肯定となる場合、開弁吸気増量ΔPCVGaは所定値G1以下となり、かつ、所定値H1より大きいので、図18において、開弁吸気増量ΔPCVGaは、原点を通る中孔判定の破線より上側で小孔判定の破線より下側にて、原点を通る直線(破線)L22(小孔)のように直線的に変化すると考えられる。この場合に、ブローバイガスの配管(BGV通路26)が小孔異常であると判定することができる。
一方、ステップ720から移行してステップ740では、ECU50は、開弁吸気増量ΔPCVGaが、所定値I1(<H1)より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ750へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ760へ移行する。
ステップ750では、ECU50は、ブローバイガスの配管に中程度の孔(中孔)がある異常と判定し、処理をステップ710へ移行する。ECU50は、この異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ740の判断結果が肯定となる場合、開弁吸気増量ΔPCVGaは所定値H1以下となり、かつ、所定値I1より大きいので、図18において、開弁吸気増量ΔPCVGaは、原点を通る大孔判定の破線より上側で中孔判定の破線より下側にて、原点を通る直線(破線)L23(中孔)のように直線的に変化すると考えられる。この場合に、ブローバイガスの配管(BGV通路26)が中孔異常であると判定することができる。
一方、ステップ760では、ECU50は、ブローバイガスの配管に大きな孔(大孔)がある異常と判定し、処理をステップ710へ移行する。ECU50は、この異常判定をメモリに記憶したり、所定の報知動作を実行したりすることができる。
ステップ740の判断結果が否定となる場合、開弁吸気増量ΔPCVGaは所定値I1以下となるので、図18において、開弁吸気増量ΔPCVGaは、大孔判定の破線より下側にて、原点を通る直線(破線)L24(大孔)のように直線的に変化すると考えられる。この場合に、ブローバイガスの配管(BGV通路26)が大孔異常であると判定することができる。
以上説明したこの実施形態におけるBGV装置の異常診断装置によれば、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。すなわち、この実施形態では、開閉弁30を開弁したときに検出される開弁吸気量PCVGaONと、閉弁したときに検出される閉弁吸気量PCVGaOFFとの差(開弁吸気増量ΔPCVGa)を比較的大きくとることが可能となる。このため、BGV装置の配管(BGV通路26)に大小の孔があいているなどの孔あき異常判定に必要な流量変化を確保することができる。この結果、配管(BGV通路26)に係る大小の孔あき異常を精度良く診断することができる。また、この異常判定の精度を確保するために、判定に時間をかける必要がなく、比較的短時間に異常診断を行うことができる。
また、この実施形態では、ブローバイガス流量を調節するための本発明におけるガス流量調節手段が、開度可変な電動式のPCV弁27ではなく、非電動式で圧力感応式(ばね作動式)のPCV弁29と、単に開弁及び閉弁可能に構成された電動式の開閉弁30とで構成される。このため、ガス流量調節手段を、PCV弁27で構成する場合と比べて低コストに構成することができる。
<第6実施形態>
次に、本発明におけるBGV装置の異常診断装置を具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、BGV装置の機械的構成の点で前記第5実施形態と構成が異なる。第5実施形態では、BGV装置の異常を診断するために、開閉弁30を開弁及び閉弁することで、BGV通路26を流れるブローバイガス流量を、小流量と大流量に変化させるようにした。このため、ブローバイガス流量が大流量になるときは、クランクケース4からのオイルミストの持ち去り量も増加することになり、その結果、エンジンオイル消費が増加する傾向がある。このため、異常診断の精度向上とエンジンオイル消費低減の両立に限界があった。そこで、この実施形態の異常診断装置では、異常診断の精度向上とエンジンオイル消費低減の両立を図るようにしている。
図19に、この実施形態のガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。図19に示すように、この実施形態のBGV装置でも、開度可変に構成された電動式のPCV弁27の代わりに、非電動式で圧力感応式(ばね作動式)のPCV弁29と、単に開弁及び閉弁可能に構成された電動式の開閉弁30とが設けられる。PCV弁29は、オイルセパレータ24の近傍にてBGV通路26に設けられる。また、吸気通路15の近傍にて、BGV通路26と新気導入通路28との間には、両通路26,28を連通させる連通路33が設けられる。開閉弁30は、この連通路33に設けられる。開閉弁30は、ECU50により開弁及び閉弁が制御されるようになっている。この実施形態では、PCV弁29が、本発明のガス流量調節弁の一例に相当する。従って、エンジン1の運転時には、BGV通路26に作用する圧力に感応して、非電動のPCV弁29が適宜開閉する。これにより、クランクケース4から吸気通路15へのブローバイガス流量が調節される。このとき、電動式の開閉弁30が閉弁することで、BGV通路26には、図19に黒矢印で示すように、PCV弁29を通過したブローバイガスが流れる。これに対し、開閉弁30が開弁することにより、BGV通路26には、図19に黒矢印で示すように、PCV弁29を通過したブローバイガスが流れると共に、連通路33には、図19に破線矢印で示すように、新気導入通路28を流れる新気(白矢印で示す。)の一部が流入し、その新気がブローバイガスと共に吸気通路15へ流れる。このときのブローバイガス流量は、開閉弁30を閉弁したときのブローバイガス流量とほぼ同程度となる。
なお、この実施形態でも、異常診断制御のために、図17に示す第5の異常診断制御の内容と、図18に示す第5の判定データを採用することができる。この実施形態でも、ECU50は、本発明の異常診断手段の一例に相当する。
従って、この実施形態でも、第5実施形態と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、開閉弁30を開弁したときに、吸気通路15へ流れるブローバイガス流量が増えるのではなく、ブローバイガスの代わりに、新気導入通路28を流れる新気が吸気通路15へ流れることになる。このため、開閉弁30を開弁しても、クランクケース4からのブローバイガス流量が増えることはなく、クランクケース4からのオイルミストの持ち去り量が増えることはなく、その結果、エンジンオイル消費を低減することができ、異常診断の精度向上とエンジンオイル消費低減の両立を図ることができる。
<第7実施形態>
次に、本発明におけるBGV装置の異常診断装置を具体化した第7実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、エンジンシステムとBGV装置の機械的構成の点で前記第5実施形態と構成が異なる。図20に、この実施形態のガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。図20に示すように、このガソリンエンジンシステムは、周知の過給機36を備える。過給機36は、電子スロットル装置18とエアフローメータ51との間の吸気通路15に設けられるコンプレッサ36aと、排気通路23に設けられるタービン36bと、コンプレッサ36aとタービン36bとを一体回転可能に連結する回転軸36cとを含む。また、コンプレッサ36aと電子スロットル装置18との間の吸気通路15には、周知のインタークーラ37が設けられる。
この実施形態のBGV装置でも、開度可変に構成された電動式のPCV弁27の代わりに、非電動式で圧力感応式(ばね作動式)のPCV弁29と、単に開弁及び閉弁可能に構成された電動式の開閉弁30とが設けられる。PCV弁29と開閉弁30は、それぞれヘッドカバー14に設けられる。そして、PCV弁29と開閉弁30は、それぞれBGV通路26に並列に接続される。すなわち、BGV通路26の入口側には、ヘッドカバー14に設けられたPCV弁29と開閉弁30が並列に接続される。また、BGV通路26の出口側は、サージタンク19に接続される。この場合、クランクケース4の中に溜まったブローバイガスは、連通路2aを介してヘッドカバー14の中へ流れ、ヘッドカバー14からPCV弁29、開閉弁30及びBGV通路26を介してサージタンク19へ流れることになる。新気導入通路28の入口側は、コンプレッサ36aより上流の吸気通路15に接続される。開閉弁30は、ECU50により開弁及び閉弁が制御されるようになっている。この実施形態で、非電動式のPCV弁29と開閉弁30により、本発明のガス流量調節手段の一例が構成される。
なお、この実施形態でも、異常診断制御のために、図17に示す第5の異常診断制御の内容と、図18に示す第5の判定データを採用することができる。この実施形態でも、ECU50は、本発明の異常診断手段の一例に相当する。
従って、この実施形態では、過給機36を備えたガソリンエンジンシステムにおいて、第5実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
(1)前記第1実施形態では、BGV通路26の入口を、クランクケース4に設けられたオイルセパレータ24に接続した。これに対し、図21にガソリンエンジンシステムの概略構成図に示すように、BGV通路26の入口をヘッドカバー14に接続するように構成することもできる。この場合、クランクケース4の中に溜まったブローバイガスが連通路2aを介してヘッドカバー14の中へ流れ、そのヘッドカバー14からBGV通路26を介して吸気通路15へ流れることになる。
(2)前記第1〜第3の実施形態では、吸気マニホルド31にPCV弁27を直付けしたが、PCV弁をパイプ等の配管を介して吸気通路(吸気マニホルド)に接続することもできる。
(3)前記第2実施形態では、第1実施形態と同様、1開度吸気増量ΔPCVGa1及び2開度吸気増量ΔPCVGa2に基づいてBGV装置の異常を診断するように構成したが、前記第3実施形態と同様、1開度吸気量PCVGa1及び2開度吸気量PCVGa2に基づいてBGV装置の異常を診断するように構成することもできる。
(4)前記各実施形態では、ガス流量調節手段を第1の開度に制御したときに検出される第1の吸気量と、第2の開度に制御したときに検出される第2の吸気量とに基づいてBGV還元装置の異常を診断するように構成した。これに対し、ガス流量調節手段を第3の開度等に制御したときに検出される第3の吸気量等を加え、3つ以上の開度に対応する3つ以上の検出吸気量に基づいてBGV装置の異常を診断するように構成することも、この発明の趣旨に含まれるものとすることができる。
(5)前記第5〜第7の実施形態では、ブローバイガス流量を調節するための構成として、非電動式で圧力感応式(ばね作動式)のPCV弁29と、単に開弁及び閉弁可能に構成された電動式の開閉弁30とを設けたが、ブローバイガス流量を調節するための構成として、開度可変に構成された電動式のPCV弁と電動式の開閉弁とを設けることもできる。