以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお各図面に示される油圧ポンプ・モータ10は、理解を容易にするために要部構成が誇張されて表現されている箇所もあり、実際のサイズ、配置関係及び形状とは異なっている箇所がある。
以下で説明する油圧ポンプ・モータは、いわゆる可変容量型の斜板式ピストンポンプ・モータであり、ポンプ及びモータの両アクチュエータとして活用可能である。油圧ポンプ・モータを油圧ポンプとして活用する場合、油圧ポンプ・モータは、後述のシリンダ穴からの作動油の吐出(及びシリンダ穴への作動油の供給)に基づく駆動力を出力する。一方、油圧ポンプ・モータ10を油圧モータとして活用する場合、油圧ポンプ・モータは、後述の回転軸の回転に基づく駆動力を出力する。より具体的には、下述の実施形態に係る油圧ポンプ・モータをポンプとして活用する場合、エンジン等の動力源からの動力によって回転軸を回転させることにより、回転軸とスプライン結合等によって結合されたシリンダブロックを回転させて、当該シリンダブロックの回転によりピストンを往復動作させる。このピストンの往復動作に応じて、一部のシリンダ穴からは流体(作動油)が吐き出されるとともに他のシリンダ穴には流体が吸い込まれ、油圧ポンプが実現される。一方、油圧ポンプ・モータをモータとして活用する場合、動力源からの動力によって流体(作動油)をシリンダ穴に流入させるとともにシリンダ穴から流体を吐き出させることにより、ピストンを往復動作させながらプレート上で摺動回転させる。このピストンの回転とともにシリンダブロック及び回転軸も回転するため、当該回転軸の回転を利用することで油圧モータを実現できる。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の概要構成を示す部分断面と、模式的に示される中継部50、電動モータ31及びコントローラ46とを示す図である。なお理解を容易にするため、図1のうちピストン本体16、ボール螺子機構35及び梃子機構38については側方から見た状態が示されている。
本実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10は、回転軸12、シリンダブロック13、複数のピストン15、プレート20、ケース21及び電気駆動部30を備える。
ケース21は、第1ケースブロック22と、第1ケースブロック22の一端側に結合される第2ケースブロック23とを有する。本例では第1ケースブロック22の内側に、回転軸12の一方の端部と、図示しないバルブプレート(図2の符号「52」参照)を介して複数のシリンダ穴14に連通する供給ポート54及び排出ポート55の一部とが配置されている。なお図面では、説明の便宜上、供給ポート54及び排出ポート55はラインによって表されているが、実際には、シリンダ穴14への作動油の供給及び排出に応じた適切な径を有する。また供給ポート54及び排出ポート55は、第1ケースブロック22を貫通して設けられ、油圧ポンプ・モータ10の外部に設けられる油圧源に連通する。
一方、第2ケースブロック23の内側には、シリンダブロック13、ピストン15、プレート20及び図示しないバルブプレートに加え、梃子機構38と、ボール螺子機構35の一部とが配置されており、プレート20が梃子機構38を介して第2ケースブロック23によって傾転可能に保持されている。第2ケースブロック23のうち第1ケースブロック22とは反対側の端部には回転軸12が貫通するシャフト用孔49が形成され、回転軸12は、シャフト用孔49において第1ベアリング25aにより回転自在に支持され、シャフト用孔49から外側に向かって突出する。
回転軸12は、回転軸線Aの方向(図1の「y」方向参照)に延在し、シリンダブロック13及びプレート20を貫通して、第2ケースブロック23のシャフト用孔49から外側に突出するとともに、第2ケースブロック23の内側から第1ケースブロック22の内側に突出する。回転軸12は、シリンダブロック13を貫通する部分に設けられるスプライン結合部27においてシリンダブロック13とスプライン結合する。このシリンダブロック13とのスプライン結合により回転軸12は、回転軸線Aの方向に関してはシリンダブロック13と無関係に移動可能であるが、回転軸線A周りの回転方向に関してはシリンダブロック13とともに一体的に回転する。また回転軸12は、第1ケースブロック22内において第2ベアリング25bにより回転自在に支持され、第2ケースブロック23(ケース21)内において第1ベアリング25aを介して回転自在に支持され、プレート20とは接触しない。したがって回転軸12は、シリンダブロック13以外の部材によっては阻害されずに、シリンダブロック13とともに回転軸線A周りの回転方向へ回転可能に設けられている。
シリンダブロック13は、回転軸12とともに回転軸線Aを中心に回転し、回転軸線Aの周りにおいて回転軸線Aと平行な方向に穿設された複数のシリンダ穴14を有する。シリンダブロック13に形成される複数のシリンダ穴14の数は特に限定されないが、これらのシリンダ穴14は同一円周上に等間隔で配置されることが好ましい。
シリンダブロック13のうちプレート20が設けられる側とは反対側の端部には、複数のシリンダ穴14のそれぞれに連通する開口(図2の符号「14a」参照)が形成されている。またシリンダブロック13のうちプレート20が設けられる側とは反対側の端部上には、複数の貫通孔(図2の符号「52a」参照)が形成されたバルブプレート(図2の符号「52」参照)が配置されている。複数のシリンダ穴14は、これらの開口及び貫通孔を介して供給ポート54及び排出ポート55と連通し、これらの供給ポート54及び排出ポート55を介して作動油の供給及び排出が行われる。
本例のバルブプレートは、第2ケースブロック23に固定されており、シリンダブロック13が回転軸12とともに回転する場合であっても静止している。そのため、供給ポート54及び排出ポート55の各々と連通するシリンダ穴14は、シリンダブロック13の回転状態に応じてバルブプレート(貫通孔)を介して切り換えられ、供給ポート54から作動油が供給される状態と排出ポート55に作動油を排出する状態とが連続的に訪れる。
例えば図示しない動力源から供給される作動油がバルブプレートを介してシリンダ穴14に供給及び排出されると、各ピストン15は対応するシリンダ穴14への作動油の供給又は排出に応じて往復動する。このピストン15の往復動に伴ってピストン15の先端部に形成されるシュー17がプレート20の摺動面48上を摺動しながら回転し、ピストン15が回転する。そして、このピストン15の回転とともにシリンダブロック13が回転し、シリンダブロック13と一体となって回転軸12は回転する。
複数のピストン15は、それぞれ複数のシリンダ穴14の周面に対して摺動自在に配置され、複数のシリンダ穴14の各々において回転軸線Aと平行な方向に往復動可能に設けられる。各ピストン15は、シリンダ穴14の内外でスライド移動するピストン本体16と、当該ピストン本体16のうちシリンダ穴14から突出する側の端部に取り付けられるシュー17とを有する。ピストン本体16の内部は空洞であり、シリンダ穴14内の作動油で満たされている。したがってピストン15の往復動はシリンダ穴14への作動油の供給及び排出と連関し、ピストン15がシリンダ穴14から突出する動作を行う際にはシリンダ穴14内に供給ポート54から作動油が供給され、ピストン15がシリンダ穴14内に引き下がる際にはシリンダ穴14内から排出ポート55に作動油が排出される。
本例では回転軸12の周囲において、シリンダブロック13に設けられる支持部材59と、各シュー17を保持する押圧部材57と、支持部材59と押圧部材57との間に設けられるスプリング58とが配置される。各シュー17は、これらの支持部材59、スプリング58及び押圧部材57によって摺動面48に対して押し当てられる。特に、本例の摺動面48(プレート20)は様々な角度に傾転可能であるが、スプリング58の弾性力によって、摺動面48(プレート20)の傾転角にかかわらず各シュー17は摺動面48に対して適切に追従して押し当てられる。これにより、ピストン15がシリンダブロック13とともに回転すると、各シュー17はプレート20の摺動面48上を円状に摺動する。なお本例では、ピストン本体16の先端が球状の凸部を形成し、シュー17に形成された球状の凹部にピストン本体16の凸部が嵌め込まれ、シュー17の凹部がかしめられて、ピストン本体16及びシュー17によって球面軸受構造が形成されている。この球面軸受構造によって、プレート20の摺動面48が傾転しても、各シュー17はプレート20の摺動面48に追従して当該摺動面48上を適切に摺動回転できる。
プレート20は、シリンダブロック13に臨む側において平坦な摺動面48を有し、摺動面48には、上述のように複数のシリンダ穴14から突出する複数のピストン15のシュー17が載せられる。また本例のプレート20は、電気駆動部30及び梃子機構38を介して傾転可能に設けられており、プレート20(摺動面48)の傾転角に応じてピストン15の往復動のストロークが変わる。すなわちプレート20(摺動面48)の傾転角が大きいほど各ピストン15の往復動に伴うシリンダ穴14に対する作動油の供給量及び排出量が大きくなる。一方、傾転角が0度の場合には各ピストン15は往復動せず、各シリンダ穴14からの作動油の排出量もゼロになる。
なおプレート20(摺動面48)の傾転角は、回転軸線Aと直交する方向を基準にして、摺動面48の延在する方向が当該基準方向と成す角度によって表される。したがって中立位置に配置されるプレート20(摺動面48)の傾転角は0度であり、図1に示すようにプレート20(摺動面48)が中立位置に配置されると、摺動面48は回転軸線Aと直交し、全てのピストン15のシリンダ穴14からの突出量は同じになる。
電気駆動部30はプレート20を傾転させる機構であり、本実施形態では、出力軸32を有する電動モータ31と、電動モータ31に中継部50を介して連結されるボール螺子機構35と、ボール螺子機構35のナット37とプレート20とを連結する梃子機構38とを有する。電動モータ31では回転動力が生み出され、当該回転動力は出力軸32の回転によって出力される。本例では、電動モータ31はコントローラ46に接続され、コントローラ46の制御下で、電動モータ31の回転はコントロールされる。
電動モータ31の出力軸32には中継部50を介してボール螺子機構35の螺子軸36が接続されている。中継部50は、カップリング部材或いは減速機によって構成され、電気駆動部30の出力軸32から伝達される回転動力をボール螺子機構35の螺子軸36に伝達する。中継部50がカップリング部材によって構成される場合、基本的には出力軸32から伝達される回転動力と同じ回転速度及び回転トルクの回転動力が中継部50から螺子軸36に伝達される。一方、中継部50が減速機によって構成される場合、出力軸32から伝達される回転動力は中継部50によって減速されて回転トルクが増大され、その回転トルクが増大された回転動力が中継部50から螺子軸36に伝達される。
ボール螺子機構35は、回転運動部として機能する螺子軸36と、線運動部として機能するナット37と、螺子軸36とナット37との間に配置される図示しないボールとを有し、螺子軸36の回転運動をナット37の直線的な線運動(直線運動)に変換する変換機構として機能する。螺子軸36は、第2ケースブロック23に固定される第3ベアリング25c及び第4ベアリング25dによって回転自在に支持されており、中継部50を介して出力軸32に連結され、出力軸32及び中継部50から伝達される回転動力によって回転される。
ナット37は、図示しないボールを介して螺子軸36に螺合されるとともに、梃子機構38を介してプレート20に連結されており、プレート20はナット37の直線運動に応じて傾転する。本例のナット37には連結突出部41が一体的に設けられており、ナット37及び連結突出部41は、螺子軸36の回転に伴って、螺子軸36の延在方向(本例では回転軸線Aと垂直な方向(図1の「x」方向参照))に移動する。
梃子機構38は、一方の端部を構成する梃子入力部39と、梃子入力部39から延在し梃子入力部39と一体的に設けられた直線状の梃子支持部42と、梃子支持部42のうち梃子入力部39とは反対側の端部に設けられるプレート連結部44とを有する。
梃子入力部39は、連結突出部41を介してナット37に連結され、ナット37及び連結突出部41の移動位置に応じて傾転状態が変化する。本例の梃子入力部39は楕円状の連結穴40を有し、連結突出部41は連結穴40に配置された状態で梃子入力部39と係合する。連結穴40の長軸は、梃子支持部42の延在方向と平行な方向に延在し、連結突出部41が連結穴40の長軸方向に関して連結穴40内において移動可能に形成されている。すなわち、連結突出部41及び支点部43が回転軸線Aと平行に配置され、連結突出部41の移動可能範囲において連結突出部41と支点部43との間の距離が最短距離となる場合に、連結突出部41は、連結穴40のうち梃子支持部42に近接する側に配置される。一方、ナット37の移動に伴って連結突出部41と支点部43との間の距離が大きくなるに従って、連結突出部41は、連結穴40において梃子支持部42から徐々に離間する。なお、梃子機構38の梃子入力部39及び梃子支持部42の傾転状態が連結突出部41の移動に応じて変化可能であれば、連結穴40の短軸の長さは特に限定されない。
梃子支持部42には、梃子機構38の支点として機能する支点部43が設けられ、この支点部43は第2ケースブロック23に固定されており、梃子入力部39及び梃子支持部42(梃子機構38)は支点部43を介して第2ケースブロック23に回転自在に支持されている。支点部43の位置は特に限定されないが、プレート連結部44の近くに設けるほど、梃子の原理により、プレート連結部44においてより大きな「プレート20を傾転動させるための力」を得られる。プレート連結部44は、梃子支持部42に対してプレート20を固定する部位であり、ナット37及び連結突出部41の位置により決められる梃子入力部39及び梃子支持部42の状態に応じて支点部43を中心に回動する。したがってプレート20の摺動面48はこのプレート連結部44の回動に応じて傾転され、摺動面48(プレート20)の傾転角はナット37及び連結突出部41の位置に応じて定まる。
上述の構成を有する油圧ポンプ・モータ10によれば、電気駆動部30によってプレート20の摺動面48の傾転角が任意の角度に調整される。すなわち電動モータ31から出力する回転動力をコントローラ46により制御してボール螺子機構35のナット37及び連結突出部41の位置を調整することにより、梃子機構38を介してプレート20(摺動面48)の傾転角を所望角度に調整できる。
このように本実施形態の油圧ポンプ・モータ10によれば、簡素な構成を有する電気駆動部30によって簡単にプレート20(摺動面48)を傾転して所望の傾斜状態にすることができる。従来の可変容量型の斜板式油圧ポンプ・モータでは、特許文献1に記載の斜板式ピストンポンプのように、プレート(斜板)の傾転角(傾斜)を変えるために制御ピンや傾転スプリング等を使った機構を用いる必要があり、構成が複雑になる。
一方、本実施形態の油圧ポンプ・モータ10のように、プレート(斜板)20の傾転角を変える機構に電気駆動部30を利用することで、プレート20を所望の傾転角に調整する機構を簡素な構成で低コストに実現できる。例えば、本実施形態のように電気駆動部30を利用することによって、プレート20を傾転させるための「ギアポンプ等の油圧源」を設ける必要がなく、油圧ポンプ・モータ10全体を小型化することも可能である。また、従来の可変容量型の斜板式油圧ポンプ・モータでは必要とされていた、パイロットポンプの吐出圧やタンク圧をパイロット圧として圧力室に導く切り換えバルブや、サーボピストンなどの要素も、本実施形態の電気駆動部30によれば省略できる。また特許文献1の斜板式ピストンポンプでは必要とされていた傾転スプリングを省略することで、プレート20の傾転動に要する力を低減でき、電動モータ31を小型化することも可能である。
なお本実施形態の電気駆動部30は、上述のように、プレート20を中立位置に配置して油圧ポンプ・モータ10から出力される駆動力をゼロにする中立機構(出力ゼロ機構)28としての役割も果たしうる。すなわちコントローラ46によって制御される電動モータ31が出力軸32を回転させて、プレート20の摺動面48が中立位置に配置されるような位置(中立調整位置)にナット37及び連結突出部41を移動させることにより、ピストン15は往復動することなく静止し、油圧ポンプ・モータ10から出力される駆動力はゼロになる。
なおコントローラ46は、ナット37及び連結突出部41の移動可能範囲における上記の中立調整位置を、任意の手法によって把握可能である。例えばコントローラ46は油圧ポンプ・モータ10の起動時に電動モータ31を制御してナット37及び連結突出部41の移動可能範囲を測定し、当該測定結果からナット37及び連結突出部41の中立調整位置を算出してもよい。
<第2実施形態>
上述の第1実施形態と同一又は類似の構成及び機能を有する部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の概要構成を示す部分断面と、模式的に示されるコントローラ46及び切換弁62とを示す図である。なお図2には、螺子軸36の軸線方向(図1の矢印「H」参照)に関する油圧ポンプ・モータ10の部分断面図が示されており、図2のうちピストン本体16については側方から見た状態が示されている。また、理解を容易にするため、図2では、ボール螺子機構35(螺子軸36及びナット37)、連結突出部41、梃子機構38(梃子入力部39、梃子支持部42、支点部43及びプレート連結部44)、第3ベアリング25c、第4ベアリング25d、中継部50及び電動モータ31等の図示が省略されている。
本実施形態の油圧ポンプ・モータ10では、供給ポート54と排出ポート55との間の連通及び非連通を切り換える切換弁62が設けられており、この切換弁62はコントローラ46に接続されて当該コントローラ46により開弁及び閉弁が制御される。本実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の他の構成は、上述の第1実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10と同じである。
本例の切換弁62は電磁弁によって構成され、切換弁62が通電されずに消磁状態にある場合には供給ポート54及び排出ポート55は切換弁62を介して油圧源に連通され、供給ポート54及び排出ポート55は互いに対して非連通に維持される。一方、切換弁62が通電されて励磁状態にある場合には、供給ポート54及び排出ポート55と油圧源との連通が切換弁62によって遮断され、供給ポート54と排出ポート55とが切換弁62を介して連通する。供給ポート54及び排出ポート55が切換弁62を介して連通されることにより、供給ポート54及び排出ポート55における作動油の圧力が同じになるため、シリンダ穴14からピストン15が突出してシリンダブロック13及び回転軸12が回転してしまうことを、より確実に防げる。
したがってコントローラ46は、電気駆動部30によってプレート20が中立位置に配置される場合に、切換弁62を通電して励磁状態に置き、供給ポート54と排出ポート55とを連通するように切換弁62をコントロールする。このようにコントローラ46は、電動モータ31を制御してプレート20を中立位置に配置する場合に、切換弁62を通電して供給ポート54と排出ポート55とを連通する。
以上説明したように本実施形態の油圧ポンプ・モータ10によれば、切換弁62によって、供給ポート54及び排出ポート55を介してシリンダ穴14における作動油の圧力がコントロールされ、プレート20をより確実に中立位置に配置及び保持できる。このように本実施形態では、「プレート20を中立位置に配置して油圧ポンプ・モータ10から出力される駆動力をゼロにする中立機構28」が、上述の電気駆動部30に加え、切換弁62を更に有することになる。
なお、切換弁62は図2に示す電磁弁以外の弁によって構成されてもよく、プレート20が中立位置以外の位置に傾転される場合には「供給ポート54及び排出ポート55」と「油圧源」とを連通状態とする一方で、プレート20が中立位置に配置される場合には「供給ポート54」と「排出ポート55」とを連通状態とすることができれば、どのような構成であってもよい。一具体例として、「供給ポート54及び排出ポート55」と「油圧源」とを常に連通状態に維持し、その一方で、プレート20が中立位置以外の位置に傾転される場合に供給ポート54と排出ポート55とを非連通状態とし、プレート20が中立位置に傾転される場合に供給ポート54と排出ポート55とを連通状態とする弁を、採用してもよい。
<第3実施形態>
上述の第1実施形態と同一又は類似の構成及び機能を有する部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図3は、本発明の第3実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の概要構成を示す部分断面と、模式的に示される比例ソレノイド64及びコントローラ46とを示す図である。なお図3のうちピストン本体16、比例ソレノイド64及び梃子機構38については側方から見た状態が示されている。
本実施形態の電気駆動部30は、上述の電動モータ31、中継部50及びボール螺子機構35(図1参照)の代わりに、コントローラ46に接続される比例ソレノイド64を有する。本実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の他の構成は、上述の第1実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10と同じである。
比例ソレノイド64は、コイル部65と、当該コイル部65に流される電流の大きさに応じて突出量を調整可能な可動部66とを含み、当該可動部66は、ナット37、連結突出部41及び梃子機構38を介してプレート20に連結される。
本例の比例ソレノイド64の具体的な構成は特に限定されず、比例ソレノイド64は、例えば、コイル部65及び可動部66に加えてスプリング等の弾性体を含んでいてもよい。この場合、可動部66の磁極形状や弾性体による弾性力を工夫することで、コイル部65に流す電流の大きさに応じて可動部66の突出量を所望の値に調整可能である。なお、コイル部65に流される電流の大きさはコントローラ46によって調整され、可動部66の突出量がコントローラ46によって調整される。
本例の可動部66は、連結突出部41が一体的に設けられたナット37に接続し、可動部66の突出量に応じてナット37及び連結突出部41の位置が決まる。なお、ナット37は必ずしも雌ねじ部を有している必要はなく、可動部66はナット37に対して固定的に接合され、ナット37は可動部66と一体的に移動する。そして可動部66は、ナット37、連結突出部41及び梃子機構38を介してプレート20に連結され、可動部66の突出量に応じて梃子機構38が傾転し、プレート20の摺動面48の傾転角は梃子機構38の傾転状態に応じて定まる。したがって、プレート20の摺動面48の傾転角は可動部66の突出量に応じて定まり、コントローラ46は、比例ソレノイド64を制御して、プレート20の摺動面48を所望の傾転角に配置できる。
したがって可動部66の移動可能範囲には、「連結突出部41及び支点部43が回転軸線Aと平行に配置され、連結突出部41と支点部43との間の距離が最短距離となってプレート20の摺動面48が中立位置に配置される」ような位置(中立調整位置)が含まれる。
このように、コイル部65及び可動部66を有する比例ソレノイド64と、可動部66とプレート20とを連結する梃子機構38とを含む本実施形態に係る電気駆動部30によっても、プレート20(摺動面48)を傾転して所望の傾斜状態にすることができる。特にソレノイドは小型化することが比較的容易であるため、電気駆動部30が比例ソレノイド64を用いることによって、油圧ポンプ・モータ10全体をよりコンパクトに構成することが可能になる。
<第4実施形態>
上述の第1実施形態と同一又は類似の構成及び機能を有する部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図4は、本発明の第4実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の概要構成を示す部分断面と、模式的に示される電動モータ31及びコントローラ46とを示す図である。なお図4のうちピストン本体16及び支持機構72については側方から見た状態が示されている。
本実施形態では、ボール螺子機構35(図1参照)の代わりにウォームギア68が変換機構として使用され、梃子機構38(図1参照)の代わりに支持機構72が設けられている。また本実施形態では、プレート20の傾転動に対する制動力をもたらす保持機構70として、中立位置に配置されるプレート20と係合可能な第1デテント機構71が設けられている。
本実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の他の構成は、上述の第1実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10と同じである。
本例では、電動モータ31及びウォームギア68が第2ケースブロック23内に配置される。ウォームギア68は、電動モータ31の出力軸32に取り付けられるウォーム68aと、プレート20の側部に取り付けられ当該ウォーム68aと噛み合うウォームホイール68bとを有する。ウォーム68aは出力軸32と一体的に回転し、ウォームホイール68bはウォーム68aの回転に応じて曲線的な線運動(曲線運動)を行う。
なお、ウォームギア68の種類は特に限定されず、鼓形のウォームギア68であってもよいし、円筒型のウォームギア68であってもよい。またウォームホイール68bが取り付けられる本例のプレート20の側部は、図4に示すように曲線的な断面外形を有する。またプレート20の傾転動をスムーズに実施する観点からは、ウォームホイール68bの曲線的な移動経路が支点部43を中心とした円の一部を形成するように、ウォームホイール68bを構成することが好ましい。
支持機構72は、直線状に延在する支持部材72aを有し、支持部材72aの一端側には第2ケースブロック23に固定される支点部43が設けられ、支持部材72aの他端側にはプレート20を支持部材72aに固定するプレート連結部44が設けられている。支持部材72a(支持機構72)は、支点部43を介して第2ケースブロック23に回転自在に支持される。したがって支点部43は、プレート20の傾転動の支点として働き、プレート20は支点部43を中心にして傾転可能に設けられる。
したがってウォームホイール68bが取り付けられたプレート20は、ウォームホイール68bの移動に応じて、支点部43を中心に回動して傾転する。そのため、電動モータ31から出力する回転動力をコントローラ46により制御してウォーム68aの回転及びウォームホイール68bの位置を調整することにより、プレート20(摺動面48)の傾転角を所望の角度に調整できる。
一方、第1デテント機構71は、第2ケースブロック23に設けられたデテント挿入孔71aと、デテント挿入孔71aに配置されるデテントスプリング71bと、デテント挿入孔71aに一部が配置されデテントスプリング71bにより付勢されるデテント可動部71cとを有する。
プレート20には凹状のデテント係止部20aが形成され、デテント係止部20aはデテント可動部71cと係合可能な形状を有する。プレート20が中立位置に配置されてプレート20の傾転角がゼロである場合のデテント係止部20aとデテント可動部71cとの対向方向(デテント係止部20aとデテント可動部71cとの接触面の法線方向、又は、当該接触面に接する面の法線方向)は、デテントスプリング71bによるデテント可動部71cの付勢方向と一致する。したがってプレート20が中立位置に配置される場合には、デテント可動部71cの先端部がデテント係止部20aの内部に挿入されてデテント係止部20aと係合し、プレート20はデテント可動部71cによって係止される。一方、プレート20の傾転角がゼロではなくプレート20の摺動面48が傾斜している場合には、デテント可動部71cとデテント係止部20aとの間の係合は解除され、デテント可動部71cはプレート20の側部のうちデテント係止部20a以外の箇所に押し当てられる。
したがって第1デテント機構71は、「プレート20が中立以外の位置に配置される場合」よりも「プレート20が中立位置に配置される場合」のほうが、プレート20の傾転動に対して大きな制動力を働かせる。
なお本実施形態において、デテント可動部71cとデテント係止部20aとの間の係合の解除は、電動モータ31及びウォームギア68によるプレート20の傾転動に連動して行われる。すなわちデテント可動部71cとデテント係止部20aとの間の係合の解除は、プレート20の傾転動に応じてデテント可動部71cがプレート20の側部上を滑動しながらデテント係止部20aから抜け出すことで行われる。そのため、プレート20を中立位置から所望の傾転角に傾転させる際に電動モータ31からウォームギア68を介してプレート20に伝達される傾転動力は、デテント可動部71cとデテント係止部20aとの間の係合を解除できる程度の大きさを有する。したがって電動モータ31及びウォームギア68によってプレート20に伝達する必要のある傾転動力の大きさは、デテント可動部71c及びデテント係止部20aの係合箇所の形状や摩擦力等に応じて定まる。
このように本実施形態では、プレート20を中立位置に配置して油圧ポンプ・モータ10から出力される駆動力をゼロにする中立機構28は、電動モータ31、ウォームギア68及び第1デテント機構71を有する。
<第5実施形態>
上述の第4実施形態と同一又は類似の構成及び機能を有する部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図5は、本発明の第5実施形態に係る油圧ポンプ・モータ10の概要構成を示す部分断面と、模式的に示される電動モータ31及びコントローラ46とを示す図である。なお図5のうちピストン本体16及び支持機構72については側方から見た状態が示されている。
本実施形態に係るウォームギア68のウォームホイール68bは、プレート20の側部ではなく、プレート連結部44を介して摺動面48とは反対側に位置するプレート20の底部に設けられている。
このようにプレート20に対するウォームホイール68bの取り付け位置は特に限定されず、摺動面48上における各シュー17の摺動回転を阻害せず且つ支点部43を中心としたプレート20の傾転動を阻害しない位置であれば、プレート20のいずれの箇所にウォームホイール68bが取り付けられてもよい。なお、プレート20の傾転動をスムーズに実施する観点からは、ウォームホイール68bの曲線的な移動経路が支点部43を中心とした円の一部を形成するように、ウォームホイール68bを構成することが好ましい。
また電動モータ31の位置も特に限定されないが、図5に示す例では、第2ケースブロック23の一部に切り欠き部が設けられ、この切り欠き部に電動モータ31が配置され、第2ケースブロック23の内外にわたって電動モータ31が存在する。
また本実施形態では、図4に示す第1デテント機構71の代わりに、電磁力を利用した第2デテント機構75が保持機構70として設けられている。第2デテント機構75は、第2ケースブロック23に設けられたデテント挿入孔75aと、デテント挿入孔75aに配置されるデテントスプリング75bと、デテント挿入孔75aに一部が配置されデテントスプリング75bに付勢されるデテント可動部75cと、コントローラ46によって通電可能なデテントコイル75dとを有する。
プレート20には凹状のデテント係止部20aが形成され、デテント係止部20aはデテント可動部75cと係合可能な形状を有する。プレート20が中立位置に配置されてプレート20の傾転角がゼロである場合のデテント係止部20aとデテント可動部75cとの対向方向は、デテントスプリング75bによるデテント可動部75cの付勢方向と一致している。したがってプレート20が中立位置にある場合には、デテント可動部75cの先端部がデテント係止部20aの内部に挿入されてデテント係止部20aと係合し、プレート20はデテント可動部75cによって係止される。一方、プレート20の傾転角がゼロではなくプレート20の摺動面48が傾斜している場合には、デテント可動部75cとデテント係止部20aとの係合は解除され、デテント可動部75cはプレート20の側部のうちデテント係止部20a以外の箇所に押し当てられる。
したがって第2デテント機構75も「プレート20が中立以外の位置に配置される場合」よりも「プレート20が中立位置に配置される場合」のほうが、プレート20の傾転動に対して大きな制動力を働かせる。特に本実施形態におけるデテント可動部75cとデテント係止部20aとの間の係合及び非係合は、コントローラ46によるデテントコイル75dの通電の有無によってコントロールされる。
例えばデテント可動部75cとデテント係止部20aとを係合させる場合には、デテントコイル75dを通電せず、デテントスプリング75bの付勢力のみをデテント可動部75cに作用させる。これによりデテント可動部75cは、プレート20に向かって突出し、プレート20が中立位置に配置されている場合にはデテント係止部20aに先端が挿入されて、デテント係止部20a(プレート20)と係合する。一方、デテント可動部75cとデテント係止部20aとを係合させない場合には、コントローラ46はデテントコイル75dを通電し、デテントスプリング75bの付勢力に加えてデテントコイル75dの電磁力をデテント可動部75cに作用させる。この場合、デテントコイル75dの電磁力によってデテント可動部75cがデテントスプリング75bに抗してデテント係止部20aから退避し、デテント可動部75cとデテント係止部20a(プレート20)との係合が解除されるように、デテントコイル75dに流される電流は調整される。
このように、デテント可動部75cとデテント係止部20a(プレート20)との係合を解除するためにデテントコイル75dの電磁力を利用することによって、上述の第4実施形態のデテント係止部20aに比べ、本実施形態のデテント係止部20aは、デテント可動部75cにもたらされる保持力がより大きくなるような形状にすることができる。
すなわち、上述の図4に示す第4実施形態では、デテント係止部20aによるデテント可動部71cの保持力は、電動モータ31及びウォームギア68を介したプレート20の傾転動によってデテント可動部71cとデテント係止部20aとの係合を解除できる程度とする必要がある。一方、図5に示す本実施形態では、デテント可動部75cの突出及び引っ込みをデテントコイル75dに対する通電によってコントロールできるため、デテント係止部20aによるデテント可動部75cの保持力をプレート20の傾転動の動力とは無関係に定められる。したがって本実施形態のデテント係止部20aは「電動モータ31及びウォームギア68を介したプレート20の傾転動のための動力のみではデテント可動部71cとデテント係止部20aとの間の係合を解除できない」ような大きさ及び形状とすることができ、中立位置に配置されるプレート20を第2デテント機構75によってより確実に保持できる。
<変形例>
なお、プレート20を中立位置に配置して油圧ポンプ・モータ10から出力される駆動力をゼロにする中立機構28は、プレート20を直接的又は間接的に制動できるブレーキ機構を有していてもよい。そのようなブレーキ機構として、例えば電動モータ31(図1、4及び5参照)の出力軸32を制動する機構が好適に採用されうる。
図6は、ブレーキ機構80の一例の断面を示す図である。図6に示すブレーキ機構80は、コントローラ46によるコイル部85bに対する通電及び非通電に基づいて、電動モータ31の出力軸32の回転を制動し、或いは、出力軸32の制動を解除する電磁ブレーキとしての機構を有する。
本例のブレーキ機構80は、電動モータ31のカバー89の端部に取り付けられており、ハウジング88、第1摩擦板81、第2摩擦板82、弾性部材84、電磁石85及び第1摩擦板連結部86等を有する。
ハウジング88は、第1摩擦板81、第2摩擦板82、弾性部材84、電磁石85及び第1摩擦板連結部86等を収納する構造体であり、電動モータ31のカバー89に固定されている。
第1摩擦板81は、例えば焼結金属材料で形成され、中央に貫通孔を有するリング状の板状部材として設けられており、第1摩擦板連結部86を介して電動モータ31の出力軸32に連結されている。第1摩擦板81の貫通孔には、出力軸32の一方の端部が貫通した状態で配置されている。
本例の第1摩擦板連結部86は、スプライン軸87a及びスライド軸87bを有する。スプライン軸87aは、外周にスプライン歯が設けられ、軸方向に延びる貫通孔が内側に形成された軸部材として設けられている。スプライン軸87aは、キー部材(図示省略)によるキー結合とストッパリング87cによる係合とによって、出力軸32の一方の端部の外周に対して固定されている。
スライド軸87bは、内周にスプライン溝が形成された筒状の部分と、その筒状の部分の端部から径方向に延びるとともに周方向に広がったフランジ状の部分とを有する。スライド軸87bのスプライン溝は、スプライン軸87aのスプライン歯に対して軸方向へスライド可能に組み合わされ、スライド軸87bは軸方向へスライド移動可能にスプライン軸87aに対して取り付けられている。また第1摩擦板連結部86には、スプライン軸87aに対するスライド軸87bの軸方向の位置を所定の位置に位置決めするバネ機構(図示省略)が設けられている。スライド軸87bにおけるフランジ状の部分の外周の縁部には第1摩擦板81の内周が固定されており、第1摩擦板81はスライド軸87bと一体に結合されている。
上記の構成を有するブレーキ機構80において、出力軸32が回転すると、スプライン軸87a、スライド軸87b及び第1摩擦板81も出力軸32とともに回転する。後述の電磁石85が励磁された状態では、出力軸32及びスプライン軸87aに対して軸方向にスライド移動可能に保持されたスライド軸87b及び第1摩擦板81は、バネ機構により、スプライン軸87aの軸方向に関して所定位置に位置決めされている。この所定位置に配置されている第1摩擦板81は、後述の第2摩擦板82及び第3摩擦板83から離間している。
第2摩擦板82は、第1摩擦板81に対して当接可能に設けられ、第1摩擦板81に当接することで出力軸32の回転を制動する制動力を発生させる部材として設けられている。本例の第2摩擦板82は、当接部82a及びアーマチュア部82bを有する。
アーマチュア部82bは、例えば磁性材料で形成され、中央に貫通孔を有するリング状の板状部材として設けられており、出力軸32の軸方向と平行にスライド移動可能な状態で、電磁石85に保持されている。なお、アーマチュア部82bを軸方向へスライド移動可能な状態で電磁石85に保持する機構の図示は省略されている。アーマチュア部82bの貫通孔には、出力軸32の一方の端部、スプライン軸87a及びスライド軸87bの筒状部分が貫通した状態で配置されている。
当接部82aは、例えば焼結金属材料で形成され、中央に貫通孔を有するリング状の板状部材として設けられており、アーマチュア部82bに対して固定され、第1摩擦板81に対して当接可能に設置されている。より具体的には、当接部82aは、第1摩擦板81に対向する側とは反対側において、アーマチュア部82bに固定されている。第1摩擦板81及び当接部82aは、図6に示す例では互いに対向する側の端面(当接面)においてほぼ同じ面積を有するが、これらの当接面の面積は相互に異なっていてもよい。
また本例では、電動モータ31のカバー89の一方の端部のうち第1摩擦板81に対向する箇所において、第3摩擦板83が設けられている。第3摩擦板83は、例えば焼結金属材料で形成され、中央に貫通孔を有するリング状の板状部材として設けられており、第3摩擦板83は第1摩擦板81と当接可能な位置に設置されている。第1摩擦板81及び第3摩擦板83は、図6に示す例では互いに対向する側の端面(当接面)においてほぼ同じ面積を有するが、これらの当接面の面積は相互に異なっていてもよい。
弾性部材84は、後述する電磁石85の電磁石本体85aに保持され、第2摩擦板82を電磁石85側から第1摩擦板81側に向かって付勢する。弾性部材84は、典型的にはコイルバネとして設けられ、図6に示す例では複数設けられているが、コイルバネ以外の弾性部材であってもよいし、1つのみ設けられていてもよい。複数の弾性部材84は、電磁石本体85aにおいて、出力軸32を中心とする周方向に均等角度で配置されることが好ましい。特に本例の複数の弾性部材84は、電磁石本体85aにおいて、出力軸32を中心とした同心円状に内周側及び外周側の2つの配列で周方向に配置されている。同心円状に配置される弾性部材84のうち内周側に配置される弾性部材84はコイル部53bの内側に配置され、外周側に配置される弾性部材84はコイル部85bの外側に配置される。なお、上述の弾性部材84の配置形態は例示に過ぎず、弾性部材84は他の配置形態をとってもよい。
電磁石85は、電磁石本体85a及びコイル部85bを含み、第2摩擦板82を磁力によって引き付けることにより第2摩擦板82を第1摩擦板81から離間させる。
電磁石本体85aは、中央に貫通孔を有する円筒状の構造体として設けられており、電磁石本体85aの貫通孔には出力軸32の端部が配置される。電磁石本体85aは、第2摩擦板82に対向する側とは反対側の端部において、ハウジング88に固定されている。電磁石本体85aには、第2摩擦板82に向かって開口する複数の弾性部材保持穴85cが設けられており、これらの弾性部材保持穴85cの各々に弾性部材84が配置される。
コイル部85bは、電磁石本体85aの内部に設置され、電磁石本体85aの周方向に配置されている。コイル部85bへの電流の供給及び遮断は、コントローラ46の指令に基づいて行われる。
例えばブレーキ機構80による出力軸32の制動の解除が行われる際には、コントローラ46の指令に基づいて、コイル部85bへ電流が供給されて電磁石85は通電される。電磁石85が通電されて励磁された状態になると、電磁石85において発生した磁力によって、第2摩擦板82のアーマチュア部82bがコイル部85bに引き付けられる。このとき第2摩擦板82は、複数の弾性部材84の弾性力(バネ力)に抗して、電磁石85に引き付けられる。これにより、第2摩擦板82の当接部82aが第1摩擦板81から離間し、出力軸32の制動が解除される。したがって、電磁石85が励磁されて出力軸32の制動が解除された状態では、第2摩擦板82のアーマチュア部82bは電磁石本体85aに当接した状態となる。
一方、ブレーキ機構80による出力軸32の制動が行われる際には、コントローラ46の指令に基づいて、コイル部85bへの電流の供給が遮断されて電磁石85は消磁される。電磁石85が消磁された状態になると、複数の弾性部材84の弾性力によって第2摩擦板82が第1摩擦板81に向かって付勢され、第2摩擦板82の当接部82aが第1摩擦板81に当接する。これにより、第2摩擦板82と第1摩擦板81との間で摩擦力が生じ、出力軸32の回転が制動される。なお図6は、電磁石85が消磁された状態であり、出力軸32の回転が制動されている状態を示す。
また、電磁石85が消磁されて出力軸32が制動された状態では、第1摩擦板81は、第2摩擦板82から作用する付勢力によって、第3摩擦板83にも当接する。したがって電磁石85が消磁されると、第1摩擦板81は、複数の弾性部材84からの付勢力によって、第2摩擦板82と第3摩擦板83との間で挟み込まれた状態となる。これにより、第2摩擦板82と第1摩擦板81との間で生じる摩擦力と、第1摩擦板81と第3摩擦板83との間で生じる摩擦力とによって、出力軸32の回転が非常に強く制動される。
<他の変形例>
本発明は上述の実施形態及び変形例に限定されず、種々の変形が加えられてもよい。また、上述の実施形態及び変形例の各種の構成が組み合わせられてもよい。例えば図1に示す油圧ポンプ・モータ10において、図4に示す第1デテント機構71や図5に示す第2デテント機構75が設けられてもよい。また図2に示す切換弁62が、図3〜5の各々に示す油圧ポンプ・モータ10に設けられてもよい。
また図3に示す例では、比例ソレノイド64の可動部66によって出力される動力がナット37、連結突出部41及び梃子機構38を介してプレート20に伝達されて摺動面48が傾転されるが、比例ソレノイド64の可動部66を直接的にプレート20に接続し、可動部66によって出力される動力がプレート20に直接的に伝達されてもよい。この場合にも、可動部66の突出量に応じてプレート20(摺動面48)の傾転角を所望の角度に調整できる。
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。