JP2017114816A - 止痒剤 - Google Patents

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幾雄 林
光洋 今野
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Abstract

【課題】アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対して即時的に止痒効果を発揮する止痒剤の提供。【解決手段】下式(I)で表されるフェネチルイソチオシアネート又はその前駆物質を有効成分として含有する止痒剤。該止痒剤は、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、蕁麻疹、乾癬、悪性腫瘍、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析又は多発性硬化症に伴う難治性そう痒に対して有用である。【選択図】なし

Description

本発明は、止痒剤に関する。
アトピー性皮膚炎は、表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応及び特異的アレルギー反応が関与して生じ、慢性に経過する炎症とそう痒をその病態とする湿疹皮膚炎群の一疾患である(非特許文献1)。
アトピー性皮膚炎に伴うそう痒の発現メカニズムは未だ十分には解明されてはいないが、マスト細胞やケラチノサイト等の細胞から放出される、ヒスタミンやロイコトリエンB4等の痒み誘発物質が、皮膚の痒みを伝える神経上の受容体に結合することで神経が興奮し、この痒みシグナルが脊髄後角を介して大脳皮質まで伝達され、痒みとして認識されると考えられている。
アトピー性皮膚炎においては、神経成長因子の働きにより、表皮内への神経伸長や神経の活性化閾値の低下が起こり、痒みシグナルを受容又は伝達しやすい、痒み過敏状態が形成されていると考えられている。また、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒は、そう痒に対する引っ掻き行動を起こすことで皮膚炎の悪化を招き、皮膚炎の悪化によりさらにそう痒が増強されるという、「そう痒−引っ掻き−皮膚炎悪化」サイクルの原因となっており、アトピー性皮膚炎の治療においては、アトピー性皮膚炎自体の治療のみならず、そう痒を抑制することが早期改善に重要であると考えられている(非特許文献2)。
アトピー性皮膚炎に対する薬物療法では、外用では皮膚炎を抑えるために副腎皮質ステロイド剤又は免疫抑制剤が主に用いられ、皮膚の乾燥及びバリアー機能を補完し、皮膚炎の再燃を予防する目的で保湿剤等も用いられる。また、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対しては、内服剤として抗ヒスタミン薬又は抗アレルギー薬が用いられている(非特許文献1)。
一方、フェネチルイソチオシアネートは、クレソン、ブロッコリー、カブ、ラディッシュ等のアブラナ科の植物に含まれる物質である。通常、植物中では、フェネチルイソチオシアネートは、前駆物質であるgluconasturtiin(グルコナストルチン)として存在し、摂取後、体内で分解されることでフェネチルイソチオシアネートへと変化する(非特許文献3)。
フェネチルイソチオシアネートの作用として抗がん作用が広く知られており、例えば、フェネチルイソチオシアネートは、ヒト子宮頸がん由来の細胞株として知られるHeLa細胞のアポトーシスを誘導することが報告されている(非特許文献4)。また、N−メチルニトロソ尿素誘発ラット乳がんモデルにおいて、フェネチルイソチオシアネートの抗がん作用も報告されている(非特許文献5)。
古江ら、日本皮膚科学会雑誌、2009年、第119巻、p.1515―1534 石井ら、日本薬理学雑誌、2014年、第144巻、p.154―159 Guptaら、Biochimica et Biophysica Acta、2014年、第1846巻、p.405―424 Yuら、Cancer Research、1998年、第58巻、p.402―408 Arasら、Biopharmaceutics & Drug Disposition、2013年、第34巻、p.98―106
しかしながら、外用の副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤は、アトピー性皮膚炎の治療のために長期間にわたる投与が必要であり、副作用が懸念される。また、これら既存薬は、皮膚炎を抑制することにより二次的にそう痒を抑制することはできても、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を即時的に抑制することは困難であるのが現状である。
さらに、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対して、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が用いられてはいるが、そう痒を緩和することを示すエビデンスは少ないと報告されており(Kleinら、Archives of Dermatology、1999年、第135巻、p.1522)、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒の治療に単調に用いることは推奨されていない(Berkeら、American Family Physician、2012年、第86巻、p.35)。
このため、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対する既存の薬物療法では、即時的に止痒効果を得ることができずに、患者が自身の皮膚を引っ掻くことで皮膚炎を悪化させ、皮膚炎の慢性化を引き起こし、難治性に至るという悪循環に陥っている。したがって、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対して、即時的に薬効を発揮する止痒剤の開発が切望されている。
そこで本発明は、アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対して即時的に止痒効果を発揮する、止痒剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、難治性そう痒に対して有効性を示す新たな化学構造を有する化合物について鋭意研究を重ねた結果、フェネチルイソチオシアネート又はその前駆物質が難治性そう痒に対して、即時的に止痒効果を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、フェネチルイソチオシアネート又はその前駆物質を有効成分として含有する止痒剤を提供する。
上記の止痒剤は、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、蕁麻疹、乾癬、悪性腫瘍、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析又は多発性硬化症に伴う難治性そう痒に対する止痒剤であることが好ましく、アトピー性皮膚炎に伴う難治性そう痒に対する止痒剤であることが特に好ましい。
上記の止痒剤は、難治性そう痒に対して即時的に薬効を発揮し、これまでに止痒効果が認められている薬剤(副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬等)とは異なるメカニズムでそう痒を治療又は予防できる。
本発明の止痒剤は、アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対して、即時的に止痒効果を発揮する。このため、本発明の止痒剤は、「そう痒−引っ掻き−皮膚炎悪化」サイクルの停止と患者のQOLの改善に大きく貢献し、治療が困難とされるアトピー性皮膚炎に対しても、新たなメカニズムで治療効果を発揮できる。
クロロキン誘発そう痒モデルマウスの引っ掻き行動に対するフェネチルイソチオシアネートの作用を示す図である。 オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動に対するフェネチルイソチオシアネートの作用を示す図である。
本発明の止痒剤は、フェネチルイソチオシアネートを有効成分として含有することを特徴とする。
上記のフェネチルイソチオシアネートは、(2−イソチオシアナトエチル)ベンゼンとしても知られる、下記式(I)で示される物質である。
Figure 2017114816
上記式(I)で示されるフェネチルイソチオシアネートは、植物中から単離・精製した天然フェネチルイソチオシアネート、化学合成により製造された合成フェネチルイソチオシアネートのいずれでもよい。フェネチルイソチオシアネートの単離・精製方法(米国特許第6348220号)及び合成方法(Wongら、The Journal of Organic Chemistry、2007年、第72巻(10)、p.3969−3971)は、当技術分野において公知である。また、上記式(I)で示されるフェネチルイソチオシアネートは市販されており、市販品を用いることもできる。
さらに、上記の止痒剤は、フェネチルイソチオシアネート前駆物質を有効成分として含有することを特徴とする。フェネチルイソチオシアネート前駆物質とは、酵素によってフェネチルイソチオシアネートに変換又は代謝される物質である。上記のフェネチルイソチオシアネート前駆物質としては、好ましくは、グルコナストルチンである。なお、グルコナストルチンはフェネチルグルコシノレートとも呼ばれる。
上記のフェネチルイソチオシアネート前駆物質(好ましくは、グルコナストルチン)は、植物中から単離・精製した天然フェネチルイソチオシアネート前駆物質、化学合成により製造された合成フェネチルイソチオシアネート前駆物質のいずれでもよい。フェネチルイソチオシアネート前駆物質の単離・精製方法及び合成方法は、当技術分野において公知である。また、フェネチルイソチオシアネート前駆物質は、市販されており、市販品を用いることもできる。
「そう痒」とは、引っ掻く欲求を伴う皮膚特有の感覚であり、例えば、アトピー性皮膚炎、神経性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、自己感作性皮膚炎、毛虫皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、虫刺症、光線過敏症、蕁麻疹、痒疹、疱疹、膿痂疹、湿疹、白癬、苔癬、乾癬、疥癬若しくは尋常性座瘡等の皮膚疾患を原疾患とするそう痒、悪性腫瘍、糖尿病、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析若しくは多発性硬化症を原疾患とするそう痒又は薬剤性若しくは心因性で起こるそう痒が挙げられる。また、そう痒は、ヒスタミンが介在するそう痒と、ヒスタミンが介在しないそう痒(難治性そう痒)とに大別されるが、本発明の止痒剤は、特に、ヒスタミンが介在しないそう痒(難治性そう痒)に対して有効である。ヒスタミンが介在しないそう痒(難治性そう痒)としては、例えば、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、蕁麻疹、乾癬、悪性腫瘍、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析又は多発性硬化症等を原疾患とするそう痒が挙げられ、抗ヒスタミン薬に対して治療抵抗性を示す。
「止痒剤」とは、そう痒を軽減する目的で用いられる薬剤等であり、例えば、内服剤としては主に抗ヒスタミン薬が用いられ、血液透析患者に対してはオピオイドκ受容体作動薬が用いられることもある。また、外用剤としては、抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤又は非ステロイド系抗炎症剤が用いられている。なお、これらの止痒剤は、そう痒が起こらないように制御する目的で、予防的に用いることもできる。
上記の止痒剤の止痒効果は、そう痒モデル動物を用いたin vivoの実験系で評価でき、ヒスタミン、クロロキン又はサブスタンスPに代表される各種起痒物質によって惹起されるマウスの引っ掻き行動を指標とするそう痒モデルが一般的である。例えば、Togashiらの文献(European Journal of Pharmacology、2002年、第435巻、p.259)やAndohらの文献(European Journal of Pharmacology、2002年、第436巻、p.235)に記載されているマウスを用いたサブスタンスP誘発引っ掻き行動や、Marinoらの文献(Journal of Neuroscience Methods、2012年、第211巻、p.1)に記載されているマウスを用いたクロロキン誘発引っ掻き行動は、抗ヒスタミン薬が無効の難治性そう痒モデルの一つとして利用できるものである。
また、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対する止痒剤の止痒効果は、例えば、アトピー性皮膚炎様の皮膚病変を有したそう痒モデル動物の引っ掻き行動を指標としたin vivoの実験系で評価できる。アトピー性皮膚炎様の皮膚病変を有したそう痒モデル動物としては、例えば、通常飼育環境下で皮膚炎を自然発症するNC/Nga系マウス(Takanoら、European Journal of Pharmacology、2004年、第495巻、p.159)、又は、ハプテンである2,4,6−トリニトロクロロベンゼン若しくは4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン(以下、オキサゾロン)をマウスの皮膚へ反復塗布することにより皮膚炎を誘発したモデル(オキサゾロン誘発皮膚炎モデル)(Uedaら、International Immunopharmacology、2006年、第6巻、p.1609又はTsukumoら、Journal of Pharmacological Sciences、2010年、第113巻、p.255)等を用いることができる。これらアトピー性皮膚炎様の皮膚病変を有したそう痒モデル動物の引っ掻き行動は、オピオイドμ受容体拮抗薬で抑制されるため、疼痛関連反応ではなく、そう痒関連反応として認知されている。
上記の止痒剤は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、サル、ウシ、ヒツジ又はヒト)、特にヒトに対して投与した場合に、有用な医薬等(特に、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対する止痒剤)として用いることができる。
上記の止痒剤を臨床で使用する際には、フェネチルイソチオシアネート又はその前駆物質をそのまま用いてもよいし、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤又は等張化剤等の添加剤が適宜混合されていてもよい。また、上記の止痒剤は、これらの薬剤用担体を適宜用いて、通常の方法によって製造することができる。上記の止痒剤の投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等による経口剤、吸入剤、注射剤、座剤若しくは液剤等による非経口剤又は局所投与をするための軟膏剤、クリーム剤若しくは貼付剤等が挙げられる。また、公知の持続型製剤としても構わない。また、フェネチルイソチオシアネート前駆物質の場合は、フェネチルイソチオシアネートに変換させる酵素(例えば、ミロシナーゼ)を配合又は併用して使用しても構わない。
上記の止痒剤は、フェネチルイソチオシアネート又はその前駆物質を有効成分として0.001〜90重量%含有することが好ましく、0.01〜70重量%含有することがより好ましい。用量は、症状、年齢、体重、性別及び投与方法等に応じて適宜選択されるが、成人に対する有効成分量として、注射剤の場合1日0.001mg〜5g、経口剤の場合0.01mg〜10gであり、それぞれ1回又は数回に分けて投与することができる。
上記の止痒剤の薬理学的に許容される担体又は希釈剤としては、例えば、結合剤(シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド又はトラガント等)、賦形剤(砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン等)又は滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク又はシリカ等)を挙げることができる。
上記の止痒剤は、止痒の補完若しくは増強又は投与量の低減のために、他の薬剤と適量配合又は併用して使用しても構わない。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1) フェネチルイソチオシアネートのクロロキン誘発引っ掻き行動に対する抑制効果:
難治性そう痒モデルであるマウスのクロロキン誘発引っ掻き行動は、公知文献(Liuら、Cell、2009年、第139巻、p.1353等)記載の方法に基づき、惹起した。また、引っ掻き行動の評価は、公知文献(Hashimotoら、Allergology International、2004年、第53巻、p.349)記載の方法に基づき、MicroAct(ニューロサイエンス社)を用いて自動的に検出し、客観的に行った。
1.実験方法
(1)クロロキン誘発引っ掻き行動の評価
薬効評価の7日前に、イソフルラン麻酔下にて、5週齢の雄性ICR系マウス(日本エスエルシー社)の両後肢甲部皮下にパラフィルムでコーティングしたネオジム磁石(直径1mm、長さ3mm)を挿入した。薬効評価日の前日に、イソフルラン麻酔下にて、マウスの頸背部をバリカンで毛刈りした。フェネチルイソチオシアネート投与液又はその溶媒をマウスに単回経口投与した後、測定用チャンバー(直径11cm、高さ18cm)内へマウス(6週齢)を1匹ずつ収容し馴化させた。馴化後、クロロキン(2mg/mL)又はその溶媒としてリン酸緩衝生理食塩液(以下、PBS)を頸背部へ皮内投与(0.05mL/site)し、直後より引っ掻き行動回数の測定を開始した。引っ掻き行動回数は、測定用チャンバー周囲のラウンドコイル内で、後肢に挿入された磁石の動きによって誘導された電流を増幅して記録した。薬効評価は測定開始後30分間の引っ掻き行動回数を指標に実施した。
(2)フェネチルイソチオシアネートの投与
フェネチルイソチオシアネート投与液は、フェネチルイソチオシアネート(Sigma Aldrich社)をジメチルスルホキシド及びTween80と混和した後、蒸留水を添加し、ジメチルスルホキシド及びTween80が、各々1v/v%の濃度となるように調製した。フェネチルイソチオシアネート投与液又はその溶媒を10mL/kgの容量で、引っ掻き行動回数の測定開始の60分間前に、クロロキン投与群又はPBS投与群のマウスに単回経口投与した。フェネチルイソチオシアネートは、100mg/kgの用量で投与した。PBS投与群に溶媒を投与した群を「PBS−溶媒投与群」、クロロキン投与群に溶媒を投与した群を「クロロキン−溶媒投与群」、クロロキン投与群にフェネチルイソチオシアネートを投与した群を「クロロキン−フェネチルイソチオシアネート(100mg/kg)投与群」とした。
統計学的処理としては、クロロキン−溶媒投与群に対するクロロキン−フェネチルイソチオシアネート(100mg/kg)投与群の検定としてt検定を行った。有意水準は5%(両側)とした。
2.結果
図1に、クロロキン誘発の引っ掻き行動回数に対する、フェネチルイソチオシアネートの効果を示す。縦軸は、30分間の引っ掻き行動回数(平均値±標準誤差、n=8〜10)を示す。横軸は、PBS−溶媒投与群、クロロキン−溶媒投与群及びクロロキン−フェネチルイソチオシアネート(100mg/kg)投与群を示す。図中の*印は、クロロキン−溶媒投与群との比較で統計学的に有意であることを示す(*:p<0.05、t検定)。
この結果から、フェネチルイソチオシアネートは、難治性そう痒モデルとして知られるクロロキン誘発引っ掻き行動を顕著に抑制し、優れた止痒効果を有することが明らかとなった。
(実施例2) フェネチルイソチオシアネートのオキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動に対する抑制効果:
オキサゾロンの反復塗布により皮膚病変を誘発したアトピー性皮膚炎モデルマウス(オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウス)は、公知文献(Tsukumoら、Journal of Pharmacological Sciences、2010年、第113巻、p.255等)記載の方法に基づき、作製した。また、引っ掻き行動の評価は、公知文献(Hashimotoら、Allergology International、2004年、第53巻、p.349)記載の方法に基づき、MicroAct(ニューロサイエンス社)を用いて自動的に検出し、客観的に行った。
1.実験方法
(1)オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの作製
オキサゾロンの濃度が3w/v%となるように、オキサゾロンをアセトン:オリーブオイル=4:1(v/v)の混液に溶解した。3w/v%オキサゾロン溶液100μLを、イソフルラン麻酔下にて、7〜8週齢の雌性HR−1マウス(星野試験動物飼育所)の背部全体に塗布することにより、感作を行った(感作日を「Day −7」とする)。感作1週間後(Day 0)から、イソフルラン麻酔下にて、3w/v%オキサゾロン溶液又はその溶媒(アセトン:オリーブオイル=4:1(v/v)の混液)60μLを、1日につき1回、週3回(2又は3日間隔)の頻度で吻側背部へ塗布した。オキサゾロンを反復塗布したマウスを「皮膚炎惹起群」とし、溶媒を反復塗布したマウスを「皮膚炎非惹起群」とした。
(2)フェネチルイソチオシアネートの投与
フェネチルイソチオシアネート投与液は、フェネチルイソチオシアネート(Sigma Aldrich社)をジメチルスルホキシド及びTween80と混和した後、蒸留水を添加し、ジメチルスルホキシド及びTween80が、各々1v/v%の濃度となるように調製した。フェネチルイソチオシアネート投与液又はその溶媒を10mL/kgの容量で、引っ掻き行動回数の測定開始の60分間前に、皮膚炎惹起群又は皮膚炎非惹起群のマウスに単回経口投与した。フェネチルイソチオシアネートは、30又は100mg/kgの用量で投与した。皮膚炎非惹起群に溶媒を投与した群を「皮膚炎非惹起−溶媒投与群」、皮膚炎惹起群に溶媒を投与した群を「皮膚炎惹起−溶媒投与群」、皮膚炎惹起群にフェネチルイソチオシアネートを投与した群を「皮膚炎惹起−フェネチルイソチオシアネート(30又は100mg/kg)投与群」とした。
(3)引っ掻き行動の評価
Day 9に、イソフルラン麻酔下にて、マウスの両後肢甲部皮下にパラフィルムでコーティングしたネオジム磁石(直径1mm、長さ3mm)を挿入した。Day 149に、引っ掻き行動回数を測定し、各群の引っ掻き行動回数の平均値がほぼ均等になるように群分けを行った。Day 151に、引っ掻き行動に対するフェネチルイソチオシアネートの抑制効果を評価した。なお、引っ掻き行動回数の測定開始の少なくとも30分間前から、測定用チャンバー(直径11cm、高さ18cm)内へマウスを1匹ずつ収容し、試験環境へ馴化させた。フェネチルイソチオシアネート投与液又はその溶媒の単回経口投与の60分間後に、引っ掻き行動回数の測定を開始し60分間測定した。引っ掻き行動回数は、測定用チャンバー周囲のラウンドコイル内で、後肢に挿入された磁石の動きによって誘導された電流を増幅して記録した。
統計学的処理としては、皮膚炎惹起−溶媒投与群に対する皮膚炎惹起−フェネチルイソチオシアネート投与群の検定としてWilliams検定を行った。有意水準は2.5%(片側・下側)とした。
2.結果
図2に、オキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動回数に対する、フェネチルイソチオシアネートの効果を示す。縦軸は、60分間の引っ掻き行動回数(平均値±標準誤差、n=6〜18)を示す。横軸は、皮膚炎非惹起−溶媒投与群、皮膚炎惹起−溶媒投与群及び皮膚炎惹起−フェネチルイソチオシアネート(30又は100mg/kg)投与群を示す。図中の*印は、皮膚炎惹起−溶媒投与群との比較で統計学的に有意であることを示す(*:p<0.025、Williams検定)。
この結果から、フェネチルイソチオシアネートは、アトピー性皮膚炎モデルとして知られるオキサゾロン誘発皮膚炎モデルマウスの引っ掻き行動を顕著に抑制し、優れた止痒効果を有することが明らかとなった。
さらに、フェネチルイソチオシアネートを、引っ掻き行動回数の測定開始の60分前に単回経口投与することにより、引っ掻き行動が抑制されたという結果は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対して、即時的に止痒効果を有することを示唆するものである。
本発明は、アトピー性皮膚炎に代表される難治性そう痒に対する止痒剤として利用できる。

Claims (3)

  1. フェネチルイソチオシアネート又はその前駆物質を有効成分として含有する、止痒剤。
  2. アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、蕁麻疹、乾癬、悪性腫瘍、肝疾患、慢性腎疾患、腎不全、血液疾患、血液透析、腹膜透析又は多発性硬化症に伴う難治性そう痒に対する、請求項1記載の止痒剤。
  3. アトピー性皮膚炎に伴う難治性そう痒に対する、請求項2記載の止痒剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN108295137A (zh) * 2018-03-30 2018-07-20 东莞御治医疗器械有限公司 一种用于皮炎湿疹的医用冷敷凝胶及其制备方法

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