JP2017110252A - 粉末冶金用粉末および粉末冶金用粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】汚染の原因となる金属元素を含有する潤滑剤を使用せずに、圧粉成形金型からの抜出力を低減することができる粉末冶金用粉末を提供する。【解決手段】 鉄基粉末100質量部と、150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、潤滑剤0.05〜1.2質量部とを含み、前記潤滑剤の少なくとも一部が前記鉄基粉末の表面を被覆しており、金属元素を含有する潤滑剤を含まない、粉末冶金用粉末。【選択図】 なし
Description
本発明は、粉末冶金用粉末に関するものであり、特に、特に圧粉成型金型からの抜出し力が低減されるとともに、焼結炉や焼結体表面の汚染を抑制された粉末冶金用鉄基粉末に関するものである、また、本発明は前記粉末冶金用粉末の製造方法に関するものである。
鉄粉や合金鋼粉を、金型を用いて所望の形状に圧縮成形した後に焼結する粉末冶金法は、複雑な形状を有する機械部部品を低コストで製造できる技術として幅広く用いられている。
粉末冶金法に用いられる粉末(以下、「粉末冶金用粉末」という)は、主原料である鉄基粉末に、必要に応じて銅、黒鉛、ニッケル、モリブデン等の合金用粉末(副原料)と潤滑剤とを混合することで得られる。しかし、使用する原料によって、これら原料粉に含まれる粒子の大きさや比重が異なっているため、偏析による品質のばらつきが問題となっていた。また、粉末であるため、発塵による作業環境の悪化も問題であった。
そこで、上記の偏析や発塵の問題を解決するための方法として、特許文献1、2に記載されているように、潤滑剤やバインダーを利用して鉄基粉末の表面に副原料としての合金用粉末を付着させる技術が提案されている。
また、粉末冶金用粉末に添加される潤滑剤は、金型で圧粉成形する際における鉄基粉末と金型との摩擦の緩和や、成形後に成形品を金型から抜出す際の力(抜出力)の低減を目的として添加されるものである。
そこで、上記潤滑剤の機能を向上させるために、特許文献3では脂肪酸リチウム、脂肪酸亜鉛、および脂肪酸ビスアミドからなる粉末潤滑剤が提案されている。また、特許文献4では、脂肪酸銅塩粒子からなる潤滑剤が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜4で提案されている技術においては、潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウムなどの金属石けんが用いられている。金属石けんは、金属元素を含有しているため、焼結炉や焼結体表面の汚染の原因となる。例えば、ステアリン酸亜鉛は焼結工程で分解して蒸気圧が高い酸化亜鉛となり、焼結炉や焼結体表面に付着することで汚れの原因となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、汚染の原因となる金属元素を含有する潤滑剤を使用せずに、圧粉成形金型からの抜出力を低減することができる粉末冶金用粉末を提供することを目的とする。
本発明者等は、粘度が適切に制御された、金属元素を含まない潤滑剤を使用することによって、鉄基粉末の表面に該潤滑剤を適切に被覆することができ、その結果、圧粉成形金型からの抜出力を良好に低減できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨構成は、次のとおりである。
1.鉄基粉末100質量部と、
150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、潤滑剤0.05〜1.2質量部とを含み、
前記潤滑剤の少なくとも一部が前記鉄基粉末の表面を被覆しており、
金属元素を含有する潤滑剤を含まない、粉末冶金用粉末。
1.鉄基粉末100質量部と、
150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、潤滑剤0.05〜1.2質量部とを含み、
前記潤滑剤の少なくとも一部が前記鉄基粉末の表面を被覆しており、
金属元素を含有する潤滑剤を含まない、粉末冶金用粉末。
2.前記潤滑剤の、1Hz、110℃における損失係数が60以下である、前記1に記載の粉末冶金用粉末。
3.前記鉄基粉末の表面における前記潤滑剤の被覆率が25%以上である、前記1または2に記載の粉末冶金用粉末。
4.鉄基粉末と潤滑剤とを加熱混合して行う粉末冶金用粉末の製造方法であって、
前記潤滑剤として、温度150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、金属元素を含有しない潤滑剤のみを使用し、
前記鉄基粉末100質量部に対する前記潤滑剤の配合量が0.05〜1.2質量部である、粉末冶金用粉末の製造方法。
前記潤滑剤として、温度150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、金属元素を含有しない潤滑剤のみを使用し、
前記鉄基粉末100質量部に対する前記潤滑剤の配合量が0.05〜1.2質量部である、粉末冶金用粉末の製造方法。
本発明によれば、汚染の原因となる金属元素を含有する潤滑剤を使用せずに、圧粉成形金型からの抜出力を低減することができる粉末冶金用粉末を提供することができる。
本発明の粉末冶金用粉末は、鉄基粉末100質量部と、温度150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、潤滑剤0.05〜1.2質量部とを含み、前記潤滑剤の少なくとも一部が前記鉄基粉末の表面を被覆しており、金属元素を含有する潤滑剤を含まないものである。
[鉄基粉末]
上記鉄基粉末としては、純鉄粉と合金鋼粉のいずれを使用することもできる。例えば、前記純鉄粉としては、アトマイズ法により製造された純鉄粉や還元鉄粉等を、前記合金鋼粉としては、合金化した溶鋼をアトマイズした完全合金化鋼粉や、純鉄粉の周りに合金粉を部分合金化し付着させた部分拡散合金化鋼粉などを使用することができる。また、これらの鉄基粉末は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合した混合粉末として用いることもできる。
上記鉄基粉末としては、純鉄粉と合金鋼粉のいずれを使用することもできる。例えば、前記純鉄粉としては、アトマイズ法により製造された純鉄粉や還元鉄粉等を、前記合金鋼粉としては、合金化した溶鋼をアトマイズした完全合金化鋼粉や、純鉄粉の周りに合金粉を部分合金化し付着させた部分拡散合金化鋼粉などを使用することができる。また、これらの鉄基粉末は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合した混合粉末として用いることもできる。
[潤滑剤]
上記鉄基粉末の表面には、潤滑剤が被覆される。潤滑剤で被覆するより、鉄基粉末表面の潤滑性が向上する。また、鉄粉と金型とが直接接触することが回避される結果、圧粉成形金型からの抜出力を低減することができる。
上記鉄基粉末の表面には、潤滑剤が被覆される。潤滑剤で被覆するより、鉄基粉末表面の潤滑性が向上する。また、鉄粉と金型とが直接接触することが回避される結果、圧粉成形金型からの抜出力を低減することができる。
・150℃における粘度:0.5mPa・s以上
粉末冶金用粉末に使用される潤滑剤は、常温で固体(粉末状)であり、加熱すると溶融する性質を有している。そして、後述するように、鉄基粉末と加熱混合して用いられる。前記加熱混合の際における潤滑剤の粘度が低すぎると、該潤滑剤を鉄基粉末表面に付着させ、適切に被覆することができない。そのため、本発明では潤滑剤の150℃における粘度を0.5mPa・s以上とする。150℃における粘度を0.5mPa・s以上である潤滑剤を用いることにより、鉄基粉末表面を潤滑剤で適切に被覆し、圧粉成形金型からの抜出力を効果的に低減することができる。なお、潤滑剤の150℃における粘度は、0.7mPa・s以上であることが好ましく、0.8mPa・s以上であることがより好ましく、1.0mPa・s以上であることがさらに好ましい。一方、潤滑剤の粘度の上限は特に限定されないが、150℃における粘度が15.0mPa・s以下であることが好ましく、10.0mPa・s以下であることがより好ましく、8.0mPa・s以下であることがより好ましい。なお、潤滑剤の粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
粉末冶金用粉末に使用される潤滑剤は、常温で固体(粉末状)であり、加熱すると溶融する性質を有している。そして、後述するように、鉄基粉末と加熱混合して用いられる。前記加熱混合の際における潤滑剤の粘度が低すぎると、該潤滑剤を鉄基粉末表面に付着させ、適切に被覆することができない。そのため、本発明では潤滑剤の150℃における粘度を0.5mPa・s以上とする。150℃における粘度を0.5mPa・s以上である潤滑剤を用いることにより、鉄基粉末表面を潤滑剤で適切に被覆し、圧粉成形金型からの抜出力を効果的に低減することができる。なお、潤滑剤の150℃における粘度は、0.7mPa・s以上であることが好ましく、0.8mPa・s以上であることがより好ましく、1.0mPa・s以上であることがさらに好ましい。一方、潤滑剤の粘度の上限は特に限定されないが、150℃における粘度が15.0mPa・s以下であることが好ましく、10.0mPa・s以下であることがより好ましく、8.0mPa・s以下であることがより好ましい。なお、潤滑剤の粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
・金属元素
本発明の粉末冶金用粉末は、金属元素を含有する潤滑剤を含まない。言い換えれば、本発明の粉末冶金用粉末に含まれる潤滑剤は、金属元素を含有しない。上述したように、従来の粉末冶金用粉末においては、金属石けんなどの金属元素を含有する潤滑剤が使用されていたため、焼結工程で生じる金属酸化物が焼結炉や焼結体表面の汚染の原因となっていたが、本発明では金属元素を含有する潤滑剤を使用しないため、このような汚染が生じない。
本発明の粉末冶金用粉末は、金属元素を含有する潤滑剤を含まない。言い換えれば、本発明の粉末冶金用粉末に含まれる潤滑剤は、金属元素を含有しない。上述したように、従来の粉末冶金用粉末においては、金属石けんなどの金属元素を含有する潤滑剤が使用されていたため、焼結工程で生じる金属酸化物が焼結炉や焼結体表面の汚染の原因となっていたが、本発明では金属元素を含有する潤滑剤を使用しないため、このような汚染が生じない。
前記潤滑剤としては、金属元素を含有せず、上記粘度の条件を満たすものであれば任意のものを用いることができるが、例えば、脂肪酸、脂肪酸アミド、ビスアミド、エステル、エーテル、アミン、アルコール、ポリアミド、ポリエチレンなどを用いることができる。
・鉄基粉末100質量部に対し潤滑剤0.05〜1.2質量部
上記粉末冶金用粉末に含まれる潤滑剤の量が少なすぎると、潤滑剤の効果を十分に得ることができず、圧粉成形金型からの抜出力が増加することに加えて、場合によっては成形体自体に「かじり」と呼ばれる筋状の傷が入ったり、金型が壊れたりするといった問題が生じる場合がある。そのため、潤滑剤の含有量を、鉄基粉末100質量部に対して0.05質量部以上とする。なお、潤滑剤の含有量は、鉄基粉末100質量部に対して0.10質量部以上とすることが好ましい。一方、潤滑剤の量が多すぎると、成形体の密度が低くなることに加え、焼結時の脱ロウ時間がかかり過ぎるなどの問題が生じる。そのため、潤滑剤の含有量を、鉄基粉末100質量部に対して1.2質量部以下とする。なお、潤滑剤の含有量は、鉄基粉末100質量部に対して0.8質量部以下とすることが好ましい。
上記粉末冶金用粉末に含まれる潤滑剤の量が少なすぎると、潤滑剤の効果を十分に得ることができず、圧粉成形金型からの抜出力が増加することに加えて、場合によっては成形体自体に「かじり」と呼ばれる筋状の傷が入ったり、金型が壊れたりするといった問題が生じる場合がある。そのため、潤滑剤の含有量を、鉄基粉末100質量部に対して0.05質量部以上とする。なお、潤滑剤の含有量は、鉄基粉末100質量部に対して0.10質量部以上とすることが好ましい。一方、潤滑剤の量が多すぎると、成形体の密度が低くなることに加え、焼結時の脱ロウ時間がかかり過ぎるなどの問題が生じる。そのため、潤滑剤の含有量を、鉄基粉末100質量部に対して1.2質量部以下とする。なお、潤滑剤の含有量は、鉄基粉末100質量部に対して0.8質量部以下とすることが好ましい。
・損失係数:60以下
さらに、本発明においては、周波数1Hz、110℃における潤滑剤の損失係数(tan δ)を60以下とすることが好ましい。前記損失係数が60以下であれば、せん断力下における加熱混合中に潤滑剤の変形が起こりやすくなり、鉄基粉末表面における潤滑剤の被覆率をさらに向上させることができる。前記損失係数は、50以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましい。一方、前記損失係数の下限は特に限定されないが、通常は1以上である。
さらに、本発明においては、周波数1Hz、110℃における潤滑剤の損失係数(tan δ)を60以下とすることが好ましい。前記損失係数が60以下であれば、せん断力下における加熱混合中に潤滑剤の変形が起こりやすくなり、鉄基粉末表面における潤滑剤の被覆率をさらに向上させることができる。前記損失係数は、50以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましい。一方、前記損失係数の下限は特に限定されないが、通常は1以上である。
なお、損失係数(tan δ)は、貯蔵弾性率G’(Pa)及び損失弾性率G’’(Pa)を用いて、下記(1)式によって定められる。
tan δ=G’’/G’ ・・・(1)
tan δ=G’’/G’ ・・・(1)
・被覆率:25%以上
本発明の粉末冶金用粉末においては、上述した粘度条件を満たす潤滑剤を用いることにより、前記鉄基粉末の表面における前記潤滑剤の被覆率(以下、単に「被覆率」という場合がある)を向上させることができる。潤滑剤の鉄粉表面への被覆率が高ければ、鉄粉と金型との金属接触面積を低減し、圧粉成形金型からの抜出力を低下させることができるため、被覆率を高くすることが望ましい。具体的には、被覆率が25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。一方、被覆率の上限は特に限定されず、100%であってもよいが、鉄基粉末100質量部に対し潤滑剤0.05〜1.2質量部の条件においては、製造条件にもよるが、通常は80%以下である。なお、前記被覆率は、潤滑剤が被覆された鉄基粉末表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって得られた反射電子像における鉄基粉末の表面と潤滑剤によって被覆されている部分の面積比から算出される値である。
本発明の粉末冶金用粉末においては、上述した粘度条件を満たす潤滑剤を用いることにより、前記鉄基粉末の表面における前記潤滑剤の被覆率(以下、単に「被覆率」という場合がある)を向上させることができる。潤滑剤の鉄粉表面への被覆率が高ければ、鉄粉と金型との金属接触面積を低減し、圧粉成形金型からの抜出力を低下させることができるため、被覆率を高くすることが望ましい。具体的には、被覆率が25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。一方、被覆率の上限は特に限定されず、100%であってもよいが、鉄基粉末100質量部に対し潤滑剤0.05〜1.2質量部の条件においては、製造条件にもよるが、通常は80%以下である。なお、前記被覆率は、潤滑剤が被覆された鉄基粉末表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって得られた反射電子像における鉄基粉末の表面と潤滑剤によって被覆されている部分の面積比から算出される値である。
[副原料]
本発明の粉末冶金用粉末は、さらに副原料を含んでいてもよい。前記副原料としては銅、黒鉛、ニッケル、モリブデン等の合金用粉末や、MnS等の切削性改善粉を用いることができる。この際、鉄基粉末表面に被覆した前記潤滑剤によって、前記副原料を鉄基粉末表面に付着させることもできる。
本発明の粉末冶金用粉末は、さらに副原料を含んでいてもよい。前記副原料としては銅、黒鉛、ニッケル、モリブデン等の合金用粉末や、MnS等の切削性改善粉を用いることができる。この際、鉄基粉末表面に被覆した前記潤滑剤によって、前記副原料を鉄基粉末表面に付着させることもできる。
[製造方法]
本発明の粉末冶金用粉末は、鉄基粉末と潤滑剤とを加熱混合して製造することができる。前記加熱混合の温度は、100〜160℃とすることが好ましく、110〜150℃とすることがより好ましい。加熱混合することによって潤滑剤が溶融し、鉄基粉末の表面に付着する。その後、冷却することによって鉄基粉末の表面が、潤滑剤の少なくとも一部によって被覆された状態の粉末冶金用粉末を得ることができる。前記加熱混合では、前記潤滑剤が溶融する温度まで加温し、十分に攪拌混合した後に冷却することが好ましい。
本発明の粉末冶金用粉末は、鉄基粉末と潤滑剤とを加熱混合して製造することができる。前記加熱混合の温度は、100〜160℃とすることが好ましく、110〜150℃とすることがより好ましい。加熱混合することによって潤滑剤が溶融し、鉄基粉末の表面に付着する。その後、冷却することによって鉄基粉末の表面が、潤滑剤の少なくとも一部によって被覆された状態の粉末冶金用粉末を得ることができる。前記加熱混合では、前記潤滑剤が溶融する温度まで加温し、十分に攪拌混合した後に冷却することが好ましい。
前記加熱混合の方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、機械攪拌式混合機を用いて行うことが好ましく、中でも高速羽根攪拌型混合機を用いて行うことが好ましい。
加熱混合を行う際には、鉄基粉末および潤滑剤と一緒に上記副原料を加熱混合することもできる。副原料を潤滑剤と一緒に加熱混合すれば、鉄基粉末の表面に潤滑剤を被覆するとともに、該潤滑剤を介して副原料を鉄基粉末表面に付着させることができる。こうすることで、副原料の偏析を防止することができる。なお、副原料は、鉄基粉末と潤滑剤とを加熱混合して得られた混合後の粉末に添加することもできる。前記副原料としては、鉄基粉末として純鉄粉を使用する場合には、鉄基粉末100質量部に対して銅粉を1〜3質量部、黒鉛を0.3〜1.0質量部程度添加するのが一般的である。
次に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。本発明の実施形態は、本発明の趣旨に適合する範囲で適宜変更することが可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
まず、高速羽根攪拌型混合機に鉄基粉末と潤滑剤とを投入し、加熱混合を行った。前記鉄基粉末としては、アトマイズ法によって製造された純鉄粉(JFEスチール社製 JIP(登録商標)301A)を使用した。使用した潤滑剤、および鉄基粉末と潤滑剤の配合量は、表1に示すとおりとした。表1には、使用した潤滑剤の110℃および150℃における粘度と損失係数を合わせて示した。粘度および損失係数の測定法は、それぞれ以下の通りである。
[粘度]
潤滑剤の温度を150℃に保持した状態で、粘度を測定した。粘度の測定は、円すい−平板形回転粘度計(アントンパール社製MCS−102)を使用して、回転数50rpmの条件で測定した。各潤滑剤について、5回ずつ測定を行い、その平均値を150℃における粘度とした。
潤滑剤の温度を150℃に保持した状態で、粘度を測定した。粘度の測定は、円すい−平板形回転粘度計(アントンパール社製MCS−102)を使用して、回転数50rpmの条件で測定した。各潤滑剤について、5回ずつ測定を行い、その平均値を150℃における粘度とした。
[損失係数]
損失係数は、潤滑剤の温度を150℃に保持した状態で、貯蔵弾性率G’(Pa)及び損失弾性率G’’(Pa)を測定し、下記(1)式の関係から損失係数を算出した。
tan δ=G’’/G’ ・・・(1)
測定は、粘弾性測定装置(アントンパール社製MCR−102)で平行平板を使用し、周波数1Hz、せん断ひずみ0.1%の条件で行った。
損失係数は、潤滑剤の温度を150℃に保持した状態で、貯蔵弾性率G’(Pa)及び損失弾性率G’’(Pa)を測定し、下記(1)式の関係から損失係数を算出した。
tan δ=G’’/G’ ・・・(1)
測定は、粘弾性測定装置(アントンパール社製MCR−102)で平行平板を使用し、周波数1Hz、せん断ひずみ0.1%の条件で行った。
前記加熱混合は、混合槽内の温度を130℃に保持した状態で、高速羽根攪拌型混合機における回転翼の回転数:500rpmで20分間行った。その後、回転翼の回転数:500rpmで攪拌しつつ、混合槽内の温度が60℃になるまで冷却し、粉末冶金用粉末を得た。
[被覆率]
得られた粉末冶金用粉末のそれぞれについて、鉄基粉末の表面における潤滑剤の被覆率を次の方法で測定した。粉末冶金用鉄基粉末をカーボンテープに貼り付けたものを試料とし、SEMを用いて表面を観察した。その際の加速電圧は3.0 kVとした。画像解析ソフトを用いて得られた反射電子像を解析し、鉄粉素地と潤滑剤被覆部の面積をそれぞれ求め、鉄基粉末の表面における前記潤滑剤の被覆率を算出した。被覆率が大きいほど抜出性に優れる。
得られた粉末冶金用粉末のそれぞれについて、鉄基粉末の表面における潤滑剤の被覆率を次の方法で測定した。粉末冶金用鉄基粉末をカーボンテープに貼り付けたものを試料とし、SEMを用いて表面を観察した。その際の加速電圧は3.0 kVとした。画像解析ソフトを用いて得られた反射電子像を解析し、鉄粉素地と潤滑剤被覆部の面積をそれぞれ求め、鉄基粉末の表面における前記潤滑剤の被覆率を算出した。被覆率が大きいほど抜出性に優れる。
[抜出力]
また、実際に圧粉成型を行って、その際の抜出力を測定した。まず、得られた粉末冶金用粉末を、内径11.3mmのタブレット形状の超硬製金型に充填し、成形圧力:686MPaで一軸加圧成形した。その後、圧粉体を金型から抜出す時に金型を押し下げる際の最大力である抜出力(単位:MPa)を測定した。抜出力の値が低いほど抜出性に優れる。
また、実際に圧粉成型を行って、その際の抜出力を測定した。まず、得られた粉末冶金用粉末を、内径11.3mmのタブレット形状の超硬製金型に充填し、成形圧力:686MPaで一軸加圧成形した。その後、圧粉体を金型から抜出す時に金型を押し下げる際の最大力である抜出力(単位:MPa)を測定した。抜出力の値が低いほど抜出性に優れる。
測定結果は、表1に示した通りである。この結果から明らかなように、150℃における粘度が0.5mPa・sである潤滑剤を用いた発明例では、被覆率が高く、抜出力が低くなり、抜出性に優れる粉末冶金用粉末を得られることが分かった。
Claims (4)
- 鉄基粉末100質量部と、
150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、潤滑剤0.05〜1.2質量部とを含み、
前記潤滑剤の少なくとも一部が前記鉄基粉末の表面を被覆しており、
金属元素を含有する潤滑剤を含まない、粉末冶金用粉末。 - 前記潤滑剤の、1Hz、110℃における損失係数が60以下である、請求項1に記載の粉末冶金用粉末。
- 前記鉄基粉末の表面における前記潤滑剤の被覆率が25%以上である、請求項1または2に記載の粉末冶金用粉末。
- 鉄基粉末と潤滑剤とを加熱混合して行う粉末冶金用粉末の製造方法であって、
前記潤滑剤として、温度150℃における粘度が0.5mPa・s以上である、金属元素を含有しない潤滑剤のみを使用し、
前記鉄基粉末100質量部に対する前記潤滑剤の配合量が0.05〜1.2質量部である、粉末冶金用粉末の製造方法。
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