JP2017105923A - 有機物の熱分解装置および有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法 - Google Patents

有機物の熱分解装置および有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い発熱量の液体燃料を得ることができる有機物の熱分解装置および有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の有機物の熱分解装置は、有機物を間接加熱する熱分解炉20と、熱分解炉20で生成される炭化物を分離する炭化物分離器30と、炭化物分離器30から吐出されるガスを冷却することでタールを分離するタール分離器40と、タール分離器40から吐出されるガスを冷却することで低粘度液体を分離する低粘度液体分離器50と、低粘度液体分離器50で分離した低粘度液体を低沸点アルコールと酢酸含有液体に分離するアルコール分離器58と、タール、低粘度液体、および低沸点アルコールのうち、の少なくとも一つ以上の生成物を混合した混合体を液体燃料とする液体燃料化手段と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機物から高い発熱量の液体燃料を得ることができる有機物の熱分解装置および有機物の熱分解装置を用いた液体燃料の製造方法に関する。
特許文献1では、装置の小型化を図れるとともに、養生室で放熱した後の燃焼ガスをガス化炉に利用することで、効率を高めることができる燃料ガス発生装置を提案している。
特許文献1は、高温の燃焼ガスを発生させる燃焼炉と、間接加熱により有機物を熱分解ガスと炭化物に分離するガス化炉と、ガス化炉で分離した熱分解ガスからタール成分を除去する養生室とを備えた燃料ガス発生装置を開示する。そして、この燃料ガス発生装置では、燃焼炉で発生させた燃焼ガスを養生室に導き、養生室に導いた燃焼ガスによって養生室内の熱分解ガスを間接加熱し、熱分解ガスに対して熱を与えた後の燃焼ガスをガス化炉に導き、ガス化炉に導いた燃焼ガスによって有機物を間接加熱する。
特開2014−125508号公報
しかし、特許文献1では、生成したタール含有成分を有効に利用することができず、高い発熱量の液体燃料を得ることができない。
本発明は、利用されることが少ないタールなどの熱分解生成物を活用し、高い発熱量の液体燃料を得ることができる有機物の熱分解装置および液体燃料の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1記載の本発明の有機物の熱分解装置は、有機物を間接加熱する熱分解炉と、前記熱分解炉の出口に接続され、前記熱分解炉で生成される炭化物を分離する炭化物分離器と、前記炭化物分離器の下流に接続され、前記炭化物分離器から吐出されるガスを冷却することでタールを分離するタール分離器と、前記タール分離器の下流側に接続され、前記タール分離器から吐出される前記ガスを冷却することで低粘度液体を分離する低粘度液体分離器と、前記低粘度液体分離器で分離した前記低粘度液体を低沸点アルコールと酢酸含有液体に分離するアルコール分離器と、前記タール分離器で分離する前記タール、前記低粘度液体分離器で分離する前記低粘度液体、および前記アルコール分離器で分離する前記低沸点アルコールのうち、少なくとも一つ以上の生成物を混合した混合体を液体燃料とする液体燃料化手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の有機物の熱分解装置において、前記液体燃料化手段が、前記混合体を充填する圧力容器と、前記圧力容器を設定温度に加熱する加熱手段と、前記設定温度における飽和蒸気圧よりも低くかつ大気圧よりも高い圧力設定で前記混合体を脱水する脱水手段と、脱水した前記混合体を液状体とするための攪拌手段と、を備えることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法であって、前記有機物を熱分解するステップと、前記熱分解する前記ステップの後に、前記熱分解により発生するガス成分を冷却して生成するタール含有液体、前記熱分解により発生する前記ガス成分を分離して生成する前記タールと低粘度液体、および、前記低粘度液体を分離して生成する低沸点アルコールと酢酸含有液体のうち、少なくとも一つ以上の生成物を取り出すステップと、取り出された少なくとも一つ以上の前記生成物を混合した混合体を液状体とするステップと、を含むことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の液体燃料の製造方法において、前記液状体とする前記ステップは、前記混合体に含まれる過剰水分を、100℃以上180℃以下の設定温度において、前記設定温度における飽和蒸気圧よりも低くかつ大気圧よりも高い圧力で脱水する工程と、脱水した前記混合体を攪拌して前記液状体とする攪拌工程と、を含むことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の液体燃料の製造方法において、少なくとも一つ以上の前記生成物を取り出す前記ステップは、少なくとも前記タール含有液体、前記低粘度液体、および、前記酢酸含有液体のいずれかを取り出し、前記液状体とする前記ステップに、アルカリ性材質を添加して前記混合体を中和する中和工程を含むことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の液体燃料の製造方法において、前記アルカリ性材質が、貝化石であることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項5または請求項6に記載の液体燃料の製造方法において、前記混合体に、植物の種子や果実を搾って得られる搾油および廃食用油のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項5に記載の液体燃料の製造方法において、前記液状体から取り出した沈殿物を土壌改良剤として用いることを特徴とする。
請求項9に記載の本発明は、請求項3または請求項4に記載の液体燃料の製造方法において、少なくとも一つ以上の前記生成物を取り出す前記ステップは、少なくとも前記タール含有液体または前記タールを取り出し、前記液状体とする前記ステップに、前記混合体の過剰水分を脱水する工程と、前記混合体の前記過剰水分を脱水する前記工程の後、濃度30%以上の前記低沸点アルコールを添加し、前記混合体の粘度を調整する工程と、を含むことを特徴とする。
請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載の液体燃料の製造法において、前記混合体の前記粘度を調整する前記工程は、前記液状体を、50℃における動粘度を20cSt以下、かつ、発熱量を6000kcal/kg以上の前記液体燃料とするものであって、前記粘度を調整された前記液体燃料を発電に用いることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明は、請求項3または請求項4に記載の液体燃料の製造方法において、少なくとも一つ以上の前記生成物を取り出す前記ステップは、少なくとも前記タール含有液体を取り出し、前記液状体とする前記ステップに、前記混合体の過剰水分を脱水する工程と、前記混合体の前記過剰水分を脱水する前記工程の後、脱水された前記過剰水分から、前記低沸点アルコールと前記酢酸含有液体を分離する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、熱分解生成物を分離し、少なくとも一つ以上の熱分解生成物を用いた混合体を液状体とすることで、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
本発明の一実施例による有機物の熱分解装置の構成図 本発明の他の実施例による有機物の熱分解装置の構成図
本実施の形態による有機物の熱分解装置は、有機物を間接加熱する熱分解炉と、前記熱分解炉の出口に接続され、前記熱分解炉で生成される炭化物を分離する炭化物分離器と、前記炭化物分離器の下流に接続され、前記炭化物分離器から吐出されるガスを冷却することでタールを分離するタール分離器と、前記タール分離器の下流側に接続され、前記タール分離器から吐出される前記ガスを冷却することで低粘度液体を分離する低粘度液体分離器と、前記低粘度液体分離器で分離した前記低粘度液体を低沸点アルコールと酢酸含有液体に分離するアルコール分離器と、前記タール分離器で分離する前記タール、前記低粘度液体分離器で分離する前記低粘度液体、および前記アルコール分離器で分離する前記低沸点アルコールのうち、少なくとも一つ以上の生成物を混合した混合体を液体燃料とする液体燃料化手段と、を備えたものである。本実施の形態によれば、熱分解生成物のうち、少なくとも一つ以上の生成物を用いた混合体を液状体とすることで、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
以下に本発明の一実施例を図1に示す。
図1は本発明の一実施例による有機物の熱分解装置を示す構成図である。
図1に示すように、本実施例による有機物の熱分解装置は、高温の燃焼ガスを発生させる燃焼炉10と、有機物を間接加熱する熱分解炉20と、熱分解炉20の出口に接続される炭化物分離器30と、炭化物分離器30の下流に接続されるタール分離器40と、タール分離器40の下流側に接続される低粘度液体分離器50と、低粘度液体分離器50の下流に接続されるアルコール分離器58と、炭化物分離器30で分離した炭化物、タール分離器40で分離したタール、低粘度液体分離器50で分離した低粘度液体、アルコール分離器58で分離した低沸点アルコールおよび酢酸含有体のうち、少なくとも一つ以上の生成物を含んで混合し、混合した混合体を液状体とする混合器60と、混合器60の下流に接続され、液状体を取り出す液体燃料槽91とを備えている。
熱分解炉20には、攪拌スクリュー付横型回転炉やロータリーキルンが適している。
熱分解炉20は一つで構成してもよいが、本実施例で説明するように、熱分解炉20として第1熱分解炉20Aと第2熱分解炉20Bとを用いることで、特に炭化物とタールとガスとの分離を高めることができる。
第1熱分解炉20Aに導入する燃焼ガスの温度は、第2熱分解炉20Bに導入する燃焼ガスの温度より低くする。図示はしないが、熱分解炉20A、20Bから排出される燃焼ガスの温度を検出する温度検出手段を備え、これらの温度に基づいて燃焼炉10に供給する燃料量や空気量を調整する制御装置も備えている。
なお、有機物としては、あらかじめ含水量が20%以下に調整された木材チップが適しているが、農業残渣物、食品残渣物なども用いることができる。
なお、有機物が籾殻である場合には、熱分解炉20A、20Bでの温度を200〜300℃とする。籾殻では200〜300℃で炭化物を生成できるとともにガス化率を高めることができる。
熱分解炉20A、20Bにロータリーキルンを用いる場合には、熱分解炉20A、20Bは、横型筒状に形成された熱分解反応筒21A、21Bと、熱分解反応筒21A、21Bを加熱する燃焼ガスを流通させる熱分解加熱筒22A、22Bと、熱分解反応筒21A、21Bを回転させる熱分解モータ23A、23Bとからなる。
熱分解反応筒21Aは、一端が有機物を搬入する熱分解反応筒入口21Aa、他端が炭化物、ガス、および液水を搬出する熱分解反応筒出口21Abとなっている。熱分解加熱筒22Aは、熱分解反応筒出口21Ab側が燃焼ガスを導入する熱分解加熱筒入口22Aa、熱分解反応筒入口21Aa側が燃焼ガスを導出する熱分解加熱筒出口22Abとなっている。熱分解加熱筒22Aは熱分解反応筒21Aの外周に配置され、熱分解反応筒21Aと熱分解加熱筒22Aとは完全に区画されている。
熱分解反応筒出口21Abには、配管が上下方向に配置される分岐管25が接続されている。
分岐管25の下方配管25aからは、熱分解反応筒21Aで生成された炭化物を排出することができる。
分岐管25の上方配管25bからは、熱分解反応筒21Aで生成されたガスをタール分離器40に導いている。
分岐管25の下方配管25aから排出される炭化物は、第2熱分解炉20Bに導かれる。
熱分解反応筒21Bは、一端が下方配管25aから排出される炭化物を搬入する熱分解反応筒入口21Ba、他端が炭化物、ガス、および液水を搬出する熱分解反応筒出口21Bbとなっている。
熱分解加熱筒22Bは、熱分解反応筒出口21Bb側が燃焼ガスを導入する熱分解加熱筒入口22Ba、熱分解反応筒入口21Ba側が燃焼ガスを導出する熱分解加熱筒出口22Bbとなっている。熱分解加熱筒22Bは熱分解反応筒21Bの外周に配置され、熱分解反応筒21Bと熱分解加熱筒22Bとは完全に区画されている。
熱分解加熱筒22Bでは、熱分解反応筒出口21Bb側から水又は水蒸気を供給することで、炭化物の活性化と水素ガス分離を行える。
第1熱分解炉20Aの熱分解反応筒入口21Aaにはピストンコンベア24を併設している。ピストンコンベア24は、有機物投入部24aと、有機物投入部24aを往復動作するピストン24bと、ピストン24bを往復動作させるシリンダ24cと、ピストン24bによって有機物を押圧して熱分解反応筒入口21Aaに有機物を導く筒状搬送路24dとからなる。有機物投入部24aに投入された有機物は、ピストン24bによって筒状搬送路24dに押し込まれるため、例えばスクリューによって有機物を搬入するものと比較して有機物とともに熱分解反応筒21Aに搬入される空気の搬入量を減少することができ、燃焼させることなく有機物の熱分解反応を効率的に行うことができる。
燃焼炉10と熱分解加熱筒22Bとは、第1の燃焼ガス用配管11で接続され、燃焼炉10で発生させた燃焼ガスを第2熱分解炉20Bに導いている。
熱分解加熱筒22Bと熱分解加熱筒22Aとは、第2の燃焼ガス用配管12で接続され、熱分解加熱筒22Bで放熱させた燃焼ガスを第1熱分解炉20Aに導いている。
熱分解加熱筒22Aには、第3の燃焼ガス用配管13が接続され、熱分解加熱筒22Aにて放熱した燃焼ガスを排気する。
第3の燃焼ガス用配管13には、出口側端部に排気ブロワー14が接続され、排気ブロワー14によって燃焼ガスを排気する。
第3の燃焼ガス用配管13には、排気ブロワー14に至るまでの経路に、バグフィルタ15が接続されている。
熱分解反応筒出口21Bbには、第2熱分解炉20Bで生成される炭化物とガスとを分離する炭化物分離器30が接続されている。炭化物分離器30は、配管が上下方向に配置される分岐管で構成され、炭化物分離器30の下方配管31からは、第2熱分解炉20Bで生成された炭化物を排出する。炭化物分離器30の上方配管32は、第1の接続管33でタール分離器40に接続され、第1の接続管33は上方配管32から吐出されるガスをタール分離器40に導いている。第1の接続管33は、タール分離器40の側面下方に接続されている。
タール分離器40の側面上方には、冷却液をタール分離器40内に噴霧する冷却液供給管41が接続されている。冷却液供給管41には、ポンプ42と冷却部43とが設けられ、タール分離器40の下方から水分を吸入している。
タール分離器40の下部にはタール排出管44が接続され、タール排出管44から排出されるタールはタール槽45に貯えられる。
このようにタール分離器40は、炭化物分離器30から吐出されるガスを冷却することでタールを分離する。
タール分離器40の上部には、第2の接続管46が接続されている。第2の接続管46はタール分離器40から吐出されるガスを低粘度液体分離器50に導いている。第2の接続管46は、低粘度液体分離器50の側面下方に接続されている。
低粘度液体分離器50の側面上方には、冷却液を低粘度液体分離器50内に噴霧する冷却液供給管51が接続されている。冷却液供給管51には、ポンプ52と冷却部53とが設けられ、低粘度液体分離器50の下方から水分を吸入している。
低粘度液体分離器50の下部には低粘度液体排出管54が接続され、低粘度液体排出管54から排出される低粘度液体は低粘度液体槽55に貯えられる。
このように低粘度液体分離器50は、タール分離器40から吐出されるガスを冷却することで低粘度液体を分離する。
低粘度液体槽55に貯えられる低粘度液体は、メタノールなどの低沸点アルコールおよび酢酸を含んだ木酢油である。低粘度液体槽55に貯えられる低粘度液体は、低沸点アルコール濃度を高めるために、アルコール分離器58に導入される。アルコール分離器58は、水の沸点より低い温度で加熱され、アルコール分離器58の上部からは主に低沸点アルコールが導出され、アルコール分離器58の下部からは主に水と酢酸からなる酢酸含有液体が導出される。
アルコール分離器58から導出された低沸点アルコールは、低沸点アルコール槽57に貯えられる。低沸点アルコール槽57に貯えられる低沸点アルコールは、30%以上の濃度とすることが好ましい。
低粘度液体分離器50の上部には、第3の接続管56が接続されている。第3の接続管56は低粘度液体分離器50から吐出されるガスを導出している。第3の接続管56には、図示しないガス吸引ファンを設け、導出されたガスは図示しないガスホルダーに貯えられる。
炭化物分離器30の上方配管32から第1の接続管33に導かれたガスは、タール分離器40および低粘度液体分離器50において、冷却液供給管41、51から噴霧される冷却水によって冷却される。低粘度液体分離器50において冷却されたガスは、ガスホルダーに導かれる。ガスホルダーに貯えられたガスは、例えばガスエンジン発電機の燃料として利用される。
炭化物分離器30の下方配管31から排出された炭化物は、炭化物槽34に貯えられる。炭化物槽34に貯えられた炭化物は、炭化物搬送機35によって混合器60に送られる。炭化物搬送機35は、粉砕機能を備え炭化物を微細化することが好ましい。
タール槽45に貯えられたタール、および低沸点アルコール槽57に貯えられた低沸点アルコールは、混合器60に送られる。なお、低粘度液体槽55に貯えられた低粘度液体、およびアルコール分離器58に貯えられた酢酸含有液体を混合器60に導入してもよい。
混合器60は、混合体を密閉状態で充填する圧力容器と、圧力容器を設定温度に加熱する加熱手段(図示なし)と、設定温度における飽和蒸気圧よりも低く大気圧よりも高い圧力設定で脱水する脱水手段(図示なし)と、攪拌機61を備えている。脱水手段には蒸留器(図示なし)が接続され、蒸留器は、低沸点アルコールと酢酸含有液体を回収できるものであることが好ましい。攪拌機61は、破砕機であることが好ましい。攪拌機61が破砕機である場合には、混合体を混合するとともに炭化物や混合された固形物を微細化することができ、炭化物や混合された固形物を微細化することで、混合体の分散性を高め、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
混合器60には、貯えられた生成物である炭化物、タール、低粘度液体、酢酸含有液体、および低沸点アルコールのうち、少なくとも一つ以上の生成物が送られる。
タールが混合媒体として選ばれる場合、茶滓・薬草滓・コーヒー滓・廃菌床・食品残渣・農産物残渣・雑草・藻類・家畜糞尿・し尿汚泥・下水汚泥・有機汚泥など、高含水のため燃焼熱を取り出しにくい有機物を含むものが好適に混合される。この混合体を、設定温度における飽和蒸気圧よりも低く大気圧より高い圧力設定で脱水することにより、脱水により凝集しやすい有機物の凝集を防ぐことができ、混合体の分散性が高まる。また、攪拌により、タール中に固体の有機物が一部溶解しながら微分散し、粘度の低い液状体となり、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。これは、タール中に含まれるフェノール類・ベンゼンなどにより固体の有機物が一部溶解するとともに、過剰水の脱水が進んだ後も親水基を持つ有機物との水和により混合体の粘度が低く保たれるためと考えられる。このようにして、高い発熱量を持ちながら、粘度が高く、液体燃料としての利用が難しい熱分解生成物のタールから、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
低粘度液体および酢酸含有液体が混合媒体として選ばれる場合、植物の種子や果実を絞って得られる搾油・廃油(廃食用油を含む。)など、夾雑物を含む発熱量の高いものが好適に混合される。この混合体を、設定温度における飽和蒸気圧よりも低く大気圧より高い圧力設定で脱水しながら撹拌することにより、夾雑物が微分散したエマルジョン型の液状体が得られる。これは、低粘度液体および酢酸含有体に含まれる酢酸成分が夾雑物の微粒化とエマルジョン形成に寄与しているものと考えられる。このようにして、発熱量の低い低粘度液体および酢酸含有液体から、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
低沸点アルコールが混合媒体として選ばれる場合、タール・ピッチ類が好適に混合される。この混合体を撹拌することにより、粘度の低い、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
炭化物が混合媒体として選ばれる場合、含水率の高いアルコール類が好適に混合される。この混合体を撹拌することにより、炭化物が微分散した高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
これらの熱分解生成物は、1種を混合媒体とするにとどまらず、2種以上の熱分解生成物を混合媒体とすることも可能であり、他の混合物を用いず熱分解生成物同士の混合によることも可能である。
混合器60には、混合物の投入口(図示なし)、混合媒体である熱分解生成物を送り込む接続管(低粘度液体および酢酸含有液体の接続管の図示なし)のほか、第4の接続管62が接続され、第4の接続管62にはポンプ63を備えている。第4の接続管62からは、混合器60で設定温度において加熱され、設定温度における飽和蒸気圧よりも低く大気圧よりも高い圧力設定で脱水され、所定時間攪拌され、または攪拌とともに微細化された液状体を取り出し、液体燃料槽91に貯えることができ、この液状体を液体燃料として用いることができる。
液体燃料化手段は、混合器60と液体燃料槽91で構成される。
以下に本発明の他の実施例を図2に示す。
図2は本発明の他の実施例による有機物の熱分解装置を示す構成図である。なお、図1に示す実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を一部省略する。
本実施例は、液状体にアルカリ性材質を混合し、生成した沈殿物と液体燃料を取り出すものである。混合媒体とする熱分解生成物は、低粘度液体槽55に貯えられている低粘度液体またはアルコール分離器58で分離された酢酸含有液体が選ばれ、混合器60に送られ、酸性を示す高い発熱量の油と混合される。酸性を示す高い発熱量の油は、植物の種子や果実を搾って得られる搾油および廃食用油が好適に用いられる。
混合器60では、設定温度において加熱され、設定温度における飽和蒸気圧よりも低く大気圧よりも高い圧力設定で脱水され、所定時間攪拌され、または攪拌とともに、夾雑物が溶解または微細化した液状体を形成する。液状体は、混合器60の接続管62から液体燃料分離器70に送られる。
アルカリ性材質はアルカリ性粉末槽81に貯えられ、アルカリ性粉末槽81に貯えられたアルカリ性粉末は、アルカリ性粉末搬送機82によって液体燃料分離器70に送られる。
アルカリ性粉末は、水酸化カルシウム粉末や水酸化カリウム粉末を用いてもよいが、貝化石が好適に用いられる。貝化石は、石灰質や珪酸質などからなるネクトン(殻、魚類)、プランクトン(微生物)、藻類、海草などが地殻変動によって埋没堆積した化石体であり、古代貝化石(Ancient Shellfish Fossil, ASF)とも呼ばれ、例えば、酸化カルシウム46%、二酸化炭素33%、珪酸11%、アルミナ6%、マグネシウム1%、酸化鉄1%の成分からなる。
アルカリ性粉末搬送機82は、粉砕機能を備え貝化石を微細化できるものであることが好ましい。液体燃料分離器70に送られる貝化石粉末の粒子径は、50〜760μmとする。
液体燃料分離器70では、アルカリ性粉末を加えた混合体を撹拌した後に所定時間静置して、液体燃料層と、水層と、沈殿層とに分離する。なお、水層と沈殿槽には明確な境がなく、スラリー状の懸濁液となっていることが多い。
液体燃料分離器70で分離した液体燃料層からは液体燃料を取り出す。液体燃料は第5の接続管71から液体燃料槽91に導かれる。第5の接続管71には、液体燃料層から液体燃料を吸引するポンプ72を設けている。
液体燃料分離器70で分離した水層と沈殿層とからは水と沈殿物が懸濁したスラリーを取り出す。スラリーは、第6の接続管73からスラリー槽92を介して濾過器93に導かれる。第6の接続管73には、スラリーを吸引するポンプ74を設けている。
濾過器93では、脱水されたスラッジケーキと水とに分離され、水は濾過水槽94を介して混合器60に戻される。アルカリ性粉末が貝化石である場合、脱水されたスラッジケーキは、土壌改良として好適に用いられる。
液体燃料化手段は、混合器60、液体燃料分離器70、燃料用オイル槽91、スラリー槽92、濾過器93、濾過水槽94で構成される。なお、スラリー槽92にはスラリー攪拌機92aを備えている。スラリー槽92と濾過器93とは第7の接続管75で接続され、第7の接続管75にはポンプ76を備えている。
本実施例による有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法は、有機物を熱分解するステップと、熱分解するステップの後に、熱分解により発生するガス成分を冷却して生成するタール含有液体、熱分解により発生するガス成分を分離して生成するタールと低粘度液体、および、低粘度液体を分離して生成する低沸点アルコールと酢酸含有液体のうち、少なくとも一つ以上の生成物を取り出すステップと、取り出された少なくとも一つ以上の生成物を混合した混合体を液状体とするステップとからなる。
そして、液状体とするステップは、混合体に含まれる過剰水分を、100℃以上180℃以下の設定温度において、設定温度における飽和蒸気圧よりも低くかつ大気圧よりも高い圧力で脱水する工程と、脱水した混合体を攪拌して液状体とする攪拌工程とを含む。
また、少なくとも一つ以上の生成物を取り出すステップにおいて、少なくともタール含有液体、低粘度液体および酢酸含有液体のいずれかを取り出した後、液状体とするステップには、アルカリ性材質を添加し混合体を中和する中和工程を含む。ここで、アルカリ性材質は、貝化石であることが好ましい。
混合体には、植物の種子や果実を搾って得られる搾油および廃食用油のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。取り出したスラリーは、土壌改良剤として用いることができる。
さらに、少なくとも一つ以上の生成物を取り出すステップにおいて、少なくともタール含有液体またはタールを取り出した後、液状体とするステップに、混合体の過剰水分を脱水する工程と、混合体の過剰水分を脱水する工程の後、濃度30%以上の低沸点アルコールを添加し、混合体の粘度を調整する工程とを含む。
そして、粘度を調整する工程は、液状体を、50℃における動粘度を20cSt以下、かつ、発熱量を6000kcal/kg以上の液体燃料とするものであって、粘度調整された液体燃料を発電に用いることができる。
本実施例の有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法は、さまざまな有機物の熱分解炉20を用いることができる。
熱分解炉20は、熱分解炉20で生成される炭化物を分離する炭化物分離器30と、炭化物分離器30の下流に接続され、炭化物分離器30から吐出されるガスを冷却することでタールを分離するタール分離器40と、タール分離器40の下流側に接続され、タール分離器40から吐出されるガスを冷却することで低粘度液体を分離する低粘度液体分離器50と、低粘度液体分離器50で分離した低粘度液体を低沸点アルコールと酢酸含有液体に分離するアルコール分離器58とを有するものが好適に用いられる。加熱方式は、間接加熱および直接加熱のいずれも用いることができる。
また、炭化物とタール含有液体だけを取り出す簡易なものも用いることができる。タール含有液体を静置することによりタールと低粘度液体を分離することができる。低沸点アルコールと酢酸含有液体は、低粘度液体を蒸留することにより取り出すことができる。
さらに、複数の簡易な熱分解炉から取り出されたタール含有液体を集め、このタール含有液体を、加熱・濃縮することにより、タールと低粘度液体を分離して取り出すこともでき、さらに、低粘度液体から低沸点アルコールおよび酢酸含有液体を蒸留により取り出すことができる。このようにして、低・未利用になっている熱分解生成物を活用することができる。
液状体とするステップには、混合体を充填する圧力容器と、圧力容器を設定温度に加熱する加熱手段と、設定温度における飽和蒸気圧よりも低くかつ大気圧よりも高い圧力設定で混合体を脱水する脱水手段と、脱水した混合体を液状体とするための攪拌手段とを備える装置が好適に用いられる。
一方、混合媒体に水分率の低いタール・アルコールなどが取り出される場合、夾雑物の少ない混合体には、圧力容器・加熱手段・脱水手段のない、簡易な装置を用いることができる。
取り出される混合媒体にタールが選ばれる場合、茶滓・薬草滓・コーヒー滓・廃菌床・食品残渣・農産物残渣・雑草・藻類・家畜糞尿・し尿汚泥・下水汚泥・有機汚泥など、高含水のため燃焼熱を取り出しにくい有機物を含むものが好適に混合される。
低粘度液体および酢酸含有液体が選ばれる場合、植物の種子や果実を絞って得られる搾油・廃油(廃食用油を含む)など、夾雑物を含む発熱量の高いものが好適に混合される。
この時、アルカリ性材質を加え中和することにより、エンジンなどの材質に腐食などの悪影響を与えることのない液体燃料を得ることができる。アルカリ性材質には、貝化石(アルカリ性粉末)が好適に用いられ、その沈殿物は、土壌改良材として用いることができる。
低沸点アルコールが混合媒体として選ばれる場合、タール・ピッチ類が好適に混合される。この混合体を撹拌することにより、粘度の低い、高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
炭化物が混合媒体として選ばれる場合、含水率の高いアルコール類が好適に混合される。この混合体を撹拌することにより、炭化物が微分散した高い発熱量の液体燃料を得ることができる。
夾雑物の少ないタールおよびタール含有液体が混合媒体として選ばれる場合、過剰水分を脱水した後、アルコールを加えることにより、液体燃料の動粘度と発熱量を容易にコントロールすることができ、発電用のエンジンに好適に用いられる。このとき、アルコールは、低沸点アルコールであればよく、熱分解生成物以外のアルコールを用いることもできる。
タール含有液体が混合媒体として選ばれる場合、混合体の過剰水分を脱水した後、脱水された過剰水分から、低沸点アルコールと酢酸含有液体を分離することにより、効率的に低沸点アルコールと酢酸含有液体を取り出すことができる。低沸点アルコールや酢酸含有液体は、混合媒体として再利用できるほか、酢酸含有液体は、動物の回避・害虫対策・土壌改良などの農薬的な使用や消臭・殺菌などの厚生的な利用も可能である。また、酢酸含有液体を添加することにより、酢酸カルシウムや酢酸マグネシウムを合成し、融雪剤として利用することもできる。
これらの熱分解生成物は、1種を混合媒体とするにとどまらず、2種以上の熱分解生成物を混合媒体とすることも可能であり、他の混合物を用いず熱分解生成物同士の混合によることも可能である。
本発明は、有機物の熱分解装置および有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法として適しているが、木質材以外の有機物や汚染物質の処理装置としても利用できる。
10 燃焼炉
20 熱分解炉
30 炭化物分離器
40 タール分離器
50 低粘度液体分離器
60 混合器
61 攪拌機
70 液体燃料分離器
81 貝化石槽

Claims (11)

  1. 有機物を間接加熱する熱分解炉と、
    前記熱分解炉の出口に接続され、前記熱分解炉で生成される炭化物を分離する炭化物分離器と、
    前記炭化物分離器の下流に接続され、前記炭化物分離器から吐出されるガスを冷却することでタールを分離するタール分離器と、
    前記タール分離器の下流側に接続され、前記タール分離器から吐出される前記ガスを冷却することで低粘度液体を分離する低粘度液体分離器と、
    前記低粘度液体分離器で分離した前記低粘度液体を低沸点アルコールと酢酸含有液体に分離するアルコール分離器と、
    前記タール分離器で分離する前記タール、前記低粘度液体分離器で分離する前記低粘度液体、および前記アルコール分離器で分離する前記低沸点アルコールのうち、少なくとも一つ以上の生成物を混合した混合体を液体燃料とする液体燃料化手段と、
    を備えたことを特徴とする有機物の熱分解装置。
  2. 前記液体燃料化手段が、
    前記混合体を充填する圧力容器と、
    前記圧力容器を設定温度に加熱する加熱手段と、
    前記設定温度における飽和蒸気圧よりも低くかつ大気圧よりも高い圧力設定で前記混合体を脱水する脱水手段と、
    脱水した前記混合体を液状体とするための攪拌手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機物の熱分解装置。
  3. 有機物の熱分解生成物を用いた液体燃料の製造方法であって、
    前記有機物を熱分解するステップと、
    前記熱分解する前記ステップの後に、前記熱分解により発生するガス成分を冷却して生成するタール含有液体、前記熱分解により発生する前記ガス成分を分離して生成する前記タールと低粘度液体、および、前記低粘度液体を分離して生成する低沸点アルコールと酢酸含有液体のうち、少なくとも一つ以上の生成物を取り出すステップと、
    取り出された少なくとも一つ以上の前記生成物を混合した混合体を液状体とするステップと、
    を含むことを特徴とする液体燃料の製造方法。
  4. 前記液状体とする前記ステップは、
    前記混合体に含まれる過剰水分を、100℃以上180℃以下の設定温度において、前記設定温度における飽和蒸気圧よりも低くかつ大気圧よりも高い圧力で脱水する工程と、
    脱水した前記混合体を攪拌して前記液状体とする攪拌工程と、
    を含むことを特徴とする請求項3に記載の液体燃料の製造方法。
  5. 少なくとも一つ以上の前記生成物を取り出す前記ステップは、少なくとも前記タール含有液体、前記低粘度液体、および、前記酢酸含有液体のいずれかを取り出し、
    前記液状体とする前記ステップに、アルカリ性材質を添加して前記混合体を中和する中和工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の液体燃料の製造方法。
  6. 前記アルカリ性材質が、貝化石であることを特徴とする請求項5に記載の液体燃料の製造方法。
  7. 前記混合体に、植物の種子や果実を搾って得られる搾油および廃食用油のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の液体燃料の製造方法。
  8. 前記液状体から取り出した沈殿物を土壌改良剤として用いることを特徴とする請求項5に記載の液体燃料の製造方法。
  9. 少なくとも一つ以上の前記生成物を取り出す前記ステップは、少なくとも前記タール含有液体または前記タールを取り出し、
    前記液状体とする前記ステップに、
    前記混合体の過剰水分を脱水する工程と、
    前記混合体の前記過剰水分を脱水する前記工程の後、濃度30%以上の前記低沸点アルコールを添加し、前記混合体の粘度を調整する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の液体燃料の製造方法。
  10. 前記混合体の前記粘度を調整する前記工程は、
    前記液状体を、50℃における動粘度を20cSt以下、かつ、発熱量を6000kcal/kg以上の前記液体燃料とするものであって、
    前記粘度を調整された前記液体燃料を発電に用いることを特徴とする請求項9に記載の液体燃料の製造方法。
  11. 少なくとも一つ以上の前記生成物を取り出す前記ステップは、少なくとも前記タール含有液体を取り出し、
    前記液状体とする前記ステップに、
    前記混合体の過剰水分を脱水する工程と、
    前記混合体の前記過剰水分を脱水する前記工程の後、脱水された前記過剰水分から、前記低沸点アルコールと前記酢酸含有液体を分離する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の液体燃料の製造方法。
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