JP2017101594A - 先行待機ポンプ用軸受、先行待機ポンプおよび先行待機ポンプの運転方法 - Google Patents

先行待機ポンプ用軸受、先行待機ポンプおよび先行待機ポンプの運転方法 Download PDF

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Abstract

【課題】構造を単純化しつつ信頼性を確保することが可能な先行待機ポンプ用軸受、先行待機ポンプおよび先行待機ポンプの運転方法を提供する。
【解決手段】磁気軸受6Aと水中軸受5とを備えた軸受装置4Aであって、磁気軸受6Aは、ポンプ軸2に設けられる永久磁石7と、この永久磁石7の外周に対向して配置されて当該永久磁石7との間で反発力を発生させる電磁石8と、を備える。また、電磁石8は、制御装置によってON−OFF制御される。
【選択図】図2

Description

本発明は、先行待機ポンプ用軸受、先行待機ポンプおよび先行待機ポンプの運転方法に関する。
都市部では路面が舗装されているため、集中豪雨時には、雨水が地面に浸透することなく排水ポンプ機場に一挙に流入してくる。一方、エンジンやモータで駆動されるポンプは、運転開始操作から始動までに時間を要するので、排水ポンプ機場の吸込水位が上昇してからポンプの運転を開始する操作をしていたのでは排水が間に合わない。このため、排水ポンプ機場では降水と同時にポンプを始動して、軸受部がドライ状態の空転運転が行われ、その後流入してくる水を待つ先行待機ポンプが採用されている。
現在の先行待機ポンプでは、1時間程度の空転運転が必要とされているが、最近の頻繁な集中豪雨による浸水被害を無くすため、運用者より早めのポンプ起動の要望があり空転運転時間が延びることが予測される。このため、今後は長時間の先行待機運転に対応する先行待機ポンプが要求されるので、信頼性の高い先行待機ポンプ用の軸受が必要とされる。
この改善技術として、例えば、磁気軸受に流体潤滑すべり軸受けの軸受特性を持たせ、磁気軸受を水中軸受として使用可能とする技術が提案されている(特許文献1参照)。また、水中軸受と磁気軸受の両方を搭載して、ポンプのドライ運転時に磁気軸受を主軸受として使用し、排水運転時に水中軸受を主軸受として使用する方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開平5−187393号公報 特開2002−213384号公報
しかしながら、従来の技術では、軸側に電磁石を使用するとともに変位センサによって軸受の隙間制御を行うため、システムが複雑で高価になり、ポンプ軸に電磁石を搭載しているため、電磁石のコイルのリード線の取り出しが複雑になるという課題がある。
本発明の目的は、構造を単純化しつつ信頼性を確保することが可能な先行待機ポンプ用軸受、先行待機ポンプおよび先行待機ポンプの運転方法を提供することを目的とする。
本発明の先行待機ポンプ用軸受は、磁気軸受と水中軸受とを備えた先行待機ポンプ用軸受であって、前記磁気軸受は、ポンプ軸に設けられる永久磁石と、前記永久磁石に対向して配置されて当該永久磁石との間で反発力を発生させる電磁石と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の先行待機ポンプの運転方法は、ポンプ軸に設けられる永久磁石と前記永久磁石に対向して配置されて当該永久磁石との間で反発力を発生させる電磁石とを備えた磁気軸受、および水中軸受と、を備えた先行待機ポンプの運転方法であって、制御装置は、排水運転開始水位となった場合に前記電磁石を消磁し、前記排水運転開始水位よりも低い排水運転停止水位であるエアーロック運転開始水位となった場合に前記電磁石を励磁することを特徴とする。
本発明によれば、構造を単純化しつつ信頼性を確保することが可能な先行待機ポンプ用軸受、先行待機ポンプおよび先行待機ポンプの運転方法を提供できる。
また、本発明によれば、空転運転を1時間以上の長時間行うことが可能である。
第1実施形態の先行待機ポンプを示す縦断面図である。 第1実施形態の先行待機ポンプに用いられる軸受装置を示す断面図である。 (a)はポンプ軸に組み込むリング型の永久磁石の分解斜視図、(b)はヘテロポーラ型の電磁石の1/4を軸方向に切り欠いた断面斜視図である。 第1実施形態の先行待機ポンプにおける運転方法を示すタイミングチャートである。 図4の各動作における水位と圧力スイッチの状態を示す説明図である。 第2実施形態の先行待機ポンプに用いられる軸受装置を示す断面図である。 第2実施形態の軸受装置の電磁石を示す断面斜視図である。 第3実施形態の先行待機ポンプに用いられる軸受装置を示す断面図である。 (a)はバー型永久磁石を示す斜視図、(b)はバー型永久磁石のポンプ軸への取付状態を示す横断面図、(c)は(b)のA−A線断面図である。 第4実施形態の先行待機ポンプに用いられる軸受装置を示す断面図である。
以下、本実施形態に係る先行待機ポンプ100について、図1ないし図10を参照して説明する。なお、各実施形態において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の先行待機ポンプを示す縦断面図である。
図1に示すように、先行待機ポンプ100は、先端(下端)に羽根車1が固定されたポンプ軸2と、羽根車1及びポンプ軸2が収容されるケーシング3と、ポンプ軸2を回転可能に支持する軸受装置(先行待機ポンプ用軸受)4A,4Aと、制御装置50と、を備えて構成されている。ポンプ軸2の上端部には、先行待機ポンプ100を駆動する原動機200(図5参照)が接続されている。
ケーシング3は、羽根車1の上流側に設けられる吸込ケーシング31と、羽根車1の周囲に設けられるケーシングライナ32と、羽根車1の下流側に設けられるボウルケーシング33と、ボウルケーシング33の下流側に設けられる揚水管34と、揚水管34の下流側に設けられる吐出しエルボ35と、を有して構成されている。
吐出しエルボ35は、ポンプ設置床30よりも上側に配置されている。また、吸込ケーシング31の先端にはベルマウス31aが形成され、ベルマウス31aと羽根車1との間には吸気管36が複数接続されている。吸気管36の先端は、図示省略しているが、ポンプ設置床30より上側の空間(大気)と連通している。
軸受装置4Aは、ポンプ軸2の先端部と、ポンプ軸2の中間部の2箇所に設けられている。なお、いずれの軸受装置4Aも同様の構成である。また、軸受装置4Aは、2箇所に限定されるものではなく、ポンプ軸2の長さなどに応じて1箇所であってもよく、3箇所以上であってもよい。
ボウルケーシング33内には、軸受装置4Aを保持する保持体33aが設けられている。この保持体33aは、上流側から下流側に向けて縮径する形状である。また、保持体33aは、複数枚の案内羽根33bによってボウルケーシング33の内壁面と固定されている。また、保持体33aには、ポンプ軸2に延びるステー33c,33cが設けられ、このステー33cによって軸受装置4Aが支持されている。また、もう一方の軸受装置4Aは、揚水管34から延びるステー34a,34aによって支持されている。
また、ポンプ設置床30の吐出しエルボ35には、圧力センサ41が設けられている。この圧力センサ41は、例えば、吐出しエルボ35の側面に接続される配管42と、この配管42の先に接続される圧力スイッチ(PSW)43と、によって構成されている。圧力スイッチ43は、例えば、ダイヤフラム式のものであり、配管42を介して排水の圧力を受けることにより、スイッチがONする構成のものである。圧力スイッチ43を吐出しエルボ35、つまりポンプ設置床30の上方(床上)に設けることにより、圧力スイッチ43のメンテナンス性を向上できる。
図2は、第1実施形態の先行待機ポンプに用いられる軸受装置を示す断面図、図3(a)はポンプ軸に組み込むリング型の永久磁石の分解斜視図、(b)はヘテロポーラ型の電磁石の1/4を軸方向に切り欠いた断面斜視図である。
図2に示すように、軸受装置4Aは、水中軸受5と磁気軸受6Aとを備えて構成され、水中軸受5の下部(下側、上流側)に磁気軸受6Aが設けられたものである。
また、磁気軸受6Aの回転体(永久磁石7)との軸受ギャップ(隙間)は、水中軸受5の軸受本体53とスリーブ51とのギャップ(隙間)よりも広く形成されている。これにより、ポンプ運転中に磁気軸受6Aの電磁石8と永久磁石7とが当たることや摺動することが無い。
水中軸受5は、スリーブ51、スリーブ固定部材52、軸受本体53、軸受保持部材54、軸受ホルダ55などで構成されている。
スリーブ51は、ポンプ軸2の外周面に設けられる円筒形状のものであり、超硬合金の材料などで構成されている。スリーブ固定部材52は、スリーブ51を固定するものであり、ステンレス合金などの材料で構成されている。スリーブ51およびスリーブ固定部材52は、ポンプ軸2と共に回転するように構成されている。
軸受本体53は、スリーブ51の外周面と対向して配置されるすべり軸受である。また、軸受本体53は、摺動性の良好な合成樹脂材料を円筒状にしたものである。軸受保持部材54は、軸受本体53を保持するものである。軸受ホルダ55は、ステー34aに固定されるとともに、軸受保持部材54を保持するものである。
磁気軸受6Aは、回転側のポンプ軸2に組み込まれるリング型の永久磁石7と、ヘテロポーラ型の電磁石8と、を備えて構成されている。また、磁気軸受6Aの電磁石8は、水中軸受5のステー34a側に取り付けられている。
図3(a)に示すように、永久磁石7は、軸方向の一方にN極、他方にS極が形成されたリング形状のものであり、フェライト磁石やネオジム磁石などによって構成されている。また、永久磁石7は、4個の永久磁石部7A,7B,7C,7Dを組み合わせて構成され、N極とN極、S極とS極とがそれぞれ対向するように軸方向に重ねられた構造を有している。このように、永久磁石7の形状がリング状であるため、ポンプ軸2に容易に組み込むことができる。
図3(b)に示すように、電磁石8は、4個の電磁石部8A,8B,8C,8Dと鉄芯部8Eとを組み合わせた構造を有している。各電磁石部8A,8B,8C,8Dは、鉄芯9とコイル10とを組み合わせて構成されている。
鉄芯9は、リング形状を呈し、内周壁面の一部と下面の一部が切り欠かれることで断面視矩形状の切欠部9aが形成されている。この切欠部9a内には、周方向にリード線11を巻回して円環状に構成されたコイル10が設けられている。また、鉄芯9には、切欠部9aと外周面とを連通される連通孔9bが形成され、この連通孔9bを介してリード線11が引き出されている。
また、鉄芯9の上面外周縁には、凹み形状の段差部9cが円環状に形成されている。また、鉄芯9の下面外周縁には、下向きに凸形状の段差部9dが円環状に形成されている。この段差部9dは、その下段に位置する電磁石部8B(8C,8D)の段差部9cと嵌合するようになっている。これにより、各電磁石部8A,8B,8C,8Dが軸方向に密着して積層されるとともに、径方向に位置ずれしないようになっている。
鉄芯部8Eは、電磁石部8Dの下側に配置されている。また、鉄芯部8Eの上面外周縁には、電磁石部8Dの段差部9dが嵌合する凹み形状の段差部9eが形成されている。また、鉄芯部8Eの下面は、水平な平坦面を有するように構成されている。
図2に戻って、永久磁石部7A,7B,7C,7Dは、軸方向の長さが同じに形成されている。一方、電磁石部8Aは、電磁石部8B,8C,8Dよりも高さが低く(軸方向の長さが短く)形成されている。電磁石部8B,8C,8Dは、互いに同じ高さ(軸方向の長さが同じ)に形成されている。これにより、永久磁石部7AのS極が電磁石部8BのS極と対向し、永久磁石部7BのN極が電磁石部8CのN極と対向し、永久磁石部7CのS極が電磁石部8DのS極と対向し、永久磁石部7DのN極が鉄芯部8EのN極と対向している。
また、永久磁石7(永久磁石部7A,7B,7C,7D)は、水中軸受5の下側に位置するポンプ軸2に上方(流体の下流側)、または下方(流体の上流側)から挿入されることで取り付けられている。ポンプ軸2には、最上段の永久磁石部7Aの上側に円環状の溝2aが形成されている。この溝2aは、スリーブ51が取り付けられる位置のポンプ軸2の表面よりも深く形成されている。また、溝2aには、半割形状(リングを2分割)に形成した抑え部材12が組み合わされて嵌合するように取り付けられる。これにより、永久磁石部7A,7B,7C,7D同士を互いに密着させた状態で固定することができる。また、ポンプ軸2には、抑え部材12を固定するためのリング形状の固定部材13が上方から挿入されて取り付けられている。
前記したスリーブ51、スリーブ固定部材52、永久磁石7、抑え部材12、固定部材13、および永久磁石部7Dより下側に位置するポンプ軸2の、各外周面が、すべて面一になるように構成されている。
永久磁石7に対向して配置された電磁石8は、鉄芯部8E側からボルトBが挿通されて電磁石部8A,8B,8C,8Dおよび鉄芯部8Eが密着した状態で固定される。また、電磁石8は、ケース14内に収容され、ケース14が水中軸受5の軸受ホルダ55にボルト(図示せず)によって固定されている。
ケース14は、電磁石8が収容される収容部14aと、収容部14aに蓋をする蓋部材14bとによって構成されている。収容部14aの下端には、電磁石8が挿入される挿入口14cが形成されている。蓋部材14bは、電磁石8が収容部14aに収容された後、収容部14aにボルト(図示せず)を介して固定される。
なお、回転側の永久磁石7とともに固定側の電磁石8を永久磁石にすることで安価で扱い易い磁気軸受を構成することができるが、磁気軸受6Aの組立てが永久磁石同士の反発力によって困難になる。そこで、ポンプ軸2側の磁石を永久磁石7とし、固定側の磁石を電磁石8とすることで、ポンプ組み立て時に電磁石8を消磁状態(通電をOFF)にすることで、永久磁石7と電磁石8との反発力を無くし、ポンプの組み立てが容易になる。
制御装置50は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載して構成されている。また、制御装置50は、圧力センサ41の検出値に基づいて、磁気軸受6AをON−OFF制御する。すなわち、制御装置50は、圧力センサ41の圧力スイッチ43がOFFからONに切り替わったと判定した場合に磁気軸受6Aの電磁石8を励磁から消磁(通電をONからOFF)に切り替え、圧力スイッチ43がONからOFFに切り替わったと判定した場合に電磁石8を消磁から励磁(通電をOFFからON)に切り替える。
このように構成された磁気軸受6Aでは、電磁石部8Aのコイル10に図2の向き(図示右側では紙面垂直方向奥側から手前側、図示左側では紙面垂直方向手前側から奥側)に電流を流すことで、軸方向の上側にN極、下側にS極が発生し、永久磁石部7Aと電磁石部8A,8Bとの間において反発力が発生する。
また、電磁石部8Bのコイル10に電磁石部8Aとは逆向き(図示右側では紙面垂直方向手前側から奥側、図示左側では紙面垂直方向奥側から手前側)に電流を流すことで、軸方向の上側にS極、下側にN極が発生し、永久磁石部7Bと電磁石部8B,8Cとの間において反発力が発生する。
また、電磁石部8Cのコイル10に電磁石部8Bとは逆向き(図示右側では紙面垂直方向奥側から手前側、図示左側では紙面垂直方向手前側から奥側)に電流を流すことで、軸方向の上側にN極、下側にS極が発生し、永久磁石部7Cと電磁石部8C,8Dとの間において反発力が発生する。
また、電磁石部8Dのコイル10に電磁石部8Cとは逆向き(図示右側では紙面垂直方向手前側から奥側、図示左側では紙面垂直方向奥側から手前側)に電流を流すことで、軸方向の上側にS極、下側にN極が発生し、永久磁石部7Dと電磁石部8Dおよび鉄芯部8Eとの間において反発力が発生する。
このように、電磁石8を通電することによって、ポンプ軸2を電磁石8から離間した状態で支持することができる。また、複数の鉄芯9に分割して、コイル10を組み込むことにより、構造がシンプルになり、製作が容易で安価になる。
なお、磁気軸受6Aでは、永久磁石7のS極とN極の磁界の繋がりを回避することが必要であり、そのために永久磁石7を取り付けるポンプ軸2の材質は、非磁性材料を用いることが好ましい。非磁性材料としては、例えば、アルミニウム合金やオースティナイト系のステンレス合金を適用することができる。
次に、軸受装置4Aを備えた先行待機ポンプ100の動作(運転方法)について図4および図5を参照して説明する。図4は、第1実施形態の先行待機ポンプにおける運転方法を示すタイミングチャート、図5は、図4の各動作における水位と圧力スイッチの状態を示す説明図である。なお、図4(a),(b),(c),(d),(e)は、図5(a),(b),(c),(d),(e)に対応している。また、図5(a)〜(e)の括弧内のON,OFFは、磁気軸受6Aの励磁(ON)、消磁(OFF)の状態を示している。
図4には、ポンプ井S1の水位(吸込水槽の水位)、ポンプ起動(停止)スイッチ(以下、起動SWとする)、ポンプ運転状態、磁気軸受6Aの制御(電磁石8の励磁(ON)と消磁(OFF))、圧力スイッチ(PSW)43の各状態が図示されている。図4に示すように、時刻t0の運転開始前(ポンプ起動スイッチがOFF)においては、電磁石8が消磁状態(通電OFF)であり、圧力センサ41の圧力スイッチ43は、ポンプ運転状態が停止しているため、ポンプ内圧力が所定圧力以下となり、OFFである。
そして、ポンプ機場の上流側で天候が降雨になり、気象情報や気象観測等によって豪雨となることが予想される場合、ポンプ井S1(図5参照)に排水運転水位未満の水位状態において、運転員が手動操作で起動SWをONにする。時刻t1における起動SWのONに連動して、磁気軸受6Aの通電を行い、電磁石8が励磁(通電ON)することで、磁気軸受6Aが機能する。この場合、ポンプは排水しない状態であるため、空転運転である。
このときのポンプ井S1の水位は、図5(a)に示すように、先行待機ポンプ100の下端よりも低い状態である。なお、吐出しエルボ35の下流側には吐出管61が接続され、この吐出管61がポンプ井S1よりも上側に位置する吐出水槽S2と連通している。また、吐出管61には、吐出水槽S2側から吸込水槽Q1側への逆流を防止する逆止弁62が設けられている。また、運転開始前においては、先行待機ポンプ100の下流に配置された吐出水槽S2の吐出水位も低い状態である。
その後、雨水がポンプ井S1に流れ込み、ポンプ井S1の水位が上昇して、図4の時刻t2の排水運転開始水位に達すると、ポンプ井S1の水が吸い上げられ、空転運転から自動的に排水運転となる。このときの水位は、図5(b)に示すように、水位が羽根車1(図1参照)の位置に達したときである。このときの排水は、給気管36より空気を吸込み、水と空気が混合した気水混合の排水運転(気水混合運転)であり、水位上昇に伴い吸気管36からの吸気量が減少して、排水量が増加する。
また、図4の時刻t2において、ポンプ(先行待機ポンプ100)内の圧力が排水の圧力によって所定値以上になり空転運転から気水混合運転に移行することで、圧力スイッチ43がOFFからONに切り替わる。この圧力スイッチ43の切替動作に連動して、磁気軸受6Aの電磁石8が消磁することで磁気軸受6Aの機能が停止し、水中軸受5によってポンプ軸2が支持される。なお、排水運転中は、揚水による軸受潤滑水が確保できるので、磁気軸受6AをOFFにしても、水中軸受5でポンプ軸2を支持できる。
排水運転水位(図5(c)参照)以上で所定の排水量(仕様排水流量)を排水する運転となり、その後、降雨が無くなり、ポンプ井S1の水位が低下し、吸気開始水位(水位が下降時は排水運転水位以下)まで低下すると、吸気が始まり、空気と水とが混合した気水混合の排水運転(気水混合運転)に移行する。気水混合の排水運転は、水位が下がるのに伴い、吸気管36からの吸気量が増加して、ポンプ井S1の水位が、吸気管36の水平配管レベル付近まで低下したときに排水が停止する。
排水が停止した時刻t3において、水位が図5(d)に示す排水運転停止水位まで低下すると、ポンプ内の圧力が所定値以下になり、圧力スイッチ43がONからOFFに切り替わり、ポンプ内に揚水は存在するが、排水が停止状態で、羽根車1の下にエアーが存在するエアーロック運転状態に移行する。なお、排水運転停止水位とは、排水運転開始水位よりも低い水位で、吸気管36から空気を吸い込み、羽根車1の下がエアーポケットとなり、排水が停止するエアーロック状態の高さ位置である。この圧力スイッチ43の切替動作に連動して、磁気軸受6Aの電磁石8が励磁状態(ON)となり、磁気軸受6Aが機能する。そして、エアーロック状態から、ポンプ内の揚水がケーシングライナ32に設けられたドレン穴(不図示)より排出(ドレン)される状態を経て、空転運転(図5(e)参照)に移行する。このように、排水運転停止水位を排水運転開始水位よりも低くして、磁気軸受6Aを遅らせて作動させることで、磁気軸受6AのOFFからONへの作動時間を伸ばすことができる。また、排水運転停止水位、つまりエアーロック運転開始水位において磁気軸受6Aを励磁することで、水中軸受5の劣化を抑制して、軸受装置4Aとしての信頼性を向上できる。
空転運転に移行後、ポンプ井S1の水位が低となり、所定時間経過後の時刻t4において、制御装置50が起動SWをOFFにする。所定時間は、適宜設定されるものであり、例えば1時間に設定される。これにより、磁気軸受6Aの電磁石8が消磁状態となり、磁気軸受6Aの機能が停止する。なお、電磁石8を消磁するタイミングとしては、流域の降雨状況に応じて(雨が増水しないと判断したら)、運転管理者が起動SWをOFFにするようにしてもよい。
以上説明したように、第1実施形態の軸受装置4A(先行待機ポンプ用軸受)では、水中軸受5と磁気軸受6Aを備え、磁気軸受6Aが、ポンプ軸2側に永久磁石7と、この永久磁石7の周囲に対向して配置される電磁石8とによって構成することで、電磁石8のリード線11の取り出しを固定側のみにすることができるので、従来技術のようにポンプ軸2側からコイルのリード線を取り出す必要がなくなり、構造を単純化できる。
また、第1実施形態では、永久磁石7と対向する位置に電磁石8を配置し、電磁石8を励磁する(通電をONする)ことで、ポンプ軸2を電磁石8から離間した状態で支持する磁気軸受6Aとして機能させることができる。これにより、ポンプの空転運転中において、水中軸受5の接触面圧を低減することができ、軸受装置4A(先行待機ポンプ100)の信頼性を向上できる。
また、第1実施形態では、電磁石8の通電制御をON−OFF制御(ON制御とOFF制御のみ)にすることで、磁気軸受6Aの制御が簡素化され、機器(ポンプ)の信頼性を確保することができる。また、ポンプ軸2側を永久磁石7にしたことで、軸受装置4A(先行待機ポンプ100)の構造を簡単でき、しかも製造コストを安価にすることができる。
また、第1実施形態では、水中軸受5の下側(排水の流れ方向の上流側)に磁気軸受6Aを取り付けて軸受装置4Aを一体化することで、軸受装置4Aを小型化することができる。
また、第1実施形態では、軸受装置4A(先行待機ポンプ用軸受)を備えることで、構造が単純で信頼性を確保でき、空転運転を1時間以上の長時間行うことが可能な先行待機ポンプ100を実現できる。
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の先行待機ポンプに用いられる軸受装置を示す断面図、図7は、第2実施形態の軸受装置の電磁石を示す断面斜視図である。第2実施形態の軸受装置4Bは、第1実施形態の磁気軸受6Bの電磁石8に替えて電磁石80にした構成である。その他の構成は、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図6に示すように、電磁石80は、ホモポーラ型の電磁石であり、電磁石部80A,80Bと鉄芯部80Cとを組み合わせて構成されている。電磁石部80A,80Bは、それぞれ鉄芯90とコイル101とを組み合わせ、上下2段になるように構成されている。このように、電磁石部80A,80Bを分割して構成することで、鉄芯90にコイル101を取り付けやすくなり、電磁石80の製造が容易になる。
図7に示すように、鉄芯90は、リング形状を呈し、上部を除く内周壁面に凹み部91が形成されている。この凹み部91は、断面視矩形状に形成され、内周壁面に径方向中心側に向けて突出するボビン92,92が形成されている。このボビン92は、周方向に細長い略矩形状に形成され、周方向に間隔を空けて複数箇所(本実施形態では、4箇所)に形成されている。ボビンの個数は、4箇所に限定されるものではなく、4個以上の偶数箇所にすることで、ポンプ軸2の支持がアンバランスになるのを抑制できる。
また、鉄芯90の内周壁面90aと、ボビン92の内周壁面92aとは、ポンプ軸2(図6参照)の中心からの距離が同じになるように、同一の曲率で形成されている。また、鉄芯90には、ボビン92の近傍に、径方向に貫通する貫通孔93が形成されている。
コイル101は、ボビン92にリード線102を巻回することで構成されている。また、コイル101から引き出されるリード線102は、貫通孔93を介して鉄芯90の外部に引き出されている。
また、鉄芯90の上面外周縁には、第1実施形態と同様に、1段低くなった段差部90cが円環状に形成されている。また、鉄芯90の下面外周縁には、下方に凸形状の段差部90dが円環状に形成されている。この段差部90dは、その下段に位置する電磁石部80Bの段差部90cと嵌合するようになっている。また、電磁石部80Bの段差部90dは、その下段に位置する鉄芯部80Cの段差部90eに嵌合するようになっている。また、鉄芯部80Cの下面は、第1実施形態と同様に、水平な平坦面を有するように構成されている。これにより、電磁石部80A,80Bおよび鉄芯部80Cが径方向に位置ずれすることなく、上下方向に密着した状態で重ねることができる。
図6に戻って、このように構成された磁気軸受6Bでは、電磁石部80Aの各コイル101において図6の向きに電流を流すことで、上側に位置するコイル101aの上下にN極とS極が発生し、下側に位置するコイル101bの上下にS極とN極が発生し、永久磁石部7A,7Bと電磁石部80Aとの間において反発力が発生する。また、電磁石部80Bの各コイル101において電磁石部80Aと同じ向きに電流を流すことで、上側に位置するコイル101aの上下にN極とS極が発生し、下側に位置するコイル101bの上下にS極とN極が発生し、永久磁石部7C,7Dと電磁石部80Bおよび鉄芯部80Cとの間において反発力が発生する。このように、電磁石80に通電することによって、第1実施形態と同様に、ポンプ軸2を電磁石80から離間した状態で支持することができる。また、電磁石部80A,80Bのように電磁石8を2分割にして構成することで、鉄芯90にコイル101を取り付け易くなり、電磁石80の製造が容易になる。
このように、第2実施形態の軸受装置4Bでは、永久磁石7と対向する位置に電磁石80を配置し、電磁石80に通電することで、ポンプ軸2を電磁石80から離間した状態で支持する磁気軸受6Bとして機能させることができる。これにより、第1実施形態と同様に、ポンプの空転運転中において、水中軸受5の接触面圧を低減することができ、軸受装置4B(先行待機ポンプ100)の信頼性を確保できる。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、ポンプ軸2側に永久磁石7、この永久磁石7の周囲に電磁石80を配置した磁気軸受6Bを備えている。これにより、電磁石80のリード線102の取り出しを固定側のみにすることができ、ポンプ軸2側からコイルのリード線を取り出す構成が不要になるので、軸受装置4Bの構造を単純化できる。
また、第2実施形態では、電磁石80の通電制御をON−OFF制御にすることで、磁気軸受6Bとして機能させることができるので、制御を簡素化しつつ先行待機ポンプ100の信頼性を確保することができる。また、ポンプ軸2側を永久磁石7にしたことで、先行待機ポンプ100の製造コストを安価にすることができる。
また、第2実施形態では、水中軸受5の下側に磁気軸受6Bを組み込むことで、先行待機ポンプ100の小型化が図れる。
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る軸受装置を示す断面図、図9は、(a)はバー型永久磁石を示す斜視図、(b)はバー型永久磁石のポンプ軸への取付状態を示す横断面図、(c)は(b)のA−A線断面図である。
図8に示すように、第3実施形態の軸受装置4Cは、水中軸受5と、この水中軸受5の下部に、ヘテロポーラ型の電磁石8と、ポンプ軸2にバー型の永久磁石70と、を備えた磁気軸受6Cを取り付けて構成したものである。
ポンプ軸2には、永久磁石70が、複数箇所に設けられている。また、ポンプ軸2には、永久磁石70の周囲を覆うように円筒状の磁石固定カバー71が設けられている。
図9(a)に示すように、永久磁石70は、四角柱形状の永久磁石部70A,70B,70C,70Dが軸方向に4段重ねて構成されている。また、永久磁石部70A,70BのS極同士が対向し、永久磁石部70B,70CのN極同士が対向し、永久磁石部70C,70DのS極同士が対向するように重ねられている。なお、本実施形態では、4段の永久磁石部70A〜70Dを例に挙げて説明しているが、4段に限定されるものではなく、発生させる反発力の大きさに応じて適宜変更されるものであり、3段以下であってもよく、5段以上であってもよい。また、永久磁石部70A〜70Dは、四角柱状に限定されるものではなく、円柱状、多角注状など他の形状であってもよい。
図9(b)に示すように、ポンプ軸2の外周面には、永久磁石部70A〜70Dが嵌合して取り付けられる溝2bが形成されている。この溝2bは、周方向に間隔を空けて複数箇所に形成され、それぞれの溝2bに永久磁石部70A〜70Dが取り付けられている。なお、永久磁石部70A〜70Dの組数は、12組に限定されるものではなく、発生させる反発力の大きさに応じて適宜変更でき、11組以下であってもよく、13組以上であってもよい。また、永久磁石部70A〜70Dが、周方向に間隔を空けずに密に配置される構成であってもよい。
また、永久磁石部70A〜70Dが取り付けられたポンプ軸2の外周面には、円筒状の磁石固定カバー(キャンともいう)71が取り付けられる。この磁石固定カバー71は、非磁性材料で形成され、アルミニウム合金やオースティナイト系のステンレスなどである。これにより、ポンプ軸2から永久磁石部70A〜70Dが脱落するのを防止できる。
図9(c)に示すように、永久磁石部70A〜70Dは、ポンプ軸2と平行に配置されている。また、溝2bは、永久磁石部70A〜70Dの径方向の厚みよりも深く形成されており、磁石固定カバー71を取り付けたときに、磁石固定カバー71の外表面71aとポンプ軸2の外表面2cとが面一となるように構成されている。
このように、第3実施形態では、ポンプ軸2に取り付ける永久磁石70を、バー状(棒状)の永久磁石部70A〜70Dによって構成したものである。これによれば、第1実施形態や第2実施形態における永久磁石7と同様に、電磁石8のリード線11の取り出しを固定側のみにすることができるので、構造を簡素化できる。
また、第3実施形態では、永久磁石70と対向する位置にヘテロポーラ型の電磁石8を配置し、通電することで、ポンプ軸2を電磁石8から離間した状態で支持する磁気軸受6Cして機能させることができる。これにより、ポンプの空転運転中において、水中軸受5の接触面圧を低減することができ、軸受装置4C(先行待機ポンプ100)の信頼性を確保できる。
また、第3実施形態では、電磁石8の通電制御をON−OFF制御(ON制御とOFF制御のみ)にすることで、磁気軸受6Aの制御を簡素化しつつ軸受装置4Cの信頼性を確保することができる。また、ポンプ軸2側を永久磁石7にしたことで、軸受装置4C(先行待機ポンプ100)の構造を簡単でき、しかも製造コストを安価にすることができる。
また、第3実施形態では、水中軸受5の下側に磁気軸受6Cを取り付けることで、軸受装置4Cを小型化することができる。
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態の先行待機ポンプに用いられる軸受装置を示す断面図である。第4実施形態の軸受装置4Dは、水中軸受5の上側(排水の流れ方向の下流側)に磁気軸受6Aを取り付けたものである。
第4実施形態によれば、磁気軸受6Aを水中軸受5の上に配置することで磁気軸受6Aとポンプ軸2との間の隙間への異物侵入量を低減出来る。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。例えば、第2実施形態におけるホモポーラ型の電磁石80と第3実施形態におけるバー型の永久磁石70とを組み合わせた構成であってもよい。
1 羽根車
2 ポンプ軸
3 ケーシング
4A,4B,4C,4D 軸受装置(先行待機ポンプ用軸受)
5 水中軸受
6A,6B,6C 磁気軸受
7 永久磁石
7A,7B,7C,7D 永久磁石部
8 電磁石
8A,8B,8C,8D 電磁石部
8E 鉄芯部
9 鉄芯
10 コイル
11 リード線
31 吸込ケーシング
31a ベルマウス
32 ケーシングライナ
33 ボウルケーシング
33c ステー
34 揚水管
34a ステー
35 吐出しエルボ
36 吸気管
41 圧力センサ
42 配管
43 圧力スイッチ
50 制御装置
51 スリーブ
52 スリーブ固定部材
53 軸受本体
54 軸受保持部材
55 軸受ホルダ
70 永久磁石
71 磁石固定カバー
80 電磁石
80A,80B 電磁石部
80C 鉄芯部
90 鉄芯
100 先行待機ポンプ
101 コイル
102 リード線
200 原動機

Claims (8)

  1. 磁気軸受と水中軸受とを備えた先行待機ポンプ用軸受であって、
    前記磁気軸受は、ポンプ軸に設けられる永久磁石と、前記永久磁石に対向して配置されて当該永久磁石との間で反発力を発生させる電磁石と、を備えることを特徴とする先行待機ポンプ用軸受。
  2. 前記磁気軸受は、前記水中軸受に取り付けられ、
    前記磁気軸受は、排水の流れ方向の下流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の先行待機ポンプ用軸受。
  3. 前記電磁石は、前記水中軸受に取り付けられ、
    前記磁気軸受は、排水の流れ方向の上流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の先行待機ポンプ用軸受。
  4. 前記永久磁石は棒状のものであって、前記ポンプ軸と平行または略平行、かつ、前記ポンプ軸の外周面に複数配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の先行待機ポンプ用軸受。
  5. 前記電磁石を制御する制御装置を備え、
    前記制御装置は、前記電磁石の励磁と消磁を切替制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の先行待機ポンプ用軸受。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の先行待機ポンプ用軸受を備えたことを特徴とする先行待機ポンプ。
  7. ポンプ軸に設けられる永久磁石と前記永久磁石に対向して配置されて当該永久磁石との間で反発力を発生させる電磁石とを備えた磁気軸受、および水中軸受と、を備えた先行待機ポンプの運転方法であって、制御装置は、排水運転開始水位となった場合に前記電磁石を消磁し、前記排水運転開始水位よりも低い排水運転停止水位となった場合に前記電磁石を励磁することを特徴とする先行待機ポンプの運転方法。
  8. 前記排水運転停止水位は、エアーロック運転開始水位であることを特徴とする請求項7に記載の先行待機ポンプの運転方法。
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