JP2017101349A - クマリン類を低減したアバカシートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アバカ繊維に含まれる天然のクマリン類を低減させたアバカシートの製造方法を提供し、蛍光発光により機械読取、真偽判別するセキュリティ印刷物に適した用紙を提供する。【解決手段】天然のクマリン類を含むアバカ原材料を、蒸解処理、洗浄処理及び漂白処理し、漂白処理後のアバカ繊維懸濁液に、所定の量のオゾンを供給してアバカ繊維とオゾンを反応させるオゾン処理により、アバカ繊維に含まれるクマリン類を低減させた後、アバカ繊維懸濁液を乾燥処理することによってアバカシートを製造する。【選択図】 図1

Description

本発明は、パルプ中に含まれ蛍光発光するクマリン類が、蛍光発光インキで付与した印刷模様や図柄を阻害しないことを目的とした、クマリン類を低減させたパルプ及びその製造方法に関するものである。
銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書等のセキュリティ印刷物には、偽造防止や真偽判別を目的として、紫外線を照射すると発光する蛍光インキが印刷されているものがある。これに対して、蛍光インキが印刷される用紙には、蛍光発光を阻害しないため、後述する蛍光増白剤を含まないバージンパルプが用いられている。
また、セキュリティ印刷物に用いられる用紙を構成する材料としては、偽造防止や用紙を識別することを目的として、一般的な印刷用紙に用いられる木材パルプではなく、非木材パルプが用いられており、非木材パルプの中でも繊維の強度が高いアバカパルプが用いられている。
バージンパルプとは古紙などを再生したものではなく、はじめから木材を材料にして製造したパルプのことであり、バージンパルプの一般的な製造は、蒸解、洗浄、漂白といった工程を経る。蒸解とは、木材チップに薬品を加え、高温と高圧の条件で煮て、主にリグニンを溶かし繊維分を取り出すことである。洗浄とは、繊維中の異物をスクリーンと洗浄器を通して除去することである。漂白とは、蒸解後の繊維中に残存する着色物質を薬品によって除去又は無色化して、繊維を白くすることである。これらの工程を経て、用紙の原料となる繊維懸濁液が製造される。
また、繊維懸濁液に紫外線を照射して漂白することも行われており、紫外線照射を2回以上行うとともに、紫外線照射後に繊維懸濁液の脱水及び/又は洗浄を行うことで、漂白における紫外線照射時間を短縮させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
バージンパルプから用紙を製造する場合、蒸解、洗浄、漂白工程を経るのに対して、再生紙を製造する場合は、一度用紙として使用された古紙パルプが木材パルプとともに製紙原料として用いられている。古紙パルプを用いる際、脱墨工程及び漂白工程を経る中で、より見た目の白さを得るために、用紙の原料中に蛍光増白剤を混合することが、一般的に行われている。なお、蛍光増白剤としては、いくつかの有機化合物群に分類され、例えば、クマリン類、ピラゾリン類、ナフタルイミド類、ベンゾキサゾール類等がある。
このように、蛍光増白剤を用いることで、より白い用紙の製造が可能となる一方で、蛍光増白剤を含む用紙を再生処理するため、オゾンを用いて脱蛍光化する技術がある(例えば、特許文献2参照)。また、特許文献2において、紫外線照射を併用することで脱蛍光の効果が高くなることが記載されている。
特開2007−270383号公報 特公平7−880号公報
しかしながら、アバカパルプを原材料の一つとして、前述のセキュリティ印刷物に用いる用紙を製造した場合、アバカ繊維中に含まれる天然のクマリン類が蛍光発光し、蛍光インキで印刷された模様や図柄の視認性を阻害するという問題があった。
特許文献1の技術は、紫外線照射による漂白時間の短縮を目的として、繊維懸濁液に紫外線照射を行う技術であって、特許文献1に記載の方法で紫外線を照射しても、アバカ繊維に含まれる天然のクマリン類の脱蛍光処理を行うことはできなかった。
また、特許文献2の技術は、古紙パルプに含まれる蛍光染料の脱蛍光を目的とし、人工合成の分解しやすい蛍光剤を分解する技術であって、特許文献2に記載の方法でオゾン処理しても、アバカ繊維に含まれる天然のクマリン類を脱蛍光化することはできなかった。
本発明は、前述した課題を解決することを目的とするものであり、アバカ繊維に含まれる天然のクマリン類を低減させる製造方法を提供し、蛍光発光により機械読取、真偽判別するセキュリティ印刷物に適した用紙を製造可能とすることを目的とする。
本発明のアバカ繊維懸濁液の製造方法は、天然のクマリン類を含むアバカ原材料を、蒸解処理、洗浄処理及び漂白処理し、漂白処理後のアバカ繊維懸濁液に、所定の量のオゾンを供給してアバカ繊維とオゾンを反応させるオゾン処理により、アバカ繊維に含まれるクマリン類を低減することを特徴とする。
また、本発明のアバカ繊維は、上記製造方法によって得られたアバカ繊維懸濁液を脱水して、乾燥することで作製されたシート(以下「アバカシート」という)において、アバカ繊維に含まれるクマリン類の割合が、繊維100mg当たり、0.03mg以下であることを特徴とする。
また、本発明における別のアバカシートの製造方法は、天然のクマリン類を含むアバカ原材料を、蒸解処理、洗浄処理及び漂白処理し、漂白処理後のアバカ繊維懸濁液を乾燥処理してアバカシートを作製し、アバカシートに、所定の量の紫外線照射を行う紫外線処理により、アバカシートに含まれるクマリン類を低減することを特徴とする。
本発明のクマリン類を低減したアバカ繊維懸濁液の製造方法及びクマリン類を低減したアバカシートの製造方法により、アバカ繊維に含まれる天然のクマリン類による蛍光発光が低減した紙基材の提供が可能となり、偽造防止としての印刷模様や図柄を蛍光発光インキによって印刷を行い、その印刷部に紫外線照射した際、印刷部の蛍光発光を阻害することがなくなる。
本発明におけるオゾン処理を用いたアバカ繊維懸濁液及びアバカシートの製造工程を示す図である。 オゾン処理装置の構成を示す図である。 オゾン処理中のオゾン濃度と排オゾンの濃度を示す図である。 オゾン処理前後における紫外線照射時の蛍光画像の比較を示す図である。 オゾン処理前の誘導体化GCMSによる蛍光物質の分析結果を示す図である。 オゾン処理後の誘導体化GCMSによる蛍光物質の分析結果を示す図である。 本発明の紫外線照射によりクマリン類を減少させたアバカシートの製造工程を示す図である。 紫外線処理前後における紫外線照射時の蛍光画像の比較を示す図である。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、アバカシートの製造工程において、オゾン処理する方法である。そこで、第1の実施の形態の製造方法の詳細について、図1を用いて説明する。
STEP1では、天然のクマリンを含むアバカ繊維を原材料として、アバカ繊維の蒸解を行う。蒸解は、紙の原料の処理方法として当業者には、既に公知の技術である。本発明では、この工程を経ることで、後述のSTEP4で行うオゾン処理による脱蛍光の効果が高まる。これは、蒸解によってオゾンと反応性が高いリグニンが除去されるためである。
次に、STEP2では、STEP1の蒸解処理後、取り出した繊維の洗浄を行う。洗浄は、紙の原料の処理方法として当業者には、既に公知の技術である。本発明では、STEP2の洗浄処理によって、異物を除去することで、STEP4で行うオゾン処理の効果を高めている。
次に、STEP3では、STEP2の洗浄処理後、取り出した繊維の漂白を行う。なお、漂白についても、紙の原料の処理方法として当業者には、既に公知の技術である。本発明では、STEP1及びSTEP2の処理に加えて、STEP3の漂白処理を行うことで、STEP4で行うオゾン処理による脱蛍光の効果を高めることができる。
STEP4では、STEP3の処理後、取り出した繊維のオゾン処理を行う。オゾンは強力な酸化剤であるため、様々な物質を分解する性質がある。本発明では、アバカ繊維に含まれ、蛍光発光を示すクマリン類を対象にオゾン処理を行う。
STEP5では、STEP4の処理後、アバカ繊維懸濁液を脱水して、乾燥することでシート化する。なお、本発明において、クマリン類とは、後述のオゾン処理によって、分解される物質であり、具体的には、クマリン、クマリン酸及びクマリン系化合物のことである。具体的なオゾン処理の方法について、図2に示すオゾン処理装置の構成図を用いて説明する。
図2に示すようにオゾン処理装置(1)は、オゾン発生器(2)、オゾン濃度計(3)、反応塔(4)、排オゾン濃度計(5)、繊維投入部(6)から構成される。まず、繊維投入部(6)から、処理対象物質であるアバカ繊維が水に分散した懸濁液(以下「アバカ繊維懸濁液」という。)を反応塔(4)に投入し、オゾン発生器(2)からオゾンを発生させ、反応塔(4)へオゾン(7)を導入する。反応塔(4)の前後には、濃度計が設置されており、反応塔(4)の入口のオゾン濃度をオゾン濃度計(3)により、出口の排オゾン濃度を排オゾン濃度計(5)によりモニタリングできるようになっている。
アバカ繊維懸濁液とオゾンとの反応において、反応塔(4)の入口のオゾン濃度及び出口の排オゾン濃度についてモニタリングした結果を図3に、そのオゾン処理条件を表1に示す。
Figure 2017101349




図3に示すように、入口のオゾン濃度は、反応開始から120g/m程度でほぼ一定に推移しているのに対し、出口の排オゾン濃度は、それを下回る値となっている。これは、反応塔(4)に供給されたオゾン(7)が、自己分解及び繊維に含まれるクマリン類等との反応によって、消費されたためである。また、オゾン(7)供給の開始後、徐々に排オゾン濃度が上昇しており、これは、オゾン(7)がアバカ繊維に含まれるクマリン類等と反応していくにつれ、オゾン(7)との反応物質が減り、排オゾン濃度が上昇したものと考えられる。また、図3に示すように、オゾン(7)供給開始から25分経過後は、排オゾン濃度の値がほぼ一定になっているが、これは、クマリン類等を分解する反応が完了したものと考えられる。なお、図3に示すオゾン処理の反応の結果から、自己分解したオゾン(7)を除いた、アバカ繊維に供給されたオゾン(7)の量は、アバカ繊維1g当たり、0.1gのオゾン(7)が供給された結果であった。
オゾン処理の効果を調べるために、オゾン処理後のアバカ繊維懸濁液を脱水して、シート化し、紫外線照射時の画像を取得した。画像の取得は、紫外線蛍光イメージスキャナを用い、1200dpiの解像度とした。比較のため、本発明のSTEP3の後に取り出したアバカ繊維懸濁液をオゾン処理することなく、脱水して、シート化したものの画像を取得した。オゾン処理することなく作製したシートと、オゾン処理して作製したシートから取得したそれぞれの画像を図4に示す。
図4(a)は、オゾン処理することなく作製されたシートの画像であり、図4(b)は、本発明のオゾン処理した後、作製されたシートの画像である。図4(b)は、図4(a)と比べて画像全体が顕著に暗くなっていることから、オゾン処理をすることで蛍光発光するクマリン類が減少したと考えられる。
同様に、オゾン処理の効果を調べるために、オゾン処理前後の蛍光物質をガスクロマトグラフ質量分析装置(GCMS)を用いて分析を行った。対象の蛍光物質は、通常の溶媒抽出によるGCMSでは検出が困難な難揮発性物質であるため、GCMSで検出可能な構造に変化(トリメチルシリル(TMS)誘導体化)させ、分析を行った。図5にオゾン処理前の結果、図6にオゾン処理後におけるトータルイオンクロマトグラムを示す。横軸は試料を注入してから各物質が検出されるまでの時間を示す保持時間であり、保持時間から物質の同定が可能となる。縦軸は検出イオンの総カウント数であり、ピークの高さ又は面積から物質の定量を行うことが可能となる。
図5と図6を比較すると、オゾン処理後において、試料に含まれるクマリン系塩素化合物は検出されず、クマリン、クマリン酸、クマリン系非塩素系化合物においても、著しく減少していることが分かった。このように、ガスクロマトグラフィー質量分析からも、オゾン処理によってクマリン類が分解されることが分かった。なお、紫外線照射により蛍光発光した場合に、クマリンは青色、クマリン酸は青緑色、クマリン系非塩素化合物とクマリン系塩素化合物は黄緑色で発光することが知られている。図4(a)に示すオゾン処理することなく作製されたシートは、緑色が主体的に視認されたのに対して、図4(b)に示すオゾン処理した後、作製されたシートは、青色が主体的に視認されたことから、緑色で発光する物質が効果的に除去されたことが分かった。また、青色で発光する物質についても、図6に示すように、減少しており、図4(b)に示すシートの蛍光発光は大きく低減された結果であった。
また、オゾン処理前のアバカ繊維懸濁液をシート化し、図5に示すトータルイオンクロマトグラムのピーク面積から求められたアバカ繊維に含まれるクマリン類の割合は、繊維100mg当たり、0.1mgであるのに対し、本発明のオゾン処理したアバカ繊維懸濁液をシート化し、図6に示すトータルイオンクロマトグラムのピーク面積から求められたアバカ繊維に含まれるクマリン類の割合は、繊維100mg当たり、0.03mgであった。
以上の方法によって、得られたアバカ繊維懸濁液は、そのままシート化してセキュリティ印刷物用の基材として用いてもよいし、他のパルプ繊維、例えば、木材繊維、非木材繊維等を処理したものと混合してシート化し、セキュリティ印刷物用の基材として用いてもよい。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、アバカシートの製造工程において、シート化したものを紫外線処理する方法である。そこで、第2の実施の形態の製造方法の詳細について図7を用いて説明する。
図7に示す第2の実施の形態の製造方法において、STEP1は、第1の実施の形態のSTEP1と同様の蒸解である。また、図7に示す第2の実施の形態の製造方法において、STEP2は、第1の実施の形態のSTEP2と同様の洗浄である。また、図7に示す第2の実施の形態の製造方法において、STEP3は、第1の実施の形態のSTEP3と同様の漂白である。第2の実施の形態においても、STEP1乃至STEP3の工程を経ることで、後述のSTEP5で行う紫外線処理による脱蛍光の効果が高まる。
STEP4では、STEP3の処理後、アバカ繊維懸濁液を脱水して、乾燥することでシート化する。
STEP5では、STEP4でシート化されたアバカシートに、紫外線処理を行う。紫外線照射によるクマリン類の分解効果を確認するために、紫外線照射装置(Super Xenon Fade Meter SX−75 スガ試験機製)を用いて、表2に示す条件で、紫外線を照射した。その際、紫外線の照射時間に伴うアバカシートの蛍光発光の状態を確認するため、第1の実施の形態と同様にして、画像を取得した。取得した画像を図8に示す。
Figure 2017101349


図8(a)は、紫外線処理を施していないアバカシートの蛍光発光状態を示す画像であり、図8(b)は、STEP5の紫外線照射1時間後のアバカシートの蛍光発光状態を示す画像である。また、図8(c)は、STEP5の紫外線照射2時間後のアバカシートの蛍光発光状態を示す画像であり、図8(d)は、STEP5の紫外線照射4時間後のアバカシートの蛍光発光状態を示す画像である。
図8(a)に示す画像から、紫外線処理を施していないアバカシートは、全体的に明るく、アバカ繊維に含まれるクマリン類が蛍光発光していることが分かる。なお、図8(a)において、破線で囲む領域は、特に明るく発光している部分を示したものである。これに対して、図8(b)に示す画像は、全体的に暗くなり、破線で囲む明るく発光する領域は小さくなったものの、十分な効果が得られないことが分かる。また、図8(c)に示す画像から、蛍光発光が大きく低減していることが分かる。また、図8(d)に示す画像から、紫外線の照射時間が2時間よりも長くなっても蛍光発光状態の変化は少ないことが分かる。
以上の結果から、本発明の第2の実施の形態において、クマリン類を分解するために必要な紫外線の照射量は、表2の条件で2時間の照射が必要であり、この条件をシートの単位面積当たりの照射量として換算すると、1.3MJ/mであった。
第2の実施の形態は、アバカ繊維懸濁液をシート化したアバカシートに紫外線を照射する例について説明したが、他の木材繊維や非木材繊維とアバカ繊維を混合した懸濁液をシート化したものに、STEP5の紫外線処理を行うことでも、クマリン類を低減する効果が得られる。
1 オゾン処理装置
2 オゾン発生器
3 オゾン濃度計
4 反応塔
5 排オゾン濃度計
6 繊維投入部
7 オゾン
9 TMS化剤
10 クマリン
11 クマリン酸
12 クマリン系化合物(非塩素系)
13 クマリン系化合物(塩素系)

Claims (3)

  1. 天然のクマリン類を含むアバカ繊維を、蒸解処理、洗浄処理及び漂白処理し、前記漂白処理後のアバカ繊維懸濁液に、所定の量のオゾンを供給して前記アバカ繊維と前記オゾンを反応させるオゾン処理により、前記アバカ繊維に含まれる前記クマリン類を低減させ、前記アバカ繊維懸濁液を脱水及び乾燥することによって得られるアバカシートの製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法によって得られたアバカシートにおいて、前記アバカ繊維に含まれるクマリン類の割合が、繊維100mg当たり、0.03mg以下であることを特徴とするアバカシート。
  3. 天然のクマリン類を含むアバカ繊維を、蒸解処理、洗浄処理及び漂白処理し、前記漂白処理後のアバカ繊維懸濁液を乾燥処理してアバカシートを作製し、前記アバカシートに、所定の量の紫外線照射を行う紫外線処理により、前記アバカシートに含まれるクマリン類を低減することを特徴とするアバカシートの製造方法。
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JP2018196552A (ja) * 2017-05-24 2018-12-13 株式会社三共 遊技機

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