JP2017095650A - ポリカーボネート微粒子の製造方法及びポリカーボネート樹脂粉末 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼結積層造形法に適した特性を有するポリカーボネート微粒子の製造方法及びポリカーボネート樹脂粉末を提供する。【解決手段】本発明に係る製造方法では、粘度平均分子量が10,000〜100,000のポリカーボネート樹脂(A)と、ポリカーボネート樹脂とは異なるポリマー(B)とを、ポリカーボネート樹脂の良溶媒である溶媒(C)に溶解させた溶解液に、ポリカーボネートの貧溶媒である溶媒(D)を接触させることによって、ポリカーボネートの微粒子を析出させる。ポリマー(B)は、i)溶媒(C)及び溶媒(D)のいずれにも可溶であって、かつ、ii)溶媒(C)、溶媒(D)、溶媒(C)及び(D)の混合溶媒のいずれかに0.34〜16.7g/lの濃度で溶解させた溶液の粘度が3mPa・S以上となる化合物である。ポリマー(B)は、溶解液中の濃度が0.34〜16.7g/lとなるように添加する。【選択図】図1
Description
本発明は、ポリカーボネート微粒子の製造方法及び当該製造方法によって得られるポリカーボネート樹脂粉末に関する。
近年、工業製品の試作品や模型を迅速に作製するために3Dプリンタが用いられる場合がある。3Dプリンタは、樹脂や金属材料を1層ずつ固めながら積み上げる積層造形と呼ばれる工法で造形を行う装置である。積層造形には、レーザで液体樹脂を硬化させながら積層を行う光造形法や、プリンタヘッドから吐出した樹脂に紫外線ランプ等で紫外線を照射して積層を行うインクジェット光造形法、プリンタヘッドからバインダーを吐出して石膏粉末を固着させながら積層を行う粉末固着造形法、細いノズルから溶融した樹脂を吐出して積層する熱溶融積層造形法、樹脂等の粉末をレーザで加熱して焼結しながら積層を行う焼結積層造形法等の工法がある。これらの工法の中でも、焼結積層造形法は、他の工法で作製した場合と比べて、作製した造形物の強度及び耐久性を高くできるという特徴がある。
焼結積層造形法では、レーザ照射によって1層分の樹脂を硬化させるのに先立って、樹脂粉末の薄層を形成する工程が必要となる。この薄層形成工程では、樹脂微粒子の充填密度が均一な薄膜を形成できるように、材料となる樹脂粉末の流動性及び充填率が高いことが求められる。
特許文献1には、樹脂粉末の流動性及び充填率を高めて焼結積層造形法に適した熱可塑性樹脂の微小球体及びその製造方法が記載されている。具体的に、特許文献1では、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を、この組成物と相溶性のない分散媒と共に軟化点以上に加熱混練して微粒子に分散させ、得られた微粒子を軟化点以下まで冷却し、冷却後の微粒子を分散媒から分離し、分離した微粒子の表面を凝集防止粒子で被覆することによって熱可塑性樹脂の微小球体を作製している。
焼結積層造形法で用いられる熱可塑性樹脂としては、現時点ではナイロン等のポリアミド樹脂が主流であるが、ポリアミド樹脂以外の他の熱可塑性樹脂の使用も模索されている。熱可塑性樹脂の中でも、ポリカーボネートは、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性、難燃性等の物理特性に優れ、透明性も有するため、エンジニアリングプラスチックとして多くの工業製品に用いられている。ポリカーボネートを焼結積層造形法で使用できれば、現在主流のポリアミド樹脂を用いる場合と比べて、造形物の強度及び耐久性を更に向上することができ、透明な造形物も作製できるというメリットがある。
本発明は、焼結積層造形法に適した特性を有するポリカーボネート微粒子の製造方法及びポリカーボネート樹脂粉末を提供することを目的とする。
本発明に係るポリカーボネート樹脂粉末の製造方法は、粘度平均分子量が10,000〜100,000のポリカーボネート樹脂(A)と、ポリカーボネート樹脂とは異なるポリマー(B)とを、ポリカーボネート樹脂の良溶媒である溶媒(C)に溶解させた溶解液に、ポリカーボネートの貧溶媒である溶媒(D)を接触させることによって、ポリカーボネートの微粒子を析出させるものである。ポリマー(B)は、i)溶媒(C)及び溶媒(D)のいずれにも可溶であって、かつ、ii)溶媒(C)、溶媒(D)、溶媒(C)及び(D)の混合溶媒のいずれかに0.34〜16.7g/lの濃度で溶解させた溶液の粘度が3mPa・S以上となる化合物である。ポリマー(B)は、溶解液中に0.34〜16.7g/lの濃度となるように添加する。
また、本発明に係るポリカーボネート樹脂粉末は、数平均粒子径が5〜180μmであり、かつ、真球度が0.8以上である球状のポリカーボネート微粒子からなり、220〜245℃の融点を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、焼結積層造形法に適した特性を有するポリカーボネート微粒子の製造方法及びポリカーボネート樹脂粉末を提供できる。
以下、実施形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
本願の発明者は、ポリカーボネート樹脂の溶解液に特定の粘度特性を有する化合物を添加して粘度調整を行った後に貧溶媒を接触させることによって、析出するポリカーボネート微粒子の粒子径及び真球度を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
より具体的に、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂粉末の製造方法では、ポリカーボネート樹脂(A)とポリマー(B)とを、ポリカーボネート樹脂(A)の良溶媒である溶媒(C)に溶解させた溶解液に、ポリカーボネート樹脂(A)の貧溶媒である溶媒(D)を接触させることによって、ポリカーボネート樹脂を析出させる。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
ポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、または、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、または、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)としては、粘度平均分子量が10,000〜100,000であるものを使用できる。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が10,000未満の場合、ポリカーボネート樹脂粉末を用いて作製した造形物の衝撃強度が不足するため好ましくない。一方、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が100,000を超えると、ポリカーボネート樹脂粉末の製造時に溶媒への溶解性が低下するため好ましくない。上記の範囲内でも、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が10,000〜40,000であることが好ましく、15,000〜35,000であることがより好ましい。尚、このようなポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
<ポリマー(B)>
ポリマー(B)は、ポリカーボネート樹脂(A)の溶解液の粘度を調整するための増粘剤(粘度調整剤)である。ポリカーボネート樹脂(A)の溶解液にポリマー(B)を配合して溶解液の粘度を調整することによって、数平均粒子径が5〜180μmであり、かつ、真球度が0.8以上である球状のポリカーボネート微粒子を得ることができる。
ポリマー(B)は、ポリカーボネート樹脂(A)の溶解液の粘度を調整するための増粘剤(粘度調整剤)である。ポリカーボネート樹脂(A)の溶解液にポリマー(B)を配合して溶解液の粘度を調整することによって、数平均粒子径が5〜180μmであり、かつ、真球度が0.8以上である球状のポリカーボネート微粒子を得ることができる。
ポリマー(B)としては、i)ポリカーボネート樹脂(A)の良溶媒である溶媒(C)と貧溶媒である溶媒(D)の両方に可溶であって、かつ、ii)溶媒(C)、溶媒(D)、溶媒(C)及び(D)の混合溶媒のいずれかに0.34〜16.7g/lの濃度で溶解させた溶液の粘度が3mPa・S以上となる化合物を使用する。ここで、ポリマー(B)を溶媒(C)、溶媒(D)、溶媒(C)及び(D)の混合溶媒のいずれかに溶解させた溶液の粘度として特定しているのは、溶媒(C)及び(D)を単独で使用しても混合して使用しても、粘度自体には殆ど影響しないためである。尚、この粘度の値は、BII型粘度計による測定値である。上記の条件i)及びii)を満たす化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)が挙げられる。
<溶媒(C)>
溶媒(C)には、ポリカーボネート樹脂(A)に対する溶解度が高い良溶媒を用いる。溶媒(C)の具体例としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、アセトニトリル、トリエチルアミンが挙げられる。
溶媒(C)には、ポリカーボネート樹脂(A)に対する溶解度が高い良溶媒を用いる。溶媒(C)の具体例としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、アセトニトリル、トリエチルアミンが挙げられる。
溶媒(D)には、ポリカーボネート樹脂(B)に対する溶解度が低い貧溶媒を用いる。溶媒(D)の具体例としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)が挙げられる。
<製造方法の詳細>
以下、実施形態に係るポリカーボネート樹脂粉末の製造方法の詳細を説明する。
以下、実施形態に係るポリカーボネート樹脂粉末の製造方法の詳細を説明する。
まず、大気圧下で、ポリカーボネート樹脂(A)とポリマー(B)と溶媒(C)とを混合し、スターラー等で攪拌して溶解させる。溶解に要する時間は、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量にもよるが、1〜2時間程度である。ポリカーボネート樹脂(A)及びポリマー(B)を溶解させる際には、溶解性を向上させるために、溶媒(C)を加熱しても良い。ただし、加熱する場合の加熱温度は、溶媒(C)の蒸発を抑制するため、溶媒(C)の沸点より低い温度とする。ポリカーボネート樹脂(A)及びポリマー(B)の溶解液は、巨視的にも微視的にも相分離せず均一な状態となる。
ポリカーボネート樹脂(A)は、溶解液中のポリカーボネート樹脂(A)の濃度が20〜200g/lとなるように添加する。この範囲の中でも、溶解液中のポリカーボネート樹脂(A)の濃度は、20〜125g/lとすることが好ましい。
また、溶解液中のポリマー(B)の濃度は、0.34〜16.7g/lとする。ポリマー(B)の濃度は、ポリマー(B)の粘度特性と共に溶解液の粘度に影響するパラメータである。溶解液中のポリマー(B)の濃度が0.34g/l未満になると、球状のポリカーボネート微粒子を得ることができず、数平均粒子径も180μmより大きくなるため好ましくない。また、溶解液中のポリマー(B)の濃度が16.7g/lを超えると、ポリカーボネート微粒子の形状を球状にすることはできるが、融解時の透明性が損なわれるため好ましくない。上記の範囲内でも、溶解液中のポリマー(B)の濃度を2.0〜12.0g/lとすることが好ましく、5.0〜8.0g/lとすることがより好ましい。
次に、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリマー(B)の溶解液を攪拌しながら溶媒(D)を滴下する。溶解液をスターラーで攪拌する場合は、回転速度を100〜800rpmとすることが好ましい。溶媒(D)の滴下量は、溶媒(C)とほぼ等量(等体積)とし、1〜15時間かけて滴下する。溶媒(D)の滴下に要する時間が短いほど(すなわち、滴下速度が速いほど)粒子径分布が広くなり、溶媒(D)の滴下に要する時間が長いほど(すなわち、滴下速度が遅いほど)粒子径分布が狭くなる。溶媒(D)の滴下に伴って、ポリカーボネート微粒子が析出し、混合液は白濁する。
溶媒(D)の滴下完了後、減圧濾過により溶媒を除去し、濾集したポリカーボネート微粒子を水で洗浄し、乾燥させることによって、数平均粒子径が5〜180μm、かつ、真球度が0.8以上の球状のポリカーボネート微粒子からなるポリカーボネート樹脂粉末が得られる。ポリカーボネート微粒子の数平均粒子径及び真球度をこの範囲とすることで、ポリカーボネート樹脂粉末の流動性及び充填率を高くすることができる。
一般に、ポリカーボネート樹脂は、非晶性樹脂に分類され、明確な融点を持たないが、上記の製造方法によって得られたポリカーボネート粉末を示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)により分析すると、明確な融解ピークが現れ、220〜240℃の融点を持つ。焼結積層造形法では、樹脂粉末に直接レーザを照射して溶融させるため、ポリアミド樹脂のような融点を持つ結晶性樹脂を用いた方が樹脂の溶融条件を制御しやすい。通常のポリカーボネート樹脂は明確な融点を持たないが、上記のポリカーボネート樹脂粉末の製造方法によれば、通常は明確な融点を持たない非晶性のポリカーボネート樹脂を用いて、明確な融点を持つ結晶性の性質を示すポリカーボネート樹脂粉末を得ることができる。
このように、本実施形態に係る製造方法によれば、流動性、充填率及び融点のいずれにおいても焼結積層造形法に適したポリカーボネート樹脂粉末を得ることができる。また、ポリカーボネート樹脂自体が持つ優れた物性により、焼結積層造形法で作製した造形物の耐衝撃性や機械的強度等を、既存のポリアミド樹脂粉末を用いる場合よりも高くすることができる。
また、本実施形態に係る製造方法で得られるポリカーボネート樹脂粉末は、見た目上、白色であるが、溶融させると透明になり、成形後の造形物も透明である。既存のポリアミド樹脂粉末は透明性に劣っていたが、本実施形態に係る製造方法で得られるポリカーボネート樹脂粉末を用いれば、焼結積層造形法により透明な造形物を作製することが可能となる。
本実施形態に係る製造方法で得られるポリカーボネート樹脂粉末は、ラピッドプロトタイピング用材料、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性改良材、接着剤、塗料、インク中の分散液、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、塗料用添加剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面硬度向上剤、靭性向上材、ポリマーアロイ用添加剤等の各種改質剤、液晶表示装置用スペーサー、クロマトグラフィー用充填材・担体、化粧品ファンデーション用基材・添加剤、マイクロカプセル用助剤、ドラッグデリバリーシステム・診断薬などの医療用材料、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子、粉体塗料用材料、電子写真現像用トナー等に利用できる。
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
(実施例1)
ポリカーボネート樹脂2.0g(住化スタイロンポリカーボネート株式会社製「カリバー200−20」、粘度平均分子量18900)と、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g(日本曹達株式会社製「HPC−SL」)とを三角フラスコ内に計量し、45℃のTHF60mlを加え、温度を45℃に保ちながらスターラーで攪拌して溶解させた。この溶解液をスターラーで攪拌しながら、水60mlを5時間かけて滴下したところ、水の滴下量が約10mlに達した辺りで溶液の白濁が開始した。
ポリカーボネート樹脂2.0g(住化スタイロンポリカーボネート株式会社製「カリバー200−20」、粘度平均分子量18900)と、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g(日本曹達株式会社製「HPC−SL」)とを三角フラスコ内に計量し、45℃のTHF60mlを加え、温度を45℃に保ちながらスターラーで攪拌して溶解させた。この溶解液をスターラーで攪拌しながら、水60mlを5時間かけて滴下したところ、水の滴下量が約10mlに達した辺りで溶液の白濁が開始した。
水の滴下完了後、得られた白濁液を減圧濾過して固体と溶媒を分離し、得られた固体を水で洗浄した後、乾燥させて、実施例1に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
(実施例2)
ヒドロキシプロピルセルロースとして、日本曹達株式会社製「HPC−L」を用いたことを除き、実施例1と同様にして実施例2に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
ヒドロキシプロピルセルロースとして、日本曹達株式会社製「HPC−L」を用いたことを除き、実施例1と同様にして実施例2に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
(比較例1)
ヒドロキシプロピルセルロースの添加量を0.01gとしたことを除き、実施例1と同様にして比較例1に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
ヒドロキシプロピルセルロースの添加量を0.01gとしたことを除き、実施例1と同様にして比較例1に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
(比較例2)
ヒドロキシプロピルセルロースの添加量を2.0gとしたことを除き、実施例1と同様にして比較例2に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
ヒドロキシプロピルセルロースの添加量を2.0gとしたことを除き、実施例1と同様にして比較例2に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
(比較例3)
ヒドロキシプロピルセルロースに代えて、ポリエチレングリコール0.4g(WAKO株式会社製「ポリエチレングリコール(PEG)20000」)を添加したことを除き、実施例1と同様にして比較例3に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
ヒドロキシプロピルセルロースに代えて、ポリエチレングリコール0.4g(WAKO株式会社製「ポリエチレングリコール(PEG)20000」)を添加したことを除き、実施例1と同様にして比較例3に係るポリカーボネート樹脂粉末を得た。
(比較例4)
実施例1で用いたポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート株式会社製「カリバー200−20」、粘度平均分子量18900)をそのまま使用した。
実施例1で用いたポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート株式会社製「カリバー200−20」、粘度平均分子量18900)をそのまま使用した。
表1に、実施例及び比較例で用いたポリマー(HPC−SL、HPC−L、PEG20000、PEO−1)0.2gを、水5ml及びTHF30mlの混合溶媒に溶解させた溶液の粘度を示す。尚、粘度は、BII型粘度計(東機産業株式会社製「BLII」、ローター:BLアダプタ)を用いて、回転速度:60rpm、温度25℃の条件で測定した値である。
実施例及び比較例で得られたポリカーボネート樹脂粉末の微粒子の形状、粒子径、透明性、真球度、融点を以下の方法で測定または評価した。
(微粒子の形状)
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX−1000」)を用いて、ポリカーボネート樹脂粉末を観察し、目視にて球状であるか非球状であるかを判定した。
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX−1000」)を用いて、ポリカーボネート樹脂粉末を観察し、目視にて球状であるか非球状であるかを判定した。
(粒子径)
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX−1000」)を用いて、ランダムに選択した50個のポリカーボネート微粒子の粒度分布から求めた数平均粒子径をポリカーボネート樹脂粉末の粒子径とした。
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX−1000」)を用いて、ランダムに選択した50個のポリカーボネート微粒子の粒度分布から求めた数平均粒子径をポリカーボネート樹脂粉末の粒子径とした。
(透明性)
ホットプレート(アズワン株式会社製)を用いて、ポリカーボネート樹脂粉末を290℃で溶融させ、溶融した樹脂の透明性を目視で観察し、「○:透明、×:濁りがある」の2段階で評価した。
ホットプレート(アズワン株式会社製)を用いて、ポリカーボネート樹脂粉末を290℃で溶融させ、溶融した樹脂の透明性を目視で観察し、「○:透明、×:濁りがある」の2段階で評価した。
(真球度)
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX−1000」)を用いて、ランダムに選択した30個のポリカーボネート微粒子について長径と短径を測定し、各粒子の短径/長径比を求め、求めた短径/長径比の平均値を真球度の評価値とした。
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX−1000」)を用いて、ランダムに選択した30個のポリカーボネート微粒子について長径と短径を測定し、各粒子の短径/長径比を求め、求めた短径/長径比の平均値を真球度の評価値とした。
(融点)
示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル株式会社製「EXSTAR6000」)を用いて、ポリカーボネート樹脂粉末を室温から300℃まで、20℃/minの速度で昇温しながら加熱し、現れた融解ピークから融点を読み取った。
示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル株式会社製「EXSTAR6000」)を用いて、ポリカーボネート樹脂粉末を室温から300℃まで、20℃/minの速度で昇温しながら加熱し、現れた融解ピークから融点を読み取った。
表2に、実施例及び比較例に係るポリカーボネート樹脂粉末の製造条件及び評価結果を示す。
実施例1及び2では、ポリカーボネート樹脂の良溶媒であるTHFと貧溶媒である水のいずれにも可溶で、かつ、THF及び水の混合溶媒に6.7g/lの濃度で溶解させた溶液の粘度が3mPa・s以上であるポリマー(HPC−SL、HPC−L)を使用した(表1参照)。実施例1及び2では、表2に示すように、真球度が極めて高い球状のポリカーボネート微粒子からなるポリカーボネート樹脂粉末が得られた。また、比較例4のポリカーボネート樹脂(つまり、実施例1及び2と同じ微粒子化処理をしていないポリカーボネート樹脂)は、融点を持っていなかったが、実施例1及び2に係るポリカーボネート樹脂粉末は、特定の融点を示した。
これに対して、比較例1では、実施例1と同じポリマー(HPC−SL)を用いたが、溶解液中のHPC−SLの濃度が0.34g/l未満であるために、ポリカーボネート微粒子が球状とならず、粒子径も大きくなった。また、比較例2では、溶解液中のHPC−SLの濃度が16.7g/lを超えたことによって、ポリカーボネート樹脂粉末の透明性が低下した。
比較例3では、表1及び2に示すように、THF及び水の混合溶媒に6.7g/lの濃度で溶解させた溶液の粘度が3mPa・s未満であるポリマー(PEG20000)を使用したため(表1参照)、球状のポリカーボネート微粒子を得ることができなかった。
図1は、実施例1、2、比較例1及び3のポリカーボネート樹脂粉末の拡大写真である。
実施例1及び2に係るポリカーボネート樹脂粉末の微粒子が真球状であるのに対して、比較例1及び3に係るポリカーボネート樹脂粉末の微粒子は、明らかに非球状であることが分かる。
以上説明したように、本発明に係る製造方法によれば、粒径が5〜180μmm、かつ、真球度が0.8以上の球状微粒子からなり、220〜245℃の融点を持ち、焼結積層造形法に適したポリカーボネート樹脂粉末を得られることが確認された。
本発明は、3Dプリンタを用いて焼結積層造形法で造形物を作製する際の材料樹脂粉末として利用できる。
Claims (5)
- ポリカーボネート微粒子からなるポリカーボネート樹脂粉末の製造方法であって、
粘度平均分子量が10,000〜100,000のポリカーボネート樹脂(A)と、ポリカーボネート樹脂とは異なるポリマー(B)とを、ポリカーボネート樹脂の良溶媒である溶媒(C)に溶解させた溶解液に、ポリカーボネートの貧溶媒である溶媒(D)を接触させることによって、ポリカーボネートの微粒子を析出させ、
前記ポリマー(B)は、
i)前記溶媒(C)及び前記溶媒(D)のいずれにも可溶であって、かつ、
ii)前記溶媒(C)、前記溶媒(D)、前記溶媒(C)及び(D)の混合溶媒のいずれかに0.34〜16.7g/lの濃度で溶解させた溶液の粘度が3mPa・S以上となる化合物であり、
前記ポリマー(B)を、前記溶解液中に0.34〜16.7g/lの濃度となるように添加することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂粉末の製造方法。 - 前記ポリマー(B)がヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂粉末の製造方法。
- 前記溶媒(C)が、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、アセトニトリル、トリエチルアミンからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の混合物であり、
前記溶媒(D)が、水及びアルコールからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂粉末の製造方法。 - ポリカーボネート樹脂粉末であって、
粒子径が5〜180μmであり、かつ、真球度が0.8以上である球状のポリカーボネート微粒子からなり、
220〜245℃の融点を有することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂粉末。 - 融解した状態で透明であることを特徴とする、請求項4に記載のポリカーボネート樹脂粉末。
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