JP2017088476A - ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子 - Google Patents

ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】アッベ数νdが39.5〜41.5であり、nd≧2.0927−0.0058×νdの関係を満たし、安定供給が可能であり、かつ光学素子の軽量化に寄与し得るガラスの提供。【解決手段】カチオン%表示にてBイオン+Siイオン合計含有量が43〜65%、Laイオン、Yイオン、GdイオンおよびYbイオンの合計含有量が25〜50%、Nbイオン、Tiイオン、TaイオンおよびWイオンの合計含有量が3〜12%、Zrイオン含有量が2〜8%、であり、各カチオン比が所定の範囲であり、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲であり、かつ屈折率ndがアッベ数νdに対して上記関係を満たす酸化物ガラスであるガラス。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子に関する。
高屈折率低分散ガラスからなるレンズは、超低分散ガラスからなるレンズ等と組み合わせて接合レンズとすることにより、色収差を補正しつつ光学系のコンパクト化を可能にすることができる。そのため、高屈折率低分散ガラスは、撮像光学系やプロジェクタなどの投射光学系を構成する光学素子として非常に重要な位置を占めている。そのような高屈折率低分散ガラスが、例えば特許文献1〜20に記載されている。
特開2007−063071号公報 特開2007−230835号公報 特開2007−249112号公報 特開2007−261826号公報 特開2003−267748号公報 特開2009−203083号公報 特開2011−230992号公報 特開2012−025638号公報 特開昭54−090218号公報 特開昭56−160340号公報 特開2001−348244号公報 特開2008−001551号公報 特表2013−536791号公報 WO10/053214 特開2012−180278号公報 特開2012−236754号公報 特開2014−084235号公報 特開2014−062025号公報 特開2014−062026号公報 特開2011−93780号公報
光学素子用のガラスについては、光学特性の分布を示すために、光学特性マップ(またはアッベ図表とも呼ばれる)が広く使用されている。光学特性マップは、横軸にアッベ数νd、縦軸に屈折率ndを取り、アッベ数νdは横軸の右側から左側に向かうにしたがい増加し、屈折率は縦軸の下方から上方に向かうにしたがい増加するように作成される。なお以下において、屈折率、アッベ数は、特記しない限り、ヘリウムのd線(波長587.56nm)に対する屈折率nd、ヘリウムのd線(波長587.56nm)に対するアッベ数νdをいうものとする。
光学特性マップでは、高屈折率低分散ガラス(高nd高νdガラス)の光学特性は、アッベ数が小さくなると屈折率が増加し、アッベ数が増加すると屈折率が低下する、いわゆる右肩上がりの分布を一般に示す。これは、以下の理由によるものと考えられる。
高屈折率低分散ガラスは、酸化ホウ素および酸化ランタンなどの希土類酸化物を含有しているものが多い。このようなガラスにおいて、アッベ数を減少させずに屈折率を高めるには、希土類酸化物の含有量を高めることになる。しかし、従来の高屈折率低分散ガラスにおいて希土類酸化物の含有量を高めると、ガラスの熱的安定性が低下しガラスを製造する過程でガラスが失透傾向を示してしまう。そのため、従来の高屈折低分散ガラスでは、光学素子材料として使用すべくガラスの失透を抑制しつつ、アッベ数と屈折率を共に高めることは困難であった。この点が、従来の高屈折率低分散ガラスが、光学特性マップにおいて、上記のような分布を示す理由と考えられる。
一方、光学系の設計において、屈折率が高く、アッベ数も大きい(分散の低い)ガラスは、色収差の補正、光学系の高機能化、コンパクト化のために極めて有効な光学素子用の材料である。したがって、光学特性マップ上で右肩上がりの直線を設定し、この直線上および直線よりも屈折率が高い(マップ上、直線よりも左側の領域に位置する)ガラスを提供することの意義は非常に大きい。
以上の点から、アッベ数νdが39.5〜41.5であり、このアッベ数に対し、屈折率ndが2.0927−0.0058×νdで求まる値以上であるガラス、すなわちnd≧2.0927−0.0058×νdの関係を満たすガラスは、光学系において有用な高屈折率低分散ガラスである。
これに対し、特許文献1〜20に記載されているガラスの中で、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲にあり、nd≧2.0927−0.0058×νdの関係を満たす高屈折率低分散ガラスは、Gd、Taのいずれかの成分を含んでいる。しかるに、Gd、Taとも、希少価値の高い元素であるものの各種産業分野での需要が近年増加しているため、市場における需要に対して供給が不足している。そのため高屈折率低分散ガラスの安定供給の観点からは、高屈折率低分散ガラスにおいて、GdやTaの含有量を低減することが望ましい。
ところで、撮像光学系やプロジェクタなどの投射光学系を構成する光学素子は軽量化することが望ましい。光学素子を軽量化することは、この光学素子を組み込んだ撮像光学系や投影光学系の軽量化につながるからである。例えば、オートフォーカス式のカメラに重い光学素子を組み込むと、オートフォーカスを駆動する際の消費電力が増加し、早く電池が消耗してしまう。これに対し光学素子を軽量化すれば、オートフォーカスを駆動する際の消費電力を低減し電池寿命を延ばすことができる。
しかし本発明者は、特許文献1〜20に記載されているガラスの中で、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲にあり、nd≧2.0927−0.0058×νdの関係を満たす高屈折率低分散ガラスを用いて作製される光学素子は重くなる傾向があると考えている。これは、特許文献1〜20に記載されている高屈折率低分散化のための組成調整では、ガラスの比重が増大する傾向があるからである。
本発明の一態様は、アッベ数νdが39.5〜41.5であり、nd≧2.0927−0.0058×νdの関係を満たし、安定供給が可能であり、かつ光学素子の軽量化に寄与し得るガラスを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、カチオン%表示にて、
3+とSi4+との合計含有量が43〜65%、
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量が25〜50%、
Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量が3〜12%、
Zr4+含有量が2〜8%、
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.70〜1.42、
Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が5.80〜7.70、
Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するW6+含有量のカチオン比{W6+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.50以下、
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するZn2+含有量のカチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.17以下、
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するLa3+含有量含有量のカチオン比{La3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.50〜0.95、
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+含有量のカチオン比{Y3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.10〜0.50、
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するGd3+含有量のカチオン比{Gd3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.10以下、
Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するTa5+含有量のカチオン比{Ta5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.2以下、
であり、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲であり、かつ屈折率ndがアッベ数νdに対して下記(1)式:
nd≧2.0927−0.0058×νd ・・・ (1)
を満たす酸化物ガラスであるガラス、
に関する。
上記ガラスは、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲においてnd≧2.0927−0.0058×νdの関係を満たすガラスであって、Gd3+を含む各種成分(すなわちLa3+、Y3+、Gd3+、Yb3+)の合計含有量およびTa5+を含む各種成分(すなわちNb5+、Ti4+、Ta5+、W6+)の合計含有量が上記範囲の中で、Gd3+、Ta5+を分母または分子に含む上記カチオン比を満たす。したがって、ガラス組成においてGd、Taが占める比率が低減されている。上記ガラスは、かかる合計含有量およびカチオン比を満たす組成の中で、上述の含有量、合計含有量およびカチオン比を満たす組成調整が行われていることにより、高い熱的安定性(失透しにくい性質)と低比重化とを実現することができる。低比重化されたガラスによれば、このガラスから形成される光学素子を軽量化することができる。
本発明の一態様によれば、光学系において有用な光学特性を有し、安定供給が可能であり、かつ光学素子の軽量化に寄与し得るガラスを提供することができる。更に、本発明の一態様によれば、上記ガラスからなるプレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子を提供することができる。
図1は、比較例6で評価したガラスの写真である。 図2は、実施例1の各ガラスおよび比較例1〜4の各ガラスのアッベ数νdを横軸に取り、後述の(A)式により算出される値Aを縦軸に取ったグラフである。
[ガラス]
本発明の一態様にかかるガラスは、上記ガラス組成を有し、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲であり、かつ屈折率ndがアッベ数νdに対して上記(1)式を満たす酸化物ガラスである。以下、上記ガラスの詳細について説明する。
本発明におけるガラス組成は、例えばICP−AES(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)などの方法により定量することができる。ICP−AESにより求められる分析値は、分析値の±5%程度の測定誤差を含んでいることがある。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。
本発明では、ガラス組成を、カチオン成分についてカチオン%で表記する。カチオン%とは、周知のように、ガラスに含まれるすべてのカチオン成分の合計含有量を100%とした百分率である。
以下、特記しない限り、カチオン成分の含有量、複数種のカチオン成分の含有量の合計(合計含有量)をカチオン%で表示する。更に、カチオン%表示において、カチオン成分同士の含有量(複数種のカチオン成分の合計含有量も含む)の比をカチオン比という。
以下では、数値範囲に関して、(より)好ましい下限および(より)好ましい上限を、表に示して記載することがある。表中、下方に記載されている数値ほど好ましく、最も下方に記載されている数値が最も好ましい。また、特記しない限り、(より)好ましい下限とは、記載されている値以上であることが(より)好ましいことをいい、(より)好ましい上限とは、記載されている値以下であることが(より)好ましいことをいう。表中の(より)好ましい下限の列に記載されている数値と(より)好ましい上限の列に記載されている数値とを、任意に組み合わせて数値範囲を規定することができる。
<ガラス組成>
3+、Si4+は、ガラスのネットワーク形成成分である。B3+とSi4+との合計含有量(B3++Si4+)が43%以上であると、ガラスの熱的安定性が向上し、製造中のガラスの結晶化を抑制することができる。一方、B3+の含有量とSi4+との合計含有量が65%以下であると、屈折率ndの低下を抑制することができるため、上記した光学特性を有するガラスの作製が可能となる。したがって、上記ガラスにおけるB3+とSi4+との合計含有量は、43〜65%の範囲とする。B3+とSi4+との合計含有量の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+は、アッベ数νdの減少を抑えつつ屈折率を高める働きを有する成分である。また、これらの成分は、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善し、ガラス転移温度を高める働きも有する。
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量(La3++Y3++Gd3++Yb3+)が25%以上であると、屈折率ndの低下を抑制することができるため、上記した光学特性を有するガラスの作製が可能となる。更に、ガラスの化学的耐久性や耐候性の低下を抑制することもできる。なお、ガラス転移温度が低下すると、ガラスを機械的に加工(切断、切削、研削、研磨など)するときにガラスが破損しやすくなる(機械加工性の低下)が、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量が25%以上であると、ガラス転移温度の低下を抑制することができるため、機械加工性を高めることもできる。一方、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の各成分の合計含有量が50%以下であれば、ガラスの熱的安定性を高めることができるため、ガラスを製造するときの結晶化の抑制や、ガラスを熔融するときの原料の熔け残りを低減することもできる。また、比重の上昇を抑制することもできる。したがって、上記ガラスにおいて、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量は、25〜50%の範囲とする。La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)が3%以上であれば、熱的安定性を維持しつつ上記した光学特性を実現することができる。一方、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量が12%以下であれば、熱的安定性の低下およびアッベ数νdの低下を抑制することができる。したがって、上記ガラスでは、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量を、3〜12%の範囲とする。Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
Zr4+は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。また、Zr4+は、ガラス転移温度を高めることにより機械的な加工時にガラスが破損しにくくする働きも有する。これらの効果を良好に得るために、上記ガラスでは、Zr4+の含有量を2%以上とする。一方、Zr4+の含有量が8%以下であれば、ガラスの熱的安定性を改善することができるため、ガラス製造時の結晶化やガラス熔融時の熔け残りの発生を抑制することができる。したがって、上記ガラスにおけるZr4+含有量は、2〜8%の範囲とする。Zr4+含有量の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
アッベ数νdが39.5〜41.5であり屈折率ndとアッベ数νdが上記(1)式の関係を満たす光学特性を実現するために、上記ガラスにおいて、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するZr4+含有量のカチオン比{Zr4+含有量/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}を、0.48〜2.20の範囲とすることが好ましい。上記カチオン比が0.48〜2.20の範囲であることは、ガラス転移温度の低下抑制(これによる機械加工性の改善)の観点からも好ましい。また、上記カチオン比が0.48以上であることは、熱的安定性の向上およびガラスの低分散化の観点からも好ましい。一方、上記カチオン比が2.20以下であることは、熔解性の改善および結晶化の抑制の観点からも好ましい。カチオン比{Zr4+含有量/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}のより好ましい下限およびより好ましい上限を、下記表に示す。
ガラスの熱的安定性を改善しつつ、アッベ数νdが39.5〜41.5であり屈折率ndとアッベ数νdが上記(1)式の関係を満たす光学特性を実現するために、上記ガラスにおいて、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}を0.70〜1.42とする。カチオン比((B3++Si4+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+))が0.70以上であれば、ガラスの熱的安定性を改善することができるため、ガラスの失透を抑制することができる。また、ガラスの比重の増大を抑制することもできる。一方、カチオン比{(B3++Si4+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が1.42以下であれば、上記の光学特性を実現することができる。カチオン比{(B3++Si4+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
ガラスの熱的安定性を改善しつつ、屈折率ndの低下を抑制し上記した光学特性を実現するために、上記ガラスでは、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}を7.70以下とする。
アッベ数νdの減少を抑制しつつ、ガラスの熱的安定性を改善するために、カチオン比{(B3++Si4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}を5.80以上にする。更にカチオン比{(B3++Si4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}を5.80以下にすることは低比重化の観点からも好ましい。
カチオン比{(B3++Si4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
ガラスの熱的安定性を改善してガラスの結晶化を抑制しつつガラスを低比重化するために、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するW6+含有量のカチオン比{W6+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}を0.50以下にする。また、カチオン比{W6+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.50以下であることは、ガラスの高屈折率化や着色低減の観点からも好ましい。カチオン比{W6+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}の好ましい下限およびより好ましい上限を、下記表に示す。
ガラスの熱的安定性を改善してガラスの結晶化を抑制しつつ、上記した光学特性を実現するために、上記ガラスでは、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するZn2+含有量のカチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}を0.17以下とする。また、カチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.17以下であることは、ガラス転移温度の低下抑制(これによる機械加工性の改善)および化学的耐久性向上の観点からも好ましい。カチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}は、熔融性改善の観点からは、0%以上であることが好ましく、0%超であることがより好ましい。カチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
希土類元素であるLa、Y、GdおよびYbの中で、Gdは重希土類元素に属し、ガラスの安定供給の観点から、ガラス中の含有量を低減することが求められる成分である。また、Gdは原子量が大きく、ガラスの比重を増加させる成分でもある。
Ybも重希土類元素に属し、かつ原子量が大きい。また、Ybは近赤外域に吸収を有する。一方、一眼レフカメラ用の交換レンズや監視カメラのレンズは、近赤外域の光線透過率が高いことが望ましい。そのため、これらレンズの作製に有用なガラスとするためには、Ybの含有量を低減することが望ましい。
これに対し、La、Yは、近赤外域の光線透過率に悪影響を及ぼすことがなく、希土類元素の合計含有量に対して適量を配分することにより、熱的安定性を改善しつつ、比重の増大を抑制し、高屈折率低分散ガラスを提供するうえで有用な成分である。
そこで上記ガラスでは、La3+については、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するLa3+含有量のカチオン比{La3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}を、0.50〜0.95の範囲とする。カチオン比{La3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
また、Y3+については、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比{Y3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}を0.10〜0.50の範囲とする。カチオン比{Y3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
Gd3+は、先に記載した通り、ガラスの安定供給の観点から、ガラス中の含有量を低減すべき成分である。上記ガラスにおいて、Gd3+の含有量は、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量と、この合計含有量に対するGd3+含有量により定まる。上記ガラスでは、上記した光学特性を有する高屈折率低分散ガラスを安定供給する上から、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するGd3+の含有量のカチオン比{Gd3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}を0.10以下とする。上記カチオン比を満たすことは、ガラスの低比重化にも寄与し得る。カチオン比{Gd3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量、ならびにこの合計含有量に対するLa3+含有量、Y3+含有量、Gd3+含有量のカチオン比については、上述の通りである。La3+、Y3+、Gd3+、Yb3+の各成分の含有量の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。なおY3+含有量については、ガラスの熱的安定性および熔融性の改善の観点からも、下記表に示す下限が好ましい。
Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+は、適量を含有させることにより、屈折率を高め、ガラスの熱的安定性を改善する働きをする。ただし、Ta5+は、屈折率を高める働きを有するものの、極めて高価な成分である。そのため、ガラスの安定供給の観点から、Ta5+を積極的に使用することは好ましくない。また、Ta5+の含有量が多いと、ガラスを熔融するときに原料が熔け残りやすくなる。また、ガラスの比重が増加する。このように、Ta5+は、含有量を低減すべき成分である。そのため、Ta5+を積極的に使用することは好ましくない。 Ta5+については、ガラスの熱的安定性を改善しつつ、高屈折率低分散化とTaの使用量削減を図るため、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するTa5+の含有量のカチオン比{Ta5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}を0.2以下とする。カチオン比{Ta5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}の好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
また、Nb5+については、ガラスの安定供給を可能とするためにGd3+、Ta5+の含有量を低減しつつ、望ましくはGd3+、Ta5+とともにYb3+の含有量を低減しつつ、熱的安定性に優れる高屈折率低分散ガラスを提供するために、Nb5+、Ti4+、Ta5+、W6+の上記作用を考慮したうえで、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するNb5+の含有量のカチオン比{Nb5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}を0.2以上とすることが好ましい。また、Nb5+は、Ta、W6+に比べ、比重を大きくせずに屈折率を高めることができる傾向のある成分である。したがって、比重の増大を抑制する上では、カチオン比{Nb5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}は大きくすることが好ましい。カチオン比{Nb5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}のより好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
更に、高分散化防止の観点、および着色の観点からNb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するTi4+含有量のカチオン比{Ti4+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}は、0.6以下にすることが好ましい。カチオン比{Ti4+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}の好ましい下限およびより好ましい上限を、下記表に示す。
ガラスの熱的安定性を維持しつつ、アッベ数νdの低下を抑える上で、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)に対するLa3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量(La3++Y3++Gd3++Yb3+)のカチオン比{(La3++Y3++Gd3++Yb3+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}の下限を、下記表に示す好ましい下限の値にすることが好ましい。
一方、屈折率の低下を抑えつつ、ガラスの熱的安定性を維持する上で、カチオン比{(La3++Y3++Gd3++Yb3+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}の上限を、下記表に示す好ましい上限の値にすることが好ましい。
上記ガラスのガラス組成について、以下に更に説明する。
ガラスのネットワーク形成成分であるB3+とSi4+との合計含有量等については、先に記載した通りである。B3+とSi4+について、B3+は、Si4+よりも熔融性を改善する働きが優れているが、熔融時に揮発しやすい。一方、Si4+は、ガラスの化学的耐久性、耐候性、機械加工性を改善したり、熔融時のガラスの粘性を高める働きを有する。
一般に、B3+とLa3+等の希土類元素を含む高屈折率低分散ガラスでは、熔融時のガラスの粘性が低い。しかし、熔融時のガラスの粘性が低いと結晶化しやすくなる。ガラス製造時の結晶化は、アモルファス状態(非晶質状態)よりも結晶化したほうが安定であり、ガラスを構成するイオンがガラス中を移動して結晶構造をもつように配列することにより生じる。したがって、熔融時の粘性が高くなるようにB3+とSi4+の各成分の含有量の比率を調整することにより、上記イオンを結晶構造をもつように配列しにくくして、ガラスの結晶化を更に抑制しガラスの耐失透性を一層改善することができる。
以上の観点から、B3+とSi4+との合計含有量に対するB3+含有量のカチオン比{B3+/(B3++Si4+)}の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。下記表に示す下限以上とすることは、ガラスの熔融性改善の観点からも好ましい。また、下記表に示す上限以下とすることは、熔融時のガラスの粘性を高めるうえで好ましい。更に、下記表に示す上限以下とすることは、熔融時の揮発によるガラス組成の変動およびこれによる光学特性の変動を低減するために、またガラスの化学的耐久性、耐候性および機械加工性の1つ以上の改善の観点からも好ましい。
3+含有量、Si4+含有量のそれぞれについて、ガラスの耐失透性、熔融性、成形性、化学的耐久性、耐候性、機械加工性等を改善する上から好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
Zn2+は、ガラスを熔融するときに、ガラス原料の熔融を促進する働き、すなわち、熔融性を改善する働きを有する。また、屈折率ndやアッベ数νdを調整したり、ガラス転移温度を低下させる働きも有する。Zn2+の含有量をB3+とSi4+との合計含有量で除した値、すなわち、カチオン比{Zn2+/(B3++Si4+)}は、アッベ数νdの低下の抑制、ガラスの熱的安定性の改善、ガラス転移温度の低下抑制(これによる機械加工性の改善)、ガラスの低比重化の観点から、0.15以下とすることが好ましい。なお上記ガラスにおいてZnは含まれていてもよく含まれていなくてもよい任意成分であるため、カチオン比{Zn2+/(B3++Si4+)}は0以上であることが好ましいが、熔融性を向上させ、均質なガラスを容易に作製するためにはZnを含有させてカチオン比{Zn2+/(B3++Si4+)}を0超とすることがより好ましい。カチオン比{Zn2+/(B3++Si4+)}のより好ましい下限およびより好ましい上限を、下記表に示す。
ガラスの熔融性、熱的安定性、成形性、機械加工性等を改善し、上記した光学特性を実現する上から、Zn2+含有量の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
ガラスの熱的安定性の更なる改善、ガラス転移温度の低下抑制(これによる機械加工性の改善)、化学的耐久性の改善の観点から、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するZn2+含有量のカチオン比{Zn2+/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)}は、1.0以下であることが好ましい。一方、Znは任意成分であるため、カチオン比{Zn2+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}の下限は0が好ましいが、熔融性の向上の観点から、0超とすることがより好ましい。以上の点を考慮すると、カチオン比{Zn2+/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)}のより好ましい下限およびより好ましい上限は、下記表に示す通りである。
Nb5+、Ti4+、Ta5+、W6+について、上記作用・効果を考慮したうえで、Nb5+、Ti4+、Ta5+、W6+の各成分の含有量の好ましい範囲を、下記表に示す。
次に、以上説明した成分以外の任意成分について説明する。
Liは、ガラス転移温度を低下させる作用が強いため、その含有量が多くなると機械加工性が低下傾向を示す。また、化学的耐久性や耐候性も低下傾向を示す。したがって、Li含有量を5%以下とすることが好ましい。Liの含有量の好ましい下限およびより好ましい上限を、下記表に示す。Liの含有量は0%としてもよい。
Na、K、Rb、Csは、いずれも、ガラスの熔融性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性、機械加工性が低下傾向を示す。したがって、Na、K、Rb、Csの各含有量の下限および上限は、それぞれ下記表に示す通りとすることが好ましい。
ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性、機械加工性を維持しつつ、ガラスの熔融性を改善する上から、Li、NaおよびKの合計含有量(Li+Na+K)の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+は、いずれもガラスの熔融性を改善させる働きを有する成分である。ただし、これら成分の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下し、失透傾向を示す。したがって、これら成分のそれぞれの含有量は、それぞれ下記に示す下限以上とすることが好ましく、上限以下とすることが好ましい。
また、ガラスの熱的安定性を維持する上から、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量(Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)は、下記表に示す下限以上とすることが好ましく、上限以下とすることが好ましい。
Al3+は、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有する成分である。ただし、Al3+の含有量が多くなると、屈折率ndの低下傾向、ガラスの熱的安定性の低下傾向、熔融性の低下傾向がみられることがある。以上の点を考慮し、Al3+含有量は、下記表に示す下限以上であることが好ましく、上限以下であることが好ましい。
Ga3+、In3+、Sc3+、Hf4+は、いずれも屈折率ndを高める働きを有する。ただし、これらの成分は高価であり、上記光学ガラスを得るうえで必須の成分ではない。したがって、Ga3+、In3+、Sc3+、Hf4+の各含有量は、下記表に示す下限以上とすることが好ましく、上限以下とすることが好ましい。
Lu3+は、屈折率ndを高める働きを有するが、ガラスの比重を増加させる成分でもある。また、LuはGd、Ybと同様、重希土類元素であることから、Luの含有量を低減することは好ましい。以上の点から、Lu3+含有量の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
Ge4+は、屈折率ndを高める働きを有するが、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。ガラスの製造コストを低減する上から、Ge4+含有量の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
Bi3+は、屈折率ndを高めるとともに、アッベ数νdを低下させる成分である。また、比重や着色を増大させやすい成分でもある。上記した光学特性を有し、かつ着色が少なく低比重なガラスを作製するうえで、Bi3+含有量の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
以上説明した各種作用・効果を良好に得るうえで、以上記載したカチオン成分の各含有量の合計(合計含有量)は、95%よりも多くすることが好ましく、98%よりも多くすることがより好ましく、99%よりも多くすることが更に好ましく、99.5%よりも多くすることが一層好ましい。
以上記載したカチオン成分以外のカチオン成分の中で、P5+は、屈折率ndを低下させる成分であり、ガラスの熱的安定性を低下させる成分でもあるが、極少量の導入であればガラスの熱的安定性を向上させることがある。上記した光学特性を有するとともに、熱的安定性が優れたガラスを作製するうえで、P5+含有量の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
Te4+は、屈折率ndを高める成分であるが、毒性を有する成分であることから、Te4+の含有量を少なくすることが好ましい。Te4+含有量の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
なお上記の各表において(より)好ましい下限または0%が記載されている成分は、含有量が0%であることも好ましい。複数成分の合計含有量についても同様である。
以上記載した各種カチオン成分について、本発明者は検討を重ねる中で、各カチオン成分がガラスの分散(アッベ数)に与える影響はそれぞれ異なると考えられることに着目した。そして本発明者は更に検討を重ねた結果、各カチオン成分についてガラスの分散に与える影響を考慮した係数を規定し、下記(A)式により算出される値Aが8.5000〜11.000の範囲になるように組成調整を行うことが、アッベ数νdが39.5〜41.5であり屈折率ndとアッベ数νdが上記(1)式の関係を満たす光学特性を実現するために好ましいと考えるに至った。
A=0.01×Si4+含有量
+0.01×B3+含有量
+0.05×La3+含有量
+0.07×Y3+含有量
+0.07×Yb3+含有量
+0.085×Zn2+含有量
+0.3×Zr4+含有量
+0.5×Ta5+含有量
+0.8×Nb5+含有量
+0.9×W5+含有量
+0.95×Ti4+含有量 ・・・ (A)
上記(A)式により算出される値Aのより好ましい下限およびより好ましい上限は、下記表に示す通りである。
また、以上記載した各種カチオン成分の中で、Gd3+は、屈折率を高める作用を奏するものの、比重を増加させる作用が大きい。これに対し、Nb5+およびTi4+は、屈折率を高める作用を奏する成分の中でも、その作用が特に大きな成分である。更に、Nb5+およびTi4+は、屈折率を大きく高めることができるうえに、比重を増加させる作用が小さい成分である。比重の増大を抑制しつつ屈折率を大きく高めるためには、上記ガラスは、カチオン%表示のガラス組成において、下記式(B)により算出される値Bが、−1.000以上であることが好ましい。また、高屈折率低分散化の観点から、下記式(B)により算出される値Bは、6.720以下であることが好ましい。
B=0.567×(Ti4+含有量+Nb5+含有量)−1.000×Gd3+含有量
・・・ (B)
(B)式により算出される値Bのより好ましい下限およびより好ましい上限は、下記表に示す通りである。
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、それぞれ毒性を有する。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことか好ましい。
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことか好ましい。
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr,Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ceは、ガラスの着色を増大させたり、蛍光の発生源となり、光学素子用のガラスに含有させる元素としては好ましくない。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことか好ましい。
Sb、Snは清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。
Sbの添加量は、Sbに換算し、Sb以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたとき、0〜0.11質量%の範囲にすることが好ましく、0.01〜0.08質量%の範囲にすることがより好ましく、0.02〜0.05質量%の範囲にすることが更に好ましい。
Snの添加量は、SnOに換算し、SnO以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたとき、0〜0.5質量%の範囲にすることが好ましく、0〜0.2質量%の範囲にすることがより好ましく、0質量%の範囲にすることが更に好ましい。
以上、カチオン成分について説明した。次に、アニオン成分について説明する。
上記ガラスは、酸化物ガラスであるため、アニオン成分としてO2−を含む。O2−含有量の好ましい下限は、下記表に示す通りである。
2−以外のアニオン成分としては、F、Cl、Br、Iを例示することができる。ただし、F、Cl、Br、Iは、いずれもガラスの熔融中に揮発しやすい。これらの成分の揮発によって、ガラスの特性が変動しガラスの均質性が低下したり、熔融設備の消耗が著しくなる傾向がある。したがって、F、Cl、BrおよびIの合計含有量を、100アニオン%から、O2−の含有量を差し引いた量に抑えることが好ましい。
なお、アニオン%とは周知のように、ガラスに含まれるすべてのアニオン成分の合計含有量を100%とした百分率である。
<ガラス特性>
(ガラスの光学特性)
上記ガラスは、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲であり、かつ屈折率ndがアッベ数νdに対して下記(1)式を満たすガラスである。
nd≧2.0927−0.0058×vd ・・・ (1)
アッベ数νdが39.5以上のガラスは、光学素子の材料として色収差の補正に有効である。他方、アッベ数νdが41.5より大きくなると、屈折率を低下させないとガラスの熱的安定性が著しく低下し、ガラスを製造する過程で失透しやすくなる。アッベ数νdの好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。
上記ガラスは、屈折率ndが、アッベ数νdに対して(1)式を満たす。アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲であり、かつ屈折率ndが(1)式を満たすガラスは、光学系の設計において、利用価値の高いガラスである。
屈折率ndの上限は、ガラス組成により自ずと定まる。熱的安定性を改善し失透しにくいガラスを得るためには、屈折率ndが下記(2)式を満たすことが好ましい。
nd≦2.1270−0.0058×vd ・・・ (2)
アッベ数νdに対する屈折率ndの好ましい下限およびより好ましい上限を、下記表に示す。
また、屈折率ndは、下記表に示す下限以上であることも好ましく、上限以下であることも好ましい。
(部分分散特性)
色収差補正の観点から、上記ガラスは、アッベ数νdを固定したとき、部分分散比が小さいガラスであることが好ましい。
ここで、部分分散比Pg,Fは、g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、ncを用いて、(ng−nF)/(nF−nc)と表される。
高次の色収差補正に好適なガラスを提供する上から、上記ガラスの部分分散比Pg,fの好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
(ガラス転移温度)
上記ガラスのガラス転移温度は、特に限定されないが、好ましくは640℃以上である。ガラス転移温度を640℃以上にすることにより、切断、切削、研削、研磨などガラスを機械的に加工する時に、ガラスを破損しにくくすることができる。また、ガラス転移温度を低下させる働きの強いLi、Znなどの成分を多量に含有させなくてもよいため、Gd、Taの含有量を少なくしても、更にはYbの含有量も少なくしても、熱的安定性を向上しやすくなる。
一方、ガラス転移温度を高くし過ぎると、ガラスを高温でアニールしなければならなくなり、アニール炉が著しく消耗する。また、ガラスを成形するときに、高い温度で成形を行わなければならず、成形に使用する型の消耗が著しくなる。
機械加工性の改善、アニール炉や成形型への負担軽減から、ガラス転移温度の好ましい下限および好ましい上限は、下記表に示す通りである。
(ガラスの比重)
光学系を構成する光学素子(レンズ)では、レンズを構成するガラスの屈折率とレンズの光学機能面(制御しようとする光線が入射、出射する面)の曲率によって、屈折力が決まる。光学機能面の曲率を大きくしようとすると、レンズの厚みも増加する。その結果、レンズが重くなる。これに対し、屈折率の高いガラスを使用すれば、光学機能面の曲率を大きくしなくても大きな屈折力を得ることができる。
以上より、ガラスの比重の増加を抑えつつ、屈折率を高めることができれば、一定の屈折力を有する光学素子の軽量化が可能となる。
屈折率ndの屈折力への寄与に関しては、ガラスの屈折率ndから真空中の屈折率である1を引いた値(nd―1)に対してガラスの比重dの比を取ることにより、光学素子の軽量化を図る際の指標とすることができる。すなわち、d/(nd−1)を光学素子の軽量化を図る際の指標とし、この値を低減することにより、レンズの軽量化を図ることができる。
上記ガラスは、比重の増加を招くGd、Taの占める比率が少なく、またYbの占める比率を少なくすることもできるので、高屈折率低分散ガラスでありながら、低比重化が可能である。したがって、上記ガラスのd/(nd−1)は、例えば5.70以下であることができる。ただし、d/(nd−1)を過剰に減少させると、ガラスの熱的安定性が低下傾向を示す。そのため、d/(nd−1)は、5.00以上とすることが好ましい。d/(nd−1)のより好ましい下限およびより好ましい上限を、下記表に示す。
更に、上記ガラスの比重dの好ましい下限および好ましい上限を、下記表に示す。比重dを下記表に示す上限以下にすることは、このガラスからなる光学素子の軽量化の観点から好ましい。また、比重を下記表に示す下限以上にすることは、ガラスの熱的安定性をより改善する上で好ましい。
(液相温度)
ガラスの熱的安定性の指標の一つに液相温度がある。ガラス製造時の結晶化、失透を抑制する上から、液相温度LTが1350℃以下であることが好ましく、1330℃以下であることがより好ましく、1300℃以下であることが更に好ましく、1250℃以下であることが一層好ましい。液相温度LTの下限は、一例として1100℃以上であるが、低いことが好ましく特に限定されるものではない。
以上説明した本発明の一態様にかかるガラスは、屈折率ndおよびアッベ数νdが大きく、光学素子用のガラス材料として有用である。更に、先に記載した組成調整により、ガラスの均質化および低比重化も可能である。したがって上記ガラスは、より軽量な光学素子を与える光学ガラスとして好適である。
<ガラスの製造方法>
上記ガラスは、目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物などを秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、攪拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得ることができる。具体的には公知の熔融法を用いて作ることができる。上記ガラスは、上記した光学特性を有する高屈折率低分散ガラスでありながら、熱的安定性が優れているため、公知の熔融法、成形法を用いて、安定的に製造することができる。
[プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、およびそれらの製造方法]
本発明の他の一態様は、
上述のガラスからなるプレス成形用ガラス素材;
上述のガラスからなる光学素子ブランク、
に関する。
本発明の他の一態様によれば、
上述のガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;
上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法;
上述のガラスを光学素子ブランクに成形する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、
も提供される。
光学素子ブランクとは、目的とする光学素子の形状に近似し、光学素子の形状に研磨しろ(研磨により除去することになる表面層)、必要に応じて研削しろ(研削により除去することになる表面層)を加えた光学素子母材である。光学素子ブランクの表面を研削、研磨することにより、光学素子が仕上げられる。一態様では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスをプレス成形する方法(ダイレクトプレス法と呼ばれる。)により、光学素子ブランクを作製することができる。他の一態様では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスを固化することにより光学素子ブランクを作製することもできる。
また、他の一態様では、プレス成形用ガラス素材を作製し、作製したプレス成形用ガラス素材をプレス成形することにより、光学素子ブランクを作製することができる。
プレス成形用ガラス素材のプレス成形は、加熱して軟化した状態にあるプレス成形用ガラス素材をプレス成形型でプレスする公知の方法により行うことができる。加熱、プレス成形は、ともに大気中で行うことができる。プレス成形後にアニールしてガラス内部の歪を低減することにより、均質な光学素子ブランクを得ることができる。
プレス成形用ガラス素材は、そのままの状態で光学素子ブランク作製のためのプレス成形に供されるプレス成形用ガラスゴブと呼ばれるものに加え、切断、研削、研磨などの機械加工を施してプレス成形用ガラスゴブを経てプレス成形に供されるものも含む。切断方法としては、ガラス板の表面の切断したい部分にスクライビングと呼ばれる方法で溝を形成し、溝が形成された面の裏面から溝の部分に局所的な圧力を加えて、溝の部分でガラス板を割る方法や、切断刃によってガラス板をカットする方法などがある。また、研削、研磨方法としてはバレル研磨などが挙げられる。
プレス成形用ガラス素材は、例えば、熔融ガラスを鋳型に鋳込みガラス板に成形し、このガラス板を複数のガラス片に切断することにより作製することができる。または、適量の熔融ガラスを成形してプレス成形用ガラスゴブを作製することもできる。プレス成形用ガラスゴブを、再加熱、軟化してプレス成形して作製することにより、光学素子ブランクを作製することもできる。ガラスを再加熱、軟化してプレス成形して光学素子ブランクを作製する方法は、ダイレクトプレス法に対してリヒートプレス法と呼ばれる。
[光学素子およびその製造方法]
本発明の他の一態様は、
上述のガラスからなる光学素子
に関する。
上記光学素子は、上述のガラスを用いて作製される。上記光学素子において、ガラス表面には、例えば、反射防止膜等の多層膜等、一層以上のコーティングが形成されていてもよい。
また、本発明の一態様によれば、
上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法、
も提供される。
上記光学素子の製造方法において、研削、研磨は公知の方法を適用すればよく、加工後に光学素子表面を十分洗浄、乾燥させるなどすることにより、内部品質および表面品質の高い光学素子を得ることができる。このようにして、上記ガラスからなる光学素子を得ることができる。光学素子としては、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズなどの各種のレンズ、プリズムなどを例示することができる。
また、上記ガラスからなる光学素子は、接合光学素子を構成するレンズとしても好適である。接合光学素子としては、レンズ同士を接合したもの(接合レンズ)、レンズとプリズムを接合したものなどを例示することができる。例えば、接合光学素子は、接合する2つの光学素子の接合面を形状が反転形状となるように精密に加工(例えば、球面研磨加工)し、接合レンズの接着に使用される紫外線硬化型接着剤を塗布し、貼り合わせてからレンズを通して紫外線を照射し接着剤を硬化させることで作製することができる。このように接合光学素子を作製するために、上記ガラスは好ましい。接合する複数個の光学素子を、アッベ数νdが相違する複数種のガラスを用いてそれぞれ作製し、接合することにより、色収差の補正に好適な素子とすることができる。
ガラス組成の定量分析の結果、ガラス成分が酸化物基準で表され、ガラス成分の含有量が質量%表示されることがある。このように酸化物基準で質量%表示された組成は、例えば次のような方法で、カチオン%、アニオン%表示の組成に換算することができる。
ガラス中にN種のガラス成分が含まれる場合、k番目のガラス成分をA(k)と表記する。ただし、kは1以上、N以下の任意の整数である。
A(k)はカチオン、Oは酸素、mとnは化学量論的に定まる整数である。例えば、酸化物基準による表記がBの場合、m=2、n=3となり、SiOの場合、m=1、n=2となる。
次に、A(k)の含有量を、X(k)[質量%]とする。ここで、A(k)の原子量をP(k)、酸素Oの原子番号をQとすると、A(k)の形式的な分子量R(k)は、
R(k)=P(k)×m+Q×n
となる。
更に、
B=100/{Σ[m×X(k)/R(k)]}
とすると、カチオン成分A(k)s+の含有量(カチオン%)は、[X(k)/R(k)]×m×B(カチオン%)となる。ここで、Σは、k=1からNまでのm×X(k)/R(K)の合計を意味する。mはkに応じて変化する。sは2n/mである。
また、分子量R(k)は、小数点以下4桁目を四捨五入し、小数点以下3桁目までの表示とした値を用いて計算すればよい。なお、幾つかのガラス成分、添加剤について、酸化物基準による表記における分子量を、下記の表62に示す。
以下、本発明を実施例に基づき更に説明する。但し本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。
(実施例1)
下記の表に示す組成を有するガラスが得られるように、原料として酸化物、ホウ酸などの化合物を秤量し、充分、混合してバッチ原料を作製した。
このバッチ原料を白金坩堝中に入れ、1350〜1450℃の温度に坩堝ごと加熱し、2〜3時間かけてガラスを熔融、清澄した。熔融ガラスを攪拌して均質化した後、予熱した成形型に熔融ガラスを鋳込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちに、成形型ごとガラスをアニール炉内に入れた。それから、ガラス転移温度付近で約1時間アニールした。アニールした後、アニール炉内で室温まで放冷した。
このようにして作製したガラスを観察したところ、結晶の析出、泡、脈理、原料の熔け残りは認められなかった。このようにして、均質性の高いガラスを作ることができた。
(比較例1〜4)
下記の表に示す比較例1〜4の各組成を有するガラスが得られるように、原料として酸化物、ホウ酸などの化合物を秤量し、充分、混合してバッチ原料を作製した点以外、実施例1と同様の方法でガラスを得た。
比較例1の組成は、特許文献20のガラスNo.11の組成をカチオン%表示のガラス組成に換算した組成、
比較例2は、特許文献20のガラスNo.25の組成をカチオン%表示のガラス組成に換算した組成、
比較例3は、特許文献20のガラスNo.45の組成をカチオン%表示のガラス組成に換算した組成、
比較例4は、特許文献20のガラスNo.49の組成をカチオン%表示のガラス組成に換算した組成、
である。
得られたガラスのガラス特性を、以下に示す方法で測定した。測定結果を下記の表に示す。
(1)屈折率nd、nF、nc、ng、アッベ数νd
降温速度−30℃/時間で降温して得たガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率nd、nF、nc、ngを測定した。屈折率nd、nF、ncの各測定値を用いて、アッベ数νdを算出した。
(2)ガラス転移温度Tg
示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、昇温速度を10℃/分にして測定した。
(3)比重
アルキメデス法により測定した。
(4)部分分散比Pg,F
上記(1)で測定したnF、nc、ngの値から算出した。
(5)液相温度
ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。
(実施例2)
実施例1で得られた各種ガラスを使用し、プレス成形用ガラス塊(ガラスゴブ)を作製した。このガラス塊を大気中で加熱、軟化し、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
(実施例3)
実施例1において作製した熔融ガラスを所望量、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
(実施例4)
実施例1において作製した熔融ガラスを固化して作製したガラス塊(光学素子ブランク)アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
(実施例5)
実施例2〜4において作製した球面レンズを、他種のガラスからなる球面レンズと貼り合せ、接合レンズを作製した。
(比較例6)
本発明の一態様にかかるガラスは、カチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.17以下である。
これに対し、特開2014−62026号公報の表1に示されているNo.6のガラスの上記カチオン比は、0.578である。この特開2014−62026号公報の表1に示されているNo.6のガラスのガラス組成において、単にカチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}を下げる組成調整を行うのみでは、結晶析出の抑制は困難であることを示すため、以下に記載するガラスを作製した。
特開2014−62026号公報の表1に示されているNo.6のガラスにおいて、Zn2+を減量し、減量分を他成分の含有量のバランスが大きく変わらないよう他成分に配分して、下記表64中に示すように組成調整して2種類のガラス(組成調整1、組成調整2)を作製した。表64中のガラス成分同士の比はカチオン比である。具体的には、ガラス原料を調合し、白金坩堝中に調合原料170gを入れて1400℃で2時間、熔融、清澄した。熔融ガラスを攪拌して均質化した後、予熱した成形型に熔融ガラスを鋳込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちに、成形型ごとガラスをアニール炉内に入れた。それから、ガラス転移温度付近で約1時間アニールした。アニールした後、アニール炉内で室温まで放冷した。
その後、ガラスの内部を観察した。
図1は、比較例6で評価したガラスの写真である。図1より明らかなように、ガラス中には多数の結晶が析出し、白濁して透明性が失われていた。
これに対し、本発明の一態様にかかるガラスにおいては、カチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}をはじめとする先に詳述した組成調整が行われていることにより、結晶析出の抑制が可能である。
図2は、実施例1の各ガラスおよび比較例1〜4の各ガラスのアッベ数νdを横軸に取り、上記(A)式により算出される値Aを縦軸に取ったグラフである。
図2に示すように、上記(A)式により算出される値Aは、アッベ数と良好な相関関係を示した。この結果から、値Aに基づき組成調整を行うことは、アッベ数を調整するうえで好ましいことが確認できる。
最後に、前述の各態様を総括する。
一態様によれば、B3+とSi4+との合計含有量が43〜65%、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量が25〜50%、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量が3〜12%、Zr4+含有量が2〜8%、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.70〜1.42、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が5.80〜7.70、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するW6+含有量のカチオン比{W6+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.50以下、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するZn2+含有量のカチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.17以下、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するLa3+含有量含有量のカチオン比{La3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.50〜0.95、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+含有量のカチオン比{Y3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.10〜0.50、La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するGd3+含有量のカチオン比{Gd3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.10以下、Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するTa5+含有量のカチオン比{Ta5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.2以下であり、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲であり、かつ屈折率ndがアッベ数νdに対して上記(1)式を満たす酸化物ガラスであるガラスを提供することができる。
上記ガラスは、(1)式を満たすガラスであり、光学系において有用な高屈折率低分散ガラスである。上記ガラスは、ガラス組成においてGd、Taが占める割合が低減されているため安定供給可能であり、かつ上述の含有量、合計含有量およびカチオン比を満たすことにより、高い熱的安定性を得ることができ、低比重化が可能である。
一態様では、上記ガラスは、カチオン%表示のガラス組成において、上記(A)式により算出される値Aが、8.5000〜11.0000の範囲であることが好ましい。
一態様では、上記ガラスは、カチオン%表示のガラス組成において、上記(B)式により算出される値Bが、−1.000〜6.720の範囲であることが好ましい。
一態様では、上記ガラスにおけるNb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するZr4+含有量のカチオン比{Zr4+含有量/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.48〜2.20の範囲であることが好ましい。
一態様では、上記ガラスの比重は、5.20以下である。
以上説明したガラスから、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子を作製することができる。即ち、他の態様によれば、上記ガラスからなるプレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子が提供される。
また、他の態様によれば、上記ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法も提供される。
更に他の態様によれば、上記プレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法も提供される。
更に他の態様によれば、上記ガラスを光学素子ブランクに成形する工程を備える光学素子ブランクの製造方法も提供される。
更に他の態様によれば、上記光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法も提供される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかるガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。
本発明は、各種光学素子の製造分野において有用である。

Claims (8)

  1. カチオン%表示にて、
    3+とSi4+との合計含有量が43〜65%、
    La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量が25〜50%、
    Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量が3〜12%、
    Zr4+含有量が2〜8%、
    La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.70〜1.42、
    Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するB3+とSi4+との合計含有量のカチオン比{(B3++Si4+)/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が5.80〜7.70、
    Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するW6+含有量のカチオン比{W6+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.50以下、
    La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するZn2+含有量のカチオン比{Zn2+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.17以下、
    La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するLa3+含有量含有量のカチオン比{La3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.50〜0.95、
    La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+含有量のカチオン比{Y3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.10〜0.50、
    La3+、Y3+、Gd3+およびYb3+の合計含有量に対するGd3+含有量のカチオン比{Gd3+/(La3++Y3++Gd3++Yb3+)}が0.10以下、
    Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するTa5+含有量のカチオン比{Ta5+/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.2以下、
    であり、アッベ数νdが39.5〜41.5の範囲であり、かつ屈折率ndがアッベ数νdに対して下記(1)式:
    nd≧2.0927−0.0058×νd ・・・ (1)
    を満たす酸化物ガラスであるガラス。
  2. カチオン%表示のガラス組成において、下記(A)式により算出される値Aが、8.5000〜11.0000の範囲である請求項1に記載のガラス。
    A=0.01×Si4+含有量
    +0.01×B3+含有量
    +0.05×La3+含有量
    +0.07×Y3+含有量
    +0.07×Yb3+含有量
    +0.085×Zn2+含有量
    +0.3×Zr4+含有量
    +0.5×Ta5+含有量
    +0.8×Nb5+含有量
    +0.9×W5+含有量
    +0.95×Ti4+含有量 ・・・ (A)
  3. カチオン%表示のガラス組成において、下記(B)式により算出される値Bが、−1.000〜6.720の範囲である請求項1または2に記載のガラス。
    B=0.567×(Ti4+含有量+Nb5+含有量)−1.000×Gd3+含有量
    ・・・ (B)
  4. Nb5+、Ti4+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するZr4+含有量のカチオン比{Zr4+含有量/(Nb5++Ti4++Ta5++W6+)}が0.48〜2.20の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス。
  5. 比重が5.20以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラスからなるプレス成形用ガラス素材。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子ブランク。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子。
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