JP2017085911A - 生体内分解性タンパク質及びタンパク質の生体内での分解方法 - Google Patents

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健史 竹田
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Abstract

【課題】連結したタンパク質をより短時間に生分解させることができ、かつ、不安定化すべきタンパク質(標的タンパク質)の連結させる部位についての制限が少ないか又は無い、新たなタンパク質分解付与性能を有するタンパク質を提供する。このタンパク質分解付与性能を有するタンパク質を用いる、生分解性タンパク質を提供する。
【解決手段】チェックポイントキナーゼ1(Chk1)をコードするアミノ酸配列のキナーゼドメイン内に位置するアミノ酸の少なくとも1個を、野生型アミノ酸配列が有するアミノ酸以外のアミノ酸で置換した変異型タンパク質。生体内で分解性を有する。前記変異型タンパク質をコードするDNA及び標的タンパク質をコードするDNAを含むプラスミドを含む細胞において、標的タンパク質をコードするDNAを含む連結DNAを生体内で発現させて、生体内での分解性が促進された変異型タンパク質及び標的タンパク質の融合タンパク質を生成させる方法。
【選択図】図9

Description

本発明は、生体内分解性タンパク質及びタンパク質の生体内での分解方法に関する。
グリーン蛍光タンパク質(green fluorescent protein,GFP)のような蛍光タンパク質は検出しやすいグリーン等の蛍光を発するため、遺伝子発現およびタンパク質局在化を調べるために広く用いられている。また、蛍光タンパク質による蛍光は、蛍光酵素を用いる系と異なり、基質または補因子を必要としないので、多数の種および多様な細胞においてレポーターとして使用できる。但し、GFP等の蛍光タンパク質は安定なタンパク質であり、蓄積する可能性があるので、哺乳動物細胞にとって有毒となる可能性があり、その一方で安定な蛍光タンパク質は、有用なレポーターでもある。しかし、その安定性は、短期的な現象や、反復的な現象の測定を困難にするという側面もある。
このような観点から、不安定化した、または短命なGFP等の蛍光タンパク質を提供することが提案されている(特許文献1)。特許文献1には、不安定化、または迅速代謝回転GFP等の蛍光タンパク質が開示されている。不安定化GFPは、先行技術のGFPを使用できなかった研究用途、例えば、不安定化GFPを転写調節および/またはシス作用性調節要素の分析のための遺伝子レポーターとして、あるいはタンパク質分解を研究するための道具として使用することができる。さらに、迅速代謝回転GFPにより、GFP遺伝子を発現する安定な細胞系の開発が容易になる。
特表2002−512015号公報
Smits et al., Curr. Biol., 16 (2006) 150-159) Niida et al., Mol. Cell. Biol., 27 (2007) 2572-2581 Walker et al., Oncogene, 28 (2009) 2314-2323 Sorensen et al., Cancer Cell, 3 (2003) 247-258
特許文献1に記載の不安定化タンパク質は、GFPのような蛍光タンパク質に、ネズミオルニチンデカルボキシラーゼ(MODC)のC末端のPEST配列含有部分を融合したタンパク質である。この融合タンパク質は、蛍光タンパク質がGFPの場合、野生型GFPのものより短縮した半減期をもつ。しかし、この融合タンパク質の半減期は、約10時間程度またはそれ以下であり、幾つかの態様では約4時間以下の物もある。しかし、半減期は数時間の単位であり、依然として長く、より短い時間内での現象の観察には適さない。また、特許文献1に記載の融合タンパク質においては、融合タンパク質分解促進用のドメインは、不安定化すべきタンパク質(標的タンパク質)のC末端側にのみ連結させることができる。N末端側に連結させても、あるいは標的タンパク質の中に挿入しても分解性は得られない。よって、標的タンパク質のC末端側に連結させられない場合や、標的タンパク質の中に挿入することでの利用はできない。
そこで本発明は、連結したタンパク質をより短時間に生分解させることができ、かつ、不安定化すべきタンパク質(標的タンパク質と呼ぶ)の連結させる部位についての制限が少ないか又は無い、新たなタンパク質分解付与性能を有するタンパク質を提供することにある。さらにこのタンパク質分解付与性能を有するタンパク質を用いる、生分解性タンパク質を提供することも本発明の目的である。
本発明は以下のとおりである。
[1]
チェックポイントキナーゼ1(Checkpoint kinase 1 (以下Chk1と略記する))をコードするアミノ酸配列のキナーゼドメイン内に位置するアミノ酸の少なくとも1個を、野生型アミノ酸配列が有するアミノ酸以外のアミノ酸で置換した変異型タンパク質であって、生体内で分解性を有するタンパク質。
[2]
前記Chk1は、哺乳類由来である[1]に記載のタンパク質。
[3]
前記哺乳類は、ラット、マウス、ウシ、ヒト、又はサルである[2]に記載のタンパク質。
[4]
前記Chk1をコードするアミノ酸配列は、配列番号1若しくは2に記載のアミノ酸配列(1-270)、配列番号1若しくは2に記載のアミノ酸配列(1-270)N末端からn個欠損したアミノ酸配列(n-270)である(但し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、又は9のいずれかの整数である)、配列番号3、4若しくは5に記載のアミノ酸配列(1-269)、又は配列番号3、4若しくは5に記載のアミノ酸配列(1-269)N末端からn個欠損したアミノ酸配列(n-269)である(但し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、又は9のいずれかの整数である)[1]に記載のタンパク質。
[5]
キナーゼドメイン内に位置するアミノ酸が、N末端から36番、38番、55番、130番、132番、135番、148番、170番のアミノ酸である[4]に記載のタンパク質。
[6]
前記生体内での分解性は、COS-7細胞において[1]〜5のいずれかに記載のタンパク質をコードするDNAを発現させて、得られるタンパク質の分子量を指標として決定される、[1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質。
[7]
[1]〜[6]のいずれかに記載の変異型タンパク質をコードするDNA。
[8]
[7]に記載のDNAを含むプラスミド。
[9]
標的タンパク質をコードするDNAをさらに含む、[8]に記載のプラスミド。
[10]
プロモーター配列及び/又は転写制御配列をコードする配列をさらに含む[9]に記載のプラスミド。
[11]
[9]又は[10]に記載のプラスミドを含む細胞において、少なくとも標的タンパク質をコードするDNAと[7に記載のDNAとの直接又は間接的な連結体である連結DNAを生体内で発現させて、生体内での分解性が促進された[1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質及び標的タンパク質の融合タンパク質を生成させる、方法。
[12]
前記標的タンパク質が発光タンパク質又は蛍光タンパク質である、[9]に記載の方法。
[13]
蛍光タンパク質は、ルシフェラーゼである[11]又は[12]に記載の方法。
[14]
発光タンパク質は、GFP、Sirius,EBFP,ECFP,mTurquoise,TagCFP,AmCyan,mTFP1,MidoriishiCyan,CFP,TurboGFP,AcGFP,TagGFP,Azami-Green,ZsGreen,EmGFP,EGFP,GFP2,HyPer,TagYFP,EYFP,Venus,YFP,PhiYFP,PhiYFP-m,TurboYFP,ZsYellow,mBanana,KusabiraOrange,mOrange,TurboRFP,DsRed-Express,DsRed2,TagRFP,DsRed-Monomer,AsRed2,mStrawberry,TurboFP602,mRFP1,JRed,KillerRed,mCherry,HcRed,KeimaRed,mRaspberry,mPlum,PS-CFP,Dendra2,Kaede,EosFP,又はKikumeGRである[11]又は[12]に記載の方法。
[15]
プロモーター解析に用いるための[11]〜[14]のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、連結した標的タンパク質をより短時間に(生)分解させることができ、かつ、不安定化すべき標的タンパク質の連結させる部位についての制限が少ないか又は無い、新たなタンパク質分解付与性能を有するタンパク質を提供することができる。さらにこのタンパク質分解付与性能を有するタンパク質を用いる、(生)分解性タンパク質を提供することもできる。
Chk1(1-365)における野生型(Wild-type)と各種不活性化変異体とのターンオーバーの違いを示す。COS-7細胞でそれぞれのタンパク質を発現させた後、細胞へ図に示した時間でシクロヘキシミドを投与後にサンプルを回収し、Western blot解析を行った結果を示す。α-Tubulinの発現レベルは、トータルの細胞ライセート量に差がないことを示す内部コントロールとして使用した。上図は、Flag融合Chk1(1-365)タンパク質の一アミノ酸置換による既知の不活性化変異体(A36F、K38M)における分解活性をその野生型と比較した解析結果である。下図は、不活性変異を誘導するアミノ酸変異を二箇所導入した変異体(A36F/K38M)における分解活性を同様に解析した結果を示す。変異箇所を増やしても、その分解活性はそれぞれ単一の変異体と殆ど変わりはない。 リン酸化によるバンドシフトの無い変異(K54A)では、その分解が促進されないことを示す。解析方法は上記と同様に行い、シクロヘキシミド投与による各種変異体の細胞内でのタンパクレベルを経時的に解析した結果である。上図はA36F、D130A、K54A変異体の結果を、下図はK132R、N135A、D148A変異体のWestern Blot解析の結果を示す。 N末端側から270アミノ酸を含む領域が分解促進に必要な領域であることを示すWestern Blot解析の結果を示す。図1と同様のシクロヘキシミドアッセイを行った。上図は、Flag融合Chk1(1-365)のK38M変異体の分解活性を、その126〜138アミノ酸領域を欠損させた変異体(d126-138)や260〜270アミノ酸領域を欠損させた変異体(d260-270)と比較した結果を示す。これらの欠損により分解は顕著に抑制される。下図は、同様にFlag融合Chk1(1-365)のK38M変異体と、そのC末端欠損変異体(1-260と1-270)との分解活性を比較した結果を示す。Flag-Chk1(1-270) K38MのC末端側をさらに10残基欠損させた変異体(1-260)では分解活性が消失する。 KmuriのN末端側を僅か数十残基欠損させるだけでその分解活性は失われることを示す。EGFP-V5ベクターのN末端側へKmuriを融合させたタンパク質(K38M (1-270)-GFP-V5)と、そのN末端側の2〜20アミノ酸領域を欠損させた変異体(K38M (21-270)-GFP-V5)や2〜30アミノ酸領域を欠損させた変異体(K38M (31-270)-GFP-V5)との分解活性をシクロヘキシミドアッセイにより比較した結果を示す。Kmuriの開始メチオニンに続くN末端側の僅か2〜20アミノ酸領域の欠損によりその分解活性は失われる。 SNAP融合Kmuri(及びその野生型コントロール)を発現させたCOS-7細胞によるパルスチェイス実験を示す。SNAP-Oregon Greenで一過性にラベルされたSNAP-Kmuriタンパク質は、細胞核(DAPI染色された青色)や細胞質に広く分布するが、60分以内にほとんど分解される。 SNAP融合Kmuri-H2B(及びそのコントロール)を発現させたCOS-7細胞によるパルスチェイス実験を示す。上記と同様に一過性にこれらのSNAP融合タンパク質をラベルし、そのターンオーバーを解析した。SNAP-Kmuri-H2Bタンパク質の局在のほとんどは核で観察されており、そのコントロール(SNAP-Cont-H2B)と変わりはない。この事実は、Kmuri融合によってヒストンH2B本来の局在を変化しないことも示している。一方でKmuri融合によって、120分以内に核で見られた蛍光シグナルのほとんどが分解消失している。 Kmuri融合EGFP(及びそのコントロール)を発現させたHeLa細胞によるシクロヘキシミドアッセイの結果を示す。未処理の細胞において、Kmuri-EGFPタンパク質は核や細胞質に広く分布しているが、シクロヘキシミド投与90分後には、ほとんどの蛍光シグナルが分解によって消失している。 図5と同様の処理をした細胞ライセートを用いてWestern Blot解析を行った結果を示す。Kmuri-EGFPタンパク質はシクロヘキシミド投与後1時間以内には、ほぼ半減している(上図)。下図は、Kmuri融合14-3-3(及びそのコントロール)を発現させたHeLa細胞による同様の解析結果を示す。3時間以内にKmuri-14-3-3-V5タンパク質はほとんど分解されていた。 SRE誘導性ルシフェラーゼレポーターベクター(SRE-Luc)とそのKmuri融合型ベクター(SRE-LucKmuri)の模式図を示す。 SRE-LucとSRE-LucKmuriをそれぞれ一過性に遺伝子導入したCOS-7細胞におけるSRE誘導性プロモーター活性を指標にしたルシフェラーゼアッセイの結果を示す。高血清とPMA刺激によって両レポーターによる発光計測値は10倍以上高まるが、刺激除去2時間後には、SRE-LucKmuriレポーターベクターにおいて有意な発光レベルの減少が観察された。 代表的な哺乳類Chk1(野生型)ORF内の1〜270付近のアミノ酸配列のアラインメント。 ラットChk1 wt(1-365)のアミノ酸配列及び塩基配列、 マウスChk1 wt(1-365)のアミノ酸配列及び塩基配列、 ウシChk1 wt(1-365)のアミノ酸配列及び塩基配列、 ヒトChk1 wt(1-365)のアミノ酸配列及び塩基配列、 サル(チンパンジー)Chk1 wt(1-365) のアミノ酸配列及び塩基配列
<生体内で分解性を有するタンパク質>
本発明は、チェックポイントキナーゼ1(Checkpoint kinase 1 (Chk1と略記))をコードするアミノ酸配列のキナーゼドメイン内に位置するアミノ酸の少なくとも1個を、野生型アミノ酸配列が有するアミノ酸以外のアミノ酸で置換したタンパク質であって、生体内で分解性を有するタンパク質に関する。以下、この本発明のタンパク質をKmuri(Kinase-dead Chk1 mutant-derived unstable region)と称することがある。
Chk1は、紫外線などの外来性要因によるDNA損傷やDNA複製障害の際のチェックポイント機構(DNAダメージチェックポイント)の中核を担うキナーゼの1つである。ヒトのChk1は上流キナーゼであるATRによって少なくともSer317及びSer345がリン酸化され、これらのリン酸化修飾はChk1のクロマチンからの解離や細胞周期をG2期で停止するためのチェックポイント機序に重要であると考えられている(非特許文献1〜3)。Chk1のチェックポイント機構における作用機序については、盛んに研究されており、DNAダメージが無い状態においても通常のS期の正確な進行に重要な役割を担っていることが知られている(非特許文献4)。Chk1は、遺伝情報(DNA)を有する種々の生物が有し、特に、多くの哺乳類において特定されている。例えば、ラット、マウス、ウシ、ヒト、サル等の哺乳類においては、Chk1のアミノ酸配列は特定されている。
ラット、マウス、ウシ、ヒト、サルのChk1のアミノ酸配列をそれぞれ、配列表の配列番号1、3、5、7、9に記載し、これらのアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号2、4、6、8、10に記載する。これらのアミノ酸配列及び塩基配列は図11〜15にも記載する。(図11:ラットChk1 wt(1-365)、図12:マウスChk1 wt(1-365)、図13:ウシChk1 wt(1-365)、図14:ヒトChk1 wt(1-365)、図15:サル(チンパンジー)Chk1 wt(1-365))本発明のタンパク質は、配列番号1〜5のいずれかのアミノ酸配列を有するChk1のキナーゼドメイン内に位置するアミノ酸の少なくとも一部を、配列番号1〜5のいずれかのアミノ酸と異なるアミノ酸で置換した変異型タンパク質である。Chk1をコードするアミノ酸配列のキナーゼドメイン内に位置するアミノ酸の少なくとも一部を、野生型のタンパク質のアミノ酸と異なるアミノ酸で置換することで生体内での分解性を有するタンパク質に変換することができる。
さらに図10に、配列番号1〜5に記載のラット、マウス、ウシ、ヒト、サルのChk1(野生型)ORF内のキナーゼドメインを含む1〜270付近のアミノ酸配列のアラインメントを示す(カッコ内の数字は元となったタンパク質配列データベースに登録されたアクセッション番号を示す)。この領域内では異種間においてもアミノ酸が高度に保存されており、これらのChk1の図10に記載されたキナーゼドメイン(アミノ酸配列1番〜270番又は1番〜269番の間)の全体的な構造が異なる種間でも保存されていることを示唆している。
本発明者らの検討の結果、配列番号1〜5に記載のChk1においては、これらのタンパク質が生体内で分解性を有するタンパク質になるのは、キナーゼ活性に重要な触媒部位の立体構造に影響するアミノ酸が、例えば、N末端から36番、38番、55番、130番、132番、135番、148番、170番のアミノ酸である。
図10に示すとおり、5つの配列においては、これら不活性化変異を誘導するアミノ酸は同一である(アミノ酸置換により分解が促進されることが明らかなアミノ酸はアンダーラインで示した)。従って、実施例で具体的に示したラット由来配列に限らず、ヒトやマウス等の他種由来の不活性化変異体においても同様に分解促進効果を有するものと考えられる。
また、ラット、マウス、ウシ、ヒト、サル以外のChk1(野生型)についても、同様の変異型タンパク質が生体内で分解性を有するタンパク質になる可能性は十分に予測されることであり、後述する方法により、生体内での分解性を付与するためにChk1(野生型)のキナーゼ活性部位中の変異すべきアミノ酸を探索することができる。
本発明は、前記本発明のタンパク質をコードするDNA、及びこのDNAを含むプラスミドに関する。前記本発明のタンパク質は、例えば、配列番号1〜5のいずれかのアミノ酸配列を有するChk1のキナーゼドメイン内に位置するアミノ酸の少なくとも一部を、配列番号1〜5のいずれかのアミノ酸と異なるアミノ酸で置換した変異型タンパク質であり、キナーゼドメイン内に位置するアミノ酸は、例えば、N末端から36番、38番、55番、130番、132番、135番、148番、170番のアミノ酸である。本発明のDNAは、前記本発明のタンパク質をコードするDNAであり、例えば、配列表の配列番号6〜10に挙げたものを例示できる。但し、これらの塩基配列を有するDNAに限定されないことは勿論である。本発明のDNAは、本発明のタンパク質をコードするDNAを全て包含する。
本発明のDNAの元になる野生型のChk1タンパク質をコードするDNAの取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号1から10に記載したアミノ酸配列及び塩基配列の情報や、既知のChk1タンパク質のアミノ酸配列及び塩基配列に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いてChk1タンパク質を有する哺乳類等の生体からcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより本発明のDNAの元になる野生型のChk1タンパク質をコードするDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、野生型のChk1タンパク質をコードするDNAを発現している細胞から常法により作製することができる。
野生型のChk1タンパク質をコードするDNAは、PCR法により取得することもでき、PCR法により増幅されたDNA断片を、大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。PCR法のためのプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じて行うことができる。
上記野生型のChk1タンパク質をコードするDNAからの本発明の変異型タンパク質をコードするDNAの調製は、既知の変異導入方法を用いて適宜実施できる。詳細は実施例に記載する。
本発明のプラスミドは、本発明の変異型タンパク質をコードするDNAを含む。本発明の変異型タンパク質をコードするDNAは、前述のとおりである。本発明のプラスミドは、標的タンパク質をコードするDNAをさらに含むことができる。標的タンパク質、特に制限はないが、例えば、蛍光タンパク質であることができる。蛍光タンパク質は、GFPに限らず、Sirius,EBFP,ECFP,mTurquoise,TagCFP,AmCyan,mTFP1,MidoriishiCyan,CFP,TurboGFP,AcGFP,TagGFP,Azami-Green,ZsGreen,EmGFP,EGFP,GFP2,HyPer,TagYFP,EYFP,Venus,YFP,PhiYFP,PhiYFP-m,TurboYFP,ZsYellow,mBanana,KusabiraOrange,mOrange,TurboRFP,DsRed-Express,DsRed2,TagRFP,DsRed-Monomer,AsRed2,mStrawberry,TurboFP602,mRFP1,JRed,KillerRed,mCherry,HcRed,KeimaRed,mRaspberry,mPlum,PS-CFP,Dendra2,Kaede,EosFP,KikumeGRなどを挙げることができる。
プラスミドを構成するベクターは発現ベクターであり、発現ベクターにおいて本発明の変異型タンパク質をコードするDNAは、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)や転写制御配列(エンハンサー配列等)が機能的に連結されることができる。プロモーターは宿主細胞において特定の遺伝子の転写活性の調節に働くDNA配列であり、宿主の種類や刺激に応じて適宜選択することができる。例えば、転写制御配列の一種であるエンハンサー配列の一例としては、SRE(Serum Response Element)のように、血清やホルボールエステルの刺激によって、その下流の遺伝子発現を亢進させる配列が知られている。
細菌細胞で作動可能なプロモーターとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha-amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモーター、またはファージ・ラムダのPR若しくはPLプロモーター、大腸菌のlac、trp若しくはtacプロモーターなどが挙げられる。但し、これらの制限される意図ではない。
哺乳動物細胞で作動可能なプロモーターの例としては、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、SV40プロモーター、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター、またはアデノウイルス2主後期プロモーターなどがある。昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモーター、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモーター、またはバキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモーター等がある。酵母宿主細胞で作動可能なプロモーターの例としては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、TPI1プロモーター、ADH2-4cプロモーターなどが挙げられる。糸状菌細胞で作動可能なプロモーターの例としては、ADH3プロモーターまたはtpiAプロモーターなどがある。但し、これらの制限される意図ではない。
本発明の変異型タンパク質をコードするDNA(S1)、標的タンパク質をコードするDNA(S2)、プロモーター(S3)などをそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。本発明においては、DNAの発現に必要なプロモーター(S3)配列は、発現させるべき配列の上流に位置するが、S1及びS2の連結の順次や場所は、発現させる融合タンパク質が、標的タンパク質の分解性を示す限りにおいて、特に制限はない。
<生体内での分解性が促進された融合タンパク質の生成方法>
本発明は、標的タンパク質をコードするDNAに、本発明のタンパク質をコードするDNAを連結した連結DNAを生体内で発現させて、タンパク質及び標的タンパク質の融合タンパク質を生成させることを含む方法を包含する。前記融合タンパク質は、発現生体内での分解性が、本発明のタンパク質と融合していない標的タンパク質に比べて促進されたものである。融合タンパク質の発現生体内での分解性は、例えば、COS-7細胞などの細胞において本発明のタンパク質をコードするDNA(連結DNA)を発現させて、得られるタンパク質の分子量を指標として決定される。融合タンパク質が、発現生体内での分解性を有すれば、発現させるタンパク質は、野生型の標的タンパク質より分子量は小さくなる。タンパク質の分子量は、例えば、Western Blotにより解析することができる。
標的タンパク質は、任意の転写プロモーター/エンハンサー配列の下流に挿入された発光検出用のレポータータンパク質又は蛍光タンパク質の連結体であることもできる。転写プロモーター及び蛍光タンパク質の連結体は、前述のとおりである。
発光検出用のタンパク質は、例えば、ルシフェラーゼであることができる。ルシフェラーゼ、そのアミノ酸配列、及びルシフェラーゼをコードする塩基配列は、公知の物を利用できる。
本発明の方法は、プロモーター・エンハンサー解析に用いることができる。
本発明においてプロモーター・エンハンサー解析は、細胞を用いた解析のみならず、遺伝子改変動物を用いた in vivo でのプロモーター・エンハンサー解析も包含する。
プロモーター・エンハンサー解析は、例えば、Tet on/offシステムを用いる場合、使用するプラスミドベクターには、Kmuriを融合させた標的タンパク質をコードする遺伝子の上流に、TRE+最小プロモーター配列を挿入する。その上で、その転写の誘導物質として、テトラサイクリンやドキシサイクリンなどの化合物を用いる。例えば、Tet on発現誘導システムでは、ドキシサイクリンを培地へ直接投与することで、これが細胞膜を透過し、転写制御因子であるrtTAへ結合することでそのターゲットであるTRE配列へ結合し、その配列の下流に挿入されたKmuri融合標的タンパク質の遺伝子発現を誘導することができる。
本発明のDNAまたは組み換えベクターを導入して、形質転換される宿主細胞は、本発明の遺伝子を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。
細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌又は大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。
哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevis1ae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞である。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua1;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に記載)。
バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等を挙げることができる。
上記の形質転換体は、導入されたDNA連結体の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
Kmuri cDNAの作製とそれを挿入したベクターのクローニング方法の概要
各種組換えタンパク質発現ベクター内へ挿入するためのKmuri(Kinase-dead Chk1 mutant-derived unstable region)のcDNAを得るには、哺乳類(ヒト、マウス、ラット等)由来で、そのOpen Reading Frame (ORF) が既に同定されたCheckpoint kinase 1 (Chk1) 発現ベクターをPCRの鋳型として利用するのが最も容易である。具体的には、野生型Chk1の塩基配列情報を元に作製された特異的なプライマーを使用して、そのORF内の1〜810塩基(Chk1Wt1-270: アミノ酸で1〜270残基)に相当する領域をPCRにて増幅し、得られたPCR産物を精製後、哺乳類発現用ベクターへ挿入してそのクローンを精製する。その後、さらに不活性化変異を伴うアミノ酸に相当する塩基に置換するための特異的なプライマーを使用して、2回目のPCRを行い、Chk1Wt1-270の不活性型変異体(Kmuri)を得る。
不活性化変異とKmuri配列について
Chk1が不活性型となるような変異を誘導するアミノ酸としては、その触媒部位を構成するアミノ酸が主要な候補となる。既にヒトChk1のキナーゼドメインの結晶構造が明らかにされており、その触媒部位付近に存在すると考えられる36番目のアラニン(A36)、38番目のリジン(K38)、130番目のアスパラギン酸(D130)をターゲットにした変異体は、Chk1の構成的不活性化変異体として知られている。
Chk1の不活性化変異体の特徴の一つは、自己リン酸化修飾の消失である。例えば、全長496アミノ酸のうち、N末端側365残基だけを残し、残りのC末端側を欠損させた野生型Chk1(Chk1Wt1-365)は構成的に活性型となり、296番目のセリンが自己リン酸化される。そのため、COS-7細胞やHeLa細胞等で発現させたChk1Wt1-365をWestern Blot解析により検出すると、その自己リン酸化修飾を象徴するように、想定される分子量(約41kDa)の位置よりも上方に大きくバンドがシフトし、下方の僅かな脱リン酸化型とともに、2本のバンドとして観察される(図1上図)。一方、A36FやK38M、D130Aといった不活性化変異体を発現させた場合には同様のWestern Blot解析において、このようなバンドシフトは完全に消失する(図1、図2)。また、不活性化変異を2箇所に導入しても(A36F/K38M)、その分解活性が更に亢進するような変化は観察されず、これら単一の不活性化変異体と同様の分解活性を示す(図1下図)。さらに、バンドシフトが消失しない変異体(K54A)では細胞内での分解促進は観察されない(図2)。
従って、Chk1Wt1-365を鋳型として、不活性化候補となるアミノ酸を置換した各種変異体を作製し、それらを培養細胞で発現させた後にWestern Blot解析を行い、各変異体タンパク質において野生型に見られるバンドシフトが消失するかどうかを評価すれば、それらのアミノ酸変異が不活性型となりうるのかを判断する有力な指標になる。実際にこれを指標にして我々は不活性変異体として新たに、触媒ループ(130-135アミノ酸)付近に存在する132番目のリジンをアルギニンに置換させた変異体(K132R)、あるいは135番目のアスパラギンをアラニンに置換した変異体(N135A)、さらには、活性ループに存在する保存されたAsp-Phe-Glyモチーフ内の148番目のアスパラギン酸をアラニンへ置換した変異体(D148A)を同定した。これらの変異体はいずれも、Western Blot解析において自己リン酸化バンドが消失するとともに、細胞内での分解が促進されていた(図2下図)。以上の実験結果から、このようなChk1Wt1-365で観察されるバンドシフトを消失させるような変異は、全てそのタンパクレベルでの分解が促進されており、Kmuriへ置換できるアミノ酸ターゲットとして定義できる。
さらに、Chk1Wt1-365の不活性変異体で観察される分解促進活性は、そのC末端側を260アミノ酸まで欠損させると完全に消失し、その細胞内でのタンパクレベルは野生型と同様に安定化する(図3-1)。また、そのN末端側を僅か2〜20アミノ酸領域欠損させるだけでも、それを融合させたEGFP-V5タンパク質を安定化させる(図3-2)。従って、不活性変異体による分解促進活性を充分に発揮するためには1〜270アミノ酸領域が必要であると考えられる。
Kmuri融合ベクター作製例(pSNAP-Kmuri)
市販のChk1発現ベクターを利用せずにKmuri cDNAを得る場合は、実験動物から採取した組織、培養細胞等からTotal RNAを精製した後、cDNAを合成し、これを鋳型としてPCRを行って、Chk1 cDNAを増幅させる実験ステップが必要となる。この場合、サンプル中の少ないコピー数のChk1 cDNAからChk1Wt1-270のPCR産物を確実に得るために、2段階のPCRを行うことが望ましい。具体的には、最初のPCRでは1〜810塩基よりも長い領域を増幅させるようなプライマーを使用し(例えば1〜1095塩基までの領域:Chk1Wt1-365)、次にこのPCR産物を鋳型として2回目のPCRを行って、Chk1Wt1-270の領域を得ることを推奨する。
例として、ラット心筋由来の培養細胞H9c2からのChk1Wt1-270の増幅方法を以下に説明する。
DMEM (5%血清、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン含む) 培地にて培養した約5×106個のH9c2細胞から、RNeasy(R) Plus Mini(Qiagen)キットを使いTotal RNAを精製する。得られたTotal RNAのうち2μgをOmniscript(R) Reverse Transcriptase Kit (Qiagen) 用いてcDNAを合成する。次にこのcDNAを鋳型として以下に示すprimerペアにてPCRを行い、まずはChk1Wt1-365を増幅させる。
Chk1Wt1-365増幅用プライマー
Forward primer(配列番号11): 5'-ATGGCAGTGCCTTTTGTGGAAGACTGGGAT-3'
Reverse primer(配列番号12): 5'-TCACGTAACAGGGAACCAAACCTTCTGGCT-3'
反応液組成
cDNA 2μl
5×PrimeSTAR GXL Buffer 10μl
dNTP Mixture(2.5 mM each)4μl (200μM each)
Forward primer 10 pmol
Reverse primer 10 pmol
PrimeSTAR GXL DNA Polymerase 1μl (1.25 U/50μl)
滅菌蒸留水でTotal 50μl
反応条件
98℃ 10 sec.
55℃ 15 sec.
68℃ 1.5 min.
(上記3ステップを30 cycles)
得られたPCR産物をGenEluteTM PCR Clean-Up kit (Sigma) にて精製した後、Chk1Wt1-270を増幅させるために、2回目のPCRを行う。この時、使用する各プライマーの5'末端には、挿入したい発現ベクターの末端15塩基の配列を予め付加しておくと、得られたPCR産物を線状化したベクターへ挿入する時に、In-Fusion(R) HD Cloning kitを利用した簡便なディレクショナルクローニングが可能となる。例としてChk1Wt1-270をpSNAP-tag(m)ベクター配列の1496塩基目と1501塩基目の間に挿入するためのChk1Wt1-270増幅用プライマーと、挿入場所でpSNAP-tag(m)を線状化するためのプライマーをそれぞれ以下に示す。
Chk1Wt1-270増幅用プライマー
Forward primer(配列番号13) : 5'-ATAGGCGCGCCAGGAATGGCAGTGCCTTTTGTGGAAGAC-3'
Reverse primer (配列番号14): 5'-GGCCGCCTCACTCGACTAGTTAAGTGGTTTGTTATACCATCTA-3'
ベクター線状化用プライマー
Forward primer (配列番号15): 5'-TCGAGTGAGGCGGCCGCATAGATAA-3'
Reverse primer (配列番号16): 5'-TCCTGGCGCGCCTATACCTGCAGGA-3'
上記のChk1Wt1-270増幅用プライマーペアを使い、先に精製したChk1Wt1-365のPCR産物を鋳型として、以下のようにPCRを行い、pSNAP-tag(m)ベクター挿入用のChk1Wt1-270 PCR産物を得る。
反応液組成(Takara Bio社製PrimeSTAR Maxを使用した例)
Chk1Wt1-365 PCR産物 1μl
2×PrimeSTAR Max 25μl
Forward primer 10 pmol
Reverse primer 10 pmol
滅菌蒸留水でTotal 50μl
反応条件
98℃ 10 sec.
55℃ 5 sec.
72℃ 10 sec.
(上記3ステップを17 cycles)
得られたPCR産物をGenEluteTM PCR Clean-Up kit (Sigma) にて精製し、これを挿入用Chk1Wt1-270とする。次に、これの組み込み先であるpSNAP-tag(m)ベクターを線状化するためのPCR条件を以下に示す。
反応液組成(Toyobo社製KOD-Plus-Mutagenesis Kitを使用した例)
pSNAP-tag(m) 1μl(1〜10 ng程度で充分)
10×Buffer for iPCR 5μl
2mM dNTP Mixture 5μl
Forward primer 10 pmol
Reverse primer 10 pmol
KOD-Plus DNA Polymerase 1μl
滅菌蒸留水でTotal 50μl
反応条件
94℃ 2 min. (1 cycle)
以下3ステップを30 cycles
98℃ 10 sec.
60℃ 30 sec.
68℃ 2.5 min.
PCR反応後、チューブ内へ直接、制限酵素Dpn Iを加えて(トータル20U)、37℃で1時間反応させる。この処理によって、線状化されていない鋳型のpSNAP-tag(m)を分解させる。その後、GenEluteTM PCR Clean-Up kit (Sigma) にて精製して挿入用ベクターとする。精製されたChk1Wt1-270の線状化pSNAP-tag(m)への挿入は、以下に示すようにIn-Fusion(R) HD Cloning kit を使用する。
反応液組成(Takara Bio社製 In-Fusion(R) HD Cloning kitを使用した例)
5×In-Fusion HD 2μl
挿入用Chk1Wt1-270 PCR産物 3μl
線状化pSNAP-tag(m) 2μl
滅菌蒸留水でTotal 10μl
反応条件
50℃ 15 min.
反応後のサンプルの1μlを使用して、大腸菌のコンピテントセル(ニッポンジーン社製ECOSTM Competent E.coli, DH5α等)へ形質転換し、50μg/mlアンピシリン含有LB寒天培地プレート上でコロニーを形成させる。その後シングルコロニーを拾い、50μg/mlアンピシリン含有LB液体培地により一晩培養し、翌日増殖した大腸菌からプラスミドDNAを精製する。精製されたプラスミドはシーケンス解析用プライマー(SNAP/CLIP Forward Primer(配列番号17): 5'-GATCCCCTGCCACCGGGTGGTG-3'; SNAP/CLIP ST1 Reverse Primer(配列番号18): 5'-AGGGAGTACTCACCCCAACA-3')で挿入されたChk1Wt1-270 cDNA配列にエラーが無いかを確認した後、SNAP-tag融合Chk1Wt1-270(SNAP-Control)プラスミドとした。
このSNAP-Controlと、SNAP-tag融合Kmuri(SNAP-Kmuri)との違いは、アミノ酸レベルで僅かに1残基であるので、SNAP-Controlプラスミドは、SNAP-Kmuriの分解促進効果を評価するためのコントロールベクターとして非常に有効である。
野生型から不活性型への部位特異的な変異導入法
先に述べたように、Western blot解析において、Chk1Wt1-365タンパク質のバンドシフトを消失させるようなアミノ酸変異が、その安定な野生型から分解促進活性を持つKmuriとして変換可能なアミノ酸ターゲットとなる。そのようなバンドシフトを消失させるアミノ酸置換の例として、A36F、K38M、D130A、K132R、N135A、D148Aがある。以下に、これら部位特異的変異を誘導するために使用するプライマーと、上記のSNAP-Controlを鋳型としてPCR法を応用した部位特異的な不活性型変異の導入法を示す。また、これらのネガティブコントロールとして、活性に影響しない変異体(K54A)作製用プライマーも示した。
注:以下に示した配列は全て、ラット由来の野生型Chk1を不活性変異体にする時に使用可能なプライマーである。

A36F変異体作製用プライマーペア(上段がForward Primer、下段がReverse Primerを示す)
A36FF(配列番号19): 5'-GTTTTTGTGAAAATTGTAGACATGAAGC-3'
A36FR(配列番号20): 5'-AGCTTCTTCAGTTATTCTATTCACA-3'

K38M変異体作製用プライマーペア
K38MF(配列番号21): 5'-ATGATTGTAGACATGAAGCGGGCCA-3'
K38MR(配列番号22): 5'-CACTGCAACAGCTTCTTCAGTTATTC-3'

D130A変異体作製用プライマーペア
D130AF(配列番号23): 5'-AGGGCAATTAAACCAGAAAACCTCCTCTTG-3'
D130AR(配列番号24): 5'-GTGAGTTATTCCAATGCCATGAAGATAAAC-3'

K132R変異体作製用プライマーペア
K132RF(配列番号25): 5'-AGGGATATTAGGCCAGAAAACCTCCTCTTG-3'
D130AR(配列番号26): 5'-GTGAGTTATTCCAATGCCATGAAGATAAAC-3'

N135A変異体作製用プライマーペア
N135AF(配列番号27): 5'-AGGGATATTAAACCAGAAGCTCTCCTC-3'
D130AR(配列番号28): 5'-GTGAGTTATTCCAATGCCATGAAGATAAAC-3'

D148A変異体作製用プライマーペア
D148AF(配列番号29): 5'-GCATTTGGCTTGGCAACAGTGTTTCGGCA-3'
D148AR(配列番号30): 5'-AGAGATTTTGAGATTATCCCTTTCAT-3'

A36F/K38M変異体作製用プライマーペア
A36F/K38MF(配列番号31): 5'-GTTTTTGTGATGATTGTAGACATGAAGCGGGCC-3'
A36FR(配列番号32): 5'-AGCTTCTTCAGTTATTCTATTCACA-3'

K54A変異体作製用プライマー(ネガティブコントロール)
K54AF(配列番号33): 5'-AAGGCAGAGATCTGCATCAATAAGATGTTAAAT-3'
K54AR(配列番号34): 5'-AATATTTTCTGGGCAGTCTATGGCCCGC-3'
反応液組成 (Toyobo社製KOD-Plus-Mutagenesis Kitを使用した例)
pSNAP-Control 1μl(1〜10 ng程度で充分)
10×Buffer for iPCR 5μl
2mM dNTP Mixture 5μl
Forward primer 10 pmol
Reverse primer 10 pmol
KOD-Plus DNA Polymerase 1μl
滅菌蒸留水でTotal 50μl
反応条件
94℃ 2 min. (1 cycle)
以下3ステップを15 cycles
98℃ 10 sec.
60℃ 30 sec.
68℃ 7 min.
反応液組成(Takara Bio社製PrimeSTAR Maxを使用した例)
pSNAP-Control 1μl(1〜10 ng程度で充分)
2×PrimeSTAR Max 25μl
Forward primer 10 pmol
Reverse primer 10 pmol
滅菌蒸留水でTotal 50μl
反応条件
以下3ステップを17 cycles
98℃ 10 sec.
55℃ 5 sec.
72℃ 35 sec.
Toyobo社製KOD-Plus-Mutagenesis Kitを使用した場合には、PCR反応後のチューブへ直接、制限酵素Dpn Iを加えて(トータル20U)、37℃で1時間反応させて、鋳型として使用したpSNAP-Controlを分解させることが可能である。一方、Takara Bio社製PrimeSTAR Maxを使用した場合、PCR反応後にGenEluteTM PCR Clean-Up kit (Sigma) にて精製し、Dpn I処理を行う。
Dpn I反応後のサンプルは、その1μlを使用して大腸菌コンピテントセル(ニッポンジーン社製ECOSTM Competent E.coli, DH5α等)へ形質転換し、50μg/mlアンピシリン含有LB寒天培地プレート上でコロニーを形成させる。その後シングルコロニーを拾い、50μg/mlアンピシリン含有LB液体培地により一晩培養し、翌日増殖した大腸菌内のプラスミドDNAを適当なキット(Macherey-Nagel社製NucleoBond Xtra kit等)を使用して精製する。精製されたプラスミドは上述のpSNAP-tag(m)用のシーケンス解析用プライマー(SNAP/CLIP Forward Primer、SNAP/CLIP ST1 Reverse Primer)をそれぞれ使用してベクター内部のDNA配列を解析し、挿入されたDNA配列にエラーが無いかを確認する。このようにしてSNAP-Controlから不活性型変異を導入されたベクターを総称してSNAP-tag融合Kmuri(SNAP-Kmuri)とした。
他の発現ベクターへのKmuri配列の挿入方法
精製済みのSNAP-Kmuri(またはSNAP-Control)プラスミドベクターを鋳型として、そのKmuri配列(あるいはコントロールとしてその野生型配列)をその他の任意の組換えタンパク質の発現ベクターへ挿入するには、In-Fusion(R) HD Cloning kitを利用することで容易にディレクショナルクローニングすることが可能である。具体的には上述のSNAP-Control作製で行ったように、任意の発現ベクター内の挿入したい塩基配列の位置で線状化するようにプライマーを設計し、その発現ベクターを鋳型としてPCRにて増幅(線状化)・精製する。同様にして、既にクローニング済みのSNAP-Kmuriを鋳型として挿入したい発現ベクターの末端配列15塩基がKmuri配列に付加するようなプライマーを設計し、PCRにて増幅・精製する。これら2つのPCR産物を混合し、In-Fusion(R) HD酵素の反応によって、15塩基の相同配列部分を融合させることでKmuri配列が挿入された発現ベクターが作製できる。
以下に例として、EGFP発現ベクターやLuciferaseレポーターベクター(pGL3)、SNAP-tag融合ヒストンH2B発現ベクター、14-3-3発現ベクターへ挿入するために必要なプライマーセットを示す。個々のPCRは、Takara Bio社製PrimeSTAR MaxやToyobo社製KOD-Plus-Mutagenesis Kitのいずれを使用しても良好な増幅産物が得られる。反応後のPCR産物はGenEluteTM PCR Clean-Up kit (Sigma) 等を使用して精製し、混入している鋳型DNAをDpn Iで酵素消化してから、In-Fusion(R) HD酵素反応を行う。反応後のサンプルは上述と同様に、大腸菌への形質転換、プラスミド精製し、Kmuri融合組換えタンパク質発現ベクターとする。
Kmuri融合EGFP(Kmuri-EGFP)作製用プライマー
Kmuri増幅用(鋳型としてSNAP-Kmuriを使用)
5'-GCCCCCTTCACCATGGCAGTGCCTTTTGTGGAAGACT-3'(配列番号35)
5'-CTCGCCCTTGCTCACGTTAAGTGGTTTGTTATACCATCTA-3'(配列番号36)
EGFPベクター線状化用(EGFP-V5-6×His-tagが挿入済みのpT-Rex-DEST30ベクター)
5'-GTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTC-3'(配列番号37)
5'-CATGGTGAAGGGGGCGGCCGCGGA-3'(配列番号38)
Kmuri融合Luciferase(pGL3-Kmuri)作製用プライマー
Kmuri増幅用(鋳型としてSNAP-Kmuriを使用)
5'-GGAAAGATCGCCGTGATGGCAGTGCCTTTTGTGGAAGACT-3'(配列番号39)
5'-CCGACTCTAGAATTAGTTAAGTGGTTTGTTATACCATCTA-3'(配列番号40)
pGL3ベクター線状化用(鋳型としてPromega社製pGL3-Basic vectorを使用)
5'-TAATTCTAGAGTCGGGGCGGCCGGCCG-3'(配列番号41)
5'-CACGGCGATCTTTCCGCCCTTCTTGGC-3'(配列番号42)
SNAP-Kmuri融合ヒストンH2B(SNAP-Kmuri-H2B)作製用プライマー
ヒストンH2B増幅用(鋳型としてNEB社製pCLIP-H2Bを使用する場合)
5'-AACAAACCACTTAACATGCCAGAGCCAGCGAAGTCTGCT-3'(配列番号43)
5'-CGCCTCACTCGATCACTTAGCGCTGGTGTACTTGGTGAT-3'(配列番号44)
SNAP-Kmuriベクター線状化用(鋳型としてSNAP-Kmuriを使用)
5'-TGATCGAGTGAGGCGGCCGCA-3'(配列番号45)
5'-GTTAAGTGGTTTGTTATACCATCT-3'(配列番号46)
Kmuri融合14-3-3-V5(Kmuri-14-3-3)作製用プライマー
Kmuri増幅用(鋳型としてSNAP-Kmuriを使用)
5'-GTACCCTTCACCATGGCAGTGCCTTTTGTGGAAGA-3'(配列番号47)
5'-CAGCTCGGTCTTCTCGTTAAGTGGTTTGTTATACCATCTA-3'(配列番号48)
14-3-3発現ベクター線状化用(鋳型として14-3-3θを挿入済みのInvitrogen社製pcDNA3.1ベクターを使用)
5'-GAGAAGACCGAGCTGATCCAGAA-3'(配列番号49)
5'-CATGGTGAAGGGTACTGGATCCGAG-3'(配列番号50)
細胞内で発現させた各種Kmuri融合タンパク質のターンオーバー解析
以下に、Kmuri融合タンパク質の細胞内における分解促進効果を解析するために行った2種類の実験例を示す。一つは、Kmuriと融合させたSNAPタグを利用して、SNAP特異的な細胞膜透過性の基質(SNAP-CellTM Oregon Green(R))による蛍光ラベリング法によるパルスチェイス実験である。このSNAPタグ法の利点は、細胞内で発現させたSNAP融合Kmuriタンパク質を一過性に、細胞を生きたまま蛍光ラベルすることが出来る点である。蛍光基質を培地から除去した後に細胞内で合成されたSNAP融合Kmuriタンパク質は蛍光ラベル化されないので、経時的にその蛍光レベルを観察することで、そのタンパク質のターンオーバーを解析することが出来る。
二つ目の実験方法は、タンパク合成阻害剤として知られるシクロヘキシミドを細胞へ投与することで、新たなKmuri融合タンパク質の合成を抑制し、既に細胞内に存在するこのタンパク質のターンオーバーを解析する方法である。この場合、Kmuri融合タンパク質の検出には、そのタンパク質に予め付加したタグ(V5やFLAG、6×His-tag等)に特異的な抗体を用いた細胞免疫染色や、Western Blot解析を行うことになるが、Kmuri融合EGFPを検出する場合は、EGFPによる蛍光を蛍光顕微鏡下で観察することで、そのターンオーバーを経時的に観察できる。
(1)SNAP-KmuriとSNAP-Kmuri-H2Bタンパク質のパルスチェイス実験
4-well チャンバースライド(コラーゲンtypeIコート済み: Iwaki社製スライドディッシュ等)上でCOS-7細胞を約70%の細胞密度で培養する。培養条件は10% fetal bovine serum(FBS)と100 U/ml penicillin、100μg/ml streptomycin含有DMEM培地 (Gibco BRL 社製GlutaMaxTM medium等) を各wellに500μl入れ、5%のCO2濃度で37℃に保ったインキュベーター内で培養する。
これらの細胞へ、リポフェクション法により各種発現プラスミドを導入する。具体的には、25μlのOpti-Mem (Gibco BRL 社製) の入った1.5-mlチューブへ導入したいプラスミドを500 ngとLipofectamin(R)Plusを0.5μl入れて混合する。さらに別の1.5-mlチューブに25μlのOpti-MemとLipofectamin(R)LTXを2μl入れて混合する。この2本のチューブ内の溶液を混合し1本にして5分間静置した後に各wellへ滴下する。
24時間培養後、各wellを5μMのSNAP-CellTM Oregon Green(R)を含むDMEM(10% FBS含有)培地に交換して細胞内で発現しているSNAP融合タンパク質をin vivoラベリングする。30分後、通常のDMEM(10% FBS含有)培地で3回洗浄し、さらに30分間培養する(この間5μMのHoechst 33342を投与し細胞核の蛍光染色を行う)。
その後、細胞をPBSで洗浄して直ぐにメタノールで5分間の固定処理を行うか(この場合、ラベル後からの培養経過時間は30分になる)、もう一度10%FBS含有DMEMで洗浄し、更に30〜90分間培養を続けた後に固定する(ラベル後の経過時間は60〜120分になる)。固定した細胞は蛍光顕微鏡下で、SNAPタグ融合タンパク質をEx470/40 Em535/50フィルターを使用し、Hoechst 33342による核の蛍光をEx360/40 Em460/50フィルターを使用することでそれぞれ検出できる。これらの細胞イメージングによる解析結果を図4(SNAP-Kmuri)、図5(SNAP-Kmuri-H2B)に示す。
(2)シクロヘキシミド投与によるKmuri-EGFPとKmuri-14-3-3のターンオーバー解析
4-well チャンバースライド(コラーゲンtypeIコート済み: Iwaki社製スライドディッシュ等)あるいは、6-wellディッシュ上でHeLa細胞を約70%の細胞密度で培養する。培養条件は10% fetal bovine serum(FBS)と100 U/ml penicillin、100μg/ml streptomycin含有α-MEM培地 (Gibco BRL 社製GlutaMaxTM medium等) を各wellに500μl(4-wellスライド)あるいは2 ml(6-well ディッシュ)入れて、5%のCO2濃度で 37℃に保ったインキュベーター内で培養する。
プラスミドの導入方法は上述と同様に、それぞれのプラスミドDNAをOpti-Memで希釈したLipofectamin(R) PlusとLTX試薬を混合してから各wellへ滴下する。24時間後に終濃度20μg/mlでシクロヘキシミドを投与し、細胞内での新たなタンパク合成を阻害する。
Kmuri-EGFPの蛍光観察の場合、投与後30分から1時間の間隔で4-wellチャンバースライドで培養した細胞を順序良くメタノール固定し、スライドとカバーガラスの間に核染色用のDAPIを含んだProlong gold anti-fade reagent(Invitrogen社)を滴下させてマウントする。EGFPとDAPIの蛍光は、Ex470/40 Em535/50とEx360/40 Em460/50フィルターでそれぞれ検出する(図6)。
6-wellディッシュで培養した細胞は、それぞれのシクロヘキシミド投与後に、各タイムコースで細胞ライセートを回収した後、Western blot解析を行う(図7)。この時、Kmuri-EGFPやKmuri-14-3-3タンパク質の検出には、そのC-末端側に予め付加してあるV5-タグに特異的な抗体を用いる。また、内部コントロールとして、α-チューブリン抗体で、その内在性タンパク質のレベルを比較することで各細胞ライセートにおいて、総タンパク量に変動がないことを確認する。
Kmuri融合Luciferaseベクターによるプロモーター解析
特定の遺伝子の発現調節機構を解析する場合において、そのプロモーター/エンハンサーの下流にルシフェラーゼをコードする配列を挿入して、それをセンサー蛋白質として利用し、その発光量をモニターすることでプロモーター活性の強弱を検出することが広く行われている。しかし、細胞内で発現させたルシフェラーゼの半減期は2時間程度あると言われているので、プロモーター活性が低下し始めるタイミングを知りたい時には、数時間のタイムラグが生じてしまう。従って、従来のプロモーターアッセイ法では、プロモーター活性が上昇するタイミングを検出することは出来ても、それが不活性化して基底状態に戻るタイミングを検出することは困難である。
上述の問題を解決するために、Kmuriをルシフェラーゼ蛋白質へ融合することで、細胞内でのターンオーバーを速めて、プロモーターの不活性化状態に迅速に反応できるように改変できるのではないかと考えた。そこで、一般的にプロモーター解析で広く利用されているFireflyルシフェラーゼ遺伝子ベクター(pGL3 Luciferase Reporter)の下流へKmuri遺伝子を融合した。さらに、ルシフェラーゼ遺伝子の上流へプロモーター配列として、Serum Response Element (SRE)とminimal promoter (minP)を挿入した(図8)。
このSRE誘導性ルシフェラーゼレポーターベクターを導入した細胞は、血清やホルボールエステルで一過性に刺激するとRas-MAPK 等のシグナル伝達経路を介して下流の転写因子である血清応答因子を活性化し、これが最終的に核内のDNAターゲットであるSRE内のCArG boxに結合しこのプロモーターを活性化させる。このSREプロモーターの活性化により、Kmuri融合ルシフェラーゼ遺伝子の発現が上昇し、細胞内にKmuri融合ルシフェラーゼタンパク質が蓄積する。
このタンパク質の発現レベルは、細胞にFireflyルシフェラーゼの基質を投与することで、その発光レベルをルミノメーターで測定することにより、SREプロモーターの活性レベルを定量できる。なお、個々の細胞サンプル間におけるレポーター遺伝子の導入効率の違いを補正するための内部補正用ベクターとして、細胞内で恒常的に活性化しているHSVチミジンキナーゼプロモーターを挿入したRenilla ルシフェラーゼ (phRL-TK) ベクターを同時に遺伝子導入した。個々の細胞サンプルのFireflyルシフェラーゼの発光測定値(RLU)は、それらのRenillaルシフェラーゼのRLUで割ることで補正した。
以下に、SRE誘導性Kmuri融合ルシフェラーゼレポーターベクター(SRE-LucKmuri)の作製法とそのレポーターアッセイを行った実験例を示す。
SRE-LucKmuriベクターの作製
上述のKmuri融合Luciferaseベクター(pGL3-Kmuri)はプロモーターレスなので、そのLuciferase遺伝子の転写開始点上流へSRE配列と最小プロモーター配列(minP)を挿入する。これらの挿入した配列は以下の通り。
(SRE+minP配列)(配列番号51)
5'-AGGATGTCCATATTAGGACATCTAGGATGTCCATATTAGGACATCTAGGATGTCCATATTAGGACATCTAGGATGTCCATATTAGGACATCTAGGATGTCCATATTAGGACATCTAGATCTGGCCTCGGCGGCCAAGCTTAGACACTAGAGGGTATATAATGGAAGCTCGACTTCCAG-3'
この配列は、pGL4.33[luc2P/SRE/Hygro]ベクターのプロモーターを参考にしており、SREプロモーターの感度を上げるために23 merのSRE配列(配列番号52)(AGGATGTCCATATTAGGACATCT)を5つタンデムに並べてある。
SRE+minP作製用プライマー
PCRの鋳型としてpGL4.33[luc2P/SRE/Hygro] ベクターを使用するか、上記の二本鎖DNA配列を人工合成したものを鋳型として用いても良い。
Forward primer(配列番号53): 5'-TACGCGTGCTAGCCCAGGATGTCCATATTAGGACATCTAG-3'
Reverse primer(配列番号54): 5'-GCAGATCTCGAGCCCCTGGAAGTCGAGCTTCCATTATATA-3'
反応液組成(Takara Bio社製PrimeSTAR Maxを使用した例)
pGL4.33[luc2P/SRE/Hygro] 1μl(1〜10 ng程度で充分)
2×PrimeSTAR Max 25μl
Forward primer 10 pmol
Reverse prime 10 pmol
滅菌蒸留水でTotal 50μl
反応条件
以下3ステップを17 cycles
98℃ 10 sec.
55℃ 5 sec.
72℃ 5 sec.
PCR反応後にGenEluteTM PCR Clean-Up kit (Sigma) にて精製し、Dpn I処理を行う。pGL3-Kmuriへの挿入は、以下に示すようにIn-Fusion(R) HD Cloning kit を使用する。
反応液組成(Takara Bio社製 In-FusionR HD Cloning kitを使用した例)
5×In-Fusion HD 2μl
挿入用SRE+minP PCR産物 1μl
制限酵素SmaIで消化済みの線状化したpGL3-Kmuri 3μl
滅菌蒸留水でTotal 10μl
注)Kmuriを挿入しないコントロール用のSREレポーターベクター(pSRE-Luc)作製には、pGL3-Kmuriの代わりにSmaIで消化済みのpGL3-basicを反応に使用する。
反応条件
50℃ 15 min.
反応後のサンプルの1μlを使用して、大腸菌のコンピテントセル(ニッポンジーン社製ECOSTM Competent E.coli, DH5α等)へ形質転換し、50μg/mlアンピシリン含有LB寒天培地プレート上でコロニーを形成させる。その後シングルコロニーを拾い、50μg/mlアンピシリン含有LB液体培地により一晩培養し、翌日増殖した大腸菌からプラスミドDNAを精製する。
Kmuri融合ルシフェラーゼベクターによるプロモーターアッセイ
上述のSRE-LucもしくはSRE-LucKmuriレポーターベクターをphRL-TKベクターとともに96ウェルプレートに前日まいたCOS-7細胞(70〜80% confluency)へLipofectamin(R)LTX&Plus試薬を用いて遺伝子導入し、6時間後に0.5%血清培地に置き換えた。16時間後に、20%の血清とPMA (20ng/ml) を含む培地へ置き換えてSREプロモーターを活性化すると、通常のルシフェラーゼベクター(SRE-Luc)に匹敵するレベルでKmuri融合ルシフェラーゼベクター(SRE-LucKmuri)において発光シグナルの誘導が検出された(図9)。さらに、その後再び0.5%血清培地へ戻しSREプロモーター活性を低下させると、2時間後からSRE-LucKmuri導入細胞では発光の減少が観察され、4時間後では約40%まで低下した。一方でSRE-Lucの血清フリーに伴う、発光の減少はそれに比して緩やかであった。
以上の結果から、ルシフェラーゼにKmuriを融合させることで、細胞内でのルシフェラーゼタンパク質のターンオーバーを促進し、その遺伝子上流につなげたプロモーター活性のON-OFFに対して迅速に反応できるようにレポーターベクターを改善できると考えられる。
本発明は、生体内で分解性を有するタンパク質に関連する分野に有用である。
配列番号1及び:2ラットChk1 wt(1-365)のアミノ酸配列及び塩基配列、
配列番号3及び4:マウスChk1 wt(1-365) のアミノ酸配列及び塩基配列、
配列番号5及び6:ウシChk1 wt(1-365) のアミノ酸配列及び塩基配列、
配列番号7及び8:ヒトChk1 wt(1-365) のアミノ酸配列及び塩基配列、
配列番号9及び10:サル(チンパンジー)Chk1 wt(1-365) のアミノ酸配列及び塩基配列
配列番号11〜50: プライマー配列
配列番号51:SRE+minP配列
配列番号52:SRE配列
配列番号53〜54: プライマー配列

Claims (15)

  1. チェックポイントキナーゼ1(Checkpoint kinase 1 (以下Chk1と略記する))をコードするアミノ酸配列のキナーゼドメイン内に位置するアミノ酸の少なくとも1個を、野生型アミノ酸配列が有するアミノ酸以外のアミノ酸で置換した変異型タンパク質であって、生体内で分解性を有するタンパク質。
  2. 前記Chk1は、哺乳類由来である請求項1に記載のタンパク質。
  3. 前記哺乳類は、ラット、マウス、ウシ、ヒト、又はサルである請求項2に記載のタンパク質。
  4. 前記Chk1をコードするアミノ酸配列は、配列番号1若しくは2に記載のアミノ酸配列(1-270)、配列番号1若しくは2に記載のアミノ酸配列(1-270)N末端からn個欠損したアミノ酸配列(n-270)である(但し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、又は9のいずれかの整数である)、配列番号3、4若しくは5に記載のアミノ酸配列(1-269)、又は配列番号3、4若しくは5に記載のアミノ酸配列(1-269)N末端からn個欠損したアミノ酸配列(n-269)である(但し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、又は9のいずれかの整数である)請求項1に記載のタンパク質。
  5. キナーゼドメイン内に位置するアミノ酸が、N末端から36番、38番、55番、130番、132番、135番、148番、170番のアミノ酸である請求項4に記載のタンパク質。
  6. 前記生体内での分解性は、COS-7細胞において請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質をコードするDNAを発現させて、得られるタンパク質の分子量を指標として決定される、請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の変異型タンパク質をコードするDNA。
  8. 請求項7に記載のDNAを含むプラスミド。
  9. 標的タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項8に記載のプラスミド。
  10. プロモーター配列及び/又は転写制御配列をコードする配列をさらに含む請求項9に記載のプラスミド。
  11. 請求項9又は10に記載のプラスミドを含む細胞において、少なくとも標的タンパク質をコードするDNAと請求項7に記載のDNAとの直接又は間接的な連結体である連結DNAを生体内で発現させて、生体内での分解性が促進された請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質及び標的タンパク質の融合タンパク質を生成させる、方法。
  12. 前記標的タンパク質が発光タンパク質又は蛍光タンパク質である、請求項9に記載の方法。
  13. 蛍光タンパク質は、ルシフェラーゼである請求項11又は12に記載の方法。
  14. 発光タンパク質は、GFP、Sirius,EBFP,ECFP,mTurquoise,TagCFP,AmCyan,mTFP1,MidoriishiCyan,CFP,TurboGFP,AcGFP,TagGFP,Azami-Green,ZsGreen,EmGFP,EGFP,GFP2,HyPer,TagYFP,EYFP,Venus,YFP,PhiYFP,PhiYFP-m,TurboYFP,ZsYellow,mBanana,KusabiraOrange,mOrange,TurboRFP,DsRed-Express,DsRed2,TagRFP,DsRed-Monomer,AsRed2,mStrawberry,TurboFP602,mRFP1,JRed,KillerRed,mCherry,HcRed,KeimaRed,mRaspberry,mPlum,PS-CFP,Dendra2,Kaede,EosFP,又はKikumeGRである請求項11又は12に記載の方法。
  15. プロモーター解析に用いるための請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
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