以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図において、同一の機能若しくは形状を有する部材や構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより説明を簡略化する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
画像形成装置1は、タンデム型カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、四つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同じ構成となっている。
具体的に述べると、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備えている。なお、図1では、ブラックの作像部4Kに関してのみ感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8に各符号を付し、その他の作像部4Y,4M,4Cでは符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての四つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35とを備えている。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
四つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、一次転写ローラ31と同様、二次転写ローラ36にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には補給用のトナーを収容した四つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと各現像装置7との間には、図示しない補給路が設けられ、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11などが設けられている。ここで、記録媒体の概念には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙など)、トレーシングペーパ、OHPシートなどが含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けられていてもよい。
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを搬送する搬送手段としての一対のレジストローラと称されるタイミング合わせローラ12が配設されている。
また、二次転写ローラ36よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。定着装置20に対して用紙搬送方向の上流側と下流側に用紙通過を検知する入り口センサ40と出口センサ41が配設されている。
さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。そして、定着装置20を駆動する定着モータM1と排紙ローラ13を駆動する排紙モータM2とは互いに独立して駆動できるようになっている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けられている。
続いて、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。そして、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、この一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わされ転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写されなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。その後、図示しない除電装置によって各感光体5の表面が除電され、表面電位が初期化される。
画像形成装置の下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によってタイミングを計られて、二次転写ローラ36と二次転写バックアップローラ32との間の二次転写ニップに送られる。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
その後、中間転写ベルト30の周回走行に伴って、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達したときに、この二次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写されなかった中間転写ベルト30上の残トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは図示しない廃トナー収容器へと搬送され回収される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、四つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか一つを使用して単色画像を形成したり、二つ又は三つの作像部を使用して、二色又は三色の画像を形成したりすることも当然可能である。
次に、定着装置20の構成について説明する。図2に示すように、定着装置20は、回転可能な定着部材としての定着ベルト21と、この定着ベルト21に対向して回転可能に設けられた加圧部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内側に配設された支持部材としてのニップ形成部材24及びステー25と、ハロゲンヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としてのサーモパイル27と、加圧ローラ22の温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ29と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28と、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する図示しない加圧/脱圧手段などを備えている。
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しく述べれば、定着ベルト21は、ニッケル若しくはSUSなど、熱膨張の大きい材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)若しくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層の間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴムなどのゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴムなどから成る弾性層22bと、弾性層22の表面に設けられたPFA又はPTFEなどから成る離型層22cとによって構成されている。加圧ローラ22は、図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しないモータなどの駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
本実施形態では、加圧ローラ22を中空のローラとしているが、中実のローラであってもよい。また、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータなどの加熱源を配設してもよい。弾性層が無い場合、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性があり、これを防止するために、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができ、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われ難くなるのでより望ましい。また、定着部材と加圧部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
本実施形態において、ハロゲンヒータ23は2本のハロゲンヒータ23A(第1ハロゲンヒータ)、23B(第2ハロゲンヒータ)で構成されており、各ハロゲンヒータ23A,23Bはそれぞれの両端部が定着装置20の側板(図示せず)に固定されている。各ハロゲンヒータ23A,23Bは、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、サーモパイル27による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ23A,23Bの出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の値に設定できるようになっている。尚、ハロゲンヒータは図3に示すように、通紙可能な幅域全体を加熱可能な一本のヒータでも、図4に示すように、通紙可能幅域を更に分けて夫々を加熱可能な三本以上のヒータであってもよく、また定着ベルト21を加熱する加熱源は、ハロゲンヒータ以外の発熱体、例えばセラミックヒータであってもよい。
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って長尺に配設され、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22からの圧力を支え、ニップ形成部材24に撓みが生じる事態を防止して、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようになっている。なお、ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄など、機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましい。さらに、ステー25を、加圧ローラ22の加圧方向に延在する横長の断面を有するように形成することで、断面係数が大きくなり、ステー25の機械的強度を向上させることが可能である。
またニップ形成部材24は、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材で構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定したニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ニップ形成部材24には、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂を用いることが可能である。本実施形態では、LCPを用いている。
またニップ形成部材24は、その表面に低摩擦シート240を有している。定着ベルト21が回転する際、この低摩擦シート240に対し定着ベルト21が摺動することで、定着ベルト21に生じる駆動トルクが低減され、定着ベルト21への摩擦力による負荷が軽減される。
反射部材26は、ステー25とハロゲンヒータ23との間に配設されている。このように反射部材26を配設していることにより、ハロゲンヒータ23からステー25側に放射された光が定着ベルト21へ反射される。これにより、定着ベルト21に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。また、ハロゲンヒータ23からの輻射熱がステー25などに伝達されるのを抑制することができ、省エネ化も図ることができる。
また本実施形態に係る定着装置20は、さらなる省エネ性及びファーストプリントタイムなどの向上のために、種々の構成上の工夫が施されている。
具体的には、ハロゲンヒータ23によって定着ベルト21をニップ部N以外の箇所において直接加熱できるようにしている(直接加熱方式)。本実施形態では、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21の、図2における左側部分の間に、何も介在させないようにし、その部分においてハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21に直接与えるようにしている。
また、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜100μm、100〜300μm、5〜50μmの範囲に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.4mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.2mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。そして、定着ベルトは基材に弾性層を焼成し、離型層をコーティングすることでもたらされる。
なお、本実施形態では、加圧ローラ22の直径を20〜40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径が等しくなるように構成している。ただし、この構成に限定されるものではない。例えば、定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように形成してもよい。その場合、ニップ部Nにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ22の曲率よりも大きくなるため、ニップ部Nから排出される記録媒体が定着ベルト21から分離され易くなる。
また、定着ベルト21を小径化する結果、定着ベルト21の内側のスペースが小さくなるが、本実施形態では、ステー25を両端側において折り曲げられた凹状に形成し、その凹状に形成した部分の内側にハロゲンヒータ23を収容することで、小さいスペース内でもステー25やハロゲンヒータ23の配設を可能にしている。
また、小さいスペース内でもステー25をできるだけ大きく配設するために、ニップ形成部材24を反対にコンパクトに形成している。具体的には、ニップ形成部材24の用紙搬送方向の幅を、ステー25の用紙搬送方向の幅よりも小さく形成している。さらに、図2において、ニップ形成部材24の用紙搬送方向上流側端部24a及び下流側端部24bにおけるそれぞれのニップ部N(又はその仮想延長線E)に対する高さをh1,h2とし、上流側端部24a及び下流側端部24b以外のニップ形成部材24の部分におけるニップ部N(又はその仮想延長線E)に対する最大高さをh3とすると、h1≦h3、h2≦h3となるように構成している。このように構成することで、ニップ形成部材24の上流側端部24aと下流側端部24bは、ステー25の用紙搬送方向上流側及び下流側の各折り曲げ部と定着ベルト21との間に介在しないので、各折り曲げ部を定着ベルト21の内周面に近づけて配設することができる。これにより、定着ベルト21内の限られたスペース内でステー25をできるだけ大きく配設できるようになり、ステー25の強度を確保することができるようになる。その結果、加圧ローラ22によるニップ形成部材24の撓みを防止でき、定着性の向上を図ることができる。
以下、本実施形態に係る定着装置の基本動作について説明する。プリンタ本体の電源スイッチが投入されると、ハロゲンヒータ23に電力が供給されると共に、加圧ローラ22が図2中の時計回りに回転駆動を開始する。これにより、定着ベルト21は、加圧ローラ22との摩擦力によって、図2中の反時計回りに従動回転する。
その後、上述の画像形成工程により未定着のトナー画像Tが担持された用紙Pは、ガイド板37に案内されながら図2の矢印A1方向に搬送されて、圧接状態にあるニップ部Nに送入される。そして、ハロゲンヒータ23によって加熱された定着ベルト21による熱と、定着ベルト21と加圧ローラ22の間の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。
トナー画像Tが定着された用紙Pは、ニップ部Nから図2中の矢印A2方向に搬出される。このとき、用紙Pの先端が分離部材28の先端に接触することにより、用紙Pが定着ベルト21から分離される。その後、分離された用紙Pは、上述のように、排紙ローラによって機外に排出され、排紙トレイにストックされる。
なお、本実施形態に係るプリンタでは、用紙Pの後端が定着ニップNを脱出した直後であって、用紙Pが排紙ローラ13によって移送されている間に、定着モータM1を停止させ、定着ベルト21の回転を停止させる。従来の画像形成装置では、定着装置と排紙ローラを共通のモータで駆動しており、定着ベルト/定着ローラと排紙ローラを同時に回転させ、あるいは同時に停止させるのが通例である。これに対して本例では、加圧ローラ22と排紙ローラ13を独立したモータM1,M2で回転駆動しているので、排紙ローラ13の回転中に加圧ローラ22を停止させることができ、そのために定着モータM1を排紙モータM2の回転中に一時的に停止させる制御が可能になっている。
このように、用紙後端が定着ニップNを脱出した直後に定着モータM1を停止させることにより、定着装置と排紙ローラを同時に駆動・停止させていた従来装置に比べて、加圧ローラの駆動時間を短縮することができる。定着モータM1は加圧ローラのみならず定着ベルトも駆動する必要があり、しかも定着ベルトは側板に固定されたニップ形成部材との摺動で抵抗を受けるため、定着モータM1の消費電力は大きい。したがって、上記のように、用紙全体が定着ニップNを脱出し、かつ排紙モータM2の駆動中に定着モータM1を一時的に停止させれば、定着モータM1の駆動時間を短縮化でき、省電力化を達成することができる。この定着モータM1の一時停止は、連続通紙中の個々の通紙時だけでなく、複数枚の通紙後に行うこともできる。
このような作用効果は、両ローラを独立して駆動・停止可能とした場合に得ることができる。したがって、排紙ローラと加圧ローラを別のモータM1,M2で駆動する構成に限定されない。例えば、両ローラを共通のモータで駆動するとしても、モータから両ローラに至るまでのトルク伝達経路にクラッチを配置し、クラッチの切り替えで両ローラの回転及び停止を独立して制御するような機構でも同様の作用効果を得ることができる。
以下、二本のハロゲンヒータ23A,23Bによる定着ベルト21の軸方向における加熱を説明する。図5で分かるように、第1ハロゲンヒータ23Aと第2ハロゲンヒータ23Bとでは、それぞれの発熱部の位置が異なっている。つまり、第1ハロゲンヒータ23Aは、その長手方向中央部から所定範囲に渡って配設された発熱部(発光部)23A1を有する。本実施形態では、発熱部23A1は、第1ハロゲンヒータ23Aの長手方向中央から左右対称に200〜220mmの範囲に設けられている。一方、第2ハロゲンヒータ23Bは、その長手方向両端部にそれぞれ発熱部(発光部)23B1を有する。本実施形態では、発熱部23B1は、第1ハロゲンヒータ23Aの発熱部23A1に対応する領域より長手方向外側にベルト幅の両端部までをカバーするように設けられている。ここで、A3サイズ用紙や横向きでのA4サイズ用紙の通紙幅は297mmであり、第1ハロゲンヒータ23Aの発熱部23A1の長さと、第2ハロゲンヒータ23Bの発熱部23B1の長さとの合計長さを300〜330mmとすることで、上記の通紙幅よりも長くとっている。これは、発熱部23B1の外側端部領域において発熱量が少なくなり(発光強度が弱くなり)、温度落ち込みが発生するので、通紙領域として発熱量(発熱強度)が所定以上の部分を使用する必要があるためである。
本実施形態では、定着ベルト21の温度を検知するサーモパイル27を二つ設けている。第1サーモパイル27Aは、第1ハロゲンヒータ23Aの発熱部23A1に対応して、定着ベルト21の中央領域の温度を検知し、第2サーモパイル27Bは、第2ハロゲンヒータ23Bの発熱部23B1に対応して、定着ベルト21の端部領域の温度を検知するように、各サーモパイルが設置されている。
図6に、定着装置20の温度制御回路の一構成例を示す。電源部51から供給された電力は、リレー52、トライアック53A,53Bを介して、ハロゲンヒータ23A,23Bにそれぞれ供給される。リレー52は、ウォームアップ時、印刷ジョブ実行時、レディ待機時などにオン(閉)され、それ以外の電源オフ時、オフモード時、省エネモード時、急停止時などにはオフ(開)される。各トライアック53A,53Bはそれぞれ、第1ハロゲンヒータ23A、第2ハロゲンヒータ23Bへの通電量を制御し、第1サーモパイル27A、第2サーモパイル27Bによって検知される定着ベルト21の温度情報をフィードバックして、定着ベルト21を所定の温度に維持する。なおレディ待機とは、印刷ジョブ指示が入った時点で直ぐに印刷を開始できる状態である。コントローラやエンジンソフトなど、マシンを動作させるソフト/ハードが既に起動している状態であり、この状態では、一般に定着モータは停止しているが、定着部材は一定温度に維持されており、マシンとしては直ぐに通紙を行うことができる。
また温度制御部54は、リレー52を制御するリレー制御部54Aと、トライアック53A,53Bを制御するトライアック制御部54Bと、定着ベルト21の過昇温時に異常停止信号を出力する過昇温保護回路54Cとを含む。温度制御部54には、第1サーモパイル27Aと第2サーモパイル27Bで検知された定着ベルト21の中央領域と端部領域の温度情報が温度情報値(電圧値)D1,D2として入力される。本実施形態では、リレー制御部54Aは、温度情報値D1,D2に基づいて、リレー52にON/OFF制御信号S1を出力すると共に、加圧ローラ22の駆動制御部60に駆動制御信号S2を出力し、トライアック制御部54Bは、温度情報値D1,D2に基づいて、トライアック53A,53Bに通電制御信号S3を出力し、過昇温保護回路54Cは、温度情報値D1,D2に基づいて、リレー制御部54Aに異常停止信号S4を出力するように構成されている。但し、このような構成に限定されない。
なお、本実施形態に係る定着装置では、既に述べたように低熱容量化した定着ベルト21を直接加熱しており、しかも反射部材26によって定着ベルト21に対する熱の照射範囲を限定している。したがって、定着モータM1の駆動停止により定着ベルト21を停止させた状態でハロゲンヒータ23による加熱が継続されると、定着ベルト21が瞬時に過昇温状態となり、ベルトが損傷するおそれがある。かかる不具合を防止するために、定着モータM1を一時停止させる際には、定着モータM1の停止前にハロゲンヒータ23を消灯(停止)させ、定着モータM1の停止状態では常にハロゲンヒータ23を消灯状態にする。この切り替えは、温度制御部54からトライアック53に制御信号を与えることで行われる。ハロゲンヒータ23の消灯は、用紙Pが完全に定着ニップNを通過してから行う他、用紙Pの後端が定着ニップNに存在する状態で行ってもよい。
ところで、ハロゲンヒータ23はガラス管内にヒータとハロゲンを封入した構成であり、ヒータ消灯後もガラス管に蓄積された熱が放出される。したがって、加熱源としてハロゲンヒータを使用する場合、ヒータの消灯後もガラス管の残存熱で定着ベルト21が一時的に加熱されることになる。また、定着ニップNでの通紙中は用紙Pによって奪熱されるが、用紙後端が定着ニップNを脱出した(通紙完了)後には用紙Pを介した放熱が行われないため、定着ベルトの温度が上昇する。図7(a)は、ハロゲンヒータ23の消灯後、排紙ローラ13が停止するまで定着ベルト21を回転させた場合の定着ベルトの温度変化を示し、図7(b)はハロゲンヒータ23の消灯と略同じタイミングで定着ベルト21の回転を停止させた場合の定着ベルトの温度変化を示している。なお、図7(a)(b)は、一例としてハロゲンヒータの消灯と同時に通紙を完了させた場合を示す。
図7(a)に対応する構成の定着装置では、ヒータ消灯後も定着ベルト21の回転により放熱が行われるため、定着ベルト21の温度上昇は緩やかなものとなる。これに対し、図7(b)に対応する構成の定着装置では、ヒータの消灯と同時に定着ベルト21の回転が停止するため、放熱が行われずに定着ベルトの温度が急激に上昇し、ベルトの蓄熱状態によっては上限温度を越えてベルトが破損するおそれがある。
そこで本実施形態に係る定着装置においては、定着ベルト21の回転停止後は、温度センサであるサーモパイル27の検出値に基づいて定着ベルト21の放熱を行うように構成されている。放熱は、例えば定着ベルト21を定着モータM1で回転させることで行うことができる。具体的には、図8に示すように、定着モータM1の停止後、一定時間(例えば10秒間)、定着ベルト21の温度監視を行い、定着ベルト21の温度換算値Dが上限温度よりも小さい規定温度以上になった時点で定着モータM1を起動し、定着ベルト21を回転させて放熱を行う。これにより図8中の実線で示すように定着ベルト21の過昇温を防止することができる。なお、同図中の破線はヒータの停止と同時に定着ベルト21を停止させ、その後も定着ベルト21の停止状態を維持した場合の定着ベルト21の想定温度変化を示すものである。
以上のような構成の定着装置を有するプリンタが用紙ジャムなどで画像処理中にリレーオフすることで急停止した時、定着装置電源がオン状態のまま、ハロゲンヒータ23A,23Bへの電力供給が止まると共に定着ベルトなども停止する。その際の定着ベルトの周方向温度分布を図9に示す。加熱源としてのハロゲンヒータ23の余熱によって定着ベルトの加熱領域(反射部材26の端部とハロゲンヒータ23の配置位置によって画定され、ハロゲンヒータ23の直接放射と反射部材26での反射によって加熱されるベルト内周範囲)が更に加温される。既述のように、加熱領域の部分が定着ニップ部へ移って加圧部材あるいは用紙によって奪熱されない限り、加熱領域は高い温度を保ったままとなり、過昇温状態に熱膨張する(特に加熱源に最近接する箇所A)。一方、加熱領域以外のベルト部分は低い熱伝導率のため熱膨張しない。特に加熱領域に対するベルト回転方向上流側のB位置は最も温度が低くなっていて、このB位置で箇所Aが膨張しようとする動きを抑える役割を果たし、箇所Aが膨張し切れずに内側に凹むこととなる(キンクの発生)。つまり、箇所AとB位置の温度差がキンク発生を招来する。
そこでキンクが発生することを回避するために、プリンタが急停止して定着ベルトも回転停止した場合、定着モータM1を起動し、定着ベルト21を強制回転させて放熱を行う。例えば、図2に示すように、加熱領域のベルト周方向での長さをL2、定着ベルト全体の周方向長さをL1とする場合に、L1−L2(=L)だけ定着ベルト21を正回転すると、定着ベルト全周がハロゲンヒータの余熱を受けることになってベルト全体が熱膨張し、キンクの発生を抑制できる。その際の定着ベルトの周方向温度分布を図10に示す。本実施形態では、AとBの温度差が90℃〜110℃程度でキンクが発生すること、L1−L2(=L)の回転でキンク発生が回避できることを確認できた。尚、Lの回転量は、薄肉で可撓性を有する無端状の定着ベルト21の場合に規定されるものであり、定着ベルト21以外の構成のときはL以下でもよい。また、L2の長さはヒータ23と反射板26と定着ベルト21の相互位置関係から規定されるものである。
画像形成装置の急停止時に定着入り口センサ40と定着出口センサ41の間に用紙Pがない場合は、制限無く定着ベルトの回転距離を設定して、ハロゲンヒータの余熱をベルト全周に均一に吸収できる。正転動作は、定着部材の動作として安定しているので、選択されているが、逆転動作が安定する定着装置であれば逆転動作を選択しても問題ない。但し、画像形成装置の急停止時に定着入り口センサと定着出口センサの間に用紙がある場合に正転動作をすると、用紙が定着ベルトに巻きついてしまって、ユーザーがジャム処理できなくなる。そこで、定着入り口センサと定着出口センサの間に用紙がある場合には逆転動作を選択すべきである。
定着入り口センサ40と定着出口センサ41の間に用紙Pがない場合に正転動作する時のキンク回避フローを図11に示す。ジャム検知後にヒータを停止し、リレーをオフする。と同時に、定着モータ制御は正転線速に変更し正転動作を開始する。正転距離分回転後にモータを停止する。モータ停止後は脱圧をして、動作を完了する。
次に定着入り口センサ40と定着出口センサ41に用紙Pがある場合に逆転動作する時のキンク回避フローを図12に示す。ジャム検知後にヒータを停止し、リレーをオフする。と同時に、定着モータを停止させる。ブレーキ制御時間(完全停止までの保証値、例えば数十ミリ秒)の経過を確認し、確実に定着モータを停止させる。ブレーキ制御時間経過後は、回転停止待ち時間(=正転動作から逆転動作に切り替えるまでの時間を確保するマージン)の経過を確認する。回転停止待ち時間経過後に逆転動作を開始する。逆転距離回転後にモータを停止する。モータ停止後は脱圧をして、動作を完了する。ここでの逆転距離は、キンクが発生せず、ジャムした用紙Pが画像形成装置へダメージを与えない範囲で規定される。理由として、逆転距離が大きすぎると、ジャムした用紙Pが中間転写ベルト30に当たって傷つけたり、画像形成装置内の隙間に侵入するなどの不具合が考えられ、逆転距離が小さいと、キンクが発生し易くなるためである。逆転距離が大きすぎることによる不具合を防止するためには、例えばジャムした用紙Pの後端から二次転写ニップまでの距離を逆転距離の上限とすることが考えられる。上限は用紙の搬送方向での長さに応じて算出される。
キンク防止には、回転時間を長く取ることが有効なので、線速を遅くして、回転時間を長くするとよい。したがって、正転及び逆転線速は、定着装置が急停止する前までの回転速度以下になるように設定する。
なお、画像形成装置の急停止時に定着入り口センサと定着出口センサの間に用紙があり、この用紙がコシの強い厚紙などであると、定着ベルトを逆転動作させる場合、定着装置に対して用紙搬送経路の上流側に位置する部材(本実施形態においては中間転写ベルト30や二次転写ローラ36)に用紙が突き刺さってしまい、それら上流側の部材にダメージを与える可能性がある。そこで、用紙の長手方向の長さ(用紙搬送方向での長さ)から、上流側の部材に用紙が突き刺さらない量の逆転量を算出し、算出量だけ用紙を逆転動作させるよう制御する。このように制御することで、上流側の部材を保護しつつ、キンクの発生を抑制することが可能である。
以上は、加熱源の余熱によってキンクが発生する事態を回避する構成を説明したが、加熱源の余熱自体はあまり問題にならなくとも、リフレクタ、ステー、高温になった内部空気の余熱によって加熱領域が昇温するなど、加熱領域の温度状態が定着ベルトの停止でキンクを発生することがある。これを回避するためには、定着ベルト停止時の加熱領域を定着ニップ部へ移動させ、加圧ローラなどで奪熱させるのがよい。少なくとも加熱領域の最先端部、あるいは加熱源に最近接していた箇所までを定着ニップ部へ移動させる。
本発明は、例えば、定着ローラと加熱ローラとの間に定着ベルトを架設すると共に、定着ベルトを介して加圧ローラを定着ローラに圧接させるベルト方式の定着装置など、他の方式の定着装置にも適用可能である。定着ローラと加熱ローラで定着ベルトを架設する場合には、加熱ローラに駆動を与えるようになっていてもよい。また、本発明に係る定着装置は、図1に示すカラーレーザープリンタに限らず、モノクロ画像形成装置やその他の電子写真式の画像形成装置に搭載することも可能である。
上記課題を解決するために、本発明は、加熱源と、前記加熱源によって部分加熱され、記録媒体の未定着画像担持側を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材に圧接し、前記定着部材との間にニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、前記定着部材又は前記加圧部材を回転させる回転駆動手段と、を備えて構成される定着装置において、前記定着部材が内部にニップ形成部材を有したベルトであり、前記ニップ形成部材が、前記ニップ部で、前記定着部材を介して、前記加圧部材と対向し、前記加熱源が、輻射熱ヒータであり、前記定着部材の周方向で、前記ニップ部以外の前記定着部材の箇所を部分加熱するものであって、前記定着部材が装置電源オン状態にて定着処理終了以外の理由で停止する際に、前記加熱源への電力供給を停止するとともに、その定着部材停止後に前記定着部材を少なくとも所定量、前記加圧部材に従動回転させることを提案する。
本実施形態では、加圧ローラ22を中空のローラとしているが、中実のローラであってもよい。また、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータなどの加熱源を配設してもよい。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われ難くなるのでより望ましい。また、定着部材と加圧部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。