上記電子写真機器用部材は、電子写真機器に用いられる。電子写真機器としては、具体的には、帯電像を用いる電子写真方式の複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、オンデマンド印刷機等の画像形成装置を例示することができる。
上記電子写真機器用部材は、具体的には、現像部材、帯電部材、転写部材、または、クリーニング部材とすることができる。なお、転写部材としては、具体的には、中間転写部材を例示することができる。中間転写部材は、感光体に担持されたトナー像を当該部材に一次転写した後、このトナー像を当該部材から用紙等の転写材へ二次転写するためのものである。
上記電子写真機器用部材は、具体的には、例えば、(1)軸体と、軸体の外周面に沿って形成された弾性層と、弾性層の外周面に沿って形成された表層とを有する構成、(2)軸体と、軸体の外周に沿って形成された表層とを有する構成、(3)筒状に形成された基層と、基層の外周面に沿って形成された表層とを有する構成、(4)筒状に形成された基層と、基層の外周面に沿って形成された弾性層と、弾性層の外周面に沿って形成された表層とを有する構成、(5)筒状に形成された表層を有する構成、(6)ブレード本体と、ブレード本体表面の一部または全部を被覆する表層と、ブレード本体を保持する保持部とを有する構成、(7)ブレード状に形成された表層と、表層を保持する保持部とを有する構成などとすることができる。構成(1)、(2)は現像部材や帯電部材、構成(3)〜(5)は転写部材、構成(6)、(7)はクリーニング部材の形態として好適である。
ここで、上記電子写真機器用部材における表層は、マトリックスポリマーと、表面改質剤とを有している。
マトリックスポリマーは、表層の骨格を形づくるポリマー成分として重要な役割を果たす。マトリックスポリマーは、ポリイソシアネートと疎水性有機化合物との重合体を少なくとも含んでいる。マトリックスポリマーは、1種または2種以上の上記重合体を含んでいてもよい。
上記重合体において、重合成分のポリイソシアネートとしては、具体的には、例えば、脂肪族、脂環族または芳香族のポリイソシアネートあるいはこれらポリイソシアネートのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体などを例示することができる。
ポリイソシアネートとしては、より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)系、キシレンジイソシアネート(XDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)系、水添キシレンジイソシアネート(H6XDI)、水添キシレンジイソシアネート(H6XDI)系、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)系、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)系、これらのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体等を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。なお、上記にいう「系」は、ベースとなるイソシアネートが同じであるポリイソシアネート、そのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体を包括的に含む意味である。つまり、例えば、「ヘキサメチレンジイソシアネート系」の場合であれば、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースにした各種のポリイソシアネート、そのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体等の誘導体が含まれる。他についても同様である。
ポリイソシアネートは、マトリックスポリマーに含まれうる後述の他のポリマーとの相溶性などの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系などを好適に用いることができる。
上記重合体において、重合成分の疎水性有機化合物は、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応する官能基を1つ以上含んでいる。疎水性有機化合物は、重合体が架橋構造をとりやすくなる、反応性が高くなる等の観点から、イソシアネート基と反応する官能基を複数含んでいるとよい。また、疎水性有機化合物は、ポリマー、オリゴマーなどから構成することができる。なお、疎水性有機化合物は、分構造内に存在する親水性官能基1molに対する分子量の値(親水基当量=疎水性有機化合物の分子量/疎水性有機化合物中の総親水基mol数)が110g/mol以上となるものをいう。上記親水性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、イミド基、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、メルカプト基などがある。
イソシアネート基と反応する官能基は、具体的には、例えば、片末端変性、両末端変性等の変性により導入されたものとすることができる。イソシアネート基と反応する官能基としては、具体的には、例えば、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アルコキシシリル基(−Si−OR)、アミノ基(−NHR、−NH2、但し、3級アミンは反応性を示さないため除く)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。イソシアネート基と反応する官能基は、イソシアネート基との反応性、疎水性有機化合物への導入容易性などの観点から、好ましくは、ヒドロキシ基であるとよい。なお、イソシアネート基と反応する官能基としてヒドロキシ基を複数有する場合、当該疎水性有機化合物は、疎水性ポリオールということになる。
疎水性有機化合物としては、具体的には、例えば、イソシアネート基と反応する官能基を1つ以上含む疎水性の炭化水素などを例示することができる。この場合には、マトリックスポリマーの内部に表面改質剤が残り難くなり、表層の表面近傍に表面改質剤が出やすくなるのを確実なものとすることができる。上記炭化水素としては、具体的には、例えば、鎖式飽和炭化水素(パラフィン系)、鎖式不飽和炭化水素(オレフィン系)、環式飽和炭化水素、環式不飽和炭化水素、および、これらの化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。イソシアネート基と反応する官能基を1つ以上含む疎水性の炭化水素としては、より具体的には、例えば、OH基両末端変性ブタジエンゴム、OH基両末端変性イソプレンゴム、OH基両末端変性ポリオレフィン、OH基両末端変性スチレンゴム、OH基両末端変性スチレンブタジエンゴム、OH基両末端変性ブタジエンアクリロニトリルゴム、COOH基両末端変性ブタジエンアクリロニトリルゴム、NH2基両末端変性ブタジエンアクリロニトリルゴム、1,2ペンタデカンジオールなどを例示することができる。
上記重合体は、ポリイソシアネート、疎水性有機化合物以外にも、他の重合成分を含むことができる。他の重合成分としては、具体的には、例えば、親水性ポリオールなどを例示することができる。つまり、マトリックスポリマーは、ポリイソシアネートと疎水性有機化合物と親水性ポリオールとの重合体を含むことができる。この場合には、重合成分に親水性ポリオールが含まれない重合体が用いられる場合と比較して、イオン導電性を付与しやすくなるなどの利点がある。
親水性ポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびこれらの変性物などのエーテル系ポリオールやアジピン酸変性ポリオールなどのエステル系ポリオールなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。なお、疎水性有機化合物が疎水性ポリオールである場合、親水性ポリオールは、反応性、架橋性などの観点から、疎水性ポリオールと同じ数だけヒドロキシ基を有しているとよい。
マトリックスポリマーは、上記重合体より構成されていてもよいし、上記重合体以外にも、他のポリマーを含むこともできる。他のポリマーとしては、具体的には、例えば、各種の樹脂やゴム(ゴムにはエラストマーも含まれる、以下省略)を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができ、電子写真機器用部材の用途等に応じて最適な材料を選択することができる。
上記樹脂としては、具体的には、例えば、ウレタン樹脂;ウレタンシリコーン樹脂;ウレタンフッ素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;(メタ)アクリル樹脂;(メタ)アクリルシリコーン樹脂;(メタ)アクリルフッ素樹脂;フッ素樹脂;アセタール樹脂;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエーテル樹脂;カーボネート樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリアクリルアミド;ポリエチレンオキサイド;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリビニルメチルエーテル;ポリアミン;ポリエチレンイミン;カゼイン、ゼラチン、澱粉およびこれらの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレンおよび他のオレフィン系単量体との共重合樹脂等のオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のスチレン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂;ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂およびこれらの誘導体または変性体;ポリイソブチレン;ポリテトラヒドロフラン;ポリアニリン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);ポリイソプレン;ポリブタジエン等のポリジエン類;ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類;ポリスルホン類;ポリイミン類;ポリ無水酢酸類;ポリ尿素類;ポリスルフィド類;ポリフォスファゼン類;ポリケトン類;ポリフェニレン類;ポリハロオレフィン類およびこれらの誘導体;メラミン樹脂などを例示することができる。これらのうち、好ましくは、表層の柔軟性向上、耐摩耗性向上などの観点から、ウレタン樹脂、ウレタンシリコーン樹脂、ウレタンフッ素樹脂などを用いることができる。
また、上記ゴムとしては、具体的には、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(ECO、CO)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、これらの変成体などを例示することができる。これらのうち、好ましくは、表層の柔軟性向上、耐摩耗性向上などの観点から、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、これらの変成体などを用いることができる。
マトリックスポリマーに対する上記重合体の割合は、表層の表面近傍に表面改質剤を出やすくするなどの観点から、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは40〜90質量%の範囲内とすることができる。
一方、マトリックスポリマーに添加された表面改質剤は、主に表層表面に存在して表層表面を改質する成分として重要な役割を果たす。具体的には、表面改質剤は、表層表面に存在した状態で直下にあるマトリックスポリマーとの反応により表層表面に固定化されているとよい。表面改質剤は、分子内にアミノ基およびシリコーン基を含むポリマーより構成されている。表面改質剤は、1種または2種以上併用することができる。なお、シリコーン基は、具体的には、シロキサン結合を有する基であり、好ましくは、ジメチルシロキサン骨格を有する基であるとよい。
表面改質剤は、具体的には、分子内にアミノ基を有する第1化合物に由来する第1重合単位を含んでおり、該第1重合単位が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上とされているとよい。この場合には、上記重合体における疎水性有機化合物の作用によって表面改質剤が弾かれやすくなり、表層の表面近傍に表面改質剤がより一層出やすくなる。そのため、この場合には、トナー荷電性を大幅に向上させやすくなる。なお、表面改質剤は、シリコーン基を確保する観点から、上記第1重合単位を97質量%以下、好ましくは96質量%以下、より好ましくは95質量%以下含む構成とすることができる。
表面改質剤は、より具体的には、分子内にアミノ基を有する第1化合物に由来する第1重合単位と、分子内にシリコーン基を有する第2化合物に由来する第2重合単位とを含む構成とすることができる。表面改質剤は、より具体的には、第1重合単位と第2重合単位とを含む共重合体、好ましくはブロック共重合体から構成することができる。
この場合には、表面改質剤の分子内に、第1重合単位によってアミノ基を、第2重合単位によってシリコーン基を導入することができる。そのため、各重合単位の割合を変えることにより、表面改質剤中のアミノ基およびシリコーン基の量を調節しやすくなる。したがって、トナー荷電性と表層表面の低摩擦性とのバランスをとりやすくなる利点がある。
なお、表面改質剤は、1種または2種以上の異なる第1重合単位、1種または2種以上の異なる第2重合単位を含むことができる。また、第1化合物は、有機化合物であれば、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。好ましくは、重合時の反応性が良好であるなどの観点から、モノマーまたはオリゴマーであるとよく、特に好ましくは、モノマーであるとよい。第2化合物は、有機化合物であれば、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。好ましくは、重合時の反応性が良好である、低摩擦化を図りやすいなどの観点から、モノマーまたはオリゴマーであるとよく、特に好ましくは、オリゴマーであるとよい。
また、第1化合物および第2化合物は、分子内に不飽和結合を含むことができる。この場合には、表面改質剤の作製時に共重合反応を行いやすいなどの利点がある。不飽和結合としては、例えば、(メタ)アクリル基、アリル基、ビニル基などに含まれるものを使用することができる。
また、第1化合物および第2化合物は、具体的には、分子内に(メタ)アクリル基をさらに有する構成(A)とすることができる。この場合には、表面改質剤の作製時に共重合反応を行いやすいなどの利点がある。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルの両方を含む意味である。
また、上述した構成(A)以外にも、第1化合物が分子内に(メタ)アクリル基をさらに有しており、第2化合物が分子内にアゾ基をさらに有している構成(B)とすることもできる。この場合にも、表面改質剤の作製時に共重合反応を行いやすいなどの利点がある。
第1化合物としては、例えば、分子内にアミノ基を有する(メタ)アクリルモノマー、分子内にアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーなどを例示することができる。
第1化合物としては、具体的には、例えば、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノヘプチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノオクチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジフェニルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピルジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアミノプロピルジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアミノメチル(メタ)アクリルアミド、トリアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどを例示することができる。
また、第1化合物としては、具体的には、下式1で表される化合物を例示することができる。
但し、式1中、R1は、水素原子またはメチル基を表す。R2は、炭素数1〜7の脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。R3、R4は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、フェニル基、水素原子またはヒドロキシ基を表す。
第2化合物としては、例えば、分子内に(メタ)アクリル基を有するシリコーン化合物、分子内にアゾ基を有するシリコーン化合物などを例示することができる。
分子内に(メタ)アクリル基を有するシリコーン化合物としては、具体的には、反応性、低摩擦化などの観点から、(メタ)アクリル変性シリコーン化合物を好適なものとして例示することができる。特に好ましくは、重合時の反応性が良好である、低摩擦化を図りやすい等の観点から、下記式2にて表されるシリコーン化合物(シリコーンオイル等)とすることができる。
但し、式2中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。好ましくはメチル基を表す。R2、R3は、炭素数1〜10のアルキル基、好ましくはメチル基を表す。Xは、(メタ)アクリル基を表す。nは、低摩擦性向上の観点から好ましくは1〜135(数平均分子量170〜1万程度)、より好ましくは10〜50(数平均分子量1000〜4000程度)の正数を表す。
また、分子内にアゾ基を有するシリコーン化合物としては、具体的には、重合時の反応性が良好である、低摩擦化を図りやすいなどの観点から、下記式3にて表されるシリコーン化合物とすることができる。
但し、式3中、X1、X2は、互いに同じまたは異なるシロキサン結合を含む化合物に由来する単位を表す。
表面改質剤は、第1重合単位、第2重合単位以外にも、重合成分として他の化合物に由来する重合単位を1種または2種以上含むことができる。
なお、上記他の化合物は、有機化合物であれば、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。好ましくは、重合時の反応性が良好であるなどの観点から、モノマーまたはオリゴマーであるとよく、特に好ましくは、モノマーであるとよい。
上記他の化合物としては、例えば、分子内にフッ素含有基を有するモノマーなどを例示することができる。好ましくは、重合反応性などの観点から、分子内にさらに(メタ)アクリル基を有しているとよい。なお、「フッ素含有基」とは、フッ素原子を含有する基をいい、−Fを含む。これを用いた場合には、表面改質剤の分子内にアミノ基およびシリコーン基以外の官能基としてさらにフッ素含有基を有することが可能となる。そのため、表層表面のトナー離れ性を向上させることができる。
フッ素含有基としては、具体的には、例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルキルアルキレンオキシド基、フルオロアルケニル基、−Fなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
分子内にフッ素含有基を有するモノマーとしては、具体的には、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
上記他の化合物としては、他にも例えば、(メタ)アクリル基またはビニル基のいずれか一方を少なくとも1つ有する化合物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどを例示することができる。これらを用いた場合には、表面改質剤の分子量を制御しやすくなるなどの利点がある。
表層は、マトリックスポリマー100質量部に対し、表面改質剤を0.5〜20質量部含有することができる。この場合には、表層表面の低摩擦性を維持しつつ、トナー荷電性を大幅に向上させるという効果を確実なものとすることができる。
表面改質剤の含有量は、添加による十分な効果を得るなどの観点から、好ましくは0.75質量部以上、より好ましくは1質量部以上とすることができる。また、表面改質剤の含有量は、マトリックスポリマーとの相溶性、マトリックスポリマーからのブリード抑制、コストなどの観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下、さらにより好ましくは5質量部以下とすることができる。なお、表面改質剤の含有量は、溶剤による抽出後、抽出物を熱分解GC/MS分析、NMR分析して表面改質剤の構造を特定した後、材料全体を熱分解GC/MS分析することにより測定することができる。
表層は、マトリックスポリマー中に、他にも、導電剤を含有することができる。導電剤としては、例えば、電子導電剤、イオン導電剤、導電ポリマーなどを例示することができる。電子導電剤としては、例えば、炭素系導電材料、導電性の金属酸化物、金属ナノ粒子などを例示することができる。炭素系導電材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトなどを例示することができる。導電性の金属酸化物としては、例えば、チタン酸バリウム、c−TiO2、c−ZnO、c−SnO2(c−は導電性を意味する。)などを例示することができる。イオン導電剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸塩、イオン液体などを例示することができる。導電ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロールなどを例示することができる。
表層は、マトリックスポリマー中に、他にも、必要に応じて、反応触媒、フィラー(無機系、有機系)、カップリング剤、分散剤、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粗さ形成用粒子などの各種添加剤を含有することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
表層の厚みは、特に限定されるものではなく、耐摩耗性、柔軟性などを考慮して最適な厚みとすることができる。表層の厚みは、例えば、1〜100μm程度とすることができる。
表層は、具体的には、表層本体部と、表面改質層とを有する構成とすることができる。表層本体部は、マトリックスポリマーと表面改質剤とを含むことができる。なお、表層本体部は、表面改質剤を含まないマトリックスポリマーより構成することもできる。また、表面改質層は、表面改質剤より構成することができる。表面改質層の厚みは、表層表面の低摩擦性を維持しつつ、トナー荷電性を大幅に向上させるという効果を確実なものとするなどの観点から、好ましくは1nm〜2000nm、より好ましくは50nm〜1500nm、さらに好ましくは100nm〜1000nmとすることができる。
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
以下、実施例の電子写真機器用部材について、図面を用いて説明する。
(実施例1)
実施例1の電子写真機器用部材について、図1、図2を用いて説明する。図1、図2に示されるように、本例の電子写真機器用部材Rは、電子写真機器に用いられるものである。本例の電子写真機器用部材Rは、具体的には、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれるロール状の導電性部材であり、現像部材としての現像ロールまたは帯電部材としての帯電ロールとして用いられる。
電子写真機器用部材Rは、表層1を有している。本例の電子写真機器用部材Rは、具体的には、軸体2と、軸体2の外周面に沿って形成された導電性を有するゴム弾性体よりなる弾性層3とをさらに有している。但し、軸体2の両端部は、弾性層3の両端面から突出した状態とされている。そして、この弾性層3の外周面に沿って表層1が形成されている。電子写真機器用部材Rは、現像部材として用いられる場合には、例えば、摺擦によりトナーを帯電させたり一定厚みのトナーを形成したりするためのブレード部材を、表層1表面に接触させた状態で使用されることができる。また、電子写真機器用部材Rは、帯電部材として用いられる場合には、例えば、用紙へトナー像を定着させる定着工程の後に表面に残存するトナーを除去するためのブレード部材を、表層1表面に接触させた状態で使用されることができる。
表層1は、マトリックスポリマーを有している。マトリックスポリマーは、ポリイソシアネートと、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応する官能基を1つ以上含む疎水性有機化合物との重合体、あるいは、ポリイソシアネートと上記疎水性有機化合物と親水性ポリオールとの重合体を含んでいる。
本例では、マトリックスポリマーは、上記重合体以外にも、熱硬化性ポリウレタンを有している。つまり、本例では、マトリックスポリマーは、上記重合体と熱硬化性ポリウレタンとの混合ポリマーである。また、本例では、重合体におけるイソシアネート基と反応する官能基は、ヒドロキシ基であり、疎水性有機化合物は、イソシアネート基と反応する官能基としてのヒドロキシ基を1つ以上含む疎水性の炭化水素である。
また、表層1は、表面改質剤を有している。表面改質剤は、分子内にアミノ基およびシリコーン基を含むポリマーより構成されている。本例では、表面改質剤は、具体的には、分子内にアミノ基を有する第1化合物に由来する第1重合単位を含んでおり、この第1重合単位が50質量%以上とされている。なお、本例では、表層1は、さらに、電子導電剤を有している。
(実施例2)
実施例2の電子写真機器用部材Bについて、図3、図4を用いて説明する。図3、図4に示されるように、本例の電子写真機器用部材Bは、電子写真機器に用いられるものである。本例の電子写真機器用部材Bは、具体的には、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる無端ベルト状の導電性部材であり、転写部材としての中間転写ベルトとして用いられる。
電子写真機器用部材Bは、表層4を有している。本例の電子写真機器用部材Bは、具体的には、導電性を有する樹脂材料より形成された筒状の基層5をさらに有している。そして、この基層5の外周面に沿って表層4が形成されている。
表層4は、実施例1と同様に、上記重合体を含むマトリックスポリマーと、表面改質剤とを有している。
マトリックスポリマーは、上記重合体以外のポリマー成分として、ゴムを有している。したがって、表層4はゴム弾性を有している。表面改質剤については、実施例1と同様の構成であるので説明を省略する。なお、表層4は、さらに、イオン導電剤を有している。
以下、電子写真機器用部材としての導電性ロール試料を作製し、評価を行った。その実験例について説明する。
(実験例)
<表面改質剤の準備>
表層のマトリックスポリマーに添加する各表面改質剤を以下のようにして準備した。
・表面改質剤A
200mLの反応フラスコに、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製)15g(96mmol)と、(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物(信越化学工業社製、「X−22−174DX」)0.92g(0.2mmol)と、メタクリル酸メチル(純正化学工業社製)0.38g(3.8mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)(和光純薬工業社製、「VE−73」)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)14.35gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。
次いで、MEK26.58gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Aを含有する溶液を得た。表面改質剤Aは、分子内にアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドモノマー(第1化合物)に基づく第1重合単位と、分子内に(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物(第2化合物)に基づく第2重合単位とを含む直鎖状の共重合体である。表面改質剤Aにおける第1重合単位の含有量は、92質量%である。
・表面改質剤B
表面改質剤Aの合成において、上記ジメチルアミノプロピルアクリルアミド10.55g(67.6mmol)、上記(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物7.46g(1.6mmol)、上記メタクリル酸メチル3.09g(30.8mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)(和光純薬工業社製、「VE−73」)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)18.28gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。
次いで、MEK33.85gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Bを含有する溶液を得た。表面改質剤Bは、分子内にアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドモノマー(第1化合物)に基づく第1重合単位と、分子内に(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物(第2化合物)に基づく第2重合単位とを含む直鎖状の共重合体である。表面改質剤Bにおける第1重合単位の含有量は、50質量%である。
・表面改質剤C
200mLの反応フラスコに、上記ジメチルアミノプロピルアクリルアミド15.00g(96mmol)と、上記メタクリル酸メチル0.40g(4mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MEK13.61gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。
次いで、MEK25.21gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Cを含有する溶液を得た。表面改質剤Cは、分子内にアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドモノマー(第1化合物)に基づく第1重合単位を含む直鎖状の共重合体であり、分子内に(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物(第2化合物)に基づく第2重合単位を含んでいない。
・表面改質剤D
200mLの反応フラスコに、上記(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物23g(5mmol)と、上記メタクリル酸メチル9.5g(95mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MEK27.61gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。
次いで、MEK51.12gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Dを含有する溶液を得た。表面改質剤Dは、分子内に(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物(第2化合物)に基づく第2重合単位を含む直鎖状の共重合体であり、分子内にアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドモノマー(第1化合物)に基づく第1重合単位を含んでいない。
<表層形成用材料の調製>
後述の表2、表3に示される配合割合(質量部)で、熱可塑性ポリウレタン(東ソー社製、「ニッポラン5199」)と、ポリイソシアネート(へキサメチレンジイソシアネート3量体)(東ソー社製、「コロネートHX」)と、疎水性有機化合物と、親水性ポリオールとしてのポリエーテルジオール(2官能ポリプロピレングリコール)(ADEKA社製、「アデカポリエーテルP−1000」、上述した算出方法に準じて算出される親水基当量:69g/mol)と、表面改質剤と、電子導電剤(カーボンブラック)(ライオン社製、「ケッチェンEC300J」)とを、濃度20質量%となるようにMEKに溶解し、三本ロールを用いて十分に混合、分散させた。これにより、導電性ロール試料1〜11、1C〜6Cの作製に用いる各表層形成用材料を調製した。なお、上記疎水性有機化合物としては、以下に示される、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応する官能基としてヒドロキシ基を複数有する疎水性の炭化水素よりなる疎水性ポリオールを用いた。
・ヒドロキシ基両末端変性ブタジエンゴム(1)(出光興産社製、「poly−bd R45HT」、親水基当量:1400g/mol)
・ヒドロキシ基両末端変性ブタジエンゴム(2)(出光興産社製、「poly−bd R15HT」、親水基当量:600g/mol)
・ヒドロキシ基両末端変性イソプレンゴム(出光興産社製、「poly−ip」、親水基当量:1250g/mol)
・ヒドロキシ基両末端変性ポリオレフィン(出光興産社製、「EPOL」、親水基当量:1250g/mol)
・1,2ペンタデカンジオール(東京化成社製、試薬、親水基当量:122g/mol)
<導電性ロール試料の作製>
導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、「X−34−264A/B、混合質量比A/B=1/1」)をスタティックミキサーにて混合することにより、弾性層形成用材料を調製した。
軸体として、直径6mmの中実円柱状の鉄棒を準備し、外周面に接着剤を塗布した。この軸体をロール成形用金型の中空空間にセットした後、上記調製した弾性層形成用材料を中空空間内に注入し、190℃で30分間加熱して硬化させ、脱型した。これにより、軸体の外周面に沿って導電性シリコーンゴムよりなるロール状の弾性層(厚み3mm)を形成した。
次いで、上記弾性層の外周面に、ロールコート法により、上記調製した各表層形成用材料を塗工した後、120℃で60分間加熱して硬化させ、表層(厚み15μm)を形成した。これにより、上記弾性層の外周面に沿って表層を有する二層構造の導電性ロール試料1〜11、1C〜6Cを作製した。なお、試料1〜11の表層のマトリックスポリマーは、ポリマー成分として熱可塑性ポリウレタンと重合体とを含んでいる。試料1〜6における重合体は、ポリイソシアネートと、ヒドロキシ基を2つ含む疎水性の炭化水素からなる疎水性有機化合物と、2官能の親水性ポリオールとの重合体である。試料7〜11における重合体は、ポリイソシアネートと、ヒドロキシ基を2つ含む疎水性の炭化水素からなる疎水性有機化合物との重合体である。
<評価>
−トナー荷電量Q/M−
各導電性ロール試料を、現像ロールとして市販のカラープリンター(日本ヒューレット・パッカード社製、「Color Laser Jet4700dn」)に組み込み、25℃×50%RHの環境下にてベタ画像を出力した。この出力時の初期段階において、表層表面のトナー(スチレン−アクリル系トナー)を金属円筒管と円筒フィルターを用いて吸引収集し、その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた荷電量Q(−μC)、吸引収集したトナーの全質量M(g)を測定した。そして、単位質量あたりのトナー荷電量Q/M(−μC/g)を算出した。
トナー荷電量Q/Mが20(−μC/g)以上であった場合を、トナー荷電性を大幅に向上させることができているとして「A」とした。トナー荷電量Q/Mが20(−μC/g)未満であった場合を、従来と変わらないトナー荷電性であるとして「C」とした。
なお、吸引した面積A(m2)も併せて測定し、単位面積あたりのトナー搬送量M/A(g/m2)も算出したところ、いずれの導電性ロール試料もトナー搬送量M/Aは12(g/m2)程度であった。したがって、導電性ロール試料は、いずれも現像ロールとして機能するのに問題ないトナー搬送性を備えているといえる。
−表層表面の動摩擦係数μk−
静・動摩擦係数測定器(協和界面科学社製、「Triboster500」)のステージ上に固定した導電性ロール試料の表面、つまり、表層表面に、接触子(直径3mmの鋼球製)による垂直荷重W50gを加えた。この状態でステージを移動速度7.5mm/秒で水平方向に1cm移動させた。これにより導電性ロール試料と接触子との間に生じた摩擦力Fから、導電性ロール試料の表層表面における初期の動摩擦係数μk(F/W)を算出した。
上記動摩擦係数μkが1.0以下であった場合を、表層表面の低摩擦性が維持されているとして「A」とした。上記動摩擦係数μkが1.0超であった場合を、表層表面の摩擦力が大きく、滑り性が悪いとして「C」とした。
以下、各導電性ロール試料の詳細な構成と評価結果をまとめて表2、表3に示す。
表1〜表3によれば、以下のことがわかる。
試料1Cの導電性ロールは、表層に表面改質剤を有しておらず、また、表層のマトリックスポリマーに疎水性有機化合物を重合成分とする重合体が含まれていない。そのため、試料1Cの導電性ロールは、表層の表面改質がなされず、トナー荷電性に劣る。
試料2Cの導電性ロールは、表層に表面改質剤を有してはいるが、表層のマトリックスポリマーに疎水性有機化合物を重合成分とする重合体が含まれていない。そのため、試料2Cの導電性ロールは、従来と同程度のトナー荷電性しか有しておらず、トナー荷電性を大幅に向上させることができていない。これは、マトリックスポリマーが上記重合体を含んでいないため、表層に添加された表面改質剤がマトリックスポリマーの内部に比較的多く残り、添加された表面改質剤を十分に活かしきれなかったためである。実際、図6に示されるように、試料2Cの導電性ロールにおける表層1は、表層本体部11と、表面改質層12とを有しているが、表面改質層12の厚みが50nm程度であり、後述する試料7における表面改質層12の厚みに比べて、随分薄かった。
試料3C〜5Cの導電性ロールは、表層のマトリックスポリマーに疎水性有機化合物を重合成分とする重合体が含まれてはいる。しなしながら、分子内にアミノ基またはシリコーン基のいずれか一方のみしか含まれていない表面改質剤を用いている。そのため、このような構成では、上記重合体を有していても、試料2Cの導電性ロールよりもかえってトナー荷電量が低くなってしまうことがわかる。また、試料3C、試料5Cの結果からわかるように、これら各試料は、表層表面の動摩擦係数も増加し、表層表面の低摩擦性を確保することができないこともわかる。
試料6Cの導電性ロールは、表層のマトリックスポリマーに疎水性有機化合物を重合成分とする重合体が含まれてはいる。しなしながら、表層に表面改質剤が添加されていないので、トナー荷電性、表層表面の低摩擦性に劣ることがわかる。
これらに対し、試料1〜11の導電性ロールは、表層のマトリックスポリマーが、疎水性有機化合物を重合成分とする重合体を含んでいる。また、表層に添加された表面改質剤は、アミノ基およびシリコーン基を有している。そのため、試料1〜11の導電性ロールは、表層表面の低摩擦性を維持しつつ、従来例である試料2Cの導電性ロールに比べ、トナー荷電性を大幅に向上できていることがわかる。これは、次の理由による。すなわち、表面改質剤のアミノ基は親水性であるため、上記特定の重合体を含むマトリックスポリマーの内部に表面改質剤が残り難くなり、表層の表面近傍に表面改質剤が出やすくなる。そのため、表層表面にて表面改質剤がトナーに触れやすくなる。それ故、試料1〜11の導電性ロールは、マトリックスポリマーの内部に表面改質剤が残留する従来の試料2Cの導電性ロールに比べ、トナー荷電性を大幅に向上させることができた。実際、図5に示されるように、例えば、試料7の導電性ロールは、表層本体部11と、表面改質層12とを有しており、表面改質層12の厚みが900nm程度もあり、前述した試料2Cの表面改質層12の厚みに比べて、随分厚かった。また、試料1〜11の導電性ロールは、表面改質剤がアミノ基以外にもシリコーン基を有しているので、これによって表層表面の動摩擦係数が低下し、表層表面の低摩擦性も確保することができた。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。