次に、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、電子燃料噴射方式の内燃機関制御システムに、本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例を示すシステム図である。エンジンシリンダ112とエンジンピストン114を備える内燃機関110の動作に基づき、吸入空気が被計測気体30としてエアクリーナ122から吸入され、主通路124である例えば吸気管、スロットルボディ126、吸気マニホールド128を介してエンジンシリンダ112の燃焼室に導かれる。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は本発明に係る熱式流量計300で計測され、計測された流量に基づいて燃料噴射弁152より燃料が供給され、吸入空気である被計測気体30と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施例では、燃料噴射弁152は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が吸入空気である被計測気体30と共に混合気を成形し、吸気弁116を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
燃焼室に導かれた燃料および空気は、燃料と空気の混合状態を成しており、点火プラグ154の火花着火により、爆発的に燃焼し、機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は排気弁118から排気管に導かれ、排気24として排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ132により制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ132の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量を制御することにより、内燃機関が発生する機械エネルギを制御することができる。
エアクリーナ122から取り込まれ主通路124を流れる吸入空気である被計測気体30の流量および温度が、熱式流量計300により計測され、熱式流量計300から吸入空気の流量および温度を表す電気信号が制御装置200に入力される。また、スロットルバルブ132の開度を計測するスロットル角度センサ144の出力が制御装置200に入力され、さらに内燃機関のエンジンピストン114や吸気弁116や排気弁118の位置や状態、さらに内燃機関の回転速度を計測するために、回転角度センサ146の出力が、制御装置200に入力される。排気24の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ148の出力が制御装置200に入力される。
制御装置200は、熱式流量計300の出力である吸入空気の流量、および回転角度センサ146の出力に基づき計測された内燃機関の回転速度、に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算する。これら演算結果に基づいて、燃料噴射弁152から供給される燃料量、また点火プラグ154により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際にはさらに熱式流量計300で計測される吸気温度やスロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ148で計測された空燃比の状態に基づいて、きめ細かく制御されている。制御装置200はさらに内燃機関のアイドル運転状態において、スロットルバルブ132をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ156により制御し、アイドル運転状態での内燃機関の回転速度を制御する。
図2は、熱式流量計300の外観を示している。図2Aは熱式流量計300の正面図、図2Bは左側面図、図2Cは背面図、図2Dは右側面図である。熱式流量計300は、ハウジング302を備えている。ハウジング302は、吸気管に挿入されて主通路124(図1を参照)に配置される。ハウジング302の基端部には、吸気管に固定するためのフランジ305と、吸気管外部に露出するコネクタ(外部接続部)306が設けられている。
ハウジング302は、フランジ305を吸気管に固定することにより片持ち状に支持され、主通路124を流れる被計測気体の主流れ方向に垂直な方向に沿って延びるように配置される。ハウジング302には、主通路124を流れる被計測気体30を取り込むための副通路が設けられており、その副通路内に被計測気体30の流量を検出するための流量検出部451が配置されている。
ハウジング302の先端側でかつ主流れ方向上流側の位置には、吸入空気などの被計測気体30の一部を副通路307(図3Bを参照)に取り込むための入口311が設けられている。そして、先端側でかつ主流れ方向下流側の位置には、副通路から被計測気体30を主通路124に戻すための第1出口312と第2出口313が設けられている。第1出口312と第2出口313は、図2Dに示すように、ハウジング302の厚み方向に横並びに配置されている。
入口311が、ハウジング302の先端側に設けられることにより、主通路の内壁面から離れた中央部に近い部分の気体を副通路に取り込むことができる。したがって、主通路の内壁面の温度の影響を受け難くなり、気体の流量や温度の計測精度の低下を抑制できる。
主通路の内壁面近傍では流体抵抗が大きく、主通路の平均的な流速に比べ、流速が低くなるが、本実施例の熱式流量計300では、フランジ305から主通路の中央に向かって延びる薄くて長いハウジング302の先端側に入口311が設けられているので、主通路中央部の流速の速い気体を副通路に取り込むことができる。また、副通路の第1出口312と第2出口313もハウジング302の先端側に設けられているので、副通路内を流れた気体を流速の速い主通路中央部に戻すことができる。
ハウジング302は、正面に略長方形の幅広面を有するのに対して、側面が狭い(厚さが薄い)形状を成している。ハウジング302は、主通路を流れる被計測気体の主流れ方向に沿って正面と背面が配置され、主流れ方向に対向するように側面が配置される。これにより、熱式流量計300は、被計測気体30に対しては流体抵抗を小さくして、十分な長さの副通路を備えることができる。
すなわち、本実施例の熱式流量計は、主通路124を流れる被計測気体30の流れ方向と直交する直交面に投影されるハウジングの形状が、前記の直交面上で第1の方向50に定義される長さ寸法と、前記の直交面上で第1の方向50(図2B参照)に対して垂直な第2の方向51に定義される厚み寸法とを有し、厚み寸法が長さ寸法よりも小さい形状を成している。
ハウジング302には、被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が設けられている。ハウジング302は、長手方向中央部で且つ被計測気体の主流れ方向上流側の位置において、下流側に向かって窪んだ形状を有しており、温度検出部452は、その窪んだ位置に設けられている。温度検出部452は、ハウジング302の上流側外壁から主流れ方向上流側に向かって突出する形状を成している。
図3は熱式流量計300から表カバー303および裏カバー304を取り外したハウジング302の状態を示している。図3Aはハウジング302の正面図、図3Bは背面図である。
ハウジング302の内部には、主通路124を流れる被計測気体30の流量を計測するための流量検出部451や主通路124を流れる被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452等を備える回路パッケージ400が一体にモールド成形されている(図3A参照)。
そして、ハウジング302には、副通路307を構成するための副通路溝が形成されている。本実施例では、ハウジング302の表裏両面に副通路溝が凹設されており、表カバー303及び裏カバー304をハウジング302の表面及び裏面にかぶせることにより、副通路307が完成する構成になっている。かかる構造とすることで、ハウジング302の成形時(樹脂モールド工程)にハウジング302の両面に設けられる金型を使用して、表側副通路溝330と裏側副通路溝331の両方をハウジング302の一部として全てを成形することが可能となる。
副通路溝は、ハウジング302の裏面に形成された裏側副通路溝331と、ハウジング302の表面に形成された表側副通路溝330とからなる。裏側副通路溝331は、第1溝部332と、第1溝部332の途中で分岐する第2溝部333を有している。
第1溝部332は、ハウジング302の先端部で被計測気体30の主流れ方向に沿うように一直線状に延在して、ハウジング302の入口311に一端が連通し、ハウジング302の第1出口312に他端が連通している。第1溝部332は、入口311から略一定の断面形状で延在する直線部332Aと、直線部332Aから第1出口312に向かって移行するに従って溝幅が漸次狭くなる絞り部332Bとを有している。
第1溝部332の直線部332Aには、複数の凸条部335が設けられている。凸条部335は、直線部332Aの底壁面332bにおいて、第1溝部332の溝幅方向に所定間隔をおいて複数が並ぶように設けられており、直線部332Aに沿って入口311から絞り部332Bまでの間に亘って延在している。凸条部335は、断面が台形形状を有しており、両側の側面が斜めに傾いている。したがって、水滴が付着した場合に、水滴の接触角を大きくして水滴の高さを低くすることができ、濡れ性を高くして、上流側から下流側に向かって素早く流すことができる。したがって、水滴が第1溝部332に付着した場合に、第1溝部332から第2溝部333に流れ込むのを効果的に防ぐことができ、外部に迅速に排出させることができる。
第2溝部333は、第1溝部332の直線部332Aから分岐してカーブしながらハウジング302の基端側に向かって進み、ハウジング302の長手方向中央部に設けられている計測用流路341に連通する。第2溝部333は、第1溝部332を構成する一対の側壁面のうち、ハウジング302の基端側に位置する側壁面332aに上流端が連通しており、底壁面333aが第1溝部332の直線部332Aの底壁面332bと面一に連続している。
ハウジング302の第1溝部332の底壁面332bと第2溝部333の底壁面333aとの境界部分に沿って段差334が設けられている。段差334は、第1溝部332の側壁面332aと第2溝部333の内周側の側壁面333bとの交点から第1溝部332の側壁面332aと第2溝部333の外周側の側壁面333cとの交点までを直線で結ぶライン上に形成されている。
段差334は、第1溝部332の直線部332Aの底壁面332bに付着した水滴が、被計測気体30によって押し流されて第2溝部333側に向かって移動してきた場合に、段差334によって水滴を堰き止めることができ、第1溝部332の底壁面332bから第2溝部333の底壁面333aに流れ込むのを防ぐことができる。したがって、水滴が通路壁面を伝って第1溝部332から第2溝部333に侵入するのを防ぐことができ、流量検出部451を水から保護することができる。
第2溝部333のカーブ内側の側壁面333bには、凹部333eが凹設されており、第2溝部333に侵入した水を取り込み、裏カバー304において凹部333eに対向する位置に穿設されている排水孔376(図2C参照)から外部に排出させることができる。
計測用流路341は、ハウジング302を表側から裏側まで厚さ方向に貫通して形成されており、回路パッケージ400の流路露出部430が突出して配置されている。第2溝部333は、回路パッケージ400の流路露出部430よりも副通路上流側で計測用流路341に連通している。
第2溝部333は、計測用流路341に向かって進むにつれて溝深さが深くなる形状を有しており、特に計測用流路341の手前で急激に深くなる急傾斜部333dを有している。急傾斜部333dは、計測用流路341において、回路パッケージ400の流路露出部430が有する表面431と裏面432のうち、流量検出部451が設けられている表面431側に被計測気体30の気体を通過させ、裏面432側には被計測気体30に含まれる塵埃などの異物を通過させる。
被計測気体30は、裏側副通路溝331内を流れるにつれてハウジング302の表側(図3Bで図の奥側)の方向に徐々に移動する。そして、質量の小さい空気の一部は、急傾斜部333dに沿って移動し、計測用流路341において流路露出部430の表面431(図3A参照)の方を流れる。一方、質量の大きい異物は遠心力によって急激な進路変更が困難なため、急傾斜部333dに沿って流れることができず、計測用流路341において流路露出部430の裏面432(図3B参照)の方を流れる。
流量検出部451は、回路パッケージ400の流路露出部430の表面431に設けられている。流量検出部451では、流路露出部430の表面431の方に流れた被計測気体30との間で熱伝達面を介して熱伝達が行われ、流量が計測される。
被計測気体30は、回路パッケージ400の流路露出部430の表面431側と裏面432側を通過すると、計測用流路341の副通路下流側から表側副通路溝330に流れ込み、表側副通路溝330内を流れて第2出口313から主通路124に排出される。
表側副通路溝330は、図3Aに示すように、計測用流路341の副通路下流側に一端が連通し、ハウジング302の先端側に形成された第2出口313に他端が連通する。表側副通路溝330は、ハウジング302の先端側に移行するに従って漸次主流れ方向下流側に向かって進むようにカーブし、ハウジング302の先端部で被計測気体30の主流れ方向下流側に向かって直線上に延びて、第2出口313に向かって溝幅が漸次狭くなる形状を有している。
この実施例では、裏側副通路溝331で構成される流路は曲線を描きながらハウジング302の先端側からフランジ305側である基端側に向かい、最もフランジ305に接近した位置では、副通路307を流れる被計測気体30は主通路124の主流れ方向に対して逆方向の流れとなり、この逆方向の流れの部分でハウジング302の裏面側に設けられた裏側副通路が、表面側に設けられた表側副通路につながる。
計測用流路341は、回路パッケージ400の流路露出部430によって、表面431側の空間と裏面432側の空間に分けられており、ハウジング302によって分けられてはいない。即ち、計測用流路341は、ハウジング302の表面と裏面とを貫通して形成されており、この一つの空間に回路パッケージ400が片持ち状に突出して配置されている。このような構成とすることで、1回の樹脂モールド工程でハウジング302の表裏両面に副通路溝を成形でき、また両面の副通路溝を繋ぐ構造を合わせて成形することが可能となる。尚、回路パッケージ400はハウジング302の固定部351、352、353に樹脂モールドにより埋設して固定されている。
また、上記した構成によれば、ハウジング302の樹脂モールド成形と同時に、回路パッケージ400をハウジング302にインサートして実装することができる。なお、回路パッケージ400よりも上流側の通路上流側と下流側の通路下流側のどちらか一方をハウジング302の幅方向に貫通した構成とすることで、裏側副通路溝331と表側副通路溝330とをつなぐ副通路形状を1回の樹脂モールド工程で成形することも可能である。
ハウジング302の表側副通路は、表側副通路溝330を表カバー303で閉塞することによって形成され、表側副通路溝330を構成する一対の側壁面の溝高さ方向上側の側壁上端部と表カバー303の対向面とが密着される。そして、ハウジング302の裏側副通路は、裏側副通路溝331を裏カバー304で閉塞することによって形成され、裏側副通路溝331を構成する一対の側壁面の溝高さ方向上側の側壁上端部と裏カバー304の対向面とが密着される。
図3A及び図3Bに示すように、ハウジング302には、フランジ305と副通路溝が形成された部分との間に回路室となる空洞部342が形成されている。空洞部342は、ハウジング302を厚さ方向に貫通することによって形成されており、本実施例では、ハウジング302の固定部352によってフランジ側の空洞部342Aと副通路側の空洞部342Bの2つに分けられている。
空洞部342Aでは、回路パッケージ400のアウターリード(接続端子)412とコネクタ306の外部端子の内端306aとが、スポット溶接あるいはレーザ溶接などにより、互いに電気的に接続されている。空洞部342Bには、導電性の中間部材551が設けられている。中間部材551は、表カバー303をハウジング302に取り付けることによって、表カバー303の導体501と回路パッケージ400のリードフレーム401との間に介在されて互いを電気的に接続する。空洞部342は、表カバー303と裏カバー304をハウジング302に取り付けることによって閉塞され、空洞部342の周囲が表カバー303と裏カバー304とレーザ溶接されて密封される。
図4は表カバーの構成を説明する図、図5は、裏カバーの構成を説明する図である。図4Aは、表カバーの対向面を示す図、図4Bは、図4AのIVB−IVB線断面図、図4Cは、図4AのIVC−IVC線断面図である。図5Aは、裏カバーの対向面を示す図、図5Bは、図5AのVB−VB線断面図である。
表カバー303や裏カバー304は、薄い板状であり、広い冷却面を備える形状を成している。このため熱式流量計300は、空気抵抗が低減され、さらに主通路124を流れる被計測気体により冷却されやすい効果を有している。
表カバー303は、ハウジング302の表面を覆う大きさを有している。表カバー303の対向面には、ハウジング302の表側副通路溝330を閉塞する第5領域361と、ハウジング302の計測用流路341の表側を閉塞する第6領域362と、空洞部342の表側を閉塞する第7領域363が形成されている。第7領域363は、空洞部342のうち、ハウジング302のフランジ305側の空洞部342Aを閉塞する領域363Aと、副通路側の空洞部342Bを閉塞する領域363Bを有している。
そして、第5領域361と第6領域362の周囲に沿って、ハウジング302の表側副通路溝330の側壁上端部が入り込む凹部361aが凹設されている。また、第7領域363の周囲に沿って、空洞部342の表側外周端部が入り込む凹部363aが凹設されている。そして、表カバー303の対向面には、回路パッケージ400の流路露出部430の先端とハウジング302の計測用流路341との間の隙間に挿入される凸部362aが設けられている。
表カバー303は、表カバー303の対向面をハウジング302の表面に対向させて、凹部361aに入り込んだハウジング302の表側副通路溝330の側壁上端部との間でレーザ溶接され、また、凹部363aに入り込んだハウジング302の空洞部342の周囲との間でレーザ溶接されて、ハウジング302との間が密着固定される。
表カバー303には、導体501が設けられている。導体501は、被計測気体に含まれている塵埃等の異物が帯電して流量検出部451やその周囲に付着しないように、除電するためのものであり、例えばアルミニウム合金などの導電性を有する金属部品によって構成されている。本実施例では、導体501は、金属板をプレス加工することによって構成されており、表カバー303にインサート成形されている。
導体501は、表カバー303の第6領域362に配置される平板部502と、平板部502から延出して先端が第7領域363に配置される腕部503を有している。平板部502は、表カバー303の対向面に少なくとも一部が露出して、ハウジング302の計測用流路341において回路パッケージ400の流路露出部430の表面431のうち少なくとも流量検出部451に対向する位置に対向配置される。平板部502は、流量検出部451との間を通過する被計測気体30の流速を速めるために、被計測気体30の流れ方向中央が山形に突出した凸部502cを有している。そして、図4Cに示すように、平板部502の副通路上流側の上流端部502aと副通路下流側の下流端部502bは、それぞれ表カバー303に没入して(没入部)、表カバー303の対向面の第6領域362と面一に連続するように一部が露出して設けられている。腕部503は、先端で折曲されて突出する爪部504を有している。爪部504は、表カバー303をハウジング302に取り付けた状態で、中間部材551の先端に当接する。
裏カバー304は、ハウジング302の裏面を覆う大きさを有している。裏カバー304の対向面には、ハウジング302の裏側副通路溝331の第1溝部332を閉塞する第1領域371Aと、第2溝部333を閉塞する第2領域371Bと、ハウジング302の計測用流路341の裏側を閉塞する第3領域372と、空洞部342の裏側を閉塞する第4領域373が形成されている。第4領域373は、空洞部342のうち、ハウジング302のフランジ305側の空洞部342Aを閉塞する領域373Aと、副通路側の空洞部342Bを閉塞する領域373Bを有している。そして、第1領域371A、第2領域371B、第3領域372の周囲に沿って、ハウジング302の裏側副通路溝331の側壁上端部が入り込む凹部371aが凹設されている。また、第4領域373の周囲には、空洞部342の裏側外周端部が入り込む凹部373aが凹設されている。
裏カバー304の第1領域371Aと第2領域371Bとの境界部分には、段差375が設けられている。段差375は、第1領域371Aに付着した水滴が、被計測気体30によって押し流されて第2領域371B側に向かって移動してきた場合に、水滴を堰き止めることができる。したがって、第1領域371Aから第2領域371Bに流れ込むのを防いで、流量検出部451を水から保護することができる。
裏カバー304の第1領域371Aには、複数の凸条部377が設けられている。凸条部377は、第1領域371Aの長手方向に沿って延在し、短手方向に所定間隔をおいて複数が並ぶように設けられている。凸条部377は、段差375と同様の断面が台形形状を有しており、両側の側面が斜めに傾いている。したがって、水滴が付着した場合に、水滴の接触角を大きくして水滴の高さを低くすることができ、濡れ性を高くして、付着した水滴を上流側から下流側に向かって素早く流すことができる。したがって、水滴が第1領域371Aから第2領域371Bに流れ込むのを効果的に防ぐことができ、外部に迅速に排出させることができる。
裏カバー304には、副通路307に連通する排水孔376が穿設されている。排水孔376は、ハウジング302に裏カバー304を取り付けた状態でハウジング302の凹部333eを閉塞する位置に貫通して形成されており、第2溝部333の凹部333eに取り込まれた水をハウジング302の外部に排出させることができる。
裏カバー304の対向面には、回路パッケージ400の流路露出部430の先端とハウジング302の計測用流路341との間の隙間に挿入される凸部372aが設けられている。凸部372aは、表カバー303の凸部362aと協働して、回路パッケージ400の流路露出部430の先端とハウジング302の計測用流路341との間の隙間を埋める。
表カバー303と裏カバー304は、ハウジング302の表面と裏面にそれぞれ取り付けられて表側副通路溝330及び裏側副通路溝331との協働により副通路307を形成する。副通路307は、入口311から第1出口312まで一直線状に延びる第1通路と、第1通路の途中で分岐してカーブしながら流量検出部451に向かう第2通路とを有する。
表カバー303に設けられている導体501は、表カバー303をハウジング302に取り付けることによって、中間部材551を介して回路パッケージ400のリードフレーム401に導電接続される。したがって、導体501をグランドに接続した導電回路を構成することができ、導体501が配置されている被計測気体30が通過する場所である副通路307内の流量検出部451や近傍の構成物の除電を行うことができる。したがって、被計測気体30に含まれている微粒子などの異物が帯電して流量検出部451等に強固に付着するのを防ぎ、汚損による検出性能の劣化を防止できる。
図6Aは、図2AのVIA−VIA線断面図、図6Bは、図6AのVIBを拡大して示す図、図6Cは、図2AのVIC−VIC線断面図、図6Dは、図2AのVID−VID線断面図である。
回路パッケージ400は、リードフレーム401と、リードフレーム401に搭載された回路部品とを、熱硬化性の樹脂材403で一体にモールドすることにより構成されている。本実施例では、回路部品として、図9に示すように、LSI453、コンデンサチップ454、流量検出部451や温度検出部452のセンサエレメントがリードフレーム401に搭載されている。
回路パッケージ400は、縦長の平板形状を有しており(図8を参照)、ハウジング302にモールドされることにより、流路露出部430が副通路307内に突出し、流路露出部430の表面431と裏面432が副通路307内における被計測気体30の流れ方向に沿って平行に配置される。回路パッケージ400の一方の長辺部には、突起部433が設けられており、突起部433の先端に温度検出部452が設けられている。突起部433は、回路パッケージ400の平面に沿って突出しており、ハウジング302の上流側外壁317を貫通して温度検出部452をハウジング302の外部に露出する位置に配置させている。
図8に示すように、回路パッケージ400の他方側の長辺部には、リードフレーム401の一部が樹脂材403から露出するリード露出部405が設けられている。リード露出部405は、回路パッケージ400の端部の樹脂材403を切り欠くことによって構成されており、リードフレーム401の表面と裏面に設けられている。リード露出部405は、本実施例では、回路パッケージ400を樹脂材403でモールドする際に、リードフレーム401の表面と裏面の両方に金型を当てて挟み込み、リード露出部405への樹脂の流入を阻止することによって形成される。
リードフレーム401のリード露出部405は、中間部材551を介して導体501によって押圧されている。中間部材551は、例えば導電性ゴムなどの導電性を有する弾性部材からなり、リードフレーム401のリード露出部405に当接されている。中間部材551は、ハウジング302の空洞部342B内に配置されており、リードフレーム401のリード露出部405と表カバー303の導体501との間を電気的に接続している。中間部材551は、導体501とリード露出部405との間の距離の変化に応じて弾性変形可能な弾性体により構成されている。
中間部材551は、図6Dに示すように、ハウジング302の支持部343に基端が支持され、先端がリードフレーム401のリード露出部405と導体501の爪部504との間に介在されている。中間部材551は、表カバー303をハウジング302に取り付けることによって、リードフレーム401のリード露出部405と導体501の爪部504との間に中間部材551の先端が挟まれて弾性変形し、所定の押圧力でリードフレーム401のリード露出部405に押圧される。
図7は、リードフレームと導体との接続方法を説明する図である。中間部材551を支持するハウジング302の支持部343は、ハウジング302の空洞部342Bに突出して設けられている(図7(1)参照)。支持部343には、複数の棒状部材がハウジング302の表面側に向かって立設されている。中間部材551は、棒状部材の軸方向に沿うようにハウジング302の表面側から支持部343に向かって押し込まれ、複数の棒状部材の間に基端を挿入し、中央の棒状部材を中間部材551の基端の丸穴に嵌入させることによって支持部343に支持される(図7(2)を参照)。
そして、ハウジング302に表カバー303が取り付けられる。図7(3)では、表カバー303は省略して図示をせず、表カバー303に設けられている導体501のみを図示している。中間部材551は、表カバー303の取り付けにより、導体501の爪部504と当接し、ハウジング302の厚さ方向に押圧されて導体501の爪部504と回路パッケージ400のリード露出部405との間に挟み込まれ、押圧方向に弾性変形した状態で保持される。中間部材551は、導電性ゴムによって構成されているので、導体501と回路パッケージ400のリード露出部405との間を電気的に接続することができる。
本実施例によれば、回路パッケージ400にリード露出部405を設けて、表カバー303の導体501と電気的に接続しているので、回路パッケージ400内のリードフレーム401に対して導体501を簡単に接続できる。したがって、導体が配置されている被計測気体が通過する場所である副通路307内の流量検出部451や近傍の構成物の除電を行うことができ、被計測気体30に含まれている微粒子などの異物が帯電して流量検出部451等に強固に付着するのを防ぎ、汚損による検出性能の劣化を防止できる。
図9は、リードフレームの具体的な構成例を示す図である。
リードフレーム401は、LSI453等の回路部品が実装される実装部404と、樹脂材403から少なくとも一部が露出して中間部材551を介して導体501により押圧されるリード露出部405とを有している。リード露出部405は、実装部404に隣接して配置されている。実装部404とリード露出部405は、リードフレーム401のGNDに接続されており、インナーリード411からアウターリード412を介してコネクタ306の外部端子の内端306aと接続されている。
リードフレーム401は、実装部404とリード露出部405との間の少なくとも一部が離間する構成を有している。本実施例では、実装部404と、中間部材551を介して押圧されるリード露出部405の押圧領域405aとの間にスリット406が設けられている。
リードフレーム401は、スリット406によってリードフレーム401の実装部404とリード露出部405との間が離間しているので、中間部材551を介してリード露出部405の押圧領域405aを押圧したときの応力が実装部404の実装領域に作用するのを防ぐことができる。
回路パッケージ400は、回路配線がパッケージ化されており、導体501との導通をとるために、回路パッケージ400にリードフレーム401が露出するリード露出部405を設ける必要がある。リードフレーム401のリード露出部405は、回路パッケージ400をモールド成形する際に、リードフレーム401の一部を金型で上下両側から挟み込むことによって形成されるので、かかる部分には表面と裏面に樹脂材403がなく、周囲と比較して特に剛性が低い。したがって、スリット406がないと、中間部材551を介して導体501でリードフレーム401のリード露出部405の押圧領域405aを押圧した場合に、リード露出部405に作用した応力が実装部404に伝達されて、実装部404に搭載されているLSI453や流量検出部451のエレメントの特性に変化を及ぼすおそれがある。
これに対して、本実施例では、リードフレーム401にスリット406を設けて、リードフレーム401の実装部404とリード露出部405との間を離間させている。したがって、中間部材551を介してリードフレーム401のリード露出部405の押圧領域405aを押圧した場合に、リード露出部405に作用した応力をスリット406で遮断してリード露出部405から実装部404に伝達されるのを防ぎ、実装部404に実装されているLSI453等の回路部品の特性に影響を与えるのを防ぐことができる。
図10は、導体とリードフレームとの接続状態を断面で示す概念図である。
導体501は、表カバー303の対向面に配置されており、表カバー303をハウジング302に取り付けることによって、中間部材551を間に介して回路パッケージ400のリードフレーム401と電気的に接続される。導体501は、表カバー303とハウジング302との間に挟み込まれて、閉じた空間内にて接触接続している。したがって、そのままでは、回路パッケージ400との導通状態が確保されているか否かを確認することができない。特に、本実施例では、導体501とリードフレーム401との間に中間部材551を介在させて互いを電気的に接続しているので、接点数が多くなっており、例えば部品組立後に全ての接点が確実に接続されていることを確認する作業が必要とされる。そこで、本実施例では、表カバー303に導体501の一部を露出させる露出部321を設けて、部品組立後の導通検査を可能としている。
図10に示すように、表カバー303には、導体501の一部を露出させる露出部321が設けられている。したがって、露出部321を介して表カバー303の表面側から対向面側の導体501に接触することができ、例えばコネクタ306の外部端子の外端306bと接続することによって、導体501と回路パッケージ400のリード露出部405とが電気的に接続されているか否かの導通検査を行うことができる。したがって、表カバー303を取り付けた状態でも導体501と回路パッケージ400のリード露出部405との間の接続確認が可能となり、部品組立後に外部からの導通検査が可能となる。また、例えばメンテナンス時にも導通検査を行うことができる。
本実施例では、図2A及び図4A及び図4Cに示すように、表カバー303に、露出部321として3つの凹部322、323、324を設けている。凹部322、323、324は、それぞれ表カバー303の表面に凹設されており、底面に導体501が露出している。凹部322は、図4Cに示すように、導体501の平板部502の上流端部502aと対向する位置に設けられており、凹部322の底面に上流端部502aが露出している。そして、凹部323は、導体501の平板部502の下流端部502bと対向する位置に設けられており、凹部323の底面に下流端部502bが露出している。凹部324は、図4A及び図6Bに示すように、導体501の腕部503に対向する位置に設けられており、凹部324の底面には腕部503が露出している。
凹部322、323、324は、導体501を表カバー303にインサート成形する際に形成することができ、例えば、成形型のキャビティ内で導体501に凸部を当接させて表カバー303を成形し、型から抜くことによって形成できる。凹部323と凹部324は、図6Cに示すように、底面の一部が導体501の平板部502の上流端部502aと下流端部502bに対向する位置に設けられている。平板部502の上流端部502aと下流端部502bは、図4Cに示すように、表カバー303の第6領域362と面一になるように表カバー303に没入しているので、凹部322、323は、表カバー303を貫通しておらず、底面が閉じられている。そして、凹部324は、導体501の腕部503によって完全に閉塞されている。したがって、凹部322、323、324を被計測気体30が通過して主通路124と副通路307との間を行き来することはなく、流量検出部451における検出精度に影響を与えることはない。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。