JP6073722B2 - 熱式流量計 - Google Patents

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Description

本発明は熱式流量計に関する。
気体の流量を計測する熱式流量計は流量を計測するための流量検出部を備え、前記流量検出部と計測対象である前記気体との間で熱伝達を行うことにより、前記気体の流量を計測するように構成されている。熱式流量計が計測する流量は色々な装置の重要な制御パラメータとして広く使用されている。熱式流量計の特徴は、他の方式の流量計に比べ相対的に高い精度で気体の流量、例えば質量流量を計測できることである。
しかしさらに気体流量の計測精度の向上が望まれている。例えば、内燃機関を搭載した車両では、省燃費の要望や排気ガス浄化の要望が非常に高い。これら要望に応えるには、内燃機関の主要パラメータである吸入空気量を高い精度で計測することが求められている。内燃機関に導かれる吸入空気量を計測する熱式流量計は、吸入空気量の一部を取り込む副通路と前記副通路に配置された流量検出部とを備え、前記流量検出部が被計測気体との間で熱伝達を行うことにより、前記副通路を流れる被計測気体の状態を計測して、前記内燃機関に導かれる吸入空気量を表す電気信号を出力する。このような技術は、例えば特開2011−252796号公開公報(特許文献1)に開示されている。
特許文献1には、内燃機関に導かれる吸入空気量を計測する熱式流量計の技術が開示されている。該公報の熱式流量計は、吸入空気量の一部を取り込む副通路と前記副通路に配置された流量検出部とを備え、前記流量検出部が被計測気体との間で熱伝達を行うことにより、前記副通路を流れる被計測気体の状態を計測して、前記内燃機関に導かれる吸入空気量を表す電気信号を出力する構成を有している。
特開2011−252796号公報
熱式流量計は、主通路の通路壁に設けられた取り付け孔から通路内部に計測部を挿入し、フランジを主通路の通路壁に固定することによって取り付けられる。熱式流量計が高い計測精度を得るためには、主通路の取り付け孔に対してハウジングが所定の位置関係で固定されることが好ましい。熱式流量計のハウジングは、計測部よりもフランジの方が高剛性となるように構成されている。
しかしながら、熱式流量計のハウジングが合成樹脂材料を射出成形することによって形成されている場合、フランジの剛性を高めるために肉厚を厚くすると、射出成形後の熱収縮によりヒケや反りなどの変形が生じて、ハウジングの寸法誤差が大きくなり、主通路に対する取り付け精度に影響を及ぼすおそれがある。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い計測精度を得ることができる熱式流量計を提供することである。
上記課題を解決すべく、本発明に係る熱式流量計は、主通路の通路壁に設けられた取り付け孔から通路内部に挿入される計測部と、該計測部が前記取り付け孔に挿入された状態で前記主通路の通路壁に固定されるフランジと、を有するハウジングを備える熱式流量計であって、前記フランジは、該フランジの前記主通路への取り付け面に対向する対向面に凹み部が形成され、該凹み部の一部が前記フランジの側面に開口することを特徴としている。
本発明によれば、高い計測精度の熱式流量計を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
内燃機関制御システムに本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例を示すシステム図である。 熱式流量計の外観を示す図であり、図2(A)は左側面図、図2(B)は正面図である。 熱式流量計の外観を示す図であり、図3(A)は右側面図、図3(B)は背面図である。 熱式流量計の外観を示す図であり、図4(A)は平面図、図4(B)は下面図である。 熱式流量計の外観を示す図であり、図4(C)は図4(A)のA−A線断面図である。 熱式流量計のハウジングを示す図であり、図5(A)はハウジングの左側面図であり、図5(B)はハウジングの正面図である。 熱式流量計のハウジングを示す図であり、図6(A)はハウジングの右側面図であり、図6(B)はハウジングの背面図である。 表カバーの外観を示す図であり、図7(A)は左側面図、図7(B)は正面図、図7(C)は平面図である。 裏カバーの外観を示す図であり、図8(A)は左側面図、図8(B)は正面図、図8(C)は平面図である。 回路パッケージの生産工程を示す図である。 熱式流量計の生産工程を示す図である。
以下に説明する、発明を実施するための形態実施(以下実施例と記す)は、実際の製品として要望されている色々な課題を解決しており、特に車両の吸入空気量を計測する計測装置として使用するために望ましい色々な課題を解決し、色々な効果を奏している。下記実施例が解決している色々な課題の内の一つが、上述した発明が解決しようとする課題の欄に記載した内容であり、また下記実施例が奏する色々に効果の内の1つが、発明の効果の欄に記載された効果である。下記実施例が解決している色々な課題について、さらに下記実施例により奏される色々な効果について、下記実施例の説明の中で、述べる。従って下記実施例の中で述べる、実施例が解決している課題や効果は、発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄の内容以外の内容についても記載されている。
以下の実施例で、同一の参照符号は、図番が異なっていても同一の構成を示しており、同じ作用効果を成す。既に説明済みの構成について、図に参照符号のみを付し、説明を省略する場合がある。
1. 内燃機関制御システムに本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例
図1は、電子燃料噴射方式の内燃機関制御システムに、本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例を示す、システム図である。エンジンシリンダ112とエンジンピストン114を備える内燃機関110の動作に基づき、吸入空気が被計測気体30としてエアクリーナ122から吸入され、主通路124である例えば吸気ボディ、スロットルボディ126、吸気マニホールド128を介してエンジンシリンダ112の燃焼室に導かれる。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は本発明に係る熱式流量計300で計測され、計測された流量に基づいて燃料噴射弁152より燃料が供給され、被計測気体30と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施例では、燃料噴射弁152は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が被計測気体30と共に混合気を成形し、吸入弁116を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
近年、多くの車では排気浄化や燃費向上に優れた方式として、内燃機関のシリンダヘッドに燃料噴射弁152を取り付け、燃料噴射弁152から各燃焼室に燃料を直接噴射する方式が採用されている。熱式流量計300は、図1に示す内燃機関の吸気ポートに燃料を噴射する方式だけでなく、各燃焼室に燃料を直接噴射する方式にも同様に使用できる。両方式とも熱式流量計300の使用方法を含めた制御パラメータの計測方法および燃料供給量や点火時期を含めた内燃機関の制御方法の基本概念は略同じであり、両方式の代表例として吸気ポートに燃料を噴射する方式を図1に示す。
燃焼室に導かれた燃料および空気は、燃料と空気の混合状態を成しており、点火プラグ154の火花着火により、爆発的に燃焼し、機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は排気弁118から排気管に導かれ、排気ガス24として排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ132により制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ132の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量を制御することにより、内燃機関が発生する機械エネルギを制御することができる。
1.1 内燃機関制御システムの制御の概要
エアクリーナ122から取り込まれ主通路124を流れる吸入空気である被計測気体30の流量および温度が、熱式流量計300により計測され、熱式流量計300から吸入空気の流量および温度を表す電気信号が制御装置200に入力される。また、スロットルバルブ132の開度を計測するスロットル角度センサ144の出力が制御装置200に入力され、さらに内燃機関のエンジンピストン114や吸入弁116や排気弁118の位置や状態、さらに内燃機関の回転速度を計測するために、回転角度センサ146の出力が、制御装置200に入力される。排気ガス24の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ148の出力が制御装置200に入力される。
制御装置200は、熱式流量計300の出力である吸入空気の流量、および回転角度センサ146の出力に基づき計測された内燃機関の回転速度、に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算する。これら演算結果に基づいて、燃料噴射弁152から供給される燃料量、また点火プラグ154により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際にはさらに熱式流量計300で計測される吸気温度やスロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ148で計測された空燃比の状態に基づいて、きめ細かく制御されている。制御装置200はさらに内燃機関のアイドル運転状態において、スロットルバルブ132をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ156により制御し、アイドル運転状態での内燃機関の回転速度を制御する。
1.2 熱式流量計の計測精度向上の重要性と熱式流量計の搭載環境
内燃機関の主要な制御量である燃料供給量や点火時期はいずれも熱式流量計300の出力を主パラメータとして演算される。従って熱式流量計300の計測精度の向上や経時変化の抑制、信頼性の向上が、車両の制御精度の向上や信頼性の確保に関して重要である。特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには熱式流量計300により計測される被計測気体30の流量の計測精度の向上が極めて重要である。また熱式流量計300が高い信頼性を維持していることも大切である。
熱式流量計300が搭載される車両は温度変化の大きい環境で使用され、また風雨や雪の中で使用される。雪道を車が走行する場合には、凍結防止剤が散布された道路を走行することとなる。熱式流量計300は、その使用環境における温度変化への対応や、塵埃や汚染物質などへの対応も、考慮されていることが望ましい。さらに熱式流量計300は内燃機関の振動を受ける環境に設置される。振動に対しても高い信頼性の維持が求められる。
また熱式流量計300は内燃機関からの発熱の影響を受ける吸気管に装着される。このため内燃機関の発熱が主通路124である吸気管を介して、熱式流量計300に伝わる。熱式流量計300は、被計測気体と熱伝達を行うことにより被計測気体の流量を計測するので、外部からの熱の影響をできるだけ抑制することが重要である。
車に搭載される熱式流量計300は、以下で説明するように、単に発明が解決しようとする課題の欄に記載された課題を解決し、発明の効果の欄に記載された効果を奏するのみでなく、以下で説明するように、上述した色々な課題を十分に考慮し、製品として求められている色々な課題を解決し、色々な効果を奏している。熱式流量計300が解決する具体的な課題や奏する具体的な効果は、以下の実施例の記載の中で説明する。
2. 熱式流量計300の構成
2.1 熱式流量計300の外観構造
図2および図3、図4は、熱式流量計300の外観を示す図であり、図2(A)は熱式流量計300の左側面図、図2(B)は正面図、図3(A)は右側面図、図3(B)は背面図、図4(A)は平面図、図4(B)は下面図である。熱式流量計300はハウジング302と表カバー303と裏カバー304とを備えている。ハウジング302は、熱式流量計300を主通路124である吸気ボディに固定するためのフランジ312と、外部機器との電気的な接続を行うための外部端子306を有する外部接続部305と、流量等を計測するための計測部310を備えている。計測部310の内部には、副通路を作るための副通路溝が設けられており、さらに計測部310の内部には、主通路124を流れる被計測気体30の流量を計測するための流量検出部や主通路124を流れる被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452を備える回路パッケージ400が設けられている。
2.2 熱式流量計300の外観構造基づく効果
熱式流量計300の入口350が、フランジ312から主通路124の中心方向に向かって延びる計測部310の先端側に設けられているので、主通路124の内壁面近傍ではなく、内壁面から離れた中央部に近い部分の気体を副通路に取り込むことができる。このため熱式流量計300は主通路124の内壁面から離れた部分の気体の流量や温度を測定することができ、熱などの影響による計測精度の低下を抑制できる。主通路124の内壁面近傍では、主通路124の温度の影響を受け易く、気体の本来の温度に対して被計測気体30の温度が異なる状態となり、主通路124内の主気体の平均的な状態と異なることになる。特に主通路124がエンジンの吸気ボディである場合は、エンジンからの熱の影響を受け、高温に維持されていることが多い。このため主通路124の内壁面近傍の気体は、主通路124の本来の気温に対して高いことが多く、計測精度を低下させる要因となる。
主通路124の内壁面近傍では流体抵抗が大きく、主通路124の平均的な流速に比べ、流速が低くなる。このため主通路124の内壁面近傍の気体を被計測気体30として副通路に取り込むと、主通路124の平均的な流速に対する流速の低下が計測誤差につながる恐れがある。図2乃至図4に示す熱式流量計300では、フランジ312から主通路124の中央に向かって延びる薄くて長い計測部310の先端部に入口350が設けられているので、内壁面近傍の流速低下に関係する計測誤差を低減できる。また、図2乃至図4に示す熱式流量計300では、フランジ312から主通路124の中央に向かって延びる計測部310の先端部に入口350が設けられているだけでなく、副通路の出口も計測部310の先端部に設けられているので、さらに計測誤差を低減することができる。
熱式流量計300の計測部310はフランジ312から主通路124の中心方向に向かって長く延びる形状を成し、その先端部には吸入空気などの被計測気体30の一部を副通路に取り込むための入口350と副通路から被計測気体30を主通路124に戻すための出口352が設けられている。計測部310は主通路124の外壁から中央に向かう軸に沿って長く延びる形状を成しているが、幅は、図2(A)及び図3(A)に記載の如く、狭い形状を成している。即ち熱式流量計300の計測部310は、側面の幅が薄く正面が略長方形の形状を成している。これにより、熱式流量計300は十分な長さの副通路を備えることができ、被計測気体30に対しては流体抵抗を小さい値に抑えることができる。このため、熱式流量計300は、流体抵抗を小さい値に抑えられると共に高い精度で被計測気体30の流量を計測することが可能である。
2.3 温度検出部452の構造
計測部310の先端側に設けられた副通路よりもフランジ312側の方に位置して、図2及び図3に示すように、被計測気体30の流れの上流側に向かって開口する入口343が成形されており、入口343の内部には被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が配置されている。入口343が設けられている計測部310の中央部では、ハウジング302を構成する計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって窪んでおり、前記窪み形状の上流側外壁から温度検出部452が上流側に向かって突出する形状を成している。また前記窪み形状の外壁の両側部には表カバー303と裏カバー304が設けられており、前記表カバー303と裏カバー304の上流側端部が、前記窪み形状の外壁より上流側に向かって突出した形状を成している。このため前記窪み形状の外壁とその両側の表カバー303と裏カバー304とにより、被計測気体30を取り込むための入口343が成形される。入口343から取り込まれた被計測気体30は入口343の内部に設けられた温度検出部452に接触することで、温度検出部452によって温度が計測される。さらに窪み形状を成すハウジング302の外壁から上流側に突出した温度検出部452を支える部分に沿って被計測気体30が流れ、表カバー303と裏カバー304に設けられた表側出口344および裏側出口345が主通路124に排出される。
2.4 温度検出部452に関係する効果
被計測気体30の流れに沿う方向の上流側から入口343に流入する気体の温度が温度検出部452により計測され、さらにその気体が温度検出部452を支える部分である温度検出部452の根元部分に向かって流れることにより、温度検出部452を支える部分の温度を被計測気体30の温度に近づく方向に冷却する作用を為す。主通路124である吸気管の温度が通常高くなり、フランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って、温度検出部452を支える部分に熱が伝わり、温度の計測精度に影響を与える恐れがある。上述のように、被計測気体30が温度検出部452により計測された後、温度検出部452の支える部分に沿って流れることにより、前記支える部分が冷却される。従ってフランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って温度検出部452を支える部分に熱が伝わるのを抑制できる。
特に、温度検出部452の支え部分では、計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって凹む形状(図5および図6を用いて以下で説明する)を成しているので、計測部310内の上流側外壁と温度検出部452との間の距離を長くできる。熱伝導距離が長くなるとともに、被計測気体30による冷却部分の距離が長くなる。従ってフランジ312あるいは熱絶縁部315からもたらされる熱の影響を低減できる。これらのことから計測精度が向上する。上記上流側外壁が下流側に向かって凹む形状(図5および図6を用いて以下で説明する)を成しているので、以下で説明する回路パッケージ400(図5と図6参照)の固定が容易となる。
2.5 計測部310の上流側側面と下流側側面の構造と効果
熱式流量計300を構成する計測部310の上流側側面と下流側側面にそれぞれ上流側突起317と下流側突起318とが設けられている。上流側突起317と下流側突起318は根元に対して先端に行くに従い細くなる形状を成しており、主通路124内を流れる吸入空気である被計測気体30の流体抵抗を低減できる。熱絶縁部315と入口343との間に上流側突起317が設けられている。上流側突起317は断面積が大きく、フランジ312あるいは熱絶縁部315からの熱伝導が大きいが、入口343の手前で上流側突起317が途切れており、さらに上流側突起317の温度検出部452側から温度検出部452への距離が、後述するようにハウジング302の上流側外壁の窪みにより、長くなる形状を成している。このため温度検出部452の支え部分への熱絶縁部315からの熱伝導が抑制される。
またフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間に、後述する端子接続部320および端子接続部320を含む空隙が作られている。このためフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間が長くなっており、この長い部分に表カバー303や裏カバー304が設けられ、この部分が冷却面として作用している。従って主通路124の壁面の温度が温度検出部452に及ぼす影響を低減できる。またフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間が長くなることにより、副通路に導く被計測気体30の取り込み部分を主通路124の中央に近づけることができる。主通路124の壁面に関係する計測精度の低下を抑制できる。
図2(B)や図3(B)に示すように、主通路124内に挿入される計測部310は、その両側面が大変狭く、さらに下流側突起318や上流側突起317が空気抵抗を低減する根元に対して先端が狭い形状を成している。このため、熱式流量計300を主通路124に挿入したことによる流体抵抗の増大を抑制できる。また下流側突起318や上流側突起317が設けられている部分では、表カバー303や裏カバー304の両側部より、上流側突起317や下流側突起318が両サイドに突出する形状をしている。上流側突起317や下流側突起318は樹脂モールドで作られるので、空気抵抗の少ない形状に成形し易く、一方表カバー303や裏カバー304は広い冷却面を備える形状を成している。このため熱式流量計300は、空気抵抗が低減され、さらに主通路124を流れる被計測空気により冷却されやすい効果を有している。
2.6 フランジ312の構造と効果
フランジ312は、計測部310や外部接続部305よりも肉厚の板厚を有する平板形状を有している。フランジ312は、主通路に取り付けられる取り付け面と、取り付け面に対向する対向面を有している。以下では、説明の便宜上、取り付け面を下面312B、対向面を上面312Aとして説明するが、熱式流量計の取り付け姿勢状態を限定するものではない。フランジ312の外部に露出する部分である上面(対向面)312Aには、凹み部 311が形成されている。凹み部311は、底面を有する凹み穴であり、フランジ312を肉抜きするために設けられている。
凹み部311は、フランジ312の上面312Aに複数に分かれて設けられており、少なくとも一つの凹み部311は、凹み部311の一部がフランジ312の側面312Cに開口している。各凹み部311は、フランジ312の上面312Aから所定深さ一に配置される底面311aと、底面311aの周縁から上面312Aに向かって周状に立ち上がる周壁部311bを有している。そして、複数の凹み部311のうち、一部がフランジ312の側面312Cに開口する凹み部311は、周壁面311bとフランジ312の側面312Cとの間を連通する第1連通路321を有している。
また、フランジ312には、複数の凹み部311の間を互いに連通する第2連通路323が設けられている。第1連通路321及び第2連通路323は、凹み部311に浸入した液体を排水するためのものであり、フランジ312の上面312Aを切り欠くことによって形成されている。
第1連通路323の底面は、凹み部311の底面311aと同一平面、または、凹み部311の底面311aよりもフランジ312の下面312B方向に接近して配置されている。
例えば、第1連通路321は、凹み部311からフランジ312の側面312Cに移行するにしたがって漸次フランジ312の下面312Bに接近する方向に傾斜している。また、凹み部311の底面311aもフランジ312の中央側である外部接続部305側からフランジ312の側面312C側に移行するにしたがって漸次フランジ312の下面312Bに接近する方向に傾斜している。すなわち、凹み部311の底面311aと第1連通路321は、外部接続部305側が高く、フランジ312の側面312C側が低くなるように傾斜している。
フランジ312は、計測部10や外部接続部305と比較して樹脂が肉厚であり、ハウジング302をモールド成形して樹脂が高温状態から冷却されて硬化するときに、体積収縮によりフランジ312の表面にヒケが生じるおそれがある。また、計測部10や外部接続部305よりも冷却硬化に時間を要するため、応力の発生によって反りが発生しやすく、ハウジング302全体に歪みが生じるおそれがある。このようなヒケや歪みは、ハウジング302の寸法誤差となり、主通路124に対する取り付け精度に影響を及ぼすおそれがある。
これに対して、本実施例では、フランジ312に凹み部311を設けて樹脂の量を減らす肉抜きをしているので、計測部10や外部接続部305とほぼ同等の時間で冷却硬化させることができ、体積収縮をより均一化でき、ヒケや歪みの発生を防ぐことができる。したがって、ハウジング302の寸法誤差を小さくすることができ、取り付け精度の向上により主通路124に対して予め設定された位置に予め設定された姿勢状態で配置することができ、高い計測精度を得ることができる。凹み部311は、フランジ312の上面312Aに設けられて、より多くの樹脂の量を減らす肉抜きができ、ヒケや歪みの発生を防ぐと共に、軽量化も図ることができる。また、凹み部311は、フランジ312の上面312Aにおいて複数に分かれて設けられているので、フランジ312の剛性を損なうことなく肉抜きすることができる。
第1連通路321及び第2連通路323は、水などの液体が凹み部311に浸入した場合に、フランジ312の外に排出して、凹み部311に溜まるのを防ぐことができる。フランジ412の上面は、外部に露出しているので、例えばハウジング302が地上に対して垂直となる姿勢状態で雨水やエンジンルーム内を洗浄する洗浄水等の液体を浴びた場合に、凹み部311に溜まるおそれがある。そして、ハウジング302の材料としてPBTやPPS等の比較的加水分解しやすい合成樹脂材料を用いている場合、液体が凹み部311に溜まった状態で長時間放置されると、加水分解が進行してハウジング302に影響を及ぼすおそれがある。
これに対して、本実施例では、凹み部311の一部がフランジ312の側面312Cに開口しているので、図4(C)に液体の流れを破線で示すように、凹み部311に浸入した液体を、外部に排出することができ、液体が凹み部311に溜まるのを防ぐことができる。特に、第1連通路321の底面は、凹み部311の底面311aと同一平面、または、凹み部311の底面311aよりもフランジ312の下面312B側に接近して配置されているので、高い排水性を有する。そしてさらに、凹み部311の底面311a及び第1連通路321の底面は、外部接続部305側が高く、フランジ312の側面312C側が低くなるように傾斜しているので、排水性を促進することができる。また、第2連通路323は、複数の凹み部311を互いに連通しているので、各凹み部311の間で液体を移動させることができ、最終的に第1連通路321を介して外部に排水することができる。
フランジ312には、その下面312Bである主通路124と対向する部分に、窪み314が複数個設けられており、主通路124との間の熱伝達面を低減し、熱式流量計300が熱の影響を受け難くしている。フランジ312のねじ孔313は熱式流量計300を主通路124に固定するためのもので、これらのねじ孔313の周囲の主通路124に対向する面が主通路124から遠ざけられるように、各ねじ孔313の周囲の主通路124に対向する面と主通路124との間に空間が成形されている。このようにすることで、熱式流量計300に対する主通路124からの熱伝達を低減し、熱による測定精度の低下を防止できる構造をしている。さらにまた前記窪み314は、熱伝導の低減効果だけでなく、ハウジング302の成形時にフランジ312を構成する樹脂の収縮の影響を低減する作用をしている。
フランジ312の計測部310側に熱絶縁部315が設けられている。熱式流量計300の計測部310は、主通路124に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、熱絶縁部315は主通路124の前記取り付け孔の内面に対向する。主通路124は例えば吸気ボディであり、主通路124が高温に維持されていることが多い。逆に寒冷地での始動時には、主通路124が極めて低い温度であることが考えられる。このような主通路124の高温あるいは低温の状態が温度検出部452や後述する流量計測に影響を及ぼすと、計測精度が低下する。このため主通路124の取り付け穴の孔内面と接触する熱絶縁部315には、窪み316が複数個並べて設けられており、隣接する窪み316間の前記孔内面と接触する熱絶縁部315の幅は極めて薄く、窪み316の流体の流れ方向の幅の3分の1以下である。これにより温度の影響を低減できる。また熱絶縁部315の部分は樹脂が厚くなる。ハウジング302の樹脂モールド時に、樹脂が高温状態から低温に冷えて硬化する際に体積収縮が生じ、応力の発生による歪が生じる。熱絶縁部315に窪み316を成形することで体積収縮をより均一化でき、応力集中を低減できる。
熱式流量計300の計測部310は、主通路124に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、熱式流量計300のフランジ312によりねじで主通路124に固定される。主通路124に設けられた取り付け孔に対して所定の位置関係で熱式流量計300が固定されることが望ましい。フランジ312に設けた窪み314を、主通路124と熱式流量計300との位置決めに使用できる。主通路124に凸部を成形することで、前記凸部と窪み314とが嵌め込みの関係を有する形状とすることが可能となり、熱式流量計300を正確な位置で主通路124に固定できる。
2.7 外部接続部305およびフランジ312の構造と効果
図4(A)は熱式流量計300の平面図である。外部接続部305の内部に4本の外部端子306と補正用端子307が設けられている。外部端子306は熱式流量計300の計測結果である流量と温度を出力するための端子および熱式流量計300が動作するための直流電力を供給するための電源端子である。補正用端子307は生産された熱式流量計300の計測を行い、それぞれの熱式流量計300に関する補正値を求めて、熱式流量計300内部のメモリに補正値を記憶するのに使用する端子であり、その後の熱式流量計300の計測動作では上述のメモリに記憶された補正値を表す補正データが使用され、この補正用端子307は使用されない。従って外部端子306が他の外部機器との接続において、補正用端子307が邪魔にならないように、補正用端子307は外部端子306とは異なる形状をしている。この実施例では外部端子306より補正用端子307が短い形状をしており、外部端子306に接続される外部機器への接続端子が外部接続部305に挿入されても、接続の障害にならないようになっている。また外部接続部305の内部には外部端子306に沿って複数個の窪み308が設けられており、これら窪み308は、フランジ312の材料である樹脂が冷えて固まる時の樹脂の収縮による応力集中を低減するためのものである。
熱式流量計300の計測動作中に使用する外部端子306に加えて、補正用端子307を設けることで、熱式流量計300の出荷前にそれぞれについて特性を計測し、製品のばらつきを計測し、ばらつきを低減するための補正値を熱式流量計300内部のメモリに記憶することが可能となる。上記補正値の設定工程の後、補正用端子307が外部端子306と外部機器との接続の邪魔にならないように、補正用端子307は外部端子306とは異なる形状に作られている。このようにして熱式流量計300はその出荷前にそれぞれについてのばらつきを低減でき、計測精度の向上を図ることができる。
3. ハウジング302の全体構造とその効果
3.1 副通路と流量検出部の構造と効果
熱式流量計300から表カバー303および裏カバー304を取り外したハウジング302の状態を図5および図6に示す。図5(A)はハウジング302の左側面図であり、図5(B)はハウジング302の正面図であり、図6(A)はハウジング302の右側面図であり、図6(B)はハウジング302の背面図である。ハウジング302はフランジ312から計測部310が主通路124の中心方向に延びる構造を成しており、その先端側に副通路を成形するための副通路溝が設けられている。この実施例ではハウジング302の表裏両面に副通路溝が設けられており、図5(B)に表側副通路溝332を示し、図6(B)に裏側副通路溝334を示す。副通路の入口350を成形するための入口溝351と出口352を成形するための出口溝353が、ハウジング302の先端部に設けられているので、主通路124の内壁面から離れた部分の気体を、言い換えると主通路124の中央部分に近い部分を流れている気体を被計測気体30として入口350から取り込むことができる。主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124の壁面温度の影響を受け、吸入空気である被計測気体30などの主通路124を流れる気体の平均温度と異なる温度を有することが多い。また主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124を流れる気体の平均流速より遅い流速を示すことが多い。実施例の熱式流量計300ではこのような影響を受けに難いので、計測精度の低下を抑制できる。
上述した表側副通路溝332や裏側副通路溝334で作られる副通路は外壁窪み部366や上流側外壁335や下流側外壁336により熱絶縁部315に繋がっている。また上流側外壁335には上流側突起317が設けられ、下流側外壁336には下流側突起318が設けられている。このような構造により、フランジ312で熱式流量計300が主通路124に固定されることにより、回路パッケージ400を有する計測部310が高い信頼性を持って主通路124に固定される。
この実施例ではハウジング302に副通路を成形するための副通路溝を設けており、カバーをハウジング302の表面及び裏面にかぶせることにより、副通路溝とカバーとにより副通路が完成する構成としている。このような構造とすることで、ハウジング302の樹脂モールド工程でハウジング302の一部としてすべての副通路溝を成形することができる。またハウジング302の成形時にハウジング302の両面に金型が設けられるので、この両方の金型を使用することにより、表側副通路溝332と裏側副通路溝334の両方をハウジング302の一部として全て成形することが可能となる。ハウジング302の両面に表カバー303と裏カバー304を設けることでハウジング302の両面の副通路を完成されることができる。金型を利用してハウジング302の両面に表側副通路溝332と裏側副通路溝334を成形することで高い精度で副通路を成形できる。また高い生産性が得られる。
図6(B)において主通路124を流れる被計測気体30の一部が入口350を成形する入口溝351から裏側副通路溝334内に取り込まれ、裏側副通路溝334内を流れる。裏側副通路溝334は進むにつれて深くなる形状をしており、溝に沿って流れるにつれ表側の方向に被計測気体30は徐々に移動する。特に裏側副通路溝334は回路パッケージ400の上流部342で急激に深くなる急傾斜部347が設けられていて、質量の小さい空気の一部は急傾斜部347に沿って移動し、回路パッケージ400の上流部342で図5(B)に記載の計測用流路面430の方を流れる。一方質量の大きい異物は慣性力によって急激な進路変更が困難なため、図6(B)に示す裏側露出面403の方を移動する。その後回路パッケージ400の下流部341を通り、図5(B)に記載の計測用流路面430の方を流れる。
熱伝達面露出部436近傍の被計測気体30の流れについて説明する。図5(B)に記載の表側副通路溝332において、上述の回路パッケージ400の上流部342から表側副通路溝332側に移動した被計測気体30である空気は、計測用流路面430に沿って流れ、計測用流路面430に設けられた熱伝達面露出部436を介して流量を計測するための流量検出部との間で熱伝達が行われ、流量の計測が行われる。計測用流路面430を通過した被計測気体30や回路パッケージ400の下流部341から表側副通路溝332に流れてきた空気は共に表側副通路溝332に沿って流れ、出口352を成形するための出口溝353から主通路124に排出される。
被計測気体30に混入しているごみなどの質量の大きい物質は慣性力が大きく、溝の深さが急激に深まる図6(B)に示す、急傾斜部347の部分の表面に沿って、溝の深い方向に急激に進路を変えることが困難である。このため質量の大きい異物は裏側露出面403の方を移動し、異物が熱伝達面露出部436の近くを通るのを抑制できる。この実施例では気体以外の質量の大きい異物の多くが、計測用流路面430の背面である裏側露出面403側を通過するように構成しているので、油分やカーボン、ごみなどの異物による汚れの影響を低減でき、計測精度の低下を抑制できる。すなわち主通路124の流れの軸を横切る軸に沿って被計測気体30の進路を急に変化させる形状を有しているので、被計測気体30に混入する異物の影響を低減できる。
この実施例では、裏側副通路溝334で構成される流路は曲線を描きながらハウジング302の先端部からフランジ方向に向かい、最もフランジ側の位置では副通路を流れる気体は主通路124の流れに対して逆方向の流れとなり、この逆方向の流れの部分で一方側である裏面側の副通路が、他方側である表面側に成形された副通路につながる。このようにすることで、回路パッケージ400の熱伝達面露出部436の副通路への固定が容易となり、さらに被計測気体30を主通路124の中央部に近い位置で取り込むことが容易となる。
この実施例では、流量を計測するための計測用流路面430の流れ方向における前後に裏側副通路溝334と表側副通路溝332とに貫通する構成から成り、かつ回路パッケージ400の先端側はハウジング302で支持した構成ではなく空洞部383を有し、回路パッケージ400の上流部342の空間と回路パッケージ400の下流部341の空間が繋がった構成である。この回路パッケージ400の上流部342と回路パッケージ400の下流部341を貫通する構成として、ハウジング302の一方面に成形した裏側副通路溝334からハウジング302の他方の面に成形した表側副通路溝332へ被計測気体30が移動する形状で副通路を成形している。このような構成とすることで、1回の樹脂モールド工程でハウジング302の両面に副通路溝を成形でき、また両面の副通路溝を繋ぐ構造を合わせて成形することが可能となる。
ハウジング302の成形時には、回路パッケージ400に形成された計測用流路面430の両側を成型金型でクランプすることで回路パッケージ400の上流部342と回路パッケージ400の下流部341を貫通する構成を形成することができると共に、ハウジング302の樹脂モールド成形と同時に、回路パッケージ400をハウジング302に実装することができる。このようにハウジング302の成形金型に回路パッケージ400をインサートして成形することにより、副通路に対して回路パッケージ400及び熱伝達面露出部436を高精度に実装することが可能となる。
この実施例では、この回路パッケージ400の上流部342と回路パッケージ400の下流部341を貫通する構成としている。しかし、回路パッケージ400の上流部342と下流部341どちらか一方を貫通した構成とすることで、裏側副通路溝334と表側副通路溝332とをつなぐ副通路形状を1回の樹脂モールド工程で成形することも可能である。
なお、裏側副通路溝334の両側には裏側副通路内周壁391と裏側副通路外周壁392が設けられ、これら裏側副通路内周壁391と裏側副通路外周壁392のそれぞれの高さ方向の先端部と裏カバー304の内側面とが密着することで、ハウジング302の裏側副通路が成形される。また表側副通路溝332の両側には表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394が設けられ、これら表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394の高さ方向の先端部と表カバー303の内側面とが密着することで、ハウジング302の表側副通路が成形される。
この実施例では、計測用流路面430とその背面の両方に分かれて被計測気体30が流れ、一方側に流量を計測する熱伝達面露出部436を設けているが、被計測気体30を2つの通路に分けるのではなく、計測用流路面430の表面側のみを通過するようにしても良い。主通路124の流れ方向の第1軸に対してこれを横切る方向の第2軸に沿うように副通路を曲げることにより、被計測気体30に混入する異物を、第2軸の曲りの小さい片側に寄せることができ、第2軸の曲りの大きい方に計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設けることにより、異物の影響を低減できる。
またこの実施例では表側副通路溝332と裏側副通路溝334の繋ぎの部分に計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設けている。しかし表側副通路溝332と裏側副通路溝334の繋ぎの部分ではなく、表側副通路溝332にあるいは、裏側副通路溝334に設けても良い。
計測用流路面430に設けられた流量を計測するための熱伝達面露出部436の部分に絞り形状が成形されており、この絞り効果により流速が速くなり、計測精度が向上する。また仮に熱伝達面露出部436の上流側で気体の流れに渦が発生していたとしても上記絞りにより渦を消滅あるいは低減でき、計測精度が向上する。
図5および図6で、上流側外壁335が温度検出部452の根元部で下流側に窪む形状を成す、外壁窪み部366を備えている。この外壁窪み部366により、温度検出部452と外壁窪み部366との間の距離が長くなり、上流側外壁335を介して伝わってくる熱の影響を低減できる。
また、回路パッケージ400を固定部372で包むことにより、回路パッケージ400を固定しているが、外壁窪み部366によりさらに回路パッケージ400を固定することにより、回路パッケージ400を固定する力を増大することができる。固定部372は被計測気体30の流れ軸に沿う方向に回路パッケージ400を包含している。一方外壁窪み部366は被計測気体30の流れ軸を横切る方向に回路パッケージ400を包含している。すなわち固定部372に対して包含する方向が異なるようにして回路パッケージ400を包含している。2つの異なる方向で回路パッケージ400を包含しているので、固定する力が増大している。外壁窪み部366は上流側外壁335の一部であるが、固定する力を増大するためであれば、上流側外壁335の代わりに下流側外壁336で、固定部372と異なる方向に回路パッケージ400を包含しても良い。例えば、下流側外壁336で回路パッケージ400の板部を包含するとか、あるいは下流側外壁336に上流方向に窪む窪み、あるいは上流方向に突出する突出部を設けて回路パッケージ400を包含しても良い。上流側外壁335に外壁窪み部366を設けて回路パッケージ400を包含したのは、回路パッケージ400の固定に加えて、温度検出部452と上流側外壁335との間の熱抵抗を増大する作用を持たせたためである。
温度検出部452の根元部に外壁窪み部366が設けられ、これによりフランジ312あるいは熱絶縁部315から上流側外壁335を介して伝わってくる熱の影響を低減できる。さらに上流側突起317と温度検出部452との間の切欠きにより成形された測温用窪み368が設けられている。この測温用窪み368により上流側突起317を介して温度検出部452にもたらされる熱の伝わりを低減できる。これにより温度検出部452の検出精度が向上する。特に上流側突起317はその断面積が大きいので熱が伝わり易く、熱の伝わりを阻止する測温用窪み368の働きは重要である。
3.2 表カバー303と裏カバー304の形状と効果
図7は表カバー303の外観を示す図であり、図7(A)は左側面図、図7(B)は正面図、図7(C)は平面図である。図8は裏カバー304の外観を示す図であり、図8(A)は左側面図、図8(B)は正面図、図8(C)は平面図である。図7および図8において、表カバー303や裏カバー304はハウジング302の副通路溝を塞ぐことにより、副通路を作るのに使用される。また突起部356を備えており、副通路内に絞りを作るのに使用される。このため成形精度が高いことが望ましい。表カバー303や裏カバー304は金型に熱可塑性樹脂を注入する樹脂モールド工程により、作られるので、高い成形精度で作ることができる。また、表カバー303と裏カバー304には、突起部380と突起部381が形成されており、ハウジング302の嵌合した際に、図5(B)及び図6(B)に表記した回路パッケージ400の先端側の空洞部383の隙間を埋めると同時に回路パッケージ400の先端部を覆う構成となる。
図7や図8に示す表カバー303や裏カバー304には、表保護部322や裏保護部325が成形されている。図2や図3に示すように入口343の表側側面に表カバー303に設けられた表保護部322が配置され、また入口343の裏側側面に、裏カバー304に設けられた裏保護部325が配置されている。入口343内部に配置されている温度検出部452が表保護部322と裏保護部325で保護され、生産中および車への搭載時に温度検出部452が何かとぶつかることなどによる温度検出部452の機械的な損傷を防止できる。
表カバー303の内側面には突起部356が設けられている。突起部356は、計測用流路面430に対向して配置され、副通路の流路の軸に沿う方向に長く延びた形状をしている。突起部356の断面形状は、図7(C)に示したように突起部の頂点を境に下流側に向かって傾斜になっていてもよい。計測用流路面430と突起部356とにより上述した表側流路に絞りが成形され、被計測気体30に生じている渦を減少させ、層流に生じさせる作用をする。この実施例では、絞り部分を有する副流路を、溝の部分と溝を塞いで絞りを備えた流路を完成する蓋の部分とにわけ、溝の部分を、ハウジング302を成形するための第2樹脂モールド工程で作り、次に突起部356を有する表カバー303を他の樹脂モールド工程で成形し、表カバー303を溝の蓋として溝を覆うことにより、副通路を作っている。ハウジング302を成形する第2樹脂モールド工程で、計測用流路面430を有する回路パッケージ400のハウジング302への固定も行っている。このように形状の複雑な溝の成形を樹脂モールド工程で行い、絞りのための突起部356を表カバー303に設けることで、高い精度で表側流路を成形することができる。また溝と計測用流路面430や熱伝達面露出部436の配置関係を高い精度で維持できるので、量産品においてのばらつきを小さくでき、結果として高い計測結果が得られる。また生産性も向上する。
裏カバー304と裏側露出面403による裏側流路の成形も同様である。表側流路の溝部分と蓋部分とに分け、溝部分をハウジング302を成形する第2樹脂モールド工程で作り、裏カバー304で溝を覆うことにより、裏側流路を成形している。裏側流路をこのようにして作ることにより、表側流路を高精度で作ることができ、生産性も向上する。
3.3 第2樹脂モールド工程によるハウジング302成形と効果
上述した図5および図6に示すハウジング302において、流量検出部や処理部604を備える回路パッケージ400を第1樹脂モールド工程により製造し、次に、被計測気体30を流す副通路を成形する例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334を有するハウジング302を、第2樹脂モールド工程にて製造する。この第2樹脂モールド工程で、前記回路パッケージ400をハウジング302の樹脂内に内蔵して、ハウジング302内に樹脂モールドにより固定する。このようにすることで、流量検出部が被計測気体30との間で熱伝達を行って流量を計測するための熱伝達面露出部436と副通路、例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334の形状との関係、例えば位置関係や方向の関係を、極めて高い精度で維持することが可能となる。回路パッケージ400毎に生じる誤差やばらつきを非常に小さい値に抑え込むことが可能となる。結果として回路パッケージ400の計測精度を大きく改善できる。例えば従来の接着剤を使用して固定する方式に比べ、2倍以上、計測精度を向上できる。熱式流量計300は量産により生産されることが多く、ここに厳密に計測しながら接着剤で接着する方法には、計測精度の向上に関して限界がある。しかし、本実施例のように第1樹脂モールド工程により回路パッケージ400を製造し、その後被計測気体30を流す副通路を成形する第2樹脂モールド工程にて副通路を成形すると同時に回路パッケージ400と前記副通路とを固定することで、計測精度のばらつきを大幅に低減でき、各熱式流量計300の計測精度を大幅に向上することが可能となる。このことは、図5や図6に示す実施例だけでなく、図7に示す実施例においても同様である。
例えば図5や図6に示す実施例でさらに説明すると、表側副通路溝332と裏側副通路溝334と熱伝達面露出部436との間に関係を、規定の関係となるように高い精度で回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。このことにより、量産される熱式流量計300においてそれぞれ、各回路パッケージ400の熱伝達面露出部436と副通路との位置関係や形状などの関係を、非常に高い精度で、定常的に得ることが可能となる。回路パッケージ400の熱伝達面露出部436を固定した副通路溝、例えば表側副通路溝332と裏側副通路溝334とが非常に高い精度で成形できるので、この副通路溝から副通路を成形する作業は、表カバー303や裏カバー304でハウジング302の両面を覆う作業である。この作業は大変シンプルで、計測精度を低下させる要因が少ない作業工程である。また、表カバー303や裏カバー304は成形精度の高い樹脂モールド工程により生産される。従って回路パッケージ400の熱伝達面露出部436と規定の関係で設けられる副通路を高い精度で完成することが可能である。このような方法により、計測精度の向上に加え、高い生産性が得られる。
これに対して従来は、副通路を製造し、次に副通路に計測部を接着剤で接着することにより、熱式流量計を生産していた。このように接着剤を使用する方法は、接着剤の厚みのばらつきが大きく、また接着位置や接着角度が製品毎にばらつく。このため計測精度を上げることには限界があった。さらにこれらの作業を量産工程で行う場合に、計測精度の向上が大変難しくなる。
本発明に係る実施例では、先ず、流量検出部を備える回路パッケージ400を第1樹脂モールドにより生産し、次に回路パッケージ400を樹脂モールドにより固定すると共に同時に前記樹脂モールドで副通路を成形するための副通路溝を第2樹脂モールドにより、成形する。このようにすることにより、副通路溝の形状、および前記副通路溝に極めて高い精度で流量検出部を固定できる。
流量の計測に関係する部分、例えば流量検出部の熱伝達面露出部436や熱伝達面露出部436が取り付けられる計測用流路面430を、回路パッケージ400の表面に成形する。その後、計測用流路面430と熱伝達面露出部436はハウジング302を成形する樹脂から露出させる。すなわち熱伝達面露出部436および熱伝達面露出部436周辺の計測用流路面430を、ハウジング302を成形する樹脂で覆わないようにする。回路パッケージ400の樹脂モールドで成形した計測用流路面430や熱伝達面露出部436を、あるいは温度検出部452を、そのままハウジング302の樹脂モールド後も利用し、熱式流量計300の流量計測や温度計測に使用する。このようにすることで計測精度が向上する。
本発明に係る実施例では、回路パッケージ400をハウジング302に一体成形することにより、副通路を有するハウジング302に回路パッケージ400を固定しているので、少ない固定面積で回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。すなわち、ハウジング302に接触していない回路パッケージ400の表面積を多く取ることができる。前記ハウジング302に接触していない回路パッケージ400の表面は、例えば空隙に露出している。吸気管の熱はハウジング302に伝わり、ハウジング302から回路パッケージ400に伝わる。ハウジング302で回路パッケージ400の全面あるいは大部分を包含するのではなく、ハウジング302と回路パッケージ400との接触面積を小さくしても、高精度でしかも高い信頼性を維持して、回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。このためハウジング302から回路パッケージ400への熱伝達を低く抑えることが可能となり、計測精度の低下を抑制できる。
図5や図6に示す実施例では、回路パッケージ400の露出面の面積Aを、ハウジング302の成形用モールド材で覆われている面積Bと同等あるいは、面積Aを面積Bより多くすることが可能である。実施例では面積Aの方が面積Bより多くなっている。このようにすることにより、ハウジング302から回路パッケージ400への熱の伝達を抑制できる。また回路パッケージ400を成形している熱硬化性樹脂の熱膨張係数とハウジング302を成形している熱可塑性樹脂の膨張係数の差による応力を低減できる。
4. 熱式流量計300の生産工程
4.1 回路パッケージ400の生産工程
図9および図10は熱式流量計300の生産工程を示し、図9は回路パッケージ400の生産工程を示し、図10は熱式流量計の生産工程を示す。図9において、ステップ1は金属製のフレーム枠を生産する工程を示す。このフレーム枠は例えばプレス加工によって作られる。
ステップ2は、ステップ1で作られたフレーム枠に、まずプレートを搭載し、さらにプレートに流量検出部や処理部を搭載し、さらに温度検出素子、チップコンデンサなどの回路部品を搭載する。またステップ2では、回路部品間や回路部品とリード間、リード同士の電気的な配線を行う。このステップ2で、リード間を、熱抵抗を大きくするための接続線で接続する。ステップ2では、回路部品がフレーム枠に搭載され、さらに電気的な接続がなされた電気回路が作られる。
次にステップ3で、第1樹脂モールド工程により、熱硬化性樹脂でモールドされる。また、ステップ3で、接続されているリードをそれぞれフレーム枠から切り離し、さらにリード間も切り離し、回路パッケージ400を完成する。この回路パッケージ400には、計測用流路面430や熱伝達面露出部436が成形されている。
ステップ4で、出来上がった回路パッケージ400の外観検査や動作の検査を行う。ステップ3の第1樹脂モールド工程では、ステップ2で作られた電気回路を金型内に固定し、金型に高温の樹脂を高い圧力で注入するので、電気部品や電気配線の異常が生じていないかを検査することが望ましい。この検査のために接続端子412に加え検査端子が使用される。なお、検査端子はその後使用されないので、この検査の後、根元から切断しても良い。
4.2 熱式流量計300の生産工程と特性の補正
図10に示す工程では、図9により生産された回路パッケージ400と外部端子306とが使用され、ステップ5で第2樹脂モールド工程によりハウジング302がつくられる。このハウジング302は樹脂製の副通路溝やフランジ312や外部接続部305が作られると共に、回路パッケージ400の一部が第2樹脂モールド工程の樹脂で覆われ、回路パッケージ400がハウジング302に固定される。前記第1樹脂モールド工程による回路パッケージ400の生産(ステップ3)と第2樹脂モールド工程による熱式流量計300のハウジング302の成形との組み合わせにより、流量検出精度が大幅に改善される。ステップ6で各外部端子内端の切り離しが行われ、接続端子と外部端子内端との接続がステップ7で行われる。
ステップ7によりハウジング302が完成すると次にステップ8で、表カバー303と裏カバー304がハウジング302に取り付けられ、ハウジング302の内部が表カバー303と裏カバー304で密閉されるとともに、被計測気体30を流すための副通路が完成する。そして、表カバー303あるいは裏カバー304に設けられた突起部356により、絞り構造が作られる。なお、この表カバー303はステップ10でモールド成形により作られ、裏カバー304はステップ11でモールド成形によって作られる。また、これら表カバー303と裏カバー304はそれぞれ別工程で作られ、それぞれ異なる金型により成形されて作られる。
ステップ9で、実際に副通路に気体が導かれ、特性の試験が行われる。上述したように副通路と流量検出部の関係が高い精度で維持されているので、特性の試験による特性補正を行うことで、非常に高い計測精度が得られる。また第1樹脂モールド工程と第2樹脂モールド工程で副通路と流量検出部の関係を左右する位置決めや形状関係の成形が行われるので、長期間使用しても特性の変化が少なく、高精度に加え高信頼性が確保される。
本発明は、上述した気体の流量を計測するための計測装置に適用できる。
30…被計測気体
124…主通路
300…熱式流量計
302…ハウジング
303…表カバー
304…裏カバー
305…外部接続部
306…外部端子
307…補正用端子
310…計測部
311…凹み部
311a…底面
311b…周壁面
312…フランジ
312A…フランジの上面(対向面)
312B…フランジの下面(取り付け面)
312C…フランジの側面
320…端子接続部
321…第1連通路
323…第2連通路
332…表側副通路溝
334…裏側副通路溝
356…突起部
359…樹脂部
361…外部端子内端
372…固定部
400…回路パッケージ
402…表側露出面(露出面)
412…接続端子
414…端子
424…突出部
430…計測用流路面
432…固定面
434…固定面
436…熱伝達面露出部
437…熱伝達面
438…開口
452…温度検出部
590…圧入孔
594…傾斜部
596…傾斜部
601…流量検出回路
604…処理部
608…発熱体
640…発熱制御ブリッジ
650…流量検知ブリッジ
672…ダイヤフラム

Claims (5)

  1. 主通路の通路壁に設けられた取り付け孔から通路内部に挿入される計測部と、該計測部が前記取り付け孔に挿入された状態で前記主通路の通路壁に固定されるフランジと、を有するハウジングを備える熱式流量計であって、
    前記フランジは、
    該フランジの前記主通路への取り付け面に対向する対向面に凹み部が形成され、
    該凹み部の一部が前記フランジの側面に開口しており、
    前記凹み部は、底面と、該底面の周縁から前記対向面に向かって立ち上がる周壁面と、該周壁面と前記フランジの側面との間を連通する第1連通路を有しており、
    該第1連通路の底面は、前記凹み部の底面と同一平面、または、前記凹み部の底面よりも前記取り付け面方向に接近して配置されていることを特徴とする熱式流量計。
  2. 前記凹み部の底面は、前記フランジの中央側から前記フランジの側面側に移行するにしたがって漸次前記取り付け面に接近する方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
  3. 前記第1連通路の底面は、前記凹み部から前記フランジの側面に移行するにしたがって漸次前記取り付け面に接近する方向に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の熱式流量計。
  4. 前記凹み部は、前記フランジの対向面に複数に分かれて設けられており、該複数の凹み部を互いに連通する第2連通路を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱式流量計。
  5. 前記第1連通路及び前記第2連通路は、前記フランジの対向面を切り欠いて形成されていることを特徴とする請求項4に記載の熱式流量計。
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