JP6073722B2 - 熱式流量計 - Google Patents
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Description
図1は、電子燃料噴射方式の内燃機関制御システムに、本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例を示す、システム図である。エンジンシリンダ112とエンジンピストン114を備える内燃機関110の動作に基づき、吸入空気が被計測気体30としてエアクリーナ122から吸入され、主通路124である例えば吸気ボディ、スロットルボディ126、吸気マニホールド128を介してエンジンシリンダ112の燃焼室に導かれる。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は本発明に係る熱式流量計300で計測され、計測された流量に基づいて燃料噴射弁152より燃料が供給され、被計測気体30と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施例では、燃料噴射弁152は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が被計測気体30と共に混合気を成形し、吸入弁116を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
エアクリーナ122から取り込まれ主通路124を流れる吸入空気である被計測気体30の流量および温度が、熱式流量計300により計測され、熱式流量計300から吸入空気の流量および温度を表す電気信号が制御装置200に入力される。また、スロットルバルブ132の開度を計測するスロットル角度センサ144の出力が制御装置200に入力され、さらに内燃機関のエンジンピストン114や吸入弁116や排気弁118の位置や状態、さらに内燃機関の回転速度を計測するために、回転角度センサ146の出力が、制御装置200に入力される。排気ガス24の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ148の出力が制御装置200に入力される。
内燃機関の主要な制御量である燃料供給量や点火時期はいずれも熱式流量計300の出力を主パラメータとして演算される。従って熱式流量計300の計測精度の向上や経時変化の抑制、信頼性の向上が、車両の制御精度の向上や信頼性の確保に関して重要である。特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには熱式流量計300により計測される被計測気体30の流量の計測精度の向上が極めて重要である。また熱式流量計300が高い信頼性を維持していることも大切である。
2.1 熱式流量計300の外観構造
図2および図3、図4は、熱式流量計300の外観を示す図であり、図2(A)は熱式流量計300の左側面図、図2(B)は正面図、図3(A)は右側面図、図3(B)は背面図、図4(A)は平面図、図4(B)は下面図である。熱式流量計300はハウジング302と表カバー303と裏カバー304とを備えている。ハウジング302は、熱式流量計300を主通路124である吸気ボディに固定するためのフランジ312と、外部機器との電気的な接続を行うための外部端子306を有する外部接続部305と、流量等を計測するための計測部310を備えている。計測部310の内部には、副通路を作るための副通路溝が設けられており、さらに計測部310の内部には、主通路124を流れる被計測気体30の流量を計測するための流量検出部や主通路124を流れる被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452を備える回路パッケージ400が設けられている。
熱式流量計300の入口350が、フランジ312から主通路124の中心方向に向かって延びる計測部310の先端側に設けられているので、主通路124の内壁面近傍ではなく、内壁面から離れた中央部に近い部分の気体を副通路に取り込むことができる。このため熱式流量計300は主通路124の内壁面から離れた部分の気体の流量や温度を測定することができ、熱などの影響による計測精度の低下を抑制できる。主通路124の内壁面近傍では、主通路124の温度の影響を受け易く、気体の本来の温度に対して被計測気体30の温度が異なる状態となり、主通路124内の主気体の平均的な状態と異なることになる。特に主通路124がエンジンの吸気ボディである場合は、エンジンからの熱の影響を受け、高温に維持されていることが多い。このため主通路124の内壁面近傍の気体は、主通路124の本来の気温に対して高いことが多く、計測精度を低下させる要因となる。
計測部310の先端側に設けられた副通路よりもフランジ312側の方に位置して、図2及び図3に示すように、被計測気体30の流れの上流側に向かって開口する入口343が成形されており、入口343の内部には被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が配置されている。入口343が設けられている計測部310の中央部では、ハウジング302を構成する計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって窪んでおり、前記窪み形状の上流側外壁から温度検出部452が上流側に向かって突出する形状を成している。また前記窪み形状の外壁の両側部には表カバー303と裏カバー304が設けられており、前記表カバー303と裏カバー304の上流側端部が、前記窪み形状の外壁より上流側に向かって突出した形状を成している。このため前記窪み形状の外壁とその両側の表カバー303と裏カバー304とにより、被計測気体30を取り込むための入口343が成形される。入口343から取り込まれた被計測気体30は入口343の内部に設けられた温度検出部452に接触することで、温度検出部452によって温度が計測される。さらに窪み形状を成すハウジング302の外壁から上流側に突出した温度検出部452を支える部分に沿って被計測気体30が流れ、表カバー303と裏カバー304に設けられた表側出口344および裏側出口345が主通路124に排出される。
被計測気体30の流れに沿う方向の上流側から入口343に流入する気体の温度が温度検出部452により計測され、さらにその気体が温度検出部452を支える部分である温度検出部452の根元部分に向かって流れることにより、温度検出部452を支える部分の温度を被計測気体30の温度に近づく方向に冷却する作用を為す。主通路124である吸気管の温度が通常高くなり、フランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って、温度検出部452を支える部分に熱が伝わり、温度の計測精度に影響を与える恐れがある。上述のように、被計測気体30が温度検出部452により計測された後、温度検出部452の支える部分に沿って流れることにより、前記支える部分が冷却される。従ってフランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って温度検出部452を支える部分に熱が伝わるのを抑制できる。
熱式流量計300を構成する計測部310の上流側側面と下流側側面にそれぞれ上流側突起317と下流側突起318とが設けられている。上流側突起317と下流側突起318は根元に対して先端に行くに従い細くなる形状を成しており、主通路124内を流れる吸入空気である被計測気体30の流体抵抗を低減できる。熱絶縁部315と入口343との間に上流側突起317が設けられている。上流側突起317は断面積が大きく、フランジ312あるいは熱絶縁部315からの熱伝導が大きいが、入口343の手前で上流側突起317が途切れており、さらに上流側突起317の温度検出部452側から温度検出部452への距離が、後述するようにハウジング302の上流側外壁の窪みにより、長くなる形状を成している。このため温度検出部452の支え部分への熱絶縁部315からの熱伝導が抑制される。
フランジ312は、計測部310や外部接続部305よりも肉厚の板厚を有する平板形状を有している。フランジ312は、主通路に取り付けられる取り付け面と、取り付け面に対向する対向面を有している。以下では、説明の便宜上、取り付け面を下面312B、対向面を上面312Aとして説明するが、熱式流量計の取り付け姿勢状態を限定するものではない。フランジ312の外部に露出する部分である上面(対向面)312Aには、凹み部 311が形成されている。凹み部311は、底面を有する凹み穴であり、フランジ312を肉抜きするために設けられている。
図4(A)は熱式流量計300の平面図である。外部接続部305の内部に4本の外部端子306と補正用端子307が設けられている。外部端子306は熱式流量計300の計測結果である流量と温度を出力するための端子および熱式流量計300が動作するための直流電力を供給するための電源端子である。補正用端子307は生産された熱式流量計300の計測を行い、それぞれの熱式流量計300に関する補正値を求めて、熱式流量計300内部のメモリに補正値を記憶するのに使用する端子であり、その後の熱式流量計300の計測動作では上述のメモリに記憶された補正値を表す補正データが使用され、この補正用端子307は使用されない。従って外部端子306が他の外部機器との接続において、補正用端子307が邪魔にならないように、補正用端子307は外部端子306とは異なる形状をしている。この実施例では外部端子306より補正用端子307が短い形状をしており、外部端子306に接続される外部機器への接続端子が外部接続部305に挿入されても、接続の障害にならないようになっている。また外部接続部305の内部には外部端子306に沿って複数個の窪み308が設けられており、これら窪み308は、フランジ312の材料である樹脂が冷えて固まる時の樹脂の収縮による応力集中を低減するためのものである。
3.1 副通路と流量検出部の構造と効果
熱式流量計300から表カバー303および裏カバー304を取り外したハウジング302の状態を図5および図6に示す。図5(A)はハウジング302の左側面図であり、図5(B)はハウジング302の正面図であり、図6(A)はハウジング302の右側面図であり、図6(B)はハウジング302の背面図である。ハウジング302はフランジ312から計測部310が主通路124の中心方向に延びる構造を成しており、その先端側に副通路を成形するための副通路溝が設けられている。この実施例ではハウジング302の表裏両面に副通路溝が設けられており、図5(B)に表側副通路溝332を示し、図6(B)に裏側副通路溝334を示す。副通路の入口350を成形するための入口溝351と出口352を成形するための出口溝353が、ハウジング302の先端部に設けられているので、主通路124の内壁面から離れた部分の気体を、言い換えると主通路124の中央部分に近い部分を流れている気体を被計測気体30として入口350から取り込むことができる。主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124の壁面温度の影響を受け、吸入空気である被計測気体30などの主通路124を流れる気体の平均温度と異なる温度を有することが多い。また主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124を流れる気体の平均流速より遅い流速を示すことが多い。実施例の熱式流量計300ではこのような影響を受けに難いので、計測精度の低下を抑制できる。
図7は表カバー303の外観を示す図であり、図7(A)は左側面図、図7(B)は正面図、図7(C)は平面図である。図8は裏カバー304の外観を示す図であり、図8(A)は左側面図、図8(B)は正面図、図8(C)は平面図である。図7および図8において、表カバー303や裏カバー304はハウジング302の副通路溝を塞ぐことにより、副通路を作るのに使用される。また突起部356を備えており、副通路内に絞りを作るのに使用される。このため成形精度が高いことが望ましい。表カバー303や裏カバー304は金型に熱可塑性樹脂を注入する樹脂モールド工程により、作られるので、高い成形精度で作ることができる。また、表カバー303と裏カバー304には、突起部380と突起部381が形成されており、ハウジング302の嵌合した際に、図5(B)及び図6(B)に表記した回路パッケージ400の先端側の空洞部383の隙間を埋めると同時に回路パッケージ400の先端部を覆う構成となる。
上述した図5および図6に示すハウジング302において、流量検出部や処理部604を備える回路パッケージ400を第1樹脂モールド工程により製造し、次に、被計測気体30を流す副通路を成形する例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334を有するハウジング302を、第2樹脂モールド工程にて製造する。この第2樹脂モールド工程で、前記回路パッケージ400をハウジング302の樹脂内に内蔵して、ハウジング302内に樹脂モールドにより固定する。このようにすることで、流量検出部が被計測気体30との間で熱伝達を行って流量を計測するための熱伝達面露出部436と副通路、例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334の形状との関係、例えば位置関係や方向の関係を、極めて高い精度で維持することが可能となる。回路パッケージ400毎に生じる誤差やばらつきを非常に小さい値に抑え込むことが可能となる。結果として回路パッケージ400の計測精度を大きく改善できる。例えば従来の接着剤を使用して固定する方式に比べ、2倍以上、計測精度を向上できる。熱式流量計300は量産により生産されることが多く、ここに厳密に計測しながら接着剤で接着する方法には、計測精度の向上に関して限界がある。しかし、本実施例のように第1樹脂モールド工程により回路パッケージ400を製造し、その後被計測気体30を流す副通路を成形する第2樹脂モールド工程にて副通路を成形すると同時に回路パッケージ400と前記副通路とを固定することで、計測精度のばらつきを大幅に低減でき、各熱式流量計300の計測精度を大幅に向上することが可能となる。このことは、図5や図6に示す実施例だけでなく、図7に示す実施例においても同様である。
4.1 回路パッケージ400の生産工程
図9および図10は熱式流量計300の生産工程を示し、図9は回路パッケージ400の生産工程を示し、図10は熱式流量計の生産工程を示す。図9において、ステップ1は金属製のフレーム枠を生産する工程を示す。このフレーム枠は例えばプレス加工によって作られる。
図10に示す工程では、図9により生産された回路パッケージ400と外部端子306とが使用され、ステップ5で第2樹脂モールド工程によりハウジング302がつくられる。このハウジング302は樹脂製の副通路溝やフランジ312や外部接続部305が作られると共に、回路パッケージ400の一部が第2樹脂モールド工程の樹脂で覆われ、回路パッケージ400がハウジング302に固定される。前記第1樹脂モールド工程による回路パッケージ400の生産(ステップ3)と第2樹脂モールド工程による熱式流量計300のハウジング302の成形との組み合わせにより、流量検出精度が大幅に改善される。ステップ6で各外部端子内端の切り離しが行われ、接続端子と外部端子内端との接続がステップ7で行われる。
124…主通路
300…熱式流量計
302…ハウジング
303…表カバー
304…裏カバー
305…外部接続部
306…外部端子
307…補正用端子
310…計測部
311…凹み部
311a…底面
311b…周壁面
312…フランジ
312A…フランジの上面(対向面)
312B…フランジの下面(取り付け面)
312C…フランジの側面
320…端子接続部
321…第1連通路
323…第2連通路
332…表側副通路溝
334…裏側副通路溝
356…突起部
359…樹脂部
361…外部端子内端
372…固定部
400…回路パッケージ
402…表側露出面(露出面)
412…接続端子
414…端子
424…突出部
430…計測用流路面
432…固定面
434…固定面
436…熱伝達面露出部
437…熱伝達面
438…開口
452…温度検出部
590…圧入孔
594…傾斜部
596…傾斜部
601…流量検出回路
604…処理部
608…発熱体
640…発熱制御ブリッジ
650…流量検知ブリッジ
672…ダイヤフラム
Claims (5)
- 主通路の通路壁に設けられた取り付け孔から通路内部に挿入される計測部と、該計測部が前記取り付け孔に挿入された状態で前記主通路の通路壁に固定されるフランジと、を有するハウジングを備える熱式流量計であって、
前記フランジは、
該フランジの前記主通路への取り付け面に対向する対向面に凹み部が形成され、
該凹み部の一部が前記フランジの側面に開口しており、
前記凹み部は、底面と、該底面の周縁から前記対向面に向かって立ち上がる周壁面と、該周壁面と前記フランジの側面との間を連通する第1連通路を有しており、
該第1連通路の底面は、前記凹み部の底面と同一平面、または、前記凹み部の底面よりも前記取り付け面方向に接近して配置されていることを特徴とする熱式流量計。 - 前記凹み部の底面は、前記フランジの中央側から前記フランジの側面側に移行するにしたがって漸次前記取り付け面に接近する方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の熱式流量計。
- 前記第1連通路の底面は、前記凹み部から前記フランジの側面に移行するにしたがって漸次前記取り付け面に接近する方向に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の熱式流量計。
- 前記凹み部は、前記フランジの対向面に複数に分かれて設けられており、該複数の凹み部を互いに連通する第2連通路を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱式流量計。
- 前記第1連通路及び前記第2連通路は、前記フランジの対向面を切り欠いて形成されていることを特徴とする請求項4に記載の熱式流量計。
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