本発明の詳細な記載
本発明は、薬物送達デバイスを、体中を循環する薬物補充物を認識可能であり、結合可能である分子標的で改変することによって、少なくとも一部において、インビボで最小侵襲的様式で薬物送達デバイスの補充を可能にする薬物送達システムの開発に基づく。薬物送達システムは、二元機能性薬物補充物を特徴とし、これは、医薬組成物の薬物補充物から薬物送達デバイスへの直接標的化した送達を可能にするだけでなく、医薬組成物が薬物送達デバイスに送達されるまで、化学療法剤などの医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。医薬組成物は、薬物送達デバイスへの送達の際にのみ暴露され、ここで標的は医薬組成物から分離し、したがって、いずれかの所望でない部位における医薬組成物に関連したいずれかの副作用または毒性が除かれる。医薬組成物の薬物送達デバイスからの放出は、調節された様式で達成され得る。典型的に医薬組成物の数分以内での送達を媒介する既存の薬物送達システムとは異なり、本発明の薬物送達システムは、数日、数週間、数ヶ月または数年の時間規模にわたって、医薬組成物のより持続し、かつ調節された放出を提供する。
例えば、注射可能な薬物送達デバイスは、血液に注入された薬物補充物上の標的に結合する、標的認識部分を含むように製造される(図1A)。患者の血液に注入された薬物補充物は所望の位置へと血管外遊出し、薬物送達デバイスに結合する(図1B)。薬物送達システムは、薬物を薬物補充物から薬物送達デバイスへ直接送達させる。その後、薬物は、薬物送達デバイスから被験体における所望の位置へ放出され得、所望の位置における薬物の徐放を可能にする(図1C)。
したがって、本発明は、一実施形態では、薬物送達デバイスおよび薬物補充物を含む薬物送達システム、ならびに薬物送達デバイスを補充する方法を提供する。本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載される薬物送達システムを使用した、疾患(がんなど)の予防または処置に関連する方法を包含する。
I.定義
本発明がより容易に理解され得るように、特定の用語が最初に定義される。
本明細書中に別段定義されない限り、本発明に関連して使用される科学および専門用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するものとする。用語の意味および範囲は明確であるべきであるが、しかしながら、いずれかの潜在的な多義性がある場合において、本明細書中で提供される定義は、あらゆる辞書または外部の定義よりも優先する。
本発明を記載する文脈における用語「a」、「an」および「the」ならびに同様の指示物の(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)使用は、本明細書中で別段の指示がない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、単数形と複数形(すなわち1つまたはそれよりも多く)との両方をカバーすると解釈されるべきである。用語「含む」、「有する」、「包含する」および「含有する」は、別段記載されない限り、包括的な用語(すなわち、「包含するが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中の数値の範囲の記載は、参照される各別個の数値を個別に参照すること、またはその範囲内に入ることを省略する方法として扱うことが意図され、本明細書中で別段指示されない限り、各個別の数値は、本明細書中に個別に列挙されているかのように組み込まれる。本明細書中で提供される範囲は、その範囲内のすべての数値についての省略であると理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50からなる群からのあらゆる数、数の組み合わせ、または10〜40、20〜50、5〜35などからなる群からの副範囲を包含するように理解される。
本明細書中で使用される場合、用語「薬物送達デバイス」とは、通常、医薬化合物の所望の治療的効果を安全に達成するために必要とされる、体中で医薬化合物を送達または輸送するためのデバイスをいう。
本明細書中で使用される場合、用語「薬物補充物」とは、通常、医薬組成物を薬物送達デバイスに送達し、そうすることで、薬物送達デバイス中で使用された医薬組成物を補給または補充する、組成物をいう。本発明の薬物補充物は、医薬組成物および標的を含む。薬物補充物は、二元機能性を有し、薬物補充物から薬物送達デバイスへの医薬組成物の直接標的化された送達を可能にするだけでなく、医薬組成物が薬物送達デバイスに送達されるまで医薬組成物(化学療法剤など)の潜在的な毒性をマスクする。
本明細書中で使用される場合、用語「医薬組成物」とは、通常、被験体に投与されたときに治療効果を有する薬剤をいう。医薬組成物は、小分子または生物製剤(例えば、抗体、ワクチン、血液または血液成分、アレルゲン性、遺伝子治療、組換え治療用タンパク質および細胞治療において使用される生細胞または体細胞)を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、標的に直接結合される。他の実施形態では、医薬組成物は、標的に切断可能なリンカーを介して結合される。
本明細書中で使用される場合、用語「小分子」とは、通常、生物学的プロセスの制御を補助し得る低分子量有機化合物をいう。適切な小分子は、抗がん薬物、創傷治癒を促進する薬物、血管形成を促進する薬物、感染症を処置または予防する薬物、再狭窄を予防する薬物、黄斑変性を低減する薬物、免疫学的拒絶反応を予防する薬物、血栓症を予防する薬物および炎症を処置する薬物などの薬物であり得る。例示的な薬物は、以下に詳細に記載される。
本明細書中で使用される場合、用語「生物製剤」とは、通常、生物学的供給源から製造、抽出、または半合成されたあらゆる医薬産物をいい、化学的に合成された医薬品とは異なる。本発明において使用される例示的な生物製剤としては、抗体、ワクチン、血液または血液成分、アレルギー性物質(allergenics)、体細胞、遺伝子治療、組織、組換え治療用タンパク質および細胞治療において使用される生細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。生物製剤は、糖類、タンパク質もしくは核酸、またはこれらの物質の複合的な組み合わせ物から構成され得るか、あるいは生細胞または組織であり得、これらは、ヒト、動物または微生物などの天然供給源から単離され得る。
本明細書中で使用される場合、用語「結合(attach)」とは、結合(bond)の形成または1つの組成物と別のものとの間の複数の結合をいう。一部の実施形態では、結合(bond)は、医薬組成物と標的との間に直接形成され得る。適切な結合としては、共有結合、非共有結合またはイオン結合が挙げられ得るが、これらに限定されない。他の実施形態では、結合は、医薬組成物と標的との間に、リンカーを介して形成され得る。適切なリンカーとしては、切断可能なリンカーまたは切断可能でないリンカーが挙げられ得る。例示的な切断可能なリンカーは、以下に詳細に記載される。
本明細書中で使用される場合、用語「標的」とは、通常、標的認識部分によって認識される標的である分子をいう。このような標的の例としては、無機化学種、または低分子量化合物、高分子量化合物、および生きている生物由来の物質などの有機化学種が挙げられ得るが、これらに限定されない。標的の他の例としては、糖類、脂質、ペプチド、タンパク質、核酸または任意の生体直交型官能基が挙げられる。生体直交型官能種の例は、以下に詳細に記載される。
本明細書中で使用される場合、用語「標的認識部分」とは、所定の標的に選択的に結合することができる分子をいう。標的認識部分としては、無機化学種、または低分子量化合物、高分子量化合物、および生きている生物由来の物質などの有機化学種が挙げられ得るが、これらに限定されない。標的認識部分のさらなる例としては、糖類、脂質、ペプチド、タンパク質、核酸または任意の相補生体直交型官能基が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、用語「生体直交型」または「生体直交型官能基」とは、生細胞、組織または生物体内で天然の生物学的または生化学的プロセスに干渉することなく発生しうる、官能基または化学反応をいう。生体直交型官能基または反応は、細胞に対して毒性でない。一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、生体直交型官能基を含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分が、相補官能基を含み、ここで、生体直交型官能基は、相補官能基と化学的に反応して共有結合を形成することができる。
II.補充可能な薬物送達システム
一態様では、本発明は、補充可能な薬物送達システムを特徴とする。本発明のシステムは、薬物送達デバイスおよび薬物補充物を含み、ここで、薬物送達デバイスは、担体および標的認識部分を含み、薬物補充物は、医薬組成物および標的を含む。薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置における移植に適切である。薬物送達デバイスと薬物補充物との間の認識は、標的および標的認識部分によって容易にされ、標的および標的認識部分は、二成分結合対を形成する。薬物補充物は、薬物補充物上の標的が、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合するまで可動性である。標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物デバイスに直接送達し、それによって薬物送達デバイスを補充する。
別の態様では、本発明は、薬物送達デバイスおよび薬物補充物を含むシステムであって、薬物送達デバイスは、標的認識部分を含み、被験体内の所望の位置における移植に適切であり、薬物補充物は、医薬組成物および標的を含み、医薬組成物は、標的に直接または切断可能なリンカーを介して結合され、医薬組成物は、所望でない毒性を有し、薬物補充物が医薬組成物の毒性をマスクし、標的および標的認識部分が二成分結合対を形成し、薬物補充物は、薬物補充物上の標的が、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合するまで可動性であり、標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、医薬組成物は、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置に制御された様式で放出される、システムを提供する。
別の態様では、本発明は、医薬組成物、標的認識部分および担体を含む停留薬物送達デバイスを特徴とし、ここで、標的認識部分は、薬物補充物上の標的に結合することができ、薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置における移植に適切である。
さらに別の態様では、本発明は、医薬組成物および標的を含む薬物補充物であって、ここで、医薬組成物は、標的に直接または切断可能なリンカーを介して結合され、医薬組成物は、所望でない毒性を有し、薬物補充物が医薬組成物の毒性をマスクし、標的は、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合することができ、薬物補充物は、標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合するまで可動性であり、標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに送達し、医薬組成物は、薬物送達デバイスへの送達後に暴露される、薬物補充物を提供する。
A.薬物送達デバイス
本発明の薬物送達デバイスは、担体(carroer)および標的認識部分を含む。標的認識部分は、薬物送達デバイスに直接結合する(すなわち、デバイスと標的認識部分との間に、受容体、リンカーまたはリガンドなどの中間部分が存在しない)。この理由のため、非特異的相互作用を引き起こし得る中間結合部分とは異なり、本明細書中に記載される薬物送達システムに関連した非特異的結合は存在しない。この様式では、医薬組成物(例えば、小分子または生物製剤)は、薬物補充物上の標的と薬物送達デバイス上の標的認識部分との間の直接相互作用に基づき送達される。
本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置に移植または注射することができる。一部の実施形態では、所望の位置は、被験体内の組織またはこの組織から離れた部位である。他の実施形態では、所望の位置は、被験体内の器官またはこの器官から離れた部位である。組織または器官の生理学的状態は、正常または異常であり得る。一部の実施形態では、所望の位置は、移植片、人工装具、または体内もしくは体の表面に導入することができる任意の組織もしくはデバイスである。薬物送達デバイスは、様々な公知の方法およびツール、例えば、ピンセット、捕捉器具、皮下針、内視鏡マニピュレーター、血管内もしくは経血管カテーテル、定位針、スネークデバイス(snake device)、臓器表面匍匐ロボット(organ−surface−crawling robot)(米国特許出願第20050154376号;Otaら、2006年、Innovations 1巻:227〜231頁)、最小侵襲手術デバイス、外科的移植用ツール、および経皮パッチを使用して、身体組織内またはその上に導入される。例えば、マトリックス材料を逐次的に注射または挿入することによって、デバイスを適所で構築することもできる。
一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、担体(例えば、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルまたは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料)を含む。一実施形態では、本発明の薬物送達デバイスは、タンパク質を含まない。一部の実施形態では、本発明の薬物送達デバイスは、生細胞(例えば、がん細胞または他の生物学的実体)を含まない。
本発明の薬物送達デバイスは、医薬組成物を含み得る。他の実施形態では、薬物送達デバイスは、医薬組成物なしで、被験体内の所望の位置に移植または注射される。例えば、ポリマー材料および標的認識部分を含む薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置に移植または注射され得る。その後、感染が生じた場合、抗生物質が、薬物送達デバイスに送達される。
医薬組成物は、表面吸収、例えばヒドロゲル材料中に物質を補足するための相変化を使用する物理的固定化をはじめとする公知の方法を使用して、移植前に薬物送達デバイスに加えられる。例えば、生物製剤などの医薬組成物、例えばポリペプチド、例えば成長因子は、水性相または液相中にあるうちにヒドロゲル材料と混合され、環境条件(例えば、pH、温度、イオン濃度)の変更後、その液体はゲル化または固体化し、それによって医薬組成物が捕捉される。あるいは、例えばアルキル化剤またはアシル化剤を使用する、共有結合性カップリングが、規定された高次構造のヒドロゲル上での医薬組成物の安定した長期提示をもたらすために使用される。ペプチド/タンパク質などの医薬組成物の共有結合性カップリングのための例示的試薬を下の表に提供する。
一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、およびポリ乳酸−coグリコール酸からなる群から選択されるヒドロゲルを含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスのポリマーは、ヒドロゲル(例えばアルギネートヒドロゲル)の形態におけるものである。一部の実施形態では、アルギネートは、細胞接着ペプチド(例えばRGD)によって修飾される。一部の実施形態では、ポリマー(例えばアルギネートヒドロゲルなどのアルギネート)は、(例えばインビボでの)時間にわたって分解される。
一部の実施形態では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、生体適合性材料を含む。この生体適合性材料は、無毒性または非免疫原性である。薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、体中で生分解性/生体浸食性である。一部の実施形態では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、温度、pH、水和状態および多孔性、架橋密度、型、主鎖結合の分解に対する化学的性質または感受性からなる群から選択される物理学的パラメーターに基づき所定の速度で分解するか、または化学的ポリマーの比率に基づき所定の速度で分解する。例えば、ラクチドのみから構成される高分子量ポリマーは、数年(例えば1〜2年)の期間にわたって分解するが、一方で、ラクチドとグリコリドとの50:50混合物から構成される低分子量ポリマーは、およそ数週間(例えば、1、2、3、4、6、10週間)で分解する。高分子量で、高グルロン酸のアルギネートから構成されるカルシウム架橋ゲルは、インビボで数ヶ月間(1、2、4、6、8、10、12ヶ月間)から数年間(1、2、5年間)にわたって分解するが、一方で、低分子量アルギネートおよび/または部分的に酸化されたアルギネートから構成されるゲルは、およそ数週間で分解する。一部の実施形態では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、非生分解性材料を含む。例示的な非生分解性材料としては、金属、可塑性ポリマー、またはシルクポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、薬物送達デバイスのポリマーは、補充物のポリマーよりも高い分子量(MW)を有する。例えば、薬物送達デバイスのポリマーは、ポリマー(例えばアルギネート)の1よりも多くの鎖を含む。一部の実施形態では、ポリマー(例えばアルギネート)鎖は架橋している。例えば、ポリマーは、カチオン(例えば、Ca2+などの二価または三価カチオン)によって架橋される。
アルギネートは、分子量、分解速度およびスキャホールド形成方法を制御することによって特定の適用のために配合され得る、汎用多糖類系ポリマーである。アルギネート分子は、比率およびポリマー鎖に沿っての逐次的分布が様々でありうる、(1−4)結合β−D−マンヌロン酸モノマー(M単位)およびαL−グルロン酸モノマー(G単位)からなる。カップリング反応を使用して、細胞接着配列RGDなどの生体活性エピトープをポリマー骨格に共有結合で結合させることができる。アルギネートポリマーは、様々なヒドロゲルタイプに形成される。注射可能なヒドロゲルは、カルシウムイオンなどの架橋剤の添加によって低分子量(MW)アルギネート溶液から形成することができ、その一方でマクロ多孔性ヒドロゲルは、高MWアルギネートディスクの凍結乾燥によって形成される。一部の実施形態では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)のポリマー(例えばアルギネート)は、0〜100%架橋されている(例えば、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれを超えて架橋されている)。他の実施形態では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)のポリマー(例えばアルギネート)は、架橋されていない。一部の実施形態では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)のポリマー(例えばアルギネート)は、50%未満(例えば、50%未満、40%、30%、20%、10%、50%、2%、1%またはそれ未満)の架橋を含有する。RGD修飾アルギネート構造は、配列番号26として「GGGGRGDSP」を開示する。
ヒドロゲル配合の違いは、ヒドロゲル分解の動態を制御する。アルギネートヒドロゲルからの医薬組成物、例えば、小分子、モルフォゲンまたは他の生体活性物質の放出速度は、ヒドロゲル配合によって制御され、空間的および時間的に制御された様式で医薬組成物をもたらす。この制御放出は、全身性副作用および複数回の注射の必要をなくす。
一部の実施形態では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、修飾されているポリマーを含み、例えば、ポリマー分子上の部位が、メタクリル酸基(メタクリレート(MA))またはアクリル酸基(アクリレート)で修飾されている。例示的な修飾ヒドロゲルは、MA−アルギネート(メタクリル化アルギネート)またはMA−ゼラチンである。MA−アルギネートまたはMA−ゼラチンの場合、50%がアルギネートまたはゼラチンのメタクリル化度に相当する。これは、1つおきの繰り返し単位が、メタクリル化された基を含有することを意味する。メタクリル化度は、1%〜90%に変えることができる。90%を超えると、化学修飾は、ポリマー水溶性の溶解度を低減させ得る。
本発明の薬物送達デバイスに使用するためのポリマーは、メタクリレート基(methacrylated group)の代わりにアクリレート基(acrylated group)で修飾することもできる。これより後、その産物は、アクリル化ポリマーとして参照される。メタクリル化(またはアクリル化)度は、ほとんどのポリマーについて変えることができる。しかしながら、一部のポリマー(例えばPEG)は、100%化学修飾の場合でさえ、それらの水溶性特性を維持する。架橋後、ポリマーは、通常、ほぼ完全なメタクリレート基(methacrylate group)転化に達し、これはおおよそ100%の架橋効率を示す。例えば、ヒドロゲル中のポリマーは、50〜100%架橋されている(共有結合)。架橋の程度は、ヒドロゲルの耐久性と相関する。したがって、修飾ポリマーの高い架橋レベル(90〜100%)が望ましい。
例示的な本発明の薬物送達デバイスは、比較的低分子量、好ましくは、溶解後、ヒトによるクリアランス(例えばアルギネートまたは多糖類が1000〜80,000ダルトンの分子量に低減される)の腎閾値であるサイズのアルギネートまたは他の多糖類を利用する。好ましくは、分子量は、1000〜60,000ダルトン、特に好ましくは1000〜50,000ダルトンである。グルロネート単位は、マンヌロネート単位とは対照的に、ポリマーをゲル化するために二価カチオンによるイオン架橋のための部位を与えるため、高グルロネート含有量のアルギネート材料の使用も有用である。アルギネートまたは修飾アルギネートなどの多糖類を含有するポリマーを作製および使用する方法は、当該分野において公知である。米国特許第6,642,363号。前述の特許の内容全体は、参照によって本明細書中に組み込まれる。
一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、マクロ多孔性ポリ−ラクチド−co−グリコリド(PLG)を含む。PLGマトリックスは、封入されている医薬組成物を、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)から、処置すべき被験体の体内または体表の部位への投与後、次の数日または数週間にわたって徐々に放出する。例えば、放出は、最初の5日以内に医薬組成物負荷量のおおよそ60%であり、続いて、次の10日間にわたって医薬組成物の緩徐な徐放である。この放出プロファイルが、周囲組織へのおよび/または周囲組織を通しての医薬組成物の拡散速度を媒介する。
本発明の薬物送達デバイスにおいて使用される他の有用な多糖類としては、アガロースおよび微生物性多糖類(例えば、下に列挙されるもの)が挙げられ得る。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、1つまたはそれより多くの区画を含む。
本発明の薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、外部表面を含有し得る。代わりに、または加えて、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、内部表面を含有し得る。本発明の薬物送達デバイスの外部表面または内部表面は、中実または多孔性である。薬物送達デバイスの孔径は、直径で、約10nm未満、約100nm〜20μmの間、または約20μmより大きい(例えば、最大で1000μmを含む)であり得る。例えば、細孔は、ナノ多孔性、ミクロ多孔性、またはマクロ多孔性であり得る。例えば、ナノ細孔の直径は、約10nm未満であり、ミクロ細孔は、直径約100μm〜20μmの範囲であり、マクロ細孔は、約20μmより大きい(好ましくは、約100μmより大きく、よりいっそう好ましくは約400μmより大きく、例えば、600μmより大きい、または800μmより大きい)。一例では、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)はマクロ多孔性であり、直径約100〜500μm(例えば、100〜200、200〜400、または400〜500μm)の開放、連通孔を有する。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達デバイスは、様々な幾何形状(例えば、ディスク、ビーズ、ペレット)、ニッチ、平面層(例えば、薄いシート)で構築される。例えば、直径約0.1〜200ミリメートル(例えば、5、10、20、40、50ミリメートル)のディスクは、皮下に移植され得る。ディスクは、0.1〜10ミリメートル(例えば、1、2、5ミリメートル)の厚さを有し得る。ディスクは、患者への投与のために容易に圧縮または凍結乾燥される。皮下投与用の例示的ディスクは、次の寸法を有する:直径8ミリメートルおよび厚さ1ミリメートル。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、複数成分を含み得る。多成分薬物送達デバイスは、各々の層が異なる物理的品質(ポリマー%、ポリマーの架橋%、ヒドロゲルの化学的組成、孔径、多孔度および細孔構造、剛性、靭性、延性、粘弾性ならびに/または医薬組成物など)を特徴とする同心性の層に任意選択で構成される。
薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)を作製する方法は、ヒドロゲル材料を提供すること、およびヒドロゲル材料を医薬組成物と共有結合で連結させるまたは非共有結合で会合させることによって行われる。例示的な薬物送達デバイスおよびそれらを作製する方法は、US2012/0100182、PCT/US2010/057630、およびPCT/US2012/35505に記載されている。前述の出願の各々の内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明の薬物送達デバイスは、数種の方法でインビボで構築され得る。ヒドロゲルは、未ゲル化形態で体内に導入されて、インサイチュでゲル化するゲル化材料から作製され得る。構築を行う部位に薬物送達デバイス成分を送達する例示的な方法としては、針もしくは他の押出しツールによる注射、噴霧、塗布、または組織部位に置く方法(例えば、カニューレによって挿入された適用デバイスを使用する送達)が挙げられる。一例では、未ゲル化または未形成ヒドロゲル材料は、体内への導入前、または導入している間に、医薬組成物と混合される。結果として得られる、インビボ/インサイチュで構築されたデバイス(例えばヒドロゲル)は、これらの医薬組成物(単数または複数)の混合物を含有する。
薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)のインサイチュでの構築は、ポリマーの自発的会合の結果として、または相乗的もしくは化学的触媒重合の結果として生じる。相乗的または化学的触媒反応は、構築部位またはその付近の多数の内因性因子もしくは条件(例えば、体温、体内のイオンもしくはpH)によって開始されるか、またはオペレーターによって構築部位に与えられる外因性因子もしくは条件(例えば、それが導入された後に未ゲル化材料に向けられる光子、熱、電気、音もしくは他の放射)によって開始される。エネルギーは、放射ビーム、または熱もしくは光コンダクター(例えばワイヤーもしくは光ファイバーケーブルまたは超音波変換器)によって、ヒドロゲル材料に向けられる。代替的に、両親媒性物質などの剪断減粘材料が使用され、この材料は、例えばそれが針を通過することによってそれにかけられた剪断力が緩和された後、再び架橋する。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は注射可能である。例えば、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、マクロ多孔性スキャホールドとして体外で作られる。ヒドロゲルは、細孔がつぶれてゲルが非常に小さくなり、針を通り抜けることができるため、体内に注射することができる。例えば、WO12/149358;およびBencherifら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109巻、48号(2012年):19590〜5頁を参照されたい。前述の引用文献の各々の内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)は、複数の区画を含む。複数区画薬物送達デバイスは、同様にもしくは示差的にドープされたゲルまたは他のスキャホールド材料の逐次層を標的部位へ適用することによって、インビボで構築される。非同心区画は、事前に注射された層における異なる位置に材料を注射することによって形成される。マルチヘッドの注射デバイスは、並行して同時に区画を押し出す。この層は、医薬組成物を含む示差的にドープされた同様または異なるヒドロゲル組成物で作製される。代替的に、区画は、それらの親水/疎水特性、または各区画内の二次相互作用に基づいて自己組織化する。
ある特定の実施形態では、別個の化学的および/または物理的特性を有する区画を含有する薬物送達デバイスが提供される。区画化された薬物送達デバイスは、各区画に対して異なる組成物または組成物濃度を使用して設計され、作り上げられる。代替的に、区画は、個別に作り上げられ、その後、互いに接着される(例えば、1つまたはすべての側面が第2の区画で囲まれている内部区画を有する「サンドイッチ」)。区画は、適切な前駆体(例えば、温度感受性オリゴペプチド、イオン強度感受性オリゴペプチド、ブロックポリマー、架橋剤およびポリマー鎖(またはこれらの組合せ))の存在に依存して、インビトロまたはインビボのいずれかで、適切に自己集合し、相互作用する。
代替的に、区画化された薬物送達デバイスは、印刷技術を使用して形成される。医薬組成物がドープされたヒドロゲル前駆体の連続層が基材上に配置され、その後、例えば自己集合化学反応によって、架橋される。架橋が化学重合、光重合または熱触媒重合によって制御される場合、各層の厚さおよびパターンは、マスク(masque)によって制御され、各触媒反応後に未架橋前駆体材料を洗浄除去したときに複雑な三次元パターンを組み立てることを可能にする。(WT Brinkmanら、2003年、Biomacromolecules 4巻(4号):890〜895頁;W.Ryuら、2007年、Biomaterials;28巻(6号):1174〜1184頁;Wright, Paul K.(2001年)、21st Century manufacturing.New Jersey: Prentice−Hall Inc.)。複雑な多区画の層も、基材の異なる領域上に異なるドープしたスキャホールド前駆体を「印刷する」インクジェットデバイスを使用して組み立てられる。C.Choi、New Scientist、25、2003年、2379巻。これらの層が組み立てられて、複雑な三次元区画となる。薬物送達デバイスは、以下の方法:フォトポリマー噴射、選択的レーザー焼結、薄膜積層法、熱溶解積層法、シングルジェットインクジェット、三次元印刷、または薄膜積層法のいずれかを使用することでも作られ得る。
B.薬物補充物
本発明の薬物補充物は、薬物補充物が、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、医薬組成物(例えば、がん処置のための化学療法剤)の潜在的な毒性をマスクするような二元機能性を特徴とする。
本発明の薬物補充物は、医薬組成物および標的を含み、ここで、標的は、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合することができ、薬物補充物は、薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合するまで可動性である。標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、それによって薬物送達デバイスを補充する。
一部の実施形態では、薬物補充物は、ナノ担体をさらに含む。例示的なナノ担体としては、ポリマー、ナノ粒子、リポソームナノ粒子、デンドリマー、カーボンナノチューブ、ミセル、タンパク質(例えばアルブミン)、シリカまたは金属(例えば金、銀もしくは鉄)ナノ粒子が挙げられ得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ポリマーは、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、またはポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、およびポリ乳酸−coグリコール酸からなる群から選択される。他の実施形態では、ポリマーは、ポリマーの鎖を含む。さらに別の実施形態では、ポリマーは、遊離アルギネート鎖である(すなわち、アルギネート鎖は、他のアルギネート鎖と架橋しない)。一部の実施形態では、医薬組成物および標的と連結した遊離アルギネート鎖は、薬物送達デバイス(例えばアルギネートヒドロゲル)と融合し、薬物補充物から薬物送達デバイスへの医薬組成物の直接送達をもたらす。一部の実施形態では、薬物補充物中のポリマーは、(例えば、細胞接着ペプチド、例えばRGDによって修飾された)アルギネートを含む。
一部の実施形態では、薬物補充物中のポリマー(例えば、アルギネートを含む)は、1000kDaまたはそれ未満のMW(例えば、1000kDa、900kDa、800kDa、700kDa、600kDa、500kDa、400kDa、350kDa、325kDa、300kDa、290kDa、285kDa、280kDa、275kDa、270kDa、260kDa、250kDa、240kDa、230kDa、220kDa、210kDa、200kDa、180kDa、160kDa、150kDa、140kDa、120kDa、100kDaもしくはそれ未満)を有する。
他の実施形態では、薬物補充物中のポリマー(例えば、アルギネートを含む)は、200nmまたはそれ未満(例えば、200nm、180nm、160nm、140nm、120nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、44nm、40nm、35nm、30nm、25nm、20nm、17nm、15nm、12nm、10nm、またはそれ未満の流体力学的半径(Rh)を有する。流体力学的半径は、当技術分野における標準法を使用することによって測定される。
本発明の薬物補充物は、十分に長い期間にわたって血液中を循環することができ、制御された薬物送達および血液に基づく標的指向化が可能である。一部の実施形態では、薬物補充物は、アルギネートを含む。アルギネートは、血液中での長い循環時間を有し、少なくとも1週間は血清中で検出可能であること、ならびにコンジュゲーション後にナノ粒子の循環時間を増加させることができる点でPEG様特性を有することが以前に報告されている。Al−Shamkhani AおよびDuncan R(1995年)Journal of bioactive and compatible polymers 10巻(1号):4〜13頁;ならびにKodiyan Aら、(2012年)ACS nano 6巻(6号):4796〜4805頁。循環寿命は、尿への排泄率、肝臓および脾臓内の単核食細胞系による取り込み、ならびに薬物安定性に主として依存する。例えば、280kDa(酸化していないもの)または200KDa(5%酸化されているもの)のMWを有し、それぞれ、44nmおよび17nmの流体力学的半径を有するアルギネートは、ナノ粒子と同様に挙動し、薬物循環時間を増し、オフターゲット組織内への薬物透過性を低減する。遊離アルギネート鎖は、約2週間の血中循環寿命を有する。個々の臓器の撮像によって、MPS関連臓器への有意なクリアランスを被る傾向ばかりでなく、多くのナノ粒子とも一致して、肺内での蓄積、およびより少ない程度に腎臓内での蓄積が明らかになり(図6D)、これは、これらの臓器のすべてがアルギネートクリアランスに寄与することを実証した。
一部の実施形態では、(例えば薬物送達デバイスおよび/または補充物中の)医薬組成物は、小分子または生物製剤を含む。生物製剤は、生物学的供給源から製造、抽出、または半合成されたあらゆる医薬産物であり、化学的に合成された医薬品とは異なる。一部の実施形態では、本発明において使用される生物製剤としては、抗体、ワクチン、血液または血液成分、アレルギー性物質、体細胞、遺伝子治療、組織、組換え治療用タンパク質および細胞治療において使用される生細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。生物製剤は、糖類、タンパク質もしくは核酸、またはこれらの物質の複合的な組み合わせ物から構成され得るか、あるいは生細胞または組織であり得、これらは、ヒト、動物または微生物などの天然供給源から単離され得る。
一部の実施形態では、医薬組成物は、例えば、共有結合、非共有結合またはイオン結合を介して、標的に直接結合される。他の実施形態では、医薬組成物は、切断可能なリンカーを介して標的に結合される。切断可能なリンカーの例としては、加水分解可能なリンカー、pH切断性リンカー、酵素切断可能なリンカーまたは遊離チオールおよび他の還元剤による還元により切断されるジスルフィド結合、プロテアーゼおよびペプチダーゼの作用により切断されるペプチド結合、ヌクレアーゼの作用により切断される核酸結合、インビボで酵素または水のいずれかの作用による加水分解によって切断されるエステル、体中での加水分解により切断される、ヒドラゾン(hydrazone)基、アセタール基、ケタール基、オキシム基、イミン基、アミナール基および同様の基、特定の波長の光への照射によって切断される光切断可能な結合、超音波または機械的歪み(例えば、磁気応答性ゲルにおける磁場によって生じる機械的歪み)の適用によって切断される機械感受性基が挙げられる。例えば、インビボの特定の位置に標的化された薬物は、磁場または光などの外部刺激によって放出され得る。Cezarら、Advanced Healthcare Materials(2014年)、Zhaoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108巻(2011年):67頁、Muraら、Nat. Materials 12巻(2013年):991頁を参照されたい。前述の参照のそれぞれの内容全体は、本明細書中に参照によって組み込まれる。医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合が切断されると、医薬組成物は、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出され得る。
一部の実施形態では、医薬組成物は、例えば、共有結合、非共有結合、またはイオン結合を介して、薬物補充物中のナノ担体に直接連結される。他の実施形態では、医薬組成物は、リンカー(例えば、切断可能なリンカー、または切断可能でないリンカー)を介して、薬物補充物中のナノ担体に連結される。一部の実施形態では、医薬組成物は、例えば、共有結合、非共有結合、またはイオン結合を介して、薬物送達デバイス中のポリマーに直接連結される。他の実施形態では、医薬組成物は、リンカー(例えば、切断可能なリンカー、または切断可能でないリンカー)を介して、薬物送達デバイス中のポリマーに連結される。例示的な切断可能なリンカーは、上記に記載されるとおりである。一部の実施形態では、ポリマー(例えばアルギネート)は、酸化されないか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%もしくはそれより多くまで部分的に酸化される。例えば、ポリマーは、ポリマーの医薬組成物へのカップリングにおける使用のためのアルデヒド官能基などの官能基を導入するために酸化される。
一部の実施形態では、本発明における使用のための医薬組成物は、毒性であり得(例えば所望でない毒性を有する)、本発明の薬物補充物が、被験体に投与されたときの医薬組成物の毒性をマスクする。一部の実施形態では、薬物補充物は、医薬組成物が細胞膜を通過することを防止することによって、医薬組成物の毒性をマスクし得る。他の実施形態では、薬物補充物は、医薬組成物がこの医薬組成物の生物学的標的に結合することを防止することによって医薬組成物の毒性をマスクし得る。一部の実施形態では、医薬組成物の毒性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、薬物補充物によってマスクされる。例えば、腫瘍部位を標的化する化学療法剤が送達される場合、化学療法剤の潜在的な毒性は、所望の腫瘍部位以外の部位に対して損傷を生じさせ得、不必要な全身性の毒性をもたらす。本発明の薬物送達システムは、二元機能性薬物補充物の開発を通じて、疾患部位のより効率的な標的化を可能にし、同時に送達される薬物の潜在的な毒性を最小化する。本発明の薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、送達される医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。
医薬組成物は、標的が医薬組成物から分離したときに薬物送達デバイスに送達されたときにのみ暴露し、それにより任意の所望でない部位における医薬組成物に関連したいずれの副作用も毒性も除く。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬物補充物と薬物送達デバイスとの間の融合を介して送達され得る。例えば、薬物補充物のナノ担体が遊離ポリマー(例えば遊離アルギネート鎖)を含む場合、医薬組成物および標的に連結した遊離アルギネート鎖は、標的と標的認識部分との間で相互作用すると、標的認識部分に連結した薬物送達デバイス(例えばアルギネートヒドロゲル)に融合し得、それによって医薬組成物の薬物補充物から薬物送達デバイスへの直接送達を可能にする。他の実施形態では、医薬組成物は、標的と薬物送達デバイス内の標的認識部分との間で相互作用すると、薬物補充物から薬物送達デバイスへと送達される。薬物補充物上の標的の標的認識部分への結合は、薬物送達デバイスの内部または外部で生じ得る。
本発明の薬物補充物中の標的は、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって、医薬組成物から分離され得る。一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の酵素分解によって切断される。他の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の加水分解によって切断される。さらに別の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の還元によって切断される。一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。
本発明の別の態様は、薬物送達デバイスおよび薬物補充物を含むシステムであって、薬物送達デバイスは、担体および標的認識部分を含み、被験体内の所望の位置における移植に適切であり、薬物補充物は、医薬組成物および標的を含み、医薬組成物は、直接または切断可能なリンカーを介して標的に結合され、医薬組成物は、所望でない毒性を有し、薬物補充物が医薬組成物の毒性をマスクし、標的および標的認識部分が二成分結合対を形成し、薬物補充物は、薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合するまで可動性であり、標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、医薬組成物は、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出される、システムを提供する。
本発明における医薬組成物の薬物送達デバイスからの放出は、制御された様式で達成され得る。通常数分以内に医薬組成物の送達を媒介する、既存の薬物送達システムとは異なり、本発明の薬物送達システムは、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間の時間規模にわたるより持続された医薬組成物の放出を提供する。結果として、医薬組成物の薬物送達デバイスからの制御された放出は、医薬組成物の有効性を維持しつつ、医薬組成物の潜在的な副作用を最小化することができる。
一部の実施形態では、本発明における使用のための医薬組成物は、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって放出される。
他の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の酵素分解、加水分解または還元によって切断される。一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬物補充物から被験体内の所望の位置へと放出されない。一部の実施形態では、医薬組成物の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出される。
医薬組成物を薬物送達デバイスから所望の位置に放出する速度は、環境のpH、温度、水和状態、イオン濃度を含む多様な因子に依存するが、これらに限定されない。一部の実施形態では、医薬組成物は、周囲のpHがより低い場合に、より速い速度で放出されるが、一方でpHが上昇するにしたがって速度は低下する。結果として、当業者は、溶液のpHを微調整することによって薬物放出の速度を制御またはコントロールすることができる。医薬組成物の薬物送達デバイスからの遅い放出が好ましい場合、溶液のpHを増加させることができる。代替的に、溶液のより低いpHは、医薬組成物の薬物送達デバイスからのより速い放出をもたらす。
本発明の薬物送達システムは、体中の特定の部位(例えば、被験体において以前に投与された薬物送達デバイス(例えば停留型))に対する、薬物補充物の高度に選択的な標的指向化を提供する。薬物送達デバイスと薬物補充物との間の特異的な認識は、標的と標的認識部分との間の相互作用によって容易にされる。例えば、被験体に投与された(例えば医薬組成物(複数可)を含む)薬物補充物の少なくとも2%(例えば、少なくとも2%、4%、6%、8%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれよりも高い)は、特定の薬物送達デバイス(例えば、薬物補充物上の標的に特異的に結合する標的認識部分を含むもの)に移動し、沈着する。被験体に投与された例えば医薬組成物(複数可)を含む)薬物補充物の98%未満(例えば、98%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満)は、薬物補充物上の標的が標的とされる薬物送達デバイス以外の部位に沈着する。
一部の実施形態では、標的および/または標的認識部分は、核酸、ペプチド、多糖、脂質、小分子もしくはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、標的および標的認識部分は、核酸を含む。例えば、薬物補充物上の標的は、薬物送達デバイス上の標的認識部分の核酸配列に相補的な核酸配列を含む。一部の実施形態では、核酸は、DNA、RNA、修飾DNA、修飾RNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、またはモルホリノを含む。一部の実施形態では、核酸は、siRNA、RNAi、mRNAおよびマイクロRNAを含む。他の例では、核酸は、DNAまたは修飾DNAを含む。
DNA相補性は、複合ナノ構造物の形成、表面官能化ならびにナノ粒子および細胞集合を含む特異的化学的相互作用を指向するために、広く活用されている。例えば、Douglas Sら(2009年)Nature 459巻(7245号):414〜418頁;Wei B、Dai M、およびYin P(2012年)Nature 485巻(7400号):623〜626頁;Onoe Hら、(2012年)Langmuir 28巻(21号):8120〜8126頁;Gartner ZおよびBertozzi C(2009年)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106巻(12号)4606〜4610頁;Zhang Yら(2013年)Nature nanotechnology 8巻(11号):865〜872頁を参照されたい。これらの適用におけるDNAの有用性は、配列特異性および結合強度、ならびに相互作用強度制御の容易さに存する。このタイプの適用の1つの課題は、DNAの安定性である。一部の実施形態では、ナノ担体(例えばアルギネート鎖)は、DNAの3’末端とコンジュゲートされて、3’−5’エキソヌクレアーゼ(主要血清系ヌクレアーゼ)を克服する。例えば、Shaw Jら(1991年)Nucleic acids research 19巻(4号):747〜750頁;Floege Jら(1999年)The American journal of pathology 154巻(1号):169〜179頁;Gamper Hら(1993年)Nucleic acids research 21巻(1号):145〜150頁を参照されたい。一部の実施形態では、核酸の骨格は、エンドヌクレアーゼおよび化学的安定性増加のために、ホスホロチオエート基で修飾される。Campbell Jら(1990年)Journal of biochemical and biophysical methods 20巻(3号):259〜267頁を参照されたい。本明細書中に提示される結果は、異種移植腫瘍モデルにおいて、DNA媒介性の薬物(例えばドキソルビシン)が薬物送達デバイス(例えばアルギネートヒドロゲル)を補充し、劇的に腫瘍成長を阻害することを実証する。本発明の薬物送達システムは、すべての透過可能な組織の非特異的な標的指向化に関連する毒性を克服することができる。
一部の実施形態では、薬物補充物は、以下の結合性を有する医薬組成物、標的および任意選択でナノ担体を含む(ここで、「−−−−」は結合、例えば、リンカー、1つの結合または複数の結合を示す):
1)標的分子(例えば、TCO/DBCO/ノルボルネン/DNA)−−−−ナノ担体−−−−医薬組成物
2)標的分子−−−−医薬組成物−−−−ナノ担体
3)ナノ担体−−−−標的分子−−−−医薬組成物
4)標的分子−−−−医薬組成物(ナノ担体を伴わない)。
一部の例では、医薬組成物に直接結合した標的分子(ナノ担体を含まない)は、組織浸透を増加させるために補充物として有用であり、(例えばピル形態での)経口投与に適切である。他の例では、ナノ担体を含む補充物は、がん処置適用に有用である。
一部の実施形態では、標的分子、ナノ担体および/または医薬組成物間の結合は、アミド、エステル、ヒドラジド、エーテル、チオエーテル、アルキル、pegリンカー、ケトンまたはアミンなどの共有結合/リンカーを含む。他の場合では、結合は、非共有結合またはイオン結合を含む。他の例では、結合は、加水分解可能なリンカー、pH切断可能なリンカー、酵素切断可能なリンカー、または本明細書中に記載される例示的な切断可能なリンカーのいずれか1つなどの切断可能なリンカーを含む。例えば、薬物補充物のポリマー(例えばアルギネート鎖)は、核酸の3’末端、5’末端または中央における標的(例えば核酸)にコンジュゲートされ得る。別の例では、薬物補充物のポリマー(例えばアルギネート鎖)は、核酸分子(例えばDNA)の3’末端にコンジュゲートされる。標的と医薬組成物との間の結合が切断されると、医薬組成物は、薬物送達デバイスから所望の部位へと直接放出される。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、薬物送達デバイス上の標的認識部分の1つまたはそれより多くのヌクレオチドと相補的な、1つまたはそれより多くのヌクレオチドを含む。例えば、薬物補充物上の標的のヌクレオチドの50%またはそれよりも多く(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%)が、薬物送達デバイス上の標的認識部分のヌクレオチドの50%またはそれよりも多く(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%)に対して相補的である。
一部の例では、標的:標的認識部分のハイブリダイゼーションの融解温度(Tm)は、少なくとも40℃(例えば、少なくとも40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃または100℃)である。
薬物補充物上の標的および薬物送達デバイス上の標的認識部分として使用することができる例示的な核酸としては、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、トレオース核酸(TNA)、ヘキシトール核酸(HNA)、架橋核酸、シクロヘキセニル核酸、グリセロール核酸、モルホリノ、ホスホモルホリノ、ならびにこれらのアプタマーおよび触媒核酸バージョンが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、核酸は、修飾窒素塩基を含有する。例えば、修飾DNAおよびRNAとしては、2’−o−メチルDNA、2’−o−メチルRNA、2’−フルオロ−DNA、2’−フルオロ−RNA、2’−メトキシ−プリン、2’−フルオロ−ピリミジン、2’−メトキシメチル−DNA、2’−メトキシメチル−RNA、2’−アクリルアミド−DNA、2’−アクリルアミド−RNA、2’−エタノール−DNA、2’−エタノール−RNA、2’−メタノール−DNA、2’−メタノール−RNA、およびこれらの組合せが挙げられる。一部の場合では、核酸は、リン酸骨格を含有する。他の実施形態では、核酸は、修飾された骨格(例えば、ホスホロチオエート骨格、ホスホロボレート骨格、メチルホスホネート骨格、ホスホロセレノエート骨格、またはホスホロアミデート骨格)を含有する。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的(例えば核酸)および薬物送達デバイス上の標的認識部分(例えば核酸)は、一本鎖である。他の実施形態では、薬物補充物上の標的(例えば核酸)および薬物送達デバイス上の標的認識部分(例えば核酸)は、(例えばヘアピンなどの二次構造に起因して)部分的に一本鎖および部分的に二本鎖である。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的(例えば核酸)および/または薬物送達デバイス上の標的認識部分(例えば核酸)は、8〜50ヌクレオチド(例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50ヌクレオチド)を含む。他の実施形態では、薬物補充物上の標的(例えば核酸)および/または薬物送達デバイス上の標的認識部分(例えば核酸)は、20ヌクレオチドを含む。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、(T)20ともよばれる、TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号1)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。他の実施形態では、薬物補充物上の標的は、(A)20ともよばれる、AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号2)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。
一部の実施形態では、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、(T)20ともよばれる、TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号1)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。他の実施形態では、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、(A)20ともよばれる、AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号2)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。
一部の実施形態では、標的指向剤および/またはホーミング剤は、表1中のヌクレオチド配列の配列を有する核酸分子(例えばホスホロチオエート核酸分子)を含む。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含む。代替的に、薬物補充物上の標的は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含む。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、生体直交型官能基を含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、相補官能基を含み、生体直交型官能基は、相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる。生体直交型により、生細胞、組織または生物体内で天然の生物学的または生化学的プロセスに干渉することなく生じうる、官能基または化学反応が意味される。生体直交型官能基または反応は、細胞に対して毒性でない。例えば、生体直交型反応は、生物学的条件(例えば、生きている生物体内または生細胞内の生物学的pH、水性環境および温度)で機能しなければならない。例えば、生体直交型反応は、2つの官能基間の共有結合性ライゲーションが、生物からの官能基の1つまたは複数の代謝および/または除去の前に確実に起こるように迅速に起こらなければならない。他の例では、2つの官能基間に形成される共有結合は、生細胞内、生組織内および生きている生物体内での生物学的反応に対して不活性でなければならない。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的の標的認識部分への結合は、薬物送達デバイス内で生じる。例えば、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)が腫瘍部位内に置かれる場合、標的認識部分は、薬物送達デバイス全体にわたって存在し、薬物補充物は、拡散によって薬物送達デバイス内部に浸透し得る。他の実施形態では、薬物補充物上の標的は、薬物送達デバイスの表面上(例えば、デバイスの孔内および/またはデバイスの外部表面)の標的認識部分に結合する。
一部の実施形態では、薬物補充物を薬物デバイスに結合させる生体直交型反応はそれ自体可逆的であり、薬物を薬物補充物上の標的に結合させるために使用される結合の反転によって、薬物を送達させる。
本発明の標的および標的認識部分として使用される例示的な生体直交型官能基/相補官能基対としては、アジドとホスフィン、アジドとシクロオクチン、ニトロンとシクロオクチン、ニトリルオキシドとノルボルネン、オキサノルボルナジエンとアジド、トランス−シクロオクテンとs−テトラジン、クアドリシクランとビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、薬物送達デバイス上の相補官能基とクリックケミストリーによって反応することが可能である(例えば、以下に記載される反応型を使用する)。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルケン、例えば、シクロオクテン(例えば、トランスシクロオクテン(TCO))またはノルボルネン(NOR)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、テトラジン(Tz)を含む。他の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルキン(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチン)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、アジド(Az)を含む。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Tzを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、トランスシクロオクテン(TCO)またはノルボルネン(NOR)などのアルケンを含む。代替的に、または加えて、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Azを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチンを含む。TCOは、クリックケミストリー反応において、テトラジン(Tz)部分と特異的に反応する。DBCOは、クリックケミストリー反応において、アジド(Az)部分と特異的に反応する。ノルボルネンは、クリックケミストリー反応において、テトラジン(Tz)部分と特異的に反応する。本発明における使用のための例示的なクリックケミストリー反応は、以下に示される。例えば、銅(I)触媒アジド−アルキン付加環化(CuAAC)は、室温での銅(Cu)触媒の使用を含む。アジド−アルキン付加環化は、1,2,3−トリアゾールを得るための、アジドと末端または内部アルキンとの間の1,3−双極性付加環化である。
クリックケミストリーの別の例としては、アジドとトリアリールホスフィンの古典的シュタウディンガー反応に基づく反応である、シュタウディンガーライゲーションが挙げられる。これは、完全非生物的官能基との最初の反応としての生体直交型化学の分野を立ち上げた。アジドは、ホスフィンなどのソフト求核剤を好むソフト求電子剤として作用する。これは、典型的にハード求核剤である大部分の生物学的求核剤とは対照的である。反応は耐水性条件下で選択的に進行して安定した生成物を生成する。ホスフィンは、完全に生物系に非存在であり、弱い還元電位にもかかわらずジスルフィド結合を還元しない。アジドは、アジドチミジンなどのFDA承認薬においておよび架橋剤としての他の使用によって生体適合性であることが示されている。加えて、それらの小さいサイズが、細胞代謝経路による生体分子へのそれらの容易な取り込みを可能にする。
銅フリーのクリックケミストリーは、アジドアルキン付加環化の活性化異型としてCarolyn Bertozziによって最初に開発された生体直交型反応である。CuAACとは異なり、Cuフリーのクリックケミストリーは、反応を迅速におよび生細胞毒性なしに進行させるために細胞毒性銅触媒を除去することによって生体直交性になるように変更された。反応は、銅ではなく、歪みによって促進されるアルキン−アジド付加環化(SPAAC)である。これは、シュタウディンガーライゲーションのより速い代替案として開発されたものであり、第一世代は60倍超速く反応する。この反応の信じられないような生体直交性は、Cuフリーのクリック反応の培養細胞内、生きているゼブラフィッシュ、およびマウス体内での応用を可能にした。19.9kcal/molであると算定された環歪みによって反応性を増す最小安定性アルキン環としてシクロオクチンが選択された。
銅フリーのクリックケミストリーは、ニトロン双極子付加環化も含む。銅フリーのクリックケミストリーは、アジドではなくニトロンの1,3−双極子としての使用に適応され、ペプチドの修飾に使用されている。
ニトロンとシクロオクチンとの間のこの付加環化は、N−アルキル化イソオキサゾリンを形成する。反応速度は、水によって増進され、極めて速く、二次速度定数は、ニトロンの置換に依存して12〜32M−1・s−1の範囲である。反応は極めて速いが、代謝標識による生体分子へのニトロンの取り込みは、ペプチド翻訳後修飾によってしか達成されていない。
クリックケミストリーの別の例としては、ノルボルネン付加環化が挙げられる。1,3双極性付加環化は、ニトリルオキシドを1,3−双極子としておよびノルボルネンを求双極子剤として使用する生体直交型反応として開発された。これは、主に、自動オリゴヌクレオチド合成装置においてDNAおよびRNAを標識する際に使用されている。
ノルボルネンは、歪みによって促進される反応性と安定性のバランスのため、求双極子剤として選択された。この反応の欠点としては、強い求電子性および遅い反応動態に起因するニトリルオキシドの架橋反応性が挙げられる。
クリックケミストリーの別の例としては、オキサノルボルナジエン付加環化が挙げられる。オキサノルボルナジエン付加環化は、1,3−双極性付加環化、続いて、フラン分子を除去してトリアゾール連結コンジュゲートを生成させるためのレトロディールスアルダー反応である。この反応は、ペプチド標識実験に有用であり、SPECT造影化合物の生成にも使用されている。
オキサノルボルナジエンにおける環歪みおよび電子欠乏は、付加環化の律速段階に対する反応性を増加させる。その後、レトロディールスアルダー反応が迅速に起こって、安定した1,2,3トリアゾールを形成する。この反応の制限としては、オキサノルボルナジエンのエレクトロニクスを変化させることがある置換基に対する不良な耐性、および低速(おおよそ10−4の二次速度定数)が挙げられる。
クリックケミストリーの別の例としては、テトラジンライゲーションが挙げられる。テトラジンライゲーションは、逆電子要請型ディールスアルダー反応(inverse−demand Diels Alder reaction)でのトランス−シクロオクテンとs−テトラジンの反応、続いての、窒素ガスを除去するためのレトロディールスアルダー反応である。この反応は、極めて迅速であり、二次速度定数は(9:1のメタノール/水中で)2000M−1−s−1であり、それ故、極めて低い濃度で生体分子の修飾を可能にする。
非常に歪んだトランス−シクロオクテンが反応性ジエノフィルとして使用される。このジエンは、水と即時反応しないように置換されている3,6−ジアリール−s−テトラジンである。反応は、最初の付加環化を通って進み、逆ディールスアルダーがそれに続いて、N2を除去し、反応の可逆性を防止する。
反応が耐水性であるだけでなく、速度が水性媒体中で増加することも判明した。ジエノフィルとしてノルボルネンを使用して水性媒体中、おおよそ1M−1・s−1の二次速度でも反応を行った。この反応は、生細胞の標識およびポリマーカップリングに応用されている。
クリックケミストリーの別の例としては、[4+1]付加環化が挙げられる。このイソシアニドクリック反応は、[4+1]付加環化、それに続く、N2のレトロディールスアルダー除去である。
反応は、最初の[4+1]付加環化で進行し、その後、反転して、熱力学的シンクを除去し、可逆性を防止する。第三級アミンまたはイソシアノプロパノエートを使用した場合、この生成物は安定である。第二級または第一級イソシアニドを使用した場合、生成物はイミンを形成し、これはすぐに加水分解される。
イソシアニドは、その小さいサイズ、安定性、非毒性、および哺乳動物系における非存在のため、好適な化学的レポーターである。しかし、反応は遅く、二次速度定数は、おおよそ10−2M−1・s−1である。
クリックケミストリーの別の例としては、クアドリシクランライゲーションが挙げられる。クアドリシクランライゲーションは、π系で[2+2+2]付加環化されるように非常に歪んだクアドリシクランを用いる。
クアドリシクランは、非生物性であり、(完全飽和のため)生体分子と非反応性であり、比較的小さく、非常に歪んでいる(約80kcal/mol)。しかし、クアドリシクランは、室温で、および生理的pHの水性条件で、非常に安定している。クアドリシクランは、電子不足のπ系と選択的に反応できるが、単純アルケン、アルキンまたはシクロオクチンとはできない。
ビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)を、反応性に基づいて候補スクリーンの中から反応パートナーとして選択した。光によって誘導されるノルボルナジエンへの逆行を防止するために、ジエチルジチオカルバメートを添加して、生成物中のニッケルをキレート化する。
これらの反応は水性条件によって増進され、二次速度定数は0.25M−1・s−1である。それがオキシム形成と銅フリーのクリックケミストリーの両方に対して生体直交型であると証明されていることは、特に興味深い。
例示的なクリックケミストリー反応は、高い特異性、効率的な動態を有し、生理的条件下でインビボで生じる。例えば、Baskinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104巻(2007年):16793頁;Onetoら、Acta biomaterilia(2014年);Nevesら、Bioconjugate chemistry 24巻(2013年):934頁;Kooら、Angewandte Chemie 51巻(2012年):11836頁;およびRossinら、Angewandte Chemie 49巻(2010年):3375頁を参照されたい。広範なクリックケミストリー反応およびそれらの方法論の概説のために、例えば、Nwe KおよびBrechbiel MW,2009年 Cancer Biotherapy and Radiopharmaceuticals,24巻(3号):289−302頁;Kolb HCら、2001年 Angew.Chem.Int.Ed.40巻:2004−2021頁を参照されたい。前述の参照文献のそれぞれの内容全体は、本明細書中に参照によって組み込まれる。
例示的な生体直交型官能基/相補官能基対を下の表に示す。
当業者はいくつかの他の可能な生体直交型−相補官能基対を容易に特定できるため、このリストは、非包括的であり、非限定的である。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的分子(例えば、核酸分子、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、または本明細書中に記載される生体直交型官能基)の薬物補充物上のポリマー分子(例えばアルギネート鎖)に対する比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、120:1、140:1であるか、またはそれより高い。
一部の実施形態では、薬物送達デバイス上の標的認識部分(例えば、核酸分子、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、または本明細書中に記載される生体直交型官能基)の薬物送達デバイスのポリマー分子(例えばアルギネートヒドロゲル)に対する比は、少なくとも5:1、例えば、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1であるか、またはそれより大きい。一部の場合では、少なくとも10(例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、またはそれ超)の標的認識部分がポリマー(例えば、アルギネート)の各々の鎖に結合される。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的の、薬物送達デバイス上の標的認識部分に対する結合親和性(例えば、解離定数(KD)によって測定される)は、500μMまたはそれ未満である。他の実施形態では、薬物補充物上の標的の、薬物送達デバイス上の標的認識部分に対する結合親和性は、1mMまたはそれ未満(例えば、1mM、900μM、800μM、700μM、600μM、500μM、400μM、300μM、200μM、100μM、50μM、10μM、1μM、500nM、250nM、100nM、50nM、10nM、1nM、500pM、250pM、100pM、50pM、10pM、1pM、0.1pM、0.01pM、またはそれ未満)である。薬物補充物上の標的と薬物送達デバイス上の標的認識部分との間の相互作用のKDは、当技術分野における標準法を使用して測定される。
本発明の薬物送達システム(すなわち、薬物送達デバイスおよび薬物補充物)は、全身投与、例えば、経腸(例えば、経口、頬側、舌下もしくは直腸)投与または非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内、髄腔内(intrathecally)もしくは皮下)され得る。本発明の薬物送達システムの他の適切な投与方式としては、真皮下、腹腔内、眼内、鼻腔内、経真皮(例えば、皮膚パッチによる)、硬膜外、頭蓋内、経皮、膣内、子宮内(intrauterineal)、硝子体内もしくは経粘膜投与、または注射による、エアロゾルベースの送達による、もしくは移植による投与が挙げられる。
実施例において示すように、本明細書中に記載の薬物送達デバイスおよび薬物補充物に従って、経口投与された医薬組成物は、薬物送達デバイスの部位に選択的に標的化された。例えば、経口投与された薬物は、意図した部位(例えば、薬物送達デバイスの部位)に蓄積し、体内の他の場所には蓄積しなかった。したがって、この薬物送達デバイス/補充システムは、所望の位置(複数可)で濃縮させることが望まれる任意の経口利用可能な薬物の送達に適切である。例示的な経口利用可能な薬物としては、処方箋の不要なまたは処方箋抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制薬物、および本明細書中に記載される他の薬物/薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、本発明の1つの薬物送達デバイスは、被験体に投与される。例えば、薬物送達デバイスは、1または複数の種類の医薬組成物を含み、所望の位置に放出および/または送達する。1または複数の種類の医薬組成物を含む薬物補充物は、1つの薬物送達デバイスが1または複数の種類の医薬組成物で補充されるように、繰り返し投与される。薬物送達デバイスは、薬物送達デバイスを補充する必要なしに、血流を通じた薬物補充物の複数投与によって補充され得る。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達システムは、複数の薬物送達デバイス(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、またはそれよりも多くの薬物送達デバイス)を含む。本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の同じ所望の位置に置かれ得る。代替的に、本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の異なる所望の位置に置かれ得る。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達システムは、複数の薬物補充物(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、またはそれよりも多くの薬物補充物)を含む。一部の実施形態では、各薬物補充物は、医薬組成物および異なる標的を含み、各薬物送達デバイスは、異なる標的認識部分を含む。一部の実施形態では、各薬物補充物は、異なる医薬組成物および異なる標的を含む。したがって、各薬物補充物は、異なる薬物送達デバイスに結合し、それによって同じ疾患部位、または複数の疾患部位における各薬物送達デバイスの独立した補充を可能にする。他の実施形態では、各薬物補充物は、複数の標的を含み、各薬物送達デバイスは、複数の標的認識部分を含む。他の実施形態では、1つの薬物補充物内の複数の異なる薬物は、同じ薬物送達デバイスに、送達される。実施例の項において実証されるように、クリックケミストリー媒介性の標的指向化は、虚血の動物モデル内の所望の位置に対する高度な特異性を示した。例えば、被験体は、抗がん医薬組成物の送達のために、1つの薬物送達デバイスを腫瘍内投与され、別個の薬物送達デバイスを、抗炎症剤の送達のために体内のいずれかの炎症の部位に投与される。両方の薬物送達デバイスは、補充物の混合物の単回投与で補充することができる、例えば、1つの薬物補充物は、抗がん薬物および抗がん薬物送達デバイス上の標的認識部分に対して特異的な標的分子を含み、他の薬物補充物は、抗炎症薬物および抗炎症薬物送達デバイス上の標的認識部分に対して特異的な標的分子を含む。薬物の送達は、少なくとも1ヶ月間の期間にわたる9回の投与にわたって、成功裡に反復される。
さらに、本明細書中に記載される本発明の薬物送達システムは、2つの別個の直交型化学システム(orthogonal chemistry system)の使用によって2つの異なる分子の分離を可能にした。同じ動物における2つの異なる部位を標的化する2つの異なる分子の空間的分離(resolution)は、患者において相容れない治療を併用することにおける本明細書中に記載される薬物送達システムの有用性を実証する。一部の実施形態では、標的認識部分(例えばTz)を含むポリマーを含む薬物送達デバイスは体内の1つの部位に投与される。異なる標的認識部分(例えばAz)を含むポリマーを含む薬物送達デバイスは、同じ体内の別個の部位に投与される。第一の標的認識部分(例えば、Tzを認識するTCO)を特異的に認識する標的を含む薬物補充物および第二の標的認識部分(例えば、Azを認識するDBCO)を特異的に認識する標的を含む薬物補充物の投与は、各薬物補充物がそのそれぞれの薬物送達デバイスにホーミングされることをもたらす。異なる補充物の投与は、同時に、または連続して起こり得る。補充物の投与は、複数回にわたって繰り返すことができる。一部の実施形態では、薬物補充物は、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも250回、少なくとも300回、少なくとも350回、少なくとも400回、少なくとも450回、少なくとも500回、少なくとも600回、少なくとも700回、少なくとも800回、少なくとも900回、、または少なくとも1000回にわたって繰り返し投与される。
薬物を体内の特異的部位に繰り返し標的とすることができることは、薬物送達デバイス(例えばヒドロゲル)などの体内の移植が、血液中を循環する小分子によって選択的に標的化できることを示す。(実施例に記載されるような)薬物送達デバイスの効率的かつ反復される標的指向化または補充は、血管内ステント留置、腫瘍内化学療法剤送達デバイスまたは外科的インプラントの部位などの、体内の部位で長期にわたる局所薬物送達を可能にする。本発明の薬物送達システムは、毒性の低下、疾患部位での投薬および薬物利用能の向上を可能にする。注射された薬物送達デバイスによって規定される部位への薬物分子の効率的ホーミングは、薬物の制御されたまたはオンデマンド放出も可能にする。
III.キット
本発明は、薬物送達デバイスおよび薬物補充物を含む薬物送達のためのキットであって、薬物送達デバイスは、担体および標的(atarget)認識部分を含み、被験体内の所望の位置における移植に適切であり、薬物補充物は、医薬組成物および標的を含み、医薬組成物は、直接または切断可能なリンカーを介して標的に結合され、医薬組成物は、所望でない毒性を有し、薬物補充物が医薬組成物の毒性をマスクし、標的および標的認識部分が二成分結合対を形成し、薬物補充物は、薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合するまで可動性であり、標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、医薬組成物は、薬物送達デバイスへの送達後に暴露される、キットを提供する。
本発明のキットは、標的認識部分を含む薬物送達デバイスを含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、担体、例えば、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルまたは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料を含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、およびポリ乳酸−coグリコール酸からなる群から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスのポリマーは、ヒドロゲル(例えばアルギネートヒドロゲル)の形態である。
本発明のキットにおける薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置に移植または注射することができる。一部の実施形態では、所望の位置は、被験体内の組織、または組織から離れた部位である。他の実施形態では、所望の位置は、被験体内の器官、または器官から離れた部位である。一部の実施形態では、所望の位置は、移植片、人工装具、または体内もしくは体の表面に導入することができる任意の組織もしくはデバイスである。
一部の実施形態では、本発明のキットにおける薬物送達デバイスは、医薬組成物をさらに含む。他の実施形態では、薬物送達デバイスは、医薬組成物なしで被験体内の所望の位置に移植または注射される。
本発明のキットは、二元機能性薬物補充物も含む。本発明のキットにおける薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、送達される医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。
本発明のキットにおける薬物補充物は、医薬組成物および標的を含み、医薬組成物は、標的に直接または切断可能なリンカーを介して結合され、医薬組成物は、所望でない毒性を有し、薬物補充物がこの医薬組成物の毒性をマスクし、標的は、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合することができ、薬物補充物は、薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分と結合するまで可動性である。標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、医薬組成物は、薬物送達デバイスへの送達後に暴露される。
本発明のキットにおける薬物補充物および/または薬物送達デバイスは、医薬組成物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、小分子または(o)生物製剤を含む。生物製剤は、生物学的供給源から製造、抽出、または半合成された医薬産物であり、化学的に合成された医薬品とは異なる。一部の実施形態では、本発明において使用される生物製剤としては、抗体、ワクチン、血液または血液成分、アレルギー性物質、体細胞、遺伝子治療、組織、組換え治療用タンパク質および細胞治療において使用される生細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。生物製剤は、糖類、タンパク質もしくは核酸、またはこれらの物質の複合的な組み合わせ物から構成され得るか、あるいは生細胞または組織であり得、これらは、ヒト、動物または微生物などの天然供給源から単離され得る。
一部の実施形態では、医薬組成物は、例えば、共有結合、非共有結合またはイオン結合を介して、標的に直接結合される。他の実施形態では、医薬組成物は、切断可能なリンカーを介して標的に結合される。切断可能なリンカーの例としては、加水分解可能なリンカー、pH切断性リンカー、酵素分解可能なリンカー、または本明細書中に記載される任意の切断可能なリンカーが挙げられる。
一部の実施形態では、本発明のキットにおける使用のための医薬組成物は、毒性であり得、本発明の薬物補充物が、被験体に投与されたときの医薬組成物の毒性をマスクする。一部の実施形態では、本発明のキットにおける薬物補充物は、医薬組成物が細胞膜を通過することを防止することによって、医薬組成物の毒性をマスクし得る。他の実施形態では、薬物補充物は、医薬組成物がこの医薬組成物の生物学的標的に結合することを防止することによって医薬組成物の毒性をマスクし得る。一部の実施形態では、医薬組成物の毒性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、薬物補充物によってマスクされる。本発明のキットにおける薬物送達システムは、二元機能性薬物補充物の開発を通じて、疾患部位のより効率的な標的指向化を可能にし、同時に送達される薬物の潜在的な毒性を最小化する。本発明のキットにおける薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、送達される医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。
本発明のキットにおける医薬組成物は、薬物送達デバイスに送達されたときにのみ暴露される。医薬組成物は、医薬組成物を薬物補充物内の標的から分離することによって暴露される。薬物補充物内の標的は、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって、医薬組成物から分離され得る。一部の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、この結合の酵素分解によって切断される。他の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、この結合の加水分解によって切断される。さらに別の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、この結合の還元によって切断される。
一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。
本発明のキットにおける医薬組成物の薬物送達デバイスからの放出は、制御された様式で達成され得る。通常数分以内に医薬組成物の送達を媒介する、既存の薬物送達システムとは異なり、本発明の薬物送達システムは、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間の時間規模にわたるより持続された医薬組成物の放出を提供する。
一部の実施形態では、本発明のキットにおける使用のための医薬組成物は、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって放出される。他の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の酵素分解、加水分解または還元によって切断される。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬物補充物から被験体内の所望の位置へと放出されない。一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。一部の実施形態では、医薬組成物の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%が、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出される。
本発明のキットにおける薬物送達デバイスと薬物補充物との間の特異的な認識は、標的と標的認識部分との間の相互作用によって容易にされる。一部の実施形態では、標的および/または標的認識部分は、核酸、ペプチド、多糖、脂質、小分子、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含む。代替的に、薬物補充物上の標的は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含む。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、生体直交型官能基を含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、相補官能基を含み、生体直交型官能基は、相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる。本発明の標的および標的認識部分として使用される例示的な生体直交型官能基/相補官能基対としては、アジドとホスフィン、アジドとシクロオクチン、ニトロンとシクロオクチン、ニトリルオキシドとノルボルネン、オキサノルボルナジエンとアジド、トランス−シクロオクテンとs−テトラジン、クアドリシクランとビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、薬物送達デバイス上の相補官能基とクリックケミストリーによって反応することができる。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルケン、例えば、シクロオクテン(例えば、トランスシクロオクテン(TCO))またはノルボルネン(NOR)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、テトラジン(Tz)を含む。他の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルキン(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチン)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、アジド(Az)を含む。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Tzを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、トランスシクロオクテン(TCO)またはノルボルネン(NOR)などのアルケンを含む。代替的に、または加えて、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Azを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチンを含む。
本発明のキットにおける薬物送達システム(すなわち、薬物送達デバイスおよび薬物補充物)は、全身投与、例えば、経腸(例えば、経口、頬側、舌下もしくは直腸)投与または非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内、髄腔内もしくは皮下)され得る。本発明の薬物送達システムの他の適切な投与方式としては、真皮下、腹腔内、眼内、鼻腔内、経真皮(例えば、皮膚パッチによる)、硬膜外、頭蓋内、経皮、膣内、子宮内、硝子体内もしくは経粘膜投与、または注射による、エアロゾルベースの送達による、もしくは移植による投与が挙げられる。
一部の実施形態では、本発明のキットは、1つの薬物送達デバイスを含む。一部の実施形態では、本発明のキットは、複数の薬物送達デバイス(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、またはそれよりも多くの薬物送達デバイス)を含む。本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の同じ所望の位置に置かれ得る。代替的に、本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の異なる所望の位置に置かれ得る。
一部の実施形態では、本発明のキットは、複数の薬物補充物(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、またはそれよりも多くの薬物補充物)を含む。一部の実施形態では、各薬物補充物は、医薬組成物および異なる標的を含み、各薬物送達デバイスは、異なる標的認識部分を含む。一部の実施形態では、各薬物補充物は、異なる医薬組成物および異なる標的を含む。したがって、各薬物補充物は、異なる薬物送達デバイスに結合し、それによって同じ疾患部位、または複数の疾患部位における各薬物送達デバイスの独立した補充を可能にする。他の実施形態では、各薬物補充物は、複数の標的を含み、各送達デバイスは、複数の標的認識部分を含む。他の実施形態では、1つの薬物補充物内の複数の異なる薬物は、同じ薬物送達デバイスに送達される。
さらに、本発明のキットは、2つの別個の直交型化学システムの使用によって2つの異なる分子の分離を可能にする。同じ動物における2つの異なる部位を標的指向化する2つの異なる分子の空間的分離は、患者において相容れない治療を併用することにおける本明細書中に記載される薬物送達システムの有用性を実証する。補充物の投与は、複数回にわたって繰り返すことができる。一部の実施形態では、薬物補充物は、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも250回、少なくとも300回、少なくとも350回、少なくとも400回、少なくとも450回、少なくとも500回、少なくとも600回、少なくとも700回、少なくとも800回、少なくとも900回、または少なくとも1000回にわたって繰り返し投与される。
IV.薬物送達デバイスを補充する方法
本発明の1つの態様は、インビボで薬物送達デバイスを補充する方法を特徴とし、この方法は、
i)本明細書に記載される薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、薬物送達デバイスは、標的認識部分を含み、薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置における移植に適切である、ステップと、
ii)その後、医薬組成物および標的を含む薬物補充物を被験体に投与するステップであって、この標的および標的認識部分は、二成分結合対を形成し、薬物補充物は、薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合するまで可動性であり、標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、それによって薬物送達デバイスを補充するステップ
とを含む。
一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、標的認識部分を含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、担体、例えば、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルまたは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料をさらに含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、およびポリ乳酸−coグリコール酸からなる群から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスのポリマーは、ヒドロゲル(例えばアルギネートヒドロゲル)の形態である。
本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置に移植または注射され得る。一部の実施形態では、所望の位置は、被験体内の組織または組織から離れた部位である。他の実施形態では、所望の位置は、被験体内の器官または器官から離れた部位である。一部の実施形態では、所望の位置は、移植片、人工装具、または体内もしくは体の表面に導入することができる任意の組織もしくはデバイスである。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達デバイスは、医薬組成物をさらに含む。他の実施形態では、薬物送達デバイスは、医薬組成物なしで被験体内の所望の位置に移植または注射される。
本発明の方法は、二元機能性薬物補充物も含む。薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、送達される医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。
本発明の方法における薬物補充物は、医薬組成物および標的を含み、医薬組成物は、直接または切断可能なリンカーを介して標的に結合され、この医薬組成物は、所望でない毒性を有し、薬物補充物が医薬組成物の毒性をマスクし、標的は、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合することができ、薬物補充物は、その薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分と結合するまで可動性である。標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、医薬組成物は、薬物送達デバイスへの送達後に暴露される。
本発明の方法における薬物補充物および/または薬物送達デバイスは、医薬組成物を含む。
一部の実施形態では、医薬組成物は、小分子または生物製剤を含む。生物製剤は、生物学的供給源から製造、抽出、または半合成された医薬産物であり、化学的に合成された医薬品とは異なる。一部の実施形態では、本発明において使用される生物製剤としては、抗体、ワクチン、血液または血液成分、アレルギー性物質、体細胞、遺伝子治療、組織、組換え治療用タンパク質および細胞治療において使用される生細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。生物製剤は、糖類、タンパク質もしくは核酸、またはこれらの物質の複合的な組み合わせ物から構成され得るか、あるいは生細胞または組織であり得、これらは、ヒト、動物または微生物などの天然供給源から単離され得る。
一部の実施形態では、医薬組成物は、例えば、共有結合、非共有結合またはイオン結合を介して、標的に直接結合される。他の実施形態では、医薬組成物は、切断可能なリンカーを介して標的に結合される。切断可能なリンカーの例としては、加水分解可能なリンカー、pH切断性リンカー、酵素分解可能なリンカー、または本明細書中に記載される任意の切断可能なリンカーが挙げられる。
一部の実施形態では、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、毒性であり得、本発明の薬物補充物が、被験体に投与されたときの医薬組成物の毒性をマスクする。一部の実施形態では、本発明の方法における薬物補充物は、医薬組成物が細胞膜を通過することを防止することによって、医薬組成物の毒性をマスクし得る。他の実施形態では、薬物補充物は、医薬組成物がこの医薬組成物の生物学的標的に結合することを防止することによって医薬組成物の毒性をマスクし得る。一部の実施形態では、医薬組成物の毒性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%が、薬物補充物によってマスクされる。したがって、本発明の方法における薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、送達される医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。
本発明の方法における医薬組成物は、薬物送達デバイスに送達されたときにのみ暴露される。医薬組成物は、医薬組成物を薬物補充物内の標的から分離することによって暴露される。薬物補充物内の標的は、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって、医薬組成物から分離され得る。一部の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、この結合の酵素分解によって切断される。他の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、この結合の加水分解によって切断される。さらに別の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、この結合の還元によって切断される。
一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。
本発明の方法における医薬組成物の薬物送達デバイスからの放出は、制御された様式で達成され得る。通常数分以内に医薬組成物の送達を媒介する、既存の薬物送達システムとは異なり、本発明の薬物送達システムは、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間の時間規模にわたるより持続された医薬組成物の放出を提供する。
一部の実施形態では、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって放出される。他の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の酵素分解、加水分解または還元によって切断される。一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬物補充物から被験体内の所望の位置へと放出されない。一部の実施形態では、医薬組成物の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%が、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出される。
本発明の方法における薬物送達デバイスと薬物補充物との間の特異的な認識は、標的と標的認識部分との間の相互作用によって容易にされる。一部の実施形態では、標的および/または標的認識部分は、核酸、ペプチド、多糖、脂質、小分子、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含む。代替的に、薬物補充物上の標的は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含む。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、生体直交型官能基を含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、相補官能基を含み、生体直交型官能基は、相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる。本発明の標的および標的認識部分として使用される例示的な生体直交型官能基/相補官能基対としては、アジドとホスフィン、アジドとシクロオクチン、ニトロンとシクロオクチン、ニトリルオキシドとノルボルネン、オキサノルボルナジエンとアジド、トランス−シクロオクテンとs−テトラジン、クアドリシクランとビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、薬物送達デバイス上の相補官能基とクリックケミストリーによって反応することができる。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルケン、例えば、シクロオクテン(例えば、トランスシクロオクテン(TCO))またはノルボルネン(NOR)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、テトラジン(Tz)を含む。他の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルキン(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチン)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、アジド(Az)を含む。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Tzを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、トランスシクロオクテン(TCO)またはノルボルネン(NOR)などのアルケンを含む。代替的に、または加えて、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Azを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチンを含む。
本発明の方法における薬物送達デバイスおよび薬物補充物は、全身投与、例えば、経腸(例えば、経口、頬側、舌下もしくは直腸)投与または非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内、髄腔内もしくは皮下)され得る。本発明の薬物送達システムの他の適切な投与方式としては、真皮下、腹腔内、眼内、鼻腔内、経真皮(例えば、皮膚パッチによる)、硬膜外、頭蓋内、経皮、膣内、子宮内、硝子体内もしくは経粘膜投与、または注射による、エアロゾルベースの送達による、もしくは移植による投与が挙げられる。
V.処置の方法
本発明の補充可能な薬物送達システムは、がんを含む多様な疾患の処置に有用である。本明細書中で提示される実施例において示されるとおり、ドキソルビシンが、薬物補充物の薬物送達デバイスとのDNA媒介性の結合によって、腫瘍を有するマウスに送達された場合、薬物送達デバイスの薬物補充を繰り返し、腫瘍成長の有意な阻害をもたらした。生体直交型クリックケミストリーは、循環する小分子を薬物送達デバイス(例えば、罹病組織の筋肉内に滞留しているヒドロゲル)に標的指向化するのに効率的であることも実証された。小分子は、少なくとも1ヶ月間の期間にわたって罹患領域に繰り返し標的化された。2つの生体直交型反応が、マウス疾患モデルにおける2つの別個の位置に対する混合物として注射された2つの小分子を分離するために使用された。腫瘍の直接処置に加えて、本発明の薬物送達システムは、創傷治癒、炎症、炎症性疾患などの他の疾患の処置に適切であり、眼薬物送達または血管薬物送達デバイスへの薬物の送達に適切である。
したがって、一態様において、本発明は、腫瘍のサイズを維持または低下させることを必要とする被験体における腫瘍のサイズを維持または低下させる方法であって、この方法は、
i)本明細書中に記載される薬物送達デバイスを、被験体内の所望の位置に投与するステップであって、医薬組成物が抗がん薬物を含む、ステップと、
ii)その後、本明細書中に記載される薬物補充物を被験体に投与するステップと、
iii)薬物補充物上の標的を、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合させ、それによって医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達するステップと、
iv)医薬組成物を薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置に放出させるステップと、
v)任意選択で、ステップii)〜iv)を反復するステップ
とを含み、それによって被験体における腫瘍のサイズを維持または低下させる、方法を提供する。
別の態様では、本発明は、がんの進行を低減することを必要とする被験体においてがんの進行を低減する方法であって、
i)本明細書中に記載される薬物送達デバイスを被験体内の所望の位置に投与するステップであって、医薬組成物が抗がん薬物を含む、ステップと、
ii)その後、本明細書中に記載される薬物補充物を被験体に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)薬物補充物上の標的を、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合させ、それによって医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達するステップと、
iv)医薬組成物を、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出させるステップと、
v)任意選択で、ステップii)〜iv)を反復するステップ
とを含み、それによって被験体におけるがんの進行を低減させる方法を提供する。
本発明は、腫瘍の再発を予防することを必要とする被験体における腫瘍の再発を予防する方法であって、
i)本明細書中に記載される薬物送達デバイスを被験体内の所望の位置に投与するステップであって、医薬組成物が抗がん薬物を含む、ステップと、
ii)その後、本明細書中に記載される薬物補充物を被験体に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)薬物補充物上の標的を薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合させ、それによって医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達するステップと、
iv)医薬組成物を、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出させるステップと、
v)任意選択で、ステップii)〜iv)を反復するステップ
とを含み、それによって被験体における腫瘍の再発を予防する方法も特徴とする。
一部の実施形態では、被験体は、固形がんまたは血液学的がんを含むがんに罹患している。一部の実施形態では、所望の位置は、被験体内の腫瘍部位または腫瘍部位から離れた部位である。他の実施形態では、薬物補充物は、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または移植によって投与される。一部の実施形態では、抗がん薬物は、ドキソルビシンを含む。
本発明の一態様は、被験体において創傷治癒を促進する方法であって、
i)本明細書中に記載される薬物送達デバイスを被験体内の所望の位置に投与するステップであって、医薬組成物が血管新生および/または既存の血管の成熟もしくはリモデリングを促進する、ステップと、
ii)その後、本明細書中に記載される薬物補充物を被験体に投与するステップと、
iii)薬物補充物上の標的を、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合させ、それによって医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達するステップと、
iv)医薬組成物を、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出させるステップと、
v)任意選択で、ステップii)−iv)を反復するステップ
とを含み、それによって被験体における創傷治癒を促進する方法を提供する。
本発明の別の態様は、炎症を低減または制御することを必要とする被験体において炎症を低減または制御する方法であって、
i)本明細書中に記載される薬物送達デバイスを被験体内の所望の位置に投与するステップであって、医薬組成物が抗炎症剤を含む、ステップと、
ii)その後、本明細書中に記載される薬物補充物を被験体に投与するステップと、
iii)薬物補充物上の標的を、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合させ、それによって医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達するステップと、
iv)医薬組成物を、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出させるステップと、
v)任意選択で、ステップii)−iv)を反復するステップ
とを含み、それによって被験体における炎症を低減または制御する方法を提供する。
本発明は、眼疾患を処置することを必要とする被験体において眼疾患を処置する方法であって、
i)本明細書中に記載される薬物送達デバイスを被験体内の所望の位置に投与するステップであって、医薬組成物が前記眼疾患を処置する、ステップと、
ii)その後、本明細書中に記載される薬物補充物を被験体に投与するステップと、
iii)薬物補充物上の標的を、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合させ、それによって医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達するステップと、
iv)医薬組成物を、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出させるステップと、
v)任意選択で、ステップii)−iv)を反復するステップ
とを含み、それによって被験体における眼疾患を処置する方法も特徴とする。
本発明は、不整脈を処置することを必要とする被験体において不整脈を処置する方法であって、
i)本明細書中に記載される薬物送達デバイスを被験体内の所望の位置に投与するステップであって、医薬組成物が前記不整脈を処置する、ステップと、
ii)その後、本明細書中に記載される薬物補充物を被験体に投与するステップと、
iii)薬物補充物上の標的を、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合させ、それによって医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達するステップと、
iv)医薬組成物を、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出させるステップと、
v)任意選択で、ステップii−iv)を反復するステップ
とを含み、それによって被験体における不整脈を処置する方法も特徴とする。
一部の実施形態では、所望の位置は、被験体の心臓である。一部の実施形態では、薬物補充物は、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または移植によって投与される。
本発明は、患者の服薬順守度を評価する方法であって、この方法は、薬物送達デバイスを投与することを必要とする被験体に薬物送達デバイスを投与するステップであって、薬物送達デバイスは、標的認識部分を含み、被験体内の所望の位置における移植に適切であるステップと、その後、医薬組成物および標的を含む薬物補充物を被験体に投与するステップであって、標的は、薬物補充物に連結された検出可能な標識を含み、標的と標識認識部分とは二成分結合対を形成し、薬物補充物は薬物送達デバイスまで移動し、薬物送達デバイスに結合するステップと、前記薬物送達デバイス上の前記標識を検出するステップと、前記薬物送達デバイス上の前記標識のレベルを、前記薬物補充物の投与前の前記薬物送達デバイス上の前記標識のレベルと比較するステップとを含み、それによって患者の服薬順守度を評価する方法をさらに特徴とする。
一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、標的認識部分を含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、担体、例えば、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルまたは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料をさらに含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスは、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、およびポリ乳酸−coグリコール酸からなる群から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、薬物送達デバイスのポリマーは、ヒドロゲル(例えば、アルギネートヒドロゲル)の形態である。
本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の所望の位置に移植または注射することができる。一部の実施形態では、所望の位置は、被験体内の組織、または組織から離れた部位である。他の実施形態では、所望の位置は、被験体内の器官、または器官から離れた部位である。一部の実施形態では、所望の位置は、移植片、人工装具、または体内もしくは体の表面に導入することができる任意の組織もしくはデバイスである。
一部の実施形態では、本発明の薬物送達デバイスは、医薬組成物をさらに含む。他の実施形態では、薬物送達デバイスは、医薬組成物なしで被験体内の所望の位置に移植または注射される。
本発明の方法は、二元機能性薬物補充物も含む。薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、送達される医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。
本発明の方法における薬物補充物は、医薬組成物および標的を含み、医薬組成物は、直接または切断可能なリンカーを介して標的に結合され、この医薬組成物は、所望でない毒性を有し、薬物補充物が医薬組成物の毒性をマスクし、標的は、薬物送達デバイス上の標的認識部分に結合することができ、薬物補充物は、薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分と結合するまで可動性である。標的が標的認識部分に結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達し、医薬組成物は、薬物送達デバイスへの送達後に暴露される。
本発明の方法における薬物補充物および/または薬物送達デバイスは、医薬組成物を含む。
一部の実施形態では、医薬組成物は、小分子または生物製剤を含む。生物製剤は、生物学的供給源から製造、抽出、または半合成された医薬産物であり、化学的に合成された医薬品とは異なる。一部の実施形態では、本発明において使用される生物製剤としては、抗体、ワクチン、血液または血液成分、アレルギー性物質、体細胞、遺伝子治療、組織、組換え治療用タンパク質および細胞治療において使用される生細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。生物製剤は、糖類、タンパク質もしくは核酸、またはこれらの物質の複合的な組み合わせ物から構成され得るか、あるいは生細胞または組織であり得、これらは、ヒト、動物または微生物などの天然供給源から単離され得る。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、抗がん薬物、創傷治癒を促進する薬物、感染症を処置または予防する薬物、または血管形成を促進する薬物を含む。例えば、医薬組成物は、抗がん薬物を含む。例えば、抗がん薬物は、化学療法剤(例えばがんワクチン)を含む。
一部の実施形態では、抗がん薬物は、小分子、ペプチドもしくはポリペプチド、タンパク質もしくはその断片(例えば、抗体もしくはその断片)、または核酸を含む。
本発明における使用のための例示的な抗がん薬物としては、アビラテロン酢酸エステル、アビトレキサート(メトトレキサート)、アブラキサン(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE−PC、AC、AC−T、アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、Ado−トラスツズマブエムタンシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)、アドルシル(フルオロウラシル)、アファチニブ二マレイン酸塩、アフィニトール(エベロリムス)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、アレディア(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、三酸化ヒ素、アーゼラ(オファツムマブ)、Erwinia chrysanthemi由来アスパラギナーゼ、アバスチン(ベバシズマブ)、アキシチニブ、アザシチジン、BEACOPP、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベキサール(トシツモマブおよびI131ヨウ素トシツモマブ)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボシュリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、ブスルフェクス(ブスルファン)、カバジタキセル、カボザンチニブS−リンゴ酸塩、CAF、キャンパス(アレムツズマブ)、カンプトサール(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、カルボプラチン、カルボプラチン・タキソール、カルフィルゾミブ、カソデックス(ビカルタミド)、CeeNU(ロムスチン)、セルビジン(ダウノルビシン塩酸塩)、サーバリックス(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、クロラムブシル、クロラムブシル・プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラフェン(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(クロファラビン)、クロラール(クロファラビン)、CMF、コメトリク(カボザンチニブS−リンゴ酸塩)、COPP、COPP−ABV、コスメゲン(ダクチノマイシン)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、サイフォス(イホスファミド)、シタラビン、シタラビン(リポソーム)、シトサール−U(シタラビン)、シトキサン(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンディフティトックス、デノスマブ、DepoCyt(リポソームシタラビン)、DepoFoam(リポソームシタラビン)、デクスラゾキサン塩酸塩、ドセタキセル、ドキシル(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox−SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC−Dome(ダカルバジン)、エフデックス(フルオロウラシル)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(エピルビシン塩酸塩)、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、イメンド(アプレピタント)、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、アービタックス(セツキシマブ)、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(Erwinia chrysanthemi由来アスパラギナーゼ)、エトポフォス(エトポシドホスフェート)、エトポシド、エトポシドホスフェート、エバセト(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)、エキセメスタン、フェアストン(トレミフェン)、フェソロデックス(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、フルダラ(フルダラビンリン酸エステル)、フルダラビンホスフェート、フルオロプレックス(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、フォレックス(メトトレキサート)、フォレックスPFS(メトトレキサート)、フォルフィリ、フォルフィリ・ベバシズマブ、フォルフィリ・セツキシマブ、フォルフィリノックス、フォルフォクス、フォロチン(プララトレキサート)、FU−LV、フルベストラント、ガーダシル(組換えHPV四価ワクチン)、ガジバ(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン・シスプラチン、ゲムシタビン・オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ジェムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジロトリフ(アファチニブ二マレイン酸塩)、グリベック(メシル酸イマチニブ)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、HPV二価ワクチン(組換え体)、HPV四価ワクチン(組換え体)、ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)、ハイパーCVAD、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イフェックス(イホスファミド)、イホスファミド、イホスファミダム(イホスファミド)、メシル酸イマチニブ、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミキモド、インライタ(アキシチニブ)、イントロンA(組換えインターフェロンアルファ−2b)、ヨウ素131トシツモマブおよびトシツモマブ、イピリムマブ、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イストダックス(ロミデプシン)、イクサベピロン、イグゼンプラ(イクサベピロン)、ジャカフィ(ルキソリチニブリン酸塩)、ジェブタナ(カバジタキセル)、カドサイラ(Ado−トラスツズマブエムタンシン)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(パリフェルミン)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ラパチニブ二トシル酸塩、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、ロイプロリド酢酸塩、レブラン(アミノレブリン酸)、リンホリジン(クロラムブシル)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、リポソームシタラビン、ロムスチン、リュープロン(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー−Ped(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー・3カ月製剤(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー・4カ月製剤(ロイプロリド酢酸塩)、マルキボ(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マチュレーン(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲース(メゲストロール酢酸エステル)、メゲストロールアセテート、メキニスト(トラメチニブ)、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(メスナ)、メタゾラストン(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メキサート(メトトレキサート)、メキサート−AQ(メトトレキサート)、マイトマイシンC、ミトザイトレックス(マイトマイシンC)、MOPP、モゾビル(プレリキサフォル)、マスタージェン(メクロレタミン塩酸塩)、ムタマイシン(マイトマイシンC)、ミレラン(ブスルファン)、マイロサール(アザシチジン)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(ビノレルビン酒石酸塩)、ネララビン、ネオサール(シクロホスファミド)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシル酸塩)、ニロチニブ、ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)、エヌプレート(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマセタキシンメペサクシネート、オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)、オンタック(デニロイキンディフティトックス)、OEPA、OPPA、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、ペグアスパルガーゼ、ペグインターフェロンアルファ−2b、PEG−イントロン(ペグインターフェロンアルファ−2b)、ペメトレキセド二ナトリウム、パージェタ(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール−AQ(シスプラチン)、プレリキサフォル、ポマリドミド、ポマリスト(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロリア(デノスマブ)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、プロベンジ(シプロイセルT)、プリネトール(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、R−CHOP、R−CVP、組換えHPV二価ワクチン、組換えHPV四価ワクチン、組換えインターフェロンアルファ−2b、レゴラフェニブ、レブラミド(レナリドミド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リツキサン(リツキシマブ)、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルキソリチニブリン酸塩、スクレロゾール胸膜内用エアロゾル(タルク)、シプロイセル−T、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(ダサチニブ)、スタンフォードV、滅菌タルク末(タルク)、ステリタルク(タルク)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、スニチニブリンゴ酸塩、スーテント(スニチニブリンゴ酸塩)、シラトロン(ペグインターフェロンアルファ−2b)、シノビル(サリドマイド)、シンリボ(オマセタキシンメペサクシネート)、タフィンラー(ダブラフェニブ)、タルク、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(シタラビン)、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、トポサール(エトポシド)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トーリセル(テムシロリムス)、トシツモマブおよびI131ヨウ素トシツモマブ、トテクト(デクスラゾキサン塩酸塩)、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トリセノックス(三酸化ヒ素)、タイケルブ(ラパチニブトシル酸塩)、バンデタニブ、VAMP、ベクティビックス(パニツムマブ)、VeIP、ベルバン(ビンブラスチン硫酸塩)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベルサール(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベペシド(エトポシド)、ビアデュール(ロイプロリド酢酸塩)、ビダーザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカサールPFS(ビンクリスチン硫酸塩)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビノレルビン酒石酸塩、ビスモデギブ、ボラクサーゼ(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ウェルコボリン(ロイコボリンカルシウム)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、Xelox、エクスジバ(デノスマブ)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、ヤーボイ(イピリムマブ)、ザルトラップ(Ziv−アフリベルセプト)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、ザインカード(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv−アフリベルセプト、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、およびザイティガ(アビラテロン酢酸エステル)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、抗がん薬物は、ドキソルビシンを含む。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、創傷治癒または血管形成を促進する薬物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、(例えば、末梢動脈疾患(PAD)に起因する)虚血、または心筋梗塞に起因して損傷を受けた心筋組織を低減する薬物を含む。例えば、薬物は、タンパク質またはその断片、例えば、成長因子または脈管形成因子、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、例えばVEGFA、VEGFB、VEGFCもしくはVEGFD、および/またはIGF、例えばIGF−1、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンジオポエチン(ANG)(例えば、Ang1もしくはAng2)、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、デルタ様リガンド4(DLL4)、またはこれらの組合せを含む。当業者は、創傷治癒または血管形成を促進する他の薬物を容易に特定することができるため、創傷治癒または血管形成を促進するこれらの薬物は非限定的である。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、抗増殖薬(例えば、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アザチオプリン、シロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、バイオリムスA9、ノボリムス、ミオリムス、ゾタロリムス、エベロリムスまたはトラニラスト)を含む。当業者は他の抗増殖薬を容易に特定することができるため、これらの抗増殖薬は非限定的である。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、抗炎症剤、例えば、コルチコステロイド抗炎症剤(例えば、ベクロメタゾン(beclomethasone)、ベクロメタゾン(beclometasone)、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンもしくはプレドニゾン);または非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)(例えば、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、トリサリチル酸コリンマグネシウム、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン(fluribiprofen)、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ニメスリド、リコフェロン、H−ハルペイド(H−harpaide)もしくはクロニキシン酸リシン)を含む。当業者は他の抗炎症剤を容易に特定することができるため、これらの抗炎症剤は非限定的である。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、移植片拒絶反応(transplant rejection)を予防または低減する薬物(例えば免疫抑制剤)を含む。例示的な免疫抑制剤としては、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス(FK506))、哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害剤(例えば、シロリムスとしても公知のラパマイシン)、抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム)、抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ムロモナブ)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)が挙げられる。当業者は、移植片拒絶反応を予防または低減する他の薬物を容易に特定することができるため、これらの移植片拒絶反応を予防または低減する薬物は非限定的である。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、抗血栓薬物(例えば、抗血小板薬物、抗凝固薬物、または血栓溶解薬物)を含む。
例示的な抗血小板薬物としては、不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、アスピリンまたはトリフルサル)、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤(例えばチクロピジン、クロピドグレル、プラスグレルもしくはトリカグレロール(tricagrelor))、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シロスタゾール)、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤(例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチドもしくはチロフィバン)、アデノシン再取り込み阻害剤(例えば、ジピリダモール)、またはトロンボキサン阻害剤(例えば、トロンボキサンシンターゼ阻害剤、トロンボキサン受容体阻害剤、例えばテルトロバン)が挙げられる。当業者は他の抗血小板薬物を容易に特定することができるため、これらの抗血小板薬物は非限定的である。
例示的な抗凝固薬物としては、クマリン(例えば、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン、ブロディファコウムまたはフェニンジオン)、ヘパリンおよびその誘導体(例えば、ヘパリン、低分子量ヘパリン、フォンダパリヌクスまたはイドラパリヌクス)、第Xa因子阻害剤(例えば、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバンまたはエリバキサバン)、トロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバンまたはダビガトラン)、アンチトロンビンタンパク質、バトロキソビン、ヘメンチン、ならびにトロンボモジュリンが挙げられる。当業者は他の抗凝固薬物を容易に特定することができるため、これらの抗凝固薬物は非限定的である。
例示的な血栓溶解薬物としては、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)(例えば、アルテプラーゼ、レテプラーゼもしくはテネクテプラーゼ)、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、またはウロキナーゼが挙げられる。
他の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、再狭窄を予防する薬物(例えば、抗増殖薬物、抗炎症薬物または抗血栓薬物)を含む。例示的な抗増殖薬物、抗炎症薬物および抗血栓薬物が本明細書中に記載される。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、感染症を処置または予防する薬物、例えば抗生物質を含む。適する抗生物質としては、ベータ−ラクタム系抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム)、ポリミキシン、リファマイシン、リピアルマイシン、キノロン、スルホンアミド、マクロライド、リンコサミド、テトラサイクリン、アミノグリコシド、環状リポペプチド(例えば、ダプトマイシン)、グリシルサイクリン(例えば、チゲサイクリン)、オキサゾリジノン(oxazonidinone)(例えば、リネゾリド)、およびリピアルマイシン(例えば、フィダキソマイシン(fidazomicin))が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、抗生物質としては、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、メクロサイクリン、スルファセタミド(ナトリウム)、過酸化ベンゾイル、およびアゼライン酸が挙げられる。適するペニシリンとしては、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンg、ペニシリンv、ピペラシリン、ピバンピシリン、ピブメシリナム、およびチカルシリンが挙げられる。例示的セファロスポリンとしては、セファセトリル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン、セフラジン、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル、セファマンドール、セフメタゾール、セフォニシド、セフォテタン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフゾナム、セフカペン(cfcapene)、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォタキシム、セフピミゾール、セフポドキシム、セフテラム、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフクリジン、セフェピム、セフルプレナム(ceflurprenam)、セフォセリス、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム(cequinome)、セフトビプロール、セフタロリン、セファクロメジン、セファロラム、セファパロール、セフカネル、セフェドロロール(cefedrlor)、セフェムピドン(cefempidone)、セフェトリゾール、セフィビトリル、セフマチレン、セフメピジウム、セフォベシン、セフォキサゾール、セフロチル、セフスミド、セフラセチムおよびセフチオキシドが挙げられる。モノバクタムとしては、アズトレオナムが挙げられる。適するカルバペネムとしては、イミペネム/シラスタチン、ドリペネム、メロペネムおよびエルタペネムが挙げられる。例示的マクロライドとしては、アジスロマイシン、エリスロマイシン、ラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシンおよびテリスロマイシンが挙げられる。リンコサミドとしては、クリンダマイシンおよびリンコマイシンが挙げられる。例示的スペクトログラミンとしては、プリスチナマイシンおよびキヌプリスチン/ダルホプリスチンが挙げられる。適するアミノグリコシド系抗生物質としては、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンが挙げられる。例示的キノロンとしては、フルメキン、ナリジクス酸、オキソリン酸、ピロミド酸、ピペミド酸、ロソクサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン(ofoxacin)、ペフロキサシン、ルフロキサシン、バロフロキサシン、ガチフロキサシン、レパフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、ベシフロキサシン、クリナフロキサシン(clinafoxacin)、ゲミフロキサシン、シタフロキサシン、トロバフロキサシンおよびプルリフロキサシンが挙げられる。適するスルホンアミドとしては、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、およびトリメトプリム−スルファメトキサゾール(sulfamethoxazone)が挙げられる。例示的テトラサイクリンとしては、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリンおよびチゲサイクリンが挙げられる。他の抗生物質としては、クロラムフェニコール、メトロニダゾール、チニダゾール、ニトロフラントイン、バンコマイシン、テイコプラニン、テラバンシン、リネゾリド、サイクロセリン、リファンピン、リファブチン、リファペンチン、バシトラシン、ポリミキシンB、バイオマイシンおよびカプレオマイシンが挙げられる。当業者は、本明細書中に記載されるデバイスおよび方法に有用な他の抗生物質を容易に特定することができる。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、黄斑変性を低減する薬物を含む。黄斑変性の1つの一般的な現行処置は、抗血管新生化合物(ルセンティス、アイーリア)の眼内注射を含む。反復眼内注射は、患者による認容性が不良であることがあり、その結果、患者のコンプライアンスが低くなる。本明細書に記載するように、黄斑変性用の薬物デポーを非侵襲的に補充することができることは、疾患、例えば黄斑変性の処置に対する患者のコンプライアンスおよび患者の認容性を有意に向上させる。デバイスへの補充によって可能になる制御された反復放出は、より少ない薬物投与および患者の快適さの向上を可能にする。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、免疫学的拒絶反応を予防する薬物を含む。本明細書中に記載の本発明より前は、細胞、組織、または臓器全体の免疫学的拒絶反応を予防するために、患者は全身性抗拒絶反応薬の生涯にわたる治療を必要とし、全身性抗拒絶反応薬は、有意な副作用を引き起こし、免疫系を消耗させ、その結果、患者は感染症および他の合併症のリスクがより大きい状態になった。薬物送達デバイスから抗拒絶反応薬を局所的に放出することができ、薬物送達デバイスを繰り返し補充することができることによって、全身性副作用がより少なく、認容性が向上し、有効性がより良好である、より局所的な抗拒絶反応治療が可能になる。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、血栓症を予防する薬物を含む。一部の血管デバイス、例えば血管グラフトおよびコーティングされたステントには、血栓症に罹患し、身体がこれらのデバイスに対してトロンビン媒介応答を開始する。これらのデバイスから放出される抗血栓薬は、血栓症プロセスの一時的な阻害を可能にするが、これらのデバイスは限定された薬物を備えており、薬物供給量を使い果たしてしまうと血栓症を予防することができない。これらのデバイスは、長期間にわたって(ことによると患者の全生涯にわたって)移植されるので、一時的な血栓症阻害は十分ではない。これらのデバイスを抗血栓薬で繰り返し補充することができ、その薬物を放出することができることは、臨床成績を有意に向上させ、長期血栓症阻害を可能にする。
一部の実施形態では、(例えば、薬物送達デバイスおよび/または薬物補充物中の)医薬組成物は、炎症を処置する薬物を含む。慢性炎症は、非分解性病原体、ウイルス感染または自己免疫反応に起因する持続炎症を特徴とし、何年も続き、組織破壊、線維症および壊死をもたらし得る。場合によっては、炎症は、局所性疾患であるが、臨床的介入は、ほとんどの場合、全身性である。全身投与される抗炎症薬は、胃腸の問題、心臓毒性、高血圧および腎臓損傷、アレルギー反応、ならびにことによると感染リスク増加を含む、有意な副作用を有する。NSAIDおよびCOX−2阻害剤などの抗炎症薬を繰り返し放出できることで、これらの副作用を低減することができる。炎症部位に移植されるまたは注射される補充可能な薬物送達デバイスによって、全身性副作用を回避しつつ長期の局所的な抗炎症ケアを果たすことができるようになる。
一部の実施形態では、医薬組成物は、例えば、共有結合、非共有結合またはイオン結合を介して、標的に直接結合される。他の実施形態では、医薬組成物は、切断可能なリンカーを介して標的に結合される。切断可能なリンカーの例としては、加水分解可能なリンカー、pH切断性リンカー、酵素分解可能なリンカー、または本明細書中に記載されるような任意の切断可能なリンカーが挙げられる。
一部の実施形態では、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、毒性であり得、本発明の薬物補充物が、被験体に投与されたときの医薬組成物の毒性をマスクする。一部の実施形態では、本発明の方法における薬物補充物は、医薬組成物が細胞膜を通過することを防止することによって、医薬組成物の毒性をマスクし得る。他の実施形態では、薬物補充物は、医薬組成物がこの医薬組成物の生物学的標的に結合することを防止することによって医薬組成物の毒性をマスクし得る。一部の実施形態では、医薬組成物の毒性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%が、薬物補充物によってマスクされる。したがって、本発明の方法における薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに直接送達させるだけでなく、医薬組成物が所望の位置にある薬物送達デバイスに到達するまで、送達される医薬組成物の潜在的な毒性をマスクする。
本発明の方法における医薬組成物は、薬物送達デバイスに送達されると暴露される。医薬組成物は、それが薬物補充物内の標的から分離することによって暴露される。薬物補充物内の標的は、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって、医薬組成物から分離され得る。一部の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の酵素分解によって切断される。他の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の加水分解によって切断される。さらに別の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の還元によって切断される。
一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。
本発明の方法における医薬組成物の薬物送達デバイスからの放出は、制御された様式で達成され得る。通常数分以内に医薬組成物の送達を媒介する、既存の薬物送達システムとは異なり、本発明の薬物送達システムは、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間の時間規模にわたるより持続された医薬組成物の放出を提供する。
一部の実施形態では、本発明の方法における使用のための医薬組成物は、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合を切断することによって放出される。他の実施形態では、医薬組成物とリンカーとの間の結合、切断可能なリンカー内の結合、または医薬組成物と標的との間の結合は、結合の酵素分解、加水分解または還元によって切断される。一部の実施形態では、医薬組成物と切断可能なリンカーとの間の結合は、ヒドラジン結合、アセタール結合、ケタール結合、オキシム結合、イミン結合およびアミナール結合からなる群から選択される結合を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬物補充物から被験体内の所望の位置へと放出されない。一部の実施形態では、医薬組成物の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%が、薬物送達デバイスから被験体内の所望の位置へと放出される。
本発明の方法における薬物送達デバイスと薬物補充物との間の特異的な認識は、標的と標的認識部分との間の相互作用によって容易にされる。一部の実施形態では、標的および/または標的認識部分は、核酸、ペプチド、多糖、脂質、小分子、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含む。代替的に、薬物補充物上の標的は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含む。
一部の実施形態では、薬物補充物上の標的は、生体直交型官能基を含み、薬物送達デバイス上の標的認識部分は、相補官能基を含み、生体直交型官能基は、相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる。本発明の標的および標的認識部分として使用される例示的な生体直交型官能基/相補官能基対としては、アジドとホスフィン、アジドとシクロオクチン、ニトロンとシクロオクチン、ニトリルオキシドとノルボルネン、オキサノルボルナジエンとアジド、トランス−シクロオクテンとs−テトラジン、クアドリシクランとビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、薬物送達デバイス上の相補官能基とクリックケミストリーによって反応することができる。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルケン、例えば、シクロオクテン(例えば、トランスシクロオクテン(TCO))またはノルボルネン(NOR)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、テトラジン(Tz)を含む。他の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、アルキン(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチン)を含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、アジド(Az)を含む。一部の実施形態では、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Tzを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、トランスシクロオクテン(TCO)またはノルボルネン(NOR)などのアルケンを含む。代替的に、または加えて、薬物補充物上の生体直交型官能基は、Azを含み、薬物送達デバイス上の相補官能基は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチンを含む。
本発明の方法における薬物送達デバイスおよび薬物補充物は、全身投与、例えば、経腸投与(例えば、経口、頬側、舌下もしくは直腸)投与または非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内、髄腔内もしくは皮下)され得る。本発明の薬物送達システムの他の適切な投与方式としては、真皮下、腹腔内、眼内、鼻腔内、経真皮(例えば、皮膚パッチによる)、硬膜外、頭蓋内、経皮、膣内、子宮内、硝子体内もしくは経粘膜投与、または注射による、エアロゾルベースの送達による、もしくは移植による投与が挙げられる。
一部の実施形態では、本発明の方法は、1つの薬物送達デバイスを含む。1または複数の種類の医薬組成物を含む薬物補充物は、1つの薬物送達デバイスが1または複数の種類の医薬組成物で補充されるように、繰り返し投与される。薬物送達デバイスは、薬物送達デバイスを補充する必要なしに、血流を通じた薬物補充物の複数投与によって補充され得る。
一部の実施形態では、本発明の方法は、複数の薬物送達デバイス(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、またはそれよりも多くの薬物送達デバイス)を含む。本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の同じ所望の位置に置かれ得る。代替的に、本発明の薬物送達デバイスは、被験体内の異なる所望の位置に置かれ得る。
一部の実施形態では、本発明の方法は、複数の薬物補充物(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、またはそれよりも多くの薬物補充物)を含む。一部の実施形態では、各薬物補充物は、医薬組成物および異なる標的を含み、各薬物送達デバイスは、異なる標的認識部分を含む。一部の実施形態では、各薬物補充物は、異なる医薬組成物および異なる標的を含む。したがって、各薬物補充物は、異なる薬物送達デバイスに結合し、それによって同じ疾患部位、または複数の疾患部位における各薬物送達デバイスの独立した補充を可能にする。他の実施形態では、各薬物補充物は、複数の標的を含み、各送達デバイスは、複数の標的認識部分を含む。他の実施形態では、1つの薬物補充物内の複数の異なる薬物は、同じ薬物送達デバイスに送達される。
さらに、本発明の方法は、2つの別個の直交型化学システムの使用によって2つの異なる分子の分離を可能にする。同じ動物における2つの異なる部位を標的指向化する2つの異なる分子の空間的分離は、患者において相容れない治療を組み合わせることにおける本明細書中に記載される薬物送達システムの有用性を実証する。上記補充物の投与は、複数回にわたって繰り返すことができる。一部の実施形態では、薬物補充物は、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも250回、少なくとも300回、少なくとも350回、少なくとも400回、少なくとも450回、少なくとも500回、少なくとも600回、少なくとも700回、少なくとも800回、少なくとも900回、、または少なくとも1000回にわたって繰り返し投与される。
本発明の薬物送達デバイス、薬物補充物および/または医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経真皮(すなわち局部的)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:滅菌希釈液、例えば、注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および浸透圧を調整するための剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの、酸または塩基で調整することができる。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入することができる。
本発明の薬物送達デバイス、薬物補充物および/または医薬組成物は、注射用の使用に適しており、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与に適する担体としては、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR ELTM(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合、組成物は、無菌でなければならず、容易な注入性(syringeability)が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造および保管条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適する混合物を含有する、溶媒または分散媒でありうる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなどによって果たすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
本発明における使用に適切な滅菌注射用溶液は、上に列挙した構成要素(ingredient)の1つまたは組合せを必要に応じて含有する適切な溶媒に必要量の医薬組成物を混ぜ入れ、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒と上に列挙したものからのその他の必要とされる構成要素とを含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を混ぜ入れることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、任意の追加の所望の構成要素を加えた活性な構成要素の粉末を、前もって滅菌濾過されたその溶液から生じさせる、真空乾燥および凍結乾燥である。
一部の実施形態では、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、徐放/制御放出製剤などの医薬組成物は、化合物を身体からの急速な除去から保護する担体を用いて調製される。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかである。
投与の容易さおよび投薬量の均一性のため単位剤形での経口または非経口組成物の製剤化は特に有利である。本明細書で用いる場合の単位剤形は、処置すべき被験体のための単位投薬量として適している物理的に別個の単位であって、各単位が、必要とされる医薬担体と共同で所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含有する、単位を指す。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに個体の処置のためのそのような活性化合物の配合技術に固有の制限によって決まり、これらに直接依存する。
一部の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、薬物送達デバイス内またはその上に、例えば、デバイスのポリマー(例えば、アルギネートなどのヒドロゲル)上に取り込まれる。そのような場合、0〜100mg(例えば、5〜100mg、10〜100mg、20〜100mg、30〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、80〜100mg、90〜100mg、1〜95mg、1〜90mg、5〜95mg、5〜90mg、5〜80mg、5〜70mg、5〜60mg、5〜50mg、5〜40mg、5〜30mg、または5〜20mg)の医薬組成物が薬物送達デバイス内に存在する。例えば、医薬組成物は、薬物送達デバイス内に少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはそれ超)の重量/重量濃度で存在する。
一部の実施形態では、薬物送達デバイス、例えばヒドロゲルは、ヒドロゲルのmL当たり0.1mg〜25mg、例えば、mL当たり0.5mg〜15mg、1mg〜10mg、1mg〜5mg、5mg〜10mg、または1mg〜3mg、例えば、mL当たり約1.6mgの医薬組成物を含む。
他の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、本発明の薬物補充物とコンジュゲートしている。例えば、医薬組成物は、薬物補充物ポリマー、例えばアルギネート鎖と、1:100〜100:1、例えば、1:100、5:100、1:10、1:5、3:10、4:10、1:2、6:10、7:10、8:10、9:10、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、または100:1の重量/重量比でコンジュゲートしている。他の例では、医薬組成物は、補充物の標的分子と、例えば、10:1〜1:10、例えば、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10の医薬組成物:標的分子モル比でコンジュゲートしている。
薬物送達デバイスは、それを必要とする被験体に投与される。例えば、被験体は、哺乳動物、例えばヒト、サル、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジまたはヤギである。例えば、被験体はヒトである。
本発明は、以下の実施例においてさらに記載され、これは、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
DNA合成
DNAオリゴヌクレオチドは、PerSeptive Biosystems Expedite 8909 DNA合成装置で標準的自動固相ホスホラミダイトカップリング法を使用して合成するか、Integrated DNA Technologiesから購入した。DNA合成用のすべての試薬およびホスホラミダイトは、Glen Researchから購入した。オリゴヌクレオチドを、C18固定相およびアセトニトリル/100mM 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)勾配を使用する逆相HPLCによって精製し、Nanodrop ND1000分光光度計で行ったUV分光測定を使用して定量した。3’−チオールDNAは、3’−Thiol−Modifier C3 S−S CPGカラムを使用して合成した。ホスホロチオエートは、ピリジン/アセトニトリル中の0.05M硫化試薬IIを使用して合成した。使用したDNA配列を表1に要約する。
アルギネート酸化
医薬グレード、高グルロン酸含有量、高Mwアルギネート(MVG)をFMC Biopolymers(Princeton、NJ)から購入した。水中のアルギン酸ナトリウム(1.0g、4マイクロモル)の1%溶液を過ヨウ素酸ナトリウム(54mg、252マイクロモル)と室温で混合し、撹拌した。24時間後にエチレングリコール(30mg、28.5μL)の添加によって反応を停止させた。過剰量のイソプロピルアルコールで溶液を沈殿させた。遠心分離によって回収した沈殿物を蒸留水に再溶解し、イソプロパノールで再び沈殿させた。酸化されたアルギネートを減圧下で凍結乾燥させて白色生成物(0.9g、収率90%)を得た。レーザー屈折計と示差粘度計と直角レーザー光散乱検出器とからなるゲル浸透クロマトグラフィー(Viscotek)で、分子サイズおよび流体力学的半径を分析した。
アルギネートとのBMPH、Dye−750およびDNAコンジュゲーション
100mgのアルギネート(0.4マイクロモル、1当量)を、一晩、100mL 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(100mM MES、300mM NaCl、pH=5.5)に溶解した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(7.7mg、40マイクロモル、Sigma E7750)を添加し、5分間撹拌した。N−ベータ−マレイミドプロピオン酸ヒドラジド−TFA(BMPH)(5.94mg、20マイクロモル、Thermo Scientific 22297)および/またはHiLyte FluorTM750ヒドラジド(3.76mg、3.6マイクロモル、Anaspec 81268)を添加し、反応物を20時間撹拌した。試料を80%イソプロパノールに沈殿させ、水に再懸濁し、再び沈殿させた。試料を高真空下で乾燥させた。
Varian Inova−500(500MHz)で、周囲温度で、99.9%D2O中で、1H NMRスペクトルを記録した。NMR溶媒はすべてCambridge Isotope Laboratoriesから購入した。
アルギネート−BMPH(10mg、約0.04マイクロモル)を、一晩、トリス緩衝液(100mM、pH8.0)に溶解した。3’−チオールDNA(0.4μモル)を200μLトリス(100mM、pH8.0)に溶解し、20μL(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)(0.5M)とともに30分間インキュベートした。3K MWカットオフ(MWCO)遠心式フィルターデバイス(Nanosep 3K Omeraフィルター、PALL OD003C33)上でDNAを遠心分離してTCEPおよびチオール小分子を除去し、アルギネートと混合した。その混合物を20時間インキュベートし、その後、100K MWCO遠心式フィルターデバイス(Nanosep 100K Omega Filter、PALL OD100C33)に移し、遠心分離してDNAを除去した。500μL蒸留水を補給し、再び遠心分離した。試料を希釈して0.5%アルギネートにし、滅菌濾過し、乾固するまで凍結乾燥させた。最終重量:約9mg。
ドキソルビシン(Doxorubixin)−アルギネートカップリング
アジピン酸ジヒドラジド(587mg、3.3ミリモル、Sigma A0638)を塩化カルシウム水溶液(1M)に0.5Mの濃度で溶解した。ドキソルビシン塩酸塩(10mg、17μmol、Sigma D1515、DMSO中10mg/mL)をその溶液に添加し、48時間、37℃で撹拌した。Agilent 1200 Series Prep−Scale HPLCで溶液を直接精製した。生成物画分を凍結乾燥させた。収率:40% 実測生成物質量:700.3ダルトン。
BMPHコンジュゲートアルギネート(5mg)を、一晩、5mL トリス−HCl(100mM、pH8.0)に溶解した。この溶液に160mg アジピン酸−ドキソルビシン(228μモル)を添加し、一晩撹拌した。3K MWCO遠心式フィルターデバイス(Nanosep 3K Omeraフィルター、PALL OD003C33)を使用して、その溶液を水に緩衝液交換した。溶液を滅菌濾過し、凍結乾燥させた。全収率:80%。
アルギネートからのドキソルビシン放出
ドキソルビシンまたはドキソルビシン−ヒドラジド(hydrazde)を(酸化されたおよび酸化していない)アルギネートと組み合わせ、塩化カルシウムでゲル化させ、PBS中、37℃でインキュベートした。異なる時点で溶液を変え、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起:530、発光:590)でドキソルビシン濃度を測定した。
アルギネートとカップリングしているドキソルビシンのin vitro細胞毒性
ヒドラゾン連結ドキソルビシン−アルギネートおよびドキソルビシン単独の細胞毒性効果を、Alamar Blueアッセイを使用して評価した。MDA−MB−231細胞を24ウェル平底プレートに60,000細胞/ウェルの密度で播種し、24時間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、様々な濃度のドキソルビシンまたはアルギネート連結ドキソルビシンを含有する培養培地中で24時間、37℃でインキュベートした。細胞生存率をAlamarブルーアッセイによって供給業者の指示に従って評価し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起:530、発光:590)で読み取った。
アルギネート循環測定:
C57/B6マウスの後眼窩に100μL 0.5%蛍光アルギネート(酸化していないアルギネート、Dye−750)を注射した。マウスの前部および背部を剪毛し、IVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で30日にわたって撮像した。毎回画像収集前に剪毛を繰り返した。血液中の蛍光を鼻領域の蛍光の定量によって測定した。
in vitro相互作用研究(図2)
ポリA−SHとコンジュゲートしている0.5%の酸化していないアルギネートの液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。500μLの0.8μM蛍光(Fl)オリゴヌクレオチド(ポリT−FlまたはポリA−Fl)を添加し、オービタルシェーカー上で1、5、30分間または16時間インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl2)で2回洗浄し、緑色チャネル下、蛍光顕微鏡により撮像した。定量のために、ゲルを100μL 100mM EDTA中で30分間、脱架橋し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起485、発光538、カットオフ530)で蛍光を読み取った。
in vitro相互作用研究(図3)
DNAとコンジュゲートしているアルギネート(ポリA−SHとコンジュゲートしている、ポリT−SHとコンジュゲートしている、またはコンジュゲートしていない、0.5%の酸化していないアルギネート)の液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。ポリT−SH/HEXとコンジュゲートしている500μLの0.05%アルギネート(図3A〜C)またはポリA−SHおよびDye−750とコンジュゲートしている500μLの0.05%アルギネートを添加し、オービタルシェーカー上で5、10、30、60分間(図3A〜C)または30分間(図3D〜F)インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl2)で2回洗浄し、蛍光顕微鏡(緑色チャネル)でまたはIVIS Spectrum CT in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。定量のために、図3A〜Cについてはゲルを100μL 100mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)中で30分間、脱架橋し、molecular devices spectramaxプレートリーダーで蛍光を読み取った。
in vivoヒドロゲルホーミング
すべての動物実験は、確立された動物実験実施計画に従って行った。C57/B6マウスの頸部の背部に100μL PBS中の100,000個のB16−F10黒色腫細胞(American Type Culture Collection、VA)を皮下注射することによって、腫瘍を生じさせた。動物を腫瘍成長の開始について(おおよそ2週間)モニターした。DNA(ポリT−SHまたはポリA−SH)とコンジュゲートしているアルギネート 20mg/mLを4% wt/v CaSO4(1.22M)で架橋させ、50μLを23ゲージ針で腫瘍の中心に注射した。腫瘍を覆っている一切の毛を剪毛した。
翌日、マウスの後眼窩に100μL 0.5%DNAとコンジュゲートしている蛍光アルギネート(酸化していないアルギネート、ポリA−SH、Dye−750)を注射した。マウスを6日間、24時間ごとにIVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。腫瘍が一方向に>20mmに成長した場合、または腫瘍が皮膚の至る所で潰瘍化して非治癒性開放創が存在した場合、人道的理由でマウスを安楽死させた。実験完了前に死亡したまたは安楽死させなければならなかったマウスは、分析に含めなかった。
異種移植腫瘍研究
すべての動物実験は、確立された動物実験実施計画に従って行った。マトリゲル(BD Biosciences、CA)と組み合わせて総体積200μL(100μL PBSおよび100μL マトリゲル)にした106個のMDA−MB−231細胞(American Type Culture Collection、VA)を、8週齢J:Nu(Foxn1nu/Foxn1nu)マウス(Jackson Labs、ME)の後肢に注射することによって、腫瘍を生じさせた。腫瘍接種から35日後に腫瘍にアルギネートゲルを注射した。DNA(チオT−SHまたはコンジュゲートしていないもの)とコンジュゲートしているアルギネート 20mg/mLをドキソルビシン(ゲルのmL当たり1.6mgの薬物)と混合し、次いで4% wt/v CaSO4(1.22M)で架橋させ、次いで50μLのゲルを23ゲージ針で腫瘍に注射した。初回腫瘍ゲル注射の2、3、4および5週間後、マウスの後眼窩に、ドキソルビシンを有する0.5%のDNAとコンジュゲートしているアルギネート(5%酸化アルギネート、チオA−SH、Dye−750、160μg Dox−ヒドラジド=120μg Dox)100μLを注射した。この研究を通して、デジタルカリパスを用いて週2回、二次元で腫瘍面積を測定し、その二次元値の積を使用して腫瘍面積を概算した。マウスを49日目に屠殺した。実験完了前に死亡したまたは安楽死させなければならなかったマウスは、分析に含めなかった。
3−(p−ベンジルアミノ)−1,2,4,5テトラジン合成
3−(p−ベンジルアミノ)−1,2,4,5−テトラジンを標準法に従って合成した。例えば、50mmolの4−(アミノメチル)ベンゾニトリル塩酸塩と150mmol ホルムアミジン酢酸塩を混合し、その間に1molの無水ヒドラジンを添加した。反応物を80℃で45分間撹拌し、次いで室温に冷却し、その後、水中0.5molの亜硝酸ナトリウムを添加した。次いで10%HClを滴下添加して反応物を酸性化して所望の生成物を形成した。次いで、その酸化された酸性粗混合物をDCMで抽出し、NaHCO3で塩基性化し、直ちに再びDCMで抽出した。回転蒸発によって最終生成物を回収し、HPLCによって精製した。化学製品は、Sigma−Aldrichから購入した。
アルギネートとのアジドおよびテトラジンコンジュゲーション
200mgのアルギネート(0.8マイクロモル、1当量)を、一晩、200mL MES緩衝液(100mM MES、300mM NaCl、pH=5.5)に溶解した。11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミン(349mg、1.6ミリモル、2000当量、Sigma−Aldrich 17758)またはテトラジン−アミン(300mg、1.6ミリモル、2000当量)をその溶液に添加し、さらに1時間、室温で撹拌した。1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(306.7mg、1.6ミリモル、2000当量、Sigma−Aldrich E7750)およびスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(173mg、800μモル、1000当量、Thermo Fisher 24510)の混合物を3回に分けて同じ用量で8時間離して添加し、さらに8時間撹拌した。NaCl含有量を徐々に低くして、4Lの水に試料を透析し、1日に2〜3回溶液を交換した。水4L当たりのNaCl:30g、25g、20g、15g、10g、5g、0g、0g、0g、0g、0g。試料を高真空下で凍結乾燥させた。最終重量:150〜160mg。収率:75〜80%。Varian Inova−500(500MHz)で、周囲温度で、99.9%D2O中で、1H NMRスペクトルを記録した。酸化重水素は、Cambridge Isotope Laboratoriesから購入した。置換の推定のために、1〜1.2ppmのアジドピークおよび7.5、8.5および10.4ppmのテトラジンピークを3〜4.2ppmの間の3つのウロン酸(urinate)プロトンと比較した。図17〜18を参照されたい。
in vitro相互作用研究 アジド−DBCO
アジドとコンジュゲートしている2%の酸化していないアルギネートまたはコンジュゲートしていない対照の液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。500μLの100μM Cy7−DBCO(Click Chemistry Tools)を添加し、オービタルシェーカー上で4時間インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl2)で2回洗浄した。定量のために、ゲルを100μL PBS中の3.5mg/mL アルギン酸リアーゼ(Aldrich A1603)で一晩消化し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起745、発光780)で蛍光を読み取った。カルシウム架橋ゲルと100当量のDBCO−Cy7(アルギネート−アジド)のインキュベーション、その後の減衰全反射(ATR)/赤外(IR)分光測定(ATIR)分析によって、クリックパートナーとの反応も確認した。ATIRは、雰囲気調整したVertex70マシンで測定した。図19〜20を参照されたい。
in vitro相互作用研究 テトラジン−TCO
テトラジンとコンジュゲートしている2%の酸化していないアルギネートまたはコンジュゲートしていない対照の液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。500μLの100μM Cy7−TCO(Click Chemistry Tools)を添加し、オービタルシェーカー上で4時間インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl2)で2回洗浄した。定量のために、ゲルを100μL PBS中の3.5mg/mL アルギン酸リアーゼ(Aldrich A1603)で一晩消化し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起745、発光780)で蛍光を読み取った。カルシウム架橋ゲルと100当量のTCO−Cy5(アルギネート−テトラジン)のインキュベーション、その後のATIR分析によって、クリックパートナーとの反応も確認した。ATIRは、雰囲気調整したVertex70マシンで測定した。図21〜22を参照されたい。
後肢虚血のマウスモデルおよびアルギネートゲル移植
8週齢、雌CD−1バックグラウンド非近交系統(Charles River Laboratories、MA)。動物をケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔した。後肢虚血を片側外腸骨動脈および静脈結紮によって誘発した。手術の時点で、マウスを2群(1群当たりn=3)のうちの一方に無作為に割り当てた。アジドもしくはテトラジンとコンジュゲートしているアルギネートまたはコンジュゲートしていない対照 20mg/mLをPBS中の4% wt/v CaSO4(1.22M)で架橋させ、50μL アルギネート−アジド/テトラジンヒドロゲルを25ゲージ針によって結紮部位の遠位端付近に注射した(各群n=3)。手術後、対照動物には、コンジュゲートしていないアルギネートを筋肉内注射した。切開部を5−0エチロン糸(Johnson & Johnson、NJ)によって閉鎖した。後肢の虚血をレーザードップラー灌流撮像(LDPI)システム(Perimed AB、Sweden)によって確認した。
in vivoヒドロゲル標的指向化
手術およびゲル移植の24時間後、マウスの後眼窩に100μL 20μg/mL Cy7−TCOまたはCy7−DBCO(Click Chemistry Tools)を注射した。マウスをIV注射の1、5、30分、6および24時間後にIVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。反復ゲル標的指向化のために、アルギネート−Azを有するマウスに20ug/mL Cy7−TCOを再注射し、IVIS Spectrumで毎日撮像した。マウスは、これらの投与からの有害作用を示さず、実験完了前に安楽死させなければならなかったマウスはいなかった。何らかの理由で分析から除外したマウスはいなかった。
分子標的指向化の空間的隔離
後肢虚血を上に記載したように誘発し、アルギネート−テトラジンゲルを筋肉内に移植した(n=3)。アルギネート−アジドゲル(n=3)を虚血肢とは反対側のマウスの乳房脂肪体に注射した。100μL Cy5−TCO(Click Chemistry Tools、20μg/mL)とCy7−DBCO(Click Chemistry Tools、20ug/mL)の混合物を後眼窩に注射した。IV注射の48時間後にマウスのCy5(励起:640、発光:680)およびCy7(励起:740、発光:820)領域内ならびに光学像を撮像した。乳房脂肪体の可視ゲル膨潤に基づく光学像および後肢の縫合に基づいて関心領域(ROI)をブラインドで設定した。領域の「放射輝度」に基づいて蛍光を定量した。
筋肉単離および蛍光定量
Cy7−DBCOのIV注射の24時間後、マウス(n=3)を屠殺した。アルギネート−アジドを注射した後肢筋肉と対照後肢筋肉の両方を単離した。試料を2時間、2mLの250ユニット/ml コラゲナーゼII、1ユニット/mL ディスパーゼII、および1mg/mL アルギネートリアーゼ中で消化した。試料を遠心分離(5分、500g)し、上清を除去し、ペレットを再懸濁させ、消化を反復した。2つの消化物を併せ、定量用のCy7−DBCO希釈系列を使用してmolecular devices spectramaxプレートリーダー(励起745、発光780)で定量した。
統計検定
両側、等分散性スチューデントt検定を使用するペアワイズ比較に基づいて、すべてのデータを比較した。
経口送達およびアルギネート−アジドへのヒドロゲル標的指向化
手術およびゲル移植の24時間後、マウスに強制経口投与によって100μL 1mg/mL Cy7−DBCO(Click Chemistry Tools)を投与した。マウスを経口投与後、1、30分、6および24時間の時点でならびに1週間、毎日、IVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。アルギネート注射部位でのおよび対側(ctrl)肢の鏡映位置での蛍光を定量した。IV注射の6日後の平均蛍光を図14に示す。エラーバーはSEMを示す。p値は、対応のある(Alg−Az Ctrl条件に対する)または対応のない(他の条件)、片側t検定を表す。
(実施例1)
血液中でのアルギネート循環時間
薬物ペイロードの効率的な血液ベースの補充は、ペイロードの主要デバイスとの遭遇および結合を可能にする十分な循環寿命に依存する。近IRプローブとコンジュゲートしているアルギネート(285KDa、流体力学的半径(Rh)44nm)(図6A)の循環時間を、マウスへの静脈内(IV)投与後に分析した。蛍光の定量(図6B)は、このアルギネートが少なくとも14日間は循環状態を保ち、循環半減期が約7日であることを明らかに示した(図6C)。個々の臓器の撮像によって肺、肝臓、脾臓およびより少ない程度に腎臓内での蓄積が明らかになり(図6D)、これは、これらの臓器のすべてが血流からの循環アルギネートの除去に寄与することが実証された。長い循環時間のため、アルギネートは、血管外遊出能力および主要薬物送達デバイスとの相互作用能力がある効率的血管内薬物担体として役立つことができる。
(実施例2)
in vitroでのアルギネートゲルとの薬物代替物のDNA媒介結合
薬物ペイロードのデバイス補充が、標的カルシウム−アルギネートゲルと、薬物ペイロードとコンジュゲートしている遊離アルギネート鎖との間の相補DNA結合によって媒介されうるかどうかを判定するために、実験を行った。DNA(使用したDNAのリストについては表1を参照されたい)をその3’末端によってアルギネート鎖と、アルギネート1分子につきカップリングしているDNA2分子の比でコンジュゲートさせた。次いで、核酸結合活性を保持するアルギネートとコンジュゲートしているDNAの能力を試験した。(T)20(配列番号1)オリゴヌクレオチドとコンジュゲートさせたアルギネートをカルシウムでイオン架橋させてゲルを形成し、次いで、1mM塩化カルシウムを含有するリン酸緩衝液中で、蛍光標識相補(A)20(配列番号2)または非相補(T)20(配列番号1)オリゴヌクレオチド(図2A)とともにインキュベートした。相補オリゴヌクレオチドは、配列特異的にゲル表面と結合したが、非相補オリゴヌクレオチドは、ほとんど結合を示さなかった(図2B〜C)。
次に、可溶性のDNAとコンジュゲートしているアルギネート鎖に結合する、DNAとコンジュゲートしているアルギネートのゲルの能力を、in vivo薬物補充のモデルとしてin vitroで試験した。DNAとコンジュゲートしているまたはコンジュゲートしていないアルギネートをゲル化し、蛍光標識相補DNAとカップリングさせた遊離アルギネート鎖とともに、可変時間、生理カルシウム濃度を有する緩衝液中でインキュベートした(図3A)。相補DNAを有するアルギネート鎖は、DNAとコンジュゲートしていない対照ゲル表面と比較して約5倍の選択性で、DNAを有するゲル表面と特異的に結合した。この選択性は経時的に一定していた(図3B〜C)。薬物を有するアルギネート−DNAコンジュゲートをより完全に表すために、DNAとコンジュゲートしているアルギネートをその骨格に沿って近IR色素で修飾して薬物負荷量を模倣し、相補または非相補DNAを有するアルギネートゲルとの会合について試験した。1時間インキュベートすると、蛍光標識されたアルギネート鎖は、非相補DNAを有する対照ゲルと比較して、相補DNAを有するゲルと選択的に結合した(図3D〜F)。
遊離アルギネート鎖を架橋してゲルにすることができるカルシウムの存在下での非DNA媒介相互作用の可能性のため、1mMの生理的に妥当な可溶性カルシウム濃度のもとでin vitroアルギネート結合研究を行った。これらの条件下で、少量のアルギネートは、in vitroでDNA非依存的にゲルと結合する(図3Cおよび3F)。しかし、アルギネートのDNA媒介結合は、非特異的相互作用より5倍速かった。このデータは、DNAとコンジュゲートしているアルギネート鎖が相補DNAとコンジュゲートしているアルギネートのゲルと結合することを示す。
(実施例3)
in vivo DNA媒介アルギネートホーミング
蛍光標識遊離アルギネート鎖がin vivoでDNA媒介標的指向化によって標的ゲルにホーミングすることができるかどうかを判定するために実験を行った。DNAをその3’末端によってアルギネートにコンジュゲートさせて、血清エキソヌクレアーゼ安定性を増加させた。例えば、Shaw J、Kent K、Bird J、Fishback J、およびFroehler B(1991年)Nucleic acids research 19巻(4号):747〜750頁;Floege Jら(1999年)The American journal of pathology 154巻(1号):169〜179頁;およびGamper Hら(1993年)Nucleic acids research 21巻(1号):145〜150頁を参照されたい。黒色腫がんモデルをこれらの研究のために選択したのは、血液によって運ばれるナノ粒子の腫瘍組織内への受動的蓄積の手段をもたらす透過性および滞留性の増進効果がこれらの腫瘍において十分に確証されているためであった。例えば、Maeda H、Wu J、Sawa T、Matsumura Y、およびHori K(2000年)Journal of controlled release: official journal of the Controlled Release Society 65巻(1〜2号):271〜284頁を参照されたい。10〜20mm3の間のサイズの腫瘍を有するマウスは、DNAとコンジュゲートしている、カルシウムで架橋されたアルギネートゲルの腫瘍内注射を受けた。24時間の時点で、相補DNAとコンジュゲートしている蛍光標識遊離アルギネート鎖を静脈内投与した。マウスの撮像によって、IV投与した鎖が、おそらくEPR効果によって、投与後24時間の時点ですべてのマウスの腫瘍内に集まることを初めて明らかにした(図4A〜B)。相補DNAとコンジュゲートしている遊離アルギネート鎖を施したマウスでは、鎖は、翌数日にわたって対照と比較して統計的に有意に腫瘍内で凝集し続けた。1週間の期間にわたって、非相補DNAとコンジュゲートしているゲルを施したマウス、またはゲルを注射しなかったマウスは、腫瘍内の蛍光の漸進的減少を示し、5日目までにバックグラウンド蛍光レベルに達した。対照的に、相補DNAとコンジュゲートしているゲルを施したマウスは、注射後2および3日目に蛍光の継続的蓄積、ならびに腫瘍内の蛍光アルギネートの有意な滞留を示した。全アルギネート滞留を曲線下面積として定量した(図4C)。DNA媒介アルギネートホーミングは、対照と比較して、腫瘍内での有意に多い遊離鎖の滞留を生じさせた。このデータは、DNA標的分子を含有するアルギネート鎖が、標的認識部分として相補DNAを含有する、以前に投与したアルギネート薬物送達デバイスの部位に蓄積したことを示す。
(実施例4)
薬物補充は腫瘍成長を減速させる
数週間にわたって腫瘍成長を阻害する標的指向化技術の能力を調査することによって、本明細書に記載の補充可能な薬物送達デバイスの治療有効性を分析した。腫瘍内注射する予定の薬物送達アルギネートヒドロゲルは、数週間の期間にわたってドキソルビシンの徐放を明示した(図8)。IV投与した薬物ペイロードを担持するために、アルギネート鎖を部分的に酸化してアルデヒド官能基を導入し、それによって、加水分解性ヒドラゾンリンカーによるヒドラジン−ドキソルビシンカップリングを可能にした。例えば、Bouhadir Kら、(2001年)Biotechnology progress 17巻(5号):945〜950頁;ならびにBouhadir K、Alsberg E、およびMooney D(2001年)Biomaterials 22巻(19号):2625〜2633頁を参照されたい。酸化されたアルギネートは、ドキソルビシンの徐放を明示し(図9B)、放出されたドキソルビシンの細胞毒性を阻害しなかった(図9C)。
乳がんMDA−MB−231モデルは、ゆっくりと成長する腫瘍であり、化学療法戦略を試験するために幅広く使用されているので選択された。例えば、Choi Kら、(2011年)ACS nano 5巻(11号):8591〜8599頁;ならびにTien J、Truslow J、およびNelson C(2012年)PloS one 7巻(9号)を参照されたい。MDA−MB−231異種移植腫瘍を有する免疫不全マウスに、ドキソルビシンを放出するホスホロチオエートDNAとコンジュゲートしているアルギネートのゲル(動物1匹当たり80μg)、またはボーラスのPBS中ドキソルビシンを腫瘍内注射した。2週間後、相補ホスホロチオエートDNAおよびドキソルビシンとコンジュゲートしている遊離アルギネート鎖(動物1匹当たり120μg)または対照としてのボーラスドキソルビシン(動物1匹当たり120μg)のIV投与をマウスに毎週施した(図5A)。標的薬物補充(targeted drug refilling)は、ボーラスドキソルビシン対照での処置と比較して、腫瘍成長を有意に阻害した(図5B)。各IV投与後3日間、腫瘍サイズの変化をモニタリングすることによって、腫瘍サイズを低減する標的治療の能力を評価した。腫瘍は、最初の2回の標的処置後に縮小したが、ボーラスドキソルビシン対照を受けたマウスでは成長し続けた(図5C)。
印象的なこととして、ゲルの第1の2種の補充は、最大の影響を生じさせるようであったが、第2の2種の補充についてはさほど顕著な効果はなかった。これは、実験過程での標的ゲル上のDNA鎖の飽和またはゲル上のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの分解に起因した可能性がある。あるいは、薬物送達システムは、透過性亢進がもはや顕著でないサイズに腫瘍を縮小してしまい、その結果、非効率的標的指向化となった可能性がある。
これらの結果は、これらの方法を使用する薬物の再負荷が有意な臨床的恩恵を有することを実証した。加えて、その効果がin vivoで相補DNA鎖の相互作用に特異的であることおよびドキソルビシン薬物動態または放出の差が見られた効果の原因となりえないことをさらに確認するために、実験を行った。具体的には、次のさらなる対照を試験した(表2を参照されたい):1)ドキソルビシンが封入されているがDNAとコンジュゲートしていないアルギネートの腫瘍内注射に加えて、DNAとコンジュゲートしているアルギネートおよびヒドラゾン連結ドキソルビシンのIV投与、2)ドキソルビシンが封入されているがDNAに結合していないアルギネートゲルの腫瘍内注射に加えて、遊離ドキソルビシンのIV投与。
腫瘍に直接注射したおよびIV投与によって送達した薬物の全用量をすべての群にわたって一定に保ち、同様にIV投与頻度も一定に保った。7週間の腫瘍成長後、薬物再負荷技術で処置した腫瘍は、いずれの対照条件における腫瘍より著しく小さかった(図5D)。腫瘍サイズの定量は、対照と比較して、薬物再負荷技術で処置した腫瘍のより小さいサイズを確証した(p<0.05 第1の2つの対照と比較して標的指向された、図5E)。このデータは、以前に腫瘍内投与した薬物送達デバイスに再充填するためのがん薬物補充物の全身投与が乳がんマウスモデルにおいて腫瘍サイズを低減したことを実証する。
(実施例5)
生体直交型官能基のヒドロゲルとの特異的結合
蛍光標識した生体直交型官能基(例えば、トランス−シクロオクテン(TCO)およびジベンゾシクロオクチン(DBCO)分子)のヒドロゲルへの結合特異性をin vitroで評価した。ポリマー、例えばアルギネートを、カルボジイミドケミストリーによってテトラジン(Tz)またはアジド(Az)いずれかで修飾した。核磁気共鳴(NMR)分析は、平均100個のTzまたはAz分子が各ポリマー(例えば、アルギネート)鎖に結合していることを明示し、これは、ポリマー1mg当たり400ナノモルの標的(例えば、生体直交型官能基、例えばTzまたはAz)に相当した。官能基、例えばTzまたはAzを、検出のために、蛍光部分、例えばCy7で標識した。
Cy7標識トランス−シクロオクテンは、テトラジン修飾アルギネートと特異的に結合したが、未修飾アルギネートとは結合しなかった(図10A、C)。同様に、蛍光DBCOは、アルギネート−アジドゲルに結合したが、未修飾アルギネートゲルとは殆ど相互作用しなかった(図10B、D)。このデータは、生体直交型官能基が、この官能基の対応する結合パートナーで修飾されたヒドロゲルと特異的に結合することを示す。
(実施例6)
生体直交型官能基はin vivoでゲルを標的にする
近IR(NIR)フルオロフォアで標識した生体直交型官能基がin vivoでゲルを標的にすることができるかどうかを判定するために、実験を行った。in vivoでゲルは、下肢虚血の動物モデルの疾患部位に滞留していた。50μLのテトラジン修飾、アジド修飾、または未修飾アルギネートゲルを、参照によって本明細書に組み込まれる、Chenら、J.Pharmaceutical research 24巻(2006年):258頁;およびSilvaら、J.Biomaterials 31巻(2010年):1235頁に記載されているのと同様の方法で、大腿動脈を結紮したマウスの肢の筋肉内に移植した。手術の24時間後、NIR標識DBCOまたはTCO分子を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。NIR標識小分子は、動物の系内を循環し、最初の24時間のうちに主として膀胱によって除去された(図16A〜B)。24時間後、蛍光は、修飾ゲル(例えば、Tz修飾ゲルまたはZa修飾ゲル)を移植した肢で観察されたが、標的認識モチーフ(例えば、TzまたはAz)がない対照ゲルでは観察されなかった(図11)。
筋肉内ゲルに送達された循環分子の用量を定量するために、アジド修飾ゲルをマウスの筋肉から単離し、消化した。ゲル上の標的分子の量を蛍光によって定量した。初回注射用量の6.5%に相当する平均106ピコモルの標的指向化合物が、下の表に示すように筋肉内疾患領域に局在した。
ゲルに標的指向された分子のこの数は、ゲル上の利用可能な全アジド部位の0.03%に相当し、これは、過剰な標的認識部位のため各ゲルについて複数回のゲル充填/補充が可能であることを明示している。このデータは、全身投与した生体直交型官能基が、前に投与した/移植した薬物送達デバイスの部位に蓄積することを示す。単回注射用量がゲル上の利用可能なアジド部位の約0.03%を標的にするので、このデバイスに3,300回まで補充することができる。例えば、図5Aのゲルは4回補充され、その一方で図12Aのゲルは1カ月の期間にわたり9回補充される。場合によっては、可逆的/切断可能な化学的性質に対して、トーホールド交換(参照によって本明細書に組み込まれるWO2012058488 A1)を利用してDNAとコンジュゲートしているナノ粒子のゲルとの結合を反転させる。
(実施例7)
in vivoでゲルに標的指向させ、補充するための生体直交型官能基の反復投与
損傷マウスの筋肉内ゲルに繰り返し標的指向させ、充填するために、複数回の血管内投与を行った。アジド修飾ゲル(例えば、アルギネート−Azゲル)を有する後肢虚血マウスにNIR標識DBCOを1カ月間、おおよそ3日毎に1回、反復投与した(図12A)。1カ月の時間経過にわたり、肢の蛍光は、フルオロフォア投与に対応して段階的に増加し(図12B)、各用量が同程度に蛍光を増加させた(図12C)。したがって、本明細書に記載の方法を使用するゲルホーミングが虚血の動物モデルにおいて果たされた。肢における蛍光の少しの、しかし有意ではない減少がIV注射後24〜48時間の間に観察された。これは、おそらくゲルから除去された未結合の残留フルオロフォアに起因した。このデータは、全身投与した薬物補充物が、補充物を投与するたびに、薬物送達デバイスの部位に蓄積することを明示している。全身投与した補充物によって同じデバイスに複数回再充填することができる。
(実施例8)
in vivoでの2カ所の別個のゲル部位への2つの異なる生体直交型官能基の標的指向化
2つの異なる生体直交型官能基、例えばDBCOおよびTCOが、それらのそれぞれの結合パートナー(すなわち、標的認識部分、例えば分子)に選択的にホーミングして、同じ動物における薬物デバイスの空間的分離を達成することができるかどうかを判定するために、実験を行った。マウスの2カ所の部位を使用した。第1の標的部位としての後肢を虚血させたマウスの後肢の筋肉内にテトラジン修飾ゲルを移植した。第2の標的部位としての同じマウスの乳房脂肪体にアジド修飾ゲルを移植した。Cy7標識DBCOとCy5標識TCOの混合物をゲル投与の24時間後に静脈内投与した。2つの生体直交型官能基は、効率的かつ特異的にそれらのそれぞれの疾患部位を標的にした(図13)。このデータは、2つの異なるタイプの薬物補充物の全身投与が、そのそれぞれの薬物送達デバイス部位での各タイプの薬物補充物の蓄積をもたらすことを示す。
(実施例9)
経口送達およびアルギネート−アジドヒドロゲルへの標的指向化
後肢虚血のマウスモデルを上に記載したように生じさせた。アジドで修飾されたアルギネートを含有するヒドロゲルをそのマウスの虚血部位の筋肉内に移植した。手術およびゲル移植の24時間後、マウスにCy7−DBCOを、例えば強制経口投与によって、経口投与した。経口投与後、1、30分、6および24時間の時点で、および1週間、毎日、マウスを撮像した。アルギネート移植部位でのおよび対側肢(対照肢)の鏡映位置での蛍光を定量した。経口投与したCy7−DBCOは、アジド修飾アルギネートヒドロゲルを標的にした。図14を参照されたい。これらのデータは、薬物補充物の経口送達が、経口投与した薬物のアルギネート薬物送達デバイス部位での蓄積をもたらすことを示す。
(実施例10)
アジドで修飾されたゲルへのDBCOの標的指向化
マウスの大腿におけるアジドで修飾された骨内ゲルまたは未修飾対照ゲルへの、IV注射した蛍光標識DBCOの標的指向化を示す、一組の画像を図23に示す。50μLのアジド修飾または未修飾アルギネートゲルをマウスの骨に骨内注射した。手術の24時間後、NIR標識DBCO分子を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。24時間後、蛍光は、修飾ゲル(例えば、Az修飾ゲル)を移植した肢で観察されたが、標的認識モチーフ(例えば、Az)がない対照ゲルでは観察されなかった。
図24に示すように、IV注射した蛍光標識DBCOは、マウスの右膝関節に注射した、アジドで修飾されたゲルを標的にした。50μLのアジド修飾アルギネートゲルをマウスの膝関節に注射した。手術の24時間後、NIR標識DBCO分子を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。24時間後、修飾ゲル(例えば、Az修飾ゲル)を移植した肢で蛍光が観察された。
図25に示すように、IV注射した蛍光標識DBCOは、マウスの腫瘍に注射した対照ゲルと比較して、アジドで修飾されたゲルを標的にした。図25の画像は、IV注射の24時間後に撮影した。ルイス肺癌(LLC)腫瘍をC57B6マウスにおいて誘導した。腫瘍が直径5〜8mmになったら、50μLのアジド修飾アルギネートゲルを腫瘍に注射した。腫瘍注射の24時間後、NIR標識DBCO分子(図26を参照されたい)を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。8時間後、蛍光は、修飾ゲル(例えば、Az修飾ゲル)を移植した腫瘍で観察されたが、標的認識モチーフ(例えば、Az)がない対照ゲルでは観察されなかった。
図28に示すように、IV注射した蛍光標識DBCOを、アジドで修飾されたゲルに対して、マウスの腫瘍内に注射した対照ゲルと比較して標的化した。図28の画像は、IV注射の24時間後に撮影した。MDA−MB−231乳がん腫瘍を、対照アルギネートまたはアルギネート−アジドゲルとともにマウスに注射した。ゲルの注射の30日後、マウスをCy7−DBCOを用いて静脈内で処置し、48時間後に動物の蛍光ライブイメージングによって動物を撮像した。腫瘍および対照アルギネートゲルを有するマウスは、腫瘍内にアルギネート−アジドゲルを有するマウスよりも有意に低い腫瘍に対する蛍光局在を示した。
アジド修飾ゲルによる小分子の捕捉、およびその捕捉後の加水分解による小分子のその後の放出を示す説明例を図26に示す。この例における分子は、加水分解性ヒドラゾンリンカーによってDBCOとコンジュゲートしているCy7フルオロフォアである。
図27Aに示すように、IV注射した小分子は、マウスの腫瘍に注射した、アジドで修飾されたゲルを標的にした。加水分解性ヒドラゾンリンカーによってDBCOとコンジュゲートしているCy7フルオロフォアである小分子は、その後放出され、その結果、Cy7蛍光シグナルが減少した。小分子の放出を明示する、腫瘍部位での経時(時間)的な小分子の定量を示す線グラフを図27Bに図示する。ルイス肺癌(LLC)腫瘍をマウスにおいて誘導した。腫瘍が直径5〜8mmになったら、50μLのアジド修飾アルギネートゲルを腫瘍に注射した。腫瘍注射の24時間後、NIR標識DBCO分子(図26を参照されたい)を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって4日にわたって動物をモニターした。図27Bは、Cy7フルオロフォアがゲルから切断され、腫瘍から排除されるにつれて経時的に蛍光が減少することを示す、IVフルオロフォア投与の24、48、72および96時間後の腫瘍蛍光の定量を示す。
(実施例11)
生体直交型官能基とカップリングしたドキソルビシンプロドラッグの合成および特性評価
ドキソルビシンを生体直交型官能基であるDBCOとカップリングしたプロドラッグ分子を合成するために実験を行った(図29A)。DBCO−マレイミド(5mg、Santa Cruz、sc−397265A)を、ジメチルホルムアミド(500μL)に溶解し、これに6.21μL エタンジチオール(Sigma 02390)を添加した。この反応物を10秒間ボルテックスし、10分間静置した。サンプルを、zorbax C18 5μm HPLCカラムにおいて5% アセトニトリル/95% TEAAから75% アセトニトリル/25% TEAAの勾配を使用したHPLCで10分間にわたって精製した。生成物に相当するHPLC画分を、乾燥状態まで回転蒸発させ(rot−evaped)、収率70%のDBCO−チオールをもたらした。
ドキソルビシン−EMCH(5.25mg MedKoo Biosciences 201550)を、525μL DMSOに溶解し、乾燥DBCO−チオールに添加した。この反応物を回し、DBCO−チオールを溶解させ、5分間静置した。サンプルを、zorbax C18 5μm HPLCカラムにおいて5% アセトニトリル/95% TEAAから75% アセトニトリル/25% TEAAの勾配を使用したHPLCで10分間にわたって精製した。生成物に相当するHPLC画分を乾燥状態まで凍結乾燥し、収率60%のプロドラッグを得た。
プロドラッグの定量は、プロドラッグを40% 2−ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンに溶解することによって行った。濃度を、498nmにおけるプロドラッグ溶液の吸光度を測定し、ドキソルビシンの吸光係数と比較することによって決定した。材料を、動物実験のために標準濃度まで希釈し、滅菌濾過し、等分し、凍結した。
活性ドキソルビシンは、加水分解によってプロドラッグから放出することができた(図29B)。ドキソルビシンプロドラッグの加水分解の動態は、異なるpH条件での加水分解反応の速度を調査することによって分析した。ドキソルビシンプロドラッグを、pH5.5〜pH7.5の異なるpH範囲のリン酸緩衝生理食塩水中に172nMの濃度で調製した(図29C)。プロドラッグの切断は、液体クロマトグラフィー/質量分析による、時間にわたる生成物ピークの積分を行うことによってモニターした。図29Cにおいて示されるように、プロドラッグの加水分解は、プロドラッグ溶液のpHがより低い場合に、よ速い速度で生じ、一方で、加水分解反応は、pHが増加した場合に遅延した。
遊離ドキソルビン(doxorubin)およびドキソルビシンプロドラッグについての細胞毒性アッセイを、がん細胞ルイス肺癌LLC1を使用して行った。LLC1細胞を、毒性実験の開始の24時間前に96ウェルプレートにプレーティングした。ドキソルビシンおよびプロドラッグを、0.02μM〜50μMの異なる濃度で、1Xリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に溶解した。これらの濃度の物(concentration)を、トリプリケートでがん細胞に添加し、1時間インキュベートした。インキュベート後、細胞をDMEMで2回洗浄し、細胞を24時間培養した。細胞を、10μL アラマーブルー溶液(Thermo Scientific 88951)を添加することによって代謝活性について1時間試験し、蛍光プレートリーダーで530/580 励起/発光スペクトルを読み取った。図29Dにおいて実証されるように、ドキソルビシンプロドラッグは、遊離ドキソルビシンよりも有意に低い毒性であった。
ドキソルビンは、加水分解されると、ドキソルビシンプロドラッグから放出され得ることが実証されたため、ドキソルビシンが薬物送達アジド修飾アルギネートヒドロゲルから放出することができることを次に分析した(図29E)。400μLのカルシウム架橋アジド修飾アルギネートヒドロゲルをプロドラッグと組み合わせ(0.14mg)、4時間混合した。50μLの結果として生じたヒドロゲル−プロドラッグコンジュゲートを、1.7mLチューブに注入し、1mL Tris−HCll溶液中でインキュベートした。溶液を毎日交換し、取り出したドキソルビシンを、除去された溶液の蛍光分光法によって測定した。アジド−アルギネートは、数週間の期間にわたるドキソルビシンの徐放を実証した(図29E)。
当業者は、慣用の実験を使用するだけで、本明細書中に記載される発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、確かめることができる。このような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。この出願全体にわたって引用されるすべての参考文献、特許および公開特許出願の内容が、本明細書中に参照によって組み込まれる。