JP2017081856A - 骨形成促進剤及び骨形成促進装置 - Google Patents

骨形成促進剤及び骨形成促進装置 Download PDF

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Abstract

【課題】骨形成を効果的に促進する骨形成促進剤を提供する。【解決手段】本発明の一実施形態に係る骨形成促進剤は、GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上を有効成分として含む。前記リガンドは、乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、グリコール酸、α−ヒドロキシカプロン酸、マレイン酸、酒石酸及びプロピオン酸からなる群より選択される1以上であってもよい。【選択図】図15

Description

本発明は、医薬品として有用な骨形成促進剤及び当該骨形成促進剤を利用する骨形成促進装置に関し、とりわけGPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上を有効成分として含有する骨形成促進剤に関する。
骨再生が必要な骨疾患の治癒には、骨形成を促進させることが重要である。骨形成の四大要素は、(1)細胞、(2)基質、(3)ミネラルイオン、(4)制御因子であり、このうち制御因子として、TGF−βスーパーファミリーに属する骨形成タンパク質(BMP)、デキサメタゾン、β−グリセロフォスフェート等が知られている(非特許文献1、2)。
従来、担体に担持された制御因子を含む組成物により骨形成を促進させるための技術が開発されてきた。例えば、特許文献1には、BMP、グリセリルトリアセテートに代表されるグリセロールエステル類、及び担体からなる組成物が開示され、当該担体としてポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)等の生分解性ポリマーが列挙されている。また、特許文献2には、骨芽細胞増進分子としてN−アセチルシステイン、及び担体からなる組成物が開示され、当該担体としてポリ乳酸、PLGA等の生分解性ポリマーが列挙されている。
また、ポリ乳酸以外のポリマーを担体として用いた技術としては、例えば、特許文献3が挙げられる。特許文献3では、制御因子としてケイ素を、担体として延伸性を備えた3−ヒドロキシ酪酸(β−ヒドロキシ酪酸)と4−ヒドロキシ酪酸(γ−ヒドロキシ酪酸)との共重合体を用いている。
一方、整形外科や歯科口腔外科分野における骨折部の整復用材料として、高い強度を有し、骨接合用プレート、ピン、ビス、スクリュー等に加工できる高分子量のポリ乳酸又はPLGAが開示されている(特許文献4)。また、特許文献5には、βリン酸三カルシウム多孔体からなる微小顆粒を保持する膜部材としてポリ乳酸、PLGA等が用いられている。
近年、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)群が同定され、その中の1つであるGPR(G Protein−coupled Receptor)81は脂肪細胞において特に多く認められるレセプターである。GPR81のリガンドが乳酸(特にはL−乳酸)であることは一般に知られているが、非特許文献3及び特許文献6によれば、GPR81のリガンドとしてL−乳酸以外にも多数の化合物が報告されている。非特許文献3及び特許文献6に記載のそれら化合物をまとめて列挙すると、D−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、グリコール酸、α−ヒドロキシカプロン酸、マレイン酸、酒石酸、プロピオン酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロフルオロジ酢酸、2−クロロプロピオン酸である。
特開2006−316057号公報 特表2009−544411号公報 特開2014−50441号公報 特開平1−198553号公報 特開2012−223444号公報 国際公開第2008/063321号
日本口蓋裂学会雑誌 Vol.16, No.4, p.169-179, 1991 日本再生歯科医学会誌 Vol.6, No.1, p.21-34, 2008 J.Biol.Chem.:Vol.284, No.5, p.2811-2822, 2009
しかしながら、従来、担体に担持された制御因子を含む組成物による骨形成促進方法は、制御因子に適合する担体の選択、制御因子の放出特性の制御、担体の生分解性等の技術的課題が多いものであった。
特に、乳酸に注目した場合に、従来の乳酸の利用方法は、上述のように、制御因子の担体又は骨整復用の部材としての利用であった。そして、本願の出願人が知る限り、乳酸そのものの作用に着目して、骨形成の促進について検討した事例は未だ報告されていない。
また、特許文献3においても、担体であるβ−ヒドロキシ酪酸とγ−ヒドロキシ酪酸との共重合体は骨形成には関与しないことが比較例1において示されている。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、骨形成を効果的に促進する骨形成促進剤及び骨形成促進装置を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る骨形成促進剤は、下記のとおりである。
[1]GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上を有効成分として含むことを特徴とする骨形成促進剤。
[2]前記リガンドは、乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、グリコール酸、α−ヒドロキシカプロン酸、マレイン酸、酒石酸及びプロピオン酸からなる群より選択される1以上である上記[1]記載の骨形成促進剤。
[3]前記リガンドは、乳酸である上記[1]又は[2]記載の骨形成促進剤。
[4]前記前駆体は、前記リガンド又は前記アゴニストを含む成分の重合体である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の骨形成促進剤。
[5]前記重合体は、次の(a)及び/又は(b)を満たす:(a)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が300〜2000の範囲内である;(b)ゲル浸透クロマトグラフィー法による測定で得られるクロマトグラムにおいて、全面積に対する、ポリスチレン換算の分子量250〜2000の範囲の面積の割合が50%〜100%の範囲内である;上記[4]記載の骨形成促進剤。
[6]流動性組成物である上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の骨形成促進剤。
[7]注入用組成物である上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の骨形成促進剤。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る骨形成促進装置は、下記のとおりである。
[8]上記[6]又は[7]に記載の骨形成促進剤を収容するリザーバ部と、前記リザーバ部の前記骨形成促進剤を患者の患部に注入する注入部と、を備えたことを特徴とする骨形成促進装置。
本発明によれば、骨形成を効果的に促進する骨形成促進剤及び骨形成促進装置が提供される。
骨芽細胞におけるGPR81の検出結果を示す(ウェスタンブロット法)。 試験1においてL−乳酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験1においてL−乳酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験2においてα−ヒドロキシ酪酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験2においてα−ヒドロキシ酪酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験3においてL−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸によるコラーゲン合成促進効果をウェスタンブロットで確認した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験3においてL−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸によるI型コラーゲン合成促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験3においてL−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸によるIII型コラーゲン合成促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験4においてL−乳酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(ST2細胞)。 試験4においてL−乳酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(ST2細胞)。 試験5においてMC3T3−E1細胞におけるMCT1の存在を確認した結果を示す。 試験5においてMC3T3−E1細胞におけるMCT1の存在を定量的に評価した結果を示す。 試験5においてCHC存在下でのL−乳酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験5においてCHC存在下でのL−乳酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験6−1においてcAMP濃度を増加させたMC3T3−E1細胞に対するL−乳酸の石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す。 試験6−1においてcAMP濃度を増加させたMC3T3−E1細胞に対するL−乳酸の石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す。 試験6−2においてGPR81-shRNA細胞に対するL−乳酸の石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す。 試験6−2においてGPR81-shRNA細胞に対するL−乳酸の石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す。 試験7においてα−ヒドロキシイソ酪酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験7においてα−ヒドロキシイソ酪酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験8においてグリコール酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験8においてグリコール酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験9においてマレイン酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験9においてマレイン酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(MC3T3−E1細胞)。 試験10においてL−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸による石灰化促進効果をAlizarin Red S染色で確認した結果を示す(SaM−1細胞)。 試験10においてL−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸による石灰化促進効果を定量的に評価した結果を示す(SaM−1細胞)。 試験11においてゲル浸透クロマトグラフィー法による測定で得られたクロマトグラムを示す。 試験11における重合体を用いた動物実験で得られたCT画像を示す。 試験11における重合体を用いた動物実験でCT画像の骨再生部分のCT値を評価した結果を示す。 試験12において用いた重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を示す。 試験12における重合体を用いた動物実験でpQCT解析により算出されたBV/TV値を示す。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。また、以下の説明において、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、「GPC法」という。)によって得られる分子量、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、特に指摘しない限り、ポリスチレン換算のものを意味する。
本発明の発明者らは、骨形成促進に関わる種々の制御因子について研究する中で、骨芽細胞等の細胞培養試験において、ヒトの静脈血中における正常値の上限より高い濃度の乳酸又はα−ヒドロキシ酪酸の存在下で、石灰化が促進すること及びコラーゲンの産生量が増加することを見出した。そして、これら石灰化促進及びコラーゲン産生量増加の作用が、乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸がリガンドとして作用するGPR81を介在したものであることを突き止めた。さらに研究を進めた結果、GPR81のリガンドが骨形成における制御因子として作用することを見出した。本発明は、これら独自の知見に基づき為されたものである。すなわち、本発明は、骨形成促進に関し、GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体が有する未知の属性・機能・作用を見出したことに基づく発明である。
次に、骨芽細胞においてGPR81が存在することを確認した実験を紹介する。この実験では、骨芽細胞としてマウス骨芽細胞株MC3T3−E1を用い、1次抗体として抗マウスGPR81抗体(SIGMA社製、Anti-Mouse Gpr81-s296)を用い、ウェスタンブロット法で検出した。
まず、通常の方法でGPR81の検出を試みたが、非特異的なバンドが多数検出された。そこで、GPR81をノックアウトしたMC3T3−E1細胞を対照として再度実験を行った。その結果、図1に示すように、39.5kDa付近において、Wild Typeのレーン1ではバンドが検出されたのに対して、ノックアウト(GPR81 Knockout)のレーン2ではバンドが検出されなかった。この結果より、MC3T3−E1細胞においてGPR81が存在することが確認された。なお、MC3T3−E1細胞においてGPR81が存在することは、後述の実施例で説明する各種試験によっても直接・間接的に確認された。
本実施形態に係る骨形成促進剤(以下、「本剤」という。)は、GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上を有効成分として含む。すなわち、本剤は、患者の骨形成が必要な患部に投与されることにより、上記有効成分の作用によって、当該患部において骨形成を促進する。
このため本実施形態は、GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上の、骨形成促進剤の有効成分としての使用を含む。このように、本剤は、骨形成が必要な骨疾患を治療するために使用される。すなわち、本実施形態は、本剤を、患者の骨形成が必要な患部(例えば、骨欠損部)に投与することにより、当該患部における骨形成を促進することを含む、骨疾患の治療方法をも含む。
本剤に含まれるGPR81のリガンドは、本剤が投与される生体内(例えば、血液中)に本来的に存在し、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞のGPR81に作用して骨形成効果を示す物質である。すなわち、このリガンドは、例えば、培養骨芽細胞に投与されることで、当該培養骨芽細胞における石灰化を促進する物質である。より具体的に、例えば、ヒト又はマウスの骨芽細胞培養系において、1mM〜80mMの範囲内の所定濃度で当該骨芽細胞における石灰化を促進する物質である。本剤は、1種のリガンドを含むこととしてもよいし、2種以上のリガンドを含むこととしてもよい。
GPR81のリガンドは、上述のとおり、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞のGPR81に作用して骨形成効果を示す物質であれば特に限られないが、例えば、乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、グリコール酸、α−ヒドロキシカプロン酸、マレイン酸、酒石酸及びプロピオン酸からなる群より選択される1以上であることが好ましく、乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、グリコール酸及びα−ヒドロキシカプロン酸からなる群より選択される1以上であることがより好ましい。リガンドとしては、乳酸が好ましく用いられ、生体内に存在するL−乳酸が特に好ましく用いられる。なお、本実施形態において、「乳酸」との用語は、特に断らない限り、L−乳酸、D−乳酸、及びDL−乳酸を総称する用語として使用される。
本剤に含まれるGPR81のアゴニストは、当該GPR81のリガンドではないが、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞のGPR81に作用して骨形成効果を示す、上記リガンドの類似体である。リガンドの類似体は、例えば、GPR81に作用するための分子構造(具体的には、例えば、GPR81に対する結合部分の分子構造)として、当該リガンドの分子構造に類似した構造を有する物質である。より具体的に、リガンドの類似体は、例えば、当該リガンドの分子構造に1以上の原子又は化学基が付加された分子構造、又は当該リガンドの分子構造に含まれる1以上の原子又は化学基が置換又は欠失された分子構造を有する物質である。リガンドの類似体は、当該リガンドの分子構造に化学修飾(例えば、当該リガンドの分子構造に対する、1以上の原子又は化学基の付加、置換又は欠失を含む化学修飾)を施すことにより合成された物質(リガンドの誘導体)であることとしてもよい。本剤は、1種のアゴニストを含むこととしてもよいし、2種以上のアゴニストを含むこととしてもよい。
本剤に含まれる前駆体は、GPR81のリガンド又はアゴニストの前駆体である。この前駆体は、生体内(具体的には、患者の患部)においてリガンド又はアゴニストを放出する物質である。前駆体は、例えば、生体内で分解されてリガンド又はアゴニストを放出する物質である。この場合、前駆体は、加水分解されてリガンド又はアゴニストを放出する物質であってもよい。これらの前駆体は、生体内において、リガンド又はアゴニストを徐放することにより、骨形成を効果的に促進する。リガンドの前駆体は、当該リガンドを放出するものであれば特に限られず、さらにアゴニスト等の他の成分を放出するものであってもよい。また、アゴニストの前駆体は、当該アゴニストを放出するものであれば特に限られず、さらにリガンド等の他の成分を放出するものであってもよい。
前駆体は、リガンド又はアゴニストを含む成分の重合体であることとしてもよい。この重合体は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。すなわち、重合体は、1種のリガンド又はアゴニストから構成される成分の重合体(単独重合体)であってもよいし、1種のリガンド又はアゴニストと他の1種以上の成分との共重合体であってもよい。共重合体は、2種以上のリガンド及び/又はアゴニストを含む成分の重合体であってもよい。
具体的に、共重合体は、2種以上のリガンドを含む成分の重合体であってもよいし、2種以上のアゴニストを含む成分の重合体であってもよいし、1種以上のリガンドと1種以上のアゴニストとを含む成分の重合体であってもよい。共重合体は、その構成成分の全てがGPR81のリガンド及び/又はアゴニストであることが好ましい。共重合体の種類は特に限られず、例えば、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれであってもよい。
より具体的に、共重合体は、2種以上のリガンド及び/又はアゴニストを含む成分の重合体であれば特に限られないが、例えば、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸とポリエチレングリコールとの共重合体、乳酸−グリコール酸共重合体とポリエチレングリコールとの共重合体、乳酸−εカプロラクトン共重合体、乳酸−εカプロラクトン共重合体とポリエチレングリコールとの共重合体、乳酸−グリコール酸−εカプロラクトン共重合体、乳酸−グリコール酸−εカプロラクトン共重合体とポリエチレングリコールとの共重合体、及びグリコール酸−εカプロラクトン共重合体からなる群より選択される1以上であってもよい。
重合体としては、乳酸を含む成分の重合体が好ましく使用され、上述のような乳酸を含む成分の共重合体や、単独重合体であるポリ乳酸が好ましく使用される。L−乳酸は生体内に存在するため、当該L−乳酸を含む成分の重合体(例えば、ポリL−乳酸及び/又はL−乳酸を含む成分の共重合体)が特に好ましく使用される。
リガンド又はアゴニストを含む成分の重合体は、上述のとおり、生体内(具体的には、患者の患部)において分解されて当該リガンド又はアゴニストを放出する重合体であることが好ましい。すなわち、重合体は、加水分解されてリガンド又はアゴニストを放出する重合体であってもよい。分解可能(例えば、加水分解可能)な重合体は、生体内において、リガンド又はアゴニストを徐放することにより、骨形成を効果的に促進する。したがって、重合体は、患者の患部において、リガンド又はアゴニストを持続的に放出する分解能を有することが好ましい。すなわち、上述のとおり、骨芽細胞等の細胞培養試験において、ヒトの静脈血中における正常値の上限より高い濃度で、GPR81のリガンドである乳酸又はα−ヒドロキシ酪酸が存在することによって、石灰化及びコラーゲン産生が促進されることから、生体内、すなわち患者の患部においては、当該リガンドを恒常的に比較的高い局所濃度で存在させることが効果的と考えられる。なお、リガンド及びアゴニストは、その種類によって、十分な骨形成促進効果を示す濃度が異なるため、重合体の組成や、本剤の患部への投与量等を適宜調整することが好ましい。リガンドを含む成分の重合体は、分解されて当該リガンドを放出するものであれば特に限られず、さらにアゴニスト等の他の成分を放出するものであってもよい。また、アゴニストを含む成分の重合体は、分解されて当該アゴニストを放出するものであれば特に限られず、さらにリガンド等の他の成分を放出するものであってもよい。
重合体の重合度は2以上であれば特に限られない。すなわち、重合体は、重合度が2〜20程度のオリゴマーであってもよいし、重合度が20超のポリマーであってもよい。重合度が比較的小さい重合体は、生体内において比較的分解されやすいため、リガンド及び/又はアゴニストを効果的に徐放することができる。
重合体における、GPR81のリガンド及び/又はアゴニストに由来する構成成分の含有量(当該重合体がリガンドに由来する構成成分とアゴニストに由来する構成成分とを含む場合は、当該リガンドに由来する構成成分の含有量と、当該アゴニストに由来する構成成分の含有量との合計)は、本剤による骨形成促進効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、70モル%以上であることとしてもよく、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
上述のように重合体が、GPR81のリガンド及び/又はアゴニストに由来する構成成分を主要構成成分として含む場合、当該重合体を有効成分として含む本剤を、患者の骨形成の促進が必要な骨疾患等の部位又はその近傍に投与することによって、骨形成を促進し、効果的な骨再生を図ることができる。
重合体は、次の(a)及び/又は(b)を満たすこととしてもよい:(a)GPC法により測定される数平均分子量が300〜2000の範囲内である;(b)ゲル浸透クロマトグラフィー法による測定で得られるクロマトグラムにおいて、全面積に対する、分子量250〜2000の範囲の面積の割合が50%〜100%の範囲内である。
また、上記(a)の条件は、GPC法により測定される数平均分子量が300〜1500の範囲内であり、上記(b)の条件は、GPC法による測定で得られるクロマトグラムにおいて、全面積に対する、分子量250〜2000の範囲の面積の割合が60%〜100%の範囲内であることが好ましい。
また、上記(a)の条件は、GPC法により測定される数平均分子量が300〜1000の範囲内であり、上記(b)の条件は、GPC法による測定で得られるクロマトグラムにおいて、全面積に対する、分子量250〜2000の範囲の面積の割合が70%〜100%の範囲内であることが特に好ましい。
上記(a)及び/又は(b)を満たす重合体を有効成分として含む本剤は、骨形成促進が必要な部位又はその近傍に設置された場合において、当該重合体の分解によって、骨形成に資するリガンド及び/又はアゴニストを持続的に供給する(徐放する)ことができるという点で好ましい。
また、重合体は、GPC法により測定される数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率として算出される分子量分布(Mw/Mn)が、1.1〜3.0の範囲内であることが好ましい。
なお、本実施形態において、GPC法による測定は、以下の条件で行う。
・測定装置:高速GPC装置 HLC−8120(東ソー株式会社製)
・GPCカラム:TSKgel G6000HXL、G5000HXL、G4000HXL、G2500HXL、G1000HXL、TSK guard column HXL-H(いずれも東ソー株式会社製、TSK guard column HXL-H以外は7.8mmI.D.×30cmL)
・ポリスチレン基準物質:F-128(1.09×106)、F-80(7.06×105)、F-40(4.27×105)、F-20(1.90×105)、F-10(9.64×104)、F-4(3.79×104)、F-2(1.81×104)、F-1(1.02×104)、A-5000(5.97×103)、A-2500(2.63×103)、A-1000(1.01×103)、A-500(5.0×102)(いずれも東ソー株式会社製) ※( )内は分子量の代表的値
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相:THF
・流量:0.8mL/min
本剤の形状は特に限られず、固形状、ゲル状、液状等、どのような形状であってもよいが、本剤は、流動性組成物であることが好ましい。すなわち、この場合、本剤は、流動性を有するため、患者の患部に投与する際の操作性に優れ、その結果、当該患部における骨形成を効果的に促進する。流動性組成物である本剤は、例えば、有効成分として、流動性を有する、GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上を含み、全体としても流動性を有する組成物であることとしてもよいし、有効成分として、流動性を有しない、GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上を含み、全体としては流動性を有する組成物(例えば、当該流動性を有しない有効成分と、流動性を有する他の成分(溶媒等)との混合物)であることとしてもよい。
具体的に、本剤は、例えば、リガンド又はアゴニストを含む成分の重合体を有効成分として含む流動性組成物であることとしてもよい。この場合、本剤は、患者の患部に投与する際の操作性に優れ、且つ当該患部において、リガンド及び/又はアゴニストを効果的に徐放することにより、骨形成を効果的に促進する。
さらに、本剤は、上記(a)及び/又は(b)を満たす、リガンド又はアゴニストを含む成分の重合体等、それ自身が流動性を有する重合体を有効成分として含む流動性組成物であることとしてもよい。
ただし、本剤は、上述のとおり、それ自身が流動性を有しない重合体を有効成分として含む流動性組成物であってもよい。具体的に、本剤は、固形状の重合体の微粒子を有効成分として含む流動性組成物(例えば、当該固形状の重合体の微粒子と、他の液状成分(例えば、溶媒)とを含む懸濁液である流動性組成物)であってもよい。
本剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述した有効成分以外の成分を含むこととしてもよい。具体的に、本剤は、薬理学的に許容される各種の材料、例えば、担体、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤及び骨補填材からなる群より選択される1以上をさらに含んでもよい。骨補填材は特に限られないが、例えば、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウムセメント及びβ−リン酸三カルシウムからなる群より選択される1以上が使用されてもよい。
本剤の剤形は、当該本剤に含まれる有効成分の特性や、当該本剤の投与方法等の条件に応じて適宜設計されれば特に限られず、例えば、液剤(溶液、懸濁液、エマルジョン等を含む)、注射剤、散剤、顆粒剤、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、カプセル剤、徐放剤、リポソーム製剤であることとしてもよい。
本剤を患者の骨形成の促進が必要な部位に投与する方法として、例えば、注射器等の注入器具を使用して当該部位に本剤を注入する方法、及び/又は切開された当該部位に本剤を埋め込む方法が挙げられる。また、状況に応じて、骨形成の促進が必要な部位の近傍に投与してもよい。患者に対する負担を軽減する観点からは、切開を伴わない注入による投与方法を用いることが望ましい。
この点、本剤は、注入用組成物であることが好ましい。注入用組成物である本剤の剤形は、ゲル状、液状又は懸濁液が好ましい。すなわち、本剤は、注入用の流動性組成物であることが好ましい。この場合、本剤は、上述した流動性組成物であって、且つ患者の患部に注入される組成物である。具体的に、本剤は、例えば、それ自身が流動性を有する重合体を有効成分として含む、ゲル状又は液状の注入用流動性組成物であることとしてもよい。また、本剤は、例えば、固形状の重合体(それ自身は流動性を有しない重合体)の微粒子を含む懸濁液である、注入用流動性組成物であることとしてもよい。
また、本実施形態は、流動性組成物又は注入用組成物である本剤を収容するリザーバ部と、当該リザーバ部の当該本剤を患者の患部に注入する注入部と、を備えた骨形成促進装置(以下、「本装置」という。)を含む。すなわち、この場合、本装置を用いた注入により、本剤を患者の患部に投与する。
本装置を用いた投与における本剤の供給方法は、患部における骨形成が促進される限りにおいて、連続的供給であってもよいし、間欠的供給であってもよい。すなわち、本装置が、本剤を収容するタンク又はバッグを含むリザーバ部と、一方端が当該リザーバ部に接続され、他方の先端部に注射針等の挿入部を備えた送液管を含む注入部とを備える場合、当該注射針を患部に挿入して、重力を利用した自然落下により、本剤を連続的に当該患部に供給することとしてもよい。
また、本装置が、さらに輸液ポンプ等の送液機器を含む注入部を備える場合には、当該送液機器を作動させることにより、本剤を連続的に又は間欠的に当該患部に供給することとしてもよい。
注入部は、患部における本剤の拡散度、本剤の供給方法等の諸条件を考慮して、形状、材質等を適宜選択することが望ましい。例えば、ノズルの先端にスポンジ状のものを取り付けてもよい。先端部を長期に体内に留置するときは、生分解性の材質のものを用いてもよい。本装置に用いる各機器は、医療用のものから選択することが好ましい。また、注入時に必要に応じて適度に加温することも好ましい。
本剤の作用機序の詳細は明らかではないが、後述の実施例で示すように、GPR81のリガンド、アゴニスト又はこれらの前駆体が骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞に作用することによって、石灰化が促進されるものと推定される。したがって、本剤は、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞に作用し、石灰化を促進する化合物を有効成分として含有する骨形成促進剤であって、当該化合物がGPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上であることを特徴とするものである、ともいえる。骨芽細胞に分化し得る細胞に関しては、GPR81のリガンド、アゴニスト又はこれらの前駆体が当該細胞の分化・成熟にも関与している可能性が考えられる。ここで、骨芽細胞に分化し得る細胞としては、骨芽細胞への分化能を有する細胞であれば特に限られず、例えば、骨芽前駆細胞、間葉系幹細胞、間質細胞及び筋芽細胞からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例においては、特に断らない限り%は全て質量%を示す。また、以下に示すグラフにおいて、「*」は有意水準5%未満、「**」は有意水準1%未満、「***」は有意水準0.1%未満での有意差を示す(Studentのt検定)。以下に示すグラフにおいて比較対象の図示が無い場合は、Control群との間に有意差があったことを示す。
[試験1:細胞培養試験/石灰化促進/L−乳酸/MC3T3−E1細胞]骨芽細胞として、マウス骨芽細胞株MC3T3−E1を用いて、L−乳酸が石灰化に及ぼす影響について検討した。試験には、24ウェルプレートを用い、1ウェル当たりの細胞数は、1×10個とした。
培地として、50μg/mLのアスコルビン酸と、10mMのβ-グリセロリン酸と、10mMのHEPESとを添加したα−MEMを用いた。この培地に、L−乳酸を終濃度が40mMとなるように添加するとともに、pHを、インキュベーター内での5%COの気相下で平衡化した時に、血中の正常範囲である7.4になるように10N水酸化ナトリウムで調整後、10%ウシ胎児血清を添加して使用した(以下の試験でも同様)。なお、L−乳酸の40mMという濃度は、ヒトの静脈血中におけるL−乳酸の正常値上限である2mM(18mg/dL)よりも高濃度である。
マルチウエル培養プレート(24well)の各ウェル内の骨芽細胞における石灰化部分を、培養21日後にはAlizarin Red S染色により、また、培養24日後にはvon Kossa染色により、それぞれ1ウェルあたりの染色強度で評価した。一方、比較例として、L−乳酸以外の有機酸の作用を調べるため、乳酸脱水素酵素によって乳酸と相互変換の関係にあるピルビン酸(終濃度40mM)をL−乳酸に代えて添加した以外は同様にして調製された培地も使用した。また、他の比較例として、L−乳酸及びピルビン酸のいずれも添加しない以外は同様にして調製された培地(Control)も使用した(以下の試験でも同様)。
図2Aには、石灰化部分を染色した結果を示す。図2Bには、図2Aに示すAlizarin Red S染色された石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す(各群の試験数は3個)。この定量化は、染色後のウェルをデジタルカメラで撮影して得られた写真を、デンシトメーターで数値化することにより行った。図2Bにおいて、縦軸は、Controlを1としたときの相対値である(以下の同様のグラフにおいても同じ)。
図2A及び図2Bより、L−乳酸添加群(LA)ではControl群に比べて有意に高い石灰化促進が認められた。すなわち、MC3T3−E1細胞において、L−乳酸が石灰化を促進することが確認された。これに対し、ピルビン酸添加群(PA)ではむしろ石灰化が抑制された。
[試験2:細胞培養試験/石灰化促進/α−ヒドロキシ酪酸/MC3T3−E1細胞]培地にL−乳酸に代えてα−ヒドロキシ酪酸を添加した以外は、試験1と同様の条件でMC3T3−E1細胞を培養した。培地におけるα−ヒドロキシ酪酸の終濃度は、10mM、20mM、40mMとした。また、ポジティブコントロールとして、試験1と同様に、L−乳酸を終濃度40mMで添加した培地を使用してMC3T3−E1細胞を培養した(L−乳酸添加群)。培養21日後に石灰化部分をAlizarin Red S染色にて評価した(以下の試験では、同様に、石灰化の評価として、Alizarin Red S染色を用いた。)。
図3Aには、石灰化部分を染色した結果を示す。図3Bには、図2Bと同様に、図3Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。図3A及び図3Bより、α−ヒドロキシ酪酸(α−HB)の40mM添加群では、L−乳酸添加群(LA)と同等の高い石灰化促進が認められた。すなわち、MC3T3−E1細胞において、L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸が石灰化を促進することが確認された。
[試験3.細胞培養試験/コラーゲン合成/L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸/MC3T3−E1細胞]MC3T3−E1細胞において、L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸がコラーゲン合成に及ぼす影響について検討した。試験には、6ウェルプレートを用い、1ウェル当たりの細胞数を4×10個とした以外は、試験1と同様の条件で試験を行った。なお、L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸の終濃度はそれぞれ40mMとした。
L−乳酸又はα−ヒドロキシ酪酸の添加12日後のコラーゲン発現量をウェスタンブロット法により調べた。なお、GAPDHをloading controlとして用いた。
図4Aには、ウェスタンブロット法で得られたバンドの画像を示す。図4Bには、図4Aに示すI型コラーゲンのバンドを定量化した結果を示す。図4Cには、図4Aに示すIII型コラーゲンのバンドを定量化した結果を示す。
図4A、図4B及び図4Cより、L−乳酸添加群(LA)及びα−ヒドロキシ酪酸添加群(α−HB)のいずれにおいても、Control群に比べて、I型コラーゲン、及びI型コラーゲン線維形成の足場として先行して合成されるIII型コラーゲンの発現量が有意に高かった。この結果より、L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸がそれぞれ骨芽細胞によるコラーゲン合成を促進することが確認された。
骨組織においては特にI型コラーゲンが多く存在し、コラーゲンが石灰化の基質になるなど骨形成においてコラーゲンが重要な役割を果たしていることが知られている。上述の結果より、L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸による石灰化機序の1つとして、コラーゲン合成の促進が寄与しているものと考えられた。
[試験4:細胞培養試験/石灰化促進/L−乳酸/ST2細胞]MC3T3−E1細胞に代えて、当該MC3T3−E1細胞より未分化なマウス骨髄間質細胞株ST2を用いた以外は試験1と同様の条件で試験を行った。ただし、ピルビン酸添加の試験例は設けなかった。また、ST2細胞は、MC3T3−E1細胞に比べると石灰化速度が遅いため、添加40日後に石灰化を評価した。
図5Aには、石灰化部分をAlizarin Red S染色した結果を示す。図5Bには、図5Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。図5A及び図5Bより、ST2細胞においても、L−乳酸添加群(10mM、20mM、40mM)において、Control群に比べて有意に高い石灰化促進が認められた。この結果より、骨芽細胞だけでなく、骨芽細胞に分化し得る細胞においても、L−乳酸によって石灰化が促進されることが確認された。
[試験5&6:細胞培養試験/骨芽細胞における石灰化促進の作用機序の検証]骨芽細胞に乳酸が作用する経路として、MCT1(Monocarboxylate Transporter 1)とGPR81とがある。そこで、MCT1及びGPR81のいずれが石灰化促進に関与しているかについて検証した。
[試験5:MCT1に関する検証]まず、MC3T3−E1細胞におけるMCT1の存在を確認するために、ウェスタンブロットを行った。図6Aには、ウェスタンブロット法で得られたバンドの画像を示す。図6Bには、MC3T3−E1細胞におけるMCT遺伝子発現量を逆転写後にリアルタイムPCR(RT−qPCR)にて定量化した結果を示す。図6A及び図6Bに示すように、MC3T3−E1細胞においてMCT1の存在が確認された。
次に、MCT1のインヒビターであるCHC(α-Cyano-4-hydroxycinnamic acid)をMC3T3−E1細胞に作用させた以外は、試験1と同様の条件でMC3T3−E1細胞を培養し、L−乳酸添加21日後にAlizarin Red S染色を行った。なお、L−乳酸の終濃度は40mMとした。
図7Aには、L−乳酸添加21日後に石灰化部分をAlizarin Red S染色した結果を示す。図7Bには、図7Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。図7A及び図7Bより、L−乳酸による石灰化促進効果のCHC添加による阻害は小さかった。よって、L−乳酸による石灰化促進効果は、MCT1を介したものである可能性が小さいことが示唆された。
[試験6−1:cAMPを用いたGPR81に関する検証]GPR81に乳酸が作用すると、細胞内ではAdenylyl Cyclase活性の低下によりATPからのcAMPへの代謝が抑制され、その結果として細胞内cAMP濃度が低下することが知られている。そこで、cAMPとしてcAMPの細胞膜透過型アナログであるCPT−cAMPを用いることにより細胞内cAMP濃度を維持させた場合に、乳酸による石灰化促進作用が減弱される可能性について検証した。すなわち、MC3T3−E1細胞内にCPT−cAMPを導入した後、試験1と同様の条件でMC3T3−E1細胞を培養した。なお、L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸の終濃度は、それぞれ40mMとした。
図8Aには、L−乳酸又はα−ヒドロキシ酪酸の添加21日後に石灰化部分をAlizarin Red S染色した結果を示す。図8Bには、図8Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。
図8A及び図8Bより、CPT−cAMPを導入した系において、L−乳酸添加群(LA)及びα−ヒドロキシ酪酸添加群(α−HB)の石灰化促進効果はControl群よりも有意に低かった。
[試験6−2:GPR81の発現減少による検証]試験5及び試験6−1によって、L−乳酸による石灰化促進効果はGPR81を介したものである可能性が示唆されたが、さらにGPR81の関与を確かめるため、ドキシサイクリン(Dox)により制御されるRNA干渉法を用いて検証した。すなわち、DoxによってGPR81に対するshRNAを発現させるためのshRNA発現ベクターを構築し、これをMC3T3−E1細胞に導入し、shRNAが安定発現するクローン細胞株(GPR81−shRNA細胞)を作製した。得られたGPR81−shRNA細胞は、Dox添加時にのみGPR81の発現が低下する反応を示すことも確認した。
GPR81−shRNA細胞を用いて、Doxの存在下又は非存在下におけるL−乳酸による石灰化促進効果について、試験1と同様の条件で試験を行った。なお、L−乳酸の終濃度は40mMとした。
図9Aには、L−乳酸の添加21日後に石灰化部分をAlizarin Red S染色した結果を示す。図9Bには、図9Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。
図9A及び図9Bより、Dox非存在下のL−乳酸添加群(Dox:−、LA:+)では有意な石灰化促進効果が認められた。これに対し、Dox存在下のL−乳酸添加群(Dox:+、LA:+)では石灰化促進効果が認められなかった。
試験5、試験6−1及び試験6−2の結果より、L−乳酸による石灰化促進は、MCT1を介したL−乳酸の細胞内への取り込みではなく、L−乳酸がGPR81に作用して起こったものであることが確認された。
[試験7:細胞培養試験/石灰化促進/α−ヒドロキシイソ酪酸/MC3T3−E1細胞]L−乳酸に代えてα−ヒドロキシイソ酪酸を使用した以外は試験1と同様の条件でMC3T3−E1細胞を培養した。α−ヒドロキシイソ酪酸の終濃度は、10mM、20mM、40mM又は80mMとした。また、ポジティブコントロールとして、L−乳酸添加群(終濃度:40mM)についても試験を行った。
図10Aには、α−ヒドロキシイソ酪酸又はL−乳酸の添加21日後に石灰化部分をAlizarin Red S染色した結果を示す。図10Bには、図10Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。
図10A及び図10Bより、20mM〜80mMのα−ヒドロキシイソ酪酸添加群(α−Hydroxyisobutyric Acid)において、L−乳酸添加群(LA)と同様、Control群よりも有意な石灰化促進効果が認められ、当該石灰化促進効果は、特に40mMにおいて顕著であった。
[試験8:細胞培養試験/石灰化促進/グリコール酸/MC3T3−E1細胞]L−乳酸に代えてグリコール酸を使用した以外は試験1と同様の条件でMC3T3−E1細胞を培養した。グリコール酸の終濃度は、10mM、20mM、40mM又は80mMとした。また、ポジティブコントロールとして、L−乳酸添加群(終濃度:40mM)についても試験を行った。
図11Aには、グリコール酸又はL−乳酸の添加21日後に石灰化部分をAlizarin Red S染色した結果を示す。図11Bには、図11Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。
図11A及び図11Bより、10mM及び20mMのグリコール酸添加群(Glycolic Acid)において、L−乳酸添加群(LA)と同様、Control群よりも有意な石灰化促進効果が認められ、当該石灰化促進効果は、特に20mMにおいて顕著であった。
[試験9.細胞培養試験/石灰化促進/マレイン酸/MC3T3−E1細胞]L−乳酸に代えてマレイン酸を使用した以外は試験1と同様の条件でMC3T3−E1細胞を培養した。マレイン酸の終濃度は、0.63mM、1.25mM、2.5mM又は5mMとした。また、ポジティブコントロールとして、L−乳酸添加群(終濃度:40mM)についても試験を行った。
図12Aには、マレイン酸又はL−乳酸の添加21日後に石灰化部分をAlizarin Red S染色した結果を示す。図12Bには、図12Aに示す石灰化部分における染色の強さを定量化した結果を示す。図12A及び図12Bより、1.25mM、2.5mM及び5mMのマレイン酸添加群(Maleic Acid)において、L−乳酸添加群(LA)と同様、Control群よりも有意な石灰化促進効果が認められた。
[試験10:細胞培養試験/石灰化促進/L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸/SaM−1細胞]骨芽細胞として、ヒト骨芽細胞株SaM−1を用いて、L−乳酸及びα−ヒドロキシ酪酸がヒト骨芽細胞における石灰化に及ぼす影響について検討した。試験には、24ウェルプレートを用い、1ウェル当たりの細胞数は、3×10個とした。
なお、SaM−1細胞は、東京都老人総合研究所の腰原康子氏が樹立したヒト骨芽細胞株である。本試験では、愛知学院大学歯学部薬理学の戸苅彰史氏より分与されたSaM−1細胞を使用した。
培地として、50μg/mLのアスコルビン酸と、10mMのβ-グリセロリン酸と、10mMのHEPESとを添加したα−MEMを用いた。この培地に、L−乳酸又はα−ヒドロキシ酪酸を終濃度が20mM又は40mMとなるように添加するとともに、pHを、インキュベーター内での5%COの気相下で平衡化した時に、血中の正常範囲である7.4になるように10N水酸化ナトリウムで調整後、10%ウシ胎児血清を添加して使用した。
図13Aには、石灰化部分をAlizarin Red S染色した後の培養SaM−1細胞の位相差顕微鏡写真を示す。図13Bには、図13Aに示す位相差顕微鏡画像において石灰化部分を示すノズール(nodule)の数をウェルあたりでカウントした結果を示す。図13A及び図13Bより、L−乳酸(LA)及びα−ヒドロキシ酪酸(α−HB)のいずれもが、ヒト骨芽細胞における石灰化を促進することが確認された。
[細胞培養試験のまとめ]以上の骨芽細胞を用いた細胞培養試験によって、GPR81の様々なリガンドが、当該骨芽細胞における石灰化及びコラーゲン合成を促進することが確認された。
[試験11:動物実験(1)/重合体を用いた骨再生試験]まずL−乳酸の重合体を作製した。すなわち、温度計、窒素導入管を備えた内容積100mLの反応容器に、L−乳酸(Purac製)60gを加え、200mL/分の窒素気流下、185℃で1時間重合化反応させた。その後、得られた重合体を、その濃度が10w/v%となるようにアセトンに溶解し、体積比で約4倍量のヘキサン中で析出させることにより精製処理を行い、ポリL−乳酸(以下「PL1」という)48gを得た。PL1をGPC法によって測定したところ、数平均分子量は510(Mw/Mn=1.2)であった。PL1は、粘性のあるゲル状であり、流動性を有する組成物であった。
図14には、GPC法による測定で得られたPL1のクロマトグラムを示す。PL1について、図14に示すクロマトグラムにおける、全面積に対する、分子量250〜2000の範囲の面積の割合は、99.6%であった。この面積の割合は、GPC測定装置に内蔵の方法によって求めた。すなわち、GPC測定装置による上記面積の割合の算出方法の概要は次のとおりである:(i)まず、ポリスチレン基準物質により作成された校正曲線において、分子量250に該当する溶出時間及び分子量2000に該当する溶出時間を取得する;、及び(ii)次いで、測定対象のポリマーについて得られたクロマトグラムにおいて、上記(i)で取得した2つの溶出時間の各々と一致する溶出時間を取得し、(iii)さらに、当該クロマトグラム上の当該2つの溶出時間の垂線で区切られた部分の面積を全面積で除することにより、上記面積の割合を算出する。
また、反応時間を1.5時間とした以外は、PL1の場合と同様にして、ポリL−乳酸(以下「PL2」という)49gを得た。PL2の数平均分子量は970(Mw/Mn=1.4)であった。また、GPC法による測定で得られたPL2のクロマトグラムにおける、全面積に対する、分子量250〜2000の範囲の面積の割合は、81.1%であった。PL2は、脆い固体であった。
なお、数平均分子量が1570(Mw/Mn=1.5)のポリL−乳酸も作製したが、当該ポリL−乳酸は硬い固体であったため、投与する上で必ずしも好ましくないとの判断により、使用しなかった。ただし、このように硬い固体のポリL−乳酸であっても、例えば、粉砕して微粒子とすることにより、投与することが可能である。
動物実験は、奥羽大学動物実験規程に従って実施した。エストロゲンの影響をできるだけ排除するために、閉経後の高齢雌ラット(SDラット(日本クレア株式会社) 平均体重:455.9±9.5g)を用いた。また、荷重負荷による骨形成の影響をできるだけ排除するために、頭蓋骨で試験を行った。
ラット9頭を用い、各ラットの頭蓋骨に歯科用ドリルで孔径2mmの孔を空けた。3頭はControl群としてそのまま切開部を縫合して閉じた。残り6頭については、3頭の孔の近傍に0.1gのPL1を埋め込み、他の3頭の孔の近傍に0.1gのPL2を埋め込んだ後、それぞれ切開部を縫合して閉じた。なお、PL1は流動性を有していたが、注射器は使用せず、孔の近傍に埋め込んだ。固体の粒子であったPL2は、そのまま孔の近傍に埋め込んだ。30日後にラットを屠殺し、試験部位を肉眼及びCT(東芝ITコントロールシステム株式会社製 X線CT装置 TOSCANER 32251μhd)で評価した。
肉眼による評価では、Control群のラットでは孔の大きさにほとんど変化が無く、骨形成、骨再生の痕跡がほとんど認められなかった。これに対し、PL1群とPL2群のラットでは孔が粗造な石灰化物(新生骨の可能性も考えられた)によって塞がれており、また、孔の大きさも外周部からの骨形成、骨再生によって小さくなっていた。また、PL1群及びPL2群において、PL1及びPL2による切開部周辺組織の損傷は認められなかった。すなわち、例えば、PL1及びPL2の分解によって周辺組織の局所pHが急激に低下して細胞が損傷を受けたといった問題は認められなかった。
図15には、Control群、PL1を使用した例、及びPL2を使用した例のそれぞれについて、CTによる画像を示す。図16には、図15に示す画像における再生部分のCT値をグラフ化した結果を示す。なお、Control群のCT値は約75であったが、これは軟組織等が埋入したためであった。図16には、参考として、Control群、PL1を使用した例、及びPL2を使用した例に加え、軟組織(Soft Tissue)及び骨(Bone)のそれぞれのCT値も示す。
以上の動物実験の結果より、分解能の高い乳酸ポリマーによる骨形成、骨再生の作用効果が生体において認められた。
[試験12:動物実験(2)/重合体を用いた骨再生試験]まずL−乳酸の重合体を作製した。すなわち、試験11と同様にして、図17に示すように、GPC法により測定される数平均分子量が異なる7種類のポリL−乳酸を得た。なお、図17には、各ポリL−乳酸サンプルについて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、当該数平均分子量(Mn)に対する当該重量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)、及びGPC法による測定で得られたクロマトグラムにおける、全面積に対する、分子量250〜2000の範囲の面積の割合(%)を示す。
なお、図17において、「L−100−0.5」は、上述の試験11で使用したPL1と同一のポリL−乳酸であった。また、「L−100−0.5」、「OLA−1001」、「OLA−1002」及び「OLA−1004」は、粘性のあるゲル状であり、流動性を有する組成物であった。「OLA−1001」は、分子量が250未満の割合が大きかったため、GPC法による測定で得られたクロマトグラムにおける、全面積に対する、分子量250〜2000の範囲の面積の割合が比較的小さくなった。
動物実験は、試験11と同様、奥羽大学動物実験規程に従って実施した。エストロゲンの影響をできるだけ排除するために、閉経後の高齢雌ラット(SDラット(日本クレア株式会社) 平均体重:539.1±11.2g)を用いた。また、荷重負荷による骨形成の影響をできるだけ排除するために、頭蓋骨で試験を行った。
ラット40頭を用い、各ラットの頭蓋骨に歯科用ドリルで孔径2mmの孔を空けた。5頭はControl群としてそのまま切開部を縫合して閉じた。残り35頭については、5頭ずつの7つのグループに分け、各グループにおいて、図17に示す7種類のポリL−乳酸のそれぞれを、上述の試験11と同様、5頭の孔の近傍に0.1gずつ投与した後、それぞれ切開部を縫合して閉じた。
30日後にラットを屠殺し、試験部位をpQCT(peripheral Quantitative Computed Tomography)装置(STRATEC社製、XCT Research SA+)で解析した。
具体的に、各試験部位について、計測領域の体積(TV)に対する、当該計測領域における石灰化物の体積(BV)の割合(%)をBV/TV値として算出した。試験部位が完全に閉塞された場合、BV/TV値は100%となる。
なお、計測領域の体積(TV)は、試験部位における直径2.00mm、高さ1.72mmのシリンダー状領域の体積とした。また、pQCT解析においては、軟組織由来のバックグラウンドを考慮して、計測を行った。
図18には、pQCT解析により算出されたBV/TV値を示す。図18において、「Cont」は、ポリL−乳酸を使用しなかったControl群の結果を示し、「L−100−0.5」は、数平均分子量が510のポリL−乳酸を使用した例の結果を示し、「OLA−1001」は、数平均分子量が320のポリL−乳酸を使用した例の結果を示し、「OLA−1002」は、数平均分子量が420のポリL−乳酸を使用した例の結果を示し、「OLA−1004」は、数平均分子量が560のポリL−乳酸を使用した例の結果を示し、「OLA−1006」は、数平均分子量が710のポリL−乳酸を使用した例の結果を示し、「OLA−1007」は、数平均分子量が770のポリL−乳酸を使用した例の結果を示し、「OLA−1008」は、数平均分子量が830のポリL−乳酸を使用した例の結果を示す。
図18に示すように、ポリL−乳酸を投与しなかったControl群において、BV/TV値は、1.87%〜6.20%であった。これに対し、ポリL−乳酸を投与した例のBV/TV値は、「L−100−0.5」において100%が1頭及び98.93%が1頭、「OLA−1001」において100%が3頭、「OLA−1006」において100%が2頭、「OLA−1008」において100%が1頭であった。
このように、増殖因子やスキャッホールドを投与することなく、ポリL−乳酸を投与するだけで、重力等のメカニカルストレスを受けにくい頭蓋骨において、BV/TV値が98%〜100%であったことは、驚くべき結果であった。
また、ポリL−乳酸を投与した他の例についても、「OLA−1006」において19.53%〜28.05%が2頭、「OLA−1007」において16.92%〜32.46%が3頭、「OLA−1008」において10.96%〜13.96%が2頭であり、Control群に比べて高いBV/TV値が得られた。
なお、「OLA−1002」及び「OLA−1004」においては、Control群との差異が認められなかった。この結果は、動物実験に特有の手技的な難しさに起因するものと考えられた。すなわち、例えば、頭蓋骨に孔を開けるために、比較的広い範囲で切開を行い、重合体を埋め込むが、その後の縫合時に当該重合体の位置がずれる等、予期しない不都合が生じることがある。そして、この予期しない不都合の発生により、一部の条件では、正確な評価ができなかった可能性が考えられた。

Claims (8)

  1. GPR81のリガンド、アゴニスト及びこれらの前駆体からなる群より選択される1以上を有効成分として含む
    ことを特徴とする骨形成促進剤。
  2. 前記リガンドは、乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、グリコール酸、α−ヒドロキシカプロン酸、マレイン酸、酒石酸及びプロピオン酸からなる群より選択される1以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載の骨形成促進剤。
  3. 前記リガンドは、乳酸である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の骨形成促進剤。
  4. 前記前駆体は、前記リガンド又は前記アゴニストを含む成分の重合体である
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の骨形成促進剤。
  5. 前記重合体は、次の(a)及び/又は(b)を満たす:
    (a)ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が300〜2000の範囲内である;
    (b)ゲル浸透クロマトグラフィー法による測定で得られるクロマトグラムにおいて、全面積に対する、ポリスチレン換算の分子量250〜2000の範囲の面積の割合が50%〜100%の範囲内である;
    ことを特徴とする請求項4に記載の骨形成促進剤。
  6. 流動性組成物である
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の骨形成促進剤。
  7. 注入用組成物である
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の骨形成促進剤。
  8. 請求項6又は7に記載の骨形成促進剤を収容するリザーバ部と、
    前記リザーバ部の前記骨形成促進剤を患者の患部に注入する注入部と、
    を備えたことを特徴とする骨形成促進装置。
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