JP2017079733A - カンジダ鑑別用発色培地 - Google Patents

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【課題】本発明は、原因菌であるカンジダ菌のコロニーの発色が強く、20時間程度の培養でも5種類のカンジダ菌を容易に鑑別でき、コロニーの発色が培養時間に影響されず長時間安定している、カンジダ鑑別用発色培地を提供することを目的とする。【解決手段】酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有することを特徴とするカンジダ鑑別用発色培地。本発明のカンジダ鑑別用発色培地によれば、5種類のカンジダ菌を20時間程度の培養で同時に鑑別でき、48時間の培養でもコロニー色が変化せず鑑別性が低下しないため、臨床的にもその意義は大きいと考えられる。【選択図】なし

Description

本発明は、カンジダ症の原因菌であるカンジダ菌を迅速に鑑別することができ、コロニーの発色が長時間の培養でも変色せず安定しているカンジダ鑑別用発色培地に関するものである。
カンジダ症における感染状況、治療状況、再発状況などの診断では、カンジダ菌の棲息形態、組織病変、肉眼的炎症所見等と共に、菌の分離・同定による確認が臨床上重要である。
このような菌の分離・同定菌数による確認については、培養法が汎用されており、既に水野−高田培地やサブロー培地などの種々の培地が市販されている。これらの培地は、いずれも炭素源、窒素源の他、一般細菌の生育を抑制する物質も含みカンジダ菌のみの検出を目的としている(非特許文献1、非特許文献2)。
これらの培地の使用に当たっては、患部から採取した検体を培地中で2〜3日程度培養させた後、肉眼によってコロニーの数や形態を観察することによってカンジダ症の現況を診断する。しかしながら、従来の培地では菌の培養に2日または3日も要するために速やかな診断を下すことができず、迅速に治療が開始できないという問題があった。
このため、少なくともアミノ酸、ペプチド、糖類、細菌繁殖抑制物質を含む水溶液に、夾雑菌の繁殖が抑制されるような酸性域で変色するpH指示薬を、同じく夾雑菌の抑制されるようなpHに調整した培地に配合したものを使用することにより、熟練を要さずとも短時間で容易にカンジダ症を診断できるカンジダ症診断用培地が提案されている(特許文献1)。
一方、カンジダ症は、カンジダ・アルビカンスが主要な起因菌として知られているが、これ以外にもカンジダ・グラブラータを起因菌とするものやカンジダ・トロピカリスを起因菌とするものが増加しつつある。
これらのカンジダ菌のうち、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・グラブラータとをテトラゾリウム化合物を添加した培地上のコロニーの色調で容易に判別し、これを利用することによってカンジダ症の起因菌を簡便かつ速やかに究明し、治療対策を早期に確立できるカンジダ簡易鑑別用培地が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・トロピカリスは、形態学的性状が近似しているだけでなく、生化学的性状も近似しているため、両者は、まったく判別がつかないという問題があった。
このため、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・トロピカリスのそれぞれが産生する酵素の基質である2種の色原体を培地中に添加し、色原体の加水分解後に発色団の基本色とは異なる色を得て両者を区別するカンジダ菌の検出方法が提案されている(特許文献4、特許文献5)。
本発明者も、発色基質として5−ブロム−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドと、5−ブロム−6−クロロ−3−インドリル−β−D−グルコピラノシドを含有させることによって、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・トロピカリスとを短時間かつ容易に鑑別できるカンジダ鑑別用発色培地を提案している(特許文献6)。
他方、現在、使用されているカンジダ鑑別用発色培地(商品名:クロモアガーカンジダ、発売元:関東化学(株)、以下、クロモカンジダ培地という)でカンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・パラプシロシスの5種類のカンジダ菌が推定同定可能と報告されている(非特許文献3)。
しかしながら、このクロモカンジダ培地では、確かに5種類のカンジダ菌が同定可能であるが、本発明者の検討によれば、5種類のカンジダ菌をすべて鑑別するのに40時間以上の培養が必要であることが確認されている。
本発明者は、発色酵素基質および酸化還元試薬を含有させることによって、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・パラプシロシスの5種類のカンジダ菌を20時間程度の培養で同時に鑑別できるカンジダ鑑別用発色培地を既に提案している(特許文献7)。
特公平1−46115号公報 特開平6−78793号公報 特開平6−277094号公報 特表平9−500790号公報 特表平9−500791号公報 特開2003−310298号公報 特開2005−080574号公報
Medical Technology,6,109;1978 臨床検査,26,1498;1982 臨床と微生物,22,735-739;1995
発色酵素基質および酸化還元試薬を含有させた、特許文献7のカンジダ鑑別用発色培地では、確かに20時間程度の培養で5種類のカンジダ菌が同定可能であるが、培養時間が長くなる(40時間程度)とコロニー色が変色し、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータおよびカンジダ・パラプシロシスの鑑別できなくなるため、なんらかの事情により20時間程度の培養での判定ができなかった場合には、もう一度培養をやり直さなければならず、迅速に診断ができないという問題があった。
また、カンジダ・グラブラータは着色しないため、夾雑菌と間違えやすく、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・パラプシロシスは色調の差が小さいため、コロニー色だけでの鑑別が難しい場合があった。
従って本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであって、5種類のカンジダ菌の鑑別性が高く、20時間程度の培養で鑑別することができ、コロニーの発色が培養時間に影響されず長時間安定している、カンジダ鑑別用発色培地を提供することを目的とする。
本発明者は、多種類のカンジダ菌を短時間で容易に鑑別でき、コロニーの発色が長時間安定している培地を開発すべく鋭意研究した結果、酵素基質および酸化還元試薬を含有するカンジダ鑑別用発色培地に、亜テルル酸塩をさらに含有させることにより、5種類のカンジダ菌の鑑別性が向上し、さらに50時間程度まで発色が安定化することを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成からなる。
(1)酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有することを特徴とするカンジダ鑑別用発色培地。
(2)亜テルル酸塩が亜テルル酸カリウムおよび/または亜テルル酸ナトリウムである(1)記載のカンジダ鑑別用発色培地。
(3)亜テルル酸塩の含有量が0.0005〜0.015g/Lの範囲である(1)または(2)記載のカンジダ鑑別用発色培地。
(4)酵素基質が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート.2Na(以下、x−phos.2Naという)および/または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−N−アセチル−β−D−ガラクトサミニド(以下、x−galactosaminideという)である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
(5)酵素基質の含有量が0.01〜0.1g/Lの範囲である(1)〜(4)のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
(6)酸化還元試薬がテトラゾリウム塩である(1)〜(5)のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
(7)テトラゾリウム塩がテトラゾリウムバイオレット(以下、TTVという)および/またはテトラゾリウムブルー(以下、TTBという)である(6)記載のカンジダ鑑別用発色培地。
(8)酸化還元試薬の含有量が0.001〜0.01g/Lの範囲である(1)〜(7)のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
(9)培地1Lあたり、ペプトン10〜30g、酵母エキス1〜10g 、白糖1〜20g、ブドウ糖1〜10g、TTV0.001〜0.01g、x−phos.2Na0.01〜0.1g、亜テルル酸カリウム0.0005〜0.015gおよび寒天3〜20gを含有する(1)〜(8)のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
本発明は、酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有させることによって、発色が強く鑑別が容易で、長時間の培養でもコロニーの色が変色しないカンジダ鑑別用発色培地を提供する。また、本発明のカンジダ鑑別用発色培地によれば、5種類のカンジダ菌を20時間程度の培養で同時に鑑別でき、48時間の培養でもコロニー色が変化せず鑑別性が低下しないため、臨床的にもその意義は大きいと考えられる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明のカンジダ鑑別用発色培地の特徴は、培地中に酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有させることにある。
本発明においては、酵素基質および酸化還元試薬に加えて培地中に亜テルル酸塩を含有させることによってより一層コロニーの発色が明瞭となり、さらに長時間の培養でも発色したコロニーの変色が抑制される。即ち、酵素基質と酸化還元試薬と亜テルル酸塩とが相俟って相乗的効果を生じ、酵素基質と酸化還元試薬とを用いた場合より、更に一層鑑別力を向上させることができ、コロニーの色の変色をを長時間抑制することができる。
酵素基質と酸化還元試薬と亜テルル酸塩が相俟って相乗的効果を生じ、5種類のカンジダ菌が短時間でそれぞれ特有の色を持つコロニーを形成するため容易に鑑別することができ、それぞれのコロニーは50時間程度でもコロニーの色により鑑別することができる。即ち、培養18〜24時間で、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)は桃色から濃桃色、カンジダ・グラブラータ(C.glabrata)は中心灰褐色から中心灰色または中心黒色、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)は青色、カンジダ・クルセイ(C.krusei)は水色、カンジダ・パラプシロシス(C.parapsilosis)は淡桃色から桃色にそれぞれ発色し、これらの発色したコロニーの色は培養40〜48時間で、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)やカンジダ・パラプシロシス(C.parapsilosis)の発色が濃くなることがあるが、これら以外は変化せず、培養40〜48時間でも、5種類のカンジダ菌を容易に鑑別することができる。
亜テルル酸塩は公知のものから適宜選択することができる。その具体例としては、亜テルル酸カリウム、亜テルル酸ナトリウムなどが挙げられる。
この亜テルル酸塩の含有量は0.0005〜0.015g/Lの範囲が好ましく、より好ましくは0.001〜0.0125g/L、さらに好ましくは0.001〜0.01g/Lの範囲である。亜テルル酸塩の含有量が0.0005g/L未満になると、鑑別力が低下し、安定した発色を長時間維持することができなくなる。逆に、0.015g/Lを超えると、長時間培養でコロニーの変色が起こり鑑別力が低下する。
酵素基質は、カンジダ菌が産生するホスファターゼおよび/またはN−アセチル−β−D−ガラクトサミニダーゼに対する基質であれば、公知のものの中から適宜選択することができる。その具体例としては、例えばx−phos.2Na、x−galactosaminideなどが挙げられる。
この酵素基質の含有量は0.01〜0.1g/Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.03 〜0.08g/Lの範囲である。酵素基質の含有量が0.01g/L未満になると、コロニーの発色に時間を要すると共に、検出感度も低下する。逆に、0.1g/Lを超えると、コロニーの発育が阻害されることがある。
酸化還元試薬はテトラゾリウム塩が好ましく、公知のテトラゾリウム塩の中から適宜選択することができる。テトラゾリウム塩の具体例としては、TTV、TTBなどが挙げられる。
この酸化還元試薬の含有量は0.001〜0.01g/L の範囲が好ましく、より好ましくは0.003〜0.008g/Lの範囲である。酸化還元試薬の含有量が0.001g/L未満になると、コロニーの発色に長時間を要する。逆に、0.01g/Lを超えると、コロニーの発育が阻害されることがある。
本発明のカンジダ鑑別発色培地は、成分として少なくとも培地1Lあたり、x−phos.2Na0.01〜0.1g、TTV0.001〜0.01g、亜テルル酸カリウム0.0005〜0.015g、ペプトン10〜30g、酵母エキス1〜10g、白糖1〜20g、ブドウ糖1〜10gおよび寒天2〜20gを含有することが好ましい。これら成分の他に、カンジダ菌の発育を促進する成分としては、硫酸アンモニウムなどの窒素源、マルトースやスクロースなどの糖類、さらに必要に応じてミネラルやビタミンなど任意のものを含めることができる。
夾雑菌の繁殖を抑制するための抗菌剤としては、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシンなどのアミノグリコキシド系抗生物質、クロラムフェニコール、テトラサイクリンなどの広範囲抗生物質、広範囲の抗菌スペクトルを有するペニシリン、セファロスポリンが挙げられるが、中でもクロラムフェニコールが好ましい。
本発明の培地は、液体、半流動、固形のいずれの形態もとりうるが、検出のし易さ等の観点から、固形培地が好ましく、より好ましくは平板固形培地の形態である。固形培地の固化剤としては、寒天、カラギーナン、ローカストビーンガムなど通常使用されているものが挙げられる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1 亜テルル酸カリウムの添加濃度による発色性についての検討
表1に示した培地成分51.3gを秤量し、1000mLの精製水に溶解した。溶解後、pHを6.0±0.2に調整し、121℃で高圧滅菌した。冷却後、表2に示した所定量でx−phos.2Na、TTVおよび亜テルル酸カリウムを濾過滅菌して加えた後、20mLずつシャーレに分注して固形化した。亜テルル酸カリウムを添加していないものを比較例とした。
上記で作製した培地に、下記の表3および表4記載の(A)〜(J)の10株を予め、市販のポテトデキストロース寒天培地でサブカルチャーし、得られた菌株を白金耳で塗抹接種して35℃で48時間培養した。培養18〜24時間の結果を表3に、培養40〜48時間の結果を表4に示した。
表3から明らかなように、酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有する本発明のカンジダ鑑別用発色培地では、培養18〜24時間で5種類のカンジダ菌のコロニーに色がつき容易に鑑別が可能であった。これに対し、亜テルル酸塩を含有していないカンジダ鑑別用発色培地(比較例)では、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・パラプシロシスとのコロニーの色調の差が小さいため、コロニーの色によるこれらの鑑別は難しく、また、カンジダ・グラブラータは発色しないため、コロニーの色による夾雑菌との鑑別はできなかった。
また、表4からも明らかなように、酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有する本発明のカンジダ鑑別用発色培地では、培養40〜48時間で、カンジダ・アルビカンスおよびカンジダ・パラプシロシスの発色が濃くなることがあるが、その他の菌のコロニーの色の変色は見られず、5種類のカンジダコロニーが容易に鑑別可能であった。これに対し、亜テルル酸塩を含有していないカンジダ鑑別用発色培地(比較例)では、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータおよびカンジダ・パラプシロシスのコロニーの色が変色し、これらの鑑別ができなかった。
本発明によれば、酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有させることによって、カンジダのコロニーを短時間で強く発色させることができ、5種類のカンジダ菌を同時に鑑別することができると共に、長時間の培養でもコロニーの色が変色しないため、長時間の培養でも5種類のカンジダ菌を同時に鑑別することができる。

Claims (9)

  1. 酵素基質、酸化還元試薬および亜テルル酸塩を含有することを特徴とするカンジダ鑑別用発色培地。
  2. 亜テルル酸塩が亜テルル酸カリウムおよび/または亜テルル酸ナトリウムである請求項1記載のカンジダ鑑別用発色培地。
  3. 亜テルル酸塩の含有量が0.0005〜0.015g/Lの範囲である請求項1または請求項2記載のカンジダ鑑別用発色培地。
  4. 酵素基質が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート.2Naおよび/または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−N−アセチル−β−D−ガラクトサミニドである請求項1〜3のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
  5. 酵素基質の含有量が0.01〜0.1g/Lの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
  6. 酸化還元試薬がテトラゾリウム塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
  7. テトラゾリウム塩がテトラゾリウムバイオレットおよび/またはテトラゾリウムブルーである請求項6記載のカンジダ鑑別用発色培地。
  8. 酸化還元試薬の含有量が0.001〜0.01g/Lの範囲である請求項1〜7のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
  9. 培地1Lあたり、ペプトン10〜30g、酵母エキス1〜10g 、白糖1〜20g、ブドウ糖1〜10g、テトラゾリウムバイオレット0.001〜0.01g、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート.2Na0.01〜0.1g、亜テルル酸カリウム0.0005〜0.015gおよび寒天3〜20gを含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のカンジダ鑑別用発色培地。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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