JP2017075255A - 熱可塑性樹脂、及びそれよりなる光学成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
上述の材料の複屈折を小さくする方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ物質同士を組み合わせて、互いの屈折率異方性を打ち消しあう手法が挙げられる。例えば特許文献1には、正の複屈折を有するビスフェノールAと、負の複屈折を有する9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとの共重合ポリカーボネートからなる、複屈折の小さな光学レンズが開示されている。また、特許文献2には、N−置換マレイミドとアクリル酸エステルに由来する構成単位を含むアクリル重合体からなる、複屈折の小さな光学フィルムが開示されている。
材料で、材料内部を透過した光線の結像点がぼやけ、情報の読み取りエラー等の様々な問題を生じたりするおそれがあるため、面内位相差の小さい樹脂の使用が望まれている。
即ち本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記式(1)又は(2)で表される構造単位を含有する熱可塑性樹脂であり、該樹脂から作成された延伸フィルムの波長550nmにおける面内の配向複屈折の絶対値が0.001以下である、熱可塑性樹脂。
子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。)
[2] ガラス転移温度が120℃以上、180℃以下である、[1]に記載の熱可塑性樹脂。
[3] 樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下記式(3)で表される構造単位を10重量%以上、70重量%以下含有する、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂。
[5] 熱可塑性樹脂がポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を成形してなるフィルム又はシート。
[7] ナトリウムD線(589nm)における屈折率が1.49〜1.57である、[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を成形してなるフィルム又はシート。
[8] [6]又は[7]に記載のフィルムを少なくとも一方向に延伸されてなるフィルム。
[9] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を射出成形してなる射出成形品。
[10] ナトリウムD線(589nm)における屈折率が1.62以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を射出成形してなる射出成形品。
本発明の樹脂は、下記式(1)又は(2)で表される構造単位を含有する熱可塑性樹脂であり、該樹脂から作成された延伸フィルムの波長550nmにおける面内の配向複屈折の絶対値が0.001以下である、熱可塑性樹脂である。
(熱可塑性樹脂)
本発明の熱可塑性樹脂は従前知られる熱可塑性樹脂であれば、いかなるものであってもかまわないが重縮合系の樹脂が好ましい、重縮合系樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどが挙げられるが、本発明の樹脂は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネートからなる
群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。前記の樹脂は、以下詳述のオリゴフルオレン構造単位を組み込むことが可能であり、各種モノマーを共重合することで非晶性とすることも可能である。また、前記の樹脂は、光学機器に要求される物性に応じて、光学特性や機械物性、耐熱性などの種々の物性を好ましい範囲に調整しやすいことが利点として挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂は、下記式(1)又は(2)で表される構造単位から選ばれる構造単位を含有する。尚、下記式(1)及び(2)で表される構造単位を「オリゴフルオレン構造単位」と称することがある。
も好適に用いることができる。
メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の直鎖状のアルキレン基;メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、プロピルメチレン基、(1−メチルエチル)メチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基等の、分岐鎖を有するアルキレン基。ここで、R1及びR2における分岐鎖の位置は、フルオレン環側の炭素が1位となるように付与した番号により示した。
例えば以下のアルキレン基を採用することができる。
メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の直鎖状のアルキレン基;メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、プロピルメチレン基、(1−メチルエチル)メチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基等の分岐鎖を有するアルキレン基。
[A]
本発明の熱可塑性樹脂は下記式(3)で表される構造単位を含有していることが好ましい。
る。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族又は2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩及び脂肪酸塩;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド及びブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール及びアミノキノリン等;アミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミン及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
安定剤の量が少なすぎるとジヒドロキシ化合物Aの変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎるとジヒドロキシ化合物Aの変性を招く場合があるので、ジヒドロキシ化合物Aに対して、0.0001重量%〜0.1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.05重量%である。
本発明の熱可塑性樹脂においては、前述した構造単位以外の構造単位を含んでいてもよく(以下、「その他の構造単位」と称することがある。)、その他の構造単位を含有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、アセタール環を含有するジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族成分
を含有するジヒドロキシ化合物、ジエステル化合物等が挙げられる。
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物;ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物。
1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネン等のテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール及び3級アルコールであるジヒドロキシ化合物。
前記式(8)において、好ましくはR10及びR11は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基である。R10及びR11の置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デキル基、ウンデキル基、ドデキル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐の鎖状アルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、エチニル基、メチルエチニル基、1−プロピオニル基等のアルキニル基、フェニル基、ナフチル基、トルイル基等のアリール基、メトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基等の複素環基が挙げられる。これらの内、樹脂の安定性の観点から、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が好ましく、樹脂の光学特性や耐候性、耐熱性と機械物性のバランスの観点から、アルキル基、シクロアルキル基が特に好ましい。
芳香族成分を含有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物を用いることができる。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3−フェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)メタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1
,1’−スピロビインダン、7,7’−ジメチル−6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−ヒドロキシナフチル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール化合物;2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフチル)フルオレン等の芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物。
その他の構造単位を導入するためのジヒドロキシ化合物やジエステル化合物は、得られ
る樹脂の要求性能に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂中のその他の構造単位の含有量の下限は、熱可塑性樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、3重量%以上が特に好ましい。一方で、熱可塑性樹脂中のその他の構造単位の含有量の上限は、熱可塑性樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、50重量%以下が好ましく、45重量%以下が好ましく、40重量%以下が特に好ましい。その他の構造単位は主に熱可塑性樹脂の耐熱性の調整や、柔軟性や靱性の付与の役割を担うため、含有量が少なすぎると、熱可塑性樹脂の機械特性や溶融加工性が悪くなり、含有量が多すぎると、耐熱性や光学特性が悪化するおそれがある。
本発明の熱可塑性樹脂の好ましい形態である、ポリカーボネート、又はポリエステルカーボネートに含有される連結基であるカーボネート結合は、下記式(9)で表される炭酸ジエステルを重合することで導入される。
A3及びA4は、置換又は無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換の芳香族炭化水素基がより好ましい。尚、脂肪族炭化水素基の置換基としては、エステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが挙げられ、芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
また、前記式(5)で表されるジエステルモノマーと前記式(9)で表される炭酸ジエステルを両方用いて重合反応を行う場合には、前記式(5)のA1、A2及び前記式(9)のA3、A4がすべて同じ構造であると、重合反応中に脱離する成分が同じであり、その成分を回収して再利用しやすい。また、重合反応性と再利用での有用性の観点から、A1〜A4はフェニル基であることが特に好ましい。尚、A1〜A4がフェニル基である場合、重合反応中に脱離する成分はフェノールである。
本発明の熱可塑性樹脂の好ましい形態である、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネートは、一般に用いられる重合方法で製造することができる。例えば、
ホスゲンやカルボン酸ハロゲン化物を用いた溶液重合法又は界面重合法や、溶媒を用いずに反応を行う溶融重合法を用いて製造することができる。これらの製造方法のうち、溶媒や毒性の高い化合物を使用しないことから環境負荷を低減することができ、また、生産性にも優れる溶融重合法によって製造することが好ましい。
また、重縮合反応の重合速度は、ヒドロキシ基末端と、エステル基末端或いはカーボネート基末端とのバランスによって制御される。そのため、特に連続式で重合を行う場合は
、未反応モノマーの留出によって末端基のバランスが変動すると、重合速度を一定に制御することが難しくなり、得られる熱可塑性樹脂の分子量の変動が大きくなるおそれがある。熱可塑性樹脂の分子量は溶融粘度と相関するため、得られた熱可塑性樹脂を成形加工する際に、溶融粘度が変動し、均一な寸法の成形品が得られない等の問題を招くおそれがある。
具体的に、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することができる。即ち、重合反応器の内温は、通常130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、かつ、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力は、通常70kPa以下(以下、圧力とは絶対圧力を表す。)、好ましくは50kPa以下、より好ましくは30kPa以下、かつ、通常1kPa以上、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa以上の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。
第1段目の反応においては、反応圧力を低くするほど重合反応を促進することができるが、一方で未反応モノマーの留出が多くなってしまう。未反応モノマーの留出の抑制と、減圧による反応の促進を両立させるためには、還流冷却器を具備した反応器を用いることが有効である。特に未反応モノマーの多い反応初期に還流冷却器を用いるのがよい。
物が挙げられる。好ましくは長周期型周期表第2族の金属及びリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が使用される。
前記重合触媒の使用量は、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolである。前記重合触媒として、長周期型周期表第2族の金属及びリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、特にマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合には、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、通常、0.1μmol以上、好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上の前記重合触媒を使用する。また、前記重合触媒の使用量は、30μmol以下がよく、好ましくは20μmol以下であり、特に好ましくは10μmol以下である。
lである。
中の金属分を取り除き、さらに水用フィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いる水用フィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる熱安定剤、酸化防止剤、触媒失活剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、染顔料、衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、無機充填剤、発泡剤等が含まれても差し支えない。
本発明の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、溶融加工時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、通常知られるヒンダードフェノール系熱安定剤及び/又はリン系熱安定剤が挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等。中でも、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンを用いることが好ましい。
れらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
これらの熱安定剤の配合量は、樹脂を100重量部とした場合、0.0001重量部以上が好ましく、0.0005重量部以上がより好ましく、0.001重量部以上がさらに好ましく、また、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.2重量部以下がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂に、重合反応で用いた触媒を中和し、失活させるために酸性化合物を添加することで、色調や熱安定性を向上することができる。触媒失活剤として用いられる酸性化合物としては、カルボン酸基やリン酸基、スルホン酸基を有する化合物、又はそれらのエステル体などを用いることができるが、特に下記式(10)又は(11)で表される部分構造を含有するリン系化合物を用いることが好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert−ブチル、(4−クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂への前記リン系化合物の添加量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえって樹脂が着色してしまったり、特に高温高湿度下での耐久試験において、樹脂が着色しやすくなる。前記リン系化合物の添加量は、重合反応に用いた触媒量に対応した量を添加する。重合反応に用いた触媒の金属1molに対して、前記リン系化合物はリン原子の量として0.5倍mol以上、5倍mol以下が好ましく、さらに0.7倍mol以上、4倍mol以下が好ましく、特に0.8倍mol以上、3倍mol以下が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂は、機械特性や耐溶剤性等の特性を改質する目的で、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等の合成樹脂やゴム、エラストマー等の1種又は2種以上と混練してなるポリマーアロイとしてもよい。
前記の添加剤や改質剤は、本発明に用いられる熱可塑性樹脂に前記成分を同時に、又は任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができるが、中でも押出機、特には二軸押出機により混練することが、分散性向上の観点から好ましい。
このようにして得られた本発明の熱可塑性樹脂の分子量は還元粘度で表すことができる。熱可塑性樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械強度が小さくなる可能性がある。そのため、還元粘度は通常0.20dL/g以上であり、0.25dL/g以上であることが好ましい。一方、熱可塑性樹脂の還元粘度が大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性が低下する傾向がある。そのため、還元粘度は、通常0.80dL/g以下であり、0.70dL/g以下であることが好ましく、0.60dL/g以下であることがより好ましい。尚、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、試料濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度計を用いて測定する。
本発明の熱可塑性樹脂の溶融粘度は、温度240℃、剪断速度91.2sec−1の測定条件において、下限として500Pa・s以上であることが好ましく、700Pa・s
以上であることがより好ましく、1000Pa・s以上であることが特に好ましい。一方、該溶融粘度は、温度240℃、剪断速度91.2sec−1の測定条件において、上限として6000Pa・s以下であることが好ましく、5500Pa・s以下がより好ましく、5000Pa・s以下が特に好ましい。尚、溶融粘度はキャピラリーレオメーター((株)東洋精機製作所製)を用いて測定する。溶融粘度が上記範囲内であると、十分な機械物性を持ち、熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制できる温度範囲で溶融加工が可能になる。
重合終盤の圧力を低下させる場合には、反応の圧力を下げすぎると分子量が急激に上昇して、反応の制御が困難になる場合があるため、熱可塑性樹脂の末端基濃度をヒドロキシ基末端過剰かエステル基末端過剰にして、末端基バランスを偏らせて製造することが好ましい。末端基バランスは全ジヒドロキシ化合物と全ジエステル化合物の仕込みのモル比により調節することができる。
ppmまで低減することにより、前記の問題を十分に抑制することができる。
本発明の熱可塑性樹脂の場合、前記式(1)又は(2)で表されるオリゴフルオレン構造単位と、脂肪族の構造単位で構成し、その他の芳香族構造の含有量を必要最小限とすることで、光弾性係数を低く抑えることが可能になる。
本発明の熱可塑性樹脂、及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物にすることができ、光学特性や耐熱性、機械的強度に優れた成形品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂を用いて、フィルム又はシートを製膜する方法としては、熱可塑性樹脂を溶媒に溶解させてキャストした後、溶媒を除去する流延法や、溶媒を用いずに熱可塑性樹脂を溶融させて製膜する溶融製膜法を採用することができる。溶融製膜法としては、具体的にはTダイを用いた溶融押出法、カレンダー成形法、熱プレス法、共押出法、共溶融法、多層押出、インフレーション成形法等がある。未延伸フィルムの製膜方法は特に限定されないが、流延法では残存溶媒による問題が生じるおそれがあるため、溶融製膜法が好ましく、中でも後の延伸処理のし易さから、Tダイを用いた溶融押出法がより好ましい。
ましい。成形温度が高過ぎると、得られるフィルム中の異物や気泡の発生による欠陥が増加したり、フィルムが着色したりする可能性がある。ただし、成形温度が低過ぎると樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ、原反フィルムの成形が困難となり、厚みの均一な未延伸フィルムを製造することが困難になる可能性があるので、成形温度の下限は通常200℃以上、好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上である。ここで、未延伸フィルムの成形温度とは、溶融製膜法における成形時の温度であって、通常、溶融樹脂を押し出すダイス出口の樹脂温度を測定した値である。
歪み速度(%/分)={延伸速度(mm/分)/原反フィルムの長さ(mm)}×100
かける処理温度は、熱固定処理温度と同様である。前記のような熱固定処理や緩和工程を行うことで、高温条件下での長期使用による光学特性の変動を抑制することができる。
本発明のフィルム又はシートの面内位相差は、より低い方が好ましいが、20nm以下がより好ましく、15nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましい。このような範囲に位相差を抑えることで、材料の持つ複屈折が悪影響を及ぼす用途においても好適に用いることができる。
射出成形体の成形方法は特に限定されものではなく、例えば一般的な熱可塑性樹脂用の射出成形法、ガスアシスト成形法、及び射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。その他目的に合わせて、上記の方法以外でインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法等を採用することもできる。
樹脂試料を塩化メチレンに溶解させ、精密に0.6g/dLの濃度の樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0、及び溶液の通過時間tを測定した。得られたt0及びtの値を用いて次式(i)により相対粘度ηrelを求め、さらに、得られた相対粘度ηrelを用いて次式(ii)により比粘度ηspを求めた。
ηrel=t/t0 (i)
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1 (ii)
その後、得られた比粘度ηspを濃度c[g/dL]で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。
ペレット状の樹脂試料を90℃で5時間以上、真空乾燥させた。乾燥したペレットを用いて、(株)東洋精機製作所製キャピラリーレオメーターで測定を行った。測定温度は240℃とし、剪断速度9.12〜1824sec−1間で溶融粘度を測定し、91.2sec−1における溶融粘度の値を用いた。尚、オリフィスには、ダイス径がφ1mm×10mmLのものを用いた。
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計DSC6220を用いて測定した。約10mgの樹脂試料を同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度とした。
樹脂試料約1gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解して溶液とした後、総量が25mLになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液について液体クロマトグラフィーにより測定した。
・装置:(株)島津製作所製
システムコントローラ:CBM−20A
ポンプ:LC−10AD
カラムオーブン:CTO−10ASvp
検出器:SPD−M20A
分析カラム:Cadenza CD−18 4.6mmφ×250mm
オーブン温度:60℃
・検出波長:220nm
・溶離液:A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A/B=50/50(vol%)からA/B=0/100(vol%)まで10分間でグラジエント、A/B=0/100(vol%)で5分間保持
・流量:1mL/min
・試料注入量:10μL
以下の実施例および比較例において、熱可塑性樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量が550ppm以下、炭酸ジエステルの残存量が100ppm以下であるものを、成形時における成形機への汚染や成形品の外観不良の防止に優れていると評価した。
90℃で5時間以上、真空乾燥をした樹脂ペレットを、いすず化工機(株)製単軸押出機(スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220〜260℃)を用い、Tダイ(幅200mm、設定温度:200〜260℃)から押し出した。押し出したフィルムを、チルロール(設定温度:120〜170℃)により冷却しつつ巻取機でロール状にし、膜厚100μmの未延伸フィルムを作製した。
(5)の方法で作製したフィルムから、幅8mm、長さ40mmの長方形の試験片を切り出して測定試料とした。波長656nm(C線)、589nm(D線)、486nm(F線)の干渉フィルターを用いて、(株)アタゴ製多波長アッベ屈折率計DR−M4/1550により各波長の屈折率nC、nD、nFを測定した。測定は界面液としてモノブロ
モナフタレンを用い、20℃で行った。アッベ数νdは次の式で計算した。
νd=(1−nD)/(nC−nF)
アッベ数が大きいほど、屈折率の波長依存性が小さいことを表す。
日本電色工業(株)製濁度計COH400を用いて、(5)の方法で作製したフィルムの全光線透過率を測定した。
全光線透過率は、その数値が大きいほど透明性が高く優れているが、以下の実施例および比較例においては、全光線透過率が91%以上であるものを、特に透明性に優れたものであると評価した。
He−Neレーザー、偏光子、補償板、検光子、光検出器からなる複屈折測定装置と振動型粘弾性測定装置(レオロジー社製DVE−3)を組み合わせた装置を用いて測定した。(詳細は、日本レオロジー学会誌Vol.19,p93−97(1991)を参照。)
以下の実施例および比較例において、光弾性係数がより低い値のものを、フィルムを光学部材に組み込んだ際に部材の弾性的な変形に伴って引き起こされる複屈折の発現の防止に優れたものであると評価し、25×10−12Pa以下であるものを特に優れたものであると評価した。
(5)の方法で作製したフィルムから幅50mm、長さ125mmのフィルム片を切り出した。バッチ式二軸延伸装置(アイランド工業社製二軸延伸装置BIX−277−AL)を用いて、延伸速度:300%/分、延伸倍率:1.5倍、延伸温度:樹脂のガラス転移温度+15℃の条件で前記フィルム片の自由端一軸延伸を行い、延伸フィルムを作製した。
90℃で5時間以上、真空乾燥をした樹脂ペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、シリンダー温度:240℃、金型温度:60〜100℃の範囲で温度条件を調整し、プレート成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形した。後述の比較例6のみ、射出時の負荷が大きかったため、シリンダー温度を280℃に設定した。
(9)の方法で作製した延伸フィルムの中央部を幅4cm、長さ4cmに切り出し、王子計測機器(株)製位相差測定装置KOBRA−WPRを用いて、測定波長450、500、550、590、630nmで位相差を測定し、波長550nmの位相差R550と延伸フィルムの膜厚から、次式より面内の配向複屈折Δnを求めた。尚、遅相軸方向が延
伸方向と一致している場合は、Δnを正の値で示し、遅相軸方向が延伸方向と垂直の方向と一致している場合は、Δnを負の値で示した。
配向複屈折Δn=R550[nm]/(フィルム厚み[mm]×106)
[合成例1]ビス[9−(2−フェノキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]メタン(下記式(12))の合成
[合成例3]6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの合成(下記式(14))
特開2014−114281に記載の方法で合成した。
ジムロートを備えた500mLの反応容器を窒素置換した後、myo−イノシトール30g(167mmol)、DMF200mL、p−トルエンスルホン酸一水和物863mg、ジメトキシシクロヘキサン75mLを投入し、100℃で3時間攪拌した。その後、40℃まで冷却し、トリエチルアミン2.5mLを加え、反応溶媒であるDMFを減圧留去した。その後、酢酸エチル250mLを加え、5%炭酸ナトリウム水溶液300mLで分液を実施し、イオン交換水300mLで1回洗浄した。得られた有機相中の有機溶媒を減圧留去し、酢酸エチル50mL/n−ヘキサン70mLで晶析を実施し、得られた白色沈殿を濾過した。その後再び酢酸エチル50mL/n−ヘキサン70mLで晶析を実施した。得られた固体を60℃で真空乾燥5時間実施することで、目的化合物を9.8g(収率17.2%)得た。
以下の実施例、及び比較例で用いた化合物の略号等は以下の通りである。
・BF1:ビス[9−(2−フェノキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]メタン
・BF2:1,2−ビス(9−ヒドロキシメチルフルオレン−9−イル)エタン
・SBI:6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン
・DCMI:DL−2,3:5,6−ジ−O−シクロヘキシリデン−myo−イノシトール
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物、SKケミカル社製)
・TCDDM:トリシクロデカンジメタノール(オクセア社製)
・BPA:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学(株)製)
・BHEPF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
・DMT:テレフタル酸ジメチル(東京化成工業(株)製)
・TBT:テトラブトキシチタン(東京化成工業(株)製)
ISB 59.41重量部(0.406mol)、BF1 45.11重量部(0.070mol)、DPC 72.00重量部(0.336mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物7.16×10−4重量部(4.06×10−6mol)を反応容器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、150℃で約10分間、攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として220℃まで30分かけて昇温し、60分間常圧にて反応した。次いで圧力を常圧から13.3kPaまで90分かけて減圧し、13.3kPaで30分間保持し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで反応2段目の工程として熱媒温度を15分かけて250℃まで昇温しながら、圧力を0.10kPa以下まで15分かけて減圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
ISB 39.90重量部(0.273mol)、TCDDM 25.26重量部(0.129mol)、BF1 36.65重量部(0.057mol)、DPC 73.37重量部(0.343mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物7.08×10−4重量部(4.02×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステルカーボネートを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2も実施例1と同様に耐熱性、溶融加工性、機械物性、及び光学特性に優れている。実施例2の樹脂は、実施例1に比べて光弾性係数の値がより小さいので、より低い複屈折が求められる場合に好適である。
ISB 52.53重量部(0.359mol)、SBI 10.07重量部(0.033mol)、BF1 40.88重量部(0.064mol)、DPC 70.32重量部(0.328mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物6.91×10−4重量部(3.92×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステルカーボネートを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
押出成形によるフィルム成形にも適している。また、残存フェノール量も好ましく、成形時の成形機への汚染や成形品の外観不良の防止に優れている。
ISB 52.60重量部(0.360mol)、DCMI 10.06重量部(0.030mol)、BF1 40.88重量部(0.064mol)、DPC 69.77重量部(0.326mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.37×10−3重量部(7.79×10−6mol)を用い、最終重合温度を245℃とした以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステルカーボネートを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例4も実施例1と同様に耐熱性、溶融加工性、機械物性、及び光学特性に優れている。実施例4の樹脂はガラス転移温度が非常に高い樹脂であり、高温での耐久性や信頼性が求められる場合に好適であり、また、溶融粘度も高いので、溶融押出成形によるフィルム成形にも適している。
BHEPF 65.91重量部(0.150mol)、DMT 20.43重量部(0.105mol)、BF1 28.89重量部(0.045mol)、及び触媒としてTBT 5.11×10−3重量部(1.50×10−5mol)を用い、反応1段目の温度を230℃とした以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステルを得た。得られたポリエステルのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例5でも実施例1と同様に複屈折の発現性が非常に小さい樹脂が得られた。実施例5の樹脂は屈折率が非常に高い樹脂であり、特に高屈折率が求められる光学レンズの用途に適した特性を有している。
BHEPF 94.40重量部(0.215mol)、DPC 46.12重量部(0.215mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.14×10−3重量部(6.46×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
BHEPF 88.42重量部(0.202mol)、BPA 5.69重量部(0.025mol)、DPC 48.53重量部(0.227mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.20×10−3重量部(6.80×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例2で用いた樹脂は、複屈折の発現性は小さかったが、実施例と比較して光弾性係数が大きく、プレート成形品の面内位相差も若干大きいので、複屈折の発現を抑制することができず、画像表示装置の一部に用いた際に位相差の変化による色調や視認性の維持が困難である。
ISB 15.28重量部(0.105mol)、BHEPF 77.41重量部(0.177mol)、DPC 60.82重量部(0.284mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物4.95×10−4重量部(2.81×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例3で用いた樹脂は、複屈折の発現性は小さかったが、実施例と比較して光弾性係数が大きく、プレート成形品の面内位相差も若干大きいので、複屈折の発現を抑制することができず、画像表示装置の一部に用いた際に位相差の変化による色調や視認性の維持が困難である。また、樹脂中のフェノール残存量も多く、成形時の成形機への汚染や成形品の外観不良を引き起こす恐れがあり、生産性に劣る。
ISB 29.71重量部(0.203mol)、CHDM 12.71重量部(0.408mol)、BF2 47.08重量部(0.112mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物7.12×10−4重量部(4.04×10−6mol)を用い、最終重合温度を240℃とした以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ノバレックス7022R(BPAポリカーボネート)を用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例6で用いた樹脂は芳香族構造を含有する汎用的な樹脂であり、複屈折の値も非常に大きかった。また、光弾性係数も大きく、プレート成形品の面内位相差も極めて大きいので、複屈折の発現を抑制することができず、画像表示装置の一部に用いた際に位相差の変化による色調や視認性の維持が困難である。また、ガラス転移温度は高いが、溶融粘度の値も極めて大きいため、溶融成形時に樹脂の熱劣化等を引き起こすおそれがあり、生産性や成形品の品質に劣る。
Claims (10)
- 下記式(1)又は(2)で表される構造単位を含有する熱可塑性樹脂であり、該樹脂から作成された延伸フィルムの波長550nmにおける面内の配向複屈折の絶対値が0.001以下である、熱可塑性樹脂。
- ガラス転移温度が120℃以上、180℃以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
- 測定温度240℃、剪断速度91.2sec−1における溶融粘度が500Pa・s以上、6000Pa・s以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂。
- 熱可塑性樹脂がポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂を成形してなるフィルム又はシート。
- ナトリウムD線(589nm)における屈折率が1.49〜1.57である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂を成形してなるフィルム又はシート。
- 請求項6又は7に記載のフィルムを少なくとも一方向に延伸されてなるフィルム。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂を射出成形してなる射出成形品。
- ナトリウムD線(589nm)における屈折率が1.62以上である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂を射出成形してなる射出成形品。
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