JP2017072507A - トリフルリジンの検出剤および該検出剤を含むキット - Google Patents

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Yoshihiko Maehara
喜彦 前原
洋之 北尾
Hiroyuki Kitao
洋之 北尾
洋介 諸富
Yosuke Morotomi
洋介 諸富
守 木庭
Mamoru Kiniwa
守 木庭
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Abstract

【課題】本発明は、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンをより効率よく、迅速に検出することができる被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤および該検出剤を含むキット、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する方法並びに該検出剤を用いた抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果の判定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤に関する。
(a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
(b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
【選択図】なし

Description

本発明は、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤および該検出剤を含むキットに関する。更に被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する方法およびトリフルリジンンまたはトリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する方法に関する。
トリフルリジン(2’−デオキシ−5−トリフルオロメチルウリジン、以下「FTD」ともいう)はチミジンホスホリラーゼ阻害剤であり、試験管内または動物実験において抗腫瘍効果を示すことが知られている。
近年、FTDとチピラシル塩酸塩(以下「TPI」ともいう)を1:0.5のモル比で配合したTAS−102[ロンサーフ(登録商標)配合錠、大鵬薬品工業株式会社製](特許文献1)の有効性が複数の臨床試験で証明され、治癒切除不能な進行または再発の結腸または直腸癌を適応とする抗悪性腫瘍剤として日本で製造販売が承認された。
したがって、FTDを含む抗悪性腫瘍剤はがん化学療法剤の新たな選択肢として実診療で用いられると同時に、新たな適応症として、術前・術後の補助療法、他の抗がん剤との併用療法、さらには他の癌種への適応が、基礎および臨床試験により検証されていくと想定される。
FTDの抗腫瘍効果または副作用の発現を早期に診断することが可能となれば、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の適正使用が促進され、また、新たな用途の検証試験が加速され、同剤の医療・産業上の価値が高くなると考えられる。
FTDの抗腫瘍効果および副作用の作用機序は、FTDがチミンと構造が類似しているためDNAに間違って取り込まれることによって、がん細胞の分裂および/または増殖を抑制するという説が有力である。また、FTDによる代表的な副作用は骨髄抑制およびそれに基づく感染症であるが、FTDが骨髄細胞のDNAに取り込まれることに起因すると考えられている。
DNAに取り込まれたFTDを認識する抗体として、IU−4(非特許文献1)が報告されている。IU−4は、BrdUまたはIododeoxyuridineを特異的に認識するが、DNAに取り込まれたFTD(CFdUrd)も認識することが開示されている。
一方、抗BrdU(5−bromo−2’−deoxyuridine)抗体は、5−bromo−2’−deoxyuridineを特異的に認識し,5−iodo−2’−deoxyuridine(10%)との交叉性を示す。一方、抗BrdU抗体は、5’−fluoro−2’−deoxy−uridineまたは他の内在性細胞成分(例えば、チミジンおよびウリジンなど)と交叉しない。
国際公開第96/30346号
Cytometry、7(6)、499−507、1986
臨床サンプル等の被験試料中のDNAに取り込まれたFTDをより効率よく、迅速に検出することが可能になれば、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する診断法に有用である。したがって、本発明は、被験試料中のDNAに取り込まれたFTDをより効率よく、迅速に検出することができる被験試料中のDNAに取り込まれたFTDの検出剤および該検出剤を含むキット、並びに該検出剤を用いた抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果の判定方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出できる抗体について鋭意研究を行ったところ、予想外にも、公知の抗BrdU抗体の中から、FTDに対して選択的、且つ、十分な親和性を持つ抗体を見出し、さらにFTDをDNAに取り込んだがん細胞を該抗体により検出できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
1.以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤。
(a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
(b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
2.被験試料ががん細胞を含む試料である前項1に記載の検出剤。
3.前記がん細胞が、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肺癌および乳癌から選ばれる少なくとも1の腫瘍由来である前項1または2に記載の検出剤。
4.被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出するためのキットであって、前項1〜3のいずれか1項に記載の検出剤、および該検出剤と被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンとの結合を検出するための少なくとも1種類の試薬を含むキット。
5.以下の工程(1)および(2)を含む被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する方法。
(1)以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤と、被験試料とを接触させる工程
(a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
(b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
(2)前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンと前記検出剤との結合反応を指標として、前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する工程
6.被験試料ががん細胞を含む試料である前項5に記載の方法。
7.前記がん細胞が、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肺癌および乳癌から選ばれる少なくとも1の腫瘍由来である前項5または6に記載の方法。
8.以下の工程(1)〜(3)を含む、トリフルリジンまたはトリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する方法。
(1)以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤と、被験試料とを接触させる工程
(a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
(b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
(2)前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンと前記検出剤との結合反応を指標として、前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する工程
(3)工程(2)で得られた検出結果を指標としてトリフルリジンまたはトリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する判定工程
9.ネオアジュバント療法において用いられる前項8に記載の方法。
10.被験試料ががん細胞を含む試料である前項8または9に記載の方法。
11.前記がん細胞が、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肺癌および乳癌から選ばれる少なくとも1の腫瘍由来である前項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
12.前記被験試料が、トリフルリジンおよびトリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤を投与された哺乳動物由来の試料である前項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
13.前記トリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤が、トリフルリジンとチピラシル塩酸塩を含有する抗悪性腫瘍剤である前項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
本発明の検出剤は、被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを高い効率で、迅速に検出することができ、FTDを化学的に共有結合した牛血清アルブミン蛋白、およびFTDを試験管内で処置したがん細胞から抽出したDNAを高感度で認識することができる。
また、本発明の検出剤は、細胞レベルではFTDを試験管内で処置したがん細胞の免疫蛍光染色に応用可能である(例えば、FACSおよびIF)。さらに、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤を投与された哺乳動物から摘出し、パラフィン包埋したがん組織において、FTDを取り込んだ細胞の免疫組織染色に応用することができる。
また、本発明の検出剤によれば、患者がFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤による治療を継続する方がよいか否かを決定することが可能となる。このことにより、患者は、不要な抗悪性腫瘍剤による治療を受ける必要性が軽減される。
図1は、抗BrdU抗体(クローン3D4)を用いた免疫組織染色の結果を示す。(試験例2) 図2は、抗BrdU抗体(クローン3D4)を用いた免疫組織染色の結果を示す。(試験例3)
本発明の検出剤は、被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出する検出剤であり、以下の(a)または(b)の抗体を含む。
(a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
(b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
抗BrdUモノクローナル抗体3D4は、マウスモノクローナル抗体である。なお、抗BrdUモノクローナル抗体3D4と同等の機能を有する、抗BrdUモノクローナル抗体3D4の改変体または誘導体も抗BrdUモノクローナル抗体3D4に含まれるものとする。
抗BrdUモノクローナル抗体3D4(以下、「クローン3D4」ともいう)としては、市販されているものを用いることもでき、例えば、クローン番号3D4(BD Biosciences社製、カタログ番号555627)が挙げられる。
単鎖抗体とは、抗原結合部位を構成する2つの可変領域断片VH(重鎖可変領域)およびVL(軽鎖可変領域)を柔軟なリンカーで結んで作製した組換え抗体断片である(米国特許第4,946,778号)。
抗体断片としては、例えば、抗体分子をモノクローナル抗体3D4のペプシン消化により生成することができるF(ab’)断片、F(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成することができるFab’断片、および抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することにより生成することができるFab’断片が挙げられる。
被験試料は動物細胞由来の試料であることが好ましく、哺乳動物細胞由来であることがより好ましい。哺乳動物としては、ヒト、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ハムスターおよびイヌ等が挙げられ、ヒトおよびマウスが好ましく、ヒトがより好ましい。被験試料としては、例えば、被験体から採取した組織の可溶化液から抽出したDNA、細胞診材料(例えば、塗抹標本等)、組織標本等が挙げられる。
被験試料は、がん細胞を含む試料であることが好ましい。被験試料中にがん細胞が含まれていると、本発明の検出剤と被験試料中のDNAに取り込まれたFTDとの結合を検出することにより、FTDをDNAに取り込んだがん細胞を検出することができる。
がん細胞は、悪性腫瘍由来であることが好ましい。悪性腫瘍とは、例えば、がん患者の生体組織において、個体としての調和を破り、増殖の制御機構に異常を来している組織の腫瘍である。悪性腫瘍としては特に制限はされないが、例えば、上皮性癌(例えば、呼吸器系癌、消化器系癌、生殖器系癌および分泌系癌等が挙げられる。)、肉腫、造血細胞系腫瘍、中枢神経系腫瘍および末梢神経腫瘍等が挙げられる。
また、悪性腫瘍の発生臓器の種類も特に制限はされないが、例えば、結腸直腸癌、頭頚部癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、血液癌、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍および中皮腫等が挙げられ、好ましくは結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肺癌および乳癌である。
本発明の検出剤は、被験試料中のDNAに取り込まれたFTDの検出に関して、公知の方法、例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA、放射性免疫アッセイ、免疫蛍光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、および同様のものにおいて用いることができる。
本発明のキットは、被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出するためのキットであって、本発明の検出剤、および該検出剤と被験試料中のDNAに取り込まれたFTDとの結合を検出するための少なくとも1種類の試薬を含む。
前記試薬としては、例えば、DNA抽出液およびメンブラン等が挙げられる。本発明のキットは、さらに使用のための説明書、周知の試薬および希釈剤を含んでもよい。また、本発明のキットは、二次抗体を含んでもよく、該二次抗体は標識することができ、固体支持体に付着させてもよい。該二次抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよい。
本発明の被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出する方法は、以下の工程(1)および(2)を含む。
(1)以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたFTDの検出剤と、被験試料とを接触させる工程
(a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
(b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
(2)前記被験試料中のDNAに取り込まれたFTDと該検出剤との結合反応を指標として、前記被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出する工程
以下、各工程について説明する。
(1)本発明の検出剤と被験試料とを接触させる工程
本発明の検出剤と被験試料とを接触させる方法としては、具体的には、例えば、以下の(i)〜(iii)が挙げられる。
(i)被験試料が被験体から採取した組織の可溶化液から抽出したDNAである場合、例えば、該DNAをアルカリ変性後、メンブレン上にスポットした後に、本発明の検出剤と接触させる。
(ii)被験試料が細胞診材料である場合、被験体から採取した細胞をスライドガラスに直接塗抹するか、または生理食塩水などの等張溶液にて洗浄し、例えば、遠心分離して細胞沈渣を作成後、スライドガラスに塗抹後、有機溶媒(例えば、エタノール等)水溶液または有機溶媒を含む固定剤にて湿固定して細胞診標本を作製し、本発明の検出剤と接触させる。
(iii)被験試料が組織標本である場合、押捺標本または切除材料凍結組織については、エタノールまたはホルマリン溶液などで固定して組織標本を作製し、本発明の検出剤と接触させる。針生検または切除材料については、ホルマリン固定を行い、公知の方法により、組織標本を作製し、本発明の検出剤と接触させる。
本発明の検出剤と被験試料とを接触させる条件は、検出剤に含まれる抗体または抗体断片と被験試料中のDNAに取り込まれたFTDとの結合反応が損なわれない条件であれば特に制限されず、通常の免疫反応における条件が採用される。好ましくは0〜100℃、より好ましくは2〜50℃の温度条件下で、反応時間は好ましくは0.5〜72時間、より好ましくは1〜48時間とし、放置またはインキュベーションする方法が挙げられる。
また、結合反応に使用する溶媒およびそのpHも前記反応に悪影響を与えないものであれば特に制限されず、常法にしたがってまたはそれに準じて、pHが5〜9程度になるように、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩緩衝液および酢酸緩衝液等)を用いることもできる。
なお、工程(1)は、本発明の検出剤を固定化(固相化)した状態(固体の担体に結合させた状態)で行うことができる。当該固定化には、本発明の検出剤が固体の担体に脱着可能な状態で結合している場合と、脱着不可能な状態で結合している場合の両方が含まれる。
固定化方法としては、特に制限はなく、各種固体担体に応じて、物理的結合および化学的結合のいずれをも使用できる。具体的には、例えば、共有結合法としてジアゾ法、ペプチド法(例えば、酸アミド誘導体法、カルボキシルクロライド樹脂法、カルボジイミド樹脂法、無水マレイン酸誘導体法、イソシアナート誘導体法、臭化シアン活性化多糖体法、セルロースカルボナート誘導体法および縮合試薬を使用する方法等)、アルキル化法、架橋試薬による担体結合法(例えば、架橋試薬としてグルタールアルデヒドおよびヘキサメチレンイソシアナート等を用いるもの)、Ugi反応による担体結合法等の化学的反応、オン交換樹脂のような担体を用いるイオン結合法、ガラスビーズ等の多孔性ガラスを担体として用いる物理的吸着法等が挙げられる。
(2)前記被験試料中のDNAに取り込まれたFTDと該検出剤との結合反応を指標として、前記被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出する工程
工程(2)は、本発明の検出剤に含まれる抗体または抗体断片と被験試料中のDNAに取り込まれたFTDとの結合反応で得られる免疫複合体(抗原抗体結合物)を検出する工程である。
本発明の検出剤に含有される抗体または抗体断片は、任意の標識物質で標識した状態で使用することができる。ここで標識物質としては、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリフォスファターゼ等の酵素;フルオレセインイソシアネートまたはローダミンなどの蛍光物質;32Pまたは125I等の放射性物質;金コロイド若しくは白色コロイド等の金属コロイド、赤色若しくは青色などの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスまたは天然ゴムラテックス等のラテックスなどの発色物質(呈色物質);化学発光物質などが挙げられる。これらの標識物質による抗体または抗体断片の標識は、各種標識物質に応じて定法に従って行うことができる。
前記免疫複合体(抗原抗体結合物)の検出方法およびその条件は、特に制限されることなく、通常の免疫測定法で用いられるものと同じか若しくはそれに準じた方法および条件を採用することができる。具体的には、検出剤に含まれる抗体または抗体断片の標識に使用した標識物質の種類に応じて、例えば放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、凝集法およびオクタロニー法(Ouchterlony)等の、一般の免疫化学的測定法において使用される種々の方法を利用することができる(例えば、「ハイブリドーマ法とモノクローナル抗体」、株式会社R&Dプランニング発行、第30−53頁、昭和57年3月5日発行など参照)。
本発明のFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する方法は、以下の工程(1)〜(3)を含む。
(1)本発明の検出剤と被験試料とを接触させる工程
(2)前記被験試料中のDNAに取り込まれたFTDと該検出剤との結合反応を指標として、前記被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出する工程
(3)工程(2)で得られた検出結果を指標としてFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する判定工程
工程(1)および(2)については「被験試料中のDNAに取り込まれたFTDを検出する方法」で説明した工程(1)および(2)と同様であり、被験試料を癌に罹患した患者の被験試料として、抗悪性腫瘍剤投与前の被験試料および抗悪性腫瘍剤投与後の被験試料を対象とすることができる。
FTDを含む抗悪性腫瘍剤は、FTDおよびTPIを含有することが好ましい。FTDを含む抗悪性腫瘍剤におけるFTDとTPIとの配合量の比(モル比)は、500:1〜1:10であることが好ましく、10:1〜1:5であることがより好ましい。FTDを含む抗悪性腫瘍剤としては、例えば、大鵬薬品工業社製ロンサーフ(登録商標)配合錠が挙げられる。FTDを含む抗悪性腫瘍剤は、悪性腫瘍に対する作用が認められる承認または非承認の薬が含まれる。
工程(2)の結果、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤投与前の被験試料にDNAに取り込まれたFTDが検出されず、且つFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤投与後の被験試料にはDNAに取り込まれたFTDが検出された場合には、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤による抗腫瘍効果がある可能性が示唆されると判定することができる。また、工程(2)の結果を予め用意したコントロールと比較して、検出された被験試料にDNAに取り込まれたFTD量を段階的に評価し、判定に用いてもよい。
これに対して、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤投与前の被験試料にDNAに取り込まれたFTDが検出されず、且つFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤投与後の被験試料にはDNAに取り込まれたFTDが検出されないか該FTD量が低い場合は、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤について対象とする被験体に対して抗腫瘍効果がない可能性が高いと判定し、医療従事者に対してFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の使用を中止し、他の治療に切り替えるという治療の選択を与えることができる。
本発明のFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する方法は、ネオアジュバント療法に用いることが好ましい。ネオアジュバント療法とは、術前に抗悪性腫瘍剤による治療を行う療法である。被験体におけるFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果は、ネオアジュバント療法の前および後に評価することができる。
また、本発明の判定方法を用いて、被験体をネオアジュバント療法で治療する際に、治療前に、インビトロにてFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定することができる。このことにより、予めFTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果が低い被験体は、ネオアジュバント療法を受けない方がよいと判断することができる。これに対して、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果が高い患者は、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤を投与する方が良いと判断することができる。
以下の試験例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
試験例1
市販の抗BrdU抗体(7種類)を入手し、FTD結合BSA、および、FTDを取り込んだがん細胞の染色体DNAへの結合親和性を以下(1)〜(3)の方法で比較および評価した。
1)FTDを共有結合したBSA(FTD−BSA)への結合性をドットブロット法で評価した。すなわち、FTD−BSA(100ng−10pg/2μL)をニトロセルロース膜上にスポットし、定法に従って処置した。希釈した抗BrdU抗体を反応させ、結合した抗体量を化学発光量として測定した。
2)FTD(5μM)の存在下で4時間培養したヒト大腸がん株HCT−116細胞から精製した染色体DNAをアルカリ変性後、Hybound−N blotting membraneにスポットし、定法に従って処置した。希釈した抗BrdU抗体を反応させ、結合した抗体量を化学発光量として測定した。
3)FTD(5μM)の存在下で適時培養したHCT−116細胞をエタノール固定し、定法に従って変性させた後、希釈した抗BrdU抗体と反応させた。更に、二次抗体と反応後FACS解析、または、二次抗体とDAPIと反応させた後、免疫蛍光(IF)イメージングを行った。
7種類の抗BrdU抗体について、FTD−BSAおよびFTDを取り込んだがん細胞染色体DNAへの結合親和性、さらには、試験管内でFTDを処理したHCT−116細胞のFACS解析およびIFイメージングを行い、表1に示す評価基準で評価した。結果を表2に示す。
表2において、「FTD−BSA」とはBSAと結合したFTDを意味し、「FTD in DNA」とはDNAに取り込まれたFTDを意味し、「−」は未評価であることを示す。
表2に示すように、Bu20aはFTDとの交差反応性を示すものの、FTDと生体成分との結合様式または実験方法により検出力は大きく変動した。また、BU−33、BU1/75、B44、Mobu1及びBU−1のFTD交差反応性は極めて弱いか、または認められなかった。
すなわち驚くべきことに、抗BrdU抗体(クローン3D4)のみが、BrdUとFTDに対して同等の親和性で結合し、完全な交差反応性を有することが見出された。
試験例2
ヒト大腸がん株HCT−116を皮下移植したヌードマウスに、生理食塩水に溶解したFTD50mg/kgを腹腔内投与(i.p.)した。24時間後がん組織を摘出し、ホルマリン固定後パラフィン包埋し、定法に従って抗BrdU抗体(クローン3D4)を用いた免疫組織染色を行った。結果を図1に示す。
図1に示すように、FTD投与群では、抗BrdU抗体(クローン3D4)により、がん組織ではFTD陽性がん細胞を検出することが可能であった。一方、FTD未投与群では、FTD陽性細胞は認めらなかった。
試験例3
ヒト大腸がん株HCT−116を移植したヌードマウスに、0.5%HPMCに懸濁したTAS−102[ロンサーフ(登録商標)、大鵬薬品工業株式会社製]150mg/kg,i.b.d.を1週間経口投与(p.o.)した。最終投与の24時間後、がん組織を摘出し、ホルマリン固定後パラフィン包埋し、定法に従って抗BrdU抗体(クローン3D4)を用いた免疫組織染色を行った。図2に結果を示す。
図2に示すように、抗BrdU抗体(クローン3D4)により、がん組織ではFTD陽性がん細胞が検出することが可能であった。一方、TAS−102未投与群では、FTD陽性細胞は認めらなかった。
以上の結果より、本発明の検出剤によれば、FTDまたはFTDを含む抗悪性腫瘍剤を投与されたがん患者の腫瘍組織へのFTDの取り込みの有無を組織学的に簡便に検出することが可能になり、同剤の抗腫瘍効果の判定または診断に供する臨床検体検査キット等が作製できることがわかった。

Claims (13)

  1. 以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤。
    (a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
    (b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
  2. 被験試料ががん細胞を含む試料である請求項1に記載の検出剤。
  3. 前記がん細胞が、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肺癌および乳癌から選ばれる少なくとも1の腫瘍由来である請求項1または2に記載の検出剤。
  4. 被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出するためのキットであって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検出剤、および該検出剤と被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンとの結合を検出するための少なくとも1種類の試薬を含むキット。
  5. 以下の工程(1)および(2)を含む被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する方法。
    (1)以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤と、被験試料とを接触させる工程
    (a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
    (b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
    (2)前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンと前記検出剤との結合反応を指標として、前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する工程
  6. 被験試料ががん細胞を含む試料である請求項5に記載の方法。
  7. 前記がん細胞が、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肺癌および乳癌から選ばれる少なくとも1の腫瘍由来である請求項5または6に記載の方法。
  8. 以下の工程(1)〜(3)を含む、トリフルリジンまたはトリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する方法。
    (1)以下の(a)または(b)の抗体または抗体断片を含む、被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンの検出剤と、被験試料とを接触させる工程
    (a)抗BrdU(5−ブロモ−2’−デオキシウリジン)モノクローナル抗体3D4
    (b)(a)の単鎖抗体または抗体断片
    (2)前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンと前記検出剤との結合反応を指標として、前記被験試料中のDNAに取り込まれたトリフルリジンを検出する工程
    (3)工程(2)で得られた検出結果を指標としてトリフルリジンまたはトリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果を判定する判定工程
  9. ネオアジュバント療法において用いられる請求項8に記載の方法。
  10. 被験試料ががん細胞を含む試料である請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記がん細胞が、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肺癌および乳癌から選ばれる少なくとも1の腫瘍由来である請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記被験試料が、トリフルリジンおよびトリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤を投与された哺乳動物由来の試料である請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記トリフルリジンを含む抗悪性腫瘍剤が、トリフルリジンとチピラシル塩酸塩を含有する抗悪性腫瘍剤である請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
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