JP2017071174A - 液体吐出ヘッドの素子基板及び液体吐出記録装置 - Google Patents

液体吐出ヘッドの素子基板及び液体吐出記録装置 Download PDF

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勇治 田丸
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好一 小俣
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Hideo Tamura
秀男 田村
山口 孝明
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孝明 山口
卓 谷口
Taku Taniguchi
卓 谷口
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Kosuke Kubo
康祐 久保
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亮治 大橋
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俊雄 根岸
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Abstract

【課題】液体吐出ヘッドの内部構造やESDの発生場所によらず、ESD破壊を抑えることができる液体吐出ヘッド用の素子基板を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド用の素子基板は、基板100と、基板100の上に設けられ、液体に吐出のためのエネルギーを与えるエネルギー発生素子111と、液体が吐出する吐出口201が形成された吐出口形成面206を備え、基板100との間にエネルギー発生素子111が位置する、絶縁体からなる吐出口形成部材200と、基板100の上にエネルギー発生素子111と電気的に分離して設けられた電流誘導部と、を有している。電流誘導部は、吐出口形成面206に開口する第1の端部304から基板100側に開口する第2の端部305まで吐出口形成部材200を貫通する貫通孔301と、第2の端部305に配置され、基板100に電気的に接続された金属体302と、を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、液体吐出ヘッドの素子基板及び液体吐出記録装置に関し、特に、エネルギー発生素子の静電気放電(ESD; Electro-Static Discharge)による破壊(以下、ESD破壊という)を防止するための構成に関する。
所望の文字や画像等の情報を紙やフィルム等の記録媒体に記録する情報出力装置の1つとして、インクジェットプリンタなどの液体吐出装置がある。液体吐出装置は、液滴を吐出し記録媒体に着弾させることで記録を行う液体吐出ヘッドを備えている。液体吐出ヘッドにおける液体吐出方式の一つとして、サーマルインクジェット方式が知られている。サーマルインクジェット方式では、インクに接するエネルギー発生素子に数μ秒程度通電することで熱エネルギーを発生させ、熱エネルギーで誘発されたインクの発泡現象をインク液滴の吐出に利用する。一般に、サーマルインクジェット方式の液体吐出ヘッドの素子基板は、シリコンからなる基板と、基板上に形成されたエネルギー発生素子と、絶縁体からなる吐出口形成部材と、を有している。エネルギー発生素子は基板と吐出口形成部材との間に位置している。
素子基板の製造工程や液体吐出ヘッドの記録動作において、素子基板にESD破壊が生じる可能性のあることが知られている。特許文献1には、発熱抵抗素子(ヒータ)のESD破壊を防止するため、発熱抵抗素子と並列にダミーMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)を設けることが記載されている。パッドから流入する電流をダミーMOSに流すことで、発熱抵抗素子に大電流が流入することが防止される。
特許文献2には、耐キャビテーション層をゲート接地型MOSに接続することが記載されている。耐キャビテーション層に流れ込んだESDによる電流は、ゲート接地型MOSを介して基板に流れる。このため、耐キャビテーション層と発熱抵抗素子の電極との間の保護膜のESD破壊が生じにくくなる。
特開2004−050636号公報 米国特許第7267430B2号明細書
ESDは素子基板の様々な場所で発生する。このうち、吐出口形成部材の表面で発生したESDによる電流は、吐出口形成部材の表面に沿って進行する。この現象は沿面放電と呼ばれる。特許文献1に開示された構成では、例えばパッドよりも吐出口の近傍で発生したESDによる電流は、吐出口から素子基板の内部に沿面放電によって進入し、保護膜のESD破壊などを引き起こす可能性がある。パッドは一般に素子基板の端部に設けられているため、ESDによる電流の多くは、パッドではなく素子基板の内部に進入する可能性がある。
特許文献2に開示された構成は、ゲート接地型MOSと発熱抵抗素子との距離が大きい場合、その間の保護膜の絶縁性が低い部位でESD破壊が生じるおそれがある。特に、長尺化された液体吐出ヘッドでは、ゲート接地型MOSと発熱抵抗素子との距離が大きくなりやすく、ESD破壊が生じやすい。
すなわち、特許文献1,2のいずれに開示された構成も、ESDがパッドやゲート接地型MOSなどの接地要素から離れたところで発生した場合、ESD破壊が生じやすい。また、ESD破壊の生じやすさは液体吐出ヘッドの内部構造に依存する。
本発明の目的は、液体吐出ヘッドの内部構造やESDの発生場所によらず、ESD破壊が生じにくい液体吐出ヘッドの素子基板を提供することにある。
本発明の液体吐出ヘッド用の素子基板は、基板と、基板の上に設けられ、液体に吐出のためのエネルギーを与えるエネルギー発生素子と、液体が吐出する吐出口が形成された吐出口形成面を備え、基板との間にエネルギー発生素子が位置する、絶縁体からなる吐出口形成部材と、基板の上にエネルギー発生素子と電気的に分離して設けられた電流誘導部と、を有している。電流誘導部は、吐出口形成面に開口する第1の端部から基板側に開口する第2の端部まで吐出口形成部材を貫通する貫通孔と、第2の端部に配置され、基板に電気的に接続された金属体と、を有する。
上記のように構成された本発明によれば、吐出口形成部材の吐出口形成面に発生したESDによる電流を電流誘導部から基板に逃がすことができる。電流誘導部は、ESDによる電流を吐出口とは別に設けられた貫通孔に誘導するため、吐出口に流れ込む電流を制限することができる。電流誘導部はエネルギー発生素子と電気的に分離して設けられているため、電流誘導部に流れ込んだ電流がエネルギー発生素子を絶縁破壊する可能性は低い。
従って、本発明によれば、液体吐出ヘッドの内部構造やESDの発生場所によらず、ESD破壊が生じにくい液体吐出ヘッドの素子基板を提供することができる。
本発明の液体吐出ヘッドの素子基板の概略図である。 第1の実施形態における素子基板の概略部分平面図である。 図2のX−X線に沿った素子基板の概略断面図である。 第2の実施形態における素子基板の概略断面図である。 第3の実施形態における素子基板の概略断面図である。 第4の実施形態における素子基板の概略部分平面図である。 第5の実施形態における素子基板の概略部分平面図である。 図7のX−X線に沿った素子基板の概略断面図である。 第6の実施形態における素子基板の概略断面図である。 第7の実施形態における素子基板の概略断面図である。
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの素子基板を示す斜視図、図1(b)は、吐出口形成部材の図示を省略した素子基板の部分平面図である。図2(a)は図1の領域Aを拡大して示す素子基板の概略部分平面図、図2(b)は図2(a)において吐出口形成部材を破線で示した素子基板の透視図である。図3(a)は、図2のX−X線に沿った素子基板の概略断面図、図3(b)は図3(a)のB−B線に沿った断面図である。液体吐出ヘッドの素子基板は、インクジェットプリンタなどの液体吐出記録装置の一部を構成している。
液体吐出ヘッドの素子基板1は、基板100と、基板100上に設けられた素子形成層110と、素子形成層110の上に設けられた吐出口形成部材200と、を有している。基板100はシリコンからなり、インクを供給するインク供給路101が形成されている。素子形成層110には液体に吐出のためのエネルギーを与える複数のエネルギー発生素子111が配置されている。本実施形態では、エネルギー発生素子111は発熱抵抗素子(ヒーター)である。吐出口形成部材200はエポキシ系樹脂材料などの絶縁体からなり、天井部材200aと側面部材200bを有している。本実施形態では吐出口形成部材200の膜厚は40μmであり、より具体的には天井部材200aの膜厚が15μm、側面部材200の膜厚が25μmである。側面部材200bは各発熱抵抗素子111に対応した発泡室202と、複数の発泡室202に共通するインクの液室204と、液室204と発泡室202の間に位置し、発泡室202にインクを誘導する連絡流路203と、を形成している。天井部材200aはインクが吐出する複数の吐出口201を有している。吐出口201は各発熱抵抗素子111に対応して設けられている。複数の吐出口201は600dpiのピッチで直線状に配列されて、吐出口列205を形成している。本実施形態では、一つのインク供給路101の両側にそれぞれ一列の吐出口列205が形成されている。一つのインク供給路101の片側だけに一列の吐出口列205が形成されてもよい。天井部材200aの側面部材200bと反対側の面は吐出口201が形成された吐出口形成面206を形成している。インクは図示しないインクタンクから、インク供給路101と液室204と連絡流路203を通って発泡室202に供給される。インクは発泡室202に面して設けられたエネルギー発生素子111で発熱され、発泡し、液滴として吐出口201から吐出する。
図1(b)を参照すると、基板100上に、エネルギー発生素子111のヒータ電圧の入力端子215と、グラウンド電圧の入力端子216と、が設けられている。入力端子215は共通発熱素子電極218に、入力端子216は共通グラウンド電極219に接続されている。データ入力端子217は制御回路(不図示)を介して各エネルギー発生素子111に接続されている。本実施形態では、素子基板1の幅Wsubは2.2mm、長さLsubは30.0mmである。
図2を参照すると、エネルギー発生素子111には第1のヒータ電極層211と第2のヒータ電極層212が電気的に接続されている。第1のヒータ電極層211はエネルギー発生素子111と反対側の端部において共通発熱素子電極218に接続されている。第2のヒータ電極層212はエネルギー発生素子111と反対側の端部においてスイッチング素子213に接続されている。スイッチング素子213は第2のヒータ電極層212と反対側の端部において共通グラウンド電極219に接続されている。従って、共通発熱素子電極218は各エネルギー発生素子111に対応した第1のヒータ電極層211を介してエネルギー発生素子111と接続されている。また、共通グラウンド電極219は各エネルギー発生素子111に対応したスイッチング素子213及び第2のヒータ電極層212を介してエネルギー発生素子111に接続されている。制御回路は、データ入力端子217から入力されたデータに基づいて各スイッチング素子213を制御する。
エネルギー発生素子111の上には耐キャビテーション層214が配置されている。耐キャビテーション層214は、インクの発泡及び消泡時における熱的、物理的、化学的衝撃からエネルギー発生素子111を保護するための防護層である。
図3を参照すると、基板100の上には熱酸化膜222が600nm厚で、ゲート酸化膜(不図示)が膜厚50nmで形成されている。熱酸化膜222の上にはBPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)からなる第1の蓄熱層224が膜厚600nmで形成されている。第1の蓄熱層224の上には、AlSiからなる第1のスイッチング素子電極(不図示)が膜厚400nmで形成されている。第1のスイッチング素子電極は第1の蓄熱層224に設けられたビアを介して基板100に接続されている。基板100と第1のスイッチング素子電極の接続領域にはN型の不純物拡散領域(不図示)が形成されている。第1のスイッチング素子電極と、不純物拡散領域と、基板100と、第2のスイッチング素子電極(不図示)と、ゲート電極(不図示)と、でスイッチング素子213(図2参照)が形成される。第2のスイッチング素子電極は第1のスイッチング素子電極と同一の材料かつ同一の膜厚で形成されている。ゲート電極はポリシリコン(Poly−Si)からなり、膜厚250nmで形成されている。第1のスイッチング電極の上には絶縁体であるP−SiOからなる第2の蓄熱層225が膜厚900nmで形成されている。第2の蓄熱層225の上には、TaSiNからなる発熱抵抗体層226が膜厚20nmで形成されている。発熱抵抗体層226は、Ta,W,Ir,Cr,Hf,Nb,V,Ti,Zr,Mo,Mn,Co,Ni,Laのいずれか、もしくはいずれかの合金で形成してもよい。発熱抵抗体層226の上には、発熱抵抗体層226の上に部分的に設けられた第1のヒータ電極層211と第2のヒータ電極層212が形成されている。第1のヒータ電極層211、第2のヒータ電極層212はいずれもAlCuからなり、膜厚1μmで形成されている。液体吐出ヘッドの作動時には、発熱抵抗体層226のうち、第1のヒータ電極層211と第2のヒータ電極層212との間に位置する部分が、発熱する発熱抵抗部を形成する。第1のヒータ電極層211と、第2のヒータ電極層212と、発熱抵抗体層226とによってエネルギー発生素子111が形成される。発熱抵抗体層226は第2の蓄熱層225に設けられたビアを介して第1のスイッチング電極に接続される。第1のヒータ電極層211と第2のヒータ電極層212と発熱抵抗体層226の上には、SiCNからなる保護膜227が膜厚300nmで形成されている。保護膜227の上には、Taからなる耐キャビテーション層214が膜厚200nmで形成されている。耐キャビテーション層214は発熱抵抗体層226及び電極211,212を覆っている。耐キャビテーション層214は、Ta,W,Ir,Cr,Hf,Nb,V,Ti,Zr,Mo,Mn,Co,Ni,Laのいずれか、もしくはいずれかの合金で形成してもよい。耐キャビテーション層214と保護膜227の上には、吐出口形成部材200の側面部材200bが形成されている。熱酸化膜222から耐キャビテーション層214までの膜は素子形成層110を形成する。
以下、本発明の各実施形態についてさらに詳細に説明する。上述した構成は各実施形態に共通である。
(第1の実施形態)
図2に示すように、素子基板1は電流誘導部300を有している。電流誘導部300は互いに隣接するエネルギー発生素子111の間に位置している。より具体的には、電流誘導部300は第1のヒータ電極層211と、第2のヒータ電極層212と、スイッチング素子213と、耐キャビテーション層214とに囲まれた領域に形成されている。
電流誘導部300の設置位置と個数は、電流誘導部300がエネルギー発生素子111と電気的に絶縁されている限り制約されない。ESDによる電流が吐出口201から素子基板1の内部に流入することを防止するためには、電流誘導部300は吐出口201の近傍に位置していることが望ましく、多くの電流誘導部300が設けられることが望ましい。電流誘導部300はエネルギー発生素子111などの従来の要素がない場所を選んで配置できるため、素子基板1の内部構造に及ぼす影響が小さい。本実施形態では、2つの電流誘導部300が1つのエネルギー発生素子111と対応しているが、少なくとも1つの電流誘導部300が1つのエネルギー発生素子111と対応していればよい。電流誘導部300は吐出口列205の長手方向端部の耐キャビテーション層214が形成されていない領域にも配置されている。
図3(a)に示すように、電流誘導部300は、吐出口形成部材200を厚さ方向に貫通して延びる貫通孔301と、基板100の上に素子形成層110と同じレベルで設けられた金属体302と、を有する。貫通孔301は金属体302に対応して配置されている。すなわち、一つの貫通孔301と一つの金属体302で一つの電流誘導部300が構成されている。電流誘導部300は基板100に設けられ、エネルギー発生素子111、すなわち第1のヒータ電極層211、第2のヒータ電極層212及び発熱抵抗体層226と電気的に分離している。電流誘導部300は耐キャビテーション層214とも電気的に分離している。金属体302は基板100に電気的に接続(接地)されている。従って、貫通孔301は金属体302によって基板100に電気的に接続されている。
貫通孔301は、吐出口形成部材200の吐出口形成面206に開口する第1の端部304から、吐出口形成面206と反対側の、基板100と対向する第2の端部305まで延びている。本実施形態では、貫通孔301の深さは吐出口形成部材200の厚さと同じ40μmである。貫通孔301の内部は空洞となっている。貫通孔301はESDによる電流を誘導する電流誘導孔として機能する。貫通孔301はどのような形状であってもよいが、内角θが鋭角をなす形状が好ましい。これによって、沿面放電を貫通孔301の内面の突起部(角部)に沿って効率的に伝達することができる。本実施形態では、貫通孔301は、図3(b)に示すように星形の16角形の形状を有し、一辺が10μmの正方形に包絡されている。
以下に述べるように、金属体302は第1〜第4の金属層311、312、313、314と、ビア342、343、344と、によって形成される。第1の金属層311は絶縁体からなる保護膜227の上に形成されている。第1の金属層311は貫通孔301の第2の端部305に配置され、第2の端部305で貫通孔301の内面と接触している。第1の金属層311は耐キャビテーション層214と対応する位置にあり、耐キャビテーション層214と同一の材料かつ同一の膜厚で形成されている。これによって、第1の金属層311を耐キャビテーション層214と同一の工程で同時に作成することができる。
第2の蓄熱層225の上に第3の金属層313が、第3の金属層313の上に第2の金属層312が形成されている。第3の金属層313と第2の金属層312は接触しており、電気的に接続されている。第2の金属層312は第1のヒータ電極層211(及び第2のヒータ電極層212)と対応する位置にあり、第1のヒータ電極層211(及び第2のヒータ電極層212)と同一の材料かつ同一の膜厚で形成されている。第3の金属層313は発熱抵抗体層226と対応する位置にあり、発熱抵抗体層226と同一の材料かつ同一の膜厚で形成されている。従って、第2の金属層312を第1のヒータ電極層211(及び第2のヒータ電極層212)と、第3の金属層313を発熱抵抗体層226と同一の工程で、それぞれ同時に作成することができる。第1の金属層311は、絶縁体からなる保護膜227に設けられた導電性のビア342を介して、第2の金属層312と電気的に接続されている。
第1の蓄熱層224の上には第4の金属層314が形成されている。第4の金属層314は第1のスイッチング電極と対応する位置にあり、第1のスイッチング電極と同一の材料かつ同一の膜厚で形成されている。これによって、第4の金属層314を第1のスイッチング電極と同一の工程で同時に作成することができる。第3の金属層313は、絶縁体からなる第2の蓄熱層225に設けられた導電性のビア343を介して、第4の金属層314と電気的に接続されている。第4の金属層314は、第1の蓄熱層224及びゲート熱酸化膜222に設けられた導電性のビア344を介して、基板100と電気的に接続されている。第4の金属層314と基板100との接続領域には、P型の不純物拡散領域341が形成されている。
このように、本実施形態では、金属体302をこれと隣接する素子形成層110と同じ層構成で構成し、かつ金属体302を構成する金属層の間に絶縁層が存在する箇所では、絶縁層に導電性のビアを設けている。よって、金属体302をほぼ素子形成層110を作成する工程に合わせて形成することができ、金属体302を形成するための追加の工程がほとんど必要ない。本実施形態では、金属体302の外形寸法は第2の金属層312で規定され、一辺20μmの正方形に包絡されている。
素子基板1の表面で発生したESDによる電流は、素子基板1のESD破壊を引き起きす可能性がある。具体的には、吐出口形成部材200の吐出口形成面206で発生したESDによる電流は、吐出口201から吐出口形成部材200の内部に入る可能性がある。吐出口形成部材200の内部に入った電流は、耐キャビテーション層214を通り、さらに保護膜227の絶縁性の弱い箇所を通って第1及び第2のヒータ電極層211,212に流れる可能性がある(図3の破線参照)。本実施形態では、基板100に接地された金属体302に接続された貫通孔301にESDによる電流が誘導されやすいため、素子基板1がESD破壊を起こす確率を低減することができる(図3の実線参照)。特に、本実施形態では耐キャビテーション層214と金属体302とが電気的に分離されており、耐キャビテーション層214よりも多くの電荷を蓄積可能である基板100に金属体302が接地されている。これにより、ESDによる電流が貫通孔301により誘導されやすくなるため好ましい。
本実施形態の素子基板1と、本実施形態と同一構成で電流誘導部300を有さない比較例1の素子基板1をそれぞれ、一つのウエハに270個形成して、製造工程後にESD破壊の発生状況を評価した。比較例では30の素子基板1でESD破壊が発生し、本実施形態では、ESD破壊を起こした素子基板1を5個まで低減することができた。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態の素子基板1について説明する。説明を省略した構成は第1の実施形態の素子基板1と同様である。特に、本実施形態の電流誘導部の配置は第1の実施形態と同様である。
図4(a)は、第2の実施形態の素子基板1の図2のX−X線に沿った断面図、図4(b)は図4(a)のC−C線に沿った貫通孔の断面図である。本実施形態は貫通孔の構成が第1の実施形態と異なる。すなわち、貫通孔301は40μmの厚さと、直径10μmの円形断面を有し、その内側に厚さ40μm、直径6μmの円形の絶縁性の部材421を有している。絶縁性の部材421は吐出口形成部材200と同じ材料、本実施形態ではエポキシ系樹脂材料で形成することができる。換言すれば、本実施形態の貫通孔は環状の断面を有している。
第1の実施形態と同様に、270個の素子基板1に対して製造工程後にESD破壊の発生状況を評価したところ、本実施形態では、ESD破壊を起こした素子基板1は比較例1の30個に対し5個であった。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態の素子基板1について説明する。説明を省略した構成は第1の実施形態の素子基板1と同様である。特に、本実施形態の電流誘導部の配置は第1の実施形態と同様である。
図5(a)は、第3の実施形態の素子基板1の図2のX−X線に沿った断面図、図5(b)は図5(a)のD−D線に沿った貫通孔の断面図である。本実施形態は貫通孔の構成が第1の実施形態と異なる。すなわち、貫通孔301の内面に導電性の部材521が形成されている。導電性の部材521は貫通孔301の全厚さに渡って(すなわち、40μmの厚さで)貫通孔301の内部に充填されている。導電性の部材521の材料は特に限定されないが、本実施形態ではポリチオフェン混合樹脂材料を用いている。本実施形態のように導電性の部材521を貫通孔301の内部に設けることでESDによる電流が貫通孔301により誘導されやすくなるため好ましい。
第1の実施形態と同様に、270個の素子基板1に対して製造工程後にESD破壊の発生状況を評価したところ、本実施形態では、ESD破壊を起こした素子基板1は比較例1の30個に対し4個であった。
(第4の実施形態)
以下、第3の実施形態の素子基板1について説明する。説明を省略した構成は第1の実施形態の素子基板1と同様である。
図6(a)は本発明の第4の実施形態の素子基板1の図1の領域Aを拡大して示す概略部分平面図、図6(b)は図6(a)において吐出口形成部材200を破線で示した透視図である。電流誘導部300は、2つのエネルギー発生素子に対して1箇所形成されている。つまり、1つの電流誘導部300が複数のエネルギー発生素子111と対応している。電流誘導部300は、第1のヒータ電極層211、第2の電極212、スイッチング素子213および耐キャビテーション層214に囲まれた領域に形成されている。
第1の実施形態と同様に、270個の素子基板1に対して製造工程後にESD破壊の発生状況を評価したところ、本実施形態では、ESD破壊を起こした素子基板1は比較例1の30個に対し15個であった。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態の素子基板1について説明する。説明を省略した構成は第1の実施形態の素子基板1と同様である。特に、本実施形態の電流誘導部の配置は第1の実施形態と同様である。
図7は,第5の実施形態の素子基板1の図2(b)と同様の断面図、図8は図7のX−X線に沿った貫通孔の断面図である。耐キャビテーション層214の上に耐キャビテーション層214と吐出口形成部材200との密着性を高める密着性向上層611が形成されている。密着性向上層611はP−SiOで形成され、膜厚100nmで形成されている。図7に示すように、密着性向上層611の除去部612が発熱抵抗部に設けられている。第1の金属層311は絶縁層613で覆われている。絶縁層613は、貫通孔301の第2の端部305の内側で金属体302、すなわち第1の金属層311の少なくとも一部を露出させる開口614を有している。本実施形態では、絶縁層613の開口614の大きさは一辺16μmの正方形であり、貫通孔301を完全に含んでいる。従って、貫通孔301を伝搬するESDによる電流は第1の金属層311に伝搬される。絶縁体層613は密着性向上層611と同材料、同膜厚で形成されている。これによって、絶縁体層613を密着性向上層611と同一の工程で同時に作成することができる。
第1の実施形態と同様に、270個の素子基板1に対して製造工程後にESD破壊の発生状況を評価したところ、本実施形態では、ESD破壊を起こした素子基板1は比較例1の30個に対し5個であった。
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態の素子基板1について説明する。説明を省略した構成は第1の実施形態の素子基板1と同様である。特に、本実施形態の電流誘導部の配置は第1の実施形態と同様である。
図9は、第6の実施形態の素子基板1の図3(a)と同様の断面図である。金(Au)からなる金属層711が膜厚3μmで形成されている。基板100の吐出口形成部材200の外側に設けられた端子215,216,217(図1(b)参照)の上には、エネルギー発生素子111の駆動信号を伝達するワイヤを端子に接続する接合材料(不図示)が設けられている。金属層711はこの接合材料と対応した位置にあり、接合材料と同一の材料かつ同一の膜厚で形成されている。これによって、金属層711を接合材料と同一の工程で同時に作成することができる。本実施形態では金属層711をAuで形成しているが、Auを含む別の金属材料で形成してもよい。なお、本実施形態では耐キャビテーション層214が形成されていない。
第1の実施形態と同様に、270個の素子基板1に対して製造工程後にESD破壊の発生状況を評価したところ、本実施形態では、ESD破壊を起こした素子基板1は比較例1の30個に対し3個であった。
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態の素子基板1について説明する。説明を省略した構成は第1の実施形態の素子基板1と同様である。特に、本実施形態の電流誘導部の配置は第1の実施形態と同様である。
図10は、第7の実施形態の素子基板1の図3(a)と同様の断面図である。本実施形態は、金属体302の構成が第1の実施形態と異なる。本実施形態では、第1の金属層811が、絶縁体からなる第2の蓄熱層225の上に、発熱抵抗体層226と対応する位置に形成されている。金属層811は、発熱抵抗体層226と同一材料かつ同一膜厚で形成されている。これによって、第1の金属層811を発熱抵抗体層226と同一の工程で同時に作成することができる。第1の金属層811は第2の蓄熱層225に設けられた導電性のビア843を介して第4の金属層314と電気的に接続している。第1および第4の金属層811、314、ビア843、344により金属体302が形成される。本実施形態の金属体302の外形は第1の金属層801で規定され、一辺20μmの正方形に包含されている。
第1の実施形態と同様に、270個の素子基板1に対して製造工程後にESD破壊の発生状況を評価したところ、本実施形態では、ESD破壊を起こした素子基板1は比較例1の30個に対し5個であった。
以上述べた各実施形態において、素子基板1の形状は長方形に限定されず、平行四辺形、三角形、その他の多角形でもよい。第1の蓄熱層122及び第2の蓄熱層132に平坦化処理を行ってもよい。これらの液体吐出ヘッドでも同様の効果が得られる。
100 基板
111 エネルギー発生素子
200 吐出口形成部材
300 電流誘導部
301 貫通孔
302 金属体

Claims (17)

  1. 基板と、
    前記基板の上に設けられ、液体に吐出のためのエネルギーを与えるエネルギー発生素子と、
    液体が吐出する吐出口が形成された吐出口形成面を備え、前記基板との間に前記エネルギー発生素子が位置する、絶縁体からなる吐出口形成部材と、
    前記基板の上に前記エネルギー発生素子と電気的に分離して設けられた電流誘導部と、を有し、
    前記電流誘導部は、前記吐出口形成面に開口する第1の端部から前記基板側に開口する第2の端部まで前記吐出口形成部材を貫通する貫通孔と、前記第2の端部に配置され、前記基板に電気的に接続された金属体と、を有する、液体吐出ヘッド用の素子基板。
  2. 前記エネルギー発生素子は複数設けられ、前記電流誘導部は互いに隣接する前記エネルギー発生素子の間に位置している、請求項1に記載の素子基板。
  3. 少なくとも1つの前記電流誘導部が1つの前記エネルギー発生素子と対応している、請求項2に記載の素子基板。
  4. 1つの前記電流誘導部が複数の前記エネルギー発生素子と対応している、請求項1に記載の素子基板。
  5. 前記貫通孔は、前記吐出口形成面と平行な断面において、鋭角をなす少なくとも1つの内角を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の素子基板。
  6. 前記貫通孔の内部は空洞を形成している、請求項1から5のいずれか1項に記載の素子基板。
  7. 前記電流誘導部は、前記貫通孔の内面に設けられた導電性の部材を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の素子基板。
  8. 前記電流誘導部は、前記貫通孔の内部に前記貫通孔の内面から離れて設けられた絶縁性の部材を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の素子基板。
  9. 前記エネルギー発生素子は、発熱抵抗体層と、前記発熱抵抗体層を部分的に覆う電極層と、を有し、
    前記発熱抵抗体層と前記電極層を覆う耐キャビテーション層をさらに有し、
    前記金属体と前記耐キャビテーション層とは電気的に分離している、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の素子基板。
  10. 前記金属体は、前記耐キャビテーション層に対応する位置にあって前記貫通孔の前記第2の端部と接する第1の金属層と、前記電極層に対応する位置にあって前記第1の金属層と電気的に接続された第2の金属層と、前記発熱抵抗体層に対応する位置にあって前記第2の金属層と電気的に接続された第3の金属層と、を有し、前記第1の金属層は前記耐キャビテーション層と同一の材料からなり、前記第2の金属層は前記電極層と同一の材料からなり、前記第3の金属層は前記発熱抵抗体層と同一の材料からなる、請求項9に記載の素子基板。
  11. 前記耐キャビテーション層と前記吐出口形成部材との間に位置し、前記耐キャビテーション層と前記吐出口形成部材との密着性を高める密着性向上層と、
    前記金属体の上の、前記密着性向上層に対応する位置に設けられた、前記密着性向上層と同一の材料からなる絶縁層と、を有し、
    前記絶縁層は前記貫通孔の内側で前記金属体の少なくとも一部を露出させる開口を有している、請求項9または10に記載の素子基板。
  12. 前記耐キャビテーション層はTa,W,Ir,Cr,Hf,Nb,V,Ti,Zr,Mo,Mn,Co,Ni,Laのいずれか、もしくはいずれかの合金によって形成されている、請求項9から11のいずれか1項に記載の素子基板。
  13. 前記基板の前記吐出口形成部材の外側に設けられた端子と、前記端子の上に設けられ、前記エネルギー発生素子の駆動信号を伝達するワイヤを前記端子に接続する接合材料と、を有し、
    前記エネルギー発生素子は、発熱抵抗体層と、前記発熱抵抗体層を部分的に覆う電極層と、を有し、
    前記金属体は、前記接合材料に対応する位置にあって前記貫通孔の前記第2の端部と接する第1の金属層と、前記電極層に対応する位置にあって前記第1の金属層と電気的に接続された第2の金属層と、前記発熱抵抗体層に対応する位置にあって前記第2の金属層と電気的に接続された第3の金属層と、を有し、前記第1の金属層は前記接合材料と同一の材料からなり、前記第2の金属層は前記電極層と同一の材料からなり、前記第3の金属層は前記発熱抵抗体層と同一の材料からなる、請求項1から8のいずれか1項に記載の素子基板。
  14. 前記第1の金属層と前記接合材料は金を含んでいる、請求項13に記載の素子基板。
  15. 前記エネルギー発生素子は発熱抵抗体層を有し、
    前記金属体は、前記発熱抵抗体層に対応する位置にあって前記貫通孔の前記第2の端部と接する金属層を有し、前記金属層は前記発熱抵抗体層と同一の材料からなっている、請求項1から8のいずれか1項に記載の素子基板。
  16. 前記発熱抵抗体層はTa,W,Ir,Cr,Hf,Nb,V,Ti,Zr,Mo,Mn,Co,Ni,Laのいずれか、もしくはいずれかの合金によって形成されている、請求項9から15のいずれか1項に記載の素子基板。
  17. 請求項1から16のいずれか1項に記載の素子基板を有する液体吐出記録装置。
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