JP2017071005A - 研削装置 - Google Patents

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勝俊 野口
順 津田
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順 津田
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卓也 山下
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Abstract

【課題】操作性と塵埃飛散防止性とを良好に両立させた研削装置を提供する。
【解決手段】本発明は、被削材の表面を研削するための研削装置100である。本発明の研削装置100は、ハウジング200と、出力軸と、研削刃と、カバー500と、通気性摺接部材600と、を含む。ハウジング200は、駆動機構を収容している。出力軸は駆動機構から突設されている。研削刃は、出力軸に固定され、且つ、出力軸の直交面に沿って延在する。カバー500は、研削刃の、被削材の表面と対向すべき側に開口し、且つ、研削刃の全周を覆う周壁部520と当該対向すべき側の反対側を覆う端壁部530とを含む。通気性摺接部材600は圧縮弾性を有し、カバー500の開口端の全周に対して固定されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、研削装置に関する。より具体的には、本発明は、操作性と塵埃飛散防止性とを両立させた研削装置に関する。
被削材の表面を研削するための研削装置には、塵埃飛散を防止するための集塵カバーを有するものが知られている。
たとえば特開2012−171064号公報(特許文献1)には、回転駆動されて被加工面を研削する研削刃周りに配置され、該被加工面と対向する一端が開口する環状の周壁部と、該周壁部の他端側に位置して該周壁部と共に該研削刃が収容される収容空間を画成し、該研削刃を回転駆動する動力工具に装着される端壁部と、環状に構成されて該周壁部の該一端側に装着され該被加工面に当接するシール部材と、を備え、該シール部材は、該周壁部の該一端側から該周壁部の他端側へと向かう方向に気流を発生させるガイド手段を有することを特徴とする研削用集塵カバーが開示されている。シール部材としては、フェルト製の帯状に形成された布体が環状に構成された布体リングが用いられている。
また、特開2012−176474号公報(特許文献2)には、スピンドルにディスク形の先端工具が取り付け可能な携帯型のディスクグラインダーであって、前記先端工具の全周を覆う周壁と背面側を覆う天壁とを備え、一端が開口したカップ状に形成されたカバー本体と、前記天壁に設けられ、前記スピンドルが突出する前記ディスクグラインダーのボス部に固定される取付部と、前記天壁に該天壁から前記開口とは反対側に向けて突出して設けられたスタンドと、前記スタンドの上端に設けられ、前記取付部が前記ボス部に固定されたときに前記スピンドルの軸上に配置されるハンドルとを有することを特徴とするディスクグラインダーが開示されている。このディスクグラインダーでは、周壁の先端にスカート(シール部材)が設けられており、このスカート(シール部材)が、フェルト、ブラシ、スポンジ等を用いて構成されてよいことが記載されている。
特開2012−171064号公報 特開2012−176474号公報
上記の特許文献1および特許文献2ではいずれも、シール部材が、バネ部材を介してカバーに設けられている。当該バネ部材がシール部材に対して付勢することで、シール部材を被削材の表面に接触させる。
ここで、特許文献1および特許文献2のシール部材はいずれも、凸部(特許文献1における凸部41A)および保持片(特許文献2における保持片35)を有する保持部材に固定されており、当該凸部および当該保持片が、それぞれ、カバー周壁の内側に設けられた凹部(特許文献1における凹部21a)および保持溝(特許文献2における保持溝32c)に遊嵌されている。特許文献1および特許文献2のシール部材は、バネ部材によって押し下げられることで被削材の表面に接触させられなければならない。このため、シール部材における保持部材に固定された面は、設計上、カバーに対して固定されてはならないことが必須となる。上述のように、シール部材の保持部材がカバーに対して遊嵌された状態で設けられるのはそのためである。
しかしながら、上述のような遊嵌構造は、その構造上、多くの空気を通すことを免れない。したがって、カバーの内部を吸引し続けたとしても、カバーの被削材表面に対する吸着力は弱い。このため、研削作業中において、被削材表面に対する装置の保持性が悪い。被削材表面に対して装置のカバーを吸着させた状態を保持することが困難である場合、カバー内で生じた塵埃が外部へ飛散することを防止するために、操作者には、常に装置の自重を支える負担が課される。
一方、シール部材をゴム部材に変更すると、カバーの内部が効率よく減圧されるため、カバーを被削材表面に対して良好に吸着させることができる。しかしながら、このようなゴム部材は摩擦力が大きいため、吸着させた状態でカバーを動かすことは困難である。吸着させた状態でカバーを動かそうとしても、摩擦力のため円滑に動かず、作業性が非常に悪い。また、ゴム部材が被削材表面に取られて変形しやすい。その結果、カバーの内部の減圧状態が破壊され、内部の塵埃が外部へ飛散することとなる。
そこで本発明は上記の問題に鑑み、操作性と塵埃飛散防止性とを良好に両立させた研削装置を提供することを目的とする。
(1)
本発明は、被削材の表面を研削するための研削装置である。本発明の研削装置は、ハウジングと、出力軸と、研削刃と、カバーと、通気性摺接部材と、を含む。
ハウジングは、駆動機構を収容している。出力軸は駆動機構から突設されている。研削刃は、出力軸に固定され、且つ、出力軸の直交面に沿って延在する。カバーは、研削刃の、被削材の表面と対向すべき側に開口し、且つ、研削刃の全周を覆う周壁部と当該対向すべき側の反対側を覆う端壁部とを含む。通気性摺接部材は圧縮弾性を有し、カバーの開口端の全周に対して固定されている。
本発明では、通気性摺接部材がカバーの開口端の全周に対して固定されているため、カバーが通気性摺接部材を介して被削材の表面に接触させられカバー内部が吸引された場合に、カバー内部を効率よく減圧することができる。このため、被削材の表面に対する装置の保持性が良好で、操作者が装置の自重を支える負担が軽減される。
また、通気性摺接部材は、カバー内部の吸引圧で圧縮されても通気性を維持するため、カバー内を吸引させた状態であってもカバー内部と外部とを連通する空隙を適度に確保することができる。このため、カバー内部の減圧中に、当該空隙から適度な少量の外気を吸入することで、被削材の表面とカバーとの間で塵埃の飛散を抑制することができる。
そして、通気性摺接部材はその摺動性により、被削材の表面に吸着し、かつ、塵埃の飛散が抑制された状態を保ったまま容易に移動させることができる。
さらに、通気性摺接部材は圧縮弾性を有するため、被削材の表面への接触性が良好で塵埃の飛散を抑制しやすい。
このように、本発明によると、操作性と塵埃飛散防止性とを良好に両立させることができる。
なお、通気性摺接部材がカバーの開口端の全周に対して固定されているとは、通気性摺接部材が、通気性摺接部材の固定面とカバーの開口端との相対的位置関係が変化しないように設けられることをいう。
(2)
上記(1)の研削装置において、開口端は、出力軸の直交面に対して10°以上20°以下で傾斜するように構成されていてよい。
この場合、カバーの開口端が傾斜しているため、被削材の表面にカバーの開口端を沿わせるだけで、被削材の表面に対して研削刃を好ましい角度で接触させることを容易に行うことができる。
(3)
上記(1)または(2)の研削装置は、出力軸の直交面に沿って延在する一対の把持部を含んでいてよい。
本発明の研削装置は被削材の表面に対するカバーの吸着力に優れるため、上述のような把持部を有することで、当該吸着力に抗って装置を移動させることがより容易となる。
(4)
上記(1)から(3)の研削装置は、カバーが、研削刃を開口端よりも端壁部の側で収容するように構成され、研削刃を出力軸の突設方向に往復動可能とする出刃量調節部を含んでよい。
この場合、研削刃がカバーの内部に引き込まれた状態で収容されるため、研削しない時に研削刃が不用意に他の箇所へ接触することを防止する安全設計とすることができる。また、カバーを吸着させたままで、研削刃を被削材の表面から浮かせることも、出刃量調節部によって研削刃を被削材の表面に接触させることもできる。本発明の研削装置は摺動性に優れるため、研削刃を浮かせた状態で、塵埃の飛散を防止しながら移動のみ行うことも可能となる。このため、研削する必要がない表面上であってもカバーを被削材から外すことなく塵埃の飛散を防止しながら容易に移動させることができる。
(5)
上記(4)の研削装置は、ハウジングの、被削材の表面に対向すべき側に押圧面を含み、出刃量調節部が、当該押圧面と端壁部との間に設けられ且つ出力軸の突設方向に伸縮する伸縮部を含んでよい。
この場合、伸縮部を伸縮することで容易に研削刃の出刃量を調節することができる。
(6)
上記(5)の研削装置は、上記(3)の把持部を含む場合に、ハウジングの対向すべき側に押圧面を構成する押圧板を含み、把持部が当該押圧板に連設されていてよい。
この場合、把持部を持ちながら、研削刃の出刃量調節、研削、および移動を容易に行うことができる。
第1実施形態の研削装置の外観斜視図である。 図1の研削装置をII-II線を含む平面で切断した模式的断面図である。 図2の一部拡大図である。 図1の研削装置の模式的切欠き図(未使用時)である。 図1の研削装置を作動させて被削材の表面に接触させた時(非研削時)の、当該研削装置の模式的切欠き図である。 被削材の表面を研削する時(研削時)の図1の研削装置の模式的切欠き図である。 図6の状態から研削刃の角度の微調整を行う時の図1の研削装置の模式的切欠き図である。 第2実施形態の一例である研削装置の部分断面図である。 第2実施形態の他の例である研削装置の部分断面図である。 第3実施形態の研削装置の一部切欠き部分断面図である。 第4実施形態の研削装置の部分断面図である。 第4実施形態の研削装置の一部切欠き部分断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の要素には同一の符号を付しており、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
[1.第1実施形態]
[1−1.基本構成]
図1は、本発明の第1実施形態の研削装置の外観斜視図である。図2は、図1の研削装置をII-II線を含む平面で切断した模式的断面図である。図3は、図2の一部拡大図である。図4は、図1の研削装置の模式的切欠き図(未使用時)である。図5は、図1の研削装置を作動させて被削材の表面に接触させた時(非研削時)の、当該研削装置の模式的切欠き図である。図6は、被削材の表面を研削する時(非研削時)の図1の研削装置の模式的切欠き図である。図7は、図6の状態から研削刃の角度の微調整を行う時の図1の研削装置の模式的切欠き図である。
なお、以下の説明においては、図面の上側を研削装置の上側、図面の下側を研削装置の下側(被削材が位置する側)と記載することがある。しかしながらこれらの方向は説明の便宜上定めるものであり、使用時における絶対的方向を示すものではない。
図1から図7に示す研削装置100は、ディスクグラインダまたはケレン装置などとも呼ばれ、コンクリート、金属、石材などの被削材を研削刃で削ってその表面を調整する装置である。研削装置100は、ハウジング200、出力軸300、研削刃400、カバー500および通気性摺接部材600を含む。さらに、研削装置は、出刃量調節部700および把持部800を含む。
[1−2.ハウジングおよび出力軸]
ハウジング200は、図示されない駆動機構を収容している。駆動機構は、駆動源(本実施形態では電動モータ)と、駆動源の駆動力を伝える動力伝動部(本実施形態ではギア)とを主として含む。ハウジング200は、電動モータを収容する筒状のモータケース210と、モータケース210の一端に設けられた、ギアを収容するギアケース220とを含む。モータケース210の他端からは、電動モータへ電力を供給する図示しない電力供給源に接続される電源コード290が延長している。
図2および図4に示すように、ギアケース220から、ギアに接続された連結突起221が、モータケース210の延在方向と交わる(本実施形態では直交する)方向に突出している。連結突起221は、出力軸300の基端に穿成された連結穴311に連結固定させられることにより、その突出方向に出力軸300が延設される。これによって、電動モータのからギアによって伝達された回転駆動力が出力軸300に伝達されるように構成される。
[1−3.研削刃]
出力軸300の先端部390には研削刃400が設けられている。研削刃400は、中央が開口した円板状であり、中央の開口部に出力軸300が貫通させられることで、出力軸300の突出方向(回転軸O方向に一致)に対する直交面の方向に延在する。出力軸300には、研削刃400を上下両面から挟み込むワッシャ391とナット392とが装着されている。研削刃400は、上側の面がワッシャ391で抑えられ、被削材の表面に対向する下側の面がナット392で締め込まれることで、出力軸300と同軸(回転軸O)で一体的に回転するように固定されている。
[1−4.カバ−]
研削装置100には、研削刃400による加工によって発生する塵埃の飛散を防止するためのカバー500が装着されている。
カバー500は、研削刃400の周りを覆うように配置され被削材の表面に対向する下側で開口した円環状の周壁部520と、研削刃400の上側を覆うように周壁部520の上端に配置された端壁部530と、から主に構成されている。カバー500の内部は、主に周壁部520と端壁部530とで区画される作業空間Sが形成されている。
本実施形態では、端壁部530は、その端縁の部分を構成しかつ周壁部520と連結させられた環状剛直部材532と、当該単縁部分より回転軸Oの側を構成する部分であって出力軸300に貫通させられた円盤状剛直部材539とを含み、さらに、作業空間Sの密閉性を確保するよう、カバー500側の円盤状剛直部材539と出刃量調節部700側の押圧板710(後述)との間に介在させられたダイヤフラム535によって、環状剛直部材532と円盤状剛直部材539との隙間が封止されている。ダイヤフラム535は、出力軸300に貫通させられた中央の開口孔と、開口孔の周縁に形成されたフランジ部とを含んで構成されている。開口孔周辺は円盤状剛直部材539に固定され、フランジ部は環状剛直部材532に固定されている。ダイヤフラム535は、ゴムまたはエラストマーなどの弾性材で構成される。
周壁部520には排気孔525が開口しており(図2参照)、排気孔525を介して作業空間Sに連通する排気ホース529(図1および図4参照)が接続されている。排気ホース529は図示しない集塵機または真空発生機などの吸引機に接続されている。吸引機を作動させることで、作業空間S内に発生する塵埃を排気孔525および排気ホース529を通じて排出する。
図4に示すように、カバー500は、開口端510が出力軸の突出方向に対する直交面OPから角度θをもって傾斜するように構成されている。このよう傾斜した開口端510を有するように構成されることで、カバー500は、被削材表面900に対して研削刃400を当てる角度を決定しかつ一定に保つガイド機能を具える。角度θは被削材表面900に対する研削刃400の推奨角度であればよく、直交面OPに対して10°以上20°以下、好ましくは15°以上20°以下であってよい。これによって、作業者は、被削材表面900に対する研削刃400の角度決めが容易となるとともに、推奨角度を維持しながら作業することも容易となるため、研削作業の作業性を高めることができる。
[1−5.通気性摺接部材]
開口端510に対しては、その全周に沿って通気性摺接部材600が固定されている。本実施形態における通気性摺接部材600は、開口端510の面に固定されている。これにより、通気性摺接部材600の上面の固定面611が開口端510に対して固定される一方、下面の摺接面619が被削材表面900に接触させられる(図5および図6で後述)。
通気性摺接部材600は、圧縮時通気性、摺動性および圧縮弾性を有する通気性素材で構成されればよい。
通気性摺接部材600の圧縮時通気性は、カバー500の作業空間S内部の吸引圧などで圧縮された状態でも、作業空間S内部と外部とを連通する空隙を確保することで通気性を維持する性質をいう。具体的には、当該吸引圧によって開口端510の面によって押しつけられる圧力と同じか、またはそれ以上の圧力で押圧されても当該空隙を確保する。これによって、適切な気体流量を確保して集塵性を良好に発揮することができ、かつ、通気性摺接部材600の摺接面619が被削材表面900に押しつけられた状態で、被削材表面900を容易に移動することができる。本発明では、通気性摺接部材600が当該空隙を確保するために耐える静圧は、たとえば13kPa以上15kPaであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
通気性摺接部材600の摺動性は、被削材表面900に押圧された状態で低摩擦での移動を可能にする性質をいう。
具体的には、通気性摺接部材600の動摩擦係数はたとえば0.17以下であってよい。これによって、カバー500の作業空間S内部の吸引圧などによって通気性摺接部材600の摺接面619が被削材表面900に押しつけられた状態で、被削材表面900を容易に移動することができる。
また、通気性摺接部材600の動摩擦係数はたとえば0.14以上であってよい。これによって、被削材表面900が研削装置100より鉛直下方に存在する面でない場合(たとえば、被削材表面900が鉛直方向などの非水平面、および研削装置100より鉛直上方に存在する面などの場合)であっても、被削材表面900に吸着させた状態で研削装置100を動かしている最中の操作者が、研削装置100の自重を支える負担が少なくて済む。
さらに、通気性摺接部材600の静止摩擦係数はたとえば0.21以上であってよい。これによって、被削材表面900が研削装置100より鉛直下方に存在する面でない場合(たとえば、被削材表面900が鉛直方向などの非水平面、および研削装置100より鉛直上方に存在する面などの場合)であっても、研削装置100を静止させかつ被削材表面900に吸着させた状態において、操作者が研削装置100から手を離したとしても、研削装置100の自重による落下を容易に防止することができる。
また、通気性摺接部材600の静止摩擦係数はたとえば0.3以下であってよい。これによって、研削装置100を静止させかつ被削材表面900に吸着させた状態から操作者が研削装置100を動かす時に、負担が少なくて済む。
通気性摺接部材600の摩擦係数は、たとえば、乾燥したプレキャストコンクリート(粗度係数標準値0.013(係数の範囲:0.011以上0.016以下))に、研削装置100(自重3.75kg)を、通気性摺接部材600を介して吸着させ(静圧13kPa)た場合の引張抵抗から求めることができる。なお、上述の粗度係数は、マニングの平均公式(v=1/n・R2/3・I1/2で表される。ただし、vは流速(m/秒)、nは粗度係数、Rは径深(流積/潤辺)、Iは勾配を示す。)から導出することができる。
通気性摺接部材600の圧縮弾性は、所定の時間加重した後、除重時に元に戻ろうとする性質をいう。これによって、作業時に被削材表面900の方向に対して開口端510の面の方向がぶれても、通気性摺接部材600の摺接面619が被削材表面900へ追随しやすいため、塵埃の飛散を抑制しやすい。
通気性素材は、圧縮弾性を良好に確保する観点から、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂の単独または複数種の混合態様であってよい。摺動性を確保する観点から、通気性摺接部材600の少なくとも被削材表面900と接触する部分において、上記の樹脂からはゴムおよびエラストマーが除かれる。本実施形態では、ポリエステルが選択される。また、異なる特性の通気性素材を積層して通気性摺接部材600が構成されてもよい。たとえば、通気性摺接部材600は、より圧縮弾性に優れる樹脂製素材の下に、より摺動性に優れる樹脂製素材を積層した多層構造であってもよい。
通気性素材は、圧縮時通気性を確保する観点から、連続空隙を有する態様のものであればよく、たとえば繊維体および多孔質体が挙げられる。繊維体としては不織布(JIS L0222に準ずる)およびフェルトが挙げられる。本実施形態においては、化学繊維製不織布または化学繊維製フェルトが用いられる。繊維体の目付は、たとえば0.15g/cm3以上であってよい。これによって、通気性を良好に確保することができる。また、当該目付は、0.6g/cm3以下であってよい。これによって、圧縮弾性を良好に確保することができる。
図3に示すように、通気性摺接部材600の摺接面619の幅wは、非圧縮時の通気性摺接部材600の外径のたとえば10%以上、好ましくは20%以上であってよい。これによって、摺接面619が被削材表面900に接触する面積を十分に確保することができるため、カバー500を被削材表面900に良好に吸着させることができる。当該幅wは、非圧縮時の通気性摺接部材600の外径のたとえば25%以下、好ましくは35%以下であってよい。これによって、通気性摺接部材600の通気性を確保しやすい。
摺接面619の幅wは、固定面611の幅と同じまたはそれ以上である。これによって、摺接面619が被削材表面900に接触する面積を十分に確保することができるため、カバー500を被削材表面900に良好に吸着させることができる。
通気性摺接部材600の非固定部分かつ開口端510から下を構成する部分の高さhは、幅wのたとえば50%以上であってよい。これによって、作業時に被削材表面900の方向に対して開口端510の面の方向がぶれても、通気性摺接部材600の摺接面619が被削材表面900へ追随しやすいため、塵埃の飛散を抑制しやすい。当該高さhは、幅wのたとえば200%以下であってよい。これによって、通気性摺接部材600が、圧縮力、または圧縮力および摩擦力を受けても、摺接面619が被削材表面900へ接触した状態が安定的に保たれるため、作業空間Sの密閉状態が安定に保たれ、塵埃の飛散を抑制しやすい。
本実施形態では、通気性摺接部材600は、通気性素材をくり抜き加工により全周連続する環状に構成されたものである。これによって、作業空間S内の密閉性をより好ましく得ることができる。しかしながら通気性摺接部材600はこの態様に限定されず、たとえば、帯状に成形された通気性素材をその両端が突き合わせられると共に、通気性素材の肉厚が半径方向幅となるように環状にして構成されたものであってもよい。
[1−6.出刃量調節部および把持部]
図4に示すように、研削装置100は、未使用時(および後述図5の使用時における非研削時)では、研削刃400がカバー500の開口端510よりも上方の端壁部530側に位置するように引き込まれており、作業空間S内に完全に収容されている。これによって、研削刃400を不用意に他の箇所へ接触することを防止することができる。
研削装置100は、研削時(後述図6の使用時における研削時)に研削刃400を回転軸O方向の被削材表面900側へ往移動させ、非研削時に研削刃400を回転軸O方向の端壁部530側へ復移動させる出刃量調節部700を含む。
出刃量調節部700は、主に押圧板710と伸縮部750とで構成される。押圧板710は端壁部530より上方に配設され、出力軸300に連設するように構成される。本実施形態では、押圧板710は、出力軸300に連結突起221で連結固定させられたギアケース220と、固定具711で固定されている。これによって、押圧板710の回転軸O方向への往復動作に出力軸300を追随させ、出力軸300に設けられた研削刃400を当該方向へ往復移動させることができる。
押圧板710の下面を構成する押圧面719と端壁部530との間には、回転軸O方向で伸縮する伸縮部750が設けられている。本実施形態では、伸縮部750は、回転軸O方向にバネ軸が延在させられた圧縮コイルばねで体現される。押圧板710に回転軸O方向の被削材表面900側への負荷を与えて伸縮部を縮めることで、押圧板710が押し下げられ研削刃400を出すことができる一方、当該負荷を解除すると、伸縮部750が押圧面719を押し戻すため容易に研削刃400を引き戻すことができる。
本実施形態では、把持部800は押圧板710に一対(図1参照)固定されている。このため、把持部800を回転軸O方向へ往復動作させることで押圧板710の往復動作に追随させて研削刃400の出刃量調整を容易に行うことができる。一対の把持部800は、いずれも回転軸Oの直交面に沿って延在し、回転軸Oを中心に互いに180°をなすように配設されている。したがって、操作者が両手で把持部800を把持することで、研削装置100を容易に操作することができる。つまり、把持部800によって、研削刃400を回転軸O方向へ往復移動させることと、研削装置100を被削材表面900方向へ移動させることとの両方を容易に行うことができる。
また、カバー500と出刃量調節部700との間に介在させられたダイヤフラム535が弾性材で構成されている場合、ダイヤフラム535の弾性を利用して、カバー500に対して出刃量調節部700の傾きを若干変化させることができる。これによって、出刃量調節部700に固定されている出力軸300の回転軸Oが、変化前の回転軸Oからずれ、研削刃400が被削材表面900に当たる角度を微調整することができる(後の図7で詳述)。
[1−7.研削装置の使用]
研削装置100を使用する場合、モータケース210に設けられた図示しない電源スイッチをオンに切り替えることで、電動モータに電力が供給され、出力軸300とともに研削刃400が回転する。さらに、吸引機の電源スイッチをオンに切り替えることで、排気孔525を介した作業空間S内から排気ホース529内への気流が発生する。
吸引機が作動している場合は、図5に示すように、通気性摺接部材600の摺接面619を被削材表面900に接触させるとカバー500が被削材表面900に吸着する。吸引機の吸着力によりカバー500の作業空間Sは減圧され、通気性摺接部材600が圧縮される。
このとき、カバー500の開口端510と通気性摺接部材600の固定面611との相対的位置関係は、被削材表面900に接触させていない図4の場合と同じである。従って、通気性摺接部材600が吸着力によって十分に圧縮される。通気性摺接部材600が有する圧縮時通気性により、吸着中であっても作業空間Sと外部とを連通する空隙が保持されるため、当該空隙を通じて作業空間Sへ適度な少量の外気を吸入するが、この吸入のみを許して作業空間S内は良好に減圧される。
したがって、研削装置100は良好に被削材表面900に吸着する。このため、被削材表面900が研削装置100より鉛直下方に存在する面でない場合(たとえば、被削材表面900が鉛直方向などの非水平面、および研削装置100より鉛直上方に存在する面などの場合)であっても、操作者が研削装置100の自重を支える負担が少なくて済む。
通気性摺接部材600は摺動性を有するため、図5のように研削刃400を被削材表面900から浮かせていても、吸着状態を保ったまま滑らかに被削材表面900上を移動させることも可能である。
さらに通気性摺接部材600は圧縮弾性を有するため、被削材表面900上を移動させている時に被削材表面900の方向に対して開口端510の面の方向がぶれても、通気性摺接部材600の摺接面619が被削材表面900へ追随しやすいため、吸引状態を良好に保つことができる。
図6に示すように、把持部800を回転軸O方向に押し下げる負荷を与えることで押圧板710が押し下げられ、伸縮部750が縮んで研削刃400が被削材表面900に接触する。これによって研削加工が行われる。研削加工によって生じる塵埃は、排気孔525を介した作業空間S内から排気ホース529内への気流に乗って排出される。通気性摺接部材600が有する圧縮時通気性により、圧縮中に確保される空隙を通じて作業空間Sへ適度な少量の外気を吸入することで、被削材表面900とカバー500の開口端510付近でも外部から作業空間Sへの気流が常に発生するため、外部への塵埃の飛散を抑制することができる。
なお、伸縮部750の弾性率によっては、把持部800に回転軸O方向の負荷がかかっていない図5の場合よりも、把持部800に負荷がかかっている図6の場合のほうが、通気性摺接部材600がより圧縮されても構わない。この場合、通気性摺接部材600は、吸引圧による圧力に加えて、伸縮部750の付勢による圧力が加わることによって、図5の場合より圧縮され得る。このようにより圧縮された場合であっても、少量の外気を作業空間Sへ吸入させる空隙が確保される。
そして、通気性摺接部材600はその摺動性により、カバー500が被削材表面900に吸着されて塵埃の飛散が抑制された状態を保ったまま、容易に移動させることができる。
また、通気性摺接部材600は圧縮弾性を有するため、研削加工中、または研削加工しながらの移動中に、被削材表面900の方向に対して開口端510の面の方向がぶれても、通気性摺接部材600の摺接面619が被削材表面900へ追随しやすいため、吸引状態を良好に保つことができる。したがって、被削材表面900への接触性が良好で塵埃の飛散を抑制しやすい。
さらに、図6の状態から把持部800への負荷を解除することで、伸縮部750が伸長状態に戻って押圧板710が押し戻されるとともに、研削刃400が被削材表面900から離れ引き戻される。これによって、図5の状態に戻る。
図5の状態と図6の状態を繰り返すことで、研削する必要がない被削材表面900上では、把持部800を持って回転軸方向の負荷をかけずに研削刃400を浮かせた状態で移動させることができ、研削する必要がある被削材表面900上では、把持部800に回転軸方向の負荷をかけて研削刃400を被削材表面900に接触させた状態で移動させることができる。この一連の作業はカバー500を被削材表面900に吸着させたまま行われるため、終始、塵埃の飛散を防止しながら研削作業を行うことができる。研削装置100は被削材表面900に対するカバー500の吸着力に優れるため、作業者が把持部800を把持することで、終始、当該吸着力に抗って研削装置100を容易に移動させることができる。また、作業者が把持部800を把持することで、吸引機を作動させたまま、吸着状態のカバー500を被削材表面900からはがすことも容易である。
また、カバー500と出刃量調節部700との間に介在させられたダイヤフラム535が弾性材で構成されている場合、図6の状態において、出刃量調節部700に、回転軸Oと交差する方向へ負荷をかける(たとえば出刃量調節部700に固定されている把持部800またはモータケース210に、当該方向に負荷をかければよい)と、図7に示すように、カバー500を被削材表面900に吸着させたまま、出刃量調節部700の方の傾きを若干変化させることができる。ダイヤフラム535が弾性を有するため、封止状態を保ったままこのような相対位置変化を許容することができる。
これによって、出刃量調節部700に固定されている出力軸300の回転軸Oが、変化前の回転軸Oからずれ(具体的には図7に示すように、変化後の回転軸Oが変化前の回転軸Oと交差する方向にずれ)、研削刃400が被削材表面900に当たる角度を微調整することができる。したがって、図6の状態で研削することで研削刃400が被削材表面900に当たる特定角度で摩耗したとしても、図7のように研削刃400の角度を微調整することで、当該特定角度の摩耗面とは異なる面を用いて研削を行うことができる。なお、微調整のための角度(図中角度θ’)は、0度超3度以下であってよい。
[2.他の実施形態]
図8から図12は、他の実施形態の研削装置を示す。他の実施形態においては、第1実施形態と異なる点について説明を行い、同じ点については説明を省略する。
[2−1.第2実施形態]
図8は、第2実施形態の一例である研削装置の部分断面図であり、第1実施形態の図3の一部に対応する。図8に示す研削装置100aでは、通気性摺接部材600aが保持部材650aを介してカバー500aの開口端510a付近の内壁に固定されている。保持部材650aは、通気性摺接部材600の上部側面を挟持して固定面611aを固定している。さらに保持部材650aには側面に嵌合部(本例では嵌合突起)が設けられており、カバー500aの開口端510a付近の内壁に設けられた嵌合部(本例では嵌合凹部)に嵌合されて固定される。作業空間Sa内の密閉性をより良好とするために、保持部材650aと開口端510a付近の内壁との間にはガスケットが介在していてもよい。
図9は、第2実施形態の他の例である研削装置の部分断面図であり、第1実施形態の図3の一部に対応する。図9に示す研削装置100bでは、通気性摺接部材600bが保持部材650bを介してカバー500bの開口端510b面に固定されている。保持部材650bは、通気性摺接部材600bの上部側面を挟持して固定面611bを固定している。さらに保持部材650bには上面に嵌合部(本例では嵌合突起)が設けられており、カバー500bの開口端510b面に設けられた嵌合部(本例では嵌合凹部)に嵌合されて固定される。
第2実施形態の図8の例および図9の例のいずれも、通気性摺接部材600a,600bが圧縮を受けた場合であっても開口端510a,510bに対する通気性摺接部材600a,600bの固定面611a,611bの相対的位置が変わらないことは第1実施形態と同様である。つまり、いずれも通気性摺接部材600a,600bは開口端510a,510bに対して固定されている。
また、第2実施形態の図8の例および図9の例のいずれも、保持部材650a,650bはカバー500a,500bから着脱可能に構成されていてよい。これによって、通気性摺接部材600a,600bのみを交換することができる。
[2−2.第3実施形態]
図10は、第3実施形態の研削装置の一部切欠き部分断面図であり、第1実施形態の図4の一部に対応する。図10に示す研削装置100cでは、カバー500cの開口端510cが回転軸Oの直交面と平行となるように構成されている。研削刃400cは回転軸O周りがカップ状に形成されており、研削刃400cの、当該直交面に延在する加工面全体が被削材表面900に接触させられることにより、研削加工が行われる。
[2−3.第4実施形態]
図11は、第4実施形態の研削装置の部分断面図であり、第1実施形態の図6の一部に対応する。図12は、第4実施形態の研削装置の一部切欠き部分断面図であり、第1実施形態の図4の一部に対応する。図11および図12に示す研削装置100は、第1実施形態における出刃量調整部700に相当する構造を有さない。したがって、研削刃400は、図12に示すように、通気性摺接部材600が被削材表面900に押し当てられて圧縮された状態となった場合に被削材表面900に接触する出刃量に固定設定されている。
なお、本実施形態の研削装置100dでは、把持部800dは、出刃量調整能を有しないため端壁部530dに固定されている。
[3.実施形態の各部と請求項の各構成要素との対応関係]
本発明においては、実施形態の研削装置100,100a,100b,100c,100dが請求項の「研削装置」に相当し、ハウジング200が「ハウジング」に相当し、出力軸300が「出力軸」に相当し、研削刃400,400cが「研削刃」に相当し、カバー500,500a,500b,500cが「カバー」に相当し、開口端510,510a,510b,510cが「開口端」に相当し、周壁部520が「周壁部」に相当し、端壁部530,530dが「端壁部」に相当し、通気性摺接部材600,600a,600bが「通気性摺接部材」に相当し、出刃量調節部700が「出刃量調節部」に相当し、押圧板710が「押圧板」に相当し、押圧面719が「押圧面」に相当し、伸縮部750が「伸縮部」に相当し、把持部800,800dが「把持部」に相当し、被削材表面900が「被削材の表面」に相当し、回転軸Oの方向が「出力軸の突設方向」に相当し、直交面OPが「直交面」に相当し、角度θが「角度」に相当する。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な変形がなされる。
100,100a,100b,100c,100d 研削装置
200 ハウジング
300 出力軸
400,400c 研削刃
500,500a,500b,500c カバー
510,510a,510b,510c 開口端
520 周壁部
530,530d 端壁部
600,600a,600b 通気性摺接部材
700 出刃量調節部
710 押圧板
719 押圧面
750 伸縮部
800,800d 把持部
900 被削材表面
O 回転軸(回転軸の方向Oは出力軸300の突設方向に一致)
OP 直交面
θ 角度

Claims (6)

  1. 被削材の表面を研削するための研削装置であって、
    駆動機構を収容するハウジングと、
    前記駆動機構から突設された出力軸と、
    前記出力軸に固定され且つ前記出力軸の直交面に沿って延在する研削刃と、
    前記研削刃の前記表面と対向すべき側に開口し、且つ前記研削刃の全周を覆う周壁部と前記対向すべき側の反対側を覆う端壁部とを含むカバーと、
    前記カバーの開口端の全周に対して固定された、圧縮弾性を有する通気性摺接部材と、
    を含む、研削装置。
  2. 前記開口端が、前記直交面に対して10°以上20°以下で傾斜するように構成されている、請求項1に記載の研削装置。
  3. 前記直交面に沿って延在する一対の把持部を含む、請求項1または2に記載の研削装置。
  4. 前記カバーが、前記研削刃を前記開口端よりも前記端壁部の側で収容するように構成され、
    前記研削刃を前記出力軸の突設方向に往復動可能とする出刃量調節部を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の研削装置。
  5. 前記ハウジングの前記対向すべき側に押圧面を含み、
    前記出刃量調節部が、前記押圧面と前記端壁部との間に設けられ且つ前記突設方向に伸縮する伸縮部を含む、請求項4に記載の研削装置。
  6. 前記把持部を含む場合に、
    前記ハウジングの前記対向すべき側に前記押圧面を構成する押圧板を含み、前記把持部が前記押圧板に連設されている、請求項5に記載の研削装置。
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