JP2017067477A - コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、前記工場では、コンクリートの圧縮強度とセメント水比(C/W)の間に直線関係が成立することから、常用しているコンクリート材料を用いて求めておいた前記直線関係式に基づき、顧客が要求する圧縮強度からセメント水比を算出し、その逆数である水セメント比を決定している。ここで、「コンクリート材料」とは、細骨材、粗骨材、セメント、水、および混和剤等のコンクリートを構成する材料をいう。
そして、水セメント比を決定した後は、該水セメント比を一定に保ちながらコンクリートの水量を調整して、顧客が要求するスランプが得られる単位水量を決定する。
ところが、該直線関係式を得るには、変更後の細骨材を用いて水セメント比が異なる3種類以上のコンクリートを作製し、少なくとも材齢28日までコンクリートの圧縮強度を測定する必要がある。このように、直線関係式を新たに求める作業は多くの労力と長い期間を要するため、コンクリートの製造が長期間停滞し生産性が著しく低下する。
例えば、特許文献1のコンクリート強度の早期推定方法は、練り混ぜ直後のフレッシュコンクリートから試料を採取して直ちに乾燥し、フレッシュコンクリート中の推定単位水量を算出し、また配合上の単位セメント量等から推定セメント水比を算出し、予め算定した種々の配合のコンクリートのセメント水比と強度との相関関係を示す回帰式を用いて強度を推定する方法である。
しかし、前記特許文献1および2に記載の方法は、推定精度がまだ十分とはいえない。また、特許文献3に記載の方法は予測の対象が、コンクリートのモルタル圧縮強度とコンクリート圧縮強度の比であり、コンクリートの圧縮強度そのものではない。
すなわち、本発明は、以下の構成を有するコンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定方法である。なお、本発明において、コンクリートはモルタルも含む概念である。
該補正単位水量を、下記(A)〜(D)の直線回帰式の導出工程を経て得られた直線回帰式に代入して、対象コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定値を算出して推定する、コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定方法。
〔条件〕
(i)水セメント比または水結合材比が同一であること
(ii)砕砂を除くコンクリート材料が同一であること
(iii)フレッシュコンクリートの温度が10〜30℃の範囲内で一致すること
〔補正単位水量の式〕
補正単位水量(kg/m3)=フレッシュコンクリートの単位水量(kg/m3)+0.012×{対象コンクリートのスランプ(cm)−フレッシュコンクリートのスランプ(cm)} ・・・(1)
〔直線回帰式の導出工程〕
(A)異なる種類の砕砂を3種類以上用いて、対象コンクリートとの間で前記(i)〜(iii)の条件をすべて満たす回帰式導出用コンクリートの単位水量を、異なる種類の砕砂毎にそれぞれ求め、さらに該単位水量に基づき前記(1)式を用いて回帰式導出用コンクリートの補正単位水量を算出する、補正単位水量算出工程
(B)前記(A)に記載の回帰式導出用コンクリートを用いて、砕砂の種類が異なるコンクリート供試体を3種以上作製する、コンクリート供試体の作製工程
(C)前記コンクリート供試体を、対象コンクリートと同じ条件で養生した後、該コンクリート供試体の圧縮強度および/または静弾性係数を測定する、圧縮強度および/または静弾性係数の測定工程
(D)前記圧縮強度および/または静弾性係数と、前記(A)工程に記載の回帰式導出用コンクリートの補正単位水量を用いて直線回帰式を求める、回帰分析工程
[2]前記対象コンクリートの圧縮強度が、材齢7日で3〜40N/mm2、および材齢28日で7〜60N/mm2の範囲内にあり、また、前記対象コンクリートの静弾性係数が、材齢28日で20〜40kN/mm2の範囲内にある、前記[1]に記載のコンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定方法。
なお、本発明において、前記(iii)の「一致する」は±3℃の範囲内にあることを意味する。
以下、本発明について、前記構成要素に分けて詳細に説明する。
(1)対象コンクリート
該対象コンクリートに用いる細骨材は砕砂に限られ、例えば、石灰岩、砂岩、凝灰岩等の砕砂が挙げられる。後掲の図1〜4に示すように、砕砂を用いたコンクリートであれば圧縮強度および/または静弾性係数の推定精度が高い。
また、対象コンクリートに用いるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、シリカフューム含有セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、およびエコセメント等から選ばれる1種以上が挙げられる。
対象コンクリートに用いる粗骨材は、特に制限されず、砂利、砕石、スラグ粗骨材、および軽量粗骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、粗骨材は、天然骨材のほか再生骨材を用いることができる。
対象コンクリートに用いる水は、コンクリートの強度や流動性等の物性に悪影響を与えないものであれば用いることができ、例えば、JIS A 5303付属書Cに規定する上水道水、および上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水、地下水など特に上水道水として処理されていないもの、および工業用水)、生コンクリートの上澄水等が挙げられる。
対象コンクリートに用いる混和剤は、減水剤およびAE剤が挙げられ、例えば、JIS A 6204「コンクリート用化学混和剤」に規定されている、高性能減水剤、減水剤、AE減水剤、および高性能AE減水剤等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、前記減水剤の化合物は、例えば、主な成分としてナフタレンスルホン酸、リグニンスルホン酸、およびメラミンスルホン酸等のホルムアルデヒド縮合物、ポリカルボン酸、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩等から選ばれる1種以上が挙げられる。
前記対象コンクリートは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石粉末、珪石粉末、および膨張材等の混和材を含んでもよい。また、対象コンクリートの養生方法は、特に限定されない。
なお、対象コンクリートの水セメント比または水結合材比、スランプ、および空気量は、顧客が要求する圧縮強度やスランプ等のコンクリートの特性から、例えば、水セメント比または水結合材比が65質量%、スランプ12cmおよび空気量4.5%のように適宜定めることができる。なお、「水セメント比または水結合材比」とは、粉体がセメントのみの場合は水セメント比を採用し、セメント以外に混和材等の粉体も含む場合は水結合材比を採用する意味である。
該フレッシュコンクリートは、対象コンクリートと、(i)水セメント比または水結合材比が同一、(ii)砕砂を除くコンクリート材料が同一、および(iii)フレッシュコンクリートの温度が10〜35℃の範囲内で一致、するように調製したコンクリートである。そして、該フレッシュコンクリートの単位水量を求め、該単位水量に基づき、前記(1)式を用いて補正単位水量を算出し、後記する直線回帰式に代入して、対象コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定値を算出して推定する。
また、対象コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定精度を高めるため、前記フレッシュコンクリートの空気量は対象コンクリートの空気量と、好ましくは±1.5%、より好ましくは±1.0%の範囲内で一致させる。
(A)補正単位水量算出工程
該工程は、異なる種類の砕砂を3種類以上用いて、対象コンクリートとの間で、(i)水セメント比または水結合材比が同一、(ii)砕砂を除くコンクリート材料が同一、および(iii)フレッシュコンクリートの温度が10〜35℃の範囲内で一致する、という条件をすべて満たす回帰式導出用コンクリートの単位水量を、異なる種類の砕砂毎にそれぞれ求め、さらに該単位水量に基づき、前記(1)式を用いて回帰式導出用コンクリートの補正単位水量を算出する工程である。3種以上としたのは、直線回帰式を精度よく求める上で必要な、最小限の数だからである。
また、対象コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定精度を高めるため、前記回帰式導出用コンクリートの空気量は、対象コンクリートの空気量と、好ましくは±1.5%、より好ましくは±1.0%の範囲内で一致させる。
該工程は、前記(A)に記載の回帰式導出用コンクリートを用いて、砕砂の種類が異なるコンクリート供試体を3種以上作製する工程である。
該工程は、前記コンクリート供試体を、対象コンクリートと同じ条件で養生した後、該コンクリート供試体の圧縮強度および/または静弾性係数を測定する工程である。
前記コンクリート供試体の圧縮強度は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して測定する。また、コンクリート供試体の静弾性係数は、JIS A 1149「コンクリートの静弾性係数試験方法」に準拠して測定する。
該工程は、前記圧縮強度および/または静弾性係数と、前記回帰式導出用コンクリートの補正単位水量を用いて、回帰分析により直線回帰式を求める工程である。後掲の図1〜4に示すように、圧縮強度および/または静弾性係数と補正単位水量の間には、良好な直線関係が成立する。
対象コンクリートの砕砂と同一の砕砂を用いて作製した前記フレッシュコンクリートの補正単位水量(前記段落0017に記載)を、前記(A)〜(D)の直線回帰式の導出工程を経て得られた直線回帰式に代入して、対象コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定値を算出して推定する。
1.使用したコンクリート材料
使用したコンクリート材料を表1に、使用した骨材の物性を表2に示す。なお、粗骨材A〜Cとして、石灰石系砕石を1種、砂岩系砕石を2種使用した。また、細骨材A〜Cとして、石灰石系砕砂を1種、砂岩系砕砂を2種使用した。
粗骨材は表3に示す粗骨材D(砂岩系砕石)の1種類のみを用い、砕砂は表2に示す3種類の砕砂を用いて、表4に示す配合のコンクリートを下記(1)に記載の方法で混練した後、練り上がり直後の回帰式導出用コンクリートのスランプおよび空気量を下記(2)の記載の方法で測定した。
55Lの強制パン型ミキサを用いて、表4に示す配合のコンクリートを35L混練した。なお、対象コンクリートの目標スランプは12cm、目標空気量は4.5%である。
混練の手順は、粗骨材、半分の砕砂、セメント、および残り半分の砕砂をミキサに投入して20秒間空練した後、AE減水剤とAE剤を溶解した混練水を投入して120秒混練して回帰式導出用コンクリートを作製した。
次に、練り上がり直後の回帰式導出用コンクリートのスランプおよび空気量は、それぞれ、前記JIS A 1101、およびJIS A 1128に準拠して測定した。また、前記回帰式導出用コンクリートの単位水量およびスランプと、対象コンクリートのスランプ(12cm)を前記(1)式に代入して、補正単位水量を算出した。これらの結果を表4に示す。
前記回帰式導出用コンクリートを用いて、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」およびJIS A 1149「コンクリートの静弾性係数試験方法」に準拠して、それぞれ供試体を作製し、材齢7日と材齢28日における圧縮強度、および材齢28日における静弾性係数を測定した。これらの結果を表5に示す。
前記圧縮強度および静弾性係数の値と、前記補正単位水量の値を用いて回帰分析を行なった。圧縮強度と補正単位水量の回帰分析式は図1と図2に、また静弾性係数と補正単位水量の回帰分析式は図3と図4に示す。
したがって、前記3種類の砕砂と異なる砕砂を用いる場合でも、該砕砂を用いたフレッシュコンクリートの単位水量から求めた補正単位水量に基づき、高い精度で圧縮強度や静弾性係数を推定することができる。
細骨材として表6に示す山砂の1種類のみを用い、粗骨材は表2に示す3種類を用い、表7に示すコンクリート配合を用いた以外は、前記実施例と同様にして、コンクリートを混練してスランプおよび空気量を測定し、さらにコンクリート供試体を作製して補正単位水量と、圧縮強度および静弾性係数を測定して回帰分析を行なった。そして、測定した圧縮強度および静弾性係数は表8に示す。また、得られた圧縮強度と補正単位水量の回帰分析式、および静弾性係数と補正単位水量の回帰分析式は、それぞれ図5および図6に示す。なお、粗骨材では、細骨材と異なり、粗骨材の種類が変わっても、同じスランプを示す単位水量の変動が小さいため、横軸(補正単位水量)の変動幅は狭い。
Claims (2)
- 圧縮強度および/または静弾性係数を推定する対象であるコンクリート(以下「対象コンクリート」という。)との間で下記(i)〜(iii)の条件をすべて満たすフレッシュコンクリートの単位水量を求め、さらに該単位水量に基づき下記(1)式を用いて補正単位水量を求めた後、
該補正単位水量を、下記(A)〜(D)の直線回帰式の導出工程を経て得られた直線回帰式に代入して、対象コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定値を算出して推定する、コンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定方法。
〔条件〕
(i)水セメント比または水結合材比が同一であること
(ii)砕砂を除くコンクリート材料が同一であること
(iii)フレッシュコンクリートの温度が10〜35℃の範囲内で一致すること
〔補正単位水量の式〕
補正単位水量(kg/m3)=フレッシュコンクリートの単位水量(kg/m3)+0.012×{対象コンクリートのスランプ(cm)−フレッシュコンクリートのスランプ(cm)} ・・・(1)
〔直線回帰式の導出工程〕
(A)異なる種類の砕砂を3種類以上用いて、対象コンクリートとの間で前記(i)〜(iii)の条件をすべて満たす回帰式導出用コンクリートの単位水量を、異なる種類の砕砂毎にそれぞれ求め、さらに該単位水量に基づき前記(1)式を用いて回帰式導出用コンクリートの補正単位水量を算出する、補正単位水量算出工程
(B)前記(A)の回帰式導出用コンクリートを用いて、砕砂の種類が異なるコンクリート供試体を3種以上作製する、コンクリート供試体の作製工程
(C)前記コンクリート供試体を、対象コンクリートと同じ条件で養生した後、該コンクリート供試体の圧縮強度および/または静弾性係数を測定する、圧縮強度および/または静弾性係数の測定工程
(D)前記圧縮強度および/または静弾性係数と、前記(A)工程の回帰式導出用コンクリートの補正単位水量を用いて直線回帰式を求める、回帰分析工程 - 前記対象コンクリートの圧縮強度が、材齢7日で3〜40N/mm2、および材齢28日で7〜60N/mm2の範囲内にあり、また、前記対象コンクリートの静弾性係数が、材齢28日で20〜40kN/mm2の範囲内にある、前記[1]に記載のコンクリートの圧縮強度および/または静弾性係数の推定方法。
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