JP2017066363A - 樹脂分散用凝集体及び樹脂組成物、並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、無機物又は有機物で形成された微粒子(以下、それぞれ無機微粒子、有機微粒子ともいう。また、これらを総合して固体微粒子ともいう。)の水分散液に水溶性ポリマーを添加して樹脂分散用凝集体を形成し回収する、樹脂分散用凝集体の製造方法に関する。
本発明は、前記樹脂分散用凝集体が分散した樹脂組成物、及びその製造方法に関する。
本発明における微粒子は、水に不溶又難溶な無機微粒子又は有機微粒子である。本発明で、水に難溶または不要とは、常温(25℃)における溶解度が10−5g/L未満のものをいう。 本発明の微粒子は、水分散可能な微粒子であることが好ましい。水分散可能な微粒子とは、例えば、水と微粒子を混合した場合に、水のpHの調整により粒子表面に発生するゼータ電位による粒子間での反発や、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の添加による粒子表面の親水化により安定に分散するコロイド粒子が挙げられる。なお、本発明の水分散可能な微粒子は上記の例に限定されるものではない。
無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、金、銀などが挙げられ、これらは例えばゾルゲル法や液相還元法等で作られる。有機微粒子としてはアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタンなどが挙げられ、これらは例えば乳化重合等で作ることができる。なお、本発明の微粒子は上記の例に限定されるものではない。
微粒子としては、樹脂組成物から得られる成形体(樹脂ともいう)の弾性率や微粒子の寸法安定性を上げるためにはシリカやアルミナを用いることが好ましく、フレークやファイバーなどの形状のアスペクト比が高い粒子を用いることがより好ましい。シリカフレーク、シリカファイバー、アルミナフレーク、アルミナファイバー等を用いることにより、弾性率や寸法安定性を上げることができる。特に、透明性を維持しつつ弾性率や寸法安定性を上げるにはアルミナナノフレークのようなナノサイズでアスペクト比の高い粒子が好ましい。樹脂の屈折率や誘電率を上げるためには、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウムを用いることが好ましい。さらに、樹脂の透明性や耐候性を上げるためには、屈折率の高いジルコニアを用いることがより好ましい。誘電率を上げるためには誘電率の高いチタン酸バリウムを用いることがより好ましい。
固体微粒子は、固体微粒子の水分散液として樹脂分散用凝集体に含ませてもよい。固体微粒子の水分散液としては、固体微粒子が水に分散した溶液が好ましく、例えばアルミナナノフレークゾルが挙げられる。
本発明における水溶性ポリマーは以下に限定するものでは無いが、一般に汚泥の回収等に使用される高分子凝集剤や有機凝結剤等として用いられているポリマーが望ましい。
凝集体の形成においては、水に分散した微粒子のゼータ電位が負の場合、例えば水のpHを2から5としたときに微粒子としてシリカやジルコニアを用いた場合には、カチオン性の水溶性ポリマーが好ましく、水に分散した微粒子のゼータ電位が正の場合、例えば水のpHを2から5としたときに微粒子としてアルミナを用いた場合には、アニオン性の水溶性ポリマーが好ましい。なお、本発明の水のpHと微粒子及び水溶性ポリマーの組み合わせは上記の例に限定されるものではない。
カチオン性の水溶性ポリマーとは、カチオン性の構成単位を含む重合体であり、非イオン性の構成単位を更に含んでいてもよい。
カチオン性の構成単位とは、水溶液中において電離により正の電荷を有する構成単位をいう。カチオン性の構成単位としては、例えばアミジン単位、ビニルアミン単位、下記式(1)で表される構成単位が挙げられる。
カチオン性の構成単位、及び非イオン性の構成単位は、それぞれ一種が単独で含まれていてもよく、二種以上が併用されていてもよい。
アニオン性の水溶性ポリマーとは、アニオン性の構成単位を含む重合体であり、非イオン性の構成単位の一つ以上を更に含んでいてもよい。
アニオン性の水溶性ポリマーは、水溶性ポリマーの総質量に対してアニオン性の構成単位の総質量が1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることがさらに好ましい。
アニオン性の構成単位とは、水溶液中において電離により負の電荷を有する構成単位をいう。アニオン性の構成単位としては、例えば(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
アニオン性の構成単位、及び非イオン性の構成単位は、それぞれ一種が単独で含まれていてもよく、二種以上が併用されていてもよい。
両極性の水溶性ポリマーとは、カチオン性の構成単位及びアニオン性の構成単位を含む重合体であり、非イオン性の構成単位をさらに含んでいてもよい。
カチオン性の構成単位、アニオン性の構成単位、及び非イオン性の構成単位は、それぞれ一種が単独で含まれていてもよく、二種以上が併用されていてもよい。
本発明の樹脂分散用凝集体であれば、分散剤や表面処理剤を必要とせず、微粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を得ることができる。
本発明の樹脂分散用凝集体の製造方法は、前記微粒子の製造の段階で水に分散している固体微粒子の水分散液(微粒子分散液ともいう)や、前記微粒子の粉体を分散させた微粒子分散液に、前記水溶性ポリマーを添加して樹脂分散用凝集体を形成する。
前記微粒子分散液の分散状態を安定に保持するため、溶媒には必要に応じてpH調整のための硫酸や水酸化ナトリウム、表面親水化のためのヘキサメタりん酸ナトリウム等を添加してもよい。
微粒子の溶媒への分散は、例えば微粒子と液体を混合した混合液について、ビーズミル粉砕機等を用いて液体中の粒子を粉砕することにより行う。その後、走査型電子顕微鏡等で観察した乾燥状態の微粒子の粒径と動的光散乱式粒度分布計等によって測定した微粒子分散液に分散している微粒子の粒径とが一致することをもって、微粒子が溶液に十分に分散されたとみなす。なお、乾燥状態の微粒子の粒径と分散している微粒子の粒径との差が2%以内であれば、一致しているとみなす。
水溶性ポリマーは、例えば溶液に溶解して予め水溶液の状態にして添加する。水溶性ポリマーの添加により凝集体が形成される。凝集体の回収は、例えば微粒子分散液のろ布を用いたによるろ過、微粒子分散液の圧縮による水分の除去、微粒子分散液に気泡を含ませ凝集体を浮かせることにより行う。
本発明の樹脂分散用凝集体の製造方法によれば、分散剤や表面処理剤を必要とせず、微粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を得ることができる樹脂分散用凝集体を、微粒子の損失を減らし、エネルギー及び製造コストを抑えて製造することができる。
本発明の樹脂組成物は、前記樹脂分散用凝集体が樹脂に分散したものである。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記樹脂分散用凝集体を樹脂に分散させることを特徴とするものである。本発明の樹脂組成物の製造方法により製造された樹脂組成物は、本発明の樹脂分散用凝集体を用いることにより微粒子が樹脂に分散されている。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、樹脂分散用凝集体を樹脂に複合化するものである。樹脂分散用凝集体の樹脂への分散は、樹脂に、樹脂分散用凝集体を添加し、高温にて混練することによって行う。樹脂は、樹脂を構成する単量体を含んでいてもよい。混練する際の温度は、樹脂の溶融温度以上分解温度未満であること(例えば、樹脂として通常用いられるメタクリル酸メチルからなるアクリル樹脂を用いる場合は150℃以上250℃以下)が好ましく、混練時間は5〜30分間程度が好ましい。樹脂分散用凝集体の樹脂への分散(複合化ともいう)は一般的に使用される押出機や射出成形機等によって実施できる。この場合、予め樹脂ペレットと樹脂分散用凝集体を混合してから押出機や射出成形機に投入してもよく、樹脂ペレットと凝集体を別々に押出機や射出成形機に投入して内部で混練しても良い。
本発明の樹脂組成物の製造方法であれば、分散剤や表面処理剤を必要とせず、微粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を、樹脂分散用凝集体製造の際の微粒子の損失を減らし、エネルギー及び製造コストを抑えて製造することができる。
<実施例1>
微粒子分散液の原料としてシリカゾルMP−1040(SiO240%、粒子径70〜130nm、分散安定剤NaOH)(日産化学株式会社)、水溶性ポリマーとしてポリビニルアミンからなる凝集剤PVAM−0570B(三菱レイヨン株式会社)を使用し、樹脂分散用凝集体を作製した。MP−1040を微粒子が総質量に対して0.5質量%になるように希釈した200mlの微粒子分散液を硫酸と水酸化ナトリウムでpH4に調整した。得られた微粒子分散液を用いて、PVAM−0570Bの0.02質量%水溶液を作製した。微粒子分散液(200ml)をビーカーにいれ、400rpmの速度で攪拌しつつ、微粒子分散液中にPVAM−0570B水溶液を10ml滴下した。1分間の攪拌を行い、1時間放置して樹脂分散用凝集体を沈降させた。沈降後、上澄液を回収し、上澄液の微粒子の濃度より粒子の回収効率を見積もった。結果を表1に示す。200μmのメッシュに樹脂分散用凝集体を乗せ水分を切ることによって樹脂分散用凝集体を得た。
上記上澄液に含まれている微粒子組成物の含有量を走査型蛍光X線分析装置ZSX PrimusII(株式会社リガク)を用いて測定した。上澄液1mlを5回に分けて点滴濾紙マイクロキャリー3399M002(株式会社リガク)に滴下して乾燥させ、マイクロキャリーに含まれる微粒子組成物の質量を測定した。その質量から上澄液に含まれる微粒子組成物の質量を算出し、上記微粒子分散液に含まれる微粒子の質量と比を取り回収効率を求めた。
樹脂分散用凝集体を分散させる樹脂としての分散媒はアクリペットVH001(三菱レイヨン株式会社)を使用し、混練機はラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所)のミキサーKF15V(株式会社東洋精機製作所)を使用した。VH001のペレットと上記樹脂分散用凝集体をミキサーに入れ、ミキサー温度を230℃、ミキサー回転数を45rpmで20分間混練を行い、樹脂組成物を得た。
樹脂組成物における微粒子の分散性は、樹脂組成物の解砕率によって評価した。解砕率が高いほど分散性が高い。解砕率の測定は、以下のようにして行った。
得られた樹脂組成物をガラスで挟み平に伸ばした。平らにした樹脂組成物を液体窒素に10分浸漬後、取り出してすぐに破断した。その断面にPt薄膜を配置し、Pt薄膜を形成した面を観察した。上記断面における1μm2当たりの粒子数(ns)を走査型電子顕微鏡S−4300(日立株式会社)にて計測した。上記微粒子分散液から粒子の半径(r)を動的光散乱式ナノトラック粒度分析計UPA−EX(マイクロトラック・ベル株式会社)にて計測した。樹脂組成物中の微粒子の質量%(α)を、示差熱天秤T8120(株式会社リガク)を用いて分散媒の分解・燃焼による質量減少より計測した。上記計測値より単位体積当たりの樹脂組成物中に含む全粒子数で単一分散した粒子数を割った値(以下、解砕率と記述)を求めた。解砕率は下記式(5)で表される式より定義される。
結果を表1に示す。
<実施例2>
<実施例3>
<実施例4>
<実施例5>
<実施例6>
<実施例7>
<実施例8>
<実施例9>
<実施例10>
<比較例1>
微粒子分散液の原料としてMP−1040、及び水溶性ポリマーを用いない代わりに無機塩KBr(和光純薬工業株式会社)を使用し樹脂分散用凝集体を作製した。80℃に加熱し400rpmで攪拌している100mlの純水にKBrを41.77g加え、得られたKBr水溶液にMP−1040を25g加え、硝酸及び水酸化ナトリウムを使ってpH4に調製した微粒子分散液を作製した。上記微粒子分散液を80℃に加熱したホットプレート上に置き、1週間乾燥させKBrを含んだ凝集体を作製した。上記凝集体が入ったビーカーに純水100mlを入れスターラーを使って200rpmで10分間攪拌しKBrを溶かした。その後攪拌を止め10分以上放置し上記凝集体を沈降させ、その上澄液回収した。この純水を使ってKBrを溶かし上記凝集体を沈降させ上澄液を回収する工程を合計4回繰り返した。上澄を回収して残った水分を含んだ凝集体を80℃に加熱したホットプレートで1週間乾燥し、得られた凝集体を樹脂分散用凝集体として使用した。
実施例1と同様に樹脂組成物を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
<比較例3>
<比較例4>
<比較例5>
<比較例6>
<比較例7>
<比較例8>
実施例4〜6では、同じ微粒子を使用した比較例2、4と比べて、解砕率及び回収効率が向上した。すなわち、水溶性ポリマーを使用することにより、微粒子の損失を減らして樹脂分散用凝集体が作製でき、さらに微粒子が樹脂組成物中に十分分散された樹脂組成物を作製できた。
実施例7では、同じ微粒子を使用した比較例5と比べて、解砕率及び回収効率が向上した。すなわち、水溶性ポリマーを使用することにより、微粒子の損失を減らして樹脂分散用凝集体が作製でき、さらに微粒子が樹脂組成物中に十分分散された樹脂組成物を作製できた。
実施例8では、同じ微粒子を用いた比較例6と比べて、ヘーズ値が低下し弾性率が増加した。すなわち、水溶性ポリマーを使用することにより、微粒子が樹脂組成物中に十分分散され表面硬度が高くなった樹脂組成物を作製できた。
実施例9、10では、同じ微粒子を用いた比較例7,8と比べて、弾性率が増加した。すなわち、水溶性ポリマーを使用することにより、微粒子が樹脂組成物中に十分分散された予想され、表面硬度が高くなった樹脂組成物を作製できた。
Claims (16)
- 水に不溶又は難溶の固体微粒子と水溶性ポリマーとを含む樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーがカチオン性である請求項1に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーがアニオン性である請求項1に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーが両極性である請求項1に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーが非イオン性である請求項1に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーがアミジン単位を含むポリマーである請求項2又は4に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーがビニルアミン単位を含むポリマーである請求項2又は4に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーがアニオン性構成単位を含むポリマーである請求項3又は4に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記水溶性ポリマーが非イオン性構成単位を含むポリマーである請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記固体微粒子がアルミナナノフレークゾル由来の固体微粒子である請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂分散用凝集体。
- 前記固体微粒子の水分散液に前記水溶性ポリマーを添加する工程を有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の樹脂分散用凝集体の製造方法。
- 前記固体微粒子の水分散液がアルミナナノフレークゾルである請求項13に記載の樹脂分散用凝集体の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の樹脂分散用凝集体が樹脂に分散されていることを特徴とする樹脂組成物。
- 請求項13又は14に記載された樹脂分散用凝集体の製造方法により樹脂分散用凝集体を製造する工程と、前記製造工程により作製した樹脂分散用凝集体を樹脂に分散させる工程を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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