以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する。
本明細書における「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[第1の実施形態]
本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルは、X電極とY電極とを備える静電容量方式タッチパネルであって、上記X電極が、金属細線からなる第1の金属パターンと、上記第1の金属パターンに接する導電性繊維又は導電性粒子からなる第一の膜とを含み、上記Y電極が、金属細線からなる第2の金属パターンと、上記第2の金属パターンに接する導電性繊維又は導電性粒子からなる第2の膜とを含む。
図1は、静電容量方式タッチパネルの一実施形態を示す模式平面図であり、図中の破線部に囲まれたところ400,401は下層の構成を示している。図2は、図1の一部を拡大した図面であり、図中の破線部に囲まれたところ300は下層の構成を示している。
図1及び2に示す静電容量方式タッチパネル100は、基材50上に、静電容量変化を検出する複数のX電極10及び複数のY電極20を備えている。本実施形態においては、X電極、Y電極のそれぞれが、基材50上に形成された金属細線からなる第1の金属パターン2a及び第2の金属パターン2bと、第1及び第2の金属パターンの上記基材50とは反対側の面に接するように所定のパターンで形成された導電性繊維又は導電性粒子からなる第1の膜4bと第2の膜4aとを有する。図1においては、第1及び第2の膜4a,4bは基材と50とは反対側の面に更に樹脂硬化層5を備えている。なお、静電容量方式タッチパネルの表示領域に電気信号を発信する電極をドライブ電極、電気信号を受信する電極をセンス電極と称する場合がある。
図1の(a)中の破線部に囲まれたところ400に示すように、金属パターンは、図1中の矢印Aの方向に連続的に形成されている第1の金属パターン2aと、第1の金属パターン2aを挟むように形成される第2の金属パターン2bとの部分を有する。一方、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜は、図1中の矢印Bの方向に連続的に形成されている第2の膜4aと、第2の膜4aを挟むように形成される第1の膜4bとの部分を有する。
本実施形態において、X電極10は第1の金属パターン2aと、第1の膜4bとからなり、第1の膜4b同士は第1の金属パターン2aを介して電気的に接続されている。一方、Y電極20は第2の金属パターン2bと、第2の膜4aとからなり、第2の金属パターン2b同士は、第2の膜4aにより電気的に接続されている。
X電極10とY電極20とが交差する部分(交差部)には、絶縁膜6が設けられている。より具体的には、絶縁膜6は、第1の金属パターン2aと、第2の膜4aとが交差する部分に設けられる。絶縁膜6により、X電極とY電極との電気的な導通が抑制される。X電極及びY電極には、静電容量方式タッチパネルとしての電気信号を制御するドライバ素子回路(図示せず)の制御回路に接続するための引き出し配線30が接続されている。引き出し配線30は、金属パターン2と同じ材料で形成されてもよく、また金属パターン2と一括して形成されてもよい。
本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルは、上記構成を備えることから、タッチ位置の検出速度及び検出感度を高水準で両立することが可能となっている。なお、本実施形態においては、第1及び第2の金属パターン2a,2bが検出速度に寄与する導電性に優れた第1の経路の役割をなし、第1及び第2の膜4a、4bが検出感度に寄与する電極面積或いは密度を確保するための第2の経路の役割をなしているものと本発明者らは考えている。
第1及び第2の金属パターンの形状及び密度、並びに金属パターンを構成する金属細線の幅は、特に制限されるものではなく、タッチパネルの光透過率を損なわない限り、変更することができる。第1及び第2の金属パターンの形状としては、例えば、メッシュ状、樹状、ライン状、格子状等とすることができ、本実施形態においては、メッシュ状に形成されている。
本明細書において金属細線とは、金属からなる細線であって、断面の直径(細線が伸びる方向に直交する断面における基材表面に対して平行な径)が0.25μm以上であるものを意味する。金属細線の素材自体は、そのままでは透過性が低く(可視光透過率の最小値が30%未満)、表示部の視認性を著しく阻害し得るが、金属細線の幅を人の目に視認されにくくなる程度に小さくすることによって、可視光透過率の低下を回避することができる。
本実施形態においては、金属細線からなる金属パターンを備えることにより、ITO、グラフェン等からなる透明導電膜と比較して、X電極及びY電極の電気抵抗率の上昇を抑制することができる。例えば、金属細線を採用することにより、ITO等の透明電極材料からなる電極に比べて電気抵抗率を数十分の一に抑えることが可能である。
金属細線の断面の直径(細線が伸びる方向に直交する断面における基材表面に対して平行な径)は、導電性、又は耐久性に優れる観点から、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。金属細線の断面の直径は、視認性に優れる観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。ここで、金属細線の断面の直径、長さは、光学顕微鏡により測定される値を示す。
金属細線の素材としては、主に銅(Cu)、銀(Ag)、クロム(Cr)等を使用することができる。金属細線は、導電性に優れる点で、銀又は銅を含むことが好ましく、コストの点では銅が望ましい。
導電性繊維又は導電性粒子からなる第1及び第2の膜4a,4bの形状は、特に制限されるものではなく、例えば、ひし形、雪の結晶の形状等とすることができる。なお、本明細書において、膜とは、均質の膜でなくてもよく、膜の面方向に導電性が得られる物であれば、導電性繊維が絡み合った網目状の態様や、膜に感光性樹脂等が含浸したような態様であってもよい。
本明細書において導電性繊維とは、導電性を備える繊維であって、繊維断面の直径が150nm以下であるものを意味する。導電性繊維としては、膜として導電性を備える程度に集合させて絡ませた場合であっても膜の可視光に対する透過率に優れる(透明性を大きく損なわない)物が好ましい。導電性繊維の断面の直径は、視認性(透明性)に優れる観点から、100nm以下であることが好ましく、50nmで以下であることがより好ましい。導電性繊維の長さは、導電性に優れる観点から、20μm以上であることが好ましい。ここで、導電性繊維の断面の直径、長さは、光学顕微鏡により測定される値を示す。
導電性繊維の素材としては、主に銅(Cu)、銀(Ag)、クロム(Cr)、等の金属繊維、カーボンナノチューブ等の炭素繊維、グラフェン等を含有する樹脂組成物、導電性高分子などを使用することができる。導電性繊維としては、上記の金属細線よりも電気抵抗率が低いものが好ましい。導電性繊維は、視認性(透明性)に優れる観点からは、銀繊維であることがより好ましい。
本明細書において導電性粒子とは、導電性を備える粒子であって、平均粒子径が30μm以下であるものを意味する。
導電性粒子としては、公知の導電性粒子を特に制限なく用いることができる。導電性粒子としては、グラフェン、銅(Cu)、ITO等を用いることができる。
本実施形態においては、上記金属パターンの電気抵抗率R1が、上記膜の電気抵抗率R2よりも小さいことが望ましい。
絶縁膜6は、X電極とY電極とが交差する部分における電気的な接続を遮断するための膜であればよく、例えば、感光性樹脂組成物の硬化膜からなる膜であってよい。
引き出し配線30は、電気信号を制御するドライバ素子回路等の制御回路と、X電極、又はY電極とを接続する配線のことを示す。引き出し配線を形成するための素材としては、金属細線、導電性繊維等として使用可能な素材として挙げた素材を使用することができる。これらの中でも、金属パターン2と一括形成できる点において、金属細線として使用可能な素材として挙げたものが好ましく、銅であることがより好ましい。
基材50としては、透明で視認性に優れるものが好ましく、タッチパネル用に用いられる基材を使用することができる。このような基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、又はこれらのフィルムにハードコート処理を施したフィルム等の透明フィルム、アルミノケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、又はこれらのガラスに強化処理を施したガラス等の透明ガラスが好ましい。
本実施形態にかかる静電容量方式タッチパネルは、その他の構成を備えていてもよい。その他の構成としては、ハードコート層、防錆膜などの保護膜等を挙げることができる。
上記金属パターンを基材50上に形成する際、そのプロセス中において金属細線の断線が生じる可能性がある。本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルは、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を備えることにより、断線した金属細線同士の電気的な導通を維持することが可能である。導電性繊維からなる膜を例に、より具体的に説明する。図3は、実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの特徴の一例を説明するための模式図である。金属パターンの形成プロセス中に断線部3が発生した場合、静電容量方式タッチパネルの動作不良が発生しうる。図3に示すように、本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルでは、金属パターンにおいて金属細線に断線が生じた場合であっても、金属パターンに接するように導電性繊維4’からなる膜(以下、場合により導電膜ともいう)を備えることから、導電性繊維4’を介して金属細線2’同士の導通が可能である。これにより、静電容量方式タッチパネルにおける動作不良のリスクを低減することが可能である。図3において、電気信号は金属細線2’から導電性繊維4’を伝い、AからB、C、およびDを経てEに伝達可能であるので、タッチ動作の支障が生じることを防止できる。
得られるタッチパネルの視認性(例えば、透明性等)の観点からは金属パターン2の密度を小さくするのが好ましいが、その場合、交差部における信号伝達の強度が小さくなる(タッチ感度が低下する)傾向にある。しかし、本実施形態にかかる静電容量方式タッチパネルは、導電膜を備えることから、充分な信号伝達の強度を確保することが可能となっている。交差部での信号伝達強度を確保することにより、X電極とY電極との信号伝達強度の差を低減して、得られる静電容量方式タッチパネルの感度をより向上させることができる。
本実施形態における導電性繊維又は導電性粒子からなる第1の膜4b及び第2の膜4aの面積は、静電容量方式タッチパネルの厚み方向から見て、上記第1の金属パターン2aの面積及び上記第2の金属パターン2bの面積の合計よりも大きいことが好ましい。第1及び第2の金属パターンが占める面積の合計は、静電容量方式タッチパネルの基材50に対して垂直な方向から見て、導電性繊維又は導電性粒子からなる第1及び第2の膜4が占める面積に比べて小さいものであることが好ましく、導電性繊維又は導電性粒子からなる第1及び第2の膜4が占める面積の10%以下であることがより好ましい。金属パターンの占める面積をこのような範囲に設定することにより、タッチ位置の検出速度及び検出感度の両立を高水準で維持しつつ、静電容量方式タッチパネルの光透過率をより向上させることができる。
[第2実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と基本的な構成は同じである。金属細線からなる金属パターンが、十字状或いは魚骨形であり、メッシュ状(格子状)ではない点で、第1の実施形態と相違する。このため、以下の説明では、第1の実施形態と相違する事項のみ説明し、第1の実施形態と同様の説明は省略する。
図4は、第2の実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの部分模式平面図であり、図中の破線部に囲まれたところは下層の構成を示している。図4においては金属パターンにおける金属細線の密度がより小さくなっている。第2に実施形態にかかる静電容量方式タッチパネルでは、タッチ位置の検出速度及び検出感度の両立を高水準で維持しつつ、光透過率もより向上させることができる。
本実施形態においても、上述のとおり、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を有することにより、金属細線の断線が生じたとしても、静電容量方式タッチパネル自体の動作不良を招くリスクを低減することが可能である。
[第3実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と基本的な構成は同じである。導電性繊維又は導電性粒子からなる膜の形状が、静電容量方式タッチパネルの厚み方向から見て、その外周において凸部を有する形状であり、第1の実施形態と相違する。上記凸部とは、電極ユニット同士の電界強度を向上させる部分である。このため、以下の説明では、第1の実施形態と相違する事項のみ説明し、第1の実施形態と同様の説明は省略する。
図5は、第3の実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの部分模式平面図であり、図中の破線部に囲まれたところは下層の構成を示している。図5に示す静電容量方式タッチパネルにおいて、電極ユニットの端部形状が凹凸状に形成されており、このため電極ユニットの外周の長さが第1の実施形態に比べ、長くなっている。電極ユニット同士の電界強度はこの端部において強まる傾向にあるため、このような形状とすることによりタッチ感度をより向上させることができる。
[第4実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第1の実施形態と基本的構成は同じである。X電極を構成する導電性繊維又は導電性粒子からなる膜と、Y電極を構成する導電性繊維又は導電性粒子からなる膜との境界がレーザー照射によって形成されている点が異なる。このため、以下の説明では、第1の実施形態と相違する事項のみ説明し、第1の実施形態と同様の説明は省略する。
図6は、第4の実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの一部を示す模式図であり、図中の破線部に囲まれたところは下層の構成を示している。図6の(a)は第4の実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの一部を示す模式平面図であり、図6の(b)は(a)のVIb−VIb線に沿った模式断面図である。
図6では、導電膜は導電性繊維の一部を除去する方法ではパターン化されておらず、レーザーによって導電性繊維を不導体化されたもの又は焼切られたものとなっている。図6(a)の破線で囲まれる領域7がこの導電性繊維を不導体化されたもの又は焼切られた部分を示す。露光、現像によりパターン化される導電膜は、導電膜そのものが部分的に除去されるため、基材50上に導電膜が存在する箇所と、導電膜が存在しない箇所とが存在することとなり、この差が視認されやすい。しかし、レーザーにより導電性繊維の不導体化を行う場合には、一部の導電性が遮断されているだけで、膜そのものは存在していることから、静電容量方式タッチパネルの視認性をより向上させる観点から好ましい。
[静電容量方式タッチパネルの製造方法]
本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの製造方法は、X電極とY電極とを備える静電容量方式タッチパネルの製造方法であって、基材上に、金属細線からなる第1及び第2の金属パターンを設ける工程と、上記第1及び第2の金属パターン上に、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を設ける工程と、を備える。
図7から図9を参照しつつ、静電容量方式タッチパネルの製造方法について説明する。
まず、基材50上に、後にX電極及びY電極を構成することとなる金属細線からなる第1及び第2の金属パターン2a,2bを形成する(金属パターン形成工程)。次に、電極ユニット同士がつながっている方(例えば、図7の(a)においては、後にX電極となる第1の金属パターン2a)の金属パターンの一部(例えば、図7の(a)において、後にY電極となる第2の金属パターン2bの間の部分)に絶縁膜を設ける(図8参照)。その後、基材上に形成された金属パターン上に導電性繊維又は導電性粒子からなる第1及び第2の膜4a,4b(導電膜)を設ける(導電膜形成工程)。以上の工程を経ることで本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルを得ることができる(図9参照)。
本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの製造方法は、別の工程をさらに備えていてもよい。例えば、視認性向上を目的として、金属パターンの反射を抑制する黒化処理等の行程を備えていてもよい。
金属パターン形成工程において、金属細線からなる金属パターンを形成する方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、蒸着とフォトプロセスを利用する方法などが挙げられる。熱蒸着又はメッキ蒸着によって金属薄膜を基材の表面に均一に形成し、その表面にパターン形状のレジストを形成して、レジストのない箇所をエッチング液で除去することにより所望の金属パターンを形成することができる。また、別の形成手段として、基材にパターン形状にメッキ液を塗布して、金属パターンを形成する方法もある。さらに、別の形成手段として、基材に金属粒子含有組成物をパターン状に印刷する方法で金属パターンを形成してもよい。また、別の形成手段として、基材にローラなどでパターン状の窪みを形成し、窪みに金属粒子含有組成物を塗布して、金属パターンを形成する方法もある。
導電膜形成工程において、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を形成する方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、導電性繊維又は導電性粒子を含有する溶液を金属パターン上に塗布し、溶媒を除去する方法で膜を設ける方法、基材フィルム上に予め導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を設けたシート(導電性シート)を別途用意し、これを金属パターン上に転写することにより膜を設ける方法などが挙げられる。
また、導電性繊維又は導電性粒子を含む感光性樹脂組成物を用いて、導電膜を設けてもよい。感光性樹脂組成物を使用して導電性繊維からなる膜を設ける場合、金属パターン上に導電性繊維を含む感光性樹脂組成物からなる感光層を設け、所定のパターンで露光・現像することで、導電膜を金属パターン上に形成することができる。所定のパターンで露光・現像に代えて、レーザー照射によるパターン化を行ってもよい。必要に応じて、その後、感光性樹脂組成物の硬化物層を除去してもよい。
感光層は、例えば、導電性繊維又は導電性粒子を含む感光性樹脂組成物の溶液を調製し、これを金属パターン上に塗布した後、溶媒を除去する方法で形成することができ、より好ましくは、支持フィルムと、導電性繊維又は導電性粒子を含む導電膜と、感光層とをこの順に備える感光性導電フィルムを別途用意し、導電層が金属パターンに接するように転写することにより形成することができる。
感光性導電フィルムを用いた場合の導電膜形成工程は、感光層の所定部分にフォトマスクを介して、活性光線を照射する工程(露光工程)と、その後感光層を現像する工程(現像工程)とからなる。
露光工程では、活性光線を照射することによって感光層が硬化され、この硬化物によって導電膜が基材上の金属パターンに固定されることで、金属パターンに接する導電膜が形成される。露光工程での露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。活性光線の光源としては、公知の光源が用いられる。
活性光線の露光量は、使用する装置、感光性樹脂組成物の組成等によって異なるが、好ましくは5〜1000mJ/cm2であり、より好ましくは10〜200mJ/cm2である。光硬化性に優れる点では、10mJ/cm2以上であることが好ましく、解像性の点では200mJ/cm2以下であることが好ましい。1000mJ/cm2以下とすることで、感光層の変色を抑制することができる。
現像工程では、感光層の未露光部(露光部以外の部分)が除去される。具体的には、ウェット現像により感光層の未露光部を除去する。これにより、所定のパターンを有する感光層の硬化物及び導電膜が残る。こうして、導電性繊維又は導電性粒子からなる所望の形状を有する導電膜が形成される。
現像液としては、アルカリ性水溶液等の安全、且つ安定であり、操作性が良好なものが用いられる。上記アルカリ性水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物(水酸化アルカリ);リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の炭酸塩又は重炭酸塩(炭酸アルカリ);リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等のホウ酸塩又はポリホウ酸塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウム水溶液等が好ましい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性に合わせて調節してもよい。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
本実施形態においては、水又はアルカリ水溶液と1種以上の有機溶剤とからなる水系現像液を用いることができる。ここで、アルカリ水溶液に含まれる塩基としては、上述の塩基以外に、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2、モルホリン等が挙げられる。
上記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
水系現像液は、有機溶剤の濃度を2〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性にあわせて調整することができる。さらに、水系現像液のpHは、感光層の現像が充分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。また、水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量添加することもできる。
有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。
現像の方式としては、ディップ方式、パドル方式、高圧スプレー方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。これらのうち、高圧スプレー方式を用いることが、解像度向上の観点から好ましい。
本実施形態の静電容量方式タッチパネルの製造方法においては、現像後に必要に応じて、60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm2程度の露光を行うことにより樹脂硬化膜パターンを更に硬化してもよい。
<感光性導電フィルム>
本実施形態に係る感光性導電フィルムは、支持フィルムと、導電性繊維又は導電性粒子を含む導電膜と、感光層とをこの順に備える。
感光性導電フィルムの支持フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられる。これらのうち、透明性、耐熱性等の観点からは、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリプロピレンフィルムが好ましい。
感光性導電フィルムの感光層としては、感光性樹脂組成物から構成され、(A)バインダーポリマーと、(B)光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有することが好ましい。
(A)バインダーポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
(A)バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位又は芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、α−クロルアクリル酸、β−フリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸シクロヘキシル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
上記重合性単量体としては、その他には、2官能の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
(A)バインダーポリマーは、(a)(メタ)アクリル酸、及び(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含有する共重合体が好ましい。
(A)バインダーポリマーは、アルカリ現像性をより良好にする観点から、カルボキシル基を有することが好ましい。このようなバインダーポリマーを得るためのカルボキシル基を有する重合性単量体としては、上述したような(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
(A)バインダーポリマーが有するカルボキシル基の比率は、バインダーポリマーを得るために使用する全重合性単量体に対するカルボキシル基を有する重合性単量体の割合として、10〜50質量%であることが好ましく、12〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることがさらに好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。アルカリ現像性に優れる点では10質量%以上であることが好ましく、アルカリ耐性に優れる点では、50質量%以下であることが好ましい。
(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は、10,000〜200,000であることが好ましいが、解像度の見地から、15,000〜150,000であることがより好ましく、30,000〜150,000であることがさらに好ましく、30,000〜100,000であることが特に好ましい。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
(B)光重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物を用いることができる。
エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物としては、一官能ビニルモノマー、二官能ビニルモノマー、少なくとも3つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する多官能ビニルモノマー等が挙げられる。
上記一官能ビニルモノマーとしては、例えば、上記(A)成分の好適な例である共重合体の合成に用いられる上記重合性単量体が挙げられる。
上記二官能ビニルモノマーとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート(2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート;多価カルボン酸(無水フタル酸等)と水酸基及びエチレン性不飽和結合を有する物質(β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等)とのエステル化物等が挙げられる。
上記少なくとも3つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する多官能ビニルモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート等のグリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物などが挙げられる。
(C)光重合開始剤としては、ラジカル硬化型の光重合開始剤であることが好ましい。ラジカル硬化型の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、オキサゾール化合物などが挙げられる。また、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。
これらの中でも、形成する感光性樹脂層の透明性、及び薄膜としたときのパターン形成能から、オキシムエステル化合物又はホスフィンオキサイド化合物が好ましい。
上記(A)バインダーポリマーの配合量は、(A)バインダーポリマー及び(B)光重合性化合物の総量100質量部に対して、40〜80質量部であることが好ましく、50〜70質量部であることがより好ましい。この配合量を40質量部以上とすることにより、感光性樹脂組成物の塗膜性(塗工性)に優れ、樹脂が感光性導電フィルムの端部から染み出す現象(エッジフュージョンとも呼ばれる)をより抑制することができる。また、この配合量を80質量部以下とすることにより、感光性樹脂層の露光に対する感度を向上させることができ、且つ充分な機械強度を得ることができる。
上記(B)光重合性化合物の配合量は、(A)バインダーポリマー及び(B)光重合性化合物の総量100質量部に対して、20〜60質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましい。この配合量を20質量部以上とすることにより、感光性樹脂層の露光に対する感度を向上させることができ、充分な機械強度を得ることができる。また、この配合量を60質量部以下とすることで、感光性樹脂組成物の塗膜性(塗工性)に優れ、エッジフュージョンをより抑制することができる。
上記(C)光重合開始剤の配合量は、(A)バインダーポリマー及び(B)光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。この配合量を0.1質量部以上とすることにより、感光性樹脂層の露光に対する感度を向上させることができる。この配合量を20質量部以下とすることにより、露光による感光性樹脂層の硬化をより均一に行うことができる。
感光層の厚さは、求められる特性等によっても異なるが、タッチパネルの薄型化の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。また感光層の厚さは、導電性繊維、導電性粒子又は金属パターンの保護、防錆の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。感光層の厚さは、走査型電子顕微鏡写真によって測定される値を指す。
感光性導電フィルムの導電膜は、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜であるが、導電性繊維からなる膜であることが好ましい。導電性繊維としては、金、銀、白金等の金属繊維、及びカーボンナノチューブ等の炭素繊維などが挙げられる。導電性に優れる観点からは、金繊維又は銀繊維を用いることが好ましく、形成される導電膜の導電性を容易に調整できる観点からは、銀繊維を用いることがより好ましい。
感光層は導電性繊維又は導電性粒子を含んでいてもよい。この場合、感光層中において導電性繊維又は導電性粒子は基材上の金属パターン側に局在していることが好ましく、感光層の面方向に導電性が得られる態様であることが好ましい。ただし、導電性繊維又は導電性粒子を含有する膜(導電膜)と、導電膜上に設けられた感光性樹脂層との境界は必ずしも明確になっていなくともよい。本明細書においては、導電膜は感光層の面方向に導電性が得られるものを意味し、導電膜に感光性樹脂層が混じり合った態様であってもよい。例えば、導電膜中に感光性樹脂層を構成する組成物が含浸されていたり、感光性樹脂層を構成する組成物が導電膜の表面に存在していたりしてもよい。
導電膜は、導電性繊維同士が接触してなる網目構造を有することが好ましい。このような網目構造を有する導電膜は、感光性樹脂層の基材側表面に形成されていてもよいが、感光層の基材側表面においてその面方向に導電性が得られるのであれば、感光性樹脂層に含まれる形態で形成されていてもよい。
導電膜の厚さは、求められる導電性等によっても異なるが、1μm以下であることが好ましく、1nm〜0.5μmであることがより好ましく、5nm〜0.1μmであることがさらに好ましい。導電膜の厚さが1μm以下であると、450〜650nmの波長域での光透過率が高く、パターン形成性にも優れ、特に透明電極の作製に好適なものとなる。導電膜の厚さは、走査型電子顕微鏡写真によって測定される値を指す。
本実施形態において感光層を設ける工程において、感光層は感光性導電フィルムのように、別途支持フィルム上にフィルムとして製膜したものを用いることが好ましい。感光性導電フィルムを、金属パターンを有する基材上に積層することにより、ロールツーロールプロセスが容易に実現できる。これにより、溶剤乾燥工程が短縮できる等、製造工程の短縮及びコスト低減に大きく貢献することができる。
感光性導電フィルムを用いて静電容量方式タッチパネルを製造する場合には、支持フィルムと、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜と、感光層と、を有する感光性導電フィルムを、上記第1及び上記第2の金属パターン上に、上記膜が接するようにラミネートすることにより、上記第1及び上記第2の金属パターン上に、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を設けてもよい。膜を設けた後に更にパターニング工程を設けてもよい。パターニングの手法については、上述したように露光・現像する方法やレーザーを使用した方法を用いることができる。露光・現像によりパターニングする場合には、上記第1及び第2の膜と同じパターンを有する樹脂硬化層を設けることができる。また、レーザーを使用してパターニングする場合には、感光層は転写に適した樹脂組成物であって、感光特性を有していないものであってもよい。
[第5実施形態]
第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係る静電容量方式タッチパネルは、金属細線からなる第1の金属パターンを含むX電極と、金属細線からなる第2の金属パターンを含むY電極と、を備える静電容量方式タッチパネルであって、上記X電極又は上記Y電極の少なくとも一方は、上記第1又は上記第2の金属パターンに接する導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を含むものとなっている。
図10は、静電容量方式タッチパネルの第5の実施形態の一部を示す模式平面図である。図10に示す静電容量方式タッチパネルにおいては、導電性繊維又は導電性粒子からなる膜を有しているのがY電極の一方のみとなっている。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
下記に示す要領で、図1に示す構成を備える3インチサイズの静電容量方式タッチパネルを作製した。
まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、Cu/CuNiを蒸着した後、細線幅が、8μmとなるようにエッチングを行い、金属パターンを形成した。その後、感光性樹脂組成物層を設け、フォトリソグラフィによりパターニングすることで、X電極とY電極との交差部となる箇所に、厚さ1.5μmの絶縁膜を設けた。さらに、転写形透明導電フィルム(TransparentConductive Transfer Film:TCTF,日立化成株式会社製)を用いて上記金属パターン上に感光層を設けた。TCTFは銀ナノワイヤを含有する膜と感光層との積層構造を有しており、感光層を設ける際には、銀ナノワイヤを含有する膜が上記金属パターンに接するようにラミネートした。その後感光層をフォトリソグラフィによりパターニングすることのより、X電極及びY電極を形成した。
デジタルマルチメータにより、X電極及びY電極のそれぞれについて電気抵抗を測定した。X電極の抵抗値は0.25kΩであり、Y電極の抵抗値は2.2kΩであった。さらに、コントローラICに接続し、信号強度は十分で、正常にタッチ動作することを確認した。
(比較例1)
金属細線からなる金属パターンを設けなかった以外は、実施例1と同様にして、静電容量方式タッチパネルを製造した。
比較例1の静電容量方式タッチパネルにおけるX電極の抵抗値は4.1kΩであり、Y電極の抵抗値は2.8kΩであった。
実施例1と比較例1との結果から、本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの構成を備えることにより、X電極の抵抗値は94%減少し、Y電極の抵抗値は約22%減少した。これは静電容量方式タッチパネル全体としては、抵抗値が58%減少したことを意味する。また本実施形態に係る静電容量方式タッチパネルの構成を備えることにより、信号速度がX電極で約94%、Y電極で約22%向上したことを意味し、静電容量方式タッチパネル全体としては、信号速度が58%向上したことを意味する。
以上のとおり、本発明の静電容量方式タッチパネルは、信号速度と信号強度とを高度に両立できるものであることが確認された。