JP2017056593A - 金属材料の粗面化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来よりも高い接合強度を得るこができるインサート金属部材及び金属材料の粗面化方法を提供する。【解決手段】 凹陥部4を囲む環状壁部が、金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部31からなり、環状凝固部31が凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部34を備えている。凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る波頭状の延出部34は、凹陥部4に入って固化した樹脂材料に対して強いアンカーとなる。隣り合う二つの凹陥部4,4のうちの一つの凹陥部4が有する波頭状の延出部34の一部は、隣り合う二つの凹陥部のうちの他の凹陥部側から飛散した溶融金属が凝固して形成されている。【選択図】図6

Description

本発明は、金属部材の表面を粗面化したインサート金属部材と、このインサート金属部材を用いた金属樹脂複合成形体及びその製造方法並びに金属材料の粗面化方法に関するものである。
特許第4020957号公報(特許文献1)には、金属表面を交差する複数の走査方向に沿ってレーザスキャニング加工することにより金属材料の表面に粗面化領域を形成する金属表面のレーザ加工方法(粗面化方法)が開示されている。この従来の粗面化方法では、複数回重畳的に交差する走査方向のレーザスキャニング加工を金属材料の表面に施すことにより、複数の交差する溝を形成している。その結果、未加工部分が複数の凸形状として残っている。この特許文献1の図11乃至図13には、複数の凹凸形状を示す写真が示されている。これらの写真から明らかなように、従来の方法で形成した金属材料の表面に現れている凹凸形状は頂点からなだらかに広がる山形状の凸部と、開口部から奥に向かうに従って幅寸法が小さくなるすり鉢状の凹部となる。凸部及び凹部の表面には、小さい凹凸が見られるものの、凸部の高さは、凹部の開口部の大きさと比べて小さい凹凸である。またこの公報には、該公報に示された粗面化方法を用いて粗面化されたアルミニウム、マグネシウム又はステンレス鋼からなるインサート金属材料をインサートとし、樹脂材料としてポリアセタールを含む各種の樹脂材料を用いてインサート成形をして金属樹脂複合成形体を製造することが開示されている。
特許第4020957号公報
特許文献1には、樹脂材料としてポリアセタールのように金属材料との接合性が悪い樹脂材料が記載され、また金属材料としてレーザ光の反射率が高いステンレス鋼が記載されている。しかしながらこれらの材料を用いて、特許文献1に示された技術を用いて金属樹脂複合成形体を製造したところ、金属材料と樹脂材料の十分な接合強度と接合面における気密性を得ることができていないことが判明した。
本発明の目的は、従来よりも高い接合強度を得るこができるインサート金属部材及び金属材料の粗面化方法を提供することにある。
上記目的に加えて、本発明の他の目的は、従来よりも気密性を高くすることができるインサート金属部材及び金属材料の粗面化方法を提供することにある。
また本発明のさらに他の目的は、従来よりも高い接合強度及び気密性を有する金属樹脂複合成形体及び金属樹脂複合成形体の製造方法を提供することにある。
本発明は、所定形状の金属部材の表面に複数の凹陥部が形成された粗面化領域に、樹脂部材が成形されてなる金属樹脂複合成形体用のインサート金属部材を対象とする。本発明のインサート金属部材は、凹陥部を囲む環状壁部が、金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部からなり、環状凝固部が前記凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部を備えている。凹陥部の開口部を狭めるように延び出る波頭状の延出部は、凹陥部に入って固化した樹脂材料に対して強いアンカーとなる。そのため従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を大幅に向上させることができる。「波頭状」とは、波の立ってくずれる形と似た形状を意味する。
複数の凹陥部には、隣り合う二つの凹陥部間の隔壁部が、隣り合う二つの環状凝固部の一部によって構成されているものが含まれている。この場合、隔壁部の近傍に波頭状の延出部が存在している。この隔壁部は、溶融金属の凝固物からなり、形状は複雑である。そして隔壁部周辺には溶融金属の飛散物が付着する。そのため隔壁部の近傍に波頭状の延出部が形成される確率が高く、この波頭状の延出部がアンカーとしての効果を最も発揮する。
隣り合う二つの凹陥部のうちの一つの凹陥部が有する波頭状の延出部の一部は、隣り合う二つの凹陥部のうちの他の凹陥部側から飛散した溶融金属が凝固して形成されている。その結果、凹陥部の開口部を狭めるように延びる大きな延出部が形成されることになる。
また隔壁部には隣り合う二つの凹陥部間を連通する連通窟が形成されていてもよい。このような連通窟があると、連通窟内に入って固化した樹脂材料が連通窟から抜けでない限り強力なアンカーとなる。本願明細書において、連通窟とは、隣り合う少なくとも二つの凹陥部間に位置する凝固部が形成される際に、凝固部内に形成される洞窟のような不定形の複雑な形をした空隙を意味する。本発明のインサート金属部材では、隣り合う少なくとも二つの凹陥部間に位置する凝固部内に形成された1以上の連通窟内に樹脂部材を形成するための樹脂が浸入して凝固すると、従来に無い強いアンカー効果が発生する。その結果、従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を大幅に向上させることができる。複数の凹陥部において、隣り合う二つの凹陥部でも、凹陥部間の距離が離れていたり、凹陥部形成時期が離れていると、隣り合う二つの凹陥部間の凝固部内に連通窟が形成されないものが含まれていても、連通窟が形成される限り、アンカー効果が高まることは当然である。したがって本発明は隣り合う全ての二つの凹陥部間に連通窟が形成されている場合のみを包含するものではない。
複数の凹陥部の平均直径寸法が40μm以上100μm以下であり、複数の凹陥部の平均深さ寸法が100μm以上であり、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下になるようにすると、従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を向上させることができる。なお各部の寸法は、実際に製造したインサート金属部材の表面及び断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で拡大し、その画像を撮影して単位面積当たりに形成される複数の凹陥部の平面画像及び断面画像に基づいて計測してその平均値として求めた。
金属部材として、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮のように、反射率の高い金属からなるものを用いても、本発明によれば、従来よりも高い接合強度を得ることができる。
インサート金属部材の表面の粗面化には、所定形状の金属部材の表面に、所定のスポット径を有するレーザ光を照射することにより、複数の凹陥部を表面に形成して粗面化領域を形成する金属材料の粗面化方法を用いることができる。本発明の粗面化方法では、まず金属部材にレーザ光を照射して溶融金属を生成し、溶融金属が凝固して形成された環状凝固部により先の凹陥部を形成する第1の工程を実施する。次に先の凹陥部の環状凝固部が完全に凝固する前に、先の凹陥部から所定の距離をあけて、金属部材にレーザ光を照射して次の溶融金属を生成し、次の溶融金属が凝固して形成された次の環状凝固部により次の凹陥部を形成する第2の工程を実施する。第1の工程と第2の工程とを繰り返すことにより粗面化領域を形成する。本発明では、レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを、次の溶融金属の一部が飛散して先の凹陥部を形成するための溶融金属の上に付着して凝固することにより、先の凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部が形成されるように定める。本願明細書において「照射パターン」とは、レーザ光の照射回数、照射経路を含むレーザ光の照射条件を含むものである。したがって照射パターンによっては、1回のレーザ光の照射により前述の延出部を形成できる場合もあれば、複数回のレーザ光の照射により前述の延出部を形成できる場合もある。例えば、レーザ光のパワーが小さい場合には、一つの凹陥部を形成するために、閉ループ状の照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置にレーザ光を照射することにより波頭状の延出部の生成が可能になる。本願明細書で「閉ループ状の照射経路パターン」とは、例えばレーザ光を照射する経路(またはレーザ光の照射軌跡)が、円形、楕円形、多角形等のように、閉じた形状になるパターンを意味する。なおこのパターンは、綺麗なパターンでも、また手書きのように多少乱れたパターンであってもよい。照射経路パターンが閉ループ状であれば、照射経路パターンの中心部に深さが複雑で、且つ内壁部の形状が複雑な凹陥部を形成できるだけでなく、レーザ光を照射する装置の動作をスムーズなものとすることができる。照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるようにレーザ光を照射すると、レーザ光の照射により溶融した溶融金属は、スポットの外側に押し出されたり、周囲に飛散して凝固する。その結果、凹陥部の開口部及び内壁部には複雑な形状の波頭状の延出部が形成される。
また先の凹陥部と次の凹陥部間の隔壁部が、隣り合う二つの環状凝固部の一部によって構成されており、隔壁部の近傍に波頭状の延出部が存在するように、レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを定める。このようにすると隣接する凹陥部を形成する際に発生するエネルギで隔壁部が前に形成された凹陥部側に変形するとともに、飛散溶融金属が前に形成した凹陥部の開口周縁にも付着することになるため、より大きな波頭状の延出部を形成できる。したがってアンカー効果をさらに高めることができる。
さらに、連続して形成される二つの凹陥部間の隔壁部に二つの凹陥部間を連通する連通窟が形成されるように、レーザ光のパワー、スポット径、照射パターン及び二つの凹部の中心間の間隔を定めるのが好ましい。1つの凹陥部が形成された後に隣接して他の1つの凹陥部が形成される際に、この隣り合う二つの凹陥部間に形成される凝固部には、両凹陥部を形成するために照射されたレーザ光からのエネルギが相互に影響し合って、両凹陥部間を連通する連通窟が形成される可能性が高くなる。連通窟が形成されるメカニズムは定かではないが、ある程度の再現性を持って形成されることは、実験により確認されている。
具体的には、複数の凹陥部の平均直径寸法が40μm以上100μm以下であり、複数の凹陥部の平均深さ寸法が100μm以上である場合には、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下となるように、レーザ光のパワー、スポット径、照射パターン及び二つの凹部の中心間の距離を定めるのが好ましい。
本発明の方法を実施するためのより実用的な条件は以下の通りである。
所定形状の金属部材は、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮であり、レーザ光のパワーを24W〜80Wとし、波長を1054nm〜1074nmとし、レーザ光の前記スポット径を45μm〜75μmとし、前記照射経路パターンを直径25μm〜40μmの円形パターンとし、照射経路パターンに沿ってパルス状にレーザ光を照射して凹陥部を形成する。そして、連続して形成される二つの凹陥部の中心間の距離を50〜60μmに設定する。このような条件にすると、従来不可能であった銅等のようにレーザ光の反射率が高い金属からなる材料をインサートとして樹脂部材をインサート成形することができる。
本発明によれば、金属部材として、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮を用いた本発明のインサート金属部材をインサートとして、しかも樹脂部材がポリアセタールまたはポリフタルアミドによってインサート成形されてなる金属樹脂複合成形体において、従来の技術では得られない接合強度が得られる。
本発明の金属樹脂複合成形体の製造方法では、本発明のインサート金属部材を樹脂材料の成形温度または成形温度に近い温度にしてインサート成形を実施する。このようにすると凹陥部に樹脂材料が完全に充填されるまで樹脂材料の凝固または固化が始まることが無いので、凹陥部に樹脂材料を完全に充填固化させることができ、接合強度及び気密性を十分なものとすることができる。
(A)は本発明のインサート金属部材の試験用の実施の形態の一例の斜視図であり、(B)はインサート金属部材をインサートして形成される樹脂部材を単独で示す斜視図であり、(C)はインサート金属部材をインサートして樹脂部材が形成された金属樹脂複合成形体の斜視図である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は凹陥部の開口部周辺の輪郭形状の例を示す模式平面図であり、(B)は熱的に影響する距離をあけて隣り合う二つの凹陥部の模式部分断面図である。 照射経路パターンを説明するための図である。 レーザ設備を説明するために用いる図である。 評価条件を説明するために用いる図である。 (A)乃至(F)は、金属材料として錫吊りメッキを施した真鍮を用い、樹脂材料としてポリアセタール(POM)を用いた実施例の樹脂充填後の断面図の例を示している。 本発明の方法により表面の粗面化を行ったインサート金属部材を用いて作った金属樹脂複合成形体の実施例と比較例の試験結果を示す図である。 (A)及び(B)は、閉ループ状の照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置にレーザ光を照射する方法により凹陥部の中心間距離を60μmに設定して連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の拡大断面図とさらなる拡大断面図である。 (A)及び(B)は、閉ループ状の照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置にレーザ光を照射する方法により凹陥部の中心間距離を100μm設定して連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の拡大断面図とさらなる拡大断面図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明のインサート金属部材と、このインサート金属部材を用いた金属樹脂複合成形体及び金属材料の粗面化方法の実施の形態について詳細に説明する。図1(A)は、本発明のインサート金属部材の試験用の実施の形態の一例の斜視図である。この実施の形態のインサート金属部材1は、板状の金属部材3の表面に多数の凹陥部4が形成された粗面化領域5を備えている。金属部材3としては、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施された錫メッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮に錫メッキが施されたメッキ真鍮等で、レーザ光に対する反射率の高い金属からなるものを用いている。なおアルミニウム等のレーザ光に対する反射率の低い金属からなるインサート金属部材に本発明を適用してもよいのは勿論である。
図1(B)は、インサート金属部材1をインサートして形成される樹脂部材7を単独で示す斜視図である。樹脂部材7には、試験用のパイプ9が一体に成形されている。そして図1(C)には、インサート金属部材1をインサートして樹脂部材7が形成された金属樹脂複合成形体11の斜視図が示されている。
試験用のパイプ9は、気密性の試験のために、粗面化領域5の一部をパイプ9の内部に露出させる構造を有している。パイプ9から気体を供給したときに、粗面化領域5と樹脂部材7との間の界面から気泡が出るか否かにより、気密性の有無を確認する。またパイプ9は、インサート金属部材1を固定した状態で、パイプ9にインサート金属部材1から離れる方向(粗面化領域5と直交する方向)に所定の引き抜き力を加えたときに、樹脂部材7が粗面化領域5から部分的にまたは全部が剥がれるか否かにより、接合強度を測定するために設けられている。
インサート金属部材1をインサートとしてインサート成形される樹脂部材7を形成するたに用いる樹脂材料としては、種々の熱可塑性樹脂材料を用いることができるが、本実施の形態では、特に、ポリアセタール(POM)またはポリフタルアミド(PPA)を用いる。これらの樹脂材料は、反射率の高い金属材料からなるインサート金属部材との接合強度を高めることが難しく、また接合部の気密性を高めることが難しい樹脂材料である。
後に詳しく説明するが、インサート金属部材1の表面の粗面化には、所定形状の金属部材の表面に、所定のスポット径を有するレーザ光を照射することにより、複数の凹陥部4(図2乃至図6参照)を表面に形成して複数の波頭状の延出部34を備えた粗面化領域5を形成する。本発明の粗面化方法については後に説明する。
図2(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径30μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が60μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図2(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図2(B)は倍率250倍であり、図2(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図3(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の他の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径40μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が70μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図3(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図3(B)は倍率250倍であり、図3(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図4(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の他の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径60μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が80μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図4(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図4(B)は倍率250倍であり、図4(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図5(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の他の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径80μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が100μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図5(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図5(B)は倍率250倍であり、図5(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図6(A)は、凹陥部4の開口部周辺の輪郭形状の例を示す模式平面図であり、図6(B)は熱的に影響する距離をあけて隣り合う二つの凹陥部4の模式部分断面図である。図2乃至図6から判るように、本発明の実施の形態のインサート金属部材は、凹陥部を囲む環状壁部が、金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部31からなり、環状凝固部31が凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部34を備えている。波頭状の延出部34の形状は複雑であるため、波頭状の延出部34を数値によって正確に特定することは難しい。また波頭状の延出部34の形状寸法は、金属材料の種類、レーザ光のパワー、波長、スポット径及び照射経路パターンによって異なってくる。しかし発明者が、拡大写真に基づいて測定した凹陥部4の開口部側に延び出る波頭状の延出部34の長さは、10μm〜30μmの範囲に入るものが大半であることが確認されている。
凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る波頭状の延出部34は、凹陥部4に入って固化した樹脂材料に対して強いアンカーとなる。隣り合う二つの凹陥部4,4のうちの一つの凹陥部4が有する波頭状の延出部34の一部は、隣り合う二つの凹陥部のうちの他の凹陥部側から飛散した溶融金属が凝固して形成されている。複数の凹陥部4には、隣り合う二つの凹陥部4,4間の隔壁部32が、隣り合う二つの環状凝固部31の一部によって構成されているものが含まれている。隔壁部32の近傍に波頭状の延出部34が存在している。この隔壁部32は、溶融金属の凝固物からなり、形状は複雑である。そして隔壁部32周辺には溶融金属の飛散物が付着する。そのため隔壁部32の近傍に波頭状の延出部34が形成される確率が高く、この波頭状の延出部34がアンカーとしての効果を最も発揮する。
また図6(B)に模式的に示すように、隣り合う少なくとも二つの凹陥部4,4間の間隔が短い場合には、隣り合う二つの凹陥部4,4間に位置する隔壁部を構成する環状凝固部31の一部分内に、1以上の連通窟33が形成される場合がある。この連通窟33によって隣り合う凹陥部4,4が連通している。連通窟33とは、隣り合う少なくとも二つの凹陥部4,4間に位置する環状凝固部31が形成される際に、環状凝固部31内に形成される洞窟のような不定形の複雑な形をした空隙である。図6(B)の例は、一例であって、実際の連通窟33は、溶岩洞窟の内壁の形状ように複雑な三次元形状を有するものであり、複数の連通窟33が相互に連通している場合等も含まれる。このような連通窟33が環状凝固部31内に形成されていることにより、樹脂部材を形成するための樹脂が連通窟33に浸入して固化すると、従来にない強いアンカー効果が発生する。なお複数の凹陥部の全てが、必ず隣り合う他の凹陥部との間に連通窟が形成されている必要はなく、一部の複数の凹陥部間に連通窟33が形成されていれば、連通窟33によるアンカー効果は、延出部34しか形成されない場合と比べて高まる。通常、距離的に及び時間的に連続して形成される二つの凹陥部間に連通窟が形成される。
[粗面化方法の実施の形態]
本発明の粗面化方法の一実施の形態では、インサート金属部材1の表面の粗面化を次のようにして実施する。まず所定形状の金属部材の表面に、金属部材の材質に適した所定のパワーと、波長と、スポット径を有するパルス状のレーザ光を所定の照射パターンに従って照射することにより、複数の凹陥部4を表面に形成して粗面化領域5を形成する金属材料の粗面化方法を用いる。本発明の実施の形態の粗面化方法では、まず金属部材に、レーザ光を照射して溶融金属を生成し、溶融金属が凝固して形成された環状凝固部31により先の凹陥部4を形成する第1の工程を実施する。次に先の凹陥部4の環状凝固部31が完全に凝固する前に、先の凹陥部から所定の距離をあけて、金属部材にレーザ光を照射して次の溶融金属を生成し、次の溶融金属が凝固して形成された次の環状凝固部31により次の凹陥部4を形成する第2の工程を実施する。第1の工程と第2の工程とを繰り返すことにより粗面化領域5を形成する。本発明では、レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを、次の溶融金属の一部が飛散して先の凹陥部を形成するための溶融金属の上に付着して凝固することにより、先の凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部34が形成されるように定める。前述のように、「照射パターン」とは、レーザ光の照射回数、照射経路を含むレーザ光の照射条件を含むものである。したがって照射パターンによっては、1回のレーザ光の照射により延出部34を形成できる場合もあれば、複数回のレーザ光の照射により延出部34を形成できる場合もある。
例えば、レーザ光のパワーが小さい場合には、図7に示すような閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射することにより延出部34の生成が可能になる。図7の例では、8箇所のレーザ照射位置PSを用いているが、レーザ照射位置PSの数はレーザ光のスポット径SRの大きさによって任意に定める。図8に示すように、本実施の形態で用いるレーザ設備13から照射されるレーザ光は、波長が1054nm〜1074nmの範囲の値(本実施の形態では1064nm)で、パワーが24W〜80W(本実施の形態では64W)、スポット径の好ましい範囲が45μm〜75μm(本実施の形態では45μm)であり、焦点距離は80mmである。そして図9に示すように、レーザ光Lを直径30μmの照射経路パターンPTに沿って、そして、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部との中心間距離を50μm〜80μmとして走査する。レーザ光Lのスポット径の中心を、レーザ照射位置PSに合致させてレーザ光を照射する。パルス状のレーザ光を照射する周期の好ましい範囲は5μs〜10μs(本実施の形態では10μs)であり、照射経路パターンPTに沿って時計回りまたは半時計回り方向に1周だけレーザ光を走査する好ましい速度の範囲は、100mm/s〜1500mm/s(本実施の形態では900mm/s)である。このようにすると、レーザ光Lを照射経路パターンPTに沿って走査した結果できるレーザの軌跡外周の直径は理論的に75μmとなる。
なお図9の例では、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離は90μmとなり、隣り合う二つの凹陥部間での熱的影響は小さい。二つの凹陥部の中心間の距離が75μmより小さくなると、隣り合う二つの凹陥部を構成する環状凝固部が一部において重なった状態で形成されることになり、隣り合う二つの凹陥部間の隔壁は溶融金属の凝固部によってのみ構成されることになる。
上記のように、レーザ光をレーザ照射位置PSに順次照射すると、金属部材3の一部が溶融し且つ溶融した溶融金属は飛散し、飛散した溶融金属が凹陥部4の開口部に沿って付着して形成された付着物が凝固して環状凝固部31が形成される。1つの凹陥部4を囲む環状凝固部31の形状は、一定ではない。
前に形成された凹陥部4に隣り合う位置に次に形成される凹陥部4は、前に形成した凹陥部4の熱的影響を受ける距離を前の凹陥部4との間にあけて形成するのが好ましい。隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下になるように凹陥部4を形成すると、形成される複数の凹陥部4の平均直径寸法が70μm以上100μm以下となり、複数の凹陥部4の平均深さ寸法が100μm以上となる。
図6(B)に模式的に示すように、凹陥部4を形成する環状凝固部31は、凹陥部4の内壁面上に凹陥部4内に膨出する1以上の延出部34を備えている。延出部34の凹陥部4の開口縁部に添う部分の長さは、凹陥部4の開口縁部の平均周方向長さの1/10以上になる。また前述のように隣り合って相互に熱的に影響を及ぼす位置関係にある少なくとも二つの凹陥部4、4間の環状凝固部31内には連通窟33が形成されている。なお凹陥部4内に延び出る延出部34及び連通窟33の形状については、後に説明する実施例及び比較例において断面写真を示して説明する。
このような連通窟33と延出部34が形成されると、凹陥部4の内部に樹脂部材7を形成するための樹脂材料が入り込んで固化したときに、この連通窟33及び延出部34が固化した樹脂材料に対して強固なアンカーとして作用する。そのため従来よりも樹脂部材7のインサート金属部材1に対する接合強度を向上させることができる。
本実施の形態の粗面化方法では、凹陥部4を形成する凹陥部形成工程を、レーザ光の照射により与えられる熱の影響を相互に及ぼす距離をあけて、金属部材3の表面に沿って実施することにより複数の凹陥部4を形成することにより、粗面化領域5を形成する。
[金属樹脂複合成形体及びその製造方法]
上記のように製造したインサート金属部材1をインサートとして所定の樹脂材料を用いてインサート成形(本実施の形態では射出成形)をすることにより樹脂部材7を成形することにより、図1(C)に示す金属樹脂複合成形体11が製造される。特に本実施の形態では、所定形状の金属部材としてレーザの波長が1064nm以上のときの反射率が高い銅または真鍮に錫メッキが施されたものを用いる場合に適している。このような反射率の高い金属材料は、レーザ照射によってその表面を粗面化することが難しい材料である。そして樹脂材料としては、ポリアセタール(POM)またはポリフタルアミド(PPA)を用いる。これらの樹脂材料は、反射率の高い金属材料からなるインサート金属部材との接合強度を高めることが難しく、また接合部の気密性を高めることが難しい樹脂材料である。
特に本実施の形態の金属樹脂複合成形体の製造方法では、インサート金属部材1を樹脂材料の成形温度または成形温度に近い温度まで加熱(プリヒート)して(本実施の形態では220℃)射出成形によりインサート成形を実施する。このようにすると凹陥部4に樹脂材料が完全に充填されるまで樹脂材料の固化が始まることが無いので、凹陥部4に樹脂材料を完全に充填固化させることができ、接合強度及び気密性を十分なものとすることができる。
図10(A)乃至(F)は、金属材料として錫吊りメッキを施した真鍮(C2680P−1/2H)を用い、樹脂材料としてポリプラスッチク社が「ジュラコン(登録商標)M90−44」の名称で販売するポリアセタール(POM)を用いた実施例(ドットパターン)の樹脂充填後の断面図の例を示している。ドットパターンとは、上記粗面化方法で採用している照射経路パターンPTに沿って決めたレーザ照射位置PSにレーザ光を照射して1つの凹陥部を形成し、この凹陥部を複数並ぶように形成したものである。図10(A)乃至(F)は、ドットパターンに樹脂を充填したものを複数の凹陥部が含まれるように切断したものである。しかしながら凹陥部の形状が一定では無く、しかも凹陥部の寸法が極めて小さいものであるため、所望の位置で切断することが困難である。そのため、図10(A)乃至(F)の断面図には、凹陥部の中心付近を切断面が通っているもの[図10(F)]もあれば、凹陥部の中心付近から多少ずれた位置を切断面が通っているもの[図10(A)、(B)及び(E)]もあれば、凹陥部の端の部分を切断面が通っているもの[図10(C),(D)]も含まれている。これらの図から、凹陥部の内部形状が複雑であり、隣り合う二つの凹陥部間に連通窟33が形成されていることや、凹陥部の入口部分に溶融して凝固した凝固部の一部が複雑な形になって延出部34が存在していることが判る。この例では延出部34によるアンカー効果に加えて、連通窟33によるアンカー効果により、従来にない接合強度が得られている。
[金属樹脂複合成形体の実施例及び比較例]
図11は、本発明の方法により表面の粗面化を行ったインサート金属部材を用いて作った金属樹脂複合成形体の実施例と比較例(特許第4020957号公報のハッチングパターンにより表面の粗面化を行ったインサート金属部材を用いて作った金属樹脂複合成形体)の試験結果を示している。実施例では、プリヒート「あり」の場合と、「なし」の場合で試験を行い、比較例ではプリヒート「なし」の場合でのみ試験を行った。試験のサンプル数はそれぞれ5つずつとした。そして平均値「AVE」を求めた。
図11の試験結果は、金属材料としてメッキを施していない真鍮とメッキを施していない銅(DSC−3N−1/2H)を用い、樹脂材料としてデユポン社が「ザイテル(登録商標)HTN51G35EF」の名称で販売しているポリフタルアミド(PPA)と、樹脂材料としてポリプラスチック社がジュラコン(登録商標)M90−44の名称で販売しているポリアセタール(POM)用いた実施例と比較例の試験結果である。これらの試験は、レーザ加工ピッチを60μmとして行った。レーザ加工ピッチは、比較例においては、直線状に形成した隣り合う溝間の中心間の距離(ピッチ)を示しており、実施例においては、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離を意味する。実施例においては、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、60μmになるようにした。
「引張強度」は、引っ張り試験機(オートグラフ)を用いて、インサート金属部材1を固定した状態で、パイプ9にインサート金属部材1から離れる方向(粗面化領域5と直交する方向)に20mm/minの速度で引張り、樹脂部材7が粗面化領域5から部分的にまたは全部が剥がれたときの引張り力を「強度」として測定した。この試験結果から、真鍮に対して接合強度を高くすることが難しいとされているポリアセタール(POM)に対して、プリヒートが無い場合でも、比較例の4倍近くの強度が得られることが判る。また真鍮と同様に接合強度を高くすることが難しいとされる銅に対して、プリヒートが無い場合でも、比較例の1.5倍近くの強度が得られることが判る。なお、実施例におけるプリヒート「あり」の引張強度は、樹脂部材7が粗面化領域5から剥がれた結果ではなく、樹脂部材7自体の材料破壊である。
またパイプ9から0.4Mpaの圧力で気体を供給して、水中に水没させた金属樹脂複合成形体の粗面化領域5と樹脂部材7との間の界面から気泡が出るか否かにより、気密性の有無を確認する試験では、ポリアセタール(POM)用いた実施例では、プリヒートを行わない場合には、気密性を確保できないものの、プリヒートを行えば、完全な気密性を得られることが確認された。またポリフタルアミド(PPA)を用いた実施例では、プリヒートを行わない場合でも、一定の気密性を確保でき(試験サンプル5個中3個で気密性あり)、プリヒートを行えば、完全な気密性を得られることが確認された。比較例においては、ポリアセタール(POM)用いた場合及びポリフタルアミド(PPA)を用いた場合のいずれでも、プリヒートを行わない場合には、気密性を確保できないことが確認された。なお比較例においては、プリヒートを行うと、ポリフタルアミド(PPA)を用いた場合において一定の気密性が確保できる(試験サンプル5個中2個で気密性あり)ことも確認された。
[凹陥部間の熱的影響についての試験]
閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射することにより凹陥部4を形成する場合において、レーザ光のパワーが64W程度のときには、連続して形成される複数の凹陥部の隣り合う二つの凹陥部間の距離が長くなると、凹陥部間相互の熱的影響がなくなって、所望の延出部が形成できないことを試験により確認した。図12(A)及び(B)は、前述の閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射する方法により60μmの間隔をあけて連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の200倍拡大断面図と1000倍拡大断面図である。図13(A)及び(B)は、前述の閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射する方法により100μmの間隔をあけて連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の200倍拡大断面図と1000倍拡大断面図である。図12と図13とを比較すると明らかなように、隣り合う二つの凹陥部の間隔が広がると、レーザ光のパワーが弱い場合には、凹陥部の開口部の周囲に十分なアンカーとなる延出部が得られないことが判る。なおレーザ比からのパワーが大きくなると、二つの凹陥部の間隔が広がっても、凹陥部の開口部の周囲に十分なアンカーとなる延出部が得られる。
上記実施の形態では、金属材料として、レーザ光の反射率が高い銅、真鍮等を用い、しかも樹脂材料として金属部材との接合強度を得難いPOMまたはPPAを用いたが、その他の金属材料及び樹脂材料を用いる場合に、本発明を適用してもよいのは勿論である。
本発明によれば、凹陥部の開口部を狭めるように延び出る波頭状の延出部は、凹陥部に入って固化した樹脂材料に対して強いアンカーとなるため従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を大幅に向上させることができる。
1 インサート金属部材
3 金属部材
4 凹陥部
5 粗面化領域
7 樹脂部材
9 パイプ
11 金属製樹脂成形体
13 レーザ設備
31 環状凝固部
32 隔壁部
33 連通窟
34 延出部
本発明は、金属材料の粗面化方法に関するものである。
特許第4020957号公報(特許文献1)には、金属表面を交差する複数の走査方向に沿ってレーザスキャニング加工することにより金属材料の表面に粗面化領域を形成する金属表面のレーザ加工方法(粗面化方法)が開示されている。この従来の粗面化方法では、複数回重畳的に交差する走査方向のレーザスキャニング加工を金属材料の表面に施すことにより、複数の交差する溝を形成している。その結果、未加工部分が複数の凸形状として残っている。この特許文献1の図11乃至図13には、複数の凹凸形状を示す写真が示されている。これらの写真から明らかなように、従来の方法で形成した金属材料の表面に現れている凹凸形状は頂点からなだらかに広がる山形状の凸部と、開口部から奥に向かうに従って幅寸法が小さくなるすり鉢状の凹部となる。凸部及び凹部の表面には、小さい凹凸が見られるものの、凸部の高さは、凹部の開口部の大きさと比べて小さい凹凸である。またこの公報には、該公報に示された粗面化方法を用いて粗面化されたアルミニウム、マグネシウム又はステンレス鋼からなるインサート金属材料をインサートとし、樹脂材料としてポリアセタールを含む各種の樹脂材料を用いてインサート成形をして金属樹脂複合成形体を製造することが開示されている。
特許第4020957号公報
特許文献1には、樹脂材料としてポリアセタールのように金属材料との接合性が悪い樹脂材料が記載され、また金属材料としてレーザ光の反射率が高いステンレス鋼が記載されている。しかしながらこれらの材料を用いて、特許文献1に示された技術を用いて金属樹脂複合成形体を製造したところ、金属材料と樹脂材料の十分な接合強度と接合面における気密性を得ることができていないことが判明した。
本発明の目的は、従来よりも高い接合強度を得るこができる金属材料の粗面化方法を提供することにある。
上記目的に加えて、本発明の他の目的は、従来よりも気密性を高くすることができる金属材料の粗面化方法を提供することにある
本発明は、所定形状の金属部材の表面に複数の凹陥部が形成された粗面化領域に、樹脂部材が成形されてなる金属樹脂複合成形体用のインサート金属部材を対象とする。本発明のインサート金属部材は、凹陥部を囲む環状壁部が、金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部からなり、環状凝固部が前記凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部を備えている。凹陥部の開口部を狭めるように延び出る波頭状の延出部は、凹陥部に入って固化した樹脂材料に対して強いアンカーとなる。そのため従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を大幅に向上させることができる。「波頭状」とは、波の立ってくずれる形と似た形状を意味する。
複数の凹陥部には、隣り合う二つの凹陥部間の隔壁部が、隣り合う二つの環状凝固部の一部によって構成されているものが含まれている。この場合、隔壁部の近傍に波頭状の延出部が存在している。この隔壁部は、溶融金属の凝固物からなり、形状は複雑である。そして隔壁部周辺には溶融金属の飛散物が付着する。そのため隔壁部の近傍に波頭状の延出部が形成される確率が高く、この波頭状の延出部がアンカーとしての効果を最も発揮する。
隣り合う二つの凹陥部のうちの一つの凹陥部が有する波頭状の延出部の一部は、隣り合う二つの凹陥部のうちの他の凹陥部側から飛散した溶融金属が凝固して形成されている。その結果、凹陥部の開口部を狭めるように延びる大きな延出部が形成されることになる。
また隔壁部には隣り合う二つの凹陥部間を連通する連通窟が形成されていてもよい。このような連通窟があると、連通窟内に入って固化した樹脂材料が連通窟から抜けでない限り強力なアンカーとなる。本願明細書において、連通窟とは、隣り合う少なくとも二つの凹陥部間に位置する凝固部が形成される際に、凝固部内に形成される洞窟のような不定形の複雑な形をした空隙を意味する。本発明のインサート金属部材では、隣り合う少なくとも二つの凹陥部間に位置する凝固部内に形成された1以上の連通窟内に樹脂部材を形成するための樹脂が浸入して凝固すると、従来に無い強いアンカー効果が発生する。その結果、従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を大幅に向上させることができる。複数の凹陥部において、隣り合う二つの凹陥部でも、凹陥部間の距離が離れていたり、凹陥部形成時期が離れていると、隣り合う二つの凹陥部間の凝固部内に連通窟が形成されないものが含まれていても、連通窟が形成される限り、アンカー効果が高まることは当然である。したがって本発明は隣り合う全ての二つの凹陥部間に連通窟が形成されている場合のみを包含するものではない。
複数の凹陥部の平均直径寸法が40μm以上100μm以下であり、複数の凹陥部の平均深さ寸法が100μm以上であり、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下になるようにすると、従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を向上させることができる。なお各部の寸法は、実際に製造したインサート金属部材の表面及び断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で拡大し、その画像を撮影して単位面積当たりに形成される複数の凹陥部の平面画像及び断面画像に基づいて計測してその平均値として求めた。
金属部材として、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮のように、反射率の高い金属からなるものを用いても、本発明によれば、従来よりも高い接合強度を得ることができる。
インサート金属部材の表面の粗面化には、所定形状の金属部材の表面に、所定のスポット径を有するレーザ光を照射することにより、複数の凹陥部を表面に形成して粗面化領域を形成する金属材料の粗面化方法を用いることができる。本発明の粗面化方法では、まず金属部材にレーザ光を照射して溶融金属を生成し、溶融金属が凝固して形成された環状凝固部により先の凹陥部を形成する第1の工程を実施する。次に先の凹陥部の環状凝固部が完全に凝固する前に、先の凹陥部から所定の距離をあけて、金属部材にレーザ光を照射して次の溶融金属を生成し、次の溶融金属が凝固して形成された次の環状凝固部により次の凹陥部を形成する第2の工程を実施する。第1の工程と第2の工程とを繰り返すことにより粗面化領域を形成する。本発明では、レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを、次の溶融金属の一部が飛散して先の凹陥部を形成するための溶融金属の上に付着して凝固することにより、先の凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部が形成されるように定める。本願明細書において「照射パターン」とは、レーザ光の照射回数、照射経路を含むレーザ光の照射条件を含むものである。したがって照射パターンによっては、1回のレーザ光の照射により前述の延出部を形成できる場合もあれば、複数回のレーザ光の照射により前述の延出部を形成できる場合もある。例えば、レーザ光のパワーが小さい場合には、一つの凹陥部を形成するために、閉ループ状の照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置にレーザ光を照射することにより波頭状の延出部の生成が可能になる。本願明細書で「閉ループ状の照射経路パターン」とは、例えばレーザ光を照射する経路(またはレーザ光の照射軌跡)が、円形、楕円形、多角形等のように、閉じた形状になるパターンを意味する。なおこのパターンは、綺麗なパターンでも、また手書きのように多少乱れたパターンであってもよい。照射経路パターンが閉ループ状であれば、照射経路パターンの中心部に深さが複雑で、且つ内壁部の形状が複雑な凹陥部を形成できるだけでなく、レーザ光を照射する装置の動作をスムーズなものとすることができる。照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるようにレーザ光を照射すると、レーザ光の照射により溶融した溶融金属は、スポットの外側に押し出されたり、周囲に飛散して凝固する。その結果、凹陥部の開口部及び内壁部には複雑な形状の波頭状の延出部が形成される。
また先の凹陥部と次の凹陥部間の隔壁部が、隣り合う二つの環状凝固部の一部によって構成されており、隔壁部の近傍に波頭状の延出部が存在するように、レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを定める。このようにすると隣接する凹陥部を形成する際に発生するエネルギで隔壁部が前に形成された凹陥部側に変形するとともに、飛散溶融金属が前に形成した凹陥部の開口周縁にも付着することになるため、より大きな波頭状の延出部を形成できる。したがってアンカー効果をさらに高めることができる。
さらに、連続して形成される二つの凹陥部間の隔壁部に二つの凹陥部間を連通する連通窟が形成されるように、レーザ光のパワー、スポット径、照射パターン及び二つの凹部の中心間の間隔を定めるのが好ましい。1つの凹陥部が形成された後に隣接して他の1つの凹陥部が形成される際に、この隣り合う二つの凹陥部間に形成される凝固部には、両凹陥部を形成するために照射されたレーザ光からのエネルギが相互に影響し合って、両凹陥部間を連通する連通窟が形成される可能性が高くなる。連通窟が形成されるメカニズムは定かではないが、ある程度の再現性を持って形成されることは、実験により確認されている。
具体的には、複数の凹陥部の平均直径寸法が40μm以上100μm以下であり、複数の凹陥部の平均深さ寸法が100μm以上である場合には、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下となるように、レーザ光のパワー、スポット径、照射パターン及び二つの凹部の中心間の距離を定めるのが好ましい。
本発明の方法を実施するためのより実用的な条件は以下の通りである。
所定形状の金属部材は、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮であり、レーザ光のパワーを24W〜80Wとし、波長を1054nm〜1074nmとし、レーザ光の前記スポット径を45μm〜75μmとし、前記照射経路パターンを直径25μm〜40μmの円形パターンとし、照射経路パターンに沿ってパルス状にレーザ光を照射して凹陥部を形成する。そして、連続して形成される二つの凹陥部の中心間の距離を50〜60μmに設定する。このような条件にすると、従来不可能であった銅等のようにレーザ光の反射率が高い金属からなる材料をインサートとして樹脂部材をインサート成形することができる。
本発明によれば、金属部材として、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮を用いた本発明のインサート金属部材をインサートとして、しかも樹脂部材がポリアセタールまたはポリフタルアミドによってインサート成形されてなる金属樹脂複合成形体において、従来の技術では得られない接合強度が得られる。
本発明の金属樹脂複合成形体の製造方法では、本発明のインサート金属部材を樹脂材料の成形温度または成形温度に近い温度にしてインサート成形を実施する。このようにすると凹陥部に樹脂材料が完全に充填されるまで樹脂材料の凝固または固化が始まることが無いので、凹陥部に樹脂材料を完全に充填固化させることができ、接合強度及び気密性を十分なものとすることができる。
(A)は本発明のインサート金属部材の試験用の実施の形態の一例の斜視図であり、(B)はインサート金属部材をインサートして形成される樹脂部材を単独で示す斜視図であり、(C)はインサート金属部材をインサートして樹脂部材が形成された金属樹脂複合成形体の斜視図である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は粗面化した粗面化領域の実際例の拡大平面画像であり、(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡を用いて粗面化領域を斜め方向から撮影したSEM画像である。 (A)は凹陥部の開口部周辺の輪郭形状の例を示す模式平面図であり、(B)は熱的に影響する距離をあけて隣り合う二つの凹陥部の模式部分断面図である。 照射経路パターンを説明するための図である。 レーザ設備を説明するために用いる図である。 評価条件を説明するために用いる図である。 (A)乃至(F)は、金属材料として錫吊りメッキを施した真鍮を用い、樹脂材料としてポリアセタール(POM)を用いた実施例の樹脂充填後の断面図の例を示している。 本発明の方法により表面の粗面化を行ったインサート金属部材を用いて作った金属樹脂複合成形体の実施例と比較例の試験結果を示す図である。 (A)及び(B)は、閉ループ状の照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置にレーザ光を照射する方法により凹陥部の中心間距離を60μmに設定して連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の拡大断面図とさらなる拡大断面図である。 (A)及び(B)は、閉ループ状の照射経路パターンに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置にレーザ光を照射する方法により凹陥部の中心間距離を100μm設定して連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の拡大断面図とさらなる拡大断面図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明のインサート金属部材と、このインサート金属部材を用いた金属樹脂複合成形体及び金属材料の粗面化方法の実施の形態について詳細に説明する。図1(A)は、本発明のインサート金属部材の試験用の実施の形態の一例の斜視図である。この実施の形態のインサート金属部材1は、板状の金属部材3の表面に多数の凹陥部4が形成された粗面化領域5を備えている。金属部材3としては、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施された錫メッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮に錫メッキが施されたメッキ真鍮等で、レーザ光に対する反射率の高い金属からなるものを用いている。なおアルミニウム等のレーザ光に対する反射率の低い金属からなるインサート金属部材に本発明を適用してもよいのは勿論である。
図1(B)は、インサート金属部材1をインサートして形成される樹脂部材7を単独で示す斜視図である。樹脂部材7には、試験用のパイプ9が一体に成形されている。そして図1(C)には、インサート金属部材1をインサートして樹脂部材7が形成された金属樹脂複合成形体11の斜視図が示されている。
試験用のパイプ9は、気密性の試験のために、粗面化領域5の一部をパイプ9の内部に露出させる構造を有している。パイプ9から気体を供給したときに、粗面化領域5と樹脂部材7との間の界面から気泡が出るか否かにより、気密性の有無を確認する。またパイプ9は、インサート金属部材1を固定した状態で、パイプ9にインサート金属部材1から離れる方向(粗面化領域5と直交する方向)に所定の引き抜き力を加えたときに、樹脂部材7が粗面化領域5から部分的にまたは全部が剥がれるか否かにより、接合強度を測定するために設けられている。
インサート金属部材1をインサートとしてインサート成形される樹脂部材7を形成するたに用いる樹脂材料としては、種々の熱可塑性樹脂材料を用いることができるが、本実施の形態では、特に、ポリアセタール(POM)またはポリフタルアミド(PPA)を用いる。これらの樹脂材料は、反射率の高い金属材料からなるインサート金属部材との接合強度を高めることが難しく、また接合部の気密性を高めることが難しい樹脂材料である。
後に詳しく説明するが、インサート金属部材1の表面の粗面化には、所定形状の金属部材の表面に、所定のスポット径を有するレーザ光を照射することにより、複数の凹陥部4(図2乃至図6参照)を表面に形成して複数の波頭状の延出部34を備えた粗面化領域5を形成する。本発明の粗面化方法については後に説明する。
図2(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径30μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が60μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図2(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図2(B)は倍率250倍であり、図2(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図3(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の他の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径40μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が70μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図3(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図3(B)は倍率250倍であり、図3(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図4(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の他の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径60μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が80μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図4(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図4(B)は倍率250倍であり、図4(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図5(A)は、本実施の形態の粗面化方法により粗面化したインサート金属部材の粗面化領域5の他の実際例の拡大平面写真を示している。この実際例は、真鍮からなる金属部材に、パワーを64Wとし、波長を1064nmとし、スポット径を45μmとするパルス状のレーザ光を、後述する直径80μmの円形パターンの照射経路パターンに沿って照射して1つの凹陥部4を形成する工程と、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部の中心間距離が100μmとなるように次の凹陥部を形成する工程とを繰り返し実施して、金属部材の表面を複数の凹陥部4と複数の波頭状の延出部34によって粗面化したものである。この写真の倍率は70倍である。また図5(B)乃至(D)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粗面化領域5を斜め方向から撮影したSEM画像である。図5(B)は倍率250倍であり、図5(C)及び(D)は位置を変えて撮影した倍率700倍の画像である。
図6(A)は、凹陥部4の開口部周辺の輪郭形状の例を示す模式平面図であり、図6(B)は熱的に影響する距離をあけて隣り合う二つの凹陥部4の模式部分断面図である。図2乃至図6から判るように、本発明の実施の形態のインサート金属部材は、凹陥部を囲む環状壁部が、金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部31からなり、環状凝固部31が凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部34を備えている。波頭状の延出部34の形状は複雑であるため、波頭状の延出部34を数値によって正確に特定することは難しい。また波頭状の延出部34の形状寸法は、金属材料の種類、レーザ光のパワー、波長、スポット径及び照射経路パターンによって異なってくる。しかし発明者が、拡大写真に基づいて測定した凹陥部4の開口部側に延び出る波頭状の延出部34の長さは、10μm〜30μmの範囲に入るものが大半であることが確認されている。
凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る波頭状の延出部34は、凹陥部4に入って固化した樹脂材料に対して強いアンカーとなる。隣り合う二つの凹陥部4,4のうちの一つの凹陥部4が有する波頭状の延出部34の一部は、隣り合う二つの凹陥部のうちの他の凹陥部側から飛散した溶融金属が凝固して形成されている。複数の凹陥部4には、隣り合う二つの凹陥部4,4間の隔壁部32が、隣り合う二つの環状凝固部31の一部によって構成されているものが含まれている。隔壁部32の近傍に波頭状の延出部34が存在している。この隔壁部32は、溶融金属の凝固物からなり、形状は複雑である。そして隔壁部32周辺には溶融金属の飛散物が付着する。そのため隔壁部32の近傍に波頭状の延出部34が形成される確率が高く、この波頭状の延出部34がアンカーとしての効果を最も発揮する。
また図6(B)に模式的に示すように、隣り合う少なくとも二つの凹陥部4,4間の間隔が短い場合には、隣り合う二つの凹陥部4,4間に位置する隔壁部を構成する環状凝固部31の一部分内に、1以上の連通窟33が形成される場合がある。この連通窟33によって隣り合う凹陥部4,4が連通している。連通窟33とは、隣り合う少なくとも二つの凹陥部4,4間に位置する環状凝固部31が形成される際に、環状凝固部31内に形成される洞窟のような不定形の複雑な形をした空隙である。図6(B)の例は、一例であって、実際の連通窟33は、溶岩洞窟の内壁の形状ように複雑な三次元形状を有するものであり、複数の連通窟33が相互に連通している場合等も含まれる。このような連通窟33が環状凝固部31内に形成されていることにより、樹脂部材を形成するための樹脂が連通窟33に浸入して固化すると、従来にない強いアンカー効果が発生する。なお複数の凹陥部の全てが、必ず隣り合う他の凹陥部との間に連通窟が形成されている必要はなく、一部の複数の凹陥部間に連通窟33が形成されていれば、連通窟33によるアンカー効果は、延出部34しか形成されない場合と比べて高まる。通常、距離的に及び時間的に連続して形成される二つの凹陥部間に連通窟が形成される。
[粗面化方法の実施の形態]
本発明の粗面化方法の一実施の形態では、インサート金属部材1の表面の粗面化を次のようにして実施する。まず所定形状の金属部材の表面に、金属部材の材質に適した所定のパワーと、波長と、スポット径を有するパルス状のレーザ光を所定の照射パターンに従って照射することにより、複数の凹陥部4を表面に形成して粗面化領域5を形成する金属材料の粗面化方法を用いる。本発明の実施の形態の粗面化方法では、まず金属部材に、レーザ光を照射して溶融金属を生成し、溶融金属が凝固して形成された環状凝固部31により先の凹陥部4を形成する第1の工程を実施する。次に先の凹陥部4の環状凝固部31が完全に凝固する前に、先の凹陥部から所定の距離をあけて、金属部材にレーザ光を照射して次の溶融金属を生成し、次の溶融金属が凝固して形成された次の環状凝固部31により次の凹陥部4を形成する第2の工程を実施する。第1の工程と第2の工程とを繰り返すことにより粗面化領域5を形成する。本発明では、レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを、次の溶融金属の一部が飛散して先の凹陥部を形成するための溶融金属の上に付着して凝固することにより、先の凹陥部4の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部34が形成されるように定める。前述のように、「照射パターン」とは、レーザ光の照射回数、照射経路を含むレーザ光の照射条件を含むものである。したがって照射パターンによっては、1回のレーザ光の照射により延出部34を形成できる場合もあれば、複数回のレーザ光の照射により延出部34を形成できる場合もある。
例えば、レーザ光のパワーが小さい場合には、図7に示すような閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射することにより延出部34の生成が可能になる。図7の例では、8箇所のレーザ照射位置PSを用いているが、レーザ照射位置PSの数はレーザ光のスポット径SRの大きさによって任意に定める。図8に示すように、本実施の形態で用いるレーザ設備13から照射されるレーザ光は、波長が1054nm〜1074nmの範囲の値(本実施の形態では1064nm)で、パワーが24W〜80W(本実施の形態では64W)、スポット径の好ましい範囲が45μm〜75μm(本実施の形態では45μm)であり、焦点距離は80mmである。そして図9に示すように、レーザ光Lを直径30μmの照射経路パターンPTに沿って、そして、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部との中心間距離を50μm〜80μmとして走査する。レーザ光Lのスポット径の中心を、レーザ照射位置PSに合致させてレーザ光を照射する。パルス状のレーザ光を照射する周期の好ましい範囲は5μs〜10μs(本実施の形態では10μs)であり、照射経路パターンPTに沿って時計回りまたは半時計回り方向に1周だけレーザ光を走査する好ましい速度の範囲は、100mm/s〜1500mm/s(本実施の形態では900mm/s)である。このようにすると、レーザ光Lを照射経路パターンPTに沿って走査した結果できるレーザの軌跡外周の直径は理論的に75μmとなる。
なお図9の例では、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離は90μmとなり、隣り合う二つの凹陥部間での熱的影響は小さい。二つの凹陥部の中心間の距離が75μmより小さくなると、隣り合う二つの凹陥部を構成する環状凝固部が一部において重なった状態で形成されることになり、隣り合う二つの凹陥部間の隔壁は溶融金属の凝固部によってのみ構成されることになる。
上記のように、レーザ光をレーザ照射位置PSに順次照射すると、金属部材3の一部が溶融し且つ溶融した溶融金属は飛散し、飛散した溶融金属が凹陥部4の開口部に沿って付着して形成された付着物が凝固して環状凝固部31が形成される。1つの凹陥部4を囲む環状凝固部31の形状は、一定ではない。
前に形成された凹陥部4に隣り合う位置に次に形成される凹陥部4は、前に形成した凹陥部4の熱的影響を受ける距離を前の凹陥部4との間にあけて形成するのが好ましい。隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下になるように凹陥部4を形成すると、形成される複数の凹陥部4の平均直径寸法が70μm以上100μm以下となり、複数の凹陥部4の平均深さ寸法が100μm以上となる。
図6(B)に模式的に示すように、凹陥部4を形成する環状凝固部31は、凹陥部4の内壁面上に凹陥部4内に膨出する1以上の延出部34を備えている。延出部34の凹陥部4の開口縁部に添う部分の長さは、凹陥部4の開口縁部の平均周方向長さの1/10以上になる。また前述のように隣り合って相互に熱的に影響を及ぼす位置関係にある少なくとも二つの凹陥部4、4間の環状凝固部31内には連通窟33が形成されている。なお凹陥部4内に延び出る延出部34及び連通窟33の形状については、後に説明する実施例及び比較例において断面写真を示して説明する。
このような連通窟33と延出部34が形成されると、凹陥部4の内部に樹脂部材7を形成するための樹脂材料が入り込んで固化したときに、この連通窟33及び延出部34が固化した樹脂材料に対して強固なアンカーとして作用する。そのため従来よりも樹脂部材7のインサート金属部材1に対する接合強度を向上させることができる。
本実施の形態の粗面化方法では、凹陥部4を形成する凹陥部形成工程を、レーザ光の照射により与えられる熱の影響を相互に及ぼす距離をあけて、金属部材3の表面に沿って実施することにより複数の凹陥部4を形成することにより、粗面化領域5を形成する。
[金属樹脂複合成形体及びその製造方法]
上記のように製造したインサート金属部材1をインサートとして所定の樹脂材料を用いてインサート成形(本実施の形態では射出成形)をすることにより樹脂部材7を成形することにより、図1(C)に示す金属樹脂複合成形体11が製造される。特に本実施の形態では、所定形状の金属部材としてレーザの波長が1064nm以上のときの反射率が高い銅または真鍮に錫メッキが施されたものを用いる場合に適している。このような反射率の高い金属材料は、レーザ照射によってその表面を粗面化することが難しい材料である。そして樹脂材料としては、ポリアセタール(POM)またはポリフタルアミド(PPA)を用いる。これらの樹脂材料は、反射率の高い金属材料からなるインサート金属部材との接合強度を高めることが難しく、また接合部の気密性を高めることが難しい樹脂材料である。
特に本実施の形態の金属樹脂複合成形体の製造方法では、インサート金属部材1を樹脂材料の成形温度または成形温度に近い温度まで加熱(プリヒート)して(本実施の形態では220℃)射出成形によりインサート成形を実施する。このようにすると凹陥部4に樹脂材料が完全に充填されるまで樹脂材料の固化が始まることが無いので、凹陥部4に樹脂材料を完全に充填固化させることができ、接合強度及び気密性を十分なものとすることができる。
図10(A)乃至(F)は、金属材料として錫吊りメッキを施した真鍮(C2680P−1/2H)を用い、樹脂材料としてポリプラスッチク社が「ジュラコン(登録商標)M90−44」の名称で販売するポリアセタール(POM)を用いた実施例(ドットパターン)の樹脂充填後の断面図の例を示している。ドットパターンとは、上記粗面化方法で採用している照射経路パターンPTに沿って決めたレーザ照射位置PSにレーザ光を照射して1つの凹陥部を形成し、この凹陥部を複数並ぶように形成したものである。図10(A)乃至(F)は、ドットパターンに樹脂を充填したものを複数の凹陥部が含まれるように切断したものである。しかしながら凹陥部の形状が一定では無く、しかも凹陥部の寸法が極めて小さいものであるため、所望の位置で切断することが困難である。そのため、図10(A)乃至(F)の断面図には、凹陥部の中心付近を切断面が通っているもの[図10(F)]もあれば、凹陥部の中心付近から多少ずれた位置を切断面が通っているもの[図10(A)、(B)及び(E)]もあれば、凹陥部の端の部分を切断面が通っているもの[図10(C),(D)]も含まれている。これらの図から、凹陥部の内部形状が複雑であり、隣り合う二つの凹陥部間に連通窟33が形成されていることや、凹陥部の入口部分に溶融して凝固した凝固部の一部が複雑な形になって延出部34が存在していることが判る。この例では延出部34によるアンカー効果に加えて、連通窟33によるアンカー効果により、従来にない接合強度が得られている。
[金属樹脂複合成形体の実施例及び比較例]
図11は、本発明の方法により表面の粗面化を行ったインサート金属部材を用いて作った金属樹脂複合成形体の実施例と比較例(特許第4020957号公報のハッチングパターンにより表面の粗面化を行ったインサート金属部材を用いて作った金属樹脂複合成形体)の試験結果を示している。実施例では、プリヒート「あり」の場合と、「なし」の場合で試験を行い、比較例ではプリヒート「なし」の場合でのみ試験を行った。試験のサンプル数はそれぞれ5つずつとした。そして平均値「AVE」を求めた。
図11の試験結果は、金属材料としてメッキを施していない真鍮とメッキを施していない銅(DSC−3N−1/2H)を用い、樹脂材料としてデユポン社が「ザイテル(登録商標)HTN51G35EF」の名称で販売しているポリフタルアミド(PPA)と、樹脂材料としてポリプラスチック社がジュラコン(登録商標)M90−44の名称で販売しているポリアセタール(POM)用いた実施例と比較例の試験結果である。これらの試験は、レーザ加工ピッチを60μmとして行った。レーザ加工ピッチは、比較例においては、直線状に形成した隣り合う溝間の中心間の距離(ピッチ)を示しており、実施例においては、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離を意味する。実施例においては、隣り合う二つの凹陥部の中心間の距離が、60μmになるようにした。
「引張強度」は、引っ張り試験機(オートグラフ)を用いて、インサート金属部材1を固定した状態で、パイプ9にインサート金属部材1から離れる方向(粗面化領域5と直交する方向)に20mm/minの速度で引張り、樹脂部材7が粗面化領域5から部分的にまたは全部が剥がれたときの引張り力を「強度」として測定した。この試験結果から、真鍮に対して接合強度を高くすることが難しいとされているポリアセタール(POM)に対して、プリヒートが無い場合でも、比較例の4倍近くの強度が得られることが判る。また真鍮と同様に接合強度を高くすることが難しいとされる銅に対して、プリヒートが無い場合でも、比較例の1.5倍近くの強度が得られることが判る。なお、実施例におけるプリヒート「あり」の引張強度は、樹脂部材7が粗面化領域5から剥がれた結果ではなく、樹脂部材7自体の材料破壊である。
またパイプ9から0.4Mpaの圧力で気体を供給して、水中に水没させた金属樹脂複合成形体の粗面化領域5と樹脂部材7との間の界面から気泡が出るか否かにより、気密性の有無を確認する試験では、ポリアセタール(POM)用いた実施例では、プリヒートを行わない場合には、気密性を確保できないものの、プリヒートを行えば、完全な気密性を得られることが確認された。またポリフタルアミド(PPA)を用いた実施例では、プリヒートを行わない場合でも、一定の気密性を確保でき(試験サンプル5個中3個で気密性あり)、プリヒートを行えば、完全な気密性を得られることが確認された。比較例においては、ポリアセタール(POM)用いた場合及びポリフタルアミド(PPA)を用いた場合のいずれでも、プリヒートを行わない場合には、気密性を確保できないことが確認された。なお比較例においては、プリヒートを行うと、ポリフタルアミド(PPA)を用いた場合において一定の気密性が確保できる(試験サンプル5個中2個で気密性あり)ことも確認された。
[凹陥部間の熱的影響についての試験]
閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射することにより凹陥部4を形成する場合において、レーザ光のパワーが64W程度のときには、連続して形成される複数の凹陥部の隣り合う二つの凹陥部間の距離が長くなると、凹陥部間相互の熱的影響がなくなって、所望の延出部が形成できないことを試験により確認した。図12(A)及び(B)は、前述の閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射する方法により60μmの間隔をあけて連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の200倍拡大断面図と1000倍拡大断面図である。図13(A)及び(B)は、前述の閉ループ状の照射経路パターンPTに沿って、レーザ光のスポットが重なるように複数の照射位置PSにレーザ光を照射する方法により100μmの間隔をあけて連続して凹陥部を形成した場合のインサート金属部材の200倍拡大断面図と1000倍拡大断面図である。図12と図13とを比較すると明らかなように、隣り合う二つの凹陥部の間隔が広がると、レーザ光のパワーが弱い場合には、凹陥部の開口部の周囲に十分なアンカーとなる延出部が得られないことが判る。なおレーザ比からのパワーが大きくなると、二つの凹陥部の間隔が広がっても、凹陥部の開口部の周囲に十分なアンカーとなる延出部が得られる。
上記実施の形態では、金属材料として、レーザ光の反射率が高い銅、真鍮等を用い、しかも樹脂材料として金属部材との接合強度を得難いPOMまたはPPAを用いたが、その他の金属材料及び樹脂材料を用いる場合に、本発明を適用してもよいのは勿論である。
本発明によれば、凹陥部の開口部を狭めるように延び出る波頭状の延出部は、凹陥部に入って固化した樹脂材料に対して強いアンカーとなるため従来よりも樹脂材料のインサート金属部材に対する接合強度を大幅に向上させることができる。
1 インサート金属部材
3 金属部材
4 凹陥部
5 粗面化領域
7 樹脂部材
9 パイプ
11 金属製樹脂成形体
13 レーザ設備
31 環状凝固部
32 隔壁部
33 連通窟
34 延出部

Claims (14)

  1. 所定形状の金属部材の表面に複数の凹陥部が形成された粗面化領域に、樹脂部材が成形されてなる金属樹脂複合成形体用のインサート金属部材であって、
    前記凹陥部を囲む環状壁部は、前記金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部からなり、
    前記環状凝固部は、前記凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部を備えていることを特徴とするインサート金属部材。
  2. 前記複数の凹陥部には、隣り合う二つの前記凹陥部間の隔壁部が、隣り合う二つの前記環状凝固部の一部によって構成されているものが含まれており、
    前記隔壁部の近傍に前記波頭状の延出部が存在していることを特徴とする請求項1に記載のインサート金属部材。
  3. 前記隣り合う二つの凹陥部のうちの一つの前記凹陥部が有する前記波頭状の延出部の一部は、前記隣り合う二つの凹陥部のうちの他の前記凹陥部側から飛散した溶融金属が凝固して形成されている請求項2に記載のインサート金属部材。
  4. 前記隔壁部には、前記隣り合う二つの凹陥部間を連通する連通窟が形成されている請求項2または3に記載のインサート金属部材。
  5. 前記複数の凹陥部の平均直径寸法が40μm以上100μm以下であり、
    前記複数の凹陥部の平均深さ寸法が100μm以上であり、
    隣り合う二つの前記凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下である請求項1に記載のインサート金属部材。
  6. 前記金属部材が、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮である請求項1に記載のインサート金属部材。
  7. 所定形状の金属部材の表面に、レーザ光を照射することにより前記金属部材を部分的に溶融して生成した溶融金属を凝固させることにより、複数の凹陥部を前記表面に形成して粗面化領域を形成する金属材料の粗面化方法であって、
    前記金属部材に前記レーザ光を照射して溶融金属を生成し、前記溶融金属が凝固して形成された環状凝固部により先の凹陥部を形成する第1の工程と、
    前記先の凹陥部の前記環状凝固部が完全に凝固する前に、前記先の凹陥部から所定の距離をあけて、前記金属部材に前記レーザ光を照射して次の溶融金属を生成し、前記次の溶融金属が凝固して形成された次の環状凝固部により次の凹陥部を形成する第2の工程を繰り返すことにより前記粗面化領域を形成し、
    前記レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを、前記次の溶融金属の一部が飛散して前記先の凹陥部を形成するための前記溶融金属の上に付着して凝固することにより、前記先の凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部が形成されるように定めたことを特徴とする金属材料の粗面化方法。
  8. 一つの前記凹陥部を形成するための前記照射パターンは、複数の照射位置を含む閉ループ状の照射経路パターンであり、
    前記レーザ光のスポットが重なるように前記複数の照射位置に前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項7に記載の金属材料の粗面化方法。
  9. 前記先の凹陥部と前記次の凹陥部間の隔壁部が、隣り合う二つの前記環状凝固部の一部によって構成されており、
    前記隔壁部の近傍に前記波頭状の延出部が存在するように前記レーザ光のパワー、スポット径及び照射パターンを定めていることを特徴とする請求項8に記載の金属材料の粗面化方法。
  10. 前記隔壁部に、前記先の凹陥部と前記次の凹陥部を連通する連通窟が形成されるように、前記レーザ光のパワー、スポット径、照射パターン及び前記二つの凹部の中心間の距離を定めることを特徴とする請求項9に記載の金属材料の粗面化方法。
  11. 前記複数の凹陥部の平均直径寸法が40μm以上100μm以下であり、
    前記複数の凹陥部の平均深さ寸法が100μm以上であり、
    隣り合う二つの前記凹陥部の中心間の距離が、50μm以上80μm以下となるように、前記レーザ光のパワー、スポット径、照射パターン及び前記二つの凹部の中心間の距離を定めることを特徴とする請求項7または8に記載の金属材料の粗面化方法。
  12. 前記所定形状の金属部材は、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮であり、
    前記レーザ光のパワーを24W〜80Wとし、波長を1054nm〜1074nmとし、前記レーザ光の前記スポット径を45μm〜75μmとし、前記照射経路パターンを直径25μm〜100μmの円形パターンとし、レーザ光を走査する速度の範囲を100mm/s〜1500mm/sとして、
    前記照射経路パターンに沿ってパルス状の前記レーザ光を照射し、次に形成する凹陥部と前に形成した凹陥部との中心間距離を50〜80μmとすることにより、前記第1の工程及び第2の工程を実施することを特徴とする請求項8に記載の金属材料の粗面化方法。
  13. 所定形状の金属部材の表面に複数の凹陥部が形成されてなる粗面化領域を有するインサート金属部材の前記粗面化領域に樹脂部材が成形されてなる金属樹脂複合成形体であって、
    前記インサート金属部材は、前記凹陥部を囲む環状壁部が、前記金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部からなり、前記環状凝固部が前記凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部を備えているものであり、
    前記所定形状の金属部材が、銅、銅合金、真鍮、銅にメッキが施されたメッキ銅、銅合金にメッキが施されたメッキ銅合金、または真鍮にメッキが施されたメッキ真鍮であり、
    前記樹脂部材がポリアセタールまたはポリフタルアミドによって形成されていることを特徴とする金属樹脂複合成形体。
  14. 所定形状の金属部材の表面に複数の凹陥部が形成されてなる粗面化領域を有するインサート金属部材をインサートとして前記粗面化領域に樹脂部材がインサート成形されてなる金属樹脂複合成形体の製造方法であって
    前記インサート金属部材として、前記凹陥部を囲む環状壁部が前記金属部材の溶融金属が凝固した状態で生成された環状凝固部からなり、前記環状凝固部が前記凹陥部の開口部を狭めるように延び出る1以上の波頭状の延出部を備えているものを用い、
    前記インサート金属部材を前記樹脂部材の樹脂材料の成形温度または成形温度に近い温度にしてインサート成形を実施することを特徴とする金属樹脂複合成形体の製造方法。
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