JP2017054754A - 絶縁電線およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的特性、耐熱性、電気特性および耐溶剤性に優れ、溶接の際に絶縁層が剥離しにくいような耐溶接性を有する絶縁電線を提供する。
【解決手段】導体と、導体の外周を被覆する内層および内層の外周を被覆する外層を有する絶縁層と、を備え、内層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む樹脂組成物(A)から形成されており、外層が、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物(B)から形成されており、内層および外層のそれぞれの結晶化度が95%以上である、絶縁電線である。
【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線およびその製造方法に関する。
回転電機(モータ)や変圧器などの電気機器にはコイルが組み込まれている。コイルは、導体の外周上に絶縁層が形成された絶縁電線を巻回されて形成されている。絶縁電線は、樹脂成分を有機溶媒に溶解させた絶縁塗料を導体の外周上に塗布・焼付する方法や、溶融させた樹脂を導体の外周上に押し出す方法、またはこれらの方法を併用することにより、導体の外周上に絶縁層を形成して作製される。
近年、電気機器への小型化の要求により、コイルは小型のコアに絶縁電線を高い張力で高密度に巻き付けて作製されるようになっている。そのため、絶縁層には、過酷な加工ストレスに耐えられるような高い機械的特性(例えば、密着性や耐摩耗性など)が求められている。
また、電気機器は高出力化の要請から高電流で駆動されるようになっており、コイルの運転温度が以前よりも高くなる傾向がある。そのため、絶縁層には高い耐熱性が求められている。
さらに、電気機器では高効率化の要請からインバータ制御が進展しており、コイルには、インバータサージ電圧などのより高い電圧が印加され、部分放電が発生しやすくなっている。部分放電が発生すると、絶縁層が劣化、損傷するおそれがあるため、絶縁層には、低い電圧で部分放電が発生しないように、部分放電開始電圧が高く、電気特性に優れていることが求められている。
このような絶縁層を形成する樹脂として、機械的特性、耐熱性および電気特性に優れるポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPS樹脂ともいう)が用いられている。PPS樹脂は、一般に結晶性が高く、導体との間に十分な密着性を得られないため、PPS樹脂からなる絶縁層の密着性を向上させる方法として、以下のような方法が提案されている。例えば、特許文献1では、PPS樹脂を他の樹脂からなる樹脂層を介して導体上に押し出して絶縁層を形成する方法が提案されている。また例えば、特許文献2では、導体の外周上にPPS樹脂を押し出す際に、予め導体をPPS樹脂の融点以上の温度まで予備加熱する方法が提案されている。
特許第4177295号公報 特開2014−103045号公報
ところで、絶縁電線を用いてモータ等のコイルを作製する場合、短尺の絶縁電線の端末を溶接し、つなぎ合わせ、長尺に形成してコイルに作製することがある。溶接としては、一般に、TIG溶接などの電気溶接が行われ、一定の電流を通電することで溶接部の温度を上げて導体同士を接続する。
しかしながら、特許文献1および2のように、PPS樹脂からなる絶縁層を導体の外周上に直接または他の樹脂層を介して設けた絶縁電線では、絶縁層の耐熱性や導体との密着性が不十分であるため、溶接したときに導体から伝わる熱により溶接部の近傍において絶縁層が発泡したり剥離したりすることがある。特に、耐溶剤性の観点から絶縁層を結晶化させて結晶化度を高めた場合、絶縁層では、結晶化に伴う体積収縮により内部歪みが大きくなり、密着性が低くなるため、溶接により剥離しやすくなる。
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、機械的特性、耐熱性、電気特性および耐溶剤性に優れ、溶接の際に絶縁層が剥離しにくいような耐溶接性を有する絶縁電線を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を被覆する内層および前記内層の外周を被覆する外層を有する絶縁層と、を備え、
前記内層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む樹脂組成物(A)から形成され、
前記外層が、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物(B)から形成され、
前記内層および前記外層のそれぞれの結晶化度が95%以上である、絶縁電線が提供される。
本発明の他の態様によれば、
導体の外周に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む樹脂組成物(A)を押し出して被覆させる第1の被覆工程と、
前記樹脂組成物(A)を硬化させて内層を形成する内層形成工程と、
前記内層の外周に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物(B)を押し出して被覆させる第2の被覆工程と、
前記樹脂組成物(B)を硬化させて外層を形成する外層形成工程と、を有し、
前記内層形成工程では、前記樹脂組成物(A)を再結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより前記内層の結晶化度を95%以上とし、
前記外層形成工程では、前記樹脂組成物(B)を再結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより前記外層の結晶化度を95%以上とする、絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明によれば、機械的特性、耐熱性、電気特性および耐溶剤性に優れ、溶接の際に絶縁層が剥離しにくいような耐溶接性を有する絶縁電線が得られる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る絶縁電線を製造する製造装置の概略図である。
上述したように、絶縁電線を溶接により長尺化する場合、導体の外周に設けられたポリフェニレンサルファイド樹脂からなる樹脂層(PPS樹脂層)が導体を伝わる熱により剥離することがあるので、耐溶接性を高めることが求められている。そこで、本発明者らは、PPS樹脂層を、耐熱性に優れる樹脂層を介して導体に設け、検討を行った。その結果、介在させる樹脂層を、PPS樹脂よりも融点の高いポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下、PEEK樹脂ともいう)で形成するとともに、結晶化度を95%以上とするとよいことを見出した。このように絶縁層を構成することにより、導体と接触する部分において、溶接の際の伝熱による影響を抑制し、絶縁層の発泡や剥離を抑制できる。
本発明は、上記知見に基づいて成されたものである。
<絶縁電線の概略構成>
以下、本発明の一実施形態に係る絶縁電線について図を参照しながら説明をする。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る絶縁電線1は、導体11と、導体11の外周を被覆する内層12および内層12の外周を被覆する外層13を有する絶縁層14と、を備えている。
導体11としては、銅を主成分として含むものであれば特に限定されず、例えば低酸素銅や無酸素銅などからなる銅線、または銅以外の金属を含む銅合金線などを用いることができる。導体11の断面形状は、図1に示す略矩形状に限定されず、例えば円形状や楕円形状であってもよい。絶縁電線1に占める導体成分の割合を高め、コイルにおける占積率を向上させる観点からは、導体11としては略矩形状のものを用いることが好ましい。
絶縁層14は、内層12と外層13とを有する。
内層12は、導体11側に位置している。本実施形態では、絶縁電線1の耐溶接性を向上させる観点から、導体11に接触する内層12を、PEEK樹脂を含む樹脂組成物(A)で形成している。これにより、内層12の耐熱性を向上させ、溶接の際の伝熱により溶融しにくいように構成している。
内層12を形成する樹脂組成物(A)には、必要に応じて、PEEK樹脂以外の他の樹脂や酸化防止剤、着色剤などを配合してもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルフォン、オレフィン系共重合樹脂、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、もしくはこれらの混合物を用いることができる。これらの配合量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更することができる。
内層12の結晶化度は95%以上である。結晶化度が95%未満となると、内層12の耐熱性が低くなり、溶接の際の伝熱により内層12が発泡や剥離しやすくなるため、耐溶接性も低くなる。なお、本明細書において結晶化度は以下のように定義される。すなわち、示差走査熱量測定により昇温させながら測定した冷結晶化時の結晶加熱をHc、示差走査熱量測定による融解熱をHmとしたとき、結晶化度αは下記式(1)で示される。
結晶化度α=(1−Hc/Hm)×100・・・(1)
内層12は、所望の高い耐溶接性を得る観点から、厚さが40μm以上であることが好ましい。一方、導体11との十分な密着性を得る観点から、内層12の厚さが少なくとも150μm以下であることが好ましい。内層12は、PEEK樹脂を含む樹脂組成物(A)を結晶化させて形成する際に、結晶化の体積収縮により変形することになるが、厚さを150μm以下とすることで、結晶化による変形量を小さくして、内層12に生じる内部歪みを低減できる。その結果、内層12を導体11と密着性が高い状態で形成することができる。
外層13は、内層12の外周上に配置されている。本実施形態では、外層13を、PPS樹脂を含む樹脂組成物(B)で形成している。そのため、外層13は、所望の高い機械的特性、耐熱性および電気特性を有する。しかも、外層13は、結晶化度が95%以上となるように構成されているので、耐溶剤性にも優れている。
外層13を形成する樹脂組成物(B)には、必要に応じて、PPS樹脂以外の他の樹脂や酸化防止剤、着色剤などを配合してもよい。他の樹脂としては、上記で列挙した、内層12を形成する樹脂組成物(A)に配合する樹脂と同様のものを用いることができる。
外層13の厚さは、特に限定されないが、過度に大きくなると外層13の結晶化度を高くしたときに、結晶化に伴う体積収縮に起因する内部歪みが大きくなり、内層12との密着性が低下するおそれがある。そのため、外層13の厚さは、1μm以上150μm以下であることが好ましい。なお、内層12と外層13との合計の厚さは、1550V以上の部分放電開始電圧を得るとの観点から、150μm以上であることが好ましい。
<絶縁電線の製造方法>
次に、上述した絶縁電線の製造方法について図面を参照しながら説明をする。図2は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線を製造する製造装置の概略図である。
製造装置100は、図2に示すように、送出機110と、プーリ120と、予備加熱装置130と、第1押出機140と、第1冷却装置141と、第2押出機150と、第2冷却装置151と、第3冷却装置160と、引取機170と、巻取機180と、を備えている。
本実施形態の絶縁電線1の製造方法は、導体11を予備加熱する予備加熱工程S10と、加熱された導体11の外周に、PEEK樹脂を含む樹脂組成物(A)を押し出して被覆させる第1の被覆工程S20と、樹脂組成物(A)を硬化させて内層12を形成する内層形成工程S30と、内層12の外周に、PPS樹脂を含む樹脂組成物(B)を押し出して被覆させる第2の被覆工程S40と、樹脂組成物(B)を硬化させて外層13を形成する外層形成工程S50と、を有する。
(予備加熱工程S10)
まず、図2に示すように、略矩形状断面を有する導体11(以下、単に平角導体11ともいう)を送出機110からプーリ120を通して予備加熱装置130に導入する。
予備加熱装置130にて、平角導体11を、後述の第1の被覆工程S20で押し出す樹脂組成物(A)に含まれるPEEK樹脂の融点以上の温度まで予備加熱する。PEEK樹脂の融点よりも低いと、溶融した高温の樹脂組成物(A)を平角導体11の外周上に押し出したときに、樹脂組成物(A)が平角導体11との接触により冷却硬化してしまい、平角導体11と十分に密着した状態で冷却硬化できなくなる。その結果、冷却により得られる内層12の導体11との密着性が損なわれるおそれがある。一方、樹脂組成物(A)の押出被覆の前に、予め、平角導体11を融点以上の温度となるように加熱することで、平角導体11との接触による樹脂組成物(A)の冷却硬化を抑制し、密着性の高い内層12を形成することができる。
平角導体11を予備加熱する温度としては、PEEK樹脂の融点以上の温度であれば特に限定されない。例えば、平角導体11を380℃以上420℃以下とすることが好ましい。このような予備加熱温度であれば、PEEK樹脂を含む樹脂組成物(A)を平角導体11の外周に押し出したときに樹脂組成物(A)を冷却させることなく、また発泡させることなく、被覆することができる。
予備加熱装置130では、装置内を不活性ガスで置換し、不活性ガス雰囲気下で平角導体11を予備加熱することが好ましい。平角導体11は加熱されて高温状態となると、酸化されやすくなり、内層12の密着性を大きく低下させるおそれがある。この点、不活性ガス雰囲気下で平角導体11を予備加熱することにより、平角導体11を酸化させることなく、所定温度まで加熱することができる。なお、不活性ガスとしては、例えば、汎用的で低コストの窒素、熱伝導性に優れたヘリウムなどを用いることができる。
(第1の被覆工程S20)
続いて、加熱された平角導体11を予備加熱装置130から第1押出機140へと搬送する。第1押出機140にて、加熱された平角導体11の外周に、PEEK樹脂を含む樹脂組成物(A)を押し出して被覆させる。
(内層形成工程S30)
続いて、樹脂組成物(A)で被覆された平角導体11を第1冷却装置141に搬送する。第1冷却装置141にて、溶融した樹脂組成物(A)を冷却して内層12を形成する。このとき、内層12の結晶化を促進させ、その結晶化度が95%以上となるように、PEEK樹脂を含む樹脂組成物(A)を冷却する。具体的には、PEEK樹脂を含む樹脂組成物(A)を、PEEK樹脂の融点(例えば380℃)未満であって、かつPEEK樹脂が結晶化する温度まで急冷した後、PEEK樹脂が結晶化温度(例えば300℃)に保持することが好ましい。これにより、PEEK樹脂の結晶化を促進し、得られる内層12におけるPEEK樹脂の結晶化度を高め、95%以上とすることができる。そして、所定の結晶化度になったら、PEEK樹脂の結晶化温度未満まで冷却することにより結晶化を止めて、所定の結晶化度を有する内層12を形成する。なお、冷却方法としては、水槽で水冷する方法などが挙げられる。
(第2の被覆工程S40)
続いて、表面に内層12が形成された平角導体11を第2押出機150に搬送する。第2押出機150にて、内層12の外周に、PPS樹脂を含む樹脂組成物(B)を押し出して被覆させる。
(外層形成工程S50)
続いて、樹脂組成物(B)で被覆された平角導体11を第2冷却装置151に搬送する。第2冷却装置151にて、溶融した樹脂組成物(B)を冷却して外層13を形成する。このとき、外層13の結晶化を促進させ、その結晶化度が95%以上となるように、PPS樹脂を含む樹脂組成物(B)を冷却する。具体的には、PPS樹脂を含む樹脂組成物(B)を、PPS樹脂の融点(例えば280℃)未満であって、かつPPS樹脂が結晶化する温度まで急冷した後、PPS樹脂の結晶化温度(例えば200℃)に保持することが好ましい。これにより、PPS樹脂の結晶化を促進し、得られる外層13におけるPPS樹脂の結晶化度を高め、95%以上とすることができる。そして、所定の結晶化度になったら、PPS樹脂の結晶化温度未満まで冷却することにより結晶化を止めて、所定の結晶化度を有する外層13を形成する。なお、冷却方法としては、上記内層形成工程S30と同様に、水槽で水冷する方法などが挙げられる。
以上の工程により、導体11の外周上に、内層12および外層13を有する絶縁層14が形成された絶縁電線1が製造される。絶縁電線1は、第3冷却装置160にて常温まで冷却させた後、引取機170により所定の線速で引き抜かれ、巻取機180に巻き取られる。
なお、本実施形態では、内層形成工程S30および外層形成工程S50にて、PEEK樹脂もしくはPPS樹脂の融点未満の温度まで急冷した後、結晶化温度に保持することにより、内層12および外層13それぞれの結晶化度を高めているが、本発明は、これに限定されない。例えば、内層12および外層13を結晶化温度よりも低い温度まで急冷した後、結晶化温度以上融点未満の温度範囲まで再度加熱して結晶化を促進させてもよい。
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
〔絶縁電線の作製〕
(実施例1)
下記表1に示す条件で絶縁電線を作製した。
具体的には、まず、導体として、長辺が約3mm、短辺が約2mmであって、断面が略矩形状の平角銅線を予備加熱装置内に導入した。予備加熱装置内にて、窒素雰囲気下で平角銅線を導体温度が400℃に到達するまで予備加熱した。
続いて、加熱された平角銅線を第1押出機に導入した。第1押出機にて、平角銅線の外周に、PEEK樹脂を押出温度400℃で被覆厚が40μmとなるように押出被覆した。その後、第1冷却装置にて、PEEK樹脂を温度が300℃となるように0.5秒で急冷した後、結晶化温度に保持し、結晶化を促進させた。これにより、厚さが40μmであって、結晶化度が95%以上である、PEEK樹脂からなる内層を形成した。
続いて、内層で被覆された平角銅線を第2押出機に導入した。第2押出機にて、内層の外周に、PPS樹脂を押出温度300℃で被覆厚が110μmとなるように押出被覆した。その後、第2冷却装置にて、PPS樹脂を温度が200℃となるように0.5秒で急冷した後、結晶化温度に保持し、結晶化を促進させた。これにより、厚さが110μmであって、結晶化度が95%以上である、PPS樹脂からなる外層を形成し、実施例1の絶縁電線を作製した。
最後に、絶縁電線を第3冷却装置にて常温まで冷却し、巻取機で巻き取った。
Figure 2017054754
(比較例1)
比較例1では、絶縁層として、厚さ150μmのPEEK樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
(比較例2)
比較例2では、平角銅線の予備加熱温度を300℃とし、PPS樹脂を押出温度300℃で被覆厚が150μmとなるように押し出すことにより、絶縁層として、厚さ150μmのPPS樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
(比較例3)
比較例3では、PPS樹脂を押し出した後に冷却して絶縁層を形成するときに、冷却時間を0.5秒から5秒と長くし、第3冷却装置を用いずに絶縁電線を常温まで冷却した以外は、比較例2と同様に絶縁電線を作製した。
〔評価方法〕
作製した絶縁電線について、以下の方法により評価した。
(耐溶接性)
作製した絶縁電線の絶縁層を、絶縁電線の一端から約5mmまで剥がし、絶縁層から0.7mm離れた位置の平角銅線に溶接棒を接触させ、TIG溶接を電流140Aで0.1秒間行った。その後、絶縁層に発泡もしくは膨れ(浮き)が生じていないかを確認した。本実施例では、発泡および膨れが生じなかったら、耐溶接性に優れるものとして合格「○」、発泡および膨れのいずれかが生じたら、耐溶剤性が低いものとして不合格「×」と判断した。
(耐溶剤性)
作製した絶縁電線から長さ150mmの試験片(サンプル)を採取し、このサンプルを、JIS K8271に規定する温度60℃のキシレン中に30分間浸した後、取り出し、絶縁層に発泡もしくは浮きが生じていないかを確認した。本実施例では、発泡および膨れが生じなかったら、耐溶剤性に優れるものとして合格「○」、発泡および膨れのいずれかが生じたら、耐溶剤性が低いものとして不合格「×」と判断した。
〔評価結果〕
実施例1では、内層および外層を有する絶縁層において、内層に、耐熱性に優れるPEEK樹脂を用いるとともに、結晶化度を95%以上となるようにしたため、耐溶接性に優れていることが確認された。また、外層に、PPS樹脂を用いるとともに、結晶化度を95%以上となるようにしたため、耐溶剤性にも優れていることが確認された。
これに対して、比較例1では、絶縁層としてPEEK樹脂層のみを形成したため、耐溶接性には優れるものの、耐溶剤性に劣ることが確認された。また、比較例2では、絶縁層としてPPS樹脂層のみを形成したため、耐溶剤性には優れるものの、耐熱性が低いためか耐溶接性に劣ることが確認された。また、比較例3では、PPS樹脂を冷却する際、冷却時間を長くしてPPS樹脂の温度を再結晶化温度未満としたため、PPS樹脂層の結晶化度が低く、耐溶剤性が不十分となることが確認された。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を被覆する内層および前記内層の外周を被覆する外層を有する絶縁層と、を備え、
前記内層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む樹脂組成物(A)から形成され、
前記外層が、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物(B)から形成され、
前記内層および前記外層のそれぞれの結晶化度が95%以上である、絶縁電線が提供される。
[付記2]
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記内層の厚さは、40μm以上150μm以下である。
[付記3]
付記1又は2の絶縁電線において、好ましくは、
前記外層の厚さは、150μm以下である。
[付記4]
本発明の他の態様によれば、
導体の外周に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む樹脂組成物(A)を押し出して被覆させる第1の被覆工程と、
前記樹脂組成物(A)を硬化させて内層を形成する内層形成工程と、
前記内層の外周に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物(B)を押し出して被覆させる第2の被覆工程と、
前記樹脂組成物(B)を硬化させて外層を形成する外層形成工程と、を有し、
前記内層形成工程では、前記樹脂組成物(A)を再結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより前記内層の結晶化度を95%以上とし、
前記外層形成工程では、前記樹脂組成物(B)を再結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより前記外層の結晶化度を95%以上とする、絶縁電線の製造方法が提供される。
[付記5]
付記4の絶縁電線の製造方法において、好ましくは、
前記第1の被覆工程の前に、前記導体を前記樹脂組成物(A)の融点以上の温度まで予備加熱する予備加熱工程をさらに有する。
1 絶縁電線
11 導体(平角導体)
12 内層
13 外層
14 絶縁層

Claims (5)

  1. 導体と、
    前記導体の外周を被覆する内層および前記内層の外周を被覆する外層を有する絶縁層と、を備え、
    前記内層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む樹脂組成物(A)から形成され、
    前記外層が、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物(B)から形成され、
    前記内層および前記外層のそれぞれの結晶化度が95%以上である、絶縁電線。
  2. 前記内層の厚さは、40μm以上150μm以下である、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記外層の厚さは、150μm以下である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 導体の外周に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む樹脂組成物(A)を押し出して被覆させる第1の被覆工程と、
    前記樹脂組成物(A)を硬化させて内層を形成する内層形成工程と、
    前記内層の外周に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物(B)を押し出して被覆させる第2の被覆工程と、
    前記樹脂組成物(B)を硬化させて外層を形成する外層形成工程と、を有し、
    前記内層形成工程では、前記樹脂組成物(A)を再結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより前記内層の結晶化度を95%以上とし、
    前記外層形成工程では、前記樹脂組成物(B)を再結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより前記外層の結晶化度を95%以上とする、絶縁電線の製造方法。
  5. 前記第1の被覆工程の前に、前記導体を前記樹脂組成物(A)の融点以上の温度まで予備加熱する予備加熱工程をさらに有する、請求項4に記載の絶縁電線の製造方法。
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