JP2017053002A - 耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受用鋼 - Google Patents

耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受用鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】 水素を起因の白色組織変化が発生する環境において、耐白色組織変化はく離寿および転動疲労寿命に優れる軸受用鋼を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.20〜0.65%、Mn:0.50〜1.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.30〜3.50%を含有し、さらに、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.03〜0.50%から選択した1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、図2に示す浸炭焼入パターンおよび焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、その他残部はマルテンサイト組織である耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受用鋼である
【選択図】 図2

Description

本発明は、鋼材中に水素が浸入することで水素を起因とする白色組織変化が発生する環境において、耐白色組織変化はく離寿命および転動寿命に優れる軸受用鋼に関する。
自動車用の電装用軸受においては、水素を起因とした白色組織変化を伴う早期破損が問題となっている。また、その他、海上風車や鉄鋼用圧延機等の潤滑油中に水分の浸入が発生しやすい軸受においても、同様の早期破損が懸念されている。これらの組織変化型の早期はく離は、材料の小型化、荷重増大、潤滑油の低粘度化が進んだ近年においては、ますます軸受使用における対策の実施が必要となっている。
そこで、これらの水素を起因とした白色組織変化に対し、添加剤の利用や、温度上昇防止などの設計や、潤滑油側での水素発生および浸入の防止などの方策が採られている。しかしながら、このような方策では不十分な場合や適用が困難な場合が多く、そこで白色組織変化による早期はく離に対して、鋼材側においても対策が求められている。
このような状況下で、軸受のような転がり環境における潤滑油分解による水素発生および水素浸入による白色組織変化を伴った早期はく離に対し、鋼材側での対策として、V、Ti、Nbといった炭化物生成元素を添加することで、炭化物に水素をトラップさせることによって、鋼材の長寿命化を図る技術がある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これらの元素の添加は素材コストの大幅な増加となる。さらに炭化物自体が応力集中源となる可能性が高く、水素が炭化物周囲に局在化することで白色組織変化を伴った早期破損につながる恐れがある。
また、従来の技術として、鋼中に進入した水素による白色組織変化に対し、マルテンサイトブロック界面への水素濃化抑制が有効であるとし、熱処理およびCr、Mo、Vといった炭化物および炭窒化物生成元素を添加することで、固溶C、Nを低減させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、浸炭時および浸炭窒化時のC量、N量の低減は、材料硬さの低減を招いて強度低下にもつながる。そのために、C、Nを低減することなく、用いることが可能な手法が必要となっている。
特開2008−280347号公報 特開2012−036475号公報
本発明が解決しようとする課題は、炭化物析出や固溶C量やN量の低下といった転動疲労寿命特性を低下させる可能性のある技術に頼ることなく、水素を起因とした白色組織変化が発生する環境において、耐白色組織変化はく離寿命および転動疲労寿命に優れる軸受用鋼を提供することである。
発明者らは、水素が侵入し、水素を起因とした白色組織変化を伴った早期破損が発生する現象に対し、成分設計を見直し、母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moなどの量および残留γ量を一定量以上確保することで、水素が浸入し、水素を起因とした白色組織変化が起こる環境においても、白色組織変化を抑制することが可能であり、転動疲労寿命に優れる軸受溶鋼を製造可能であることを見出した。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の手段では、質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.20〜0.65%、Mn:0.50〜1.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.30〜3.50%を含有し、さらに、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.03〜0.50%から選択した1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、その他残部はマルテンサイト組織であることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受用鋼である。
請求項2の手段では、上記の請求項1の手段の化学成分に加えて、さらに、質量%で、V:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、Ti:0.01〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、その他残部はマルテンサイト組織であることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受用鋼である。
請求項3の手段では、質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.20〜0.65%、Mn:0.50〜1.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.30〜3.50%を含有し、さらに、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.03〜0.50%から選択した1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、該残留γ量の残部はマルテンサイト組織である鋼材からなることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受部品である。
請求項4の手段では、質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.20〜0.65%、Mn:0.50〜1.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.30〜3.50%を含有し、さらに、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.03〜0.50%から選択した1種または2種を含有し、さらに、V:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、Ti:0.01〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、該残留γ量の残部はマルテンサイト組織である鋼材からなることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受部品である。
上記の手段とすることで、本発明の軸受用鋼およびこの鋼からなる軸受部品は、鋼材中に水素が浸入することで水素を起因とする白色組織変化が発生する環境において、浸炭焼入焼戻し後または浸炭窒化焼入焼戻し後の鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計量を3.0%以上とし、さらに残留γ量を20〜50vol%以上とすることで、SUJ2の2倍以上の転動疲労寿命および耐白色組織変化はく離寿命に優れている。
スラスト試験片の形状図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。 浸炭焼入れパターンを示す図である。 残留γ量と耐白色組織変化はく離寿命の関係を示すグラフである。
発明を実施するための形態について説明するに先立って、本願の請求項の手段の軸受用鋼の化学成分の限定理由および当該鋼の各種の限定理由について以下に順を追って説明する。なお、化学成分の%は質量%で、残留γ量の%はvol%である。
C:0.13〜0.35%
Cは、芯部の焼入れ性、鍛造性、機械加工性に影響する元素である。Cは0.13%未満では十分な芯部の硬さが得られず、強度が低下するので、0.13%以上の添加が必要である。一方、Cは0.35%より多くなると、鋼素材の硬さが増加し、被削性および鍛造性等の加工性を阻害する。そこで、Cは0.13〜0.35%とし、望ましくは、0.15〜0.30%とする。
Si:0.20〜0.65%
Siは、脱酸に必要な元素であり、さらに、高温環境での鋼素材の強度を高め、組織変化の抑制、転動疲労寿命の向上につながる元素である。これらの効果を十分に得るためには、Siは0.20%以上の添加が必要である。一方、Siは0.65%より多くなると、鋼素材の硬さが増加し、被削性および鍛造性等の加工性を阻害し、また、浸炭阻害を起こし、浸炭または浸炭窒化しても十分な材料強度が得られない。そこで、Siは0.20〜0.65%とし、望ましくは0.25〜0.50%とする。
Mn:0.50〜1.80%
Mnは、焼入性の確保に必要な元素であり、鋼素材を浸炭または浸炭窒化した際に、残留γ量を増加させることで、水素を起因とした白色組織変化の抑制につながる元素である。これらの効果を十分に得るには、Mnは0.50以上の添加が必要である。一方、Mnは1.80%より多くなると、鋼素材の硬さが増加し、被削性および鍛造性等の加工性を阻害し、また、Sと結合してMnSとなることで、水素を起因とした白色組織変化の起点となる。そこで、Mnは0.50〜1.80%とし、望ましくは、0.65〜1.60%とする。
P:0.030%以下
Pは、0.030%より多く含有されると、鋼素材を脆化し、疲労強度を下げる元素である。そこで、Pは0.030%以下とする。
S:0.030%以下
Sは、0.030%より多く含有されると、鋼素材の冷間加工性を阻害し、疲労強度を劣化する元素である。そこで、Sは0.030%以下とする。
Cr:2.30〜3.50%
Crは、焼入性の確保に必要な元素であり、鋼材を浸炭または浸炭窒化した際に、残留γ量を増加させることで、水素を起因とした白色組織変化の抑制につながる元素である。さらに、Crは微細で均質な残留γを形成するのに有効であり、水素を起因とした白色組織変化の抑制効果を高める。これらの十分な効果を得るには、Crは2.30%以上の添加が必要である。一方、Crは過多になると浸炭または浸炭窒化時に、鋼材最表面で酸化物を形成することで浸炭阻害を引き起こし、強度劣化につながる元素である。また、Crは浸炭時に粗大炭化物を形成し、粗大炭化物の周囲において水素を起因とした白色組織変化の起点となるので、Crは3.50%以下とする必要がある。そこで、Crは2.30〜3.50%とし、望ましくは2.50〜3.20%とする。
Ni:0.10〜0.50%
Niは、添加により鋼材の焼入性を高め、鋼材を浸炭または浸炭窒化した際に、残留γ量を増加する。これらの効果を十分に得るには、Niは0.10%以上の添加が必要である。一方、Niは過多に添加すると、素材コストが大きく増加する。また、Niは浸炭または浸炭窒化時に塊状の残留γが形成し易くなり、残留γによる水素を起因とした白色組織変化の抑制効果が失われるので、Niは0.50%を上限として添加するのが良い。そこで、Niは0.10〜0.50%とする。
Mo:0.03〜0.50%
Moは、添加により鋼材の焼入性を高め、鋼材を浸炭または浸炭窒化した際に、残留γ量を増加し、また、組織を均質化し、残留γを均質に分布させるのに有効である。これらの効果を十分に得るためには、Moは0.03%以上が必要である。一方、Moは過多に添加すると素材コストが大きく増加し、また、組織を均質化する組織変化の抑制の効果は0.50%で飽和するので、Moは0.50%以下の添加とする。そこで、Moは0.03〜0.50%とし、望ましくは、0.03〜0.40%とする。
V:0.01〜0.20%
Vは、結晶粒を微細化し、粒界における水素濃度を低減することで水素を起因とした白色組織変化を抑制し、また、浸炭または浸炭窒化時にサブミクロンオーダーの炭化物や炭窒化物を形成することで、水素トラップとして機能して白色組織変化の抑制に有効に作用する画素であり、十分な効果を得るには、0.01%以上の添加が必要である。一方、Vの添加による結晶粒微細化、炭化物や炭窒化物析出による白色組織変化の抑制効果は、Vの0.20%までの添加で飽和し、これより過多に添加すると、粗大な炭化物や炭窒化物を析出し、かえって悪影響を及ぼすので、Vは0.20%以下とする。そこで、Vは0.01〜0.20%とする。
Nb:0.01〜0.20%
Nbは、結晶粒を微細化し、粒界における水素濃度を低減することで水素を起因とした白色組織変化を抑制する。また、Nbは浸炭または浸炭窒化時にサブミクロンオーダーの炭化物や炭窒化物を形成することで水素トラップとして機能し、白色組織変化の抑制に有効である。これらの十分な効果を得るためには、Nbは0.01%以上の添加が必要である。一方、Nbの添加による結晶粒微細化および炭化物や炭窒化物の析出による白色組織変化の抑制効果は、Nbの0.20%までの添加で飽和し、これより過多に添加すると粗大な炭化物や炭窒化物を析出するため、かえって悪影響を及ぼすので、Nbの添加は0.20%以下とする。そこで、Nbは0.01〜0.20%とする。
Ti:0.01〜0.20%
Tiは、結晶粒を微細化し、粒界における水素濃度を低減することで水素を起因とした白色組織変化を抑制する。また、Tiは浸炭または浸炭窒化時にサブミクロンオーダーの炭化物や炭窒化物を形成することで、水素トラップとして機能し、白色組織変化の抑制に有効である。これらの効果を十分に得るためには、Nbは0.01%以上の添加が必要である。一方、Nbの添加による結晶粒微細化および炭化物や炭窒化物析出による白色組織変化の抑制効果は、Nbは0.20%までの添加で飽和し、過多に添加すると粗大な炭化物・炭窒化物析出するため、かえって悪影響を及ぼす。そのため、Tiの添加は0.20%以下とする。そこで、Tiは0.01〜0.20%とする。
該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μm
水素を起因とした組織変化は、繰返し高いせん断応力を受ける該鋼の最表面から100〜300μmにおいて発生して破損に至るため、この位置における組織変化の抑制が重要である。そこで、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmと規定する。
母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上
浸炭または浸炭窒化した際には、炭化物や炭窒化物の形成により母相の合金元素量は実際の添加量と比較して低下している。そこで十分な残留γ量を得るためには母相に固溶した合金元素量を増やす必要がある。また、水素の拡散速度を低下させることにより組織変化は抑制される。これらの効果を十分に得るためには、母相中のSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計量は3.0%以上である必要がある。そこで、母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上と規定する。
残留γ量は20〜50vol%
残留γ量は非拡散性の水素のトラップサイトとして機能して使用時の水素の濃化を抑制し、また、鋼材内を拡散する水素の拡散速度を遅くする効果を持ち、水素を起因とした組織変化の抑制に非常に有効である。これらの効果を十分に得るためには、残留γ量は20vol%以上が必要である。一方、残留γ量は50vol%より過多になると、鋼の硬さの低下を引き起こし、強度劣化につながり、また寸法の安定性の低下や塊状γの発生にもつながる。そのため残留γ量は50vol%以下とする。そこで、残留γ量は20〜50vol%とする。
残部はマルテンサイト組織
フェライトやパーライトといった強度の低い組織が存在すると、水素を起因とした白色組織変化の起点となる。そこで、残部はマルテンサイト組織とする。
次いで、発明の実施の形態について説明する。表1に示す化学組成からなる本発明の成分を満たす実施例鋼の試料No.A〜O、および本発明の成分を一部満たさない比較例鋼の試料No.P〜Tのそれぞれを100kg真空溶解炉で溶製して鋼とした。なお、比較例鋼の試料No.QはJIS規定の高炭素クロム軸受鋼鋼材であるSUJ2であり、比較例鋼の試料No.RはJIS規定のクロムモリブデン鋼鋼材であるSCM420である。次いで、これらの鋼を1250℃で直径65mmに鍛伸して、900℃で1時間保持した後、空冷して焼ならしを行った。また、比較例鋼の試料No.QのSUJ2は、さらに800℃で球状化焼鈍を実施した。その後、比較例鋼の試料No.QのSUJ2を除く全ての鋼を、図1に示す、外径φ60mm、内径φ20mm、厚さ8.3mmのスラスト型転動疲労試験片に粗加工した。比較例鋼の試料No.QのSUJ2については、図1に示す外径φ60mm、内径φ20mm、厚さ6.0mmのスラスト型転動疲労試験片に粗加工した。
Figure 2017053002
比較例鋼の試料No.QのSUJ2を除く、全ての鋼種についてのスラスト型転動疲労試験片を、図2に示す浸炭焼入れパターンの条件(浸炭温度:930℃、狙いCp=0.80%)でガス浸炭焼入れを実施した後に、180℃で90分保持して空冷することで焼戻し処理を実施した。また、比較例鋼の試料No.QのSUJ2については840℃で30分保持して油冷を行い、焼入れした後に、180℃で90分保持して空冷することで焼戻し処理を実施した。
なお、実施例鋼の試料No.BおよびKに示す鋼を図2に示す浸炭焼入れパターンの条件で、浸炭時の狙いCp=1.2%としてガス浸炭して焼入焼戻しまで実施することで、意図的に残留γ量を過多とし、比較例鋼の加工No.21および22とした。また、実施例鋼のNo.Eに示す鋼を同様の工程でガス浸炭して焼入焼戻しまで実施した後に、残留γ量の現象を目的に、Arガス中において600℃で5時間保持して急冷することで焼なましを実施し、その後、830℃で30分保持して油冷を行って焼入れし、180℃で90分保持して空冷し、焼戻し処理を実施して比較例鋼の加工No.23とした。また、実施例鋼の試料No.Lに示す鋼を同様の工程で、試験片の粗加工まで実施した後に、図2と同様の浸炭焼入れパターンの条件(浸炭温度:930℃、狙いCp=0.80%)でガス浸炭焼入れを実施した後に、残留γ量の減少を目的に、液体窒素によるサブゼロ処理を実施し、その後、180℃で90分保持して空冷して焼戻し処理を実施して比較例鋼の加工No.24とした。
以上の熱処理を行った後に、比較例鋼の加工No.17のSUJ2を除く、全ての試験片については、試験面を0.15mm研磨し、さらに反対側を研磨することで高さを8.0mmに仕上げた。比較例鋼の加工No.17のSUJ2については、試験面を0.20mm研磨し、さらに反対側を研磨することで高さを5.6mmに仕上げた。また、これらの試験面は、バフ研磨にて鏡面仕上げとした。
上記で作製したスラスト型転動疲労試験片を使用し、耐白色組織変化はく離寿命を測定するために、表2に示す浸炭焼入れパターンの条件で、陰極チャージ法にて試験片に水素添加した後に、最大接触面圧5.3GPaでスラスト型転動疲労試験機を用いて、はく離までの転動疲労寿命の測定を行った。また、同様に作製したスラスト型転動疲労試験片を使用し、最表面から100〜300μmである位置から薄膜試料を切り出してTEM(透過型電子顕微鏡)観察を実施した。TEM観察において、炭化物を避けるように位置調整を行い、EDS分析を行うことで、母相自体に固溶しているSi、Mn、Cr、Ni、Mo量を測定し、その合計量を計算した。また、同様にスラスト型転動疲労試験片を用いて最表面から100〜300μmの位置の深さとなるまで電解研磨を実施した後に、X線回折を用いて残留γ量の測定を行った。また、同様にスラスト型転動疲労試験片を使用して試料断面の組織をSEM(走査電子顕微鏡)にて最表面から100〜300μmの位置における組織の観察を行った結果、いずれも残留γとマルテンサイトからなる組織であることを確認した。
Figure 2017053002
以上、最表面から100〜300μmの位置における、母相自体に固溶しているSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計量、残留γ量およびスラスト型転動疲労試験におけるL50寿命の測定結果および比較例鋼の加工No.17のSUJ2とのL50寿命比を計算した結果を表3に示す。
Figure 2017053002
表3に示すように、実施例鋼の加工No.1〜15は、水素環境下の転動疲労特性について、比較例鋼の加工No.17のSUJ2と比較して2倍以上のL50寿命を有しており、耐白色組織変化はく離寿命に優れている。一方、比較例鋼の加工No.19は、最表面から100〜300μmの位置における残留γ量が68%と過多であり、十分な材料強度を確保できなかったので早期に破損した。また、Niを多量に添加した比較例鋼の加工No.20は比較的早期に破損しており、このことにより、Ni添加量が多くなって粗大な塊状残留γを形成することで十分な耐白色組織変化はく離寿命を示さなくなると分かる。さらに、実施例鋼の試料No.B、Kを用いて浸炭時のC濃度を増量することで、残留γ量を過多とした比較例鋼の加工No.21、22は、明確に耐白色組織変化はく離寿命が短寿命化している。これは、十分な材料強度を確保できなかったためである。一方で、実施例鋼の加工No.12、5を用いて、それぞれ焼鈍処理、サブゼロ処理を実施することで、残留γ量が減少した比較例鋼の加工No.21、22においては、明確に耐白色組織変化はく離寿命が短寿命化しており、高せん断応力域において一定量の残留γ量の確保が重要であると分かる。
図3に、実施例鋼および比較例鋼についての残留γ量と耐白色組織変化はく離寿命の関係をグラフで示す。上記のように、残留γ量の過多による強度不足およびNiの多量添加による塊状γの生成に起因して短寿命となった比較例鋼の加工No.19、21および22、並びに、比較例鋼のNo.20を除くと、残留γ量と耐白色組織変化はく離寿命は良い相関を示す。
1 スラスト型転動疲労試験片

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.20〜0.65%、Mn:0.50〜1.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.30〜3.50%を含有し、さらに、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.03〜0.50%から選択した1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、その他残部はマルテンサイト組織であることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受用鋼。
  2. 請求項1に記載の化学成分に加えて、質量%で、V:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、Ti:0.01〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、その他残部はマルテンサイト組織であることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受用鋼。
  3. 質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.20〜0.65%、Mn:0.50〜1.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.30〜3.50%を含有し、さらに、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.03〜0.50%から選択した1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、該残留γ量の残部はマルテンサイト組織である鋼材からなることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受部品。
  4. 質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.20〜0.65%、Mn:0.50〜1.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.30〜3.50%を含有し、さらに、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.03〜0.50%から選択した1種または2種を含有し、さらに、V:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、Ti:0.01〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼の浸炭焼入焼戻し後のまたは浸炭窒化焼入焼戻し後の該鋼の最表面から100〜300μmの母相成分中に固溶したSi、Mn、Cr、Ni、Moの合計は3.0%以上であり、さらに残留γ量は20〜50vol%であって、該残留γ量の残部はマルテンサイト組織である鋼材からなることを特徴とする耐白色組織変化はく離寿命に優れる軸受部品。
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