JP2017051932A - ガス分離膜形成方法 - Google Patents
ガス分離膜形成方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017051932A JP2017051932A JP2015179771A JP2015179771A JP2017051932A JP 2017051932 A JP2017051932 A JP 2017051932A JP 2015179771 A JP2015179771 A JP 2015179771A JP 2015179771 A JP2015179771 A JP 2015179771A JP 2017051932 A JP2017051932 A JP 2017051932A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- separation membrane
- gas separation
- support
- gas
- raw material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
Abstract
【課題】多孔質支持体の表面に分離層の原料液を塗布するにあたり、細孔内への原料液の過剰な浸み込みを抑制し、薄く且つ均一な分離層を形成することが可能なガス分離膜形成方法を提供する。
【解決手段】柱状の支持体にガス分離膜を形成するガス分離膜形成方法であって、支持体は、連通孔が形成された多孔質内部構造と、多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備えるものであり、通気性外側面をシールするシール工程(S1)と、多孔質内部構造にガス分離膜の原料液を塗布する塗布工程(S2)と、塗布工程が完了した支持体を乾燥させる乾燥工程(S3)と、乾燥工程が完了した支持体の通気性外側面のシールを解除する解除工程(S4)と、解除工程が完了した支持体を加熱する熱処理工程(S5)と、を包含する。
【選択図】図1
【解決手段】柱状の支持体にガス分離膜を形成するガス分離膜形成方法であって、支持体は、連通孔が形成された多孔質内部構造と、多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備えるものであり、通気性外側面をシールするシール工程(S1)と、多孔質内部構造にガス分離膜の原料液を塗布する塗布工程(S2)と、塗布工程が完了した支持体を乾燥させる乾燥工程(S3)と、乾燥工程が完了した支持体の通気性外側面のシールを解除する解除工程(S4)と、解除工程が完了した支持体を加熱する熱処理工程(S5)と、を包含する。
【選択図】図1
Description
本発明は、柱状の支持体にガス分離膜を形成するガス分離膜形成方法に関する。
二種以上のガスを含む混合ガスから特定のガスを分離する装置として、分離層を多孔質支持体の表面に形成した各種ガス分離膜が開発されている。ガス分離膜は、特定のガスに対する選択性に優れることは勿論のこと、特定のガスに対する透過性にも優れることが求められる。ガス選択性とガス透過性とを両立させるためには、多孔質支持体の表面に分離層を形成するプロセスを工夫する必要がある。
ガス分離膜の製造方法として、多孔質支持体に分離層の原料液を通流させることにより、多孔質支持体の細孔内表面に原料液を塗布し、これを熱処理して硬化させる方法が一般に知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1のガス分離膜の製造方法では、多孔質支持体であるモノリス基材の貫通孔内に分離層の原料液を通し、貫通孔の表面に原料液を成膜した後、乾燥を行っている。このときの乾燥は、貫通孔内に熱風を通過させる熱風乾燥により行っている。特許文献1によれば、熱風乾燥により膜全体を均一に乾燥させることができるとされている。
また、無機多孔質支持体の表面に分離層を形成するに際し、無機多孔質支持体の裏面から圧力を印加した状態で表面に分離層の原料液を塗布する方法もあった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2のガス分離膜の製造方法では、窒素ガスを無機多孔質支持体の裏面に吹き込みながら表面に有機高分子膜の原料液を塗布して乾燥し、この塗布と乾燥とを無機多孔質支持体の表面の細孔が閉塞されるまで繰り返している。
ガス分離膜を製造するにあたっては、多孔質支持体に分離層を形成する際に多孔質支持体の細孔を閉塞させることなく、できるだけ薄く且つ均一な分離層を形成することが望ましい。ところが、特許文献1のガス分離膜の製造方法では、多孔質支持体に分離層の原料液を通過させる(塗布する)ときに、原料液が多孔質支持体の細孔の奥深くまで浸み込み、その結果、細孔を閉塞させてガス透過性が低下することがあった。また、多孔質支持体の細孔内に浸み込んだ原料液の分量を補充するため、原料液の通過量を増大させると、結果として分離層の厚みが増し、薄くて均一な膜に仕上げることも困難となる。
特許文献2の分離膜の製造方法は、無機多孔質支持体の裏面側から窒素ガスを印加しているため、細孔への原料液の浸み込みは若干抑えられるように考えられる。ところが、このようなガスの吹き込みによる浸み込み抑制方法では、すべての細孔に均等な圧力を印加することが難しいため原料液の浸み込み量を一定に抑制することが難しく、形成された分離膜の厚みにバラツキが発生し易い。また、支持体の形状や原料液の組成によってガス吹き込み条件を調整する必要があり、操作が煩雑になるため、工業的生産を行うには困難を伴う。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、多孔質支持体の表面に分離層の原料液を塗布するにあたり、細孔内への原料液の過剰な浸み込みを抑制し、薄く且つ均一な分離層を形成することが可能なガス分離膜形成方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係るガス分離膜形成方法の特徴構成は、
柱状の支持体にガス分離膜を形成するガス分離膜形成方法であって、
前記支持体は、連通孔が形成された多孔質内部構造と、前記多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備えるものであり、
前記通気性外側面をシールするシール工程と、
前記多孔質内部構造に前記ガス分離膜の原料液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程が完了した支持体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程が完了した支持体の前記通気性外側面のシールを解除する解除工程と、
前記解除工程が完了した支持体を加熱する熱処理工程と、
を包含することにある。
柱状の支持体にガス分離膜を形成するガス分離膜形成方法であって、
前記支持体は、連通孔が形成された多孔質内部構造と、前記多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備えるものであり、
前記通気性外側面をシールするシール工程と、
前記多孔質内部構造に前記ガス分離膜の原料液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程が完了した支持体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程が完了した支持体の前記通気性外側面のシールを解除する解除工程と、
前記解除工程が完了した支持体を加熱する熱処理工程と、
を包含することにある。
本構成のガス分離膜形成方法によれば、連通孔が形成された多孔質内部構造と、多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備えた柱状の支持体を原料液の塗布対象としており、多孔質内部構造にガス分離膜の原料液を塗布する前に通気性外側面をシールしている。このため、支持体に原料液を塗布したとき、当該原料液は多孔質内部構造の表面(塗布面)近傍に留まり、原料液が多孔質内部構造の細孔の奥深い位置まで過剰に浸み込むことが抑制される。従って、塗布工程が完了した支持体を乾燥し、通気性外側面のシールを解除した後、熱処理を行うと、多孔質内部構造の表面(塗布面)近傍に薄く且つ均一な分離層が形成される。このようにして形成されたガス分離膜は、ガス選択性及びガス透過性について一定以上の性能が確保されており、特定のガスを分離する用途において高い性能を発揮することができる。
本発明に係るガス分離膜形成方法において、
前記シール工程において、前記通気性外側面を圧迫するようシール材を巻き付けて、前記多孔質内部構造を外側から閉塞させることが好ましい。
前記シール工程において、前記通気性外側面を圧迫するようシール材を巻き付けて、前記多孔質内部構造を外側から閉塞させることが好ましい。
本構成のガス分離膜形成方法によれば、通気性外側面を圧迫するようシール材を巻き付けて、多孔質内部構造を外側から閉塞させることにより、多孔質内部構造の細孔への原料液の過剰な浸み込みを確実に抑制することができる。また、支持体にシール材を巻き付けるという簡単な作業で多孔質内部構造を外側から閉塞させることができるので、形状やサイズの異なる様々な支持体に容易に適用することができる。
本発明に係るガス分離膜形成方法において、
前記塗布工程において、前記原料液は前記ガス分離膜の中間層形成用液であることが好ましい。
前記塗布工程において、前記原料液は前記ガス分離膜の中間層形成用液であることが好ましい。
本構成のガス分離膜形成方法によれば、原料液として中間層形成用液を塗布することにより、通気性外側面がシールされた支持体には最初に中間層が形成される。このとき、多孔質内部構造の細孔への中間層形成用液の過剰な浸み込みが抑制されるため、中間層は薄く且つ均一な膜として形成される。従って、この中間層の上にさらに中間層形成用液を重ね塗りしたり、あるいは分離層形成用液を塗布すれば、その後の原料液の過剰な浸み込みが抑制され、全体として良好な分離膜を形成することができる。
本発明に係るガス分離膜形成方法において、
前記シール工程から前記熱処理工程までをセットとし、当該セットを複数回反復することが好ましい。
前記シール工程から前記熱処理工程までをセットとし、当該セットを複数回反復することが好ましい。
本構成のガス分離膜形成方法によれば、最初にシール工程を行った上で、分離膜の形成作業を複数回行うことになるので、多孔質内部構造の細孔への原料液の過剰な浸み込みが抑制された状態で、目標の性能に達するまで中間層及び/又は分離層を複数回に亘って積層し、所望の分離膜を形成することができる。
本発明に係るガス分離膜形成方法において、
前記塗布工程は、前記支持体を前記原料液に浸漬する浸漬工程と、前記原料液から前記支持体を0.5〜50mm/秒で引き上げる引上工程とを含むことが好ましい。
前記塗布工程は、前記支持体を前記原料液に浸漬する浸漬工程と、前記原料液から前記支持体を0.5〜50mm/秒で引き上げる引上工程とを含むことが好ましい。
本構成のガス分離膜形成方法によれば、支持体を原料液に浸漬した後、支持体を0.5〜50mm/秒の引き上げ速度で引き上げることにより、薄く且つ均一な中間層及び/又は分離層を備えたガス分離膜を形成することが可能となる。
本発明に係るガス分離膜形成方法において、
前記支持体は、モノリス構造を有する無機多孔質体であることが好ましい。
前記支持体は、モノリス構造を有する無機多孔質体であることが好ましい。
本構成のガス分離膜形成方法によれば、支持体としてモノリス構造を有する無機多孔質体を用いることにより、特に、ガス選択性及びガス透過性の両方に優れたガス分離膜を効率よく形成することが可能となる。なお、モノリス構造を有する無機多孔質体は表面積が大きいため、シール工程を行う前後においてシール効果が現れ易く、本発明のガス分離膜形成方法に適した支持体である。
以下、本発明に係るガス分離膜形成方法に関する実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図しない。
〔支持体〕
ガス分離膜は、多孔質構造を備えた支持体の表面にガス分離膜の原料液を塗布し、これを乾燥及び熱処理することによって製造される。初めに、本発明のガス分離膜形成方法に使用可能な支持体について説明する。支持体は、連通孔が形成された多孔質内部構造と、多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備える柱状体が用いられる。多孔質内部構造とは、一本のエレメントにレンコンの穴のように多数の流路が設けられたモノリス構造、内部に複雑に入り組んだ連続孔が形成された連通構造、多孔質体を柱形に成形した中実多孔質構造、多孔質体を筒形に成形した中空多孔質構造、ハニカム構造体を管状に並べたハニカム構造などが挙げられる。これらのうち、モノリス構造は、ガスの接触面積を大きく確保することができるため、ガス分離膜としての用途に好適である。支持体の通気性外側面は、多孔質内部構造と連絡しており、無数の細孔が形成されたものである。このような構成のため、例えば、柱状体である支持体の一端(上面又は底面)にガスが内部に流入すると、ガスは多孔質内部構造を通過し、通気性外側面全体から外部に流出することができる。細孔のサイズは、nmオーダーからμmオーダーまで、用途に応じて選択することができる。支持体を構成する材料としては、各種無機材料が好ましく、例えば、シリカ系セラミックス、シリカ系ガラス、アルミナ系セラミックス、ステンレス、チタン、銀等が挙げられる。これらのうち、アルミナ系セラミックスは、耐熱性に優れ、加工が容易であり、コスト的にも比較的安価であるため、支持体の材料として適している。
ガス分離膜は、多孔質構造を備えた支持体の表面にガス分離膜の原料液を塗布し、これを乾燥及び熱処理することによって製造される。初めに、本発明のガス分離膜形成方法に使用可能な支持体について説明する。支持体は、連通孔が形成された多孔質内部構造と、多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備える柱状体が用いられる。多孔質内部構造とは、一本のエレメントにレンコンの穴のように多数の流路が設けられたモノリス構造、内部に複雑に入り組んだ連続孔が形成された連通構造、多孔質体を柱形に成形した中実多孔質構造、多孔質体を筒形に成形した中空多孔質構造、ハニカム構造体を管状に並べたハニカム構造などが挙げられる。これらのうち、モノリス構造は、ガスの接触面積を大きく確保することができるため、ガス分離膜としての用途に好適である。支持体の通気性外側面は、多孔質内部構造と連絡しており、無数の細孔が形成されたものである。このような構成のため、例えば、柱状体である支持体の一端(上面又は底面)にガスが内部に流入すると、ガスは多孔質内部構造を通過し、通気性外側面全体から外部に流出することができる。細孔のサイズは、nmオーダーからμmオーダーまで、用途に応じて選択することができる。支持体を構成する材料としては、各種無機材料が好ましく、例えば、シリカ系セラミックス、シリカ系ガラス、アルミナ系セラミックス、ステンレス、チタン、銀等が挙げられる。これらのうち、アルミナ系セラミックスは、耐熱性に優れ、加工が容易であり、コスト的にも比較的安価であるため、支持体の材料として適している。
〔ガス分離膜形成方法〕
図1は、本発明のガス分離膜形成方法の手順を示すフローチャートである。各工程に付している記号「S」は、ステップを意味する。ガス分離膜は、シール工程(S1)、塗布工程(S2)、乾燥工程(S3)、解除工程(S4)、及び熱処理工程(S5)を経て形成される。以下、本発明のガス分離膜形成方法の各工程について説明する。
図1は、本発明のガス分離膜形成方法の手順を示すフローチャートである。各工程に付している記号「S」は、ステップを意味する。ガス分離膜は、シール工程(S1)、塗布工程(S2)、乾燥工程(S3)、解除工程(S4)、及び熱処理工程(S5)を経て形成される。以下、本発明のガス分離膜形成方法の各工程について説明する。
<シール工程>
初めに、上述した支持体の通気性外側面をシールするシール工程(S1)を実行する。シール工程は、例えば、可撓性を備えたシール材を用いて行うことができる。具体的には、柱状の支持体の通気性外側面にフィルムを貼着し、その上から通気性外側面を圧迫するようにシール材を巻き付ける。フィルムは、空気透過率が2.0×1012fm2/(Pa・s)以下の柔軟性があって伸び易い素材からなるものが好ましい。好適なフィルムとして、例えば、パラフィルムが挙げられる。パラフィルムは柔らかく容易に伸びる特性を有しているため、通気性外側面にパラフィルムを直接貼着すると、パラフィルムは伸展しながら通気性外側面の細孔に密着し、外部から支持体内部へのガスの流入(逆流)を抑えることができる。ただし、この状態で支持体内部の圧力が上昇すると、通気性外側面上におけるガス圧が高まり、細孔に密着していたフィルムが剥がれる虞がある。そこで、本実施形態では、フィルムの上からシール材を巻き付けて通気性外側面を圧迫する。これにより、支持体内部の圧力が上昇しても、フィルムはシール材によって通気性外側面に強く押さえ付けられているため、細孔に対するフィルムの密着状態が維持される。シール材は、空気透過率が6.0×1012fm2/(Pa・s)以下の一定の強度を有する素材からなるものが好ましい。好適なシール材として、例えば、ビニールテープが挙げられる。ビニールテープは引っ張りに強く、柔軟であるため、パラフィルムの上から何重にも巻き付けることにより、パラフィルムと通気性外側面の細孔との密着性を維持することができる。また、支持体に対するビニールテープの巻き付け方、又は巻き付け回数を調整することにより、原料液の組成や塗布条件に応じて、支持体の通気性外側面のシール状態(シールの程度)を調整することもできる。
初めに、上述した支持体の通気性外側面をシールするシール工程(S1)を実行する。シール工程は、例えば、可撓性を備えたシール材を用いて行うことができる。具体的には、柱状の支持体の通気性外側面にフィルムを貼着し、その上から通気性外側面を圧迫するようにシール材を巻き付ける。フィルムは、空気透過率が2.0×1012fm2/(Pa・s)以下の柔軟性があって伸び易い素材からなるものが好ましい。好適なフィルムとして、例えば、パラフィルムが挙げられる。パラフィルムは柔らかく容易に伸びる特性を有しているため、通気性外側面にパラフィルムを直接貼着すると、パラフィルムは伸展しながら通気性外側面の細孔に密着し、外部から支持体内部へのガスの流入(逆流)を抑えることができる。ただし、この状態で支持体内部の圧力が上昇すると、通気性外側面上におけるガス圧が高まり、細孔に密着していたフィルムが剥がれる虞がある。そこで、本実施形態では、フィルムの上からシール材を巻き付けて通気性外側面を圧迫する。これにより、支持体内部の圧力が上昇しても、フィルムはシール材によって通気性外側面に強く押さえ付けられているため、細孔に対するフィルムの密着状態が維持される。シール材は、空気透過率が6.0×1012fm2/(Pa・s)以下の一定の強度を有する素材からなるものが好ましい。好適なシール材として、例えば、ビニールテープが挙げられる。ビニールテープは引っ張りに強く、柔軟であるため、パラフィルムの上から何重にも巻き付けることにより、パラフィルムと通気性外側面の細孔との密着性を維持することができる。また、支持体に対するビニールテープの巻き付け方、又は巻き付け回数を調整することにより、原料液の組成や塗布条件に応じて、支持体の通気性外側面のシール状態(シールの程度)を調整することもできる。
<塗布工程>
次に、支持体の多孔質内部構造にガス分離膜の原料液を塗布する塗布工程(S2)を実行する。塗布工程は、いわゆるディッピング法により行うことができる。具体的には、初めに支持体を原料液に浸漬する。そして、多孔質内部構造に原料液が十分に行き渡るのを待って、原料液から支持体を引き上げる。このときの引き上げ速度は、支持体のサイズ、支持体の形状、原料液の組成、原料液の粘度等の条件に応じて適宜調整されるが、0.5〜50mm/秒に設定することが好ましい。引き上げ速度が0.5mm/秒未満の場合、引き上げに要する時間が長くなり、生産性が悪化する。引き上げ速度が50mm/秒を超える場合、膜厚が大きくなり、また、引き上げ時の液だれにより膜にムラが生じ易くなる。なお、塗布工程は、支持体を原料液に浸漬するのではなく、支持体を両端部(上下面)が上下を向くように配置し、支持体の上方(上面)から原料液を注入して多孔質内部構造を通過させ、原料液を支持体の下方(下面)から排出させる方法でも構わない。この場合、多孔質内部構造を通過させる原料液の流量を調整することにより、適切な塗布量とすることができる。塗布工程を行っている間、支持体は通気性外側面がフィルム及びシール材でシールされているため、多孔質内部構造の細孔内の空気は逃げ場を失い、その結果、支持体に塗布された原料液は、多孔質内部構造の表面(塗布面)近傍に留まる。このように、本発明では、支持体の通気性外側面をシールした状態で原料液の塗布を行うことにより、原料液が多孔質内部構造の細孔の奥深い位置まで過剰に浸み込むことが抑制される。
次に、支持体の多孔質内部構造にガス分離膜の原料液を塗布する塗布工程(S2)を実行する。塗布工程は、いわゆるディッピング法により行うことができる。具体的には、初めに支持体を原料液に浸漬する。そして、多孔質内部構造に原料液が十分に行き渡るのを待って、原料液から支持体を引き上げる。このときの引き上げ速度は、支持体のサイズ、支持体の形状、原料液の組成、原料液の粘度等の条件に応じて適宜調整されるが、0.5〜50mm/秒に設定することが好ましい。引き上げ速度が0.5mm/秒未満の場合、引き上げに要する時間が長くなり、生産性が悪化する。引き上げ速度が50mm/秒を超える場合、膜厚が大きくなり、また、引き上げ時の液だれにより膜にムラが生じ易くなる。なお、塗布工程は、支持体を原料液に浸漬するのではなく、支持体を両端部(上下面)が上下を向くように配置し、支持体の上方(上面)から原料液を注入して多孔質内部構造を通過させ、原料液を支持体の下方(下面)から排出させる方法でも構わない。この場合、多孔質内部構造を通過させる原料液の流量を調整することにより、適切な塗布量とすることができる。塗布工程を行っている間、支持体は通気性外側面がフィルム及びシール材でシールされているため、多孔質内部構造の細孔内の空気は逃げ場を失い、その結果、支持体に塗布された原料液は、多孔質内部構造の表面(塗布面)近傍に留まる。このように、本発明では、支持体の通気性外側面をシールした状態で原料液の塗布を行うことにより、原料液が多孔質内部構造の細孔の奥深い位置まで過剰に浸み込むことが抑制される。
塗布工程に用いる原料液は、ガス分離膜の種類に応じて選択される。例えば、酸性ガスとメタンガス及び/又は窒素ガスとを含有する混合ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス含有ガス分離膜を製造する場合は、例えば、テトラアルコキシシラン及び/又は炭化水素基含有トリアルコキシシランを含むアルコキシシラン、酸触媒、水、及び有機溶媒を混合したものを原料液とすることができる。空気等の酸素含有ガスから酸素を選択的に分離する酸素富化膜を製造する場合は、例えば、テトラアルコキシシラン、炭化水素基含有ジアルコキシシラン、酸触媒、水、及び有機溶媒を混合したものを原料液とすることができる。
<乾燥工程>
次に、原料液の塗布が完了した支持体を乾燥させる乾燥工程(S3)を実行する。その際の乾燥条件として、乾燥温度は、後述の熱処理工程における熱処理温度より低温であればよいが、20〜35℃が好ましい。乾燥温度が20℃より低い場合、原料液に含まれる水や有機溶媒が十分に蒸発せず、膜の表面にベタツキが残る場合がある。乾燥温度が35℃より高い場合、急激な乾燥により膜の表面に凹凸が残る虞がある。乾燥時間は、1〜24時間が好ましい。乾燥時間が1時間より短い場合、原料液に含まれる水や有機溶媒が十分に蒸発せず、膜の表面にベタツキが残る場合がある。一方、乾燥時間を24時間とすれば、支持体は十分に乾燥されるため、それ以上乾燥に時間をかける必要性は乏しい。
次に、原料液の塗布が完了した支持体を乾燥させる乾燥工程(S3)を実行する。その際の乾燥条件として、乾燥温度は、後述の熱処理工程における熱処理温度より低温であればよいが、20〜35℃が好ましい。乾燥温度が20℃より低い場合、原料液に含まれる水や有機溶媒が十分に蒸発せず、膜の表面にベタツキが残る場合がある。乾燥温度が35℃より高い場合、急激な乾燥により膜の表面に凹凸が残る虞がある。乾燥時間は、1〜24時間が好ましい。乾燥時間が1時間より短い場合、原料液に含まれる水や有機溶媒が十分に蒸発せず、膜の表面にベタツキが残る場合がある。一方、乾燥時間を24時間とすれば、支持体は十分に乾燥されるため、それ以上乾燥に時間をかける必要性は乏しい。
<解除工程>
次に、乾燥工程が完了した支持体の通気性外側面のシールを解除する解除工程(S4)を実行する。本実施形態のように、シール工程において、支持体にフィルムを貼着し、その上からシール材を巻き付けている場合は、シール材及びフィルムを順に取り除く。シール材が耐久性を有するものである場合は、剥がしたシール材を次回のシール工程において再利用することも可能である。また、フィルムが後述の熱処理工程の熱処理温度に耐え得る素材である場合は、フィルムを支持体に貼着した状態で残しておいてもよい。
次に、乾燥工程が完了した支持体の通気性外側面のシールを解除する解除工程(S4)を実行する。本実施形態のように、シール工程において、支持体にフィルムを貼着し、その上からシール材を巻き付けている場合は、シール材及びフィルムを順に取り除く。シール材が耐久性を有するものである場合は、剥がしたシール材を次回のシール工程において再利用することも可能である。また、フィルムが後述の熱処理工程の熱処理温度に耐え得る素材である場合は、フィルムを支持体に貼着した状態で残しておいてもよい。
<熱処理工程>
次に、解除工程が完了した支持体を加熱する熱処理工程(S5)を実行する。熱処理工程では、初めに支持体を所定の熱処理温度に達するまで昇温する。昇温速度は、15〜275℃/時間が好ましい。昇温速度が15℃/時間より遅い場合、所定の熱処理温度に達するまでの時間が長くなり、生産性が悪化する。昇温速度が275℃/時間より速い場合、急激な温度変化により均一な膜が得られず、さらに膜にクラックが発生する虞もある。昇温後、一定時間で熱処理(焼成)を行う。熱処理温度は、40〜300℃がより好ましい。熱処理温度が40℃より低い場合、十分な熱処理を行えないため緻密な膜が得られ難くなる。熱処理温度が300℃より高い場合、高温の加熱により膜が劣化する虞がある。熱処理時間は、0.5〜6時間が好ましい。熱処理時間が0.5時間より短い場合、十分な熱処理を行えないため緻密な膜が得られ難くなる。熱処理時間が6時間より長い場合、長時間の加熱により膜が劣化する虞がある。
次に、解除工程が完了した支持体を加熱する熱処理工程(S5)を実行する。熱処理工程では、初めに支持体を所定の熱処理温度に達するまで昇温する。昇温速度は、15〜275℃/時間が好ましい。昇温速度が15℃/時間より遅い場合、所定の熱処理温度に達するまでの時間が長くなり、生産性が悪化する。昇温速度が275℃/時間より速い場合、急激な温度変化により均一な膜が得られず、さらに膜にクラックが発生する虞もある。昇温後、一定時間で熱処理(焼成)を行う。熱処理温度は、40〜300℃がより好ましい。熱処理温度が40℃より低い場合、十分な熱処理を行えないため緻密な膜が得られ難くなる。熱処理温度が300℃より高い場合、高温の加熱により膜が劣化する虞がある。熱処理時間は、0.5〜6時間が好ましい。熱処理時間が0.5時間より短い場合、十分な熱処理を行えないため緻密な膜が得られ難くなる。熱処理時間が6時間より長い場合、長時間の加熱により膜が劣化する虞がある。
<膜の状態確認>
支持体の熱処理が終わった後、支持体を室温まで冷却する。冷却時間は、5〜10時間が好ましい。冷却時間が5時間より短い場合、急激な温度変化により膜に亀裂や剥離が発生する虞がある。冷却時間が10時間より長い場合、生産性が悪化する。冷却が終わった後、膜の状態を確認する(S6)。確認項目は、本実施形態の場合、支持体に対する膜の目付量、膜の表面粗さである。さらに、形成した膜に実際にガスを通過させ、膜のガス分離性能を確認することが好ましい。形成した膜が目標の状態に達したと判断した場合(S6:Yes)、本発明の分離膜形成方法は終了する(S7)。形成した膜が目標の状態にまだ達していないと判断した場合(S6:No)は、シール行程(S1)に戻り、再び、塗布工程(S2)、乾燥工程(S3)、解除工程(S4)、及び熱処理工程(S5)を繰り返し、その後、膜の状態を確認する(S6)。
支持体の熱処理が終わった後、支持体を室温まで冷却する。冷却時間は、5〜10時間が好ましい。冷却時間が5時間より短い場合、急激な温度変化により膜に亀裂や剥離が発生する虞がある。冷却時間が10時間より長い場合、生産性が悪化する。冷却が終わった後、膜の状態を確認する(S6)。確認項目は、本実施形態の場合、支持体に対する膜の目付量、膜の表面粗さである。さらに、形成した膜に実際にガスを通過させ、膜のガス分離性能を確認することが好ましい。形成した膜が目標の状態に達したと判断した場合(S6:Yes)、本発明の分離膜形成方法は終了する(S7)。形成した膜が目標の状態にまだ達していないと判断した場合(S6:No)は、シール行程(S1)に戻り、再び、塗布工程(S2)、乾燥工程(S3)、解除工程(S4)、及び熱処理工程(S5)を繰り返し、その後、膜の状態を確認する(S6)。
以上の工程を経て作製されたガス分離膜は、多孔質内部構造の表面(塗布面)近傍に薄く且つ均一な分離層が形成されており、その結果、ガス選択性及びガス透過性について一定以上の性能が確保されたものとなる。このガス分離膜は、特定のガスを分離する用途において高い性能を発揮することができる。
本発明のガス分離膜形成方法により支持体にガス分離膜を形成する工程において、支持体への原料液の浸み込み抑制効果を確認するため、分離膜の目付量の変化を測定した。さらに、ガス分離膜の透過速度、及びガス分離性能についても評価した。
<原料液の調製>
本実施例では、酸性ガス含有ガス分離膜を形成するため、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、硝酸、エタノール、水、及び硝酸マグネシウムを含むアルコキシド溶液(原料液)を調製した。エタノール142.10重量部、硝酸0.10重量部、水5.55重量部を混合して30分間攪拌し、次いでテトラエトキシシラン19.27重量部を添加して1時間攪拌し、次いでメチルトリエトキシシラン11.00重量部を添加して2.5時間攪拌し、次いで硝酸マグネシウム(六水和物)1.98重量部を添加して2時間撹拌し、これにより得られたシラン含有ゾル(混合液)を塗布工程で使用する原料液とした。
本実施例では、酸性ガス含有ガス分離膜を形成するため、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、硝酸、エタノール、水、及び硝酸マグネシウムを含むアルコキシド溶液(原料液)を調製した。エタノール142.10重量部、硝酸0.10重量部、水5.55重量部を混合して30分間攪拌し、次いでテトラエトキシシラン19.27重量部を添加して1時間攪拌し、次いでメチルトリエトキシシラン11.00重量部を添加して2.5時間攪拌し、次いで硝酸マグネシウム(六水和物)1.98重量部を添加して2時間撹拌し、これにより得られたシラン含有ゾル(混合液)を塗布工程で使用する原料液とした。
<ガス分離膜の形成>
支持体として、全長110mmのモノリス構造を有する柱状のアルミナ系セラミックスを使用した。支持体の通気性外側面全体にパラフィルムを伸ばしながら貼着し、さらにパラフィルムを介して通気性外側面を圧迫するようにビニールテープをパラフィルムの上から一様に巻き付けた(シール工程)。ちなみに、シール工程で使用したパラフィルムの空気透過率は1.87×1012fm2/(Pa・s)であり、ビニールテープの空気透過率は5.39×1012fm2/(Pa・s)であった。この支持体を原料液に浸漬し、その後、試験体を原料液から引き上げ速度5.0mm/sで引き上げた(塗布工程)。そして、室温で1時間乾燥させた後(乾燥工程)、支持体からビニールテープ及びパラフィルムを取り外し(解除工程)、焼成器で熱処理を行った(熱処理工程)。熱処理条件は、室温(25℃)から150℃まで5時間かけて加熱し(昇温速度:25℃/時間)、次いで150℃で2時間保持した。その後、25℃まで5時間かけて冷却した。この時点で得られるガス分離膜を1回目の試験体(実施例1)とした。
支持体として、全長110mmのモノリス構造を有する柱状のアルミナ系セラミックスを使用した。支持体の通気性外側面全体にパラフィルムを伸ばしながら貼着し、さらにパラフィルムを介して通気性外側面を圧迫するようにビニールテープをパラフィルムの上から一様に巻き付けた(シール工程)。ちなみに、シール工程で使用したパラフィルムの空気透過率は1.87×1012fm2/(Pa・s)であり、ビニールテープの空気透過率は5.39×1012fm2/(Pa・s)であった。この支持体を原料液に浸漬し、その後、試験体を原料液から引き上げ速度5.0mm/sで引き上げた(塗布工程)。そして、室温で1時間乾燥させた後(乾燥工程)、支持体からビニールテープ及びパラフィルムを取り外し(解除工程)、焼成器で熱処理を行った(熱処理工程)。熱処理条件は、室温(25℃)から150℃まで5時間かけて加熱し(昇温速度:25℃/時間)、次いで150℃で2時間保持した。その後、25℃まで5時間かけて冷却した。この時点で得られるガス分離膜を1回目の試験体(実施例1)とした。
次に、1回目の試験体の側面に再びパラフィルムを貼着し、さらに1回目と同様にビニールテープをパラフィルムの上に一様に巻き付け(シール工程)、同じ原料液に浸漬し、その後、試験体を原料液から引き上げ速度5.0mm/sで引き上げた(塗布工程)。塗布工程後の乾燥工程、解除工程、及び熱処理工程は、1回目の試験体と同様に行った。このようにして得られたガス分離膜を2回目の試験体(実施例2)とした。さらにその後、2回目の試験体の手順と同様の手順を繰り返し、3回目の試験体(実施例3)、4回目の試験体(実施例4)、及び5回目の試験体(実施例5)を得た。
また、比較のため、支持体の側面にパラフィルムを貼着するが、その上からビニールテープを巻き付けず、その他の工程については実施例1〜5と同じ手順及び条件で作製したガス分離膜を準備し、これらを比較例1〜5とした。
<目付量の変化>
支持体における分離膜の目付量の変化(増加)を、n回目の試験体の重量と(n−1)回目の試験体の重量との差から測定した。実施例1〜5及び比較例1〜5の各ガス分離膜における支持体における目付量の変化を表1に示す。
支持体における分離膜の目付量の変化(増加)を、n回目の試験体の重量と(n−1)回目の試験体の重量との差から測定した。実施例1〜5及び比較例1〜5の各ガス分離膜における支持体における目付量の変化を表1に示す。
実施例1〜5及び比較例1〜5のガス分離膜は、シール工程、塗布工程、乾燥工程、解除工程、及び熱処理工程をセットとし、これを反復するに従って、いずれも目付量の増加割合が徐々に小さくなる傾向が確認されたが、実施例1〜5のガス分離膜の方が比較例1〜5のガス分離膜よりも目付量の増加割合が小さくなった。特に、実施例の4回目以降の試験体(実施例4及び5)では、目付量が前回の試験体から変化しておらず、この時点で支持体の略すべての細孔に分離膜の原料液が行き渡ったものと考えられる。実施例1〜5のガス分離膜は、支持体の通気性外側面がシールされた状態で原料液の塗布が行われているため、比較例1〜5のガス分離膜よりも支持体への原料液の浸み込みが抑制され、その結果、分離膜が薄膜化されていると考えられる。
<透過速度・ガス分離性能の確認>
上記の手順により作製した実施例1〜5及び比較例1〜5のガス分離膜について、二酸化炭素のガス分離性能に関する確認試験を行った。この確認試験では、ガス分離膜に窒素を透過させたときの気体透過速度〔P(N2)〕、及び同じガス分離膜に二酸化炭素を透過させたときの気体透過速度〔P(CO2)〕を測定した。ここで、窒素の気体分子径は3.64Åであり、二酸化炭素の気体分子径は3.3Åである。このため、窒素よりも気体分子径が小さい二酸化炭素は分離膜を透過し易い。従って、このような気体によって異なる性質を利用し、さらに膜の構成を適切に設定すれば、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離することが可能となる。図2は、ガス分離膜7のガス分離性能確認試験に使用した気体透過速度測定装置10の概略構成図である。図3は、図2中の破線Aで囲んだ領域のガス分離膜7の拡大断面図である。なお、図3では説明容易化のため、ガス分離膜7のモノリス構造を形成する流路を実際より拡大して示してある。
上記の手順により作製した実施例1〜5及び比較例1〜5のガス分離膜について、二酸化炭素のガス分離性能に関する確認試験を行った。この確認試験では、ガス分離膜に窒素を透過させたときの気体透過速度〔P(N2)〕、及び同じガス分離膜に二酸化炭素を透過させたときの気体透過速度〔P(CO2)〕を測定した。ここで、窒素の気体分子径は3.64Åであり、二酸化炭素の気体分子径は3.3Åである。このため、窒素よりも気体分子径が小さい二酸化炭素は分離膜を透過し易い。従って、このような気体によって異なる性質を利用し、さらに膜の構成を適切に設定すれば、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離することが可能となる。図2は、ガス分離膜7のガス分離性能確認試験に使用した気体透過速度測定装置10の概略構成図である。図3は、図2中の破線Aで囲んだ領域のガス分離膜7の拡大断面図である。なお、図3では説明容易化のため、ガス分離膜7のモノリス構造を形成する流路を実際より拡大して示してある。
気体透過速度測定装置10は、ガスシリンダー1、質量流量計2、圧力ゲージ3、及びチャンバー4を備える。ガス分離膜7は、図2に示すように、チャンバー4の内部にOリング6を介して設置される。また、ガス分離膜7は、図3に示すように、支持体7aの内表面に分離層7bが形成されている。支持体7aは、分離層7bが形成されていない端面からのガスの流入を防止するため、モノリス構造の流路を閉塞しない状態で、支持体7aの両端面がエポキシ樹脂5によりシールされている。
初めに、測定ガスである二酸化炭素又は窒素をガスシリンダー1に予め充填しておく。ここでは、二酸化炭素をガスシリンダー1に充填したものとして説明する。ガスシリンダー1から排出された二酸化炭素は、質量流量計2aを通過した後、圧力ゲージ3aによって圧力が調整され、チャンバー4に流入する。本確認試験では、二酸化炭素の供給圧を室温で0.1MPaに調整する。チャンバー4に流入した二酸化炭素は、ガス分離膜7の端部からモノリス構造の流路に侵入し、分離層7bを通過して支持体7aの通気性外側面から排出される。ここで、ガス分離膜7の内部に存在する分離層7bと、ガス分離膜7の通気性外側面に露出している支持体7aとは、ガス分離膜7とチャンバー4の内壁との間に設けられたOリング6により隔離されているため、二酸化炭素が分離層7bを通過せずにガス分離膜7の通気性外側面から外部に排出されることはない。ガス分離膜7の通気性外側面から排出された二酸化炭素は、圧力ゲージ3bを通過し、質量流量計2bによって流量が測定される。
本確認試験では、質量流量計2(2a,2b)として、コフロック社製の熱式質量流量計(マスフローメーター「5410」)を使用した。測定条件は、流量レンジを10mL/分、フルスケール(FS)最大流量に対する精度は±1%(20℃)とした。質量流量計2で測定した二酸化炭素の流量〔mL/min〕から、二酸化炭素の気体透過速度〔P(CO2)〕(m3/(m2×s(秒)×Pa))を算出した。窒素についても上記と同様の手順により気体透過速度〔P(N2)〕(m3/(m2×s(秒)×Pa))を算出した。そして、二酸化炭素の気体透過速度〔P(CO2)〕と窒素の気体透過速度〔P(N2)〕との比率である透過速度比〔α(CO2/N2)〕から二酸化炭素の分離性能を評価した。分離性能確認試験の結果を表2に示す。
実施例1〜5及び比較例1〜5のガス分離膜は、シール工程、塗布工程、乾燥工程、解除工程、及び熱処理工程をセットとし、これを反復するに従って、いずれも二酸化炭素及び窒素の気体透過速度が徐々に小さくなる傾向が確認されたが、実施例1〜5のガス分離膜の方が比較例1〜5のガス分離膜よりも窒素の気体透過速度が顕著に小さくなった。その結果、実施例1〜5のガス分離膜は、透過速度比〔α(CO2/N2)〕が大きいものとなった。このように、実施例1〜5のガス分離膜は、二酸化炭素と窒素との混合ガスから二酸化炭素を分離するのに有効であることが確認された。これに対し、比較例1〜5のガス分離膜は、透過速度比〔α(CO2/N2)〕が小さいため、実用レベルのガス分離性能は達成されなかった。
〔別実施形態〕
上述の実施形態では、シール工程として、初めに支持体の通気性外側面にパラフィルムを貼着し、次いでその上からビニールテープを巻き付けて通気性外側面を圧迫し、その状態で塗布工程として、支持体の多孔質内部構造にガス分離膜の原料液を塗布する方法について説明したが、本発明のガス分離膜形成方法は、パラフィルム及びビニールテープ以外の別の構成を用いてシール工程を実施することも可能である。そのような別の構成例を、図4を参照しながら別実施形態1〜3として説明する。図4は、本発明のガス分離膜形成方法における別実施形態にかかるシール工程の説明図である。
上述の実施形態では、シール工程として、初めに支持体の通気性外側面にパラフィルムを貼着し、次いでその上からビニールテープを巻き付けて通気性外側面を圧迫し、その状態で塗布工程として、支持体の多孔質内部構造にガス分離膜の原料液を塗布する方法について説明したが、本発明のガス分離膜形成方法は、パラフィルム及びビニールテープ以外の別の構成を用いてシール工程を実施することも可能である。そのような別の構成例を、図4を参照しながら別実施形態1〜3として説明する。図4は、本発明のガス分離膜形成方法における別実施形態にかかるシール工程の説明図である。
<別実施形態1>
図4(a)は、エアバッグ20を用いて行うシール工程の説明図である。図の左側がシール前の状態(解除工程)を示し、右側がシール後の状態(シール工程)を示す。本別実施形態は、支持体7aの周囲にエアバッグ20を配置し、エアバッグ20に空気を導入したとき、支持体7aの通気性外側面がエアバッグ20で圧迫されるように構成したものである。この場合、エアバッグ20は、支持体7aの通気性外側面を隙間なく圧迫できるように、伸縮性及び柔軟性を有する素材で構成することが好ましい。エアバッグ20を用いてシール工程を実施すれば、エアバッグ20への空気の出し入れ操作のみで迅速且つ連続的に支持体7aの通気性外側面をシールすることができ、支持体7aへのビニールテープの巻き付け作業及び取り外し作業が不要となる。その結果、ガス分離膜7の生産効率が向上し、工業的生産が容易となる。
図4(a)は、エアバッグ20を用いて行うシール工程の説明図である。図の左側がシール前の状態(解除工程)を示し、右側がシール後の状態(シール工程)を示す。本別実施形態は、支持体7aの周囲にエアバッグ20を配置し、エアバッグ20に空気を導入したとき、支持体7aの通気性外側面がエアバッグ20で圧迫されるように構成したものである。この場合、エアバッグ20は、支持体7aの通気性外側面を隙間なく圧迫できるように、伸縮性及び柔軟性を有する素材で構成することが好ましい。エアバッグ20を用いてシール工程を実施すれば、エアバッグ20への空気の出し入れ操作のみで迅速且つ連続的に支持体7aの通気性外側面をシールすることができ、支持体7aへのビニールテープの巻き付け作業及び取り外し作業が不要となる。その結果、ガス分離膜7の生産効率が向上し、工業的生産が容易となる。
<別実施形態2>
図4(b)は、板状エラストマー30を用いて行うシール工程の説明図である。図の左側がシール前の状態(解除工程)を示し、右側がシール後の状態(シール工程)を示す。本別実施形態は、支持体7aの周囲に4つの板状エラストマー30を配置し、夫々の板状エラストマー30を4つの押し板31を用いて支持体7aの通気性外表面に押さえ付け可能に構成したものである。この場合、板状エラストマー30は、支持体7aの通気性外側面に密着できるように、柔軟性を有する素材で構成することが好ましい。板状エラストマー30を用いてシール工程を実施すれば、押し板31の機械的操作のみで迅速且つ連続的に支持体7aの通気性外側面をシールすることができ、支持体7aへのビニールテープの巻き付け作業及び取り外し作業が不要となる。その結果、ガス分離膜7の生産効率が向上し、工業的生産が容易となる。
図4(b)は、板状エラストマー30を用いて行うシール工程の説明図である。図の左側がシール前の状態(解除工程)を示し、右側がシール後の状態(シール工程)を示す。本別実施形態は、支持体7aの周囲に4つの板状エラストマー30を配置し、夫々の板状エラストマー30を4つの押し板31を用いて支持体7aの通気性外表面に押さえ付け可能に構成したものである。この場合、板状エラストマー30は、支持体7aの通気性外側面に密着できるように、柔軟性を有する素材で構成することが好ましい。板状エラストマー30を用いてシール工程を実施すれば、押し板31の機械的操作のみで迅速且つ連続的に支持体7aの通気性外側面をシールすることができ、支持体7aへのビニールテープの巻き付け作業及び取り外し作業が不要となる。その結果、ガス分離膜7の生産効率が向上し、工業的生産が容易となる。
<別実施形態3>
図4(c)は、管状エラストマー40を用いて行うシール工程の説明図である。図の左側がシール前の状態(解除工程)を示し、右側がシール後の状態(シール工程)を示す。本別実施形態は、外方向に引張って内径を拡大させた管状エラストマー40に支持体7aを挿入し、次いで管状エラストマー40の引張り力を開放することにより、管状エラストマー40が支持体7aの通気性外表面を締め付け可能に構成したものである。この場合、管状エラストマー40は、支持体7aの通気性外側面に密着できるように、伸縮性及び柔軟性を有する素材で構成することが好ましい。管状エラストマー40を用いてシール工程を実施すれば、管状エラストマー40の引張り操作のみで迅速且つ連続的に支持体7aの通気性外側面をシールすることができ、支持体7aへのビニールテープの巻き付け作業及び取り外し作業が不要となる。その結果、ガス分離膜7の生産効率が向上し、工業的生産が容易となる。
図4(c)は、管状エラストマー40を用いて行うシール工程の説明図である。図の左側がシール前の状態(解除工程)を示し、右側がシール後の状態(シール工程)を示す。本別実施形態は、外方向に引張って内径を拡大させた管状エラストマー40に支持体7aを挿入し、次いで管状エラストマー40の引張り力を開放することにより、管状エラストマー40が支持体7aの通気性外表面を締め付け可能に構成したものである。この場合、管状エラストマー40は、支持体7aの通気性外側面に密着できるように、伸縮性及び柔軟性を有する素材で構成することが好ましい。管状エラストマー40を用いてシール工程を実施すれば、管状エラストマー40の引張り操作のみで迅速且つ連続的に支持体7aの通気性外側面をシールすることができ、支持体7aへのビニールテープの巻き付け作業及び取り外し作業が不要となる。その結果、ガス分離膜7の生産効率が向上し、工業的生産が容易となる。
本発明のガス分離膜形成方法は、各種のガス分離膜を製造するために利用することが可能であり、その例として、酸性ガス含有ガス処理用分離膜、酸素富化膜等が挙げられる。また、本発明により製造したガス分離膜は、工業分野、環境分野、医療分野、食品分野等において利用可能である。
1 ガスシリンダー
2(2a,2b) 質量流量計
3(3a,3b) 圧力ゲージ
4 チャンバー
5 エポキシ樹脂
6 Oリング
7 ガス分離膜
10 気体透過速度測定装置
2(2a,2b) 質量流量計
3(3a,3b) 圧力ゲージ
4 チャンバー
5 エポキシ樹脂
6 Oリング
7 ガス分離膜
10 気体透過速度測定装置
Claims (6)
- 柱状の支持体にガス分離膜を形成するガス分離膜形成方法であって、
前記支持体は、連通孔が形成された多孔質内部構造と、前記多孔質内部構造を筒状に包囲する通気性外側面とを備えるものであり、
前記通気性外側面をシールするシール工程と、
前記多孔質内部構造に前記ガス分離膜の原料液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程が完了した支持体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程が完了した支持体の前記通気性外側面のシールを解除する解除工程と、
前記解除工程が完了した支持体を加熱する熱処理工程と、
を包含するガス分離膜形成方法。 - 前記シール工程において、前記通気性外側面を圧迫するようシール材を巻き付けて、前記多孔質内部構造を外側から閉塞させる請求項1に記載のガス分離膜形成方法。
- 前記塗布工程において、前記原料液は前記ガス分離膜の中間層形成用液である請求項1又は2に記載のガス分離膜形成方法。
- 前記シール工程から前記熱処理工程までをセットとし、当該セットを複数回反復する請求項1〜3の何れか一項に記載のガス分離膜形成方法。
- 前記塗布工程は、前記支持体を前記原料液に浸漬する浸漬工程と、前記原料液から前記支持体を0.5〜50mm/秒で引き上げる引上工程とを含む請求項1〜4の何れか一項に記載のガス分離膜形成方法。
- 前記支持体は、モノリス構造を有する無機多孔質体である請求項1〜5の何れか一項に記載のガス分離膜形成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015179771A JP2017051932A (ja) | 2015-09-11 | 2015-09-11 | ガス分離膜形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015179771A JP2017051932A (ja) | 2015-09-11 | 2015-09-11 | ガス分離膜形成方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017051932A true JP2017051932A (ja) | 2017-03-16 |
Family
ID=58316607
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015179771A Pending JP2017051932A (ja) | 2015-09-11 | 2015-09-11 | ガス分離膜形成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017051932A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20220013807A (ko) * | 2020-07-27 | 2022-02-04 | 주식회사 윈테크 | 탈황촉매 시스템 |
JP2023026609A (ja) * | 2018-10-04 | 2023-02-24 | 日本碍子株式会社 | ガス分離方法およびガス分離装置 |
-
2015
- 2015-09-11 JP JP2015179771A patent/JP2017051932A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2023026609A (ja) * | 2018-10-04 | 2023-02-24 | 日本碍子株式会社 | ガス分離方法およびガス分離装置 |
JP7398578B2 (ja) | 2018-10-04 | 2023-12-14 | 日本碍子株式会社 | ガス分離方法およびガス分離装置 |
KR20220013807A (ko) * | 2020-07-27 | 2022-02-04 | 주식회사 윈테크 | 탈황촉매 시스템 |
KR102462789B1 (ko) | 2020-07-27 | 2022-11-03 | 주식회사 윈테크 | 탈황촉매 시스템 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Madaeni et al. | Effect of coating method on gas separation by PDMS/PES membrane | |
JP5502452B2 (ja) | 複合シートおよびその製造方法 | |
EP2133136A1 (en) | Separation membrane and method for production thereof | |
Aghajani et al. | Relationship between permeation and deformation for porous membranes | |
Karimi et al. | A simple method for blocking defects in zeolite membranes | |
JP2003320223A (ja) | 中空糸膜モジュールの製造装置並びに製造方法 | |
JP3966738B2 (ja) | 多孔質セラミック材の製造方法 | |
JP2017051932A (ja) | ガス分離膜形成方法 | |
EP1985598B1 (en) | Method of manufacturing ceramic porous membrane | |
JPWO2009150903A1 (ja) | 炭素膜及びその製造方法 | |
JP6979612B2 (ja) | 多孔質膜支持体、気体分離膜複合体、多孔質膜支持体の製造方法及び気体分離膜複合体の製造方法 | |
JPWO2015146354A1 (ja) | モノリス型分離膜構造体及びモノリス型分離膜構造体の製造方法 | |
JPS63171610A (ja) | セラミツク多孔質膜の製造方法 | |
JP5051785B2 (ja) | 炭化珪素水素分離膜の製造方法 | |
JP4129975B2 (ja) | 多孔質セラミック材及びその製造方法 | |
JP2002066280A (ja) | ガス分離フィルタおよびその製造方法 | |
JP2018015751A (ja) | 気体透過性チューブ | |
US20170368797A1 (en) | Palladium composite membrane | |
JPWO2013136869A1 (ja) | 分離膜の製造方法、分離膜複合体の製造方法、及び分離膜複合体 | |
JP6683365B2 (ja) | 気体分離フィルタの製造方法 | |
JPWO2016104048A1 (ja) | ガス分離方法 | |
JP4471556B2 (ja) | 多孔質セラミック材及びその製造方法 | |
AU2015356243B2 (en) | Method for manufacturing molded filter body | |
JP2009189899A (ja) | カーボン膜を備える分離膜エレメントの製造方法 | |
JP6009541B2 (ja) | 分離膜の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20180820 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20190520 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20190528 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20191126 |