JP2017049067A - 機器状態判定装置、機器状態判定方法及びノッキング判定装置 - Google Patents

機器状態判定装置、機器状態判定方法及びノッキング判定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】検出した信号に対して判定すべきタイミングをより正確に推定することのできる機器状態判定装置、及び、機器状態判定方法、及び、内燃機関のノッキングを判定するノッキング判定装置を提供する。【解決手段】ノッキング判定装置10は、周期性のある動作を伴う機器であるエンジンの周期性のある動作に基づく物理量を示す信号としてサイクル毎に取得された各取得信号の特定のタイミングの信号状態に基づいてエンジンの状態を判定する。ノッキング判定装置10は、基準信号を取得する基準信号取得部61と、判定信号を取得する判定信号取得部62と、基準信号から平均と分散とに基づいて基準モデルを作成するモデル作成部31と、判定信号の基準モデルに対する一致の度合いを示す指標を算出する指標算出部35と、一致の度合いが最大であることを示す指標に基づいて同期値を決定するシフト量決定部36とを備える。【選択図】図4

Description

本発明は、作動する機器の状態を判定する機器状態判定装置、及び、機器状態判定方法、及び、内燃機関に生じるノッキングを判定するノッキング判定装置に関する。
ガソリンエンジンなどの内燃機関における点火時期は、出力トルクの向上を目的として、ノックキングが発生しないクランク角度の範囲内において可能な限り進角されることが一般的である。そこで、内燃機関を設計したり、調整したりする過程で点火時期をクランク角度に適合させる工程では、ノックキングが発生しているか否かがノッキング判定装置によって判定される。こうしたノッキング判定装置の一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載のノッキング判定装置は、筒内圧を検出する筒内圧センサからの出力信号と、内燃機関が発する音を検出するマイクからの出力信号との相互相関値を計算し、相互相関値をノッキングの強度として取り扱っている。
特開2003−314349号公報
特許文献1に記載のノッキング判定装置によれば、センサで検出された筒内圧と音の相互相関に基づいてノッキングの有無を判定している。
ところで、内燃機関の構造は様々であることから、ノッキングの有無を判定しようとする内燃機関に筒内圧センサが設置されているとは限らない。例えば、筒内圧を取得する筒内圧センサが設置されていない内燃機関では、検出された音と、筒内圧が上昇する点火タイミングとの正確な相関関係の取得ができない。このため、検出した音に対して、ノッキング判定を行うべきタイミングである点火タイミングが正確に得られず、ノッキング有無の判定精度が低下するおそれがある。この課題の解決には、検出した信号に対して判定すべきタイミングを正確に考慮することが望ましい。上記ノッキング有無の他に内燃機関の周期的な運転状態の判定、また、検出した信号に対して判定すべきタイミングを正確に考慮することが望ましい。また、内燃機関の他に周期的な動作を含む機器の周期的な状態の判定でも同様である。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであってその目的は、検出した信号に対して判定すべきタイミングをより正確に推定することのできる機器状態判定装置、及び、機器状態判定方法、及び、内燃機関のノッキングを判定するノッキング判定装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決する機器状態判定装置は、周期性のある動作を伴う機器の前記周期性のある動作に基づく物理量を示す信号としてサイクル毎に取得された各取得信号の特定のタイミングの信号状態に基づいて前記機器の状態を判定する機器状態判定装置であって、前記機器の基準となる条件での動作に基づく前記取得信号を前記サイクル毎に基準信号として取得する基準信号取得部と、前記機器の動作状態を判定するサイクルでの前記取得信号を判定信号として取得する判定信号取得部と、前記各基準信号の取得されたサイクル中の前記タイミングでの前記基準信号の集合に対する平均と分散とに基づいて基準モデルを作成するモデル作成部と、前記基準モデルの作成されたサイクル中の前記タイミングに対して、前記判定信号の取得されたサイクル中の前記タイミングを順次相対移動させると共に、前記相対移動毎の前記判定信号の前記基準モデルに対する一致の度合いを示す指標を算出する指標算出部と、前記一致の度合いが最大であることを示す指標に対応する相対移動に基づいて前記基準モデルに前記判定信号が同期する同期値を決定する同期値決定部と、を備え、前記同期値で移動させた前記タイミングでの前記判定信号に基づいて前記判定を行うことを要旨とする。
上記課題を解決する機器状態判定方法は、周期性のある動作を伴う機器の前記周期性のある動作に基づく物理量を示す信号としてサイクル毎に取得した各取得信号の特定のタイミングの信号状態に基づいて前記機器の状態を判定する機器状態判定装置で実行される機器状態判定方法であって、機器状態判定装置は、前記機器の基準となる条件での動作に基づく前記取得信号を前記サイクル毎の基準信号として取得する基準信号取得工程と、前記機器の動作状態を判定するサイクルでの前記取得信号を判定信号として取得する判定信号取得工程と、前記各基準信号の取得されたサイクル中の前記タイミングでの前記基準信号の集合に対する平均と分散とに基づいて基準モデルを作成するモデル作成工程と、前記基準モデルの作成されたサイクル中の前記タイミングに対して、前記判定信号の取得されたサイクル中の前記タイミングを順次相対移動させると共に、前記相対移動毎の前記判定信号の前記基準モデルに対する一致の度合いを示す指標を算出する指標算出工程と、前記一致の度合いが最大であることを示す指標に対応する相対移動に基づいて前記基準モデルに前記判定信号が同期する同期値を決定する同期値決定工程と、を備え、前記同期値で移動させた前記タイミングでの判定信号に基づいて前記判定を行うことを要旨とする。
上記課題を解決するノッキング判定装置は、内燃機関の燃焼サイクルに基づく物理量を示す信号としてサイクル毎に取得された各取得信号の特定のタイミングの信号状態に基づいて前記内燃機関のノッキングの有無を判定するノッキング判定装置であって、前記内燃機関の基準となる条件での動作に基づく前記取得信号を前記サイクル毎に基準信号として取得する基準信号取得部と、前記内燃機関の動作状態を判定するサイクルでの前記取得信号を判定信号として取得する判定信号取得部と、前記各基準信号の取得されたサイクル中の前記タイミングでの前記基準信号の集合に対する平均と分散とに基づいて基準モデルを作成するモデル作成部と、前記基準モデルの作成されたサイクル中の前記タイミングに対して、前記判定信号の取得されたサイクル中の前記タイミングを順次相対移動させると共に、前記相対移動毎の前記判定信号の前記基準モデルに対する一致の度合いを示す指標を算出する指標算出部と、前記一致の度合いが最大であることを示す指標に対応する相対移動に基づいて前記基準モデルに前記判定信号が同期する同期値を決定する同期値決定部と、を備え、前記同期値で移動させた前記タイミングでの前記判定信号に基づいて前記判定を行うことを要旨とする。
機器に周期的に生じる状態をサイクルごとに検出して取得信号とし、この取得信号に基づいて機器の状態を判定する。このとき、機器状態を判定するために得た取得信号からなる判定信号を、対比の基準として得た取得信号からなる基準信号と比較するとき、判定信号と基準信号との各サイクルのタイミングを一致(同期)させる必要がある。そこで、上記構成によれば、判定信号の基準信号に対するタイミングのずれが基準モデルに対する一致の度合いの高いときの相対移動距離が同期値として算出される。そして、この算出された同期値で判定信号のタイミングを移動させることで、比較する基準モデルとの関係においてサイクルが同期され、サイクル中のタイミングも一致するようになる。これにより、検出した信号に対して判定すべきタイミングをより正確に推定することができる。
また、信号に含まれる大きな変化などの特徴値に着目するのではなく、平均と分散に基づいて算出される基準モデルに対する一致の度合いを指標として算出する。このため基準モデルに含まれるノイズなどの「はずれ値」などの影響を相対的に低くすることができる。これによっても、検出した信号に対して判定すべきタイミングをより正確に推定することができる。
さらに、機器をノッキング判定装置とすれば、内燃機関から得られる各取得信号についてサイクル中のタイミングを同期させ、特定のタイミングにおけるノッキングの有無の状態を判定することができる。
上記機器状態判定装置において、前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの分散が大きいタイミングにおける一致の度合いよりも分散が小さいタイミングにおける一致の度合いを重視して算出する。
上記ノッキング判定装置において、前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの分散が大きいタイミングにおける一致の度合いよりも分散が小さいタイミングにおける一致の度合いを重視して算出する。
このような構成によれば、分散の小さい部分、つまり変動が小さく値が安定しているタイミングを重視して指標が算出されることから検出した信号について同期値の算出精度の向上が図られる。
上記機器状態判定装置において、前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号が取得されたときに定まるタイミングを含む所定の範囲内で順次相対移動させる。
上記ノッキング判定装置において、前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号が取得されたときに定まるタイミングを含む所定の範囲内で順次相対移動させる。
ある程度正常に作動している機器であれば、基準モデルに対して判定信号の取得されたサイクル中のタイミングが大きくずれることは少ない。よって、上記構成によれば、相対移動される範囲が、判定信号が取得されたときに定まるタイミングを含む所定の範囲内とされることから、相対移動にかかる負荷の軽減や、処理に要する時間の削減が図られる。
上記機器状態判定装置において、前記取得信号には、取得されたサイクル中のタイミングの目安となる同期信号が対応付けられており、前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号の前記同期信号のタイミングと前記基準モデルの前記同期信号のタイミングとを一致させたタイミングを含む所定の範囲で順次相対移動させる。
上記機器状態判定装置において、前記機器は内燃機関であり、前記サイクルは前記内燃機関の燃焼サイクルであり、前記同期信号は前記内燃機関の点火プラグへ電力が供給されることで得られる信号である。
上記ノッキング判定装置において、前記取得信号には、取得されたサイクル中のタイミングの目安となるイグニッションパルスに対応する信号が同期信号として対応付けられており、前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号の前記同期信号のタイミングと前記基準モデルの前記同期信号のタイミングとを一致させたタイミングを含む所定の範囲で順次相対移動させる。
取得信号に同期信号が含まれている場合、同期信号を目安に判定信号と基準モデルとを比較することが可能になるが、同期信号の精度が高くない場合もある。よって、上記構成によれば、同期信号を含む範囲に相対移動する範囲を設定することで、同期信号の精度が高くない場合でも、基準モデルに対して判定信号を判定すべきタイミングをより正確に推定することができる。
また、機器が内燃機関であれば、内燃機関から得られる各取得信号について取得されたサイクル中のタイミングを同期させ、特定のタイミングにおける運転状態を判定することができる。
上記機器状態判定装置において、前記モデル作成部は、前記基準信号のうち所定のタイミングからなる範囲に対応する基準モデルを作成し、前記指標算出部は、前記判定信号のうち前記所定のタイミングからなる範囲について前記基準モデルに対する前記指標を算出する。
上記ノッキング判定装置において、前記モデル作成部は、前記基準信号から前記燃焼サイクル中の所定のタイミング範囲に対応する基準モデルを作成し、前記指標算出部は、前記判定信号のうち前記所定のタイミング範囲について前記基準モデルに対する前記指標を算出する。
このような構成によれば、同期値を得るために必要とされる基準信号や判定信号の範囲が所定範囲に制限されるため、基準モデルの作成や指標の算出にかかる負荷の軽減や、処理に要する時間の削減が図られる。
上記機器状態判定装置において、前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの平均値のとき最大値となり、前記平均値から離れることに応じて小さくなるように算出し、前記同期値決定部は、前記指標の最大値を前記一致の度合いが最大であるものとする。
上記ノッキング判定装置において、前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの平均値のとき最大値となり、前記平均値から離れることに応じて小さくなるように算出し、前記同期値決定部は、前記指標の最大値を前記一致の度合いが最大であるものとする。
このような構成によれば、基準モデルが、平均値とそこからの離間、例えば分散に応じて定められる。これにより、一致の度合いによる指標の算出が好適に行えるようになる。
このような機器状態判定装置、機器状態判定方法、及びノッキング判定装置によれば、検出した信号に対して判定すべきタイミングをより正確に推定することが可能になる。
ノッキング判定装置を具体化した一実施形態について、ノッキング判定装置によりエンジンのノッキングを判定するときの各種機器との接続態様の一例を示すブロック図。 同実施形態のノッキング判定装置で取得される複数の音圧信号をクランク軸の角度に同期させたときの一例を示すグラフ。 同実施形態のノッキング判定装置で取得される複数の音圧信号を点火時期に同期させたときの一例を示すグラフ。 同実施形態のノッキング判定装置の概略構成を示すブロック図。 同実施形態のノッキング判定装置で取得される2つの音圧信号を点火時期を同期させて重ねた態様の一例を示すグラフ。 同実施形態のノッキング判定装置が行う基準モデル作成処理について各工程を実行の順に示すフローチャート。 図5に示す2つの音圧信号にフィルタ処理を施したときの一例を示すグラフ。 図7に示す音圧信号のうち基準信号である一つを絶対値化したときの一例を示すグラフ。 図8に示す基準信号の複数について平均化したときの一例を示すグラフ。 図9に示す基準信号の複数について、(a)はそれらの分散の一例を示すグラフ、(b)は指標算出に使う確率密度関数の一例を説明するグラフ。 図8に示す平均化されたグラフと、この平均値に対して確率毎の分散とを重ね合わせて示したグラフ。 同実施形態のノッキング判定装置が行う確率最大化処理について各工程を実行の順に示すフローチャート。 同実施形態のノッキング判定装置で取得される音圧信号のうち状態が判定される信号である判定信号の一例を示すグラフ。 同実施形態のノッキング判定装置が行うスコア算出処理について各工程を実行の順に示すフローチャート。 同実施形態のノッキング判定装置が判定信号のタイミングを複数の間隔で変化させたときのスコア算出処理で算出されるスコアの一例を示すグラフ。 同実施形態のノッキング判定装置が行うシフト量決定処理について各工程を実行の順に示すフローチャート。 ノッキング判定装置を具体化したその他の実施形態について、ノッキング判定装置によりエンジンのノッキングを判定するときの各種機器との接続態様の一例を示すブロック図。
以下、図1〜図16を参照し、機器状態判定装置、機器状態判定方法及びノッキング判定装置を具体化した一実施形態について説明する。内燃機関の一例である車両用のエンジン1の試験では、例えば点火タイミングの進角量の調整等の試験もしくは調整された点火タイミングの確認試験が行われる。これらの点火タイミングの試験においてノッキング判定装置が用いられる。ノッキングとは、エンジン1の気筒内において発生した異常燃焼により生じる圧力変動(衝撃波)が気筒の固有振動数で増幅されてエンジン1に大きな振動が発生する現象である。つまり、エンジン1には気筒内での燃料燃焼の際に発生する圧力変動に基づく振動が生じ、この振動を物理量として取得することができる。
本実施形態では、エンジン1の複数のサイクルにおける振動に基づく値を相互比較することよりノッキングが検出される。ここで、複数のサイクルにおける振動に基づく値を比較するためには、比較する各振動のサイクルの周期的なタイミングを相互に一致(同期)させる必要がある。具体的には、各サイクルにおいてクランク角度が同じタイミングの値同士を比較する。そこで、本実施形態では、ノッキングを判定する処理に先立ち、比較する複数のサイクルの振動を測定して得られた各取得信号の周期的なタイミングを同期させる処理を行う。本実施形態では、タイミングを同期させる技術の一例として、点火プラグ7に供給される電流を電流センサ3で取得して得たイグニションパルス(IP)の立ち上がりを示す信号(IP信号)を利用して、サイクル毎の取得信号のタイミングを一致(同期)させる技術について説明する。なお、以下では、エンジン1の回転速度は一定であることから各サイクルの長さが同じであり、取得されたサイクル中のタイミングのうちの一箇所を一致(同期)させることで各取得信号が同期する。
ところで、エンジン1に周期的に生じる振動、主に機械的な振動は、クランク角度に応じて変化する機器の作動状態に起因して生じるものが多い、すなわちクランク角度と相関性を有することが多い。また、IP信号は、点火プラグ7に接続される電線から容易に取得できるが、燃焼制御において点火タイミングが進角されることによって、クランク角度に対するタイミングが変化する。そのため、IP信号は取得が容易であるが、クランク角度ではなく、IP信号で取得信号を同期させるには、各サイクルでの取得信号のタイミング同期処理が必要になる。
以下では、サイクル毎の取得信号を同期させる処理の一例について詳細に説明する。なお、ノッキングに関する処理の一例についても簡単に説明する。
図1に示すように、ノッキング判定装置10は、データ収集装置5を介してエンジン1に関する物理量の変化に基づく情報を取得する。また、ノッキング判定装置10は、複数の取得信号に基づく値の比較により、ノッキング判定の対象とした取得信号(判定信号)がノッキングを示す信号であるか否かを判定するための演算を実行して、その演算結果をモニタ6等に出力する。
図1に示すように、試験対象のエンジン1は、車両100に搭載されている。エンジン1は、例えば、「吸入」、「圧縮」、「燃焼」及び「排気」の4行程を1サイクルとする4ストロークエンジンである。なお、試験対象のエンジン1は、車両100に搭載されない単独の状態でもよい。エンジン1には、点火装置8に接続された点火プラグ7が設けられ、点火装置8にはエンジンECU2が接続されている。点火プラグ7はその先端がエンジン1の気筒内に配置され、その基端が電線を介して点火装置8に電気的に接続される。点火装置8は、エンジンECU2から点火タイミング毎に受ける点火指示に基づき点火プラグ7に電流を供給する。エンジンECU2は、エンジン1の駆動を制御するエンジンコントロールユニットであって、CPU、ROM、RAM、その他の記憶装置を有するコンピュータを含み構成されている。エンジンECU2は、ROMや記憶装置に記憶されているプログラムをCPUで演算処理することで、エンジン1の駆動の制御に必要な各種情報をエンジンECU2の外部から取得しながら演算した点火指示などの出力によりエンジン1の駆動を制御する。エンジン1は、各サイクルにおいて同じクランク角度では、通常、同様の機械的な振動を生じる。よって、サイクル毎の取得信号における機械的な振動のタイミングを一致させるように、比較する取得信号の各タイミングをシフトさせることによって、サイクル毎の取得信号のタイミングが一致(同期)する。
エンジン1の近くには、音圧センサ4が設置されている。音圧センサ4は、エンジン1から発生する音を検出し、この検出した音に基づく音圧信号をデータ収集装置5に出力する。詳述すると、音圧センサ4は、エンジン1に発生する圧力変動に基づく物理量の一例である音圧を検出し、検出された音圧の大きさを示す音圧信号を生成する。つまり、音圧センサ4から出力される音圧信号には、クランク角度に相関性のある動作に基づく振動である、周期性を有する動作に基づく音圧が取得される。例えば、周期性を有する動作に基づく音圧としては、ピストンの上死点や下死点に対応する音、吸気弁や排気弁の開閉弁に対応する音、燃料の燃焼に関連して生じる音などが挙げられる。つまり、音圧センサ4から出力される音圧信号には、エンジン1の周期性を有する動作に基づく音が含まれる。また、エンジン1にノッキングが発生しているとき、音圧センサ4から出力される音圧信号には、エンジン1の周期性を有する動作に基づく音に加えて、ノッキングに相関のある音も含まれる。
点火プラグ7と点火装置8とを接続する電線には、点火タイミングにおいて点火プラグ7に供給される電流(イグニッションパルス)の有無を検出する電流センサ3が設けられている。また、電流センサ3は、電流の検出結果をデータ収集装置5に出力する。よって、データ収集装置5には、電流センサ3による電流の検出結果が、通常、1回の燃焼サイクルにおいて1回、エンジン1の点火タイミングとして入力される。
データ収集装置5は、音圧センサ4からの音圧信号を入力してA/D変換する。また、データ収集装置5は、電流センサ3により検出された電流をIP信号として入力する。そして、データ収集装置5は、連続入力される音圧信号から、IP信号に基づいてエンジン1の1サイクル分取得し、これをサイクル毎の取得信号とする。よって、データ収集装置5は、単位時間当たりの回転速度に応じた数、回転速度が3000r/minであれば一分間に1500個の取得信号を作成する。また、データ収集装置5は、作成した取得信号にIP信号の情報を関連付ける。そして、データ収集装置5は、IP信号が関連付けられた取得信号をノッキング判定装置10に出力する。なお、データ収集装置5は、生成した取得信号を一時的に保持したり、一旦蓄えてからノッキング判定装置10に出力してもよい。
ところで、データ収集装置5は、エンジン1に常設ではなく、ノッキングを測定する必要の生じたエンジン1に対して随時取り付けられる。そのため、データ収集装置5は、エンジンECU2に保持される情報を容易に取得できるものではない。データ収集装置5は、エンジンECU2から情報を取得する場合、エンジンECU2に適合する接続装置などを準備し、この装置を介して情報を収集する必要がある。一方、エンジン1の外部に露出されている点火プラグ7に接続される電線に流れる電流をIP信号として取得することは、電線に測定用のクランプを取り付けることなどで比較的容易に行える。
なお、以降の説明では、音圧信号は、「吸入」、「圧縮」、「燃焼」及び「排気」の4行程からなる1サイクルのうちの一部である「圧縮」行程の一部の範囲もしくは全部の範囲を切り出したものとして説明をする。つまり、1サイクルの一部からなる音圧信号に基づいて、サイクル毎の音圧信号のタイミングを一致(同期)させる処理を行う。例えば、「燃焼」行程で生じるノッキングの有無を判定するとき、「燃焼」行程の直前の「圧縮」行程に基づいて音圧信号のタイミングを一致(同期)させる。なお、タイミングの同期に用いられる音圧信号は、「吸入」、「圧縮」、「燃焼」及び「排気」の4行程からなる1サイクルのうちの一部を切り出したものであっても、全部であってもよい。また、1サイクルのうち切り出される一部は、「圧縮」行程以外の行程、「吸入」、「燃焼」及び「排気」の各行程であってもよいし、いずれか複数の行程を含んでいてもよい。
データ収集装置5に収集されるサイクル毎の音圧信号とIP信号との関係について、図2及び図3を参照して説明する。
まず、図2を参照し、サイクル毎の音圧信号と、クランク角度に同期しているクランク軸同期信号Tcとの関係について説明する。
図2に示すように、音圧センサ4から進角量の異なる音圧信号が取得される。例えば、点火タイミングの進角量が「0」の音圧信号Laと、第1進角量の音圧信号Lbと、第2進角量の音圧信号Lcとが取得される。このとき、サイクル毎の各音圧信号La,Lb,Lcのタイミングを、エンジンECU2から取得したクランク軸同期信号Tcに基づいて一致(同期)させると、所定のクランク角度において生じる特定の音N1の発生タイミングT0が一致(同期)する。一方、例えば、電流センサ3で取得されたIP信号から推定される推定同期信号Tipは、進角量の影響により音圧信号毎に取得されたサイクル中におけるタイミングが相違している。なお、「所定のクランク角度において生じる特定の音」とは、サイクル毎に、同じクランク角度でエンジン1から生じる相対的に大きいなど特徴的な音であって、その音の発生原因は特に限定されない。よって、エンジン1の個体差、測定時期、又は、回転速度や負荷の有無などの各種運転条件によって適切な音を、同期処理用の特定の音として任意に選択することができる。
図3は、音圧センサ4から取得した、各音圧信号La,Lb,Lcを、IP信号に基づき推定された推定同期信号Tipで一致(同期)させた例を示す。推定同期信号Tipは進角量の影響を受けてクランク軸同期信号のタイミングがタイミングTc1,Tc2,Tc3のようにずれるため、同一のクランク角度で生じている特定の音N1が相違する発生タイミングT0,T1,T2で得られる。すなわち、クランク軸同期信号Tcの取得に代えて、IP信号に基づく推定同期信号Tipで各音圧信号La,Lb,Lcを比較しようとするとき、サイクル毎のタイミングに進角量に起因するずれが生じる。
例えば、図3に示すように、音圧信号Laと音圧信号Lbとの間では特定の音N1のタイミングが「T0−T1」だけずれる。また、音圧信号Laと音圧信号Lcとの間では特定の音N1のタイミングが「T0−T2」だけずれる。つまり、推定同期信号Tipでタイミングを同期させるためには、音圧信号Laに対する各音圧信号Lb,Lcのタイミングのずれを、各音圧信号Lb,Lcの同期値としての移動量(シフト量)として算出する。そして、この算出した移動量で各音圧信号Lb,Lcのサイクルのタイミングを補正することで、推定同期信号Tipに基づいてタイミングが特定されていた各音圧信号La,Lb,Lcの各タイミングを一致(同期)させることができるようになる。
次に、ノッキング判定装置10について説明する。
図4に示すように、ノッキング判定装置10は、データ収集装置5から入力した取得信号を同期させる同期処理を実行し、同期した各取得信号に基づく値の比較によってノッキング判定処理を行う。
ノッキング判定装置10は、CPU、ROM、RAM、その他の記憶装置を有するコンピュータを含み構成されている。ノッキング判定装置10は、ROMや記憶装置に記憶されているプログラムをCPUで演算処理することにより、所定の処理を行う。本実施形態では、ROMや記憶装置に記憶されているプログラムをCPUで演算処理することにより、取得信号の同期処理やノッキング判定処理に関する各演算処理を実行する。なお、ノッキング判定装置10は、取得信号の同期方法やノッキング検出方法を実行するプログラムを有するパーソナルコンピュータ(PC)等であってもよい。
ノッキング判定装置10は、データ収集装置5から出力される取得信号と、その取得信号に関連付けられたIP信号とを取得する。取得信号は、エンジン1に発生する機械的な振動に基づく物理量に相当する。取得信号には、1サイクル中の一部区間又は全区間にスペクトル(周波数成分)が含まれている。なお、ノッキング音は「燃焼」行程を含む区間に比較的大きな音として含まれ、またスペクトルにも特徴量として現れる。
図4に示すように、ノッキング判定装置10は、取得信号などを保持する記憶部20と、同期処理に必要な信号を記憶部20に保持させる管理部60と、記憶部20から同期処理に必要な信号を選択する信号同期部30とを備える。また、ノッキング判定装置10は、記憶部20からノッキング判定処理に必要な信号を選択する信号選択部39と、取得信号のスペクトルを算出するスペクトル算出部40と、取得信号のバイスペクトルを算出するバイスペクトル算出部41と、判定信号がノッキングを示す信号であるか否かを判定するノッキング判定部50とを備えている。
記憶部20は、ノッキング判定装置10を構成する記憶装置の一部または全部から構成されており、IP信号や、取得信号より選択される基準信号や判定信号などを記憶したり、削除させたりできるようになっている。
記憶部20には、取得信号から選択される基準信号に関する記憶領域である基準信号領域201と、基準信号に基づいて算出される基準モデルに関する記憶領域である基準モデル領域202とが設けられている。また、記憶部20には、ノッキング判定を行うものとして取得信号から選択される判定信号に関する記憶領域である判定信号領域203が設けられている。さらに、記憶部20には、基準モデルに対する判定信号の一致の度合いに関する指標としての指標値の記憶領域である指標値領域204と、基準モデルに判定信号を同期させるための移動量としてのシフト量に関する記憶領域であるシフト量領域205とが設けられている。また、記憶部20には、ノッキング判定処理に必要な各種の信号、例えば、判定信号に基づく値に対し基準となる対象信号に基づく値に関する値なども保持される。
管理部60は、ノッキング判定装置10が入力した取得信号にIP信号を関連付けるとともに、所定の選択を行い記憶部20に記憶させる。
管理部60は、取得信号から基準モデルを作成するための基準信号を取得する基準信号取得部61と、取得信号から判定信号を取得する判定信号取得部62と、記憶部20に記憶されている基準信号や判定信号等の整理を行うデータ整理部63とを備える。
基準信号取得部61は、基準信号取得条件が成立していることを条件にノッキング判定装置10に入力された取得信号を基準信号として取得する(基準信号取得工程)。つまり、基準信号取得部61は、エンジン1の基準となる条件での動作に基づく取得信号をサイクル毎の基準信号として取得する。基準信号取得条件は、基準信号の取得が指示されていること、かつ、基準信号の取得に適した運転条件(以下、基準運転条件)でエンジン1が運転されていることを条件に含む。例えば、基準信号取得は、外部からの指示やプログラムなどにより指示される。また例えば、基準運転条件は、点火タイミングの進角量が「0」であり、回転速度が所定の回転速度で一定であり、負荷条件も所定の負荷条件で一定の条件である。なお、基準運転条件は、基準モデルが生成可能であれば、1つの条件で定められるものであっても、複数の条件が組み合わされて定められるものであってもよい。
そして、基準信号取得部61は、IP信号に基づいて特定されたサイクル毎の取得信号をそれぞれ基準信号として取得(選択)し、この取得した基準信号を記憶部20の基準信号領域201に保持させる。
判定信号取得部62は、判定信号取得条件が成立していることを条件にノッキング判定装置10に入力された取得信号を判定信号として取得する(判定信号取得工程)。判定信号取得部62は、エンジン1の動作状態を判定するサイクルでの取得信号を判定信号として取得する。判定信号取得条件は、信号同期処理が必要とされていること、かつ、エンジン1の点火タイミングが変化することを条件に含む場合を例示する。同期処理が必要とされる条件は、例えば、ノッキング判定処理が指示されていることである。この指示は、外部からの指示、プログラムによる指示どちらでもよい。また、基準運転条件に対して、エンジン1の点火タイミングは変化するが、回転速度と負荷条件は変化しない場合を例示する。
そして、判定信号取得部62は、IP信号に基づいて特定された1サイクル分の取得信号を判定信号として取得(選択)し、この取得した判定信号を記憶部20の判定信号領域203に保持させる。
データ整理部63は、記憶部20に記憶されている基準信号、基準モデル、判定信号、指標値及びシフト量などを定められた条件に応じて整理する。例えば、判定信号、スコア値及びシフト量はそれぞれ、新たな判定信号の設定に応じて削除する。また例えば、新たな基準信号の取得が指示されると、基準信号、基準モデル、判定信号、指標値及びシフト量を削除する。
図5を参照し、基準信号取得部61と判定信号取得部62とが取得する基準信号L1と判定信号L2との関係について説明する。
基準信号取得部61は、進角量が「0」である基準信号L1を複数取得し、判定信号取得部62は、進角量が所定の値に変更されている判定信号L2を1つ取得する。このとき、基準信号L1も判定信号L2もIP信号に基づいて判定されるサイクル毎に取得信号として取得されているため、進角量の相違に応じて各サイクルの各タイミングにずれが含まれる。
図4に示す信号同期部30は、基準信号L1に基づき基準モデルを作成する。また、信号同期部30は、作成した基準モデルと判定信号L2を比較し、判定信号L2の基準モデルに対する移動量(シフト量)を算出する。そこで、信号同期部30は、基準モデルを作成するモデル作成部31と、基準モデルと判定信号L2との一致の度合いである指標(指標値)を算出する指標算出部35と、指標に基づいて移動量(シフト量)を決定する同期値決定部としてのシフト量決定部36とを備える。
続いて、ノッキング判定処理を行う構成の一例について簡単に説明する。
信号選択部39は、対象信号及び判定信号を選択する所定の条件に基づいて、取得信号から対象信号や判定信号を選択する。また、信号選択部39は、対象信号や判定信号に含まれる音圧信号の決定された角度範囲(切出角度範囲)内の音圧信号を切り出す。
スペクトル算出部40は、信号選択部39により選択された対象信号や判定信号に対して離散フーリエ変換を行い、周波数成分(スペクトル)を算出する。離散フーリエ変換は、例えば、離散フーリエ変換を高速に計算する高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)により行われる。
バイスペクトル算出部41は、スペクトル算出部40が算出した周波数成分からスペクトルに基づく値としてのバイスペクトルを算出する。ここで、時刻tにおける信号選択部39が選択した音圧信号をx(t)とする。この音圧信号x(t)にFFT処理を施すと、周波数fを変数とするフーリエ係数X(f)が算出される。このフーリエ係数X(f)に基づくバイスペクトルB(f,f)は下記の式(1)で示される。バイスペクトルB(f,f)は、スペクトルの3乗積である。
ここで、f,fは周波数、*は複素共役を表している。
ノッキング判定部50は、判定信号がノッキングを示す信号であるか否かを判定する。
ところでノッキングは、気筒内の一種の共振現象であり、ノッキングが発生すると気筒内に衝撃波が発生し、その衝撃波に起因してエンジンから発せられる振動や音には、その気筒の、複数の固有振動数(共振周波数)の成分とそれらの高調波成分(特に2倍の周波数成分)が含まれる。バイスペクトルでf=fのバイスペクトルは、各周波数における2次の調和成分の大きさを反映している。
エンジンの固有振動数(共振周波数)fp,qは、下記の式(2)で示される。
ただし、Cは音速、Dはボア径、p,qは振動モード、Ρp,qは振動モード(p,q)における定数である。例えば、振動モード(p,q)が(1,0)モードのときP1,0=1.841である。つまりノッキング判定処理では、取得信号の全周波数領域を対象にするのではなく、各振動モードの固有振動数とその周辺や高調波とその周辺を監視することでノッキング有無の判定が適切になされるようになる。
ノッキング判定部50は、複数の対象信号の平均と分散共分散行列を算出する統計パラメータ算出部51と、算出された統計パラメータを用いて対象信号や判定信号を正規化する正規化部52とを備える。また、ノッキング判定部50は、正規化された対象信号に基づいてノッキング判定用の判定値を算出する判定値算出部53と、ノッキング判定用の判定値と正規化した判定信号を比較する比較部54とを備える。
まず、ノッキング判定部50は、バイスペクトル算出部41で算出されたバイスペクトルB(f,f)を正規化する。
統計パラメータ算出部51は、全ての対象信号のバイスペクトルの分布が多次元確率分布であると仮定して、全ての対象信号のバイスペクトルのばらつきによる平均と分散共分散とを統計パラメータとして推定(算出)する。例えば、複数の対象信号の各々で算出した振動モード別の特徴量から絶対値を算出し、複数の対象信号に対する平均値及び分散共分散行列を算出する。この平均値及び分散共分散行列を使用することで、複数の対象信号に対するマハラノビス距離を算出できる。
正規化部52は、対象信号や判定信号のバイスペクトルについてマハラノビス距離を算出する。マハラノビス距離の算出に用いられる分散共分散行列は、バイスペクトルの各周波数成分の平均からの偏差の積の平均値である共分散を配列した行列であることから、マハラノビス距離を算出することによって多次元において正規化が行われる。
正規化部52は、判定値算出処理時は、複数の対象信号のバイスペクトルの全てについて複数の対象信号の平均値及び分散共分散行列を用いマハラノビス距離を算出する。そして、これら算出されたマハラノビス距離に基づいて、ノッキング判定に用いる判定値が算出される。
正規化部52は、判定処理時には、判定信号のバイスペクトルについて、複数の対象信号に対する平均値及び分散共分散行列を用いマハラノビス距離を算出する。
判定値算出部53は、対象信号のバイスペクトルから得られた正規化後の集合と、判定信号のバイスペクトルから得られた正規化後の値との乖離の度合いを判定する判定値を算出する。ここで、複数の対象信号のバイスペクトルから得られた正規化後の集合は、各対象信号のバイスペクトルについて算出したマハラノビス距離の集合である。また、判定信号のバイスペクトルから得られた正規化後の値は、判定信号のバイスペクトルについて算出したマハラノビス距離の値である。
判定値算出部53は、複数の対象信号に対して得られた各マハラノビス距離に対してマージンを有するように判定値を算出する。こうして算出された判定値が、判定信号がノッキングを示す信号であるか否かの判定に用いられる。
比較部54は、判定信号に基づくマハラノビス距離を判定値算出部53で算出された判定値と比較することで、判定信号がノッキングを示す信号で有るか否かを判定する。比較部54は、判定信号に基づくマハラノビス距離の値が判定値よりも大きければ、判定信号がノッキングを示す信号であると判定する。逆に、比較部54は、判定信号に基づくマハラノビス距離の値が判定値以下であれば、判定信号がノッキングを示す信号ではないと判定する。
次に、図6〜図16を参照し、ノッキング判定装置10における基準モデルと判定信号との取得されたサイクル中のタイミング同期処理について説明する。なお、本実施形態では、エンジン1の回転速度が一定に保たれている場合について例示する。
まず、図6〜図11を参照し、ノッキング判定装置10による基準モデルの作成処理(モデル作成工程)について説明する。この基準モデルの作成処理は、ノッキング判定処理の開始に先立ち行われる。
図6〜図11に示すように、基準モデルの作成処理が開始されると、信号同期部30のモデル作成部31は、記憶部20から複数サイクル分の基準信号を取得し(ステップS10)、取得した基準信号から同期処理に利用するタイミングの範囲、例えば「圧縮」行程に対応する範囲D1(図5参照)を切り出す処理を行う(ステップS11)。信号同期部30のモデル作成部31は、基準信号L1(図5参照)に対して所定の前処理を行う(ステップS12)。例えば、前処理として、周波数フィルタ処理と値の絶対値化を行う。周波数フィルタ処理では、基準信号L1を、高周波数を透過させるハイパスフィルタを通過させて信号L11(例えば、図7の範囲D1の区間)を得る。また、値の絶対値化では、通過させた信号L11の振幅の中心を「0」とし、負側の振幅を正側に配置させて絶対値信号L12(図8参照)を得る。そして、ここまでの処理が複数の基準信号L1に対して行われる。なお、範囲D1を切り出す処理(ステップS11)は、前処理(ステップS12)の後などに行ってもよい。
前処理が終了すると、モデル作成部31は、複数の基準信号L1から得られた複数の絶対値信号L12に基づいて平均(μ)を算出する(ステップS13)とともに、分散(σ)を算出する(ステップS14)。
図9に示すように、平均は、各絶対値信号L12の各タイミングの値に基づいて、範囲D1に含まれるタイミング毎に算出される平均値L13である。つまり、平均値L13は、特定のタイミングにおける各絶対値信号L12の値の集合に対して算出される平均値を、範囲D1の区間のそれぞれのタイミングに対して算出したものである。
図10に示すように、分散は、各絶対値信号L12の各タイミングの値に基づいて、範囲D1に含まれるタイミング毎に算出される分散L14(図10(a)参照)である。つまり、分散L14は、特定のタイミングにおける各絶対値信号L12の値の集合に対して算出される確率分布(図10(b)参照)におけるσの大きさを、範囲D1の区間のそれぞれのタイミングに対して算出したものである。例えば、所定の分散kσ(k:任意の定数)は、ばらつき(標準偏差)の小さいタイミングでは小さく、ばらつき(標準偏差)の大きいタイミングでは大きくなる。
図11に示すように、平均と分散とが算出されると、モデル作成部31は、平均と分散により基準モデルを作成する(ステップS15)。基準モデルは、平均値L13と、標準偏差L14a,L14b,L14cなどから構成される。そして、この基準モデルが、判定信号の基準モデルに対するタイミングのずれを示す移動量(シフト量)の算出に用いられる。
基準モデルの一例は、以下の式(3)で表される。
但し、Pは同時確率、pは正規分布の確率密度関数、xは判定信号、μは基準モデルの平均、σは基準モデルの分散、tは時刻。また、Xはxを要素とする行列を、Σはσを要素とする行列を、Mはμを要素とするベクトルをそれぞれ表す。
続いて、図12〜図16を参照し、ノッキング判定装置10による確率最大化処理について説明する。この確率最大化処理は、基準モデル作成処理などに続いて開始される。
ところで本実施形態では、基準モデルの分散が小さい部分を重視してスコアリングを行う。例えば、図11において、範囲D1のうち、分散の大きい部分に対する比較結果よりも、分散の小さい部分に対する比較結果を重視したスコアリングが式(3)により行われる。すなわち、上記式(3)を用いてスコアリングを行うことで分散が小さい部分を重視したスコアリングが行えるようになる。換言すると、基準モデルに含まれる分散の大きい部分の影響を小さくすることができる。これに対し、従来の技術、例えば、相互相関によるスコアリングは、大きな値が重視されるスコアリングであるため、大きな値が重視されて外乱に弱く、強度の変動が大きい音に対して一致判定の精度が高められない。また例えば、二乗誤差によるスコアリングも、大きな値の一致度を重視したスコアリングであるため、基準モデルに含まれるはずれ値の影響が大きくなり、やはり一致判定の精度が高められない。
確率最大化処理が開始されると、信号同期部30の確率最大化部34は、判定信号L2(図5参照)を取得し(ステップS20)、判定信号のうち同期処理に用いられるタイミングの部分を切り出し(ステップS21)、前処理を行う(ステップS22)。判定信号は、記憶部20の判定信号領域203から取得される。なお、上述した基準モデル作成処理に対し、比較するタイミングの切り出しは、処理の対象が基準信号L1から判定信号L2に変更されたものである。また、前処理は、処理の対象が基準信号L1から判定信号L2に変更されたものであり、例えば、前処理として、周波数フィルタ処理により信号L21(図7参照)を得て、値の絶対値化により絶対値信号L22(図13参照)を得る。
次に、信号同期部30の確率最大化部34は、指標算出処理(ステップS23)を行う。指標算出処理では、基準モデルに対する判定信号の一致の度合いを示す指標を判定信号をシフト範囲H1の範囲内で変化させながら算出する。そして、信号同期部30の確率最大化部34は、シフト量決定処理(ステップS24)を行う。シフト量決定処理では、算出された指標が最大となる判定信号のタイミングの変化量(シフト量)を判定信号のシフト量として決定する。そして、確率最大化処理が終了される。
図14及び図15を参照し、指標算出処理(指標算出工程)とシフト量決定処理(同期値決定工程)とについて詳述する。まず、判定信号は、そこに関連付けられている推定同期信号Tipが基準モデルに関連付けられている推定同期信号Tipに一致される。
図14に示すように、指標算出処理(ステップS23)が実行されると、確率最大化部34の指標算出部35は、シフト量に初期値を設定する(ステップS30)。シフト量の初期値は、判定信号の推定同期信号Tipを中心にしたとき、判定信号をシフト(移動)させるシフト範囲H1「−α°」から「+α°」までの間で特定の値が設定される。例えば、シフト量の初期値として、シフト範囲H1の最小値「−α°」が選択される。確率最大化部34の指標算出部35は、設定されたシフト量で判定信号のタイミングをシフト(移動)させるシフト処理を行う(ステップS31)。シフト処理では、判定信号のタイミングのうち比較される全てのタイミングが、例えば判定信号の推定同期信号Tipのタイミングが、設定されたシフト量だけ基準モデルに対してシフト(移動)される。そして、確率最大化部34の指標算出部35は、基準モデルとシフト量だけシフト(移動)した判定信号とを比較し(ステップS32)、このシフト量における指標値を算出す(ステップS33)。
ここで、指標値について説明する。指標値は、基準モデル(図11参照)に対応するシフトされた判定信号の各タイミングにおける各スコアが累積された値として算出される。判定信号の各タイミングにおけるスコアは、そのタイミングにおける基準モデルの平均値に近いほど大きく、基準モデルの平均値から離れるほど小さく算出される。例えば、図10(b)に示すように、確率密度関数に基づく正規分布における平均と分散における相対尤度がスコアとして用いられる。そして、判定信号に算出された、対象とする範囲の全タイミングのスコアを加算して指標値を算出する。
指標値が算出されると、確率最大化部34の指標算出部35は、シフト量と指標値とを記憶部20の指標値領域204に保持し(ステップS34)、シフト量を更新する(ステップS35)。シフト量は予め定められたステップ量で更新される。ステップ量は、同期精度と処理時間から適切なステップ量を決定する。シフト量が更新されると、確率最大化部34の指標算出部35は、更新されたシフト量がシフト範囲H1の範囲内にあるか否かを判定する(ステップS36)。つまり、シフト量がシフト範囲H1の最小値「−α°」以上、かつ、最大値「+α°」以下であるとき、シフト範囲H1の範囲内にある旨が判定される。シフト量がシフト範囲H1の範囲内にあると判定された場合(ステップS36でYES)、確率最大化部34の指標算出部35は、処理をステップS31に戻すとともに、ステップS31以下の処理を実行する。これにより、シフト範囲H1の範囲内において判定信号のタイミングのシフト量がステップ量だけ変更される毎に指標値が算出される。
一方、シフト量がシフト範囲H1の範囲内にないと判定されると(ステップS36でNO)、信号同期部30は、スコア算出処理を終了し、シフト量決定処理を開始させる。
図15のグラフL16は、判定信号のタイミングをシフト範囲H1の範囲内でステップ量毎に移動し算出された指標値の一例を示す。例えば、判定信号がシフト範囲H1を移動されたとき、シフトされた量に応じて算出される指標値が異なる。グラフL16では、シフト範囲H1の端である「−α°」や最大値「+α°」に近いタイミングにシフトされたときの指標値よりも、シフト範囲H1の中央に近いタイミングにシフトされたときの指標値の方が相対的に大きく得られる例である。そして、グラフL16では、シフト量が「β°」のとき、指標の最大値「Smax」となっている。
スコア算出処理が終了することにより、シフト量決定処理が開始される。
図16に示すように、シフト量決定処理(ステップS24)が実行されると、確率最大化部34のシフト量決定部36は、指標値の最大値を選択する(ステップS40)。指標値の最大値は、記憶部20の指標値領域204から最大のものが選択される。例えば、図15のグラフL16に示す指標値が指標値領域204に保持されているとき、指標の最大値「Smax」が選択される。そして、確率最大化部34のシフト量決定部36は、選択された指標の最大値に対応するシフト量を選択する(ステップS41)。すなわち、選択された指標に対応付けられているシフト量が取得されている。例えば、図15のグラフL16に示す指標の最大値「Smax」に対応付けられているシフト量「β°」が選択される。
シフト量の決定の一例は、以下の式(4)で表される。
但し、Pは同時確率、pは正規分布の確率密度関数、xは判定信号、μは基準モデルの平均、σは基準モデルの分散、tは時刻、sはシフト量、Shiftは選択されるシフト量。
上記式(4)は、基準モデルの範囲が判定信号から切り出された範囲以上であるときに適用されるが、基準モデルの範囲が判定信号から切り出された範囲未満であるときには下記式(5)が適用される。
シフト量が選択されると、確率最大化部34のシフト量決定部36は、選択したシフト量が適正か否かを判定する(ステップS42)。
選択したシフト量が適正であると判定された場合(ステップS42でYES)、確率最大化部34のシフト量決定部36は、選択したシフト量を判定信号に対するシフト量として決定する(ステップS43)。これにより、選択したシフト量が、判定信号に対するシフト量として記憶部20のシフト量領域205に保持される。そして、シフト量決定処理が終了される。
一方、選択したシフト量が適正ではないと判定された場合(ステップS42でNO)、確率最大化部34のシフト量決定部36は、選択したシフト量を判定信号に対するシフト量として決定しない(ステップS44)とともに、シフト量決定処理を終了する。
本実施形態によれば、筒内圧が取得されないときであれ、取得された音圧信号とIP信号とに基づいて複数の取得信号を同期させるシフト量が算出される。そして、ノッキング判定装置は、複数の取得信号をそれぞれ算出されたシフト量でシフトさせることで、複数の取得信号のタイミングを同期させ、それら取得信号に基づきノッキングの有無を判定することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載の効果を奏することができる。
(1)エンジン1に周期的に生じる状態をサイクルごとに検出して取得信号とし、この取得信号に基づいてエンジン1の状態を判定する。このとき、エンジン1の状態を判定するために得た取得信号からなる判定信号を、対比の基準として得た取得信号からなる基準信号に比較するとき、判定信号と基準信号との各サイクルのタイミングを一致(同期)させる必要がある。そこで、本実施形態では、判定信号の基準信号に対するタイミングのずれが基準モデルに対する一致の度合いの高いときの相対移動からシフト値として算出した。そして、この算出したシフト値で判定信号のタイミングを移動させることで、比較する基準モデルとの関係においてサイクルが同期され、取得されたサイクル中のタイミングも一致するようになる。これにより、検出した信号に対して判定すべきタイミングをより正確に推定することができる。
また、信号に含まれる大きな変化などの特徴値に着目するのではなく、平均と分散とに基づいて算出される基準モデルに対する一致の度合いを指標として算出する。このため基準モデルに含まれるノイズなどの「はずれ値」などの影響を相対的に低くすることができる。これによっても、検出した信号に対して判定すべきタイミングをより正確に推定することができる。
(2)分散の小さい部分、つまり変動が小さく値が安定しているタイミングを重視して指標が算出されることから検出した信号について同期値の算出精度の向上が図られる。
(3)取得信号に推定同期信号Tipが含まれていることから、推定同期信号Tipを目安に判定信号と基準モデルとを比較することが可能になるが、推定同期信号Tipの精度が高くない場合もある。そこで、推定同期信号Tipを含むシフト範囲H1に相対移動量を設定することで、同期信号の精度が高くない場合でも、基準モデルに対して判定信号を判定すべきタイミングをより正確に推定することができる。
(4)指標を、基準モデルの平均値のときに最大値、平均値から離れると小さくなるように算出することから、基準モデルが、平均値とそこからの離間、例えば分散に応じて定められる。これにより、一致の度合いによる指標の算出が好適に行える。
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、判定信号に対するノッキングの有無の判定が、信号選択部39、スペクトル算出部40、バイスペクトル算出部41、及び、ノッキング判定部50による処理を通じて行われる場合について例示した。しかしこれに限らず、判定信号に対してノッキングの有無を判定することができるのであれば、その他の判定方法によってノッキングの有無が判定されてもよい。例えば、最も簡単に、判定信号の特定のタイミングに含まれる信号の大きさやスペクトルの状態からノッキングの有無を判定してもよい。また、上述した信号選択部39、スペクトル算出部40、バイスペクトル算出部41、及び、ノッキング判定部50による処理のうち、バイスペクトル算出部41による処理を割愛したり、ノッキング判定部50における処理を変更可能な範囲で変更し、ノッキングを判定するようにしてもよい。
・上記実施形態では、シフト量決定処理は、選択したシフト量が適正であるか否かを判定する処理(ステップS42〜S44)を含む場合について例示した。しかしこれに限らず、シフト量決定処理は選択したシフト量が適正であるか否かを判定する処理を含まず、シフト量を選択する処理(ステップS41)で終了してもよい。
・上記実施形態では、エンジン1に発生する圧力変動に基づく物理量を空気の振動である音として音圧センサ4によって音圧信号を取得する場合について例示した。しかしこれに限らず、内燃機関に発生する圧力変動に基づく物理量は、空気の信号である音に限られるものではなく、ノッキングなどの判定対象となる現象に相関のある物理量であれば、内燃機関の加速度(振動)でもよい。
例えば、図17に示すように、エンジン1に加速度センサ9を設け、この加速度センサ9からの加速度に関する信号をデータ収集装置5に入力して取得信号を生成させてもよい。つまり、エンジン1から得られる様々な物理量をノッキング判定処理に用いることができる。
・上記実施形態では、比較部切出し(ステップS11)の処理により、基準モデルを基準信号のサイクルの一部である範囲D1に対して算出する場合について例示した。しかしこれに限らず、基準モデルを基準信号のサイクルの全部や範囲D1と相違する範囲に対して算出してもよい。これにより、サイクルの全ての部分や範囲D1と相違する範囲に対して判定信号をシフトさせて同期値を算出することができるようになる。
・上記実施形態では、比較部切出し(ステップS21)の処理により、判定信号のサイクルからその一部の範囲D1を切り出す場合について例示した。しかしこれに限らず、判定信号のサイクルの全部や範囲D1と相違する範囲を基準モデルとの比較に用いてもよい。これにより、判定信号のサイクルのどの部分であっても基準モデルに比較させることができるようになる。
・上記実施形態では、確率最大化処理において、判定信号に対応付けられた推定同期信号Tipと基準モデルに対応付けられた推定同期信号Tipとを一致させた上でシフト範囲H1を設定する場合について例示した。しかしこれに限らず、基準モデルと判定信号とがどこかのタイミングで同期することが明らかであれば、推定同期信号なし、又は使用しなくても基準モデルに対する対象信号のシフト範囲を基準モデルに重なりが生じる全範囲とすることで、指標の最大値が算出される。よって判定信号に対するシフト量を取得することができる。
・上記実施形態では、シフト範囲H1の「0」位置(基準位置)に対して等しい距離にシフト範囲H1を区画する最大値「+α°」と最小値「−α°」が設定される場合について例示した。しかし、シフト範囲を区画する最大値や最小値は、判定信号のどのタイミング(位置、基準位置)を基準にするかによっても影響を受けることから、最大値と最小値との距離は異なっていてもよい。これにより、指標の最大値が得られる可能性の高いタイミングのある方向へシフト範囲を設定することができる。
・上記実施形態では、シフト範囲H1を定める場合について例示した。しかしこれに限らず、シフト範囲を定めなくてもよい。シフト範囲を定めず、判定信号を基準モデルの全範囲にシフトさせることにより、指標の最大値が算出される。これにより、判定信号に対するシフト量を取得できる。
・上記実施形態では、エンジン1の回転速度は一定であることから各サイクルの長さが同じであり、取得されたサイクル中のタイミングのうちの一箇所が一致(同期)すれば各取得信号(基準信号及び判定信号)が同期する場合について例示した。しかしこれに限らず、各取得信号のサイクルの長さが異なっていても、不足するデータを補完したり、過剰なデータを間引く、公知のデータ処理技術を用い、各取得信号の長さを同じにしてもよい。
・上記実施形態では、機器状態判定装置がノッキング判定装置である場合について例示した。つまり、判定信号と基準モデル(対象信号)とを同期させる処理をエンジン1のノッキング判定に先立ち行う場合について例示した。しかしこれに限らず、機器状態判定装置がノッキング判定装置以外の異常を判定する装置であってもよい。
つまり、図17に示すように、機器状態判定装置11が、エンジンの運転中に生じる異常を含む各種状態のいずれを判定する装置であるとしても、判定信号と基準モデルとを同期させる必要があれば、取得した取得信号を同期させるようにしてもよい。これにより、機器状態判定装置は、エンジンから得られる周期的な取得信号に対して判定すべきタイミングがより正確に推定されて、取得信号に基づくエンジンの運転状態の判定がより適切に行える。
また、機器状態判定装置は、エンジン以外の機器の状態を測定する装置であってもよい。すなわち、機器状態判定装置は、エンジンではなくとも、周期性のある動作を伴う機器について、その動作中に生じる異常を含む各種状態の判定するとき、取得した各取得信号を同期させてもよい。これにより、機器状態判定装置は、周期性のある動作を伴う機器の周期性のある動作に基づく物理量を示す取得信号に対して、判定すべきタイミングがより正確に推定されて、取得信号に基づく機器の運転状態の判定がより適切に行える。
1…エンジン、2…エンジンECU、3…電流センサ、4…音圧センサ、5…データ収集装置、6…モニタ、7…点火プラグ、8…点火装置、9…加速度センサ、10…ノッキング判定装置、11…機器状態判定装置、20…記憶部、30…信号同期部、31…モデル作成部、34…確率最大化部、35…指標算出部、36…シフト量決定部、39…信号選択部、40…スペクトル算出部、41…バイスペクトル算出部、50…ノッキング判定部、51…統計パラメータ算出部、52…正規化部、53…判定値算出部、54…比較部、60…管理部、61…基準信号取得部、62…判定信号取得部、63…データ整理部、100…車両、201…基準信号領域、202…基準モデル領域、203…判定信号領域、204…指標値領域、205…シフト量領域。

Claims (14)

  1. 周期性のある動作を伴う機器の前記周期性のある動作に基づく物理量を示す信号としてサイクル毎に取得された各取得信号の特定のタイミングの信号状態に基づいて前記機器の状態を判定する機器状態判定装置であって、
    前記機器の基準となる条件での動作に基づく前記取得信号を前記サイクル毎に基準信号として取得する基準信号取得部と、
    前記機器の動作状態を判定するサイクルでの前記取得信号を判定信号として取得する判定信号取得部と、
    前記各基準信号の取得されたサイクル中の前記タイミングでの前記基準信号の集合に対する平均と分散とに基づいて基準モデルを作成するモデル作成部と、
    前記基準モデルの作成されたサイクル中の前記タイミングに対して、前記判定信号の取得されたサイクル中の前記タイミングを順次相対移動させると共に、前記相対移動毎の前記判定信号の前記基準モデルに対する一致の度合いを示す指標を算出する指標算出部と、
    前記一致の度合いが最大であることを示す指標に対応する相対移動に基づいて前記基準モデルに前記判定信号が同期する同期値を決定する同期値決定部と、を備え、
    前記同期値で移動させた前記タイミングでの前記判定信号に基づいて前記判定を行う
    機器状態判定装置。
  2. 前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの分散が大きいタイミングにおける一致の度合いよりも分散が小さいタイミングにおける一致の度合いを重視して算出する
    請求項1に記載の機器状態判定装置。
  3. 前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号が取得されたときに定まるタイミングを含む所定の範囲内で順次相対移動させる
    請求項1又は2に記載の機器状態判定装置。
  4. 前記取得信号には、取得されたサイクル中のタイミングの目安となる同期信号が対応付けられており、
    前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号の前記同期信号のタイミングと前記基準モデルの前記同期信号のタイミングとを一致させたタイミングを含む所定の範囲で順次相対移動させる
    請求項1又は2に記載の機器状態判定装置。
  5. 前記モデル作成部は、前記基準信号のうち所定のタイミングからなる範囲に対応する基準モデルを作成し、
    前記指標算出部は、前記判定信号のうち前記所定のタイミングからなる範囲について前記基準モデルに対する前記指標を算出する
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の機器状態判定装置。
  6. 前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの平均値のとき最大値となり、前記平均値から離れることに応じて小さくなるように算出し、
    前記同期値決定部は、前記指標の最大値を前記一致の度合いが最大であるものとする
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の機器状態判定装置。
  7. 前記機器は内燃機関であり、
    前記サイクルは前記内燃機関の燃焼サイクルであり、
    前記同期信号は前記内燃機関の点火プラグへ電力が供給されることで得られる信号である
    請求項4に記載の機器状態判定装置。
  8. 周期性のある動作を伴う機器の前記周期性のある動作に基づく物理量を示す信号としてサイクル毎に取得した各取得信号の特定のタイミングの信号状態に基づいて前記機器の状態を判定する機器状態判定装置で実行される機器状態判定方法であって、
    機器状態判定装置は、
    前記機器の基準となる条件での動作に基づく前記取得信号を前記サイクル毎の基準信号として取得する基準信号取得工程と、
    前記機器の動作状態を判定するサイクルでの前記取得信号を判定信号として取得する判定信号取得工程と、
    前記各基準信号の取得されたサイクル中の前記タイミングでの前記基準信号の集合に対する平均と分散とに基づいて基準モデルを作成するモデル作成工程と、
    前記基準モデルの作成されたサイクル中の前記タイミングに対して、前記判定信号の取得されたサイクル中の前記タイミングを順次相対移動させると共に、前記相対移動毎の前記判定信号の前記基準モデルに対する一致の度合いを示す指標を算出する指標算出工程と、
    前記一致の度合いが最大であることを示す指標に対応する相対移動に基づいて前記基準モデルに前記判定信号が同期する同期値を決定する同期値決定工程と、を備え、
    前記同期値で移動させた前記タイミングでの判定信号に基づいて前記判定を行う
    機器状態判定方法。
  9. 内燃機関の燃焼サイクルに基づく物理量を示す信号としてサイクル毎に取得された各取得信号の特定のタイミングの信号状態に基づいて前記内燃機関のノッキングの有無を判定するノッキング判定装置であって、
    前記内燃機関の基準となる条件での動作に基づく前記取得信号を前記サイクル毎に基準信号として取得する基準信号取得部と、
    前記内燃機関の動作状態を判定するサイクルでの前記取得信号を判定信号として取得する判定信号取得部と、
    前記各基準信号の取得されたサイクル中の前記タイミングでの前記基準信号の集合に対する平均と分散とに基づいて基準モデルを作成するモデル作成部と、
    前記基準モデルの作成されたサイクル中の前記タイミングに対して、前記判定信号の取得されたサイクル中の前記タイミングを順次相対移動させると共に、前記相対移動毎の前記判定信号の前記基準モデルに対する一致の度合いを示す指標を算出する指標算出部と、
    前記一致の度合いが最大であることを示す指標に対応する相対移動に基づいて前記基準モデルに前記判定信号が同期する同期値を決定する同期値決定部と、を備え、
    前記同期値で移動させた前記タイミングでの前記判定信号に基づいて前記判定を行う
    ノッキング判定装置。
  10. 前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの分散が大きいタイミングにおける一致の度合いよりも分散が小さいタイミングにおける一致の度合いを重視して算出する
    請求項9に記載のノッキング判定装置。
  11. 前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号が取得されたときに定まるタイミングを含む所定の範囲内で順次相対移動させる
    請求項9又は10に記載のノッキング判定装置。
  12. 前記取得信号には、取得されたサイクル中のタイミングの目安となるイグニッションパルスに対応する信号が同期信号として対応付けられており、
    前記指標算出部は、前記判定信号の取得されたサイクル中のタイミングを前記判定信号の前記同期信号のタイミングと前記基準モデルの前記同期信号のタイミングとを一致させたタイミングを含む所定の範囲で順次相対移動させる
    請求項9又は10に記載のノッキング判定装置。
  13. 前記モデル作成部は、前記基準信号から前記燃焼サイクル中の所定のタイミング範囲に対応する基準モデルを作成し、
    前記指標算出部は、前記判定信号のうち前記所定のタイミング範囲について前記基準モデルに対する前記指標を算出する
    請求項9〜12のいずれか一項に記載のノッキング判定装置。
  14. 前記指標算出部は、前記指標を前記基準モデルの平均値のとき最大値となり、前記平均値から離れることに応じて小さくなるように算出し、
    前記同期値決定部は、前記指標の最大値を前記一致の度合いが最大であるものとする
    請求項9〜13のいずれか一項に記載のノッキング判定装置。
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