JP2017048133A - 組織の線維化抑制剤及び皮膚の拘縮抑制剤 - Google Patents
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Abstract
Description
また、今のところ、一度起きた組織の線維化の改善は、自然の吸収に任せる以外方法がなく、組織の線維化が起こる以前の状態に戻ることは、期待できない。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド、
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド、
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド、
(d)(a)〜(c)のいずれかの断片であって、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド。
[2]本発明の組織の線維化抑制剤は、前記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを有効成分として含有する[1]に記載の線維化抑制剤である。
[3]本発明の組織の線維化抑制剤は、前記組織の線維化抑制能がコラーゲンの産生抑制又はコラーゲンの分解亢進によるものである[1]又は[2]に記載の線維化抑制剤である。
[4]本発明の組織の線維化の予防又は治療用医薬組成物は、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の組織の線維化抑制剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
[5]本発明の皮膚の拘縮抑制剤は、以下の(a)〜(d)のいずれか一つのペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルを有効成分として含有することを特徴とする。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド、
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド、
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド、
(d)(a)〜(c)のいずれかの断片であって、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド。
[6]本発明の皮膚の拘縮抑制剤は、前記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを有効成分として含有する[5]に記載の拘縮抑制剤である。
≪第一実施形態≫
本実施形態の組織の線維化抑制剤は、以下の(a)〜(d)のいずれか一つのペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルを有効成分として含有するものである。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド、
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド、
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド、
(d)(a)〜(c)のいずれかの断片であって、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド。
CKDDISSYECWC (配列番号1)
CQDHLKSYVCFC (配列番号2)
CKDGLGEYTCTC (配列番号3)
CVDLGNSYLCRC (配列番号4)
天然物由来のペプチドとしては、天然に存在するオリゴペプチド、ポリペプチド及びタンパク質、又はこれらを断片化した状態のもの等が挙げられる。天然物由来のペプチドは、天然物から公知の回収法及び精製法により直接得てもよいし、又は、公知の遺伝子組換え技術により、当該ペプチドをコードする遺伝子を各種発現ベクター等に組込んで細胞に導入し、発現させた後、公知の回収法及び精製法により得てもよい。あるいは、市販のキット、例えば、試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTM System(プロメガ)、合成装置のPG−MateTM(東洋紡)及びRTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)等を用いた無細胞タンパク質合成系により当該ペプチドを産生し、公知の回収法及び精製法により得てもよく、限定はされない。
また、化学合成ペプチドは、公知のペプチド合成方法を用いて得ることができる。合成方法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法及び酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置を使用してもよい。合成反応後は、クロマトグラフィー等の公知の精製法を組み合わせてペプチドを精製することができる。
なお、配列番号7は、配列番号5で表されるアミノ酸配列のうちの第97番目〜第130番目のアミノ酸からなる配列で構成される。また、配列番号8は、配列番号6で表されるアミノ酸配列のうちの第123番目〜第157番目のアミノ酸からなる配列で構成される。
Del−1は、上皮増殖因子(EGF;epidermal growth factor)モチーフ及びジスコイジンIモチーフを有する細胞外基質沈着タンパク質であり、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。このDel−1のEGFモチーフとしてはEGF1、EGF2及びEGF3があり、ジスコイジンIモチーフとしてはDiscoidin1及びDiscoidin2があることが知られている。本発明者らは、上記各種モチーフのうちEGF3に着目し、さらにEGF3を構成するアミノ酸配列(配列番号8)中の特定の12アミノ酸残基からなる領域:C−T−D−L−V−A−N−Y−S−C−E−C(配列番号4)に着目した。そして、この配列番号4のアミノ酸配列を含むEGF3モチーフが、組織の線維化抑制能を有することを見出し、本発明に至った。
また、F9は、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、N末端から順に、Glaモチーフ、EGFモチーフ及びプロテアーゼモチーフを有する一本鎖糖タンパク質である。ここで、F9のEGFモチーフは、配列番号5で表されるアミノ酸配列のうちの第97番目〜第130番目のアミノ酸からなる配列(配列番号7)で構成される。本発明者らは、F9のEGFモチーフを構成するアミノ酸配列中には、上記Del−1のEGF3(EGFモチーフ)と同様に、特定の12アミノ酸残基からなる領域:C−K−D−D−I−S−S−Y−E−C−W−C(配列番号1)が含まれていることに着目し、この配列番号1のアミノ酸配列を含むEGFモチーフが、組織の線維化抑制能を有することを見出し、本発明に至った。
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド。
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド。
更に、前記(c)のペプチドは、組織の線維化抑制能を有する。
即ち、本実施形態の組織の線維化抑制剤は、前記(a)〜(d)のペプチドとともに、又はそれに代えて、前記(a)〜(d)の誘導体を含んでいてもよい。
塩としては、医薬として生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。
酸付加塩としては、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等の無機酸との塩;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
塩基性塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基との塩;カフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジン等の有機塩基との塩が挙げられる。
エステルとしては、例えば、カルボキシル基を有する場合の当該カルボキシル基における医薬として許容され得る慣用的なものが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の低級アルキル基とのエステル;アリル基、2−ブテニル基等の低級アルキル基とのエステル;メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等の低級アルコキシ低級アルキル基とのエステル等が挙げられる。ここで低級アルキル基とは、炭素数1〜6のアルキル基を意味する。
治療対象として限定はされず、ヒト又は非ヒト動物を含む哺乳動物が挙げられ、ヒトが好ましい。
本実施形態の組織の線維化抑制剤は、上記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを有効成分として含有する。
なお、配列番号11は、配列番号9に示される塩基酸配列のうちの第290番目〜第391番目の塩基からなる配列で構成される。また、配列番号12は、配列番号10に示される塩基配列のうちの第985番目〜第1089番目のアミノ酸からなる配列で構成される。
本実施形態のベクターは発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては特に制限されず、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のプラスミド;pSH19、pSH15等の酵母由来プラスミド;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウィルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。
本実施形態の組織の線維化抑制剤の投与量は、被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)の年齢、性別、体重、症状、治療方法、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。
例えば、上記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを注射剤により皮下注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1μg以上のベクターDNAの量を投与することが好ましく、10μg〜3mgのベクターDNAの量を投与することがより好ましく、25μg〜1mgのベクターDNAの量を投与することが特に好ましい。
また、例えば、上記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドを注射剤により皮下注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1kg体重当たり、100μg以上のペプチドの量を投与することが好ましく、200μg〜3mgのペプチドの量を投与することがより好ましく、400μg〜1mgのペプチドの量を投与することが特に好ましい。
投与回数としては、1週間平均当たり、1回〜数回投与することが好ましい。
投与形態としては、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法が挙げられ、皮下注射が好ましい。
注射剤は、非水性の希釈剤(例えば、ポレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤、又は乳濁剤として調製することもできる。このような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤等の配合により行うことができる。注射剤は、用事調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって、無菌の固体組成物とし、使用前に注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。
本発明の医薬組成物は、治療的に有効量の組織の線維化抑制剤の治療剤、及び薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む。薬学的に許容されうる担体又は希釈剤は、賦形剤、稀釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、添加剤等が挙げられる。これら担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、又はシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、ペプチドの生体内安定性を高める効果や、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ペプチドの移行性を高める効果が期待される。コロイド分散系としては、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを包含する脂質を挙げることができ、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ペプチドを効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞が好ましい。
または、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用されるものが挙げられる。更には、薬理学上許容される担体又は希釈剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化されたものが挙げられる。
≪第一実施形態≫
本実施形態の皮膚の拘縮抑制剤は、以下の(a)〜(d)のいずれか一つのペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルを有効成分として含有する。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド、
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド、
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド、
(d)(a)〜(c)のいずれかの断片であって、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド。
上記(a)のペプチドの具体例としては、上記に挙げたとおりである。中でも、F9のうち126番目のアルギニンから236番目のアルギニンまでのactivation peptideを取り除いたペプチド(配列番号5)、Del−1(配列番号6)が好ましく、F9の配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むEGFモチーフのみからなるペプチド(配列番号7)、又は、Del−1の配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むEGFモチーフのみからなるペプチド(配列番号8)がさらに好ましい。
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド。
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド。
更に、前記(c)のペプチドは、皮膚の拘縮抑制能を有する。
即ち、本実施形態の皮膚の拘縮抑制剤は、前記(a)〜(d)のペプチドとともに、又はそれに代えて、前記(a)〜(d)の誘導体を含んでいてもよい。
塩としては、上述と同様のものが挙げられる。
塩基性塩としては、上述と同様のものが挙げられる。
エステルとしては、上述と同様のものが挙げられる。
治療対象として限定はされず、ヒト又は非ヒト動物を含む哺乳動物が挙げられ、ヒトが好ましい。
本実施形態の皮膚の拘縮抑制剤は、上記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを有効成分として含有する。
本実施形態のベクターは発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては特に制限されず、上記に例示したもの等を用いることができる。
本実施形態の皮膚の拘縮抑制剤の投与量は、被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)の年齢、性別、体重、症状、治療方法、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。
例えば、上記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを注射剤により皮下注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1μg以上のベクターDNAの量を投与することが好ましく、10μg〜3mgのベクターDNAの量を投与することがより好ましく、25μg〜1mgのベクターDNAの量を投与することが特に好ましい。
また、例えば、上記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドを注射剤により皮下注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1kg体重当たり、100μg以上のペプチドの量を投与することが好ましく、200μg〜3mgのペプチドの量を投与することがより好ましく、400μg〜1mgのペプチドの量を投与することが特に好ましい。
投与回数としては、1週間平均当たり、1回〜数回投与することが好ましい。
投与形態としては、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法が挙げられ、皮下注射が好ましい。
注射剤は、非水性の希釈剤(例えば、ポレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤、又は乳濁剤として調製することもできる。このような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤等の配合により行うことができる。注射剤は、用事調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって、無菌の固体組成物とし、使用前に注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。
本発明の医薬組成物は、治療的に有効量の皮膚の拘縮抑制剤の治療剤、及び薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む。薬学的に許容されうる担体又は希釈剤は、上記例示したもの等が挙げられる。これら担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、又はシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。
また、本発明の一側面は、皮膚の拘縮により生じる上述の疾患の治療のための前記(a)〜(d)のいずれかのペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルを提供する。
また、本発明の一側面は、治療的に有効量の上記ペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステル、上記ペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクター、及び薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、組織の線維化抑制剤を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、皮膚の拘縮抑制剤を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、組織の線維化抑制剤を製造するための前記ペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルの使用を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、皮膚の拘縮抑制剤を製造するための前記ペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルの使用を提供する。
また、本発明の一側面は、上記ペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステル、上記ペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクター、の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、組織の線維化により生じる上述の疾患の治療方法を提供する。
また、本発明の一側面は、上記ペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステル、上記ペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクター、の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、皮膚の拘縮により生じる上述の疾患の治療方法を提供する。
まず、下記表1に示すmF9−LCのcDNAを含む発現ベクターを作製した。「mF9−LC」とは、マウスの血液凝固第9因子(F9)のうち、GLAモチーフ及び該GLAモチーフに続く2つのEGFモチーフ(EGF1及びEGF2)からなる軽鎖(Light Chain:LC)を示す。発現ベクターとしては、アルカリホスタファーゼ(AP)発現ベクター(APtag4)を用いた。
発現ベクターに公知の遺伝子組み換え技術を用いて、下記表1に示すペプチドをコードするcDNAをそれぞれAP遺伝子との融合遺伝子となるように挿入し、組み換えベクターを構築した。
下記表1に示すmDel−1−E3C1のcDNAを含む以外は、実施例1と同様の方法を用いて、発現ベクターを作製した。「mDel−1−E3C1」とは、マウスの内皮細胞遺伝子座−1(Del−1)のうち、N末端から3番目のEGFモチーフ(EGF3)及び該EGF3に続く1番目のDiscoidinモチーフ(C1)からなるペプチドを示す。
(1)創傷モデルマウスへの発現ベクターの投与
マウス背部の皮膚を真皮に至る深さで20mm×10mm剥離し、創傷モデルマウスを作製した。創傷作製直後から、実施例1で作製したmF9−LCのcDNAを含む発現ベクター 1μgを、jetPEI(polyplus transfection社製)と共に創部周囲の皮膚に皮下注射した。「創部」とは、皮膚などが物理的に損傷し、創傷ができた部分を意味する。また、コントロールとして、別の創傷モデルマウスにAP遺伝子のみを含む発現ベクターを皮下注射した。
週に2回のペースで、45日間投与を続けた。創部の変化を撮影した画像を図1に示す。図1中、矢印(←)は皮膚の盛り上がりを示し、三角(▲)は皮膚の凹みをしめす。
mF9−LCのcDNAを含む発現ベクター又はAP遺伝子のみを含む発現ベクターを投与した45日後のマウスの創部周囲の皮膚を切り出し、コラーゲンステインキット(コラーゲン技術研修会製)を用いて、コラーゲン染色を行った。コラーゲンステインキットを使用すると、コラーゲンが発現している部位は、赤く染まり、コラーゲン以外のタンパク質(非コラーゲン)が発現している部位は。青緑に染まる。また、さらに創傷周囲の皮膚を切り出し、Eosin Y solution (和光純薬社製)と、Mayer’s Hematoxylin solution (和光純薬社製)とを用いて、HE(Hematoxylin−Eosin)染色を行った。結果を図2に示す。図2中、矢印は毛包を示し、創傷周囲の健常部である。また、図3は、コラーゲン染色による染色面積からコラーゲンと非コラーゲンとの比を示したグラフである。
(1)移植腫瘍モデルマウスへの発現ベクターの投与
ヌードマウスの背面にヒト扁平上皮癌由来細胞株A431を移植した移植腫瘍モデルマウスを作製した。腫瘍の生着を確認後、実施例2において作製したmDel−1−E3C1のcDNAを含む発現ベクター 10μgを、jetPEI(polyplus transfection社製)と共に腫瘍から2cm程度離れた背面の皮膚に皮下注射した。また、コントロールとして、別の移植腫瘍モデルマウスにAP遺伝子のみを含む発現ベクターを皮下注射した。週に1回のペースで、45日間投与を続けた。
試験例1の(2)と同様の方法により、HE染色及びコラーゲン染色を行った。結果を図4に示す。
mDel−1−E3C1のcDNAを含む発現ベクター又はAP遺伝子のみを含む発現ベクターを投与した45日後の移植腫瘍モデルマウスの腫瘍部の皮膚を切り出し、PECAM(Platelet Endothelial Cell Adhesion Molecule)抗体及びαSMA(α smooth muscle actin)抗体を一次抗体として用いた。続いて、Alexafluor488及びAlexafluor568で標識された二次抗体を使用し、蛍光免疫染色を行った。PECAMは、胚及び成体血管内皮細胞で発現しているタンパク質であり、癌細胞の周囲を囲む「間質」という組織が形成されているか否かの指標となる。また、αSMAは、平滑筋細胞に多く存在するタンパク質であり、細胞が縮むために働くため、皮膚の拘縮に関与するものである。PECAM抗体、αSMA抗体、並びに、Alexafluor488及びAlexafluor568で標識された二次抗体は市販の抗体を使用した。結果を図5に示す。
mDel−1−E3C1のcDNAを含む発現ベクターを腫瘍から離れた位置に皮下注射したため、全身に効いている可能性があり、副作用がないかを確認するために、45日後の移植腫瘍モデルマウスの心臓及び小腸を切り出し、コラーゲン染色を行った。結果を図6に示す。(A)が心臓の染色結果であり、(B)が小腸の染色結果である。
(1)ヒト線維芽細胞への組み換えタンパク質の投与
CHO細胞に、実施例2において作製したmDel−1−E3C1のcDNAを含む発現ベクター0.8μgを、jetPEIを用いて遺伝子導入した。コントロールとしてAP遺伝子のみを含む発現ベクターを遺伝子導入した。それによって作製されたAP−mDel1−E3C1の組み換えタンパクを含む培養液を、mDel−1−E3C1が1pmol/mLになるように、ヒト線維芽細胞の培養液中に添加した。
上記操作後、7日間培養した線維芽細胞の培養液FibroLife Medium (LIFELINE CELL TECHNOLOGY社製)を50μL採取し、ヒトMMP測定キット(SesoLyte 520 MMP−9 Assay Kit) (ANASPEC社製)を用いて、培養液中に含まれるMMP9活性を定量した。
(1)移植腫瘍モデルマウスへの発現ベクターの投与
試験例2の(1)と同様の方法により、実施例2において作製したmDel−1−E3C1のcDNAを含む発現ベクターを45日間投与した。
αSMA抗体の代わりに、MMP9抗体を用いた以外は、試験例2の(3)と同様の方法により、蛍光免疫染色を行った。PECAM抗体、MMP9抗体、並びに、Alexafluor488及びAlexafluor568で標識された二次抗体は市販の抗体を使用した。結果を図8に示す。
(1)ヒト血管内皮細胞への組み換えタンパク質の投与
ハムスター卵巣由来細胞株(CHO細胞)に、実施例1において作製したmF9−LCのcDNAを含む発現ベクター0.8μgを、jetPEIを用いて遺伝子導入した。コントロールとしてAP遺伝子のみを含む発現ベクターを遺伝子導入した。それによって作製されたAP−mF9−LCの組み換えタンパク質を含む培養液を、mF9−LCが100pmol/mLになるように、ヒト臍帯静脈内皮細胞の培養液中に添加した。
上記操作後5分間、10分間、60分間培養した細胞を回収し、細胞を破砕した。破砕液をSDS−PAGEゲルで展開し、PVDF膜に転写した。転写の終了したPVDF膜は、ブロッキングを行い、活性型Notch抗体及びhey1(Hairy/enhancer−of−split related with YRPW motif 1)抗体を一次抗体として使用した。続いて、HRP標識二次抗体は1:1000で希釈して使用し、検出にはImmobilon Western detection regents(Millipore,Billerica,USA)による化学発光を用いた。hey1は、Notchの下流に存在するタンパク質であり、炎症反応等の細胞間シグナル伝達が引き金となるNotchによるコラーゲンの産生及び分泌を仲介するタンパク質である。活性型Notch抗体、hey1抗体、HRP標識二次抗体は市販の抗体を使用した。結果を図9に示す。
Claims (6)
- 以下の(a)〜(d)のいずれか一つのペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルを有効成分として含有することを特徴とする組織の線維化抑制剤。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド、
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド、
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド、
(d)(a)〜(c)のいずれかの断片であって、かつ、組織の線維化抑制能を有するペプチド。 - 前記(a)〜(d)のいずれか一つのペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを有効成分として含有する請求項1に記載の組織の線維化抑制剤。
- 前記組織の線維化抑制能がコラーゲンの産生抑制又はコラーゲンの分解亢進によるものである請求項1又は2に記載の組織の線維化抑制剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の組織の線維化抑制剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする組織の線維化の予防又は治療用医薬組成物。
- 以下の(a)〜(d)のいずれか一つのペプチド、その誘導体、又はこれらの塩若しくはエステルを有効成分として含有することを特徴とする皮膚の拘縮抑制剤。
(a)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチド、
(b)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドにおいて、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド、
(c)配列番号1、2、3、4で表されるアミノ酸配列を含む上皮成長因子(EGF)モチーフを備えるペプチドのアミノ酸配列と同一性が70%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド、
(d)(a)〜(c)のいずれかの断片であって、かつ、皮膚の拘縮抑制能を有するペプチド。 - 請求項5に記載のペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含むベクターを有効成分として含有することを特徴とする皮膚の拘縮抑制剤。
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