以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置100の主回路構成を示す概略ブロック図である。電力変換装置100は、代表的には無停電電源装置に適用される。
図1を参照して、電力変換装置100は、入力フィルタ2と、コンバータ3と、インバータ4と、出力フィルタ5と、直流電圧変換器(図中「DC/DC」と示す)7と、制御装置10と、直流正母線13と、直流負母線14と、コンデンサ15と、電圧センサ31,34,35,37と、電流センサ32,36と、停電検出回路33と、R相ラインRLと、S相ラインSLと、T相ラインTLと、U相ラインULと、V相ラインVLと、W相ラインWLとを備える。
入力フィルタ2は、商用交流電源1への高調波の流出を防止する。商用交流電源1は三相交流電源である。入力フィルタ2は、コンデンサ11(コンデンサ11R,11S,11T)およびリアクトル12(リアクトル12R,12S,12T)により構成された三相のLCフィルタ回路である。
コンバータ3は、商用交流電源1から入力フィルタ2を介して供給される三相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ3は、その直流電力を直流正母線13および直流負母線14を介してインバータ4に供給する。
コンデンサ15は、直流正母線13と直流負母線14との間に接続されて、直流正母線13および直流負母線14の間の電圧を平滑化する。
インバータ4は、コンバータ3から供給される直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ4からの交流電力は出力フィルタ5を介して負荷6に供給される。出力フィルタ5は、インバータ4の動作により生じた高調波を除去する。出力フィルタ5は、リアクトル16(リアクトル16U,16V,16W)およびコンデンサ17(コンデンサ17U,17V,17W)により構成された三相のLCフィルタ回路である。
直流電圧変換器7は、蓄電池8の電圧を直流正母線13と直流負母線14との間の直流電圧に変換する。なお、直流電圧変換器7は、直流正母線13と直流負母線14との間の直流電圧と蓄電池8の電圧とを相互に変換するように構成されていてもよい。また、直流電圧変換器7には充放電可能な電力貯蔵装置が接続されていればよく、たとえば電気二重層キャパシタが直流電圧変換器7に接続されていてもよい。さらに本実施の形態では、蓄電池8は電力変換装置100(無停電電源装置)の外部に設置されているが、蓄電池8は電力変換装置100に内蔵されていてもよい。
電圧センサ31は、R相ラインRLの電圧VR、S相ラインSLの電圧VS、T相ラインの電圧VTを検出し、電圧VR,VS,VTを示す三相電圧信号を制御装置10および停電検出回路33に出力する。
電流センサ32は、R相ラインRLの電流IR、S相ラインSLの電流ISおよびT相ラインTLの電流ITを検出し、電流IR,IS,ITを示す三相電流信号を制御装置10に出力する。電圧センサ37は、U相ラインULの電圧VU、V相ラインVLの電圧VV、W相ラインの電圧VWを検出し、電圧VU,VV,VWを示す三相電圧信号を制御装置10に出力する。
停電検出回路33は、電圧センサ31からの三相電圧信号に基づいて商用交流電源1の停電を検出する。停電検出回路33は、商用交流電源1の停電を示す停電信号を制御装置10に出力する。
電圧センサ34は、コンデンサ15の両端の電圧Vdcを検出して、電圧Vdcを示す信号を制御装置10に出力する。電圧センサ35は、蓄電池8の正負極間の電圧VBを検出して、電圧VBを示す信号を制御装置10に出力する。電流センサ36は、蓄電池8から出力される電流IBを検出して、電流IBを示す信号を制御装置10に出力する。
制御装置10は、コンバータ3、インバータ4および直流電圧変換器7の動作を制御する。具体的には、制御装置10は、停電検出回路33からの停電信号に基づいて、商用交流電源1の停電が発生したか否かを検出し、電圧VR,VS,VTの位相に同期してコンバータ3およびインバータ4を制御する。
後に詳細に説明するが、コンバータ3、インバータ4および直流電圧変換器7は、半導体スイッチング素子を含む半導体スイッチにより構成される。なお、本実施の形態では、半導体スイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。
制御装置10は、電圧Vdcが基準値Vdc*になるようにコンバータ3を構成する半導体スイッチをオン/オフさせるとともに、電圧VU,VV,VWが波形歪の無い正弦波状の交流電圧になるようにインバータ4を構成する半導体スイッチング素子をオン/オフさせる。電圧VU,VV,VWの振幅は、電圧Vdc/2よりも小さい値にされる。さらに制御装置10は、電圧VU,VV,VWの位相が電圧VR,VS,VTの位相に一致するようにインバータ4の半導体スイッチング素子をオン/オフさせる。
本実施の形態では、半導体スイッチング素子の制御方式としてPWM(Pulse Width Modulation)制御を適用することができる。制御装置10は、電圧センサ31からの三相電圧信号、電流センサ32からの三相電流信号、電圧センサ37からの三相電圧信号、電圧センサ34が検出した電圧Vdcを示す信号、停電検出回路33からの停電信号、電圧センサ35が検出した電圧VBを示す信号、電流センサ36が検出した電流IBを示す信号等を受けてPWM制御を実行する。
次に、本実施の形態に係る電力変換装置100の動作について説明する。
商用交流電源1が正常に交流電力を供給可能である場合、コンバータ3は商用交流電源1からの交流電力を直流電力に変換し、インバータ4はその直流電力を交流電力に変換して負荷6に供給する。一方、商用交流電源1が停電した場合には、制御装置10は、停電検出回路33からの停電信号に基づいてコンバータ3を停止させる。さらに制御装置10は、蓄電池8からインバータ4に直流電力が供給されるように直流電圧変換器7を動作させてインバータ4による交流電力の供給を継続させる。この場合、直流電圧変換器7は、蓄電池8の電圧をインバータ4の入力電圧として好適な電圧に変換する。これにより負荷6に安定して交流電力を供給することができる。
図2は、図1に示したコンバータ3、インバータ4および直流電圧変換器7の構成を詳細に説明する回路図である。図2を参照して、コンバータ3は、R相アーム3Rと、S相アーム3Sと、T相アーム3Tとを含む。インバータ4は、U相アーム4Uと、V相アーム4Vと、W相アーム4Wとを含む。
コンバータ3の各相アーム(3R,3S,3T)およびインバータ4の各相アーム(4U,4V,4W)は、いずれも2レベル回路として構成され、2つのIGBT素子と2つのダイオードとを含む。詳細には、R相アーム3Rは、IGBT素子Q1R,Q2RおよびダイオードD1R,D2Rを含む。S相アーム3Sは、IGBT素子Q1S,Q2SおよびダイオードD1S,D2Sを含む。T相アーム3Tは、IGBT素子Q1T,Q2TおよびダイオードD1T,D2Tを含む。U相アーム4Uは、IGBT素子Q1U,Q2UおよびダイオードD1U,D2Uを含む。V相アーム4Vは、IGBT素子Q1V,Q2VおよびダイオードD1V,D2Vを含む。W相アーム4Wは、IGBT素子Q1W,Q2WおよびダイオードD1W,D2Wを含む。
以下では、コンバータ3の各相アームおよびインバータ4の各相アームを総括的に説明するため符号R,S,T,U,V,Wをまとめて符号「x」と示す。IGBT素子Q1x,Q2xは直流正母線13および直流負母線14の間に直列に接続される。ダイオードD1x,D2xは、IGBT素子Q1x,Q2xにそれぞれ逆並列接続される。
コンバータ3の各相アーム(3R,3S,3T)においてはIGBT素子Q1x,Q2xの接続点が交流入力端子に対応する。コンバータ3の各相アーム(3R,3S,3T)の交流入力端子は対応する線(R相ラインRL、S相ラインSL、T相ラインTL)に接続される。一方、インバータ4の各相アーム(4U,4V,4W)においてはIGBT素子Q1x,Q2xの接続点が交流出力端子に対応する。インバータ4の各相アーム(4U,4V,4W)の交流出力端子は対応する線(U相ラインUL、V相ラインVL、W相ラインWL)に接続される。
直流電圧変換器7は、リアクトルL1と、IGBT素子Q1D,Q2Dと、ダイオードD1D,D2Dとを含む。IGBT素子Q1D,Q2Dは直流正母線13および直流負母線14の間に直列に接続される。ダイオードD1D,D2Dは、IGBT素子Q1D,Q2Dにそれぞれ逆並列接続される。IGBT素子Q1D,Q2Dの接続点にリアクトルL1の一方端が接続される。リアクトルL1の他方端は蓄電池8の正極に接続される。
図3は、制御装置10に含まれる、コンバータ3の制御部を説明するブロック図である。図3を参照して、コンバータ制御部60は、電圧指令生成回路62と、PWM回路64とを含む。
電圧指令生成回路62は、電圧センサ31が検出した電圧VR,VS,VT、電流センサ32が検出した電流IR,IS,IT、電圧センサ32が検出した電圧Vdc、および電圧センサ37が検出した電圧VU,VV,VWを受けて、R相、S相およびT相にそれぞれ対応する電圧指令値VR*,VS*,VT*を生成する。
PWM回路64は、電圧指令値VR*,VS*,VT*に基づいて、電圧センサ31が検出した電圧VR,VS,VTを電圧指令値VR*,VS*,VT*にそれぞれ等しくするための信号を生成する。この信号は、コンバータ3の各相アームに含まれるIGBT素子を駆動するための信号である。
図4は、図3に示した電圧指令生成回路62の機能ブロック図である。図4を参照して、電圧指令生成回路62は、基準値生成回路70と、減算器71,75A〜75Cと、直流電圧制御回路72と、正弦波発生回路73と、乗算器74A〜74Cと、電流制御回路76と、加算器77A〜77Cとを含む。
基準値生成回路70は、電圧センサ31が検出した電圧VR,VS,VTおよび電圧センサ37が検出した電圧VU,VV,VWを受けて、電圧Vdcの目標値である基準値Vdc*を生成する。基準値生成回路70の構成は後に詳述する。
減算器71は、基準値Vdc*と電圧センサ34が検出した電圧Vdcとの差を算出する。直流電圧制御回路72は、基準値Vdc*と電圧Vdcとの差が0となるようにコンバータ3の入力側に流れる電流を制御するための電流指令値I*を算出する。直流電圧制御回路72は、たとえば基準値Vdc*と電圧Vdcとの差を比例演算または比例積分演算することにより電圧指令値I*を算出する。
正弦波発生回路73は、商用交流電源1のR相電圧と同相の正弦波信号と、商用交流電源1のS相電圧と同相の正弦波信号と、商用交流電源1のT相電圧と同相の正弦波信号とを出力する。3つの正弦波信号は、乗算器74A〜74Cにそれぞれ入力されて電流指令値I*が乗じられる。これにより、商用交流電源1の相電圧と同相の電流指令値IR*,IS*,IT*が生成される。
減算器75Aは、電流指令値IR*と電流センサ32により検出されたR相電流IRとの差を算出する。減算器75Bは、電流指令値IS*と電流センサ32により検出されたS相電流ISとの差を算出する。減算器75Cは、電流指令値IT*と電流センサ32により検出されたT相電流ITとの差を算出する。
電流制御回路76は、電流指令値IR*とR相電流IRとの差、電流指令値IS*とS相電流ISとの差、および電流指令値IT*とT相電流ITとの差がいずれも0となるようにリアクトル12に印加すべき電圧として、電圧指令値VRa*,VSa*,VTa*を生成する。電流制御回路76は、たとえば電流指令値と電流センサ32により検出された電流値との差を比例制御または比例積分制御にしたがって増幅することにより、電圧指令値VRa*,VSa*,VTa*を生成する。
加算器77Aは、電圧指令値VRa*と電圧センサ31により検出されたR相電圧VRとを加算して電圧指令値VR*を生成する。加算器77Bは、電圧指令値VSa*と電圧センサ31により検出されたS相電圧VSとを加算して電圧指令値VS*を生成する。加算器77Cは、電圧指令値VTa*と電圧センサ31により検出されたT相電圧VTとを加算して電圧指令値VT*を生成する。
電圧指令値VR*,VS*,VT*は、振幅が互いに等しく互いに2π/3の位相差がある正弦波電圧である。PWM回路64(図3)は、信号波として電圧指令値VR*,VS*,VT*を用い、搬送波として共通の三角波信号を用いる。PWM回路64は、信号波と搬送波との電圧比較に従って、コンバータ3の各相アームに含まれるIGBT素子のオン・オフを制御する。
上記の構成を有するコンバータ制御部60によってコンバータ3が制御されることにより、電流IR,IS,ITは商用交流電源1と同相かつ正弦波の電流となるため、力率をほぼ1にすることができる。言い換えれば、力率をほぼ1にするためには、電流IR,IS,ITを波形歪の無い正弦波状の交流電流に制御することが好ましい。
上記のとおり、電流IR,IS,ITの目標値となる電流指令値IR*,IS*,IT*は、電流指令値I*に対して商用交流電源1の相電圧と同相の正弦波信号を乗じることにより生成される。そして、この電流指令値I*は、基準値Vdc*と電圧センサ34が検出した電圧Vdcとの差に基づいて算出される。したがって、電流IR,IS,ITを制御する上で、基準値Vdc*を如何に設定するかが重要となる。
ここで、コンバータ3は入力フィルタ2のリアクトル12を介して商用交流電源1に接続されているため、コンバータ3およびリアクトル12によって昇圧型の回路が構成されている。そのため、コンバータ3は、商用交流電源1からリアクトル12に供給される交流入力電圧の振幅値以上の直流電圧を出力する。本実施の形態において、商用交流電源1は三相交流電源であるため、商用交流電源1から供給される交流入力電圧は、商用交流電源1の二つの相電圧の差である線間電圧(例えばVRS=VR−VS)に相当する。したがって、コンバータ3は、入力線間電圧(VRS,VST,VTR)の振幅値以上の直流電圧を出力することになる。これによれば、コンバータ3の出力電圧Vdcの目標値となる基準値Vdc*を、入力線間電圧の振幅値以上の電圧に設定する必要がある。
コンデンサ15の出力電圧Vdcはさらに、インバータ4によって商用周波数の交流電圧に変換される。制御装置10に含まれる、インバータ4の制御部(図示せず)は、インバータ4の出力電圧が正弦波状に変化するようにインバータ4を制御する。具体的には、インバータ4の制御部は、負荷6に供給される三相電圧(電圧VU,VV,VW)の位相が、商用交流電源1から供給される三相電圧(電圧VR,VS,VT)の位相に一致するように、インバータ4を制御する。
インバータ4の制御には、一般的なPWM制御として、正弦波PWM制御が適用される。正弦波PWM制御において、搬送波の振幅はコンデンサ15の両端の電圧Vdcの1/2(=Vdc/2)に相当する。なお、搬送波の振幅に対する電圧指令値の基本波成分の振幅の比率を「変調率」という。インバータ4における変調率は、電圧Vdc/2に対する電圧指令値VU*,VV*,VW*の振幅の比率となる。
搬送波の振幅を、U相、V相およびW相にそれぞれ対応する電圧指令値VU*,VV*,VW*の振幅よりも大きくすることで、搬送波の周期ごとに必ずIGBT素子のオン・オフが行なわれるため、相電圧の基本波成分の振幅を、対応する電圧指令値の振幅に比例させることができる。これにより、二つの相電圧の差である線間電圧(例えばVUV=VU−VV)の基本波成分も正弦波となる。正弦波PWM制御において、インバータ4が出力可能な相電圧の基本波振幅の最大値はVdc/2となるため、これを出力線間電圧の基本波振幅に換算すると、√3Vdc/2≒0.87Vdcとなる。
さらに、電圧指令値VU*,VV*,VW*を、基本波とその3次高調波とを重畳して作成する方法を採ることによって、出力線間電圧の基本波振幅を電圧Vdcと等しくすることも可能である。
このように、インバータ4は、入力直流電圧Vdc以下の振幅値を有する交流電圧を出力する。本実施の形態において、インバータ4は三相インバータであるため、インバータ4から負荷6に供給される交流出力電圧は、インバータ4の出力線間電圧(VUV,VVW,VWU)に相当する。したがって、インバータ4は、入力直流電圧Vdc以下の振幅値を有する出力線間電圧を出力することになる。これによれば、基準値Vdc*を、出力線間電圧の振幅値以上の電圧に設定することで、交流出力電圧を波形歪の無い正弦波状に変化させることができる。
その一方で、電圧Vdcを高くすると、コンバータ3およびインバータ4の各々において、高い直流電圧の下で半導体スイッチ(IGBT素子)のオン・オフが行なわれることになるため、スイッチング損失が増大してしまう。また、電圧Vdcを高くすることで、コンバータ3およびインバータ4における変調率が低くなる。変調率が低くなると、コンバータ3の入力電流およびインバータ4の出力電流に含まれる高調波成分が増加する。高次の高調波成分は入力フィルタ2のコンデンサ11または出力フィルタ5のコンデンサ17によってほとんど吸収できるが、低次の高調波成分はコンデンサ容量が小さいと十分に吸収できず、商用交流電源1の擾乱や負荷6における損失を増加させる要因となり得る。
これに対しては、電圧Vdcを低く設定すれば、変調率が高くなる。これにより、高い直流電圧の下でのPWMチョッパ動作が回避されるとともに、PWM制御電流に含まれる高調波成分が低減するため、上述した損失の増加を抑えることができる。
以上により、電圧Vdcは、商用交流電源1から供給される交流入力電圧の振幅値以上であり、かつ、負荷6に供給される交流出力電圧の振幅値以上であることが求められる。ただし、電力変換装置100全体の損失の増加を抑えるためには、電圧Vdcをできるだけ低い値とすることが好ましい。
その一方で、商用交流電源1から供給される交流入力電圧および負荷6に供給される交流出力電圧は、通常時であっても変動(増減)する場合がある。商用交流電源1から供給される交流入力電圧が増加することによって、交流入力電圧の振幅値が電圧Vdcよりも高くなると、コンバータ3の入力電流IR,IS,ITを正弦波状に制御することができず、結果的に力率を1にすることが困難となる可能性がある。
同様に、負荷6に供給される交流出力電圧が増加することによって、交流出力電圧の振幅値が電圧Vdcよりも高くなると、変調率が1を超えてしまうため、インバータ4の出力電圧を正弦波状に制御することが困難となる可能性がある。
商用交流電源1から供給される電圧および負荷6に供給される電圧の変動に影響されずにコンバータ3およびインバータ4の制御を安定して行なうためには、電圧Vdcを、商用交流電源1から供給される交流入力電圧および負荷6に供給される交流出力電圧の振幅値に対して、変動分に相当するマージンを加算した値とすることができる。しかしながら、電圧Vdcを高く設定することで、コンバータ3およびインバータ4の制御の安定性が向上する反面、上記のとおり電力変換装置100全体の損失を増加させることになる。
そこで、本実施の形態に係る電力変換装置100では、電圧Vdcの目標値である基準値Vdc*を、固定的ではなく、商用交流電源1から供給される交流入力電圧の検出値および負荷6に供給される交流出力電圧の検出値に基づいて動的に設定する。これにより、コンバータ3およびインバータ4の制御の安定性を向上させつつ、電力変換装置100全体の損失の増加を抑えることを可能とする。
基準値Vdc*の生成は、電圧指令生成回路62における基準値生成回路70(図3)により実行される。以下、基準値Vdc*の生成について説明する。
図5は、基準値生成回路70の構成例を示す図である。図5を参照して、基準値生成回路70は、三相全波整流回路80,81と、最大値選択回路84とを含む。
三相全波整流回路80(第1の整流回路)は、電圧センサ31が検出した三相電圧VR,VS,VTを受ける。三相全波整流回路80には、例えば6個の逆並列ダイオードをブリッジ接続したブリッジ整流器が用いられる。三相全波整流回路80は、三相電圧VR,VS,VTを整流して直流電圧Vdc1に変換する。直流電圧Vdc1は、線間電圧VRS(電圧VRと電圧VSとの差分)の絶対値|VRS|、線間電圧VST(電圧VSと電圧VTとの差分)の絶対値|VST|、および線間電圧VSR(電圧VSと電圧VRとの差分)の絶対値|VSR|のうちの最大値と等しくなる。直流電圧Vdc1は、商用交流電源1から供給される交流入力電圧(入力線間電圧VRS,VST,VTR)の振幅値を含んでいる。すなわち、三相全波整流回路80は、交流入力電圧の振幅値を検出するための検出手段を構成する。
三相全波整流回路81(第2の整流回路)は、電圧センサ37が検出した電圧VU,VV,VWを受ける。三相全波整流回路81には三相全波整流回路81と同様に、例えばブリッジ整流器が用いられる。三相全波整流回路81は、三相電圧VU,VV,VWを整流して直流電圧Vdc2に変換する。直流電圧Vdc2は、線間電圧VUV(電圧VUと電圧VVとの差分)の絶対値|VUV|、線間電圧VVW(電圧VVと電圧VWとの差分)の絶対値|VVW|、および線間電圧VWU(電圧VWと電圧VUとの差分)の絶対値|VWU|のうちの最大値と等しくなる。直流電圧Vdc2は、負荷6に供給される交流出力電圧(出力線間電圧VUV,VVW,VWU)のピーク値を含んでいる。すなわち、三相全波整流回路81は、交流出力電圧の振幅値を検出するための検出手段を構成する。
最大値選択回路84(選択回路)は、三相全波整流回路80により変換された直流電圧Vdc1および三相全波整流回路81により変換された直流電圧Vdc2のうちから大きい方を選択する。最大値選択回路84は、選択した直流電圧を、基準値Vdc*として加算器71(図4)に出力する。
三相全波整流回路80から出力される直流電圧Vdc1は、商用交流電源1から供給される交流入力電圧(入力線間電圧VRS,VST,VTR)の変動を反映した値となる。三相全波整流回路81から出力される直流電圧Vdc2は、負荷6に供給される交流出力電圧(出力線間電圧VUV,VVW,VWU)の変動を反映した値となる。最大値選択回路84が直流電圧Vdc1およびVdc2のうちの大きい方を選択して基準値Vdc*を生成することにより、生成された基準値Vdc*は、交流入力電圧および交流出力電圧のうちの変動が最も大きくなる電圧の振幅値に追従して変化することになる。
このような構成とすることにより、例えば商用交流電源1から供給される交流入力電圧が変動して振幅値が増加した場合には、当該振幅値の増加が反映されて基準値Vdc*が高く設定される。この基準値Vdc*と電圧Vdcとの差が0となるようにコンバータ3の入力電流が制御されることにより、電圧Vdcが増加する。その結果、電流IR,IS,ITを正弦波状の交流電流に制御することができるため、コンバータ3の力率をほぼ1にすることができる。
また、負荷6に供給される交流出力電圧が変動して振幅値が増加した場合には、当該振幅値の増加が反映されて基準値Vdc*が高く設定される。このような場合も、基準値Vdc*と電圧Vdcとの差が0となるようにコンバータ3の入力電流が制御されることにより、電圧Vdcが増加する。その結果、インバータ4の正弦波PWM制御において、変調率が1を超えることを防ぐことができる。したがって、インバータ4の出力電圧を正弦波状であって、かつ、コンバータ3の入力電圧と位相が一致するように制御することができる。
以上のように、本実施の形態1によれば、商用交流電源1から供給される交流入力電圧または負荷6に供給される交流出力電圧が変動した場合であっても、交流入力電圧および交流出力電圧の振幅値の変動に追従するように基準値Vdc*が動的に設定される。したがって、交流入力電圧および交流出力電圧の振幅値の変動に追従するように、電圧Vdcも変動する。これにより、交流入力電圧および交流出力電圧の変動に影響されることなく、コンバータ3およびインバータ4を安定して制御することができる。したがって、基準値Vdc*を、交流電圧の変動分に相当するマージンを持たせた値に固定的に設定するものと比較して、制御の安定性を損なうことなく、電力変換装置100全体の損失を低減できる。この結果、高力率かつ高い電力変換効率を有する電力変換装置を実現することが可能となる。
[実施の形態2]
図6は、実施の形態2に係る電力変換装置100Aの主回路構成を示す概略ブロック図である。図6を参照して、電力変換装置100Aは、無停電電源装置に適用される。電力変換装置100Aは、図1に示す電力変換装置100と基本的構成が同じであるが、電磁接触器18,21,22、半導体スイッチ20および電圧センサ38が追加されている点が異なっている。
電磁接触器22は、一方端子が交流入力端子T1に接続され、他方端子が入力フィルタ2の入力ノードに接続される。電磁接触器22は、制御装置10Aによって制御され、無停電電源装置の使用時にはオンされ、たとえば無停電電源装置の保守および点検時にオフされる。電磁接触器22と入力フィルタ2との間のノードN1に現われる電圧VR,VS,VTは、電圧センサ31によって検出される。
電磁遮断器18は、一方端子が出力フィルタ5の出力ノードに接続され、他方端子が交流出力端子T2に接続される。電磁接触器18は、図7に示すように、U相ラインULに接続される電磁接触器18U、V相ラインVLに接続される電磁接触器18VおよびW相ライン19に接続される電磁接触器18Wにより構成される。
電磁接触器18は、制御装置10Aによって制御される。電磁接触器18は、インバータ4によって生成された交流電力を負荷6に供給するインバータ給電モード時にはオンされ、商用交流電源1からの交流電力を、交流入力端子T1と交流出力端子T2との間に配設される三相ライン19を経由して負荷6に供給するバイパス給電モード時にはオフされる。出力フィルタ5と電磁接触器18との間のノードN2に現われる電圧VU,VV,VWは、電圧センサ37によって検出される。
半導体スイッチ20は、交流入力端子T1と交流出力端子T2との間に接続される。半導体スイッチ20は、サイリスタを含み、制御装置10Aによって制御される。半導体スイッチ20は、通常時はオフし、インバータ給電モードからバイパス給電モードへ移行するときに所定時間だけオンする。
電磁接触器21は、半導体スイッチ20に並列接続され、制御装置10Aによって制御される。電磁接触器21は、図7に示すように、三相ライン19のU相ラインに接続される電磁接触器21U、V相ラインに接続される電磁接触器21V、およびW相ラインに接続される電磁接触器21Wにより構成される。電磁接触器21は、インバータ給電モード時にはオフされ、バイパス給電モード時にはオンされる。以下の説明では、半導体スイッチ20および電磁接触器21の並列回路を、バイパス回路とも称する。
交流入力端子T1と半導体スイッチ20との間のノードN3に現われる電圧VU1,VV1,VW1は、電圧センサ38によって検出される。電圧センサ38は、電圧VU1,VV1,VW1を示す三相電圧信号を制御装置10Aに出力する。
なお、図6の例では、バイパス給電モード時に用いるバイパス交流電源を商用交流電源1と同じとしているが、商用交流電源1とは別にバイパス交流電源を設けてもよい。
制御装置10Aは、コンバータ3、インバータ4および直流電圧変換器7の動作を制御する。具体的には、制御装置10Aは、電圧センサ31からの三相電圧信号、電流センサ32からの三相電流信号、電圧センサ37からの三相電圧信号、電圧センサ34が検出した電圧Vdcを示す信号、停電検出回路33からの停電信号、電圧センサ35が検出した電圧VBを示す信号、電流センサ36が検出した電流IBを示す信号、および電圧センサ38からの三相電圧信号等を受けてPWM制御を実行する。
制御装置10Aは、コンバータ制御部を含んでいる。当該コンバータ制御部は、図3に示したコンバータ制御部60と基本的構成が同じであるが、電圧指令生成回路62に代えて、電圧指令生成回路62Aを含む点が異なっている。電圧指令生成回路62Aは、電圧センサ31が検出した電圧VR,VS,VT、電流センサ32が検出した電流IR,IS,IT、電圧センサ34が検出した電圧Vdc、電圧センサ37が検出した電圧VU,VV,VW、および電圧センサ38が検出した電圧VU1,VV1,VW1を受けて、R相、S相およびT相にそれぞれ対応する電圧指令値VR*,VS*,VT*を生成する。
以下、電圧指令生成回路62Aの構成について説明する。図7は、制御装置10Aのコンバータ制御部に含まれる、電圧指令生成回路62Aの機能ブロック図である。電圧指令生成回路62Aの基本的構成は、図4に示した電圧指令生成回路62と同じであるが、基準値生成回路70に代えて、基準値生成回路70Aを含む点が異なっている。
基準値生成回路70Aは、電圧センサ31が検出した電圧VR,VS,VT、電圧センサ37が検出した電圧VU,VV,VWおよび電圧センサ38が検出した電圧VU1,VV1,VW1を受けて、電圧Vdcの目標値である基準値Vdc*を生成する。
図8は、基準値生成回路70Aの構成例を示す図である。図8を参照して、基準値生成回路70Aは、三相全波整流回路80,81,82と、最大値選択回路84とを含む。基準値生成回路70Aは、図5に示した基準値生成回路70に対して、三相全波整流回路82を追加したものである。
三相全波整流回路82(第3の整流回路)には、三相全波整流回路80,81(第1および第2の整流回路)と同様に、6個の逆並列ダイオードをブリッジ接続したブリッジ整流器が用いられる。三相全波整流回路82は、三相ライン19の三相電圧VU1,VV1,VW1を整流して直流電圧Vdc3に変換する。直流電圧Vdc3は、線間電圧VUV1(電圧VU1と電圧VV1との差分)の絶対値|VUV1|、線間電圧VVW1(電圧VV1と電圧VW1との差分)の絶対値|VVW1|、および線間電圧VWU1(電圧VW1と電圧VU1との差分)の絶対値|VWU1|のうちの最大値と等しくなる。直流電圧Vdc3は、バイパス回路を経由して負荷6に供給される交流出力電圧(出力線間電圧VUV1,VVW1,VWU1)のピーク値を含んでいる。
最大値選択回路84は、三相全波整流回路80により変換された直流電圧Vdc1、三相全波整流回路81により変換された直流電圧Vdc2および、三相全波整流回路82により変換された直流電圧Vdc3のうちから最も大きいものを選択する。最大値選択回路84は、選択した直流電圧を、基準値Vdc*として加算器71(図7)に出力する。
三相全波整流回路80から出力される直流電圧Vdc1は、商用交流電源1から供給される交流入力電圧(入力線間電圧VRS,VST,VTR)の変動を反映した値となる。三相全波整流回路81から出力される直流電圧Vdc2は、負荷6に供給される交流出力電圧(出力線間電圧VUV,VVW,VWU)の変動を反映した値となる。三相全波整流回路82から出力される直流電圧Vdc3は、バイパス回路を経由して負荷6に供給される交流出力電圧(出力線間電圧VUV1,VVW1,VWU1)の変動を反映した値となる。最大値選択回路84が直流電圧Vdc1,Vdc2およびVdc3のうちの最も大きいものを選択して基準値Vdc*を生成することにより、生成された基準値Vdc*は、これらの交流入力電圧および交流出力電圧のうちの変動が最も大きくなる電圧のピーク値に追従して変化することになる。
図6に示す無停電電源装置においては、無停電電源装置の保守および点検時、または、インバータ4が故障したときに、インバータ給電モードからバイパス給電モードに移行する。このとき、半導体スイッチ20が瞬時にオンし、次いで電磁接触器21がオンする。その後、電磁接触器18がオフすることにより、無瞬断でインバータ給電状態からバイパス給電状態に切替えることができる。
しかしながら、バイパス回路を経由して負荷6に供給される交流出力電圧(出力線間電圧VUV1,VVW1,VWU1)が変動し、インバータ4から負荷6に供給される交流出力電圧(出力線間電圧VUV,VVW,VWU)よりも高くなると、バイパス回路がオンされてから電磁接触器18がオフされるまでの間、すなわち、バイパス回路および電磁接触器18がともにオンされている間に、交流出力端子T2からインバータ4側に向けて電流が流れることになる。この電流は横流と呼ばれる。この横流の発生を抑えるためには、インバータ4から出力される交流出力電圧がバイパス回路を経由して供給される交流出力電圧以上であることが好ましい。このようにバイパス回路を経由して供給される交流出力電圧VUV1,VVW1,VWU1は、インバータ4の制御に影響を与え得る。
基準値生成回路70Aによれば、バイパス回路を経由して供給される交流出力電圧VUV1,VVW1,VWU1が変動して、インバータ4から供給される交流出力電圧VUV,VVW,VWUよりもピーク値が増加した場合には、当該ピーク値の増加が反映されて基準値Vdc*が高く設定される。この基準値Vdc*と電圧Vdcとの差が0となるようにコンバータ3の入力電流が制御されることにより、電圧Vdcが増加する。その結果、インバータ4の正弦波PWM制御において、変調率が1を超えることを防ぐことができる。したがって、インバータ4の交流出力電圧を正弦波状であって、かつ、バイパス回路を経由して供給される交流出力電圧以上になるように制御することができる。
以上のように、本実施の形態2によれば、インバータ給電モードからバイパス給電モードに移行する際に、インバータ4またはバイパス回路から供給される交流出力電圧が変動した場合であっても、交流出力電圧の変動に追従するように基準値Vdc*が動的に設定されることで、電圧Vdcも変動する。これにより、交流出力電圧の変動に影響されることなく、インバータ給電モードからバイパス給電モードに移行することができる。したがって、基準値Vdc*を、交流出力電圧の変動分に相当するマージンを持たせた値に固定的に設定するものと比較して、制御の安定性を損なうことなく、電力変換装置100全体の損失を低減することができる。
[実施の形態3]
図9は、図5に示した基準値生成回路70の他の構成例を示す回路図である。図9を参照して、基準値生成回路70Bは、図5に示した基準値生成回路70と基本的構成が同じであるが、最大値ホールド回路85、ゲイン回路88,86、比較器87および切換回路89が付加されている点で異なっている。
最大値選択回路84は、三相全波整流回路80により変換された直流電圧Vdc1および三相全波整流回路81により変換された直流電圧Vdc2のうちの大きい方を選択し、選択した直流電圧を最大値ホールド回路85に出力するとともに、比較器87に出力する。
最大値ホールド回路85は、最大値選択回路84から送られてくる直流電圧を、所定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。
ゲイン回路86は、最大値ホールド回路85に保持されている直流電圧にゲインG1を乗算し、乗算結果を閾値Vthとして出力する。ゲインG1は0より大きく1より小さくなるように設定された固定値である。例えばゲインG1は0.8〜0.9程度の値に設定されている。
比較器87は、非反転入力端子(+端子)にゲイン回路86から出力された閾値Vthが入力され、反転入力端子(−端子)に最大値選択回路84により選択された直流電圧が入力される。比較器87は、閾値Vthと直流電圧とを比較し、比較結果を出力する。比較器87は、最大値選択回路84からの直流電圧が閾値Vthよりも大きいときにH(論理ハイ)レベルの信号を出力し、最大値選択回路84からの直流電圧が閾値Vth以下となるときにL(論理ロー)レベルの信号を出力する。
ゲイン回路88は、最大値ホールド回路85に保持されている直流電圧に制御ゲインG2を乗算する。制御ゲインG2は、基準値Vdc*を予め設定された変化速度で増減させるために用いられる。基準値Vdc*を増加させる場合、制御ゲインG2は、値「0」を初期値として「1」に向かって上記変化速度で増加する。一方、基準値Vdc*を減少させる場合には、制御ゲインG2は、値「1」を初期値として「0」に向かって上記変化速度で減少する。なお、制御ゲインG2の変化速度は、制御装置10が基準値Vdc*の変化に電圧Vdcを追従させることができるように、制御装置10の応答速度に応じて設定されている。
切換回路89は、比較器87の出力信号に応じて、基準値生成回路70Bから出力される基準値Vdc*を、ゲイン回路88の出力(I側)と、最大値ホールド回路85の出力(II側)との間で切換える。具体的には、比較器87の出力信号がHレベルのとき、切換回路89は、最大値ホールド回路85の出力(II側)を基準値Vdc*として選択する。すなわち、最大値選択回路84からの直流電圧が閾値Vthよりも大きいときには、最大値ホールド回路85に保持された直流電圧が、基準値Vdc*として基準値生成回路70Bから出力される。
これに対して、比較器87の出力信号がLレベルのとき、切換回路89は、ゲイン回路88の出力(I側)を基準値Vdc*として選択する。すなわち、最大値選択回路84からの直流電圧が閾値Vth以下となるときには、最大値ホールド回路85に保持された直流電圧に制御ゲインG2を乗算した電圧が、基準値Vdc*として基準値生成回路70Bから出力される。最大値選択回路84からの直流電圧が閾値Vth以下となっている間、ゲイン回路88から切換回路89を経由して出力される基準値Vdc*は、所定の変化速度で徐々に減少する。
図10は、図9に示した基準値生成回路70Bから出力される基準値Vdc*の時間的変化の一例を模式的に示した図である。図10中の実線は最大値選択回路84から出力される直流電圧、すなわち、直流電圧Vdc1およびVdc2のうちの大きい方を示す。以下の説明では、最大値選択回路84の出力電圧を、Vmax(Vdc1,Vdc2)と表記する。図10において破線は切換回路89から出力される基準値Vdc*を示す。
図10には、商用交流電源1から供給される交流入力電圧VRS,VST,VTR、または、負荷6に供給される交流出力電圧VUV,VVW,VWUが減少したことにより、電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)が減少した場合が示されている。
基準値生成回路70B内部では、最大値ホールド回路85に保持された電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)にゲインG1を乗算することによって閾値Vthが演算される。なお、閾値Vthは、最大値ホールド回路85のサンプリング周波数に応じた周期で更新される。
図10の時刻t1以前では、電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)が閾値Vthよりも大きくなっている。したがって、切換回路89により、比較器87からのHレベルの出力信号に基づいて、最大値ホールド回路85の出力(II側)が基準値Vdc*として選択される。
電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)が減少して時刻t1において閾値Vth以下になると、比較器87の出力信号はHレベルからLレベルに切替わる。これにより、切換回路89では、最大値ホールド回路85の出力(I側)に代えて、ゲイン回路88の出力(I側)が基準値Vdc*として選択される。ゲイン回路88では、制御ゲインG2が値「1」を初期値として、予め設定された変化速度で減少する。これにより、基準値Vdc*は、時刻t1における電圧値から徐々に減少する。時刻t1以降における基準値Vdc*の変化速度は、電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)の変化速度よりも遅くなっている。そのため、制御装置10は、電圧Vdcを基準値Vdc*に追従させることができる。
電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)が減少から増加に転じたことによって、時刻t1より後の時刻t2において、電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)が再び閾値Vthよりも大きくなると、比較器87の出力信号はLレベルからHレベルに切替わる。したがって、切換回路89では、ゲイン回路88の出力(II側)に代えて、最大値ホールド回路85の出力(I側)が基準値Vdc*として選択される。
このような構成とすることにより、基準値Vdc*は、電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)に比べて、変動範囲が小さく抑えられている。電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)をそのまま基準値Vdc*として用いた場合、電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)が急激に変動したときに、基準値Vdc*の変動に対してコンバータ3およびインバータ4の制御を追従させることが困難となる可能性がある。これに対して、本実施の形態では、電圧Vmax(Vdc1,Vdc2)が急激に変動した場合であっても、基準値Vdc*は、コンバータ3およびインバータ4の制御可能な変化速度で、電圧Vmax(Vdc1,Vc2)に追従するように変化する。これにより、コンバータ3およびインバータ4の制御の安定性を保つことができる。
本実施の形態による電力変換装置では、コンバータ3、インバータ4および直流電圧変換器7を2レベル回路により構成したが、コンバータ3、インバータ4および直流電圧変換器7を3レベル回路により構成してもよい。
また、本実施の形態では、商用交流電源1として三相交流電源を示したが、商用交流電源1は単相交流電源であってもよい。
また本実施の形態では、無停電電源装置への適用例を説明したが、本発明は交流電力から直流電力を出力する電力変換装置に適用することが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。