JP2017045026A - 発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】フォトルミネッセンス材料を利用する新規な構造を有する発光素子を提供する。【解決手段】ある実施形態における発光素子は、透光層と、透光層上のフォトルミネッセンス層であって、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層とを有する。フォトルミネッセンス層は、透光層とは反対側の表面に、複数の凸部を含む第1表面構造を有し、透光層は、フォトルミネッセンス層の側の表面に、複数の凸部に対向する複数の凸部を含む第2表面構造を有する。第1表面構造および第2表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する。第1表面構造における複数の凸部は、第1凸部を含み、フォトルミネッセンス層に垂直、かつ、第1表面構造における複数の凸部の配列方向に平行な断面において、第1凸部の基部の幅は、頂部の幅よりも大きい。【選択図】図42

Description

本開示は、発光素子に関し、特に、フォトルミネッセンス層を有する発光素子に関する。
照明器具、ディスプレイ、プロジェクターといった光学デバイスでは、多くの用途において、必要な方向に光を出射することが求められる。蛍光灯、白色LEDなどで使用されるフォトルミネッセンス材料は等方的に発光する。よって、このような材料は、特定の方向のみに光を出射させるために、リフレクターやレンズなどの光学部品とともに用いられる。例えば、特許文献1は、配光板および補助反射板を用いて指向性を確保した照明システムを開示している。
特開2010−231941号公報
光学デバイスにおいて、リフレクターやレンズなどの光学部品を配置すると、そのスペースを確保するために、光学デバイス自身のサイズを大きくする必要がある。これらの光学部品は無くすか、少しでも小型化することが望ましい。
本開示は、フォトルミネッセンス材料を利用する新規な構造を有する発光素子を提供する。
本開示のある実施形態の発光素子は、透光層と、前記透光層上のフォトルミネッセンス層であって、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層とを備える。前記フォトルミネッセンス層は、前記透光層とは反対側の表面に、複数の凸部を含む第1表面構造を有し、前記透光層は、前記フォトルミネッセンス層の側の表面に、前記複数の凸部に対向する複数の凸部を含む第2表面構造を有する。前記第1表面構造および前記第2表面構造は、前記フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの前記光の指向角を制限する。前記第1表面構造における前記複数の凸部は、第1凸部を含み、前記フォトルミネッセンス層に垂直、かつ、前記第1表面構造における前記複数の凸部の配列方向に平行な断面において、前記第1凸部の基部の幅は、頂部の幅よりも大きい。
上記の包括的または具体的な態様は、素子、装置、システム、方法、またはこれらの任意の組み合わせで実現されてもよい。
本開示のある実施形態によれば、フォトルミネッセンス材料を利用する新規な構造を有する発光素子を提供することができる。
ある実施形態による発光素子の構成を示す斜視図である。 図1Aに示す発光素子の部分断面図である。 他の実施形態による発光素子の構成を示す斜視図である。 図1Cに示す発光素子の部分断面図である。 発光波長および周期構造の高さをそれぞれ変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を示す図である。 式(10)におけるm=1およびm=3の条件を図示したグラフである。 発光波長およびフォトルミネッセンス層の厚さtを変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を示す図である。 厚さt=238nmのときに、x方向に導波するモードの電場分布を計算した結果を示す図である。 厚さt=539nmのときに、x方向に導波するモードの電場分布を計算した結果を示す図である。 厚さt=300nmのときに、x方向に導波するモードの電場分布を計算した結果を示す図である。 図2の計算と同じ条件で、光の偏光がy方向に垂直な電場成分を有するTEモードである場合について光の増強度を計算した結果を示す図である。 2次元の周期構造の例を示す平面図である。 2次元周期構造に関して図2と同様の計算を行った結果を示す図である。 発光波長および周期構造の屈折率を変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を示す図である。 図8と同様の条件でフォトルミネッセンス層の膜厚を1000nmにした場合の結果を示す図である。 発光波長および周期構造の高さを変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を示す図である。 図10と同様の条件で、周期構造の屈折率をnp=2.0とした場合の計算結果を示す図である。 光の偏光がy方向に垂直な電場成分を有するTEモードであるものとして図9に示す計算と同様の計算を行った結果を示す図である。 図9に示す計算と同様の条件で、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavを1.5に変更した場合の結果を示す図である。 屈折率が1.5の透明基板の上に、図2に示す計算と同じ条件のフォトルミネッセンス層および周期構造を設けた場合の計算結果を示す図である。 式(15)の条件を図示したグラフである。 図1A、1Bに示す発光素子100と、励起光をフォトルミネッセンス層110に入射させる光源180とを備える発光装置200の構成例を示す図である。 x方向の周期pxを有する1次元周期構造を示す図である。 x方向の周期px、y方向の周期pyを有する2次元周期構造を示す図である。 図17Aの構成における光の吸収率の波長依存性を示す図である。 図17Bの構成における光の吸収率の波長依存性を示す図である。 2次元周期構造の一例を示す図である。 2次元周期構造の他の例を示す図である。 透明基板上に周期構造を形成した変形例を示す図である。 透明基板上に周期構造を形成した他の変形例を示す図である。 図19Aの構成において、発光波長および周期構造の周期を変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を示す図である。 複数の粉末状の発光素子を混ぜた構成を示す図である。 フォトルミネッセンス層の上に周期の異なる複数の周期構造を2次元に配列した例を示す平面図である。 表面に凹凸構造が形成された複数のフォトルミネッセンス層110が積層された構造を有する発光素子の一例を示す図である。 フォトルミネッセンス層110と周期構造120との間に保護層150を設けた構成例を示す断面図である。 フォトルミネッセンス層110の一部のみを加工することによって周期構造120を形成した例を示す図である。 周期構造を有するガラス基板上に形成されたフォトルミネッセンス層の断面TEM像を示す図である。 試作した発光素子の出射光の正面方向のスペクトルを測定した結果を示すグラフである。 TMモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と平行な軸を回転軸として回転させている状況を示す図である。 試作した発光素子を図27Aに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を測定した結果を示すグラフである。 試作した発光素子を図27Aに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を計算した結果を示すグラフである。 TEモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と平行な軸を回転軸として回転させている状況を示す図である。 試作した発光素子を図27Dに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を測定した結果を示すグラフである。 試作した発光素子を図27Dに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を計算した結果を示すグラフである。 TEモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向に垂直な軸を回転軸として回転させている状況を示す図である。 試作した発光素子を図28Aに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を測定した結果を示すグラフである。 試作した発光素子を図28Aに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を計算した結果を示すグラフである。 TMモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と平行な軸を回転軸として回転させている状況を示す図である。 試作した発光素子を図28Dに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を測定した結果を示すグラフである。 試作した発光素子を図28Dに示すように回転させたときの出射光の角度依存性を計算した結果を示すグラフである。 試作した発光素子の出射光(波長610nm)の角度依存性を測定した結果を示すグラフである。 スラブ型導波路の一例を模式的に示す斜視図である。 フォトルミネッセンス層110上に周期構造120を有する発光素子における発光増強効果を受ける光の波長および出射方向との関係を説明するための模式図である。 発光増強効果を示す波長が異なる複数の周期構造を配列した構成の例を示す模式的な平面図である。 1次元周期構造の凸部が延びる方位が異なる複数の周期構造を配列した構成の例を示す模式的な平面図である。 複数の2次元周期構造を配列した構成の例を示す模式的な平面図である。 マイクロレンズを備える発光素子の模式的な断面図である。 発光波長が異なる複数のフォトルミネッセンス層を有する発光素子の模式的な断面図である。 発光波長が異なる複数のフォトルミネッセンス層を有する他の発光素子の模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層の下に拡散防止層(バリア層)を有する発光素子の模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層の下に拡散防止層(バリア層)を有する発光素子の模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層の下に拡散防止層(バリア層)を有する発光素子の模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層の下に拡散防止層(バリア層)を有する発光素子の模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層の下に、結晶成長層(シード層)を有する発光素子の模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層の下に、結晶成長層(シード層)を有する発光素子の模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層の下に、結晶成長層(シード層)を有する発光素子の模式的な断面図である。 周期構造を保護するための表面保護層を有する発光素子の模式的な断面図である。 周期構造を保護するための表面保護層を有する発光素子の模式的な断面図である。 透明高熱伝導層を有する発光素子の模式的な断面図である。 透明高熱伝導層を有する発光素子の模式的な断面図である。 透明高熱伝導層を有する発光素子の模式的な断面図である。 透明高熱伝導層を有する発光素子の模式的な断面図である。 1次のみ(正弦波)、3次まで、5次まで、および、11次までの項を含む三角級数を計算した結果を示すグラフである。 断面形状が矩形状の複数の凸部を含む周期構造を示す模式的な断面図である。 断面形状が三角形状の複数の凸部を含む周期構造を示す模式的な断面図である。 断面形状が正弦波状の周期構造を示す模式的な断面図である。 本開示の他の実施形態による発光素子の断面の一例を示す模式的な断面図である。 複数の凸部Ptを含む周期構造の垂直断面の一部を示す模式図である。 周期構造120bにおける複数の凸部の側面の傾斜角を変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を示すグラフである。 傾斜した側面を有する凸部を含む周期構造がフォトルミネッセンス層110上に形成された発光素子の変形例を示す模式的な断面図である。 フォトルミネッセンス層110上の周期構造120b、および、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の側面の傾斜角を変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を示すグラフである。 フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部の各々における断面形状を矩形状とし、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の各々における断面形状を台形状としたときの計算結果を示すグラフである。 周期構造の断面形状の他の例を示す模式的な断面図である。 周期構造の断面形状のさらに他の例を示す模式的な断面図である。 周期構造の断面形状のさらに他の例を示す模式的な断面図である。 周期構造の断面形状のさらに他の例を示す模式的な断面図である。 スパッタリング時の圧力が比較的低い場合における、ターゲットから放出された材料粒子が基板140の表面に衝突する様子を模式的に示す図である。 スパッタリング時の圧力が比較的高い場合における、ターゲットから放出された材料粒子が基板140の表面に衝突する様子を模式的に示す図である。 断面形状が矩形状で高さが170nmの複数の凸部を含む周期構造を有する石英基板上に、スパッタリングによりYAG:Ceを堆積することによって得たサンプルの断面の画像を示す図である。 断面形状が矩形状で高さが170nmの複数の凸部を含む周期構造を有する石英基板上に、スパッタリングによりYAG:Ceを堆積することによって得たサンプルの断面の画像を示す図である。 基板140上の周期構造120aにおける凸部の高さが比較的小さい場合に得られる、フォトルミネッセンス材料の膜の模式的な断面図である。 基板140上の周期構造120aにおける凸部の高さが比較的小さい場合に得られる、フォトルミネッセンス材料の膜の模式的な断面図である。 断面形状が矩形状で高さが60nmの複数の凸部を含む周期構造を有する石英基板上に、スパッタリングによりYAG:Ceを堆積することによって得たサンプルの断面の画像を示す図である。 基板140上の周期構造120aにおける凸部の高さが比較的大きい場合に得られる、フォトルミネッセンス材料の膜の模式的な断面図である。 基板140上の周期構造120aにおける凸部の高さが比較的大きい場合に得られる、フォトルミネッセンス材料の膜の模式的な断面図である。 断面形状が矩形状で高さが200nmの複数の凸部を含む周期構造を有する石英基板上に、スパッタリングによりYAG:Ceを堆積することによって得たサンプルの断面の画像を示す図である。 周期構造120aと周期構造120bとの間のシフト量を説明するための模式的な断面図である。 周期構造120aを基準とする、周期構造120bのシフト量を変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を示すグラフである。 2つの凸部を含む表面構造が一方の表面に設けられた部材601と、部材601を覆う部材602とを有する構造体を示す斜視図である。 複数の凸部Ptを含む表面構造を有する部材603と、部材603を覆う部材604との積層構造の一例を示す模式的な断面図である。 複数の凸部Ptを含む表面構造を有する部材603と、部材603を覆う部材604との積層構造の他の一例を示す模式的な断面図である。 複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を有する表面構造の一例を示す模式的な断面図である。
[1.本開示の実施形態の概要]
本開示は、以下の項目に記載の発光素子を含む。
[項目1]
透光層と、
透光層上のフォトルミネッセンス層であって、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を備え、
フォトルミネッセンス層は、透光層とは反対側の表面に、複数の凸部を含む第1表面構造を有し、
透光層は、フォトルミネッセンス層の側の表面に、複数の凸部に対向する複数の凸部を含む第2表面構造を有し、
第1表面構造および第2表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
第1表面構造における複数の凸部は、第1凸部を含み、
フォトルミネッセンス層に垂直、かつ、第1表面構造における複数の凸部の配列方向に平行な断面において、第1凸部の基部の幅は、頂部の幅よりも大きい、発光素子。
[項目2]
第1表面構造における複数の凸部の各々は、頂部よりも幅が大きい基部を有する、項目1に記載の発光素子。
[項目3]
第1表面構造における複数の凸部の側面の傾斜角は、第2表面構造における複数の凸部の側面の傾斜角よりも小さい、項目1または2に記載の発光素子。
[項目4]
第2表面構造は、第1凸部に対向する第2凸部を含み、
断面において、第1凸部の基部の幅は、第2凸部の頂部の幅よりも小さい、項目1から3のいずれかに記載の発光素子。
[項目5]
第2表面構造は、第1凸部に対向する第2凸部を含み、
断面において、第1凸部の基部の幅は、第2凸部の頂部の幅よりも大きい、項目1から3のいずれかに記載の発光素子。
[項目6]
第2表面構造における複数の凸部は、第1凸部に対向する第2凸部を含み、
断面において、第2凸部の基部の幅は、頂部の幅よりも大きい、項目1に記載の発光素子。
[項目7]
第1表面構造における複数の凸部の各々は、頂部よりも幅が大きい基部を有する、項目6に記載の発光素子。
[項目8]
第2表面構造における複数の凸部の各々は、頂部よりも幅が大きい基部を有する、項目6または7に記載の発光素子。
[項目9]
第1表面構造における複数の凸部の側面の少なくとも一部は、フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜しており、
第2表面構造における複数の凸部の側面の少なくとも一部は、フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜している、項目6から8のいずれかに記載の発光素子。
[項目10]
第1表面構造における複数の凸部の側面の少なくとも一部、および、第2表面構造における複数の凸部の側面の少なくとも一部のうち、少なくとも一方は、階段状である、項目6から9のいずれかに記載の発光素子。
[項目11]
第1表面構造における隣接する2つの凸部間の距離をD1intとし、第2表面構造における隣接する2つの凸部間の距離をD2intとし、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<D1int<λaおよびλa/nwav-a<D2int<λaの関係が成り立つ、項目1から10のいずれかに記載の発光素子。
[項目12]
透光層と、
透光層上のフォトルミネッセンス層であって、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を備え、
フォトルミネッセンス層は、透光層とは反対側の表面に、複数の凹部を含む第1表面構造を有し、
透光層は、フォトルミネッセンス層の側の表面に、複数の凹部に対向する複数の凹部を含む第2表面構造を有し、
第1表面構造および第2表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限し、
第1表面構造における複数の凹部は、第1凹部を含み、
フォトルミネッセンス層に垂直、かつ、第1表面構造における複数の凹部の配列方向に平行な断面において、第1凹部の開口部の幅は、底部の幅よりも大きい、発光素子。
[項目13]
第1表面構造における複数の凹部の各々は、底部よりも幅が大きい開口部を有する、項目12に記載の発光素子。
[項目14]
第1表面構造における複数の凹部の側面の傾斜角は、第2表面構造における複数の凹部の側面の傾斜角よりも小さい、項目12または13に記載の発光素子。
[項目15]
第2表面構造は、第1凹部に対向する第2凹部を含み、
断面において、第1凹部の底部の幅は、第2凹部の開口部の幅よりも小さい、項目12から14のいずれかに記載の発光素子。
[項目16]
第2表面構造は、第1凹部に対向する第2凹部を含み、
断面において、第1凹部の底部の幅は、第2凹部の開口部の幅よりも大きい、項目12から14のいずれかに記載の発光素子。
[項目17]
第2表面構造における複数の凹部は、第1凹部に対向する第2凹部を含み、
断面において、第2凹部の開口部の幅は、底部の幅よりも大きい、項目12に記載の発光素子。
[項目18]
第1表面構造における複数の凹部の各々は、底部よりも幅が大きい開口部を有する、項目17に記載の発光素子。
[項目19]
第2表面構造における複数の凹部の各々は、底部よりも幅が大きい開口部を有する、項目17または18に記載の発光素子。
[項目20]
第1表面構造における複数の凹部の側面の少なくとも一部は、フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜しており、
第2表面構造における複数の凹部の側面の少なくとも一部は、フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜している、項目17から19のいずれかに記載の発光素子。
[項目21]
第1表面構造における複数の凹部の側面の少なくとも一部、および、第2表面構造における複数の凹部の側面の少なくとも一部のうち、少なくとも一方は、階段状である、項目17から20のいずれかに記載の発光素子。
[項目22]
第1表面構造における隣接する2つの凹部間の距離をD1intとし、第2表面構造における隣接する2つの凹部間の距離をD2intとし、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<D1int<λaおよびλa/nwav-a<D2int<λaの関係が成り立つ、項目12から21のいずれかに記載の発光素子。
[項目23]
D1intとD2intとが等しい、項目11または22に記載の発光素子。
[項目24]
第1表面構造は、少なくとも1つの第1周期構造を有し、
第2表面構造は、少なくとも1つの第2周期構造を有し、
少なくとも1つの第1周期構造の周期をp1aとし、少なくとも1つの第2周期構造の周期をp2aとし、空気中の波長がλaの光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<p1a<λaおよびλa/nwav-a<p2a<λaの関係が成り立つ、項目1から23のいずれかに記載の発光素子。
[項目25]
第1表面構造および第2表面構造は、フォトルミネッセンス層から出射される空気中の波長がλaの光の強度を、第1表面構造および第2表面構造によって予め決められた第1の方向において最大にする擬似導波モードを、フォトルミネッセンス層の内部に形成する、項目1から24のいずれかに記載の発光素子。
[項目26]
空気中の波長がλaの光は、第1表面構造および第2表面構造によって予め決められた第1の方向において強度が最大になる、項目1から24のいずれかに記載の発光素子。
[項目27]
第1の方向に出射された、空気中の波長がλaの光は、直線偏光である、項目25または26に記載の発光素子。
[項目28]
第1表面構造および第2表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を、15°未満に制限する、項目1から27のいずれかに記載の発光素子。
[項目29]
空気中の波長がλaの光の第1の方向を基準としたときの指向角は、15°未満である、項目1から27のいずれかに記載の発光素子。
本開示の実施形態による発光素子は、透光層と、透光層上のフォトルミネッセンス層とを有する。フォトルミネッセンス層は、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発する。フォトルミネッセンス層は、透光層とは反対側の表面に第1表面構造を有し、透光層は、フォトルミネッセンス層の側の表面に第2表面構造を有する。第1表面構造は、複数の凸部を含み、第2表面構造は、第1表面構造における複数の凸部に対向する複数の凸部を含む。あるいは、第1表面構造は、複数の凹部を含み、第2表面構造は、第1表面構造における複数の凹部に対向する複数の凹部を含む。第1表面構造および第2表面構造は、フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの光の指向角を制限する。
波長λaは、例えば、可視光の波長範囲内(例えば、380nm以上780nm以下)にある。赤外線を利用する用途では、波長λaは、780nmを超える場合もあり得る。一方、紫外線を利用する用途では、波長λaは、380nm未満の場合もあり得る。本開示では、赤外線および紫外線を含めた電磁波全般を、便宜上「光」と表現する。
フォトルミネッセンス層は、フォトルミネッセンス材料を含む。フォトルミネッセンス材料は、励起光を受けて発光する材料を意味する。フォトルミネッセンス材料は、狭義の蛍光材料および燐光材料を包含し、無機材料だけなく、有機材料(例えば色素)を包含し、さらには、量子ドット(即ち、半導体微粒子)を包含する。フォトルミネッセンス層は、フォトルミネッセンス材料に加えて、マトリクス材料(即ち、ホスト材料)を含んでもよい。マトリクス材料は、例えば、ガラスや酸化物などの無機材料や樹脂である。
透光層は、フォトルミネッセンス層を支持する基板であり得る。透光層は、例えば、フォトルミネッセンス層に近接して配置され、フォトルミネッセンス層が発する光に対して透過率が高い材料、例えば、無機材料や樹脂で形成される。透光層は、例えば誘電体(特に、光の吸収が少ない絶縁体)で形成され得る。フォトルミネッセンス層の空気側の表面が後述のサブミクロン構造を有する場合、空気層も透光層となり得る。
フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方の表面には、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方を含む表面構造が形成される。ここで「表面」とは、他の物質と接している部分(即ち界面)を意味する。透光層が空気等の気体の層である場合は、その気体の層と他の物質(例えばフォトルミネッセンス層)との間の界面が、透光層の表面である。この表面構造は、「凹凸構造」と称することもできる。表面構造は、典型的には、複数の凸部または複数の凹部が一次元または二次元に周期的に配列された部分を含む。そのような表面構造は、「周期構造」と称することができる。複数の凸部および複数の凹部は、互いに接する2つの屈折率の異なる部材(または媒質)の境界に形成される。したがって、「周期構造」は、ある方向に屈折率が周期的に変動する部分を含む構造といえる。ここで「周期的」とは、厳密に周期的である態様に限定されず、近似的に周期的であるといえる態様を含む。本明細書において、連続する複数の凸部または凹部のうち、隣接する2つの中心間の距離(以下、「中心間隔」と称することがある。)が、いずれの2つの隣接する凸部または凹部についても、ある値pの±15%以内の範囲に収まっているとき、その部分は、周期pを有する周期構造であると考える。
本明細書において「凸部」は、基準の高さの部分に対して盛り上がった部分を意味する。「凹部」は、基準の高さの部分に対して窪んだ部分を意味する。図55は、2つの凸部を含む表面構造が一方の表面に設けられた部材601と、部材601を覆う部材602とを有する構造体を示す。図55には、参考のため、互いに直交するx軸、y軸およびz軸が示されている。なお、説明の便宜のため、他の図面においても、互いに直交するx軸、y軸およびz軸を示すことがある。
部材601および602は、概ね平面状であり、かつ、xy平面に平行な面内に広がっている。図55に示す例では、z方向が、部材601および602の積層の方向に一致しており、図55には、部材601および602の積層構造のxz断面も模式的に示されている。
図55に示す例において、部材601における表面構造は、2つの凸部Pr1およびPr2を含んでおり、これらの凸部の「配列方向」を定義することができる。表面構造が2以上の凹部を含む場合も同様に、これらの凹部の「配列方向」を定義することができる。本明細書において、「配列方向」は、表面構造において2以上の凸部が並ぶ方向または2以上の凹部が並ぶ方向を意味する。図55に例示するように、y方向に沿って延びるストライプ状の2つの凸部がx方向に沿って並んでいる場合、x方向が、これらの凸部の「配列方向」である。以下では、少なくとも一方が平面状である2つの部材の界面に表面構造が形成されているとき、平面状の部材に垂直、かつ、表面構造における配列方向に平行な断面(ここではxz断面)を、「垂直断面」と呼ぶことがある。本明細書では、表面構造において配列方向に沿って測った長さを「幅」と呼ぶことがある。
図55に示す例において、凸部Pr1およびPr2は、部材601および602の界面に対してz方向に盛り上がっている。すなわち、この例における凸部の高さの基準は、部材601および602の界面であるといえる。本明細書では、上述の垂直断面において、凸部のうち、基準の高さにある部分を凸部の「基部」と呼ぶ。図55において模式的に示すように、例えば、凸部Pr1の基部B1は、凸部Pr1における、盛り上がりの基準面(ここでは部材601および602の界面)との接続部分であり、凸部Pr1のうち、部材601および602の界面に最も近い部分といってもよい。これに対し、垂直断面において、凸部のうち、基準の高さから測った距離が最大の部分を凸部の「頂部」と呼ぶ。図示する例では、凸部Pr1の基部B1の幅Bsと、頂部T1の幅Tpとは、等しい。以下では、頂部と基部とを結ぶ面を凸部の「側面」と呼ぶことがある。垂直断面における側面の形状は、直線状に限定されない。垂直断面における側面の形状は、曲線状であってもよいし、階段状であってもよい。
後に詳しく説明するように、本開示の実施形態における、表面構造を構成する凸部(または凹部)の垂直断面における形状(以下、単に「断面形状」ということがある。)は、図55に示すような矩形状に限定されない。図56および図57は、複数の凸部Ptを含む表面構造を有する部材603と、部材603を覆う部材604との積層構造の断面の例を示す。図56に示す例において、表面構造を構成する各凸部Ptの断面形状は、三角形状である。この例では、表面構造における凸部Ptの頂部の幅は、0であるといってよい。なお、図57に示すように、表面構造を構成する各凸部Ptの断面形状が、上に凸の放物線状である場合も同様に、凸部の頂部の幅が0であるといえる。このように、凸部の頂部の幅は、0であり得る。
図56および図57に例示する表面構造の垂直断面において、各凸部Ptの頂部の位置を基準の高さと考えた場合、表面構造が複数の凹部を含んでいると解釈することも可能である。すなわち、図56および図57に例示する構成において、部材603が、複数の凹部Rsを含む表面構造を有していると解釈することもできる。このとき、基準の高さを与える部分(この例では各凸部Ptの頂部)のうちの隣接する2つの間に凹部Rsが形成されているといえる。
本明細書では、上述の垂直断面において、表面構造を構成する凹部のうち、基準の高さから測った距離が最大の部分を凹部の「底部」と呼ぶ。「底部」は、凹部において基準の高さに対して最も低い部分であるといえる。なお、図56および図57に示す例では、各凹部Rsの底部Vmの幅は、0であるといってよい。上述したように、表面構造における凹部は、基準の高さを与える部分のうちの隣接する2つによって規定される。本明細書では、垂直断面において、凹部を規定するこれらの2つの部分の間を凹部の「開口部」と呼ぶ。図56および図57中の矢印Opは、凹部Rsにおける開口部の幅を模式的に示す。開口部は、表面構造において基準の高さから凹部の底部に向かって高さが減少し始める部分同士を結んでいるといえる。以下では、開口部と底部とを結ぶ面を凹部の「側面」と呼ぶことがある。凸部と同様に、垂直断面における凹部の側面の形状は、直線状、曲線状、階段状または不定形状のいずれであってもよい。
なお、凸部および凹部の形状、サイズ、分布によっては、いずれが凸部でいずれが凹部かが容易に判断できない場合があり得る。例えば、図58に示す断面図では、部材610が凹部を有し、部材620が凸部を有していると解釈することもできれば、その逆の解釈も可能である。どのように解釈したとしても、部材610および部材620の各々が、複数の凸部および凹部の少なくとも一方を有するといえることには変わりはない。図55に例示する構造において、部材602が、2つの凹部を含む表面構造を有していると解釈することも可能であり、この場合、部材602において上述の頂部T1に接する部分が、図55中の左側の凹部の底部に相当する。このとき、底部の幅は、Tpであり、その凹部における開口部の幅は、Bsである。
表面構造における隣接する2つの凸部または隣接する2つの凹部の中心間の距離(周期構造においては周期p)は、典型的にはフォトルミネッセンス層が発する光の空気中における波長λaよりも短い。フォトルミネッセンス層から発せられる光が可視光、短波長の近赤外線、または紫外線の場合、その距離はマイクロメートルのオーダー(即ちミクロンオーダー)よりも短い。よって、そのような表面構造を、「サブミクロン構造」と称することがある。「サブミクロン構造」が一部に1マイクロメートル(μm)を超える中心間隔または周期を有する部分を含んでいてもよい。以下の説明では、可視光を発するフォトルミネッセンス層を主に想定し、表面構造を意味する用語として「サブミクロン構造」の用語を主に用いる。しかし、サブミクロンオーダーを超える微細構造(例えば、赤外線を利用する用途で使用されるミクロンオーダーの微細構造)を有する表面構造についても、以下の議論は全く同様に成立する。
本開示の実施形態による発光素子においては、後に計算結果および実験結果を参照して詳述するように、少なくともフォトルミネッセンス層の内部に、ユニークな電場分布を形成する。これは、導波光がサブミクロン構造(即ち表面構造)と相互作用して形成される。このような電場分布を形成する光のモードを「擬似導波モード」と表現することができる。この擬似導波モードを活用することで、以下で説明するように、フォトルミネッセンスの発光効率の増大、指向性の向上、偏光の選択性の効果を得ることができる。なお、以下の説明において、擬似導波モードという用語を使って、本発明者らが見出した、新規な構成および/または新規なメカニズムを説明することがある。その説明は、1つの例示的な説明に過ぎず、本開示をいかなる意味においても限定するものではない。
サブミクロン構造は、例えば複数の凸部を含み、隣接する凸部間の中心間距離をDintとすると、λa/nwav-a<Dint<λaの関係を満足し得る。フォトルミネッセンス層における第1表面構造および透光層における第2表面構造の各々が、λa/nwav-a<Dint<λaの関係を満足していてもよい。サブミクロン構造は、複数の凸部に代えて複数の凹部を含んでもよい。すなわち、第1表面構造および第2表面構造の各々が複数の凹部を含み、隣接する凹部間の中心間距離Dintに関して、第1表面構造および第2表面構造の各々においてλa/nwav-a<Dint<λaの関係が成立していてもよい。以下では、簡単のために、サブミクロン構造が複数の凸部を有するものとして説明する。λは光の波長を表し、λaは空気中での光の波長であることを表現する。nwavはフォトルミネッセンス層の屈折率である。フォトルミネッセンス層が複数の材料を混合した媒質である場合、各材料の屈折率をそれぞれの体積比率で重み付けした平均屈折率をnwavとする。一般に屈折率nは波長に依存するので、λaの光に対する屈折率であることをnwav-aと明示することが望ましいが、簡単のために省略することがある。nwavは基本的にフォトルミネッセンス層の屈折率であるが、フォトルミネッセンス層に隣接する層の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率よりも大きい場合、当該屈折率が大きい層の屈折率およびフォトルミネッセンス層の屈折率をそれぞれの体積比率で重み付けした平均屈折率をnwavとする。この場合は、光学的には、フォトルミネッセンス層が複数の異なる材料の層で構成されている場合と等価であるからである。
擬似導波モードの光に対する媒質の有効屈折率をneffとすると、na<neff<nwavを満たす。ここで、naは空気の屈折率である。擬似導波モードの光を、フォトルミネッセンス層の内部を入射角θで全反射しながら伝搬する光であると考えると、有効屈折率neffは、neff=nwavsinθと書ける。また、有効屈折率neffは、擬似導波モードの電場が分布する領域に存在する媒質の屈折率によって決まるので、例えば、サブミクロン構造が透光層に形成されている場合、フォトルミネッセンス層の屈折率だけでなく、透光層の屈折率にも依存する。また、擬似導波モードの偏光方向(TEモードとTMモード)により、電場の分布は異なるので、TEモードとTMモードとでは有効屈折率neffは異なり得る。
サブミクロン構造は、フォトルミネッセンス層および透光層の少なくとも一方に形成される。フォトルミネッセンス層と透光層とが互いに接するとき、フォトルミネッセンス層と透光層との界面にサブミクロン構造が形成されてもよい。このとき、フォトルミネッセンス層および透光層がサブミクロン構造を有するといってもよい。サブミクロン構造を有する透光層がフォトルミネッセンス層に近接して配置されてもよい。ここで、透光層(またはそのサブミクロン構造)がフォトルミネッセンス層に近接するとは、典型的には、これらの間の距離が、波長λaの半分以下であることをいう。これにより、導波モードの電
場がサブミクロン構造に到達し、擬似導波モードが形成される。ただし、透光層の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率よりも大きいときには上記の関係を満足しなくても透光層まで光が到達するため、透光層のサブミクロン構造とフォトルミネッセンス層との間の距離は、波長λaの半分超であってもよい。本明細書では、フォトルミネッセンス層と透光層とが、導波モードの電場がサブミクロン構造に到達し、擬似導波モードが形成されるような配置関係にあるとき、両者が互いに関連付けられていると表現することがある。
サブミクロン構造が、上記のように、λa/nwav-a<Dint<λaの関係を満足するとき、可視光を利用する用途では、サブミクロンオーダーの大きさで特徴づけられる。サブミクロン構造は、例えば、以下に詳細に説明する実施形態の発光素子におけるように、少なくとも1つの周期構造を含み得る。少なくとも1つの周期構造は、周期をpaとすると、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成り立つ。すなわち、サブミクロン構造は、隣接する凸部間の距離Dintがpaで一定の周期構造を含み得る。λa/nwav-a<pa<λaの関係は、フォトルミネッセンス層における第1表面構造および透光層における第2表面構造の各々において成立していてもよい。第1表面構造および第2表面構造の各々が複数の凹部を含み、隣接する凹部間の中心間距離における周期paに関して、第1表面構造および第2表面構造の各々において、λa/nwav-a<pa<λaの関係が成立していてもよい。サブミクロン構造がこのような周期構造を含むと、擬似導波モードの光は、伝搬しながら周期構造と相互作用を繰り返すことにより、サブミクロン構造によって回折される。これは、自由空間を伝播する光が周期構造により回折する現象とは異なり、光が導波しながら(即ち、全反射を繰り返しながら)周期構造と作用する現象である。したがって、周期構造による位相シフトが小さくても(即ち、周期構造の高さが小さくても)効率よく光の回折を起こすことができる。
以上のようなメカニズムを利用すれば、擬似導波モードにより電場が増強される効果によって、フォトルミネッセンスの発光効率が増大するとともに、発生した光が擬似導波モードに結合する。擬似導波モードの光は、周期構造で規定される回折角度だけ進行角度が曲げられる。これを利用することによって、特定の波長の光を特定の方向に出射することができる。すなわち、周期構造が存在しない場合と比較して、指向性が顕著に向上する。さらに、TEモードとTMモードとで有効屈折率neff(=nwavsinθ)が異なるので、高い偏光の選択性を同時に得ることもできる。例えば、後に実験例を示すように、特定の波長(例えば610nm)の直線偏光(例えばTMモード)を正面方向に強く出射する発光素子を得ることができる。このとき、正面方向に出射する光の指向角は例えば15°未満である。ここで「指向角」とは、出射する特定の波長の直線偏光について、強度が最大である方向と、強度が最大強度の50%になる方向との間の角度と定義される。すなわち、指向角は強度が最大である方向を0°とした場合の片側の角度である。このように、本開示の実施形態における周期構造(即ち表面構造)は、特定の波長λaの光の指向角を制限する。言い換えれば、当該波長λaの光の配光を、周期構造がない場合と比較して狭角にする。このような、周期構造が存在しない場合と比較して指向角が低減された配光を、「狭角配光」と称することがある。本開示の実施形態における周期構造は、波長λaの光の指向角を制限するが、波長λaの光の全てを狭角に出射するのではない。例えば後述する図29に示す例では、強度が最大になる方向から離れた角度(例えば20°〜70°)の方向にも波長λaの光が僅かに出射する。しかし、全体的には、波長λaの出射光が0°〜20°の範囲に集中しており、指向角が制限されている。
なお、本開示の典型的な実施形態における周期構造は、一般的な回折格子とは異なり、光の波長λaよりも短い周期を有する。一般的な回折格子は、光の波長λaよりも十分に長い周期を有し、その結果、特定の波長の光を0次光(即ち透過光)、±1次回折光などの複数の回折光に分けて出射させる。そのような回折格子は、高次の回折光が0次光の両側に発生する。回折格子における、0次光の両側に発生する高次の回折光は、狭角配光の実現を困難にする。言い換えれば、従来の回折格子は、光の指向角を所定の角度(例えば15°程度)に制限するという本開示の実施形態に特有の効果を奏しない。この点で、本開示の実施形態における周期構造は、従来の回折格子とは顕著に異なる性質を有する。
サブミクロン構造の周期性が低くなると、指向性、発光効率、偏光度および波長選択性が弱くなる。必要に応じて、サブミクロン構造の周期性を調整すればよい。周期構造は、偏光の選択性が高い1次元周期構造であってもよいし、偏光度を小さくできる2次元周期構造であってもよい。
サブミクロン構造は、複数の周期構造を含み得る。複数の周期構造は、例えば、周期(ピッチ)が互いに異なる。あるいは、複数の周期構造は、例えば、周期性を有する方向(軸)が互いに異なる。複数の周期構造は、同一面内に形成されてもよいし、積層されてもよい。もちろん、発光素子は、複数のフォトルミネッセンス層と複数の透光層とを有し、これらが複数のサブミクロン構造を有してもよい。
サブミクロン構造は、フォトルミネッセンス層が発する光を制御するためだけでなく、励起光を効率よくフォトルミネッセンス層に導くためにも用いることができる。すなわち、励起光がサブミクロン構造により回折されフォトルミネッセンス層および透光層を導波する擬似導波モードに結合することで、効率よくフォトルミネッセンス層を励起することができる。フォトルミネッセンス材料を励起する光の空気中における波長をλexとし、この励起光に対するフォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-exとすると、λex/nwav-ex<Dint<λexの関係が成り立つサブミクロン構造を用いればよい。nwav-exはフォトルミネッセンス材料の励起波長における屈折率である。周期をpexとすると、λex/nwav-ex<pex<λexの関係が成り立つ周期構造を有するサブミクロン構造を用いてもよい。励起光の波長λexは、例えば、450nmであるが、可視光よりも短波長であってもよい。励起光の波長が可視光の範囲内にある場合、フォトルミネッセンス層が発する光とともに、励起光を出射するようにしてもよい。
[2.本開示の基礎となった知見]
本開示の具体的な実施形態を説明する前に、まず、本開示の基礎となった知見を説明する。上述のように、蛍光灯、白色LEDなどで使われるフォトルミネッセンス材料は等方的に発光する。特定の方向を光で照らすためには、リフレクターやレンズなどの光学部品が必要である。しかしながら、もしフォトルミネッセンス層自身が指向性をもって発光すれば、上記のような光学部品は不要になる(若しくは小さくできる)。これにより、光学デバイスや器具の大きさを大幅に小さくすることができる。本発明者らは、このような着想に基づき、指向性発光を得るために、フォトルミネッセンス層の構成を詳細に検討した。
本発明者らは、まず、フォトルミネッセンス層からの光が特定の方向に偏るようにするため、発光自体に特定の方向性をもたせることを考えた。発光を特徴付ける指標である発光レートΓは、フェルミの黄金則により、以下の式(1)で表される。
式(1)において、rは位置を表すベクトル、λは光の波長、dは双極子ベクトル、Eは電場ベクトル、ρは状態密度である。一部の結晶性物質を除く多くの物質では、双極子ベクトルdはランダムな方向性を有している。また、フォトルミネッセンス層のサイズと厚さが光の波長よりも十分に大きい場合、電場Eの大きさも向きに依らずほとんど一定である。よって、ほとんどの場合、<(d・E(r))>2の値は方向に依らない。即ち、発光レートΓは方向に依らず一定である。このため、ほとんどの場合においてフォトルミネッセンス層は等方的に発光する。
一方、式(1)から、異方的な発光を得るためには、双極子ベクトルdを特定の方向に揃えるか、電場ベクトルの特定方向の成分を増強するかのいずれかの工夫が必要である。これらのいずれかの工夫を行うことで、指向性発光を実現できる。本開示の実施形態では、フォトルミネッセンス層へ光を閉じ込める効果により、特定方向の電場成分が増強された擬似導波モードを利用する。そのための構成について検討し、詳細に分析した結果を以下に説明する。
[3.特定の方向の電場のみを強くする構成]
本願発明者らは、電場が強い導波モードを用いて、発光の制御を行うことを考えた。導波構造自体がフォトルミネッセンス材料を含む構成とすることで、発生した光を導波モードに結合させることができる。しかし、ただ単にフォトルミネッセンス材料を用いて導波構造を形成しただけでは、発せられた光が導波モードとなるため、正面方向へはほとんど光は出てこない。そこで、本願発明者らは、フォトルミネッセンス材料を含む導波路と周期構造とを組み合わせることを考えた。導波路に周期構造が近接し、光の電場が周期構造と重なりながら導波する場合、周期構造の作用により擬似導波モードが存在する。つまり、この擬似導波モードは、周期構造により制限された導波モードであり、電場振幅の腹が周期構造の周期と同じ周期で発生することを特徴とする。このモードは、光が導波構造に閉じ込められることにより特定方向への電場が強められたモードである。さらに、このモードは周期構造と相互作用することで、回折効果により特定方向の伝播光へと変換されるため、導波路外部へと光を出射することができる。さらに、擬似導波モード以外の光は導波路内に閉じ込められる効果が小さいため、電場は増強されない。よって、発光のほとんどは大きな電場成分を有する擬似導波モードへと結合することになる。
つまり、本願発明者らは、周期構造が近接して設けられた導波路を、フォトルミネッセンス材料を含むフォトルミネッセンス層(あるいはフォトルミネッセンス層を有する導波層)によって構成することで、発生した光を、特定方向の伝播光に変換される擬似導波モードに結合させ、指向性のある光源を実現することを考えた。
導波構造の簡便な構成として、スラブ型導波路に着目した。スラブ型導波路とは、光の導波部分が平板構造を有する導波路のことである。図30は、スラブ型導波路110Sの一例を模式的に示す斜視図である。導波路110Sの屈折率が導波路110Sを支持する透明基板140の屈折率よりも高いとき、導波路110S内を伝播する光のモードが存在する。このようなスラブ型導波路をフォトルミネッセンス層を含む構成とすることで、発光点から生じた光の電場が導波モードの電場と大きく重なるので、フォトルミネッセンス層で生じた光の大部分を導波モードに結合させることができる。さらに、フォトルミネッセンス層の厚さを光の波長程度とすることにより、電場振幅の大きい導波モードのみが存在する状況を作り出すことができる。
さらに、フォトルミネッセンス層に周期構造が近接する場合には、導波モードの電場が周期構造と相互作用することで擬似導波モードが形成される。フォトルミネッセンス層が複数の層で構成されている場合でも、導波モードの電場が周期構造に達していれば、擬似導波モードが形成されることになる。フォトルミネッセンス層の全てがフォトルミネッセンス材料である必要はなく、その少なくとも一部の領域が発光する機能を有していればよい。
周期構造を金属で形成した場合には、導波モードとプラズモン共鳴の効果によるモードが形成される。このモードは、上で述べた擬似導波モードとは異なる性質を有する。また、このモードは金属による吸収が大きいためロスが大きくなり、発光増強の効果は小さくなる。したがって、周期構造としては、吸収の少ない誘電体を用いるのが望ましい。
本発明者らは、まずこのような導波路の表面に、周期構造を形成することで、特定の角度方向の伝播光として出射することのできる擬似導波モードに、発生した光を結合させることを検討した。図1Aは、そのような導波路(例えば、フォトルミネッセンス層)110と周期構造(例えば、透光層の一部)120とを有する発光素子100の一例を模式的に示す斜視図である。以下、透光層が周期構造を有している場合(即ち、透光層に周期的なサブミクロン構造が形成されている場合)、周期構造120を透光層120ということがある。この例では、周期構造120は、各々がy方向に延びるストライプ状の複数の凸部がx方向に等間隔に並んだ1次元周期構造である。図1Bは、この発光素子100をxz面に平行な平面で切断したときの断面図である。導波路110に接するように周期pの周期構造120を設けると、面内方向の波数kwavをもつ擬似導波モードは、導波路外の伝播光へと変換され、その波数koutは以下の式(2)で表すことができる。
式(2)におけるmは整数であり、回折の次数を表す。
ここで、簡単のため、近似的に導波路内を導波する光を角度θwavで伝播する光線であると考え、以下の式(3)および(4)が成立するとする。
これらの式において、λ0は光の空気中の波長、nwavは導波路の屈折率、noutは出射側の媒質の屈折率、θoutは光が導波路外の基板または空気に出射するときの出射角度である。式(2)〜(4)から、出射角度θoutは、以下の式(5)で表すことができる。
式(5)より、nwavsinθwav=mλ0/pが成立するとき、θout=0となり、導波路の面に垂直な方向(即ち、正面)に光を出射させることができることがわかる。
以上のような原理に基づけば、発生した光を特定の擬似導波モードに結合させ、さらに周期構造を利用して特定の出射角度の光に変換することにより、その方向に強い光を出射させることができると考えられる。
上記のような状況を実現するためには、いくつかの制約条件がある。まず、擬似導波モードが存在するためには、導波路内で伝播する光が全反射することが必要である。このための条件は、以下の式(6)で表される。
この擬似導波モードを周期構造によって回折させて導波路外に光を出射させるためには、式(5)において−1<sinθout<1である必要がある。よって、以下の式(7)を満足する必要がある。
これに対し、式(6)を考慮すると、以下の式(8)が成立すればよいことがわかる。
さらに、導波路110から出射される光の方向を正面方向(θout=0)にするためには、式(5)から、以下の式(9)が必要であることがわかる。
式(9)および式(6)から、必要な条件は、以下の式(10)であることがわかる。
なお、図1Aおよび図1Bに示すような周期構造を設けた場合には、mが2以上の高次の回折効率は低いため、m=1である1次の回折光を主眼に設計すると良い。このため、本実施形態における周期構造では、m=1として、式(10)を変形した以下の式(11)を満足するように周期pが決定される。
図1Aおよび図1Bに示すように、導波路(フォトルミネッセンス層)110が透明基板に接していない場合には、noutは空気の屈折率(約1.0)となるため、以下の式(12)を満足するように周期pを決定すればよい。
一方、図1Cおよび図1Dに例示するような透明基板140上にフォトルミネッセンス層110および周期構造120を形成した構造を採用してもよい。この場合には、透明基板140の屈折率nsが空気の屈折率よりも大きいことから、式(11)においてnout=nsとした次式(13)を満足するように周期pを決定すればよい。
なお、式(12)、(13)では、式(10)においてm=1の場合を想定したが、m≧2であってもよい。すなわち、図1Aおよび図1Bに示すように発光素子100の両面が空気層に接している場合には、mを1以上の整数として、以下の式(14)を満足するように周期pが設定されていればよい。
同様に、図1Cおよび図1Dに示す発光素子100aのようにフォトルミネッセンス層110が透明基板140上に形成されている場合には、以下の式(15)を満足するように周期pが設定されていればよい。
以上の不等式を満足するように周期構造の周期pを決定することにより、フォトルミネッセンス層110から発生した光を正面方向に出射させることができるため、指向性を有する発光装置を実現できる。
[4.計算による検証]
[4−1.周期、波長依存性]
本発明者らは、以上のような特定方向への光の出射が実際に可能であるかを光学解析によって検証した。光学解析は、サイバネット社のDiffractMODを用いた計算によって行った。これらの計算では、発光素子に対して外部から垂直に光を入射したときに、フォトルミネッセンス層における光の吸収の増減を計算することで、外部へ垂直に出射する光の増強度を求めた。外部から入射した光が擬似導波モードに結合しフォトルミネッセンス層で吸収されるという過程は、フォトルミネッセンス層における発光が擬似導波モードへと結合し、外部へ垂直に出射する伝播光へと変換される過程と逆の過程を計算していることに対応する。また、擬似導波モードの電場分布の計算においても、同様に外部から光を入射した場合における電場を計算した。
フォトルミネッセンス層の膜厚を1μm、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、周期構造の高さを50nm、周期構造の屈折率を1.5とし、発光波長および周期構造の周期をそれぞれ変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を図2に示す。計算モデルは、図1Aに示すように、y方向には均一な1次元周期構造とし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるとして計算を行った。図2の結果から、増強度のピークが、ある特定の波長と周期との組み合わせにおいて存在することがわかる。なお、図2において、増強度の大きさは色の濃淡で表されており、濃い(即ち黒い)方が増強度が大きく、淡い(即ち白い)方が増強度が小さい。
上記の計算において、周期構造の断面は、図1Bに示すような矩形であるものとしている。式(10)におけるm=1およびm=3の条件を図示したグラフを図3に示す。図2と図3とを比較すると、図2におけるピーク位置はm=1とm=3に対応するところに存在することがわかる。m=1の方が強度が強いのは、3次以上の高次の回折光よりも1次の回折光の回折効率の方が高いからである。m=2のピークが存在しないのは、周期構造における回折効率が低いためである。
図3で示したm=1およびm=3のそれぞれに対応する領域内において、図2では複数のラインが存在することが確認できる。これは、擬似導波モードが複数存在するからであると考えられる。
[4−2.厚さ依存性]
図4は、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、周期構造の周期を400nm、高さを50nm、屈折率を1.5とし、発光波長およびフォトルミネッセンス層の厚さtを変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を示す図である。フォトルミネッセンス層の厚さtが特定の値であるときに光の増強度がピークに達することがわかる。
図4においてピークが存在する波長600nm、厚さt=238nm、539nmのときに、x方向に導波するモードの電場分布を計算した結果を図5Aおよび図5Bにそれぞれ示す。比較のため、ピークが存在しないt=300nmの場合について同様の計算を行った結果を図5Cに示す。計算モデルは、上記と同様、y方向に均一な1次元周期構造であるとした。各図において、黒い領域ほど電場強度が高く、白い領域ほど電場強度が低いことを表している。t=238nm、539nmの場合には高い電場強度の分布があるのに対して、t=300nmでは全体的に電場強度が低い。これは、t=238nm、539nmの場合には、導波モードが存在し、光が強く閉じ込められているからである。さらに、凸部または凸部の直下に電場が最も強い部分(腹)が必ず存在しており、周期構造120と相関のある電場が発生している特徴が見て取れる。つまり、周期構造120の配置に従って、導波するモードが得られていることがわかる。また、t=238nmの場合とt=539nmの場合とを比較すると、z方向の電場の節(白い部分)の数が1つだけ異なるモードであることが分かる。
[4−3.偏光依存性]
次に偏光依存性を確認するために、図2の計算と同じ条件で、光の偏光がy方向に垂直な電場成分を有するTEモードである場合について光の増強度の計算を行った。本計算の結果を図6に示す。TMモードのとき(図2)に比べ、ピーク位置は多少変化しているものの、図3で示した領域内にピーク位置が納まっている。よって、本実施形態の構成は、TMモード、TEモードのいずれの偏光についても有効であることが確認できた。
[4−4.2次元周期構造]
さらに、2次元の周期構造による効果の検討を行った。図7Aは、x方向およびy方向の両方向に凹部および凸部が配列された2次元の周期構造120’の一部を示す平面図である。図中の黒い領域が凸部、白い領域が凹部を示している。このような2次元周期構造では、x方向とy方向の両方の回折を考慮する必要がある。x方向のみ、あるいはy方向のみの回折に関しては1次元の場合と同様であるが、x、y両方の成分を有する方向(例えば、斜め45°方向)の回折も存在するため、1次元の場合とは異なる結果が得られることが期待できる。このような2次元周期構造に関して光の増強度を計算した結果を図7Bに示す。周期構造以外の計算条件は図2の条件と同じである。図7Bに示すように、図2に示すTMモードのピーク位置に加えて、図6に示すTEモードにおけるピーク位置と一致するピーク位置も観測された。この結果は、2次元周期構造により、TEモードも、回折により変換されて出力されていることを示している。また、2次元周期構造については、x方向およびy方向の両方について、同時に1次の回折条件を満足する回折も考慮する必要がある。このような回折光は、周期pの√2倍(即ち、21/2倍)の周期に対応する角度の方向に出射する。よって、1次元周期構造の場合のピークに加えて、周期pの√2倍の周期についてもピークが発生すると考えられる。図7Bでは、このようなピークも確認できる。
2次元周期構造としては、図7Aに示すようなx方向およびy方向の周期が等しい正方格子の構造に限らず、図18Aおよび図18Bのような六角形や三角形を並べた格子構造であってもよい。また、方位方向によって(例えば、正方格子の場合x方向およびy方向)の周期が異なる構造であってもよい。
以上のように、本実施形態では、周期構造とフォトルミネッセンス層とによって形成される特徴的な擬似導波モードの光を、周期構造による回折現象を利用して、正面方向にのみ選択的に出射できることが確認できた。このような構成で、フォトルミネッセンス層を紫外線や青色光などの励起光で励起させることにより、指向性を有する発光が得られる。
[5.周期構造およびフォトルミネッセンス層の構成の検討]
次に、周期構造およびフォトルミネッセンス層の構成や屈折率などの各種条件を変えたときの効果について説明する。
[5−1.周期構造の屈折率]
まず、周期構造の屈折率に関して検討を行った。フォトルミネッセンス層の膜厚を200nm、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、周期構造は図1Aに示すようなy方向に均一な1次元周期構造とし、高さを50nm、周期を400nmとし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるものとして計算を行った。発光波長および周期構造の屈折率を変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を図8に示す。また、同様の条件でフォトルミネッセンス層の膜厚を1000nmにした場合の結果を図9に示す。
まず、フォトルミネッセンス層の膜厚に着目すると、膜厚が200nmの場合(図8)に比べ、膜厚が1000nmの場合(図9)のほうが、周期構造の屈折率の変化に対する光強度がピークとなる波長(ピーク波長と称する。)のシフトが小さいことがわかる。これは、フォトルミネッセンス層の膜厚が小さいほど、擬似導波モードが周期構造の屈折率の影響を受けやすいからである。即ち、周期構造の屈折率が高いほど、有効屈折率が大きくなり、その分ピーク波長が長波長側にシフトするが、この影響は、膜厚が小さいほど顕著になる。なお、有効屈折率は、擬似導波モードの電場が分布する領域に存在する媒質の屈折率によって決まる。
次に、周期構造の屈折率の変化に対するピークの変化に着目すると、屈折率が高いほどピークが広がり強度が下がっていることがわかる。これは、周期構造の屈折率が高いほど擬似導波モードの光を外部に放出するレートが高いため、光を閉じ込める効果が減少する、すなわちQ値が低くなることが原因である。ピーク強度を高く保つためには、光を閉じ込める効果が高い(即ちQ値が高い)擬似導波モードを利用して、適度に光を外部に放出する構成にすればよい。これを実現するためには、屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率に比べて大き過ぎる材料を周期構造に用いるのは望ましくないことがわかる。したがって、ピーク強度およびQ値をある程度高くするためには、周期構造を構成する誘電体(即ち、透光層)の屈折率を、フォトルミネッセンス層の屈折率と同等以下にすればよい。フォトルミネッセンス層がフォトルミネッセンス材料以外の材料を含むときも同様である。
[5−2.周期構造の高さ]
次に、周期構造の高さに関して検討を行った。フォトルミネッセンス層の膜厚を1000nm、フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav=1.8、周期構造は図1Aに示すようなy方向に均一な1次元周期構造で屈折率をnp=1.5、周期を400nmとし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるものとして計算を行った。発光波長および周期構造の高さを変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した結果を図10に示す。同様の条件で、周期構造の屈折率をnp=2.0とした場合の計算結果を図11に示す。図10に示す結果では、ある程度以上の高さではピーク強度やQ値(即ち、ピークの線幅)が変化していないのに対して、図11に示す結果では、周期構造の高さが大きいほどピーク強度およびQ値が低下していることがわかる。これは、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが周期構造の屈折率npよりも高い場合(図10)には、光が全反射するので、擬似導波モードの電場の染み出し(エバネッセント)部分のみが周期構造と相互作用することに起因する。電場のエバネッセント部分と周期構造との相互作用の影響は、周期構造の高さが十分大きい場合には、それ以上高さが変化しても一定である。一方、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが周期構造の屈折率npよりも低い場合(図11)は、全反射せずに周期構造の表面にまで光が到達するので、周期構造の高さが大きいほどその影響を受ける。図11を見る限り、高さは100nm程度あれば十分であり、150nmを超える領域ではピーク強度およびQ値が低下していることがわかる。したがって、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが周期構造の屈折率npよりも低い場合に、ピーク強度およびQ値をある程度高くするためには、周期構造の高さを150nm以下に設定すればよい。
[5−3.偏光方向]
次に、偏光方向に関して検討を行った。図9に示す計算と同じ条件で、光の偏光がy方向に垂直な電場成分を有するTEモードであるものとして計算した結果を図12に示す。TEモードでは、擬似導波モードの電場の染み出しがTMモードに比べて大きいため、周期構造による影響を受けやすい。よって、周期構造の屈折率npがフォトルミネッセンス層の屈折率nwavよりも大きい領域では、ピーク強度およびQ値の低下がTMモードよりも著しい。
[5−4.フォトルミネッセンス層の屈折率]
次に、フォトルミネッセンス層の屈折率に関して検討を行った。図9に示す計算と同様の条件で、フォトルミネッセンス層の屈折率nwavを1.5に変更した場合の結果を図13に示す。フォトルミネッセンス層の屈折率nwavが1.5の場合においても概ね図9と同様の効果が得られていることがわかる。ただし、波長が600nm以上の光は正面方向に出射していないことがわかる。これは、式(10)より、λ0<nwav×p/m=1.5×400nm/1=600nmとなるからである。
以上の分析から、周期構造の屈折率はフォトルミネッセンス層の屈折率と同等以下にするか、周期構造の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率以上の場合には、高さを150nm以下にすれば、ピーク強度およびQ値を高くできることがわかる。
[6.変形例]
以下、本実施形態の変形例を説明する。
[6−1.基板を有する構成]
上述のように、発光素子は、図1Cおよび図1Dに示すように、透明基板140の上にフォトルミネッセンス層110および周期構造120が形成された構造を有していてもよい。このような発光素子100aを作製するには、まず、透明基板140上にフォトルミネッセンス層110を構成するフォトルミネッセンス材料(必要に応じて、マトリクス材料を含む、以下同じ。)で薄膜を形成し、その上に周期構造120を形成する方法が考えられる。このような構成において、フォトルミネッセンス層110と周期構造120とにより、光を特定の方向に出射する機能をもたせるためには、透明基板140の屈折率nsはフォトルミネッセンス層の屈折率nwav以下にする必要がある。透明基板140をフォトルミネッセンス層110に接するように設けた場合、式(10)における出射媒質の屈折率noutをnsとした式(15)を満足するように周期pを設定する必要がある。
このことを確認するために、屈折率が1.5の透明基板140の上に、図2に示す計算と同じ条件のフォトルミネッセンス層110および周期構造120を設けた場合の計算を行った。本計算の結果を図14に示す。図2の結果と同様、波長ごとに特定の周期において光強度のピークが現れることが確認できるが、ピークが現れる周期の範囲が図2の結果とは異なることがわかる。これに対して、式(10)の条件をnout=nsとした式(15)の条件を図15に示す。図14において、図15に示される範囲に対応する領域内に、光強度のピークが現れていることがわかる。
したがって、透明基板140上にフォトルミネッセンス層110と周期構造120とを設けた発光素子100aでは、式(15)を満足する周期pの範囲において効果が得られ、式(13)を満足する周期pの範囲において特に顕著な効果が得られる。
[6−2.励起光源を有する発光装置]
図16は、図1A、1Bに示す発光素子100と、励起光をフォトルミネッセンス層110に入射させる光源180とを備える発光装置200の構成例を示す図である。上述のように、本開示の構成では、フォトルミネッセンス層を紫外線や青色光などの励起光で励起させることにより、指向性をもつ発光が得られる。そのような励起光を出射するように構成された光源180を設けることにより、指向性をもつ発光装置200を実現できる。光源180から出射される励起光の波長は、典型的には紫外または青色領域の波長であるが、これらに限らず、フォトルミネッセンス層110を構成するフォトルミネッセンス材料に応じて適宜決定される。なお、図16では、光源180がフォトルミネッセンス層110の下面から励起光を入射させるように配置されているが、このような例に限定されず、例えば、フォトルミネッセンス層110の上面から励起光を入射させてもよい。励起光は、フォトルミネッセンス層110の主面(即ち、上面または下面)に垂直な方向に対して傾斜した方向から(即ち、斜めに)入射させてもよい。励起光を、フォトルミネッセンス層110内で全反射が生じる角度で斜めに入射させることにより、より効率的に発光させることができる。
励起光を擬似導波モードに結合させることで、効率よく光を出射させる方法もある。図17Aから図17Dは、そのような方法を説明するための図である。この例では、図1C、1Dに示す構成と同様、透明基板140上にフォトルミネッセンス層110および周期構造120が形成されている。まず、図17Aに示すように、発光増強のためにx方向の周期pxを決定し、続いて、図17Bに示すように、励起光を擬似導波モードに結合させるためにy方向の周期pyを決定する。周期pxは、式(10)においてpをpxに置き換えた条件を満足するように決定される。一方、周期pyは、mを1以上の整数、励起光の波長をλex、フォトルミネッセンス層110に接する媒質のうち、周期構造120を除く最も屈折率の高い媒質の屈折率をnoutとして、以下の式(16)を満足するように決定される。
ここで、noutは、図17Bの例では透明基板140のnsであるが、図16のように透明基板140を設けない構成では、空気の屈折率(約1.0)である。
特に、m=1として、次の式(17)を満足するように周期pyを決定すれば、励起光を擬似導波モードに変換する効果をより高くすることができる。
このように、式(16)の条件(特に式(17)の条件)を満足するように周期pyを設定することで、励起光を擬似導波モードに変換することができる。その結果、フォトルミネッセンス層110に効率的に波長λexの励起光を吸収させることができる。
図17Cおよび図17Dは、それぞれ、図17Aおよび図17Bに示す構造に対して光を入射したときに光が吸収される割合を波長ごとに計算した結果を示す図である。この計算では、px=365nm、py=265nmとし、フォトルミネッセンス層110からの発光波長λを約600nm、励起光の波長λexを約450nm、フォトルミネッセンス層110の消衰係数を0.003としている。図17Dに示すように、フォトルミネッセンス層110から生じた光だけでなく、励起光である約450nmの光に対して高い吸収率を示している。これは、入射した光が効果的に擬似導波モードに変換されることで、フォトルミネッセンス層に吸収される割合を増大させることができているためである。また、発光波長である約600nmに対しても吸収率が増大しているが、これは、もし約600nmの波長の光をこの構造に入射した場合には、同様に効果的に擬似導波モードに変換されるということである。このように、図17Bに示す周期構造120は、x方向およびy方向のそれぞれに周期の異なる構造(周期成分と称する。)を有する2次元周期構造である。このように、複数の周期成分を有する2次元周期構造を用いることにより、励起効率を高めつつ、出射強度を高めることが可能になる。なお、図17A、17Bでは励起光を基板140側から入射させているが、周期構造120側から入射させても同じ効果が得られる。
さらに、複数の周期成分を有する2次元周期構造としては、図18Aまたは図18Bに示すような構成を採用してもよい。図18Aに示すように六角形の平面形状を有する複数の凸部または凹部を周期的に並べた構成や、図18Bに示すように三角形の平面形状を有する複数の凸部または凹部を周期的に並べた構成とすることにより、周期とみなすことのできる複数の主軸(図の例では軸1〜3)を定めることができる。このため、それぞれの軸方向について異なる周期を割り当てることができる。これらの周期の各々を、複数の波長の光の指向性を高めるために設定してもよいし、励起光を効率よく吸収させるために設定してもよい。いずれの場合も、式(10)に相当する条件を満足するように各周期が設定される。
[6−3.透明基板上の周期構造]
図19Aおよび図19Bに示すように、透明基板140上に周期構造120aを形成し、その上にフォトルミネッセンス層110を設けてもよい。図19Aの構成例では、基板140上の凹凸からなる周期構造120aに追従するようにフォトルミネッセンス層110が形成されている。その結果、フォトルミネッセンス層110の表面にも同じ周期の周期構造120bが形成されている。一方、図19Bの構成例では、フォトルミネッセンス層110の表面は平坦になるように処理されている。これらの構成例においても、周期構造120aの周期pを式(15)を満足するように設定することにより、指向性発光を実現できる。
この効果を検証するため、図19Aの構成において、発光波長および周期構造の周期を変えて正面方向に出力する光の増強度を計算した。ここで、フォトルミネッセンス層110の膜厚を1000nm、フォトルミネッセンス層110の屈折率をnwav=1.8、周期構造120aはy方向に均一な1次元周期構造で高さを50nm、屈折率をnp=1.5、周期を400nmとし、光の偏光はy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるものとした。本計算の結果を図19Cに示す。本計算においても、式(15)の条件を満足する周期で光強度のピークが観測された。
[6−4.粉体]
以上の実施形態によれば、周期構造の周期や、フォトルミネッセンス層の膜厚を調整することで任意の波長の発光を強調することができる。例えば、広い帯域で発光するフォトルミネッセンス材料を用いて図1A、1Bのような構成にすれば、ある波長の光のみを強調することが可能である。よって、図1A、1Bのような発光素子100の構成を粉末状にして、蛍光材料として利用してもよい。また、図1A、1Bのような発光素子100を樹脂やガラスなどに埋め込んで利用してもよい。
図1A、1Bのような単体の構成では、ある特定の波長しか特定の方向に出射できないため、例えば広い波長域のスペクトルを持つ白色などの発光を実現することは難しい。そこで、図20に示すように周期構造の周期やフォトルミネッセンス層の膜厚などの条件の異なる複数の粉末状の発光素子100を混ぜたものを用いることにより、広い波長域のスペクトルを持つ発光装置を実現できる。この場合、個々の発光素子100の一方向のサイズは、例えば数μm〜数mm程度であり、その中に例えば数周期〜数百周期の1次元または2次元の周期構造を含み得る。
[6−5.周期の異なる構造を配列]
図21は、フォトルミネッセンス層の上に周期の異なる複数の周期構造を2次元に配列した例を示す平面図である。この例では、3種類の周期構造120a、120b、120cが隙間なく配列されている。周期構造120a、120b、120cは、例えば、赤、緑、青の波長域の光をそれぞれ正面に出射するように周期が設定されている。このように、フォトルミネッセンス層の上に周期の異なる複数の構造を並べることによっても広い波長域のスペクトルに対し指向性を発揮させることができる。なお、複数の周期構造の構成は、上記のものに限定されず、任意に設定してよい。
[6−6.積層構造]
図22は、表面に凹凸構造が形成された複数のフォトルミネッセンス層110が積層された構造を有する発光素子の一例を示している。複数のフォトルミネッセンス層110の間には、透明基板140が設けられ、各層のフォトルミネッセンス層110の表面に形成された凹凸構造が上記の周期構造またはサブミクロン構造に相当する。図22に示す例では、3層の周期の異なる周期構造が形成されており、それぞれ、赤、青、緑の波長域の光を正面に出射するように周期が設定されている。また、各周期構造の周期に対応する色の光を発するように各層のフォトルミネッセンス層110の材料が選択されている。このように、周期の異なる複数の周期構造を積層することによっても、広い波長域のスペクトルに対し指向性を発揮させることができる。
なお、層数や各層のフォトルミネッセンス層110および周期構造の構成は上記のものに限定されず、任意に設定してよい。例えば2層の構成では、透光性の基板を介して第1のフォトルミネッセンス層と第2のフォトルミネッセンス層とが対向するように形成され、第1および第2のフォトルミネッセンス層の表面に、それぞれ第1および第2の周期構造が形成されることになる。この場合、第1のフォトルミネッセンス層および第1の周期構造の対と、第2のフォトルミネッセンス層および第2の周期構造の対のそれぞれについて、式(15)に相当する条件を満足していればよい。3層以上の構成においても同様に、各層におけるフォトルミネッセンス層および周期構造について、式(15)に相当する条件を満足していればよい。フォトルミネッセンス層と周期構造との位置関係が図22に示すものとは逆転していてもよい。図22に示す例では、各層の周期が異なっているが、これらを全て同じ周期にしてもよい。その場合、スペクトルを広くすることはできないが、発光強度を大きくすることができる。
[6−7.保護層を有する構成]
図23は、フォトルミネッセンス層110と周期構造120との間に保護層150を設けた構成例を示す断面図である。このように、フォトルミネッセンス層110を保護するための保護層150を設けても良い。ただし、保護層150の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率よりも低い場合は、保護層150の内部に波長の半分程度しか光の電場が染み出さない。よって、保護層150が波長よりも厚い場合には、周期構造120に光が届かない。このため、擬似導波モードが存在せず、光を特定方向に放出する機能を得ることができない。保護層150の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率と同程度あるいはそれ以上の場合には、保護層150の内部にまで光が到達する。よって、保護層150に厚さの制約は無い。ただし、その場合でも、光が導波する部分(以下、この部分を「導波層」と呼ぶ。)の大部分をフォトルミネッセンス材料で形成したほうが大きな光の出力が得られる。よって、この場合でも保護層150は薄いほうが望ましい。なお、保護層150を周期構造(透光層)120と同じ材料を用いて形成してもよい。このとき、周期構造を有する透光層が保護層を兼ねる。透光層120の屈折率はフォトルミネッセンス層110よりも小さいことが望ましい。
[7.材料]
以上のような条件を満たす材料でフォトルミネッセンス層(あるいは導波層)および周期構造を構成すれば、指向性発光を実現できる。周期構造には任意の材料を用いることができる。しかしながら、フォトルミネッセンス層(あるいは導波層)や周期構造を形成する媒質の光吸収性が高いと、光を閉じ込める効果が低下し、ピーク強度およびQ値が低下する。よって、フォトルミネッセンス層(あるいは導波層)および周期構造を形成する媒質として、光吸収性の比較的低いものが用いられ得る。
周期構造の材料としては、例えば、光吸収性の低い誘電体が使用され得る。周期構造の材料の候補としては、例えば、MgF2(フッ化マグネシウム)、LiF(フッ化リチウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SiO2(石英)、ガラス、樹脂、MgO(酸化マグネシウム)、ITO(酸化インジウム錫)、TiO2(酸化チタン)、SiN(窒化シリコン)、Ta25(五酸化タンタル)、ZrO2(ジルコニア)、ZnSe(セレン化亜鉛)、ZnS(硫化亜鉛)などが挙げられる。ただし、前述のとおり周期構造の屈折率をフォトルミネッセンス層の屈折率よりも低くする場合、屈折率が1.3〜1.5程度であるMgF2、LiF、CaF2、SiO2、ガラス、樹脂を用いることができる。
フォトルミネッセンス材料は、狭義の蛍光材料および燐光材料を包含し、無機材料だけなく、有機材料(例えば色素)を包含し、さらには、量子ドット(即ち、半導体微粒子)を包含する。一般に、無機材料をホストとする蛍光材料は屈折率が高い傾向にある。青色に発光する蛍光材料としては、例えば、M10(PO46Cl2:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、BaMgAl1017:Eu2+、M3MgSi28:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、M5SiO4Cl6:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を用いることができる。緑色に発光する蛍光材料としては、例えば、M2MgSi27:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、SrSi5AlO27:Eu2+、SrSi222:Eu2+、BaAl24:Eu2+、BaZrSi39:Eu2+、M2SiO4:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、BaSi342:Eu2+Ca8Mg(SiO44Cl2:Eu2+、Ca3SiO4Cl2:Eu2+、CaSi12-(m+n)Al(m+n)n16-n:Ce3+、β−SiAlON:Eu2+を用いることができる。赤色に発光する蛍光材料としては、例えば、CaAlSiN3:Eu2+、SrAlSi47:Eu2+、M2Si58:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、MSiN2:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、MSi222:Yb2+(M=SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、Y22S:Eu3+,Sm3+、La22S:Eu3+,Sm3+、CaWO4:Li1+,Eu3+,Sm3+、M2SiS4:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、M3SiO5:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を用いることができる。黄色に発光する蛍光材料としては、例えば、Y3Al512:Ce3+、CaSi222:Eu2+、Ca3Sc2Si312:Ce3+、CaSc24:Ce3+、α−SiAlON:Eu2+、MSi222:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)、M7(SiO36Cl2:Eu2+(M=Ba,SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種)を用いることができる。
量子ドットについては、例えば、CdS、CdSe、コア・シェル型CdSe/ZnS、合金型CdSSe/ZnSなどの材料を用いることができ、材質によって様々な発光波長を得ることができる。量子ドットのマトリクスとしては、例えば、ガラスや樹脂を用いることができる。
図1C、1Dなどに示す透明基板140は、フォトルミネッセンス層110の屈折率よりも低い透光性材料によって構成される。そのような材料として、例えば、MgF2(フッ化マグネシウム)、LiF(フッ化リチウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SiO2(石英)、ガラス、樹脂が挙げられる。なお、基板140を介さずにフォトルミネッセンス層110に励起光を入射させるような構成においては、基板140が透明であることは必須ではない。
[8.製造方法]
続いて、製造方法の一例を説明する。
図1C、1Dに示す構成を実現する方法として、例えば、透明基板140上に蛍光材料を蒸着、スパッタリング、塗布などの工程によってフォトルミネッセンス層110の薄膜を形成し、その後、誘電体を成膜し、フォトリソグラフィなどの方法によってパターニングすることによって周期構造120を形成する方法がある。上記方法の代わりに、ナノインプリントによって周期構造120を形成してもよい。また、図24に示すように、フォトルミネッセンス層110の一部のみを加工することによって周期構造120を形成してもよい。その場合、周期構造120はフォトルミネッセンス層110と同じ材料で形成されることになる。
図1A、1Bに示す発光素子100は、例えば、図1C、1Dに示す発光素子100aを作製した後、基板140からフォトルミネッセンス層110および周期構造120の部分を剥がす工程を行うことで実現可能である。
図19Aに示す構成は、例えば、透明基板140上に半導体プロセスやナノインプリントなどの方法で周期構造120aを形成した後、その上にフォトルミネッセンス層110を構成する材料を蒸着やスパッタリングなどの方法で形成することによって実現可能である。あるいは、塗布などの方法を用いて周期構造120aの凹部をフォトルミネッセンス層110で埋め込むことによって図19Bに示す構成を実現することもできる。
なお、上記の製造方法は一例であり、本開示の発光素子は上記の製造方法に限定されない。
[9.実験例]
以下に、本開示の実施形態による発光素子を作製した例を説明する。
図19Aと同様の構成を有する発光素子のサンプルを試作し、特性を評価した。発光素子は以下の様にして作製した。
ガラス基板に、周期400nm、高さ40nmの1次元周期構造(ストライプ状の凸部)を設け、その上からフォトルミネッセンス材料であるYAG:Ceを210nm成膜した。この断面図のTEM像を図25に示し、これを450nmのLEDで励起することでYAG:Ceを発光させたときの、正面方向のスペクトルを測定した結果を図26に示す。図26には、周期構造がない場合の測定結果(ref)と、1次元周期構造に対して平行な偏光成分を持つTMモードと、垂直な偏光成分を持つTEモードを測定した結果について示した。周期構造がある場合は、周期構造がない場合に対して、特定の波長の光が著しく増加していることが見て取れる。また、1次元周期構造に対して平行な偏光成分を持つTMモードの方が、光の増強効果が大きいことが分かる。
さらに、同じサンプルにおいて、出射光強度の角度依存性を測定した結果および計算結果を図27A〜27Fおよび図28A〜28Fに示す。図27Aは、TMモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と平行な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図27Bおよび図27Cは、このように回転させた場合についての測定結果および計算結果をそれぞれ示している。一方、図27Dは、TEモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と平行な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図27Eおよび図27Fは、この場合の測定結果および計算結果をそれぞれ示している。図28Aは、TEモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向に垂直な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図28Bおよび図28Cは、この場合の測定結果および計算結果をそれぞれ示している。一方、図28Dは、TMモードの直線偏光を出射する発光素子を、1次元周期構造120のライン方向と垂直な軸を回転軸として回転させている状況を示している。図28Eおよび図28Fは、この場合の測定結果および計算結果をそれぞれ示している。
図27A〜27Fおよび図28A〜28Fから明らかなように、TMモードの方が増強される効果が高い。また、増強される光の波長は角度によってシフトすることがわかる。例えば、波長610nmの光については、TMモードでかつ正面方向にしか光が存在しないため、指向性が高くかつ偏光発光していることがわかる。また、図27Bと図27C、図27Eと図27F、図28Bと図28C、図28Eと図28Fのそれぞれの測定結果と計算結果とが整合していることから、上述の計算の妥当性が実験によって裏付けられた。
図29は、波長610nmの光について、図28Dに示すように、ライン方向に対して垂直な方向を回転軸として回転させた場合の強度の角度依存性を示している。正面方向に強い発光増強が起きており、そのほかの角度に対しては、ほとんど光が増強されていない様子がみてとれる。正面方向に出射される光の指向角は15°未満であることがわかる。なお、指向角は、前述のように、強度が最大強度の50%となる角度であり、最大強度の方向を中心に片側の角度で表す。図29に示す結果から、指向性発光が実現していることがわかる。さらに、出射される光は全てTMモードの成分であるため、同時に偏光発光も実現していることがわかる。
以上の検証のための実験は、広帯域の波長帯で発光するYAG:Ceを使って行った。狭帯域の光を発するフォトルミネッセンス材料を用いて同様の構成で実験を行ったとしても、その波長の光に対して高い指向性および偏光発光を実現することができる。さらに、そのようなフォトルミネッセンス材料を用いた場合、他の波長の光は発生しないために他の方向や他の偏光状態の光は発生しない光源を実現することができる。
[10.他の変形例]
次に、本開示の発光素子および発光装置の他の変形例を説明する。
上述したように、本開示の発光素子が有するサブミクロン構造によって、発光増強効果を受ける光の波長および出射方向は、サブミクロン構造の構成に依存する。図31に示す、フォトルミネッセンス層110上に周期構造120を有する発光素子を考える。ここでは、周期構造120はフォトルミネッセンス層110と同じ材料で形成されており、図1Aに示した1次元周期構造120を有する場合を例示する。1次元周期構造120によって発光増強を受ける光は、1次元周期構造120の周期p(nm)、フォトルミネッセンス層110の屈折率nwav、光が出射される外部の媒質の屈折率noutとし、1次元周期構造120への入射角をθwav、1次元周期構造120から外部の媒質への出射角をθoutとすると、p×nwav×sinθwav−p×nout×sinθout=mλの関係を満足する(上記の式(5)参照)。ここで、λは空気中における光の波長であり、mは整数である。
上記式から、θout=arcsin[(nwav×sinθwav−mλ/p)/nout]が得られる。したがって、一般に、波長λが異なると、発光増強を受けた光の出射角θoutが異なる。その結果、図31に模式的に示すように、観察する方向によって、見える光の色が異なる。
この視角依存性を低減させるためには、(nwav×sinθwav−mλ/p)/noutが、波長λによらず一定となるように、nwavおよびnoutを選べばよい。物質の屈折率は、波長分散(波長依存性)を有しているので、(nwav×sinθwav−mλ/p)/noutが波長λに依存しないような、nwavおよびnoutの波長分散性を有する材料を選択すればよい。例えば、外部の媒質が空気の場合、noutは、波長によらずほぼ1.0なので、フォトルミネッセンス層110および1次元周期構造120を形成する材料として、屈折率nwavの波長分散が小さい材料を選択することが望ましい。さらに、屈折率nwavがより短い波長の光に対して屈折率が低くなるような逆分散の材料のほうが望ましい。
また、図32Aに示すように、互いに発光増強効果を示す波長が異なる複数の周期構造を配列することによって、白色光を出射できるようにできる。図32Aに示す例では、赤色光(R)を増強できる周期構造120rと、緑色光(G)を増強できる周期構造120gと、青色光(B)を増強できる周期構造120bとがマトリクス状に配列されている。周期構造120r、120gおよび120bは、例えば、1次元周期構造で、それぞれの凸部は互いに平行に配列されている。したがって、偏光特性は、赤、緑、青の全ての色の光について同じである。周期構造120r、120gおよび120bによって、発光増強を受けた三原色の光が出射され、混色される結果、白色光、かつ、直線偏光が得られる。
マトリクス状に配列された各周期構造120r、120gおよび120bを単位周期構造(または画素)と呼ぶと、単位周期構造の大きさ(即ち、一辺の長さ)は、例えば、周期の3倍以上である。また、混色の効果を得るためには人間の目で単位周期構造が認識されない方が望ましく、例えば、一辺の長さは1mmよりも小さいことが望ましい。ここでは、各単位周期構造を正方形に描いているが、これに限られず、例えば、互いに隣接する周期構造120r、120gおよび120bが長方形、三角形、六角形などの正方形以外の形状でもよい。
また、周期構造120r、120gおよび120bの下に設けられているフォトルミネッセンス層は、周期構造120r、120gおよび120bに共通であってもよいし、それぞれの色の光に対応して異なるフォトルミネッセンス材料を有するフォトルミネッセンス層を設けてもよい。
図32Bに示すように、1次元周期構造の凸部が延びる方位が異なる複数の周期構造(周期構造120h、120iおよび120jを含む)を配列してもよい。複数の周期構造が発光増強する光の波長は、同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、同じ周期構造を図32Bのように配列すると、偏光していない光を得ることができる。また、図32Aにおける周期構造120r、120gおよび120bのそれぞれについて、図32Bの配列を適用すると、全体として、非偏光の白色光を得ることができる。
もちろん、周期構造は、1次元周期構造に限らず、図32Cに示すように、複数の2次元周期構造(周期構造120k、120mおよび120nを含む)を配列してもよい。このとき、周期構造120k、120mおよび120nの周期や方位は、上述したように、同じでもよいし、異なってもよく、必要に応じて適宜設定され得る。
図33に示すように、例えば、発光素子の光の出射側にマイクロレンズ130のアレイを配置してもよい。マイクロレンズ130のアレイにより、斜め方向に出射される光を法線方向に曲げることによって、混色の効果を得ることができる。
図33に示した発光素子は、図32Aにおける周期構造120r、120gおよび120bをそれぞれ有する領域R1、R2およびR3を有する。領域R1においては、周期構造120rによって、赤色光Rが法線方向に出射され、例えば緑色光Gは斜め方向に出射される。マイクロレンズ130の屈折作用によって、斜め方向に出射された緑色光Gは法線方向に曲げられる。その結果、法線方向においては、赤色光Rと緑色光Gとが混色されて観察される。このように、マイクロレンズ130を設けることによって、出射される光の波長が角度によって異なるという現象が抑制される。ここでは、複数の周期構造に対応する複数のマイクロレンズを一体化したマイクロレンズアレイを例示しているが、これに限られない。もちろん、タイリングする周期構造は上記の例に限られず、同じ周期構造をタイリングした場合にも適用できるし、図32Bまたは図32Cに示した構成にも適用できる。
斜め方向に出射される光を曲げる作用を有する光学素子は、マイクロレンズアレイに代えてレンチキュラーレンズであってもよい。また、レンズだけでなく、プリズムを用いることもできる。プリズムのアレイを用いてもよい。周期構造に対応して個々にプリズムを配置してもよい。プリズムの形状は、特に制限されない。例えば、三角プリズムまたはピラミッド型プリズムを用いることができる。
白色光(あるいは、広いスペクトル幅を有する光)を得る方法は、上述の周期構造によるものの他、例えば、図34Aおよび図34Bに示すように、フォトルミネッセンス層によるものもある。図34Aに示すように、発光波長が異なる複数のフォトルミネッセンス層110b、110g、110rを積層することによって、白色光を得ることができる。積層順は図示の例に限らない。また、図34Bに示すように、青色の光を発するフォトルミネッセンス層110bの上に、黄色の光を発するフォトルミネッセンス層110yを積層してもよい。フォトルミネッセンス層110yは、例えばYAGを用いて形成することができる。
この他、蛍光色素などマトリクス(ホスト)材料に混合して用いられるフォトルミネッセンス材料を用いる場合には、発光波長が異なる複数のフォトルミネッセンス材料をマトリクス材料に混合し、単一のフォトルミネッセンス層で、白色光を発光するようにできる。この様な白色光を発光できるフォトルミネッセンス層は、図32A〜図32Cを参照して説明した、単位周期構造をタイリングした構成に用いることができる。
フォトルミネッセンス層110を形成する材料として、無機材料(例えばYAG)を用いる場合、その製造過程で、1000℃を超える熱処理を経ることがある。その際、下地(典型的には、基板)から不純物が拡散し、フォトルミネッセンス層110の発光特性を低下させることがある。不純物がフォトルミネッセンス層に拡散するのを防止するために、例えば図35A〜35Dに示すように、フォトルミネッセンス層の下に、拡散防止層(バリア層)108を設けてもよい。図35A〜35Dに示すように、拡散防止層108は、これまで例示した種々の構成において、フォトルミネッセンス層110の下層に形成される。
例えば、図35Aに示すように、基板140とフォトルミネッセンス層110との間に拡散防止層108が形成される。また、図35Bに示すように、複数のフォトルミネッセンス層110aおよび110bを有する場合には、フォトルミネッセンス層110aおよび110bのそれぞれの下層に拡散防止層108aまたは108bが形成される。
基板140の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率よりも大きい場合には、図35C、図35Dに示すように、基板140上に低屈折率層107を形成すると有益である。図35Cに示すように、基板140の上に低屈折率層107を設けた場合、低屈折率層107とフォトルミネッセンス層110との間に拡散防止層108が形成される。さらに、図35Dに示すように、複数のフォトルミネッセンス層110aおよび110bを有する場合には、フォトルミネッセンス層110aおよび110bの下層に拡散防止層108aおよび108bがそれぞれ形成される。
なお、低屈折率層107は、基板140の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率と同等かそれよりも大きい場合に形成されればよい。低屈折率層107の屈折率は、フォトルミネッセンス層110の屈折率よりも低い。低屈折率層107は、例えば、MgF2、LiF、CaF2、BaF2、SrF2、石英、樹脂、HSQ・SOGなどの常温硬化ガラスを用いて形成される。低屈折率層107の厚さは、光の波長よりも大きいことが望ましい。基板140は、例えば、MgF2、LiF、CaF2、BaF2、SrF2、ガラス(例えばソーダ石灰ガラス)、樹脂、MgO、MgAl24、サファイア(Al23)、SrTiO3、LaAlO3、TiO2、Gd3Ga512、LaSrAlO4、LaSrGaO4、LaTaO3、SrO、YSZ(ZrO2・Y23)、YAG、Tb3Ga512を用いて形成される。
拡散防止層108、108a、108bは、拡散を防止する対象の元素によって好適に選択されればよく、例えば、共有結合性の強い酸化物結晶や窒化物結晶を用いて形成されることができる。拡散防止層108、108a、108bの厚さは、それぞれ、例えば、50nm以下である。
なお、拡散防止層108や後述する結晶成長層106のような、フォトルミネッセンス層110に隣接する層を有する構成においては、隣接する層の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率よりも大きい場合、当該屈折率が大きい層の屈折率およびフォトルミネッセンス層の屈折率をそれぞれの体積比率で重み付けした平均屈折率をnwavとする。この場合は、光学的には、フォトルミネッセンス層が複数の異なる材料の層で構成されている場合と等価であるからである。
無機材料を用いて形成されたフォトルミネッセンス層110においては、無機材料の結晶性が低いために、フォトルミネッセンス層110の発光特性が低いことがある。フォトルミネッセンス層110を構成する無機材料の結晶性を高めるために、図36Aに示すように、フォトルミネッセンス層110の下地に、結晶成長層(「シード層」ということもある。)106を形成してもよい。結晶成長層106は、その上に形成されるフォトルミネッセンス層110の結晶と格子整合する材料を用いて形成される。格子整合は、例えば±5%以内であることが望ましい。基板140の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率よりも大きい場合、結晶成長層106または106aの屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率よりも小さいと有益である。
基板140の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率よりも大きい場合には、図36Bに示すように、基板140上に低屈折率層107を形成すればよい。結晶成長層106は、フォトルミネッセンス層110と接するので、基板140上に低屈折率層107が形成される場合には、低屈折率層107上に結晶成長層106が形成される。また、図36Cに示すように、複数のフォトルミネッセンス層110aおよび110bを有する構成においては、複数のフォトルミネッセンス層110aおよび110bのそれぞれに対応する結晶成長層106aまたは106bを形成すると有益である。結晶成長層106、106aおよび106bの厚さは、それぞれ、例えば、50nm以下である。
図37Aおよび37Bに示すように、周期構造120を保護するために、表面保護層132を設けてもよい。図37Aおよび37Bに示す例では、表面保護層132は、周期構造120を覆っており、表面保護層132のフォトルミネッセンス層110の表面は、平坦である。
表面保護層132は、図37Aに示すように、基板を有しないタイプのものであっても、図37Bに示すように、基板140を有するタイプのものにも設けられ得る。図37Aに示した基板を有しないタイプの発光素子においては、フォトルミネッセンス層110の下層にも表面保護層を設けてもよい。このように、表面保護層132は、上述したいずれの発光素子の表面に設けてもよい。周期構造120は、図37Aおよび図37Bに例示したものに限られず、上述したいずれのタイプであってもよい。例えば、周期構造120は、フォトルミネッセンス層110と同じ材料で形成された構造であり得る(図24参照)。この場合、空気層が透光層であるといってもよい。
表面保護層132は、例えば、樹脂、ハードコート材、SiO2、Al23(アルミナ)、SiOC、DLCを用いて形成することができる。表面保護層132の厚さは、例えば、100nm〜10μmである。
表面保護層132を設けることによって、発光素子を外部環境から保護し、発光素子の劣化を抑制することができる。表面保護層132は、発光素子の表面を傷、水分、酸素、酸、アルカリ、または熱から保護する。表面保護層132の材料や厚さは、用途に応じて適宜設定され得る。
また、基板140の材料は熱によって劣化することがある。熱は、主にフォトルミネッセンス層110の非輻射ロスやストークスロスによって生じる。例えば、石英の熱伝導率(1.6W/m・K)は、YAGの熱伝導率(11.4W/m・K)よりも約1桁小さい。したがって、フォトルミネッセンス層(例えばYAG層)110で発生した熱が基板(例えば石英基板)140を通して外部に熱伝導して放熱されにくく、フォトルミネッセンス層110の温度が上昇し、熱劣化を起こすことがある。
そこで、図38Aに示すように、フォトルミネッセンス層110と基板140との間に、透明高熱伝導層105を形成することによって、フォトルミネッセンス層110の熱を外部に効率よく伝導させ、温度上昇を防ぐことができる。このとき、透明高熱伝導層105の屈折率は、フォトルミネッセンス層110の屈折率よりも低いことが望ましい。なお、基板140の屈折率がフォトルミネッセンス層110の屈折率よりも低い場合には、透明高熱伝導層105の屈折率は、フォトルミネッセンス層110の屈折率よりも高くてもよい。ただし、この場合には、透明高熱伝導層105は、フォトルミネッセンス層110とともに導波層を形成するので、50nm以下であると有益である。基板140の材料として例えばソーダ石灰ガラスを用いる場合には、基板140の屈折率を考慮して透明高熱伝導層105を形成するための材料を決定すればよい。図38Bに示すように、フォトルミネッセンス層110と透明高熱伝導層105との間に、低屈折率層107を形成すれば、厚い透明高熱伝導層105を利用できる。
また、図38Cに示すように、高い熱伝導率を有する低屈折率層107で周期構造120を覆ってもよい。さらに、図38Dに示すように、周期構造120を低屈折率層107で覆った上に、透明高熱伝導層105を形成してもよい。この構成においては、低屈折率層107が高い熱伝導率を有する必要はない。
透明高熱伝導層105の材料としては、例えば、Al23、MgO、Si34、ZnO、AlN、Y23、ダイヤモンド、グラフェン、CaF2、BaF2を挙げることができる。これらの内、CaF2、BaF2は、屈折率が低いので、低屈折率層107として利用することができる。
[11.発光素子の他の実施形態]
[11−1.外部に出射する光量の向上]
これまでに説明した構成によれば、リフレクター、レンズなどの光学部品によらない狭角配光を実現し得る。上述の少なくともいずれかの態様によれば、例えば、特定の波長に関し、正面方向に出射する光の指向角を15°程度に低減可能であり、上述の種々の態様は、比較的小さな指向角が求められる光デバイスに特に有用である。その一方で、光デバイスには、一般照明用の器具、車両のヘッドライトまたはテールライトなど、高い指向性が要求されない用途も存在する。このような用途においては、発光素子からより多くの光が出力されると有益である。
本開示の発光素子における、特定の波長に関する指向性は、フォトルミネッセンス層の内部に擬似導波モードを形成し、擬似導波モードの光を、擬似導波モードと周期構造との間の相互作用に基づいて発光素子の外部に取り出すことによって達成されると推測される。そのため、発光素子が擬似導波モードの光を外部に放出するレートを向上させれば、発光素子から外部に出てくる光の量を向上させ得ると期待される。
発光素子が擬似導波モードの光を外部に放出するレートは、図8〜図11を参照して説明したように、周期構造を構成する材料の屈折率と、周期構造の高さとに応じて変化する。図8および図9を参照して説明したように、周期構造の屈折率が大きくなると、光を閉じ込める効果が減少する(Q値が低下するといってもよい)。したがって、周期構造の屈折率を大きくすれば、より多くの光を発光素子の外部に取り出すことができると期待される。また、周期構造の高さを増大させた場合も同様に、発光素子が擬似導波モードの光を外部に放出するレートを向上させ得る。このとき、発光素子の外部に出射される光における、高次の光の割合を低減できると有益である。
[11−2.表面形状における断面形状と指向性との関係]
本発明者らは、周期構造の断面形状をフーリエ級数を用いて表現したときにその級数にどのような高次の項が含まれているかによって、発光素子から出射される高次の光の割合を見積もることができることを見出した。本発明者らの検討結果によれば、ある波長に注目したとき、発光素子から出射される光の次数は、周期構造の断面形状のフーリエ級数展開に含まれる周波数成分の次数に関連している。すなわち、周期構造の断面形状のフーリエ級数展開が高次の周波数成分を含んでいると、発光素子からは、フーリエ級数の項数に応じた高次の光が出射される。
図39は、1次のみ(正弦波)、3次まで、5次まで、および、11次までの項を含む三角級数を計算した結果を示すグラフである。図39には、矩形波を示すグラフもあわせて示されている。図示するように、高周波成分が増えるにつれて、三角級数のグラフの形状は、矩形波に近づく。したがって、図40に示すように、断面形状が矩形状の複数の凸部(または凹部)を含む周期構造が形成された発光素子からは、次数の異なる高次の光が多く出射される。すなわち、このような発光素子から発せられる光における1次の光の割合は、比較的低いといえる。
1次の光の割合を増加させる観点からは、周期構造の断面形状のフーリエ級数展開がより高次の項を含まない方が有利である。1次の光の割合を増加させる観点からは、断面形状が矩形状の複数の凸部を含む周期構造(図40)よりも、フーリエ級数展開に含まれる高次の項がより少ない、断面形状が三角形状の複数の凸部を含む周期構造(図41A)の方が有利である。正弦波は、1次の周波数成分のみによって構成される(図39参照)ので、周期構造の断面形状が正弦波に近い(図41B)ほど、特定の方向に向けて出射される1次の光の割合を増加させ得る。
[11−3.発光素子]
図42は、本開示の他の実施形態による発光素子の例示的な断面を模式的に示す。図42に示す発光素子100bは、基板140と、基板140に支持されたフォトルミネッセンス層110とを有する。図42に例示する構成において、フォトルミネッセンス層110の基板140とは反対側の表面には、周期構造120bが形成されている。なお、この例では、図19Aを参照して説明した構造と同様に、基板140のフォトルミネッセンス層110の側の表面には、周期構造120aが形成されている。周期構造120aおよび周期構造120bは、フォトルミネッセンス層110が発する光のうち、特定の波長の光の指向角を制限する。
なお、ここで説明する例において、基板140は、概ね平面状である。基板140のフォトルミネッセンス層110とは反対側の主面PSは、典型的には、平坦面であり、ここでは、主面PSは、xy面に平行である。基板140およびフォトルミネッセンス層110は、z方向に沿って積層されている。図42は、発光素子100bにおける、フォトルミネッセンス層110に垂直、かつ、周期構造120bにおける複数の凸部の配列方向に平行な断面(すなわち垂直断面)を模式的に示している。
フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bは、複数の凸部を含む。周期構造120bにおける複数の凸部は、垂直断面を見たときに頂部よりも幅が大きな基部を有する少なくとも1つの凸部を含む。周期構造120bは、頂部よりも基部の方が幅が大きい断面形状を有する1以上の凸部を局所的に含んでいてもよい。あるいは、複数の凸部の各々が、頂部よりも幅が大きい基部を有していてもよい。
図示する例では、x方向に沿って配列された4つの凸部の各々の断面形状は、台形状であり、例えば、図中の一番右側にある凸部122bに注目すると、凸部122bの基部の幅Bsは、頂部の幅Tpよりも大きい。
周期構造120bが、垂直断面を見たときに頂部よりも幅が大きな基部を有する少なくとも1つの凸部を含むようにすることにより、周期構造120bの断面形状における、配列方向に沿った高さの急激な変化を抑制し得る。したがって、周期構造120bが、垂直断面を見たときに頂部よりも幅が大きな基部を有する少なくとも1つの凸部を含むようにすることにより、周期構造の断面形状を正弦波に近づけて、特定の方向に向けて出射される1次の光の割合を増加させることが可能である。
図示するように、凸部122bが、フォトルミネッセンス層110に垂直な方向(ここではz方向に平行)に対して傾斜した側面を有していてもよい。別の言い方をすれば、周期構造120bが、フォトルミネッセンス層110に平行な平面(ここではxy面)で切断したときに、その平面が基板140に近づくにつれて断面積が増大するような、少なくとも1つの凸部を含んでいてもよい。この例では、フォトルミネッセンス層110に平行な平面における凸部122bの断面積は、フォトルミネッセンス層110に最も近い部分において最も大きい。フォトルミネッセンス層110に平行な平面における凸部の断面積は、頂部から基部に向かって単調に増加してもよいし、頂部から基部の間の一部分において増加していてもよい。
周期構造120bが複数の凹部を含む場合には、複数の凹部が、垂直断面を見たときに底部よりも幅が大きな開口部を有する少なくとも1つの凹部を含んでいればよい。周期構造120bは、このような断面形状を有する1以上の凹部を局所的に含んでいてもよいし、複数の凹部の各々が、底部よりも幅が大きい開口部を有していてもよい。図42に例示する構成において、周期構造120bが凹部124bを含むと解釈した場合、凹部124bの側面は、フォトルミネッセンス層110に垂直な方向に対して傾斜しているといえる。あるいは、フォトルミネッセンス層110に平行な平面で周期構造120bを切断したとき、その平面が基板140に近づくにつれて凹部124bの開口面積が減少するということもできる。この例では、フォトルミネッセンス層110に平行な平面における凹部124bの開口面積は、基板140に最も近い部分において最も小さい。周期構造120bが、垂直断面を見たときに底部よりも幅が大きな開口部を有する少なくとも1つの凹部を含むようにすることにより、周期構造120bが、垂直断面を見たときに頂部よりも幅が大きな基部を有する少なくとも1つの凸部を含む場合と同様の効果が得られる。周期構造120bは、フォトルミネッセンス層110と同じ材料を用いて形成されてもよいし、フォトルミネッセンス層110とは異なる材料を用いて形成されてもよい。
上述したように、基板140上には、周期構造120aが形成されている。周期構造120aは、複数の凸部を含む。周期構造120aは、基板140と同じ材料を用いて形成されていてもよいし、基板140とは異なる材料を用いて形成されていてもよい。上述のフォトルミネッセンス層110は、これらの複数の凸部を覆うように基板140上に形成されている。図42に例示する構成では、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部の各々は、それぞれ、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の各々の上に位置している。
図42に例示する構成において、基板140は、典型的には透明基板であり、フォトルミネッセンス層110に近接して配置された透光層として機能し得る。この例では、透光層としての基板140は、フォトルミネッセンス層110に接しており、周期構造120aは、透光層とフォトルミネッセンス層110との境界に形成されているといえる。図示する例では、フォトルミネッセンス層110上に周期構造120bが形成されているので、発光素子100bが、フォトルミネッセンス層110の基板140とは反対側にさらに他の透光層を有しているといってもよい。
なお、図35A〜図35D、図36A〜図36C、図38Aおよび図38Bを参照して説明したように、フォトルミネッセンス層110と基板140との間には、拡散防止層108、低屈折率層107、結晶成長層106および透明高熱伝導層105などの中間層が配置され得る。このとき、周期構造120aは、透光層とフォトルミネッセンス層110との境界に設けられる。中間層の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率よりも大きい場合、中間層の屈折率およびフォトルミネッセンス層の屈折率をそれぞれの体積比率で重み付けした平均屈折率をnwavとすればよい。中間層の屈折率がフォトルミネッセンス層の屈折率よりも小さい場合、中間層が導波モードにほとんど影響を与えないので、中間層の屈折率を考慮する必要はない。
図42中、太い実線の矢印は、基板140上の周期構造120aとの間の相互作用によって発光素子100bの外部に取り出される光を模式的に示し、太い破線の矢印は、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bとの間の相互作用によって発光素子100bの外部に取り出される光を模式的に示す。ここで説明する実施形態では、透光層(ここでは基板140)のフォトルミネッセンス層110の側の表面、および、フォトルミネッセンス層110の透光層とは反対側の表面に、周期構造120aおよび120bをそれぞれ設けている。このような構成によれば、図42に模式的に示すように、周期構造120aとの相互作用により進行方向が特定の方向に変更された光と、周期構造120bとの相互作用により進行方向が特定の方向に変更された光とが、発光素子100bの外部に取り出される。別の言い方をすれば、周期構造120aにおける高さもしくは屈折率、または、周期構造120bにおける高さもしくは屈折率を増大させた場合と実効的に同様の効果が得られる。透光層のフォトルミネッセンス層110の側の表面、および、フォトルミネッセンス層110の透光層とは反対側の表面にそれぞれ周期構造を設けることにより、発光素子100bの外部に取り出される光の量を全体として増大させ得る。したがって、発光素子の適用範囲をより広げることが可能である。
なお、周期構造120aにおける周期p1(ここでは隣接する2つの凸部の間の中心間距離に等しい)と、周期構造120bにおける周期p2(ここでは隣接する2つの凸部の間の中心間距離に等しい)とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。p1とp2とが等しければ、特定の波長の発光強度を大きくすることができ、p1とp2とが異なっていれば、スペクトルを広げることができる。周期p1およびp2は、上述の式(15)に基づいて決定されればよい。
透光層としての基板140の表面およびフォトルミネッセンス層110の表面に周期構造120aおよび120bをそれぞれ設けることにより、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける断面形状との相乗効果が得られる。結果として、特定の方向に出射される特定の波長の光に関して、より高い発光増強の効果が得られる。言うまでもないが、周期構造120aにおける高さもしくは屈折率、および/または、周期構造120bにおける高さもしくは屈折率を増大させる手法を組み合わせてもよい。
なお、周期構造を構成する複数の凸部または凹部に関して、側面の「傾斜角」を定義することができる。図43は、複数の凸部Ptを含む周期構造の垂直断面の一部を模式的に示す。周期構造に含まれる複数の凸部Ptのうち、注目した範囲に含まれる凸部Ptの各側面Lsについて、フォトルミネッセンス層110に垂直な方向を示す軸N1と、側面Lsの法線Npとがなす角θ(0°≦θ≦90°)の大きさを求め、これらの算術平均を側面の「傾斜角」と定義する。ただし、θは、軸N1から法線Npに向かって測った角度とする。例えば側面Lsの断面形状が階段状であるなど、側面Lsが複数の面を含む場合には、各面について上述の角θを求め、それらの平均値を用いればよい。上述の角θは、例えば、発光素子の断面を撮影して得られた画像におけるフィッティングなどを利用して測定することが可能である。
側面Lsの垂直断面における輪郭が曲線部分を含む場合には、その曲線部分については、その曲線部分の始点から終点までの間における上述の角θの平均的な値を採用すればよい。複数の凹部から周期構造が構成される場合も、複数の凸部から周期構造が構成される場合と同様に、上述の「傾斜角」を定義することができる。
図43に例示する構成では、フォトルミネッセンス層110上にx方向に沿って配列された4つの凸部の各々における断面形状が台形状であることに対して、基板140上にx方向に沿って配列された4つの凸部の各々における断面形状は、矩形状である。この例では、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部の側面の傾斜角は、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の側面の傾斜角(ここでは90°)よりも小さい。周期構造120bおよび周期構造120aの各々が、複数の凹部から構成される場合には、周期構造120bにおける複数の凹部の側面の傾斜角が、周期構造120aにおける複数の凹部の側面の傾斜角よりも小さくてもよい。
[11−4.側面の傾斜角と光の増強度との間の関係]
本発明者らは、サイバネット社のDiffractMODを用いて光学解析を行い、周期構造の断面形状が光の増強度に与える影響を検証した。ここでも、図2などを参照して説明した計算と同様に、発光素子に対して外部から垂直に光を入射したときの、フォトルミネッセンス層における光の吸収の増減を計算することにより、外部へ垂直に出射する光の増強度を求めた。計算のモデルとして、図43に示すような断面形状を想定した。
以下の計算において、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部の各々における断面形状(ここでは台形状)は、これらの間で共通であるとした。また、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の各々における断面形状(ここでは矩形状)も、これらの間で共通であるとした。すなわち、ここでは、計算のモデルとして、y方向に均一な1次元周期構造を想定している。
以下の計算では、基板140の屈折率を1.5、フォトルミネッセンス層110の屈折率を1.8とした。計算においては、周期構造120bを構成する材料とフォトルミネッセンス層110を構成する材料とが共通であるとし、また、周期構造120aを構成する材料と基板140を構成する材料とが共通であるとした。周期構造120aの凸部の基部から周期構造120bの凸部の基部までの距離h3を240nmとし、周期構造120aの凸部の高さh1および周期構造120bの凸部の高さh2を100nmとした。周期構造120aにおける周期p1および周期構造120bにおける周期p2は、いずれも400nmとした。
図44は、周期構造120bにおける複数の凸部の側面の傾斜角を変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を示す。なお、光の偏光がy方向に平行な電場成分を有するTMモードであるとして計算を行い、凸部の側面の傾斜角を変える際は、凸部の垂直断面における面積が一定となるように頂部および基部の面積を調整した。
図44から、フォトルミネッセンス層110上に配置された複数の凸部における側面の傾斜角を40°程度にまで低下させることにより、特定の波長に関する発光増強の効果を向上させ得ることがわかった。これは、周期構造の断面形状が正弦波に近づき、特定の方向に向けて出射される1次の光の割合が増加したからであると考えられる。このように、例えば周期構造120bにおける複数の凸部の側面の傾斜角を周期構造120aにおける複数の凸部の側面の傾斜角よりも小さくすることにより、特定の波長に関して、より高い発光増強の効果が期待できることがわかった。
[11−5.発光素子の変形例]
図45は、傾斜した側面を有する凸部を含む周期構造がフォトルミネッセンス層110上に形成された発光素子の他の例を示す。図45に示す発光素子100cと、図43に示す発光素子100bとの間の相違点は、発光素子100cでは、基板140上に形成された周期構造120aが、傾斜した側面を有する複数の凸部を含んでいる点である。
図45に例示する構成では、周期構造120aにおいて、x方向に沿って配列された4つの凸部の各々の断面形状は、台形状である。例えば、図中の一番右側にある凸部122aに注目すると、対向する凸部122bと同様に、凸部122aにおける基部の幅Bsは、頂部の幅Tpよりも大きい。このように、基板140上の周期構造120aが、頂部よりも幅が大きな基部を有する1以上の凸部を含んでいてもよい。この例では、凸部122aの側面は、フォトルミネッセンス層110に垂直な方向に対して傾斜している。
なお、この例においても、基板140上の周期構造120aが複数の凹部を含むと解釈することが可能である。この場合、例えば、周期構造120a中の凹部124aは、垂直断面を見たときに底部よりも幅が大きな開口部を有している。周期構造120aは、このような断面形状を有する1以上の凹部を含んでいてもよい。凹部124aの側面は、フォトルミネッセンス層110に垂直な方向に対して傾斜しており、フォトルミネッセンス層110に平行な平面で周期構造120aを切断したとき、その平面が周期構造120bから離れるにつれて凹部124aの開口面積は、減少する。この例では、フォトルミネッセンス層110に平行な平面における凹部124aの開口面積は、基板140に最も近い部分において最も小さい。
図46は、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120b、および、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の側面の傾斜角を変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を示す。ここでは、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部の各々の断面形状と、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の各々の断面形状とが共通(ここでは台形状)であるとして図44を参照して説明した光学解析と同様の計算を行った。図46から、複数の凸部における側面の傾斜角を40°程度にまで低下させることにより、特定の波長に関する発光増強の効果を向上させ得ることがわかった。
なお、図47は、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部の各々における断面形状を矩形状とし、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の各々における断面形状を台形状としたときの計算結果を示す。図47に示すように、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部の側面がフォトルミネッセンス層110に垂直な方向に対して傾斜していると、傾斜角が小さくなるにつれて特定の波長の光に関する増強度が増大する傾向がある。
[11−6.周期構造における他の例示的な断面形状]
周期構造120aおよび周期構造120bにおける複数の凸部の各々の断面形状は、矩形状または台形状に限定されず、種々の形状であり得る。
図48A〜図48Dは、周期構造の断面形状の他の例を示す。図48Aに示す周期構造120d、図48Bに示す周期構造120eおよび図48Cに示す周期構造120fは、それぞれ、複数の凸部122d、複数の凸部122eおよび複数の凸部122fを含んでいる。図48Aは、凸部122dの側面のうち、凸部122dの基部に近い部分が湾曲した構造を示している。図48Bは、凸部122eの側面のうち、凸部122eの頂部に近い部分が湾曲した構造を示している。図48Cは、凸部122fの側面のうち、凸部122fの頂部に近い部分が湾曲した構造を示している。このように、周期構造を構成する凸部(または凹部)の垂直断面における輪郭が、曲線部分を含んでいてもよい。フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部(もしくは凹部)の側面の少なくとも一部、および/または、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部(もしくは凹部)の側面の少なくとも一部がフォトルミネッセンス層110に垂直な方向に対して傾斜していれば、特定の方向に出射される特定の波長の光における高次の光の割合を低減し得る。なお、図示する例において、凸部122d、凸部122eおよび凸部122fのいずれも、基部の幅Bsは、頂部の幅Tpよりも大きい。
図48Dに示す周期構造120gは、垂直断面における側面の輪郭が階段状の複数の凸部122gを含んでいる。このように、周期構造120aを構成する凸部(もしくは凹部)の側面および/または周期構造120bを構成する凸部(もしくは凹部)の側面が、その一部に階段状の部分を含んでいてもよい。この例では、凸部の右側の側面の形状と、凸部の左側の側面の形状とが対称であるが、凸部の断面形状は、この例に限定されない。凸部の左右で側面の形状が異なっていてもよい。
図48Dに例示する構成において、凸部122gは、断面形状が矩形状の2つの凸部が積層された構造であるともいえる。このような断面形状は、配列方向に沿って見たときに高さが急峻に変化する部分を含む。しかしながら、配列方向における2つの矩形のずれwが大きければ、側面の傾斜角を小さくしたときと同様の効果が得られる。すなわち、発光素子から特定の方向に出射された特定の波長の光における高次の光の割合を低減し得る。また、階段状の側面における段数も、任意に設定可能である。階段状の側面における段数を増やせば、凸部の断面形状が三角形に近づくので、同様に、高次の光の割合を低減し得る。
[11−7.表面構造の断面形状の制御方法]
既に説明したように、半導体プロセス、ナノインプリントなどの方法を適用することにより、基板140上に周期構造120aを形成することができる。その後、例えばスパッタリングを用いて基板140上にさらに蛍光材料の膜を形成することにより、フォトルミネッセンス層110と、周期構造120aを構成する複数の凸部(または凹部)に対向する複数の凸部(または凹部)を含む周期構造120bとを形成することができる。
周期構造120bの形成時、スパッタリングにおける雰囲気ガス(例えばアルゴンガス)の圧力を調整することにより、周期構造120bを構成する複数の凸部(または凹部)の断面形状を制御することが可能である。スパッタリング時の圧力が比較的低いと、弾道的な輸送が支配的となり、図49Aに模式的に示すように、ターゲットから放出された材料粒子は、基板140の表面に対してほぼ垂直に当たる。そのため、基板140上の周期構造120aを構成する複数の凸部の断面形状が、周期構造120bの複数の凸部の断面形状に反映されやすい。また、雰囲気ガスを構成する分子の衝突がドライエッチングと同様に作用しやすく、角部がより尖る傾向がある。これに対し、スパッタリング時の圧力が比較的高いと、拡散的な輸送が支配的となり、図49Bに模式的に示すように、基板140の表面に対して傾斜した方向から基板140に当たる材料粒子の割合が増える。結果として、より滑らかな表面が形成されやすい。
図50Aおよび図50Bは、断面形状が矩形状で高さが170nmの複数の凸部を含む周期構造(周期:400nm)を有する石英基板上に、スパッタリングによりYAG:Ceを堆積することによって得たサンプルの垂直断面を示す。図50Aおよび図50Bは、それぞれ、雰囲気ガスの圧力が0.3Paおよび0.5Paの条件で成膜を行ったサンプルの断面を示している。図50Aおよび図50Bに示すいずれのサンプルについても、ターゲットのエロージョン領域(ターゲットから材料粒子が弾き出される範囲)の直下に石英基板が配置された状態で成膜を行った。
また、基板140上の周期構造120aを構成する複数の凸部の高さ(または凹部の深さ)を調整することにより、周期構造120aの凸部における頂部の幅(または凹部の開口部の幅)と、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bの凸部における基部の幅(または凹部の底部の幅)との大小関係を制御することが可能である。
図51Aおよび図51Bは、基板140上の周期構造120aにおける凸部の高さが比較的小さい場合に得られる、フォトルミネッセンス材料の膜の断面形状を模式的に示す。図51Bは、図51Aに示す状態からフォトルミネッセンス材料をさらに堆積した状態を示している。図51中、周期構造120a中のある凸部と、その凸部に対向する、周期構造120b中の凸部とに注目する。周期構造120aにおける凸部の高さが比較的小さい場合、周期構造120bの凸部の基部の幅Bsが、周期構造120aの凸部の頂部の幅Tpと比較して小さくなる傾向がある。周期構造120a中の隣接する2つの凸部の間に凹部が形成されており、かつ、周期構造120b中の隣接する2つの凸部の間に、その凹部に対向する凹部が形成されていると考えると、周期構造120bの凹部の底部の幅Bmは、周期構造120aの凹部の開口部の幅Opよりも大きい。
図51Cは、断面形状が矩形状で高さが60nmの複数の凸部を含む周期構造(周期:400nm)を有する石英基板上に、スパッタリングによりYAG:Ceを堆積することによって得たサンプルの垂直断面を示す。スパッタリングにおいては、雰囲気ガスの圧力を0.5Paとし、ターゲットのエロージョン領域の直下に石英基板を配置した。
図52Aおよび図52Bは、基板140上の周期構造120aにおける凸部の高さが比較的大きい場合に得られる、フォトルミネッセンス材料の膜の断面形状を模式的に示す。図52Bは、図52Aに示す状態からフォトルミネッセンス材料をさらに堆積した状態を示している。図52B中、周期構造120a中のある凸部と、その凸部に対向する、周期構造120b中の凸部とに注目する。周期構造120aにおける凸部の高さが比較的大きい場合、周期構造120bの凸部の基部の幅Bsが、周期構造120aの凸部の頂部の幅Tpと比較して大きくなる傾向がある。周期構造120a中の隣接する2つの凸部の間に凹部が形成されており、かつ、周期構造120b中の隣接する2つの凸部の間に、その凹部に対向する凹部が形成されていると考えると、周期構造120bの凹部の底部の幅Bmは、周期構造120aの凹部の開口部の幅Opよりも小さい。
図52Cは、断面形状が矩形状で高さが200nmの複数の凸部を含む周期構造(周期:400nm)を有する石英基板上に、スパッタリングによりYAG:Ceを堆積することによって得たサンプルの垂直断面を示す。スパッタリングにおける雰囲気ガスの圧力は、0.5Paとした。なお、この例では、石英基板をターゲットのエロージョン領域の直下から少しずれた場所に配置した状態で堆積を行った。そのため、下側の凸部(石英基板に形成された凸部)の重心位置と、上側(YAG層に形成された凸部)の凸部の重心位置が配列方向に沿って少しずれていることが分かる。
[11−8.周期構造120aに対する周期構造120bのシフト]
図43および図45に例示した構成では、周期構造120bの複数の凸部の各々は、それぞれ、周期構造120aの複数の凸部の各々の直上に位置している。しかしながら、図52Cに例示するように、基板140上の凸部(または凹部)と、フォトルミネッセンス層110上の対応する凸部(または凹部)との間で、これらの中心が完全に一致している必要はない。以下に説明するように、基板140上の周期構造120aおよびフォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおいて、これらの一方を基準として、他方が配列方向に沿って一定量シフトしていた方が、より高い発光増強の効果を得られることもある。
本発明者らは、光学解析により、基板140上の周期構造120aに対する、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bの配列方向に沿ったシフト量が光の増強度に与える影響を検証した。光学解析には、サイバネット社のDiffractMODを用いた。計算のモデルとしては、図44などを参照して説明した例と同様の、y方向に均一な1次元周期構造が基板140上およびフォトルミネッセンス層110上に形成された構造を用いた。ただし、ここでは、図53に示すように、周期構造120a中および周期構造120b中の各凸部の断面形状が矩形状(側面の傾斜角は90°)であるとして計算を行った。
図53は、周期構造120aと周期構造120bとの間のシフト量を説明するための模式的な断面図である。周期構造間のシフト量は、周期構造における周期に対する、配列方向に沿ったずれの大きさによって表すことができる。配列方向に沿ったずれの大きさは、図示するように、例えば、周期構造120aにおける凸部の基部の右端の位置と、周期構造120bにおける対応する凸部の基部の右端の位置との間の配列方向に沿った距離Stとして定義される。図53中、一番上の断面は、シフト量Stが0の状態であり、一番下の断面は、シフト量Stが周期の50%の状態である。なお、本明細書では、周期構造120aにおけるある凸部(または凹部)と、周期構造120bにおけるある凸部(または凹部)とが、周期の50%を超えない範囲で配列方向に沿ってずれている状態を、「対向する」と表現する。
図54は、周期構造120aを基準とする、周期構造120bのシフト量を変えて、正面方向に出射する光の増強度を計算した結果を示す。図54に示すように、シフト量が増大するにつれて、発光におけるピークが高くなっている。ただし、シフト量が周期構造における周期の50%に達すると、シフト量が40%の場合と比較してピークが低下している。ここでは、シフト量が周期の30%および40%である場合に、高い発光増強の効果が得られている。
図54から、基板140上の周期構造120aと、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bとを、周期の50%を上限として配列方向に沿ってシフトさせることにより、特定の波長に関して、より高い発光増強の効果を得られる可能性があることがわかった。このように、基板140上の周期構造120aにおける複数の凸部(または凹部)と、フォトルミネッセンス層110上の周期構造120bにおける複数の凸部(または凹部)との間で、こららの中心が完全に一致している必要はなく、ある程度のシフトは許容される。
本開示の発光素子および発光装置は、照明器具、ディスプレイ、プロジェクターをはじめ、種々の光学デバイスに適用され得る。
100、100a〜100c 発光素子
110 フォトルミネッセンス層(導波層)
120、120’、120a〜120g 透光層(周期構造、サブミクロン構造)
140 基板
150 保護層
180 光源
200 発光装置

Claims (21)

  1. 透光層と、
    前記透光層上のフォトルミネッセンス層であって、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を備え、
    前記フォトルミネッセンス層は、前記透光層とは反対側の表面に、複数の凸部を含む第1表面構造を有し、
    前記透光層は、前記フォトルミネッセンス層の側の表面に、前記複数の凸部に対向する複数の凸部を含む第2表面構造を有し、
    前記第1表面構造および前記第2表面構造は、前記フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの前記光の指向角を制限し、
    前記第1表面構造における前記複数の凸部は、第1凸部を含み、
    前記フォトルミネッセンス層に垂直、かつ、前記第1表面構造における前記複数の凸部の配列方向に平行な断面において、前記第1凸部の基部の幅は、頂部の幅よりも大きい、発光素子。
  2. 前記第1表面構造における前記複数の凸部の側面の傾斜角は、前記第2表面構造における前記複数の凸部の側面の傾斜角よりも小さい、請求項1に記載の発光素子。
  3. 前記第2表面構造は、前記第1凸部に対向する第2凸部を含み、
    前記断面において、前記第1凸部の基部の幅は、前記第2凸部の頂部の幅よりも小さい、請求項1または2に記載の発光素子。
  4. 前記第2表面構造は、前記第1凸部に対向する第2凸部を含み、
    前記断面において、前記第1凸部の基部の幅は、前記第2凸部の頂部の幅よりも大きい、請求項1または2に記載の発光素子。
  5. 前記第2表面構造における前記複数の凸部は、前記第1凸部に対向する第2凸部を含み、
    前記断面において、前記第2凸部の基部の幅は、頂部の幅よりも大きい、請求項1に記載の発光素子。
  6. 前記第1表面構造における前記複数の凸部の側面の少なくとも一部は、前記フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜しており、
    前記第2表面構造における前記複数の凸部の側面の少なくとも一部は、前記フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜している、請求項5に記載の発光素子。
  7. 前記第1表面構造における前記複数の凸部の側面の少なくとも一部、および、前記第2表面構造における前記複数の凸部の側面の少なくとも一部のうち、少なくとも一方は、階段状である、請求項5または6に記載の発光素子。
  8. 前記第1表面構造における隣接する2つの凸部間の距離をD1intとし、前記第2表面構造における隣接する2つの凸部間の距離をD2intとし、空気中の波長がλaの前記光に対する前記フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<D1int<λaおよびλa/nwav-a<D2int<λaの関係が成り立つ、請求項1から7のいずれかに記載の発光素子。
  9. 透光層と、
    前記透光層上のフォトルミネッセンス層であって、励起光を受けて空気中の波長がλaの光を発するフォトルミネッセンス層と、を備え、
    前記フォトルミネッセンス層は、前記透光層とは反対側の表面に、複数の凹部を含む第1表面構造を有し、
    前記透光層は、前記フォトルミネッセンス層の側の表面に、前記複数の凹部に対向する複数の凹部を含む第2表面構造を有し、
    前記第1表面構造および前記第2表面構造は、前記フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの前記光の指向角を制限し、
    前記第1表面構造における前記複数の凹部は、第1凹部を含み、
    前記フォトルミネッセンス層に垂直、かつ、前記第1表面構造における前記複数の凹部の配列方向に平行な断面において、前記第1凹部の開口部の幅は、底部の幅よりも大きい、発光素子。
  10. 前記第1表面構造における前記複数の凹部の側面の傾斜角は、前記第2表面構造における前記複数の凹部の側面の傾斜角よりも小さい、請求項9に記載の発光素子。
  11. 前記第2表面構造は、前記第1凹部に対向する第2凹部を含み、
    前記断面において、前記第1凹部の底部の幅は、前記第2凹部の開口部の幅よりも小さい、請求項9または10に記載の発光素子。
  12. 前記第2表面構造は、前記第1凹部に対向する第2凹部を含み、
    前記断面において、前記第1凹部の底部の幅は、前記第2凹部の開口部の幅よりも大きい、請求項9または10に記載の発光素子。
  13. 前記第2表面構造における前記複数の凹部は、前記第1凹部に対向する第2凹部を含み、
    前記断面において、前記第2凹部の開口部の幅は、底部の幅よりも大きい、請求項9に記載の発光素子。
  14. 前記第1表面構造における前記複数の凹部の側面の少なくとも一部は、前記フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜しており、
    前記第2表面構造における前記複数の凹部の側面の少なくとも一部は、前記フォトルミネッセンス層に垂直な方向に対して傾斜している、請求項13に記載の発光素子。
  15. 前記第1表面構造における前記複数の凹部の側面の少なくとも一部、および、前記第2表面構造における前記複数の凹部の側面の少なくとも一部のうち、少なくとも一方は、階段状である、請求項13または14に記載の発光素子。
  16. 前記第1表面構造における隣接する2つの凹部間の距離をD1intとし、前記第2表面構造における隣接する2つの凹部間の距離をD2intとし、空気中の波長がλaの前記光に対する前記フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<D1int<λaおよびλa/nwav-a<D2int<λaの関係が成り立つ、請求項9から15のいずれかに記載の発光素子。
  17. 前記D1intと前記D2intとが等しい、請求項8または16に記載の発光素子。
  18. 前記第1表面構造は、少なくとも1つの第1周期構造を有し、
    前記第2表面構造は、少なくとも1つの第2周期構造を有し、
    前記少なくとも1つの第1周期構造の周期をp1aとし、前記少なくとも1つの第2周期構造の周期をp2aとし、空気中の波長がλaの前記光に対する前記フォトルミネッセンス層の屈折率をnwav-aとすると、λa/nwav-a<p1a<λaおよびλa/nwav-a<p2a<λaの関係が成り立つ、請求項1から17のいずれかに記載の発光素子。
  19. 前記第1表面構造および前記第2表面構造は、前記フォトルミネッセンス層から出射される空気中の波長がλaの前記光の強度を、前記第1表面構造および前記第2表面構造によって予め決められた第1の方向において最大にする擬似導波モードを、前記フォトルミネッセンス層の内部に形成する、請求項1から18のいずれかに記載の発光素子。
  20. 前記第1の方向に出射された、空気中の波長がλaの前記光は、直線偏光である、請求項19に記載の発光素子。
  21. 前記第1表面構造および前記第2表面構造は、前記フォトルミネッセンス層が発する空気中の波長がλaの前記光の指向角を、15°未満に制限する、請求項1から20のいずれかに記載の発光素子。
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