JP2017042088A - 褐藻類の生育方法、及び褐藻類付きの水和固化体の製造方法 - Google Patents

褐藻類の生育方法、及び褐藻類付きの水和固化体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細藻類などの生育や繁殖を抑えながら、効率的に褐藻類の生育を行なうことができる褐藻類の生育方法を提供する。【解決手段】鉄濃度が5μg/L以上に調整された調整海水中に褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を入れ、波長が400〜500nmであって光強度が10μmol/m2/s以上40μmol/m2/s未満の光を照射して、褐藻類の生育を行なうことを特徴とする褐藻類の生育方法である。【選択図】図4

Description

この発明は、コンブ、ワカメ、ホンダワラなどの褐藻類の生育方法、及び褐藻類付きの水和固化体の製造方法に関し、詳しくは、海水中に含まれる植物プランクトンなどの他の藻類の生育や繁殖を抑えながら褐藻類を効率的に生育させるための褐藻類の生育方法であり、また、生育させた褐藻類を、製鋼スラグを骨材とする水和固化体に付着させて、これを海域に設置して褐藻類の生育及び藻場の造成に好適に用いることができる褐藻類付きの水和固化体の製造方法に関する。
コンブ、ワカメ、ホンダワラなどの褐藻類は、藻類の中では最も発達した藻体を有した大型の藻類であり、大きくなるものでは数十メートルにも達するものもあることから、海域では群落状に生育して魚介類の生息場や産卵場所などとなる藻場を形成している。
ところが、近年、日本各地の沿岸ではこのような藻場が減少しており、コンブなどの海藻群落が減少して不毛状態となってしまう「磯焼け」と呼ばれる現象が発生している。この原因として様々なことが考えられるが、河川の護岸工事や上流でのダム建設、そして海域に流れ込む河川の上流における木々の伐採によって、落ち葉が堆積してできていた腐植土中の腐植酸と土壌中の鉄とが結合した腐植酸鉄ができ難くなり、海藻類の生育に必要な鉄分の水域への供給が減少したことが考えられている。
そのため、コンブなどの大型の褐藻類の生育を促進させるために、従来から、海域に鉄分の供給を行なう方法が提案されている。例えば、二価の鉄イオンが酸化されにくく且つ海藻類に吸収されやすい安定的なフルボ酸鉄として供給するために、二価鉄(FeOやFe)を含有する物質と腐植(フルボ酸など)を含有する物質とを混ぜたスラグ系施肥材を透水性の袋に詰め込んで、それを海藻類と共に海域に設置する方法(特許文献1参照)や、海藻類の生育を促進させる窒素やリンなどの栄養塩を供給する手段を、フルボ酸鉄を供給する手段と共に陸側に設置して、これらを海藻の生育段階に合わせて供給する方法(特許文献2参照)が提案されている。
しかしながら、一般にコンブなどの大型の褐藻類は、それよりも小さな藻類や微細藻類に比べて鉄分や栄養塩などに対する応答が遅く初期の生育が緩やかであることから、これら特許文献1や特許文献2のような方法では、供給した鉄分や栄養塩により他の微細藻類などの生育や繁殖の方が勝ってしまい、場合によってはコンブなどの大型の褐藻類の生長(特に初期の生長、芽生え)が著しく阻害されるか枯死してしまう恐れがある。
一方で、人工光を照射して藻類の生育や培養を促進させる方法が知られている。例えば、特許文献3には、海水を導入した培養液中にワカメの幼芽を付着させた基盤を浸漬させた状態で、これに赤色系の特定波長の光(660nm)と青色系の特定波長の光(450nm)とを照射して、ワカメを生長させる方法が記載されている。また、特許文献4には、藻類が保有する光合成色素であるクロロフィルaの比吸光度を60以上とするような波長の発光ダイオードによる単色光を藻類培養液に照射して藻類を培養するに当たり、培養液として海洋深層水などを使用すると共に、微細藻類(藍藻)に630〜690nmの赤色光と400〜460nmの青色若しくは紫色光とを照射して培養を行なうことが記載されている。また、特許文献5には、滅菌海水と栄養塩とを微細藻類と共に培養液とし、これを水槽内に収納して赤色系の特定波長の光を照射して微細藻類を増殖させた後に、青色系の特定波長の光を照射して増殖を鈍化させて、微細藻類の濃度及び供給量を調整しながら培養する方法が記載されている。更に、特許文献6には、微細藻類に対して赤色照明光の照射と青色照明光の照射とを、別個独立に行なうか、交互に連続して行なうか、又はこれらを同時に行ない、更には、藻類の細胞分裂周期に応じた照射サイクルとすることにより、藻類の増殖を促進して藻類を培養する方法が記載されている。
これら特許文献3〜6の方法は、いずれも、藻類に対して所定の赤色系の光と青色系の光とを照射する点で共通しているが、これはすなわち、藻類が保有している光合成色素であるクロロフィルaの吸収極大波長に合わせるように可視光領域の両端近傍の赤色系の光と青色系の光とを照射することで、クロロフィルaを通じた光合成を活発化させて藻類、特に微細藻類の生育を促進させることを目的としたものである。そのため、これら特許文献3〜6の方法では、場合によっては照射する赤色系の光と青色系の光とにより微細藻類が爆発的に生長してしまい、初期の生育が緩やかな褐藻類の生育は行なうことができないおそれがある。
特開2006−212036号公報 特開2012−217410号公報 特開平10−178947号公報 特開2002−315569号公報 特開平11−266727号公報 WO2013/021675号公報
上述したように、海域に施肥材などを設置する特許文献1及び特許文献2の方法では、供給した鉄分や栄養塩により他の藻類などの生育や繁殖の方が勝ってしまい、結果的にコンブなどの大型の褐藻類の生長が著しく阻害されるか枯死してしまうおそれがある。一方で、特許文献3〜6の方法では、赤色系の光と青色系の光とを照射することから、微細藻類などの生育や繁殖を抑えながらも目的とする褐藻類を生育させることは難しい。そのためコンブなどの褐藻類の生育を順調に行なうには、使用する海水の入れ替えや清掃を頻繁に行うか、或いは、ろ過装置を設置するなどして他の藻類をできるだけ取り除くような対策を施す必要があり、いずれも労力が掛かり、また設備投資やメンテナンスの費用が大きくなる。そのため、労力やコストも抑えながらも、他の微細藻類などの生育や繁殖を抑えて効率的に褐藻類の生育を行なうことができる方法の開発が求められていた。
そこで、本発明者らがこのような方法の開発について鋭意検討した結果、褐藻類の生育を促進するために必要な鉄濃度の海水中において、褐藻類の生育に必要最低限の波長及び強度を有する光を照射することにより、植物プランクトンなどの他の微細藻類の生育や繁殖を抑えることができ、尚且つ手間やコストも抑えて、効率的に褐藻類の生育を行なうことができることを見出して、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、植物プランクトンなどの他の微細藻類の生育や繁殖を抑えることができ、尚且つ手間やコストも抑えて、効率的に褐藻類の生育を行なうことができる褐藻類の生育方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、前記の方法で生育させた褐藻類を、製鋼スラグを骨材とする水和固化体上に付着させて、褐藻類付きの水和固化体を製造する褐藻類付きの水和固化体の製造方法を提供する。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)鉄濃度が5μg/L以上に調整された調整海水中に褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を入れ、波長が400〜500nmであって光強度が10μmol/m/s以上40μmol/m/s未満の光を照射して、褐藻類の生育を行なうことを特徴とする褐藻類の生育方法。
(2)褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を担体に付着させてこれを前記調整海水中に入れることにより、当該担体上で褐藻類の生育を行なうことを特徴とする(1)に記載の褐藻類の生育方法。
(3)(1)又は(2)に記載の生育方法によって生育させた褐藻類を、担体に付着して担体付きの種苗とし、次いで、少なくとも鉄鋼スラグ及び腐植物質を混合したスラグ系施肥材と当該担体付きの種苗とを海域に設置して、褐藻類の生育を行なうことを特徴とする褐藻類の生育方法。
(4)担体に褐藻類の胞子及び/又は幼体を付着させた上で、これを、鉄濃度が5μg/L以上に調整された調整海水中に入れると共に、波長が400〜500nmであって光強度が10μmol/m/s以上40μmol/m/s未満の光を照射することにより、褐藻類を幼体又は成体まで生育させて担体付きの種苗とし、次いで、少なくとも鉄鋼スラグ及び腐植物質を混合したスラグ系施肥材と当該担体付きの種苗とを海域に設置して、褐藻類の生育を行なうことを特徴とする褐藻類の生育方法。
(5)前記担体が、製鋼スラグを骨材とする水和固化体であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
(6)前記鉄濃度の調整は、鉄鋼スラグと腐植物質とを混合したスラグ系施肥材を海水中に添加することにより行なわれることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
(7)前記鉄濃度の調整は、鉄鋼スラグと腐植物質とを混合したスラグ系施肥材を水に浸漬させることにより施肥材成分を水に溶出させて得られた施肥材溶出液を、海水中に添加することにより行なわれることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
(8)前記褐藻類が、コンブ目植物であるか、又はホンダワラ科植物であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
(9)前記海域に設置されるスラグ系施肥材は、生分解性且つ透水性を有する袋体に詰め込まれているか、又は透水箇所を有した箱型容器に詰め込まれていることを特徴とする(3)〜(8)のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
(10)(1)又は(2)に記載の生育方法によって生育させた褐藻類を、製鋼スラグを骨材とする水和固化体に付着して褐藻類付きの水和固化体を製造することを特徴とする褐藻類付きの水和固化体の製造方法。
本発明における褐藻類の生育方法によれば、植物プランクトンなどの他の微細藻類の生育や繁殖を抑えることができ、尚且つ手間やコストを抑えて、効率的に褐藻類の生育を行なうことができる。
また、このような方法により褐藻類を担体に付着させて褐藻類を所定の大きさになるまで生育させ、これを海域に移植することで、効率的に褐藻類の生育を行うことができる。
図1は、コンブ目植物(コンブ)の生活史を示す模式説明図である。 図2は、ヒバマタ目ホンダワラ科植物(アカモク)の生活史を示す模式説明図である。 図3は、光合成色素と、その吸収波長とを示す説明図である(図中、カッコ内の数値は吸収極大の目安を示す。)。 図4は、鉄濃度と褐藻類の生育との結果を示すグラフである。 図5は、光強度と褐藻類の生育との結果を示すグラフである。 図6は、実施例1で得られた藻類付きの水和固化体を示す写真(a)、及び比較例1で得られた藻類付きの水和固化体を示す写真(b)である。 図7は、実施例2において、海域に設置した褐藻類などの例を示す断面模式説明図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
先ず、本発明において褐藻類とは、褐藻綱(Phaeophyceae)に属する植物を指し、光合成色素として後述するフコキサンチンを有するものである。海域での藻場の造成を行うために、生長後は比較的大型の藻体となるものがよく、マコンブ、ミツイシコンブ、ナガコンブ、エナガコンブ、ガゴメ、リシリコンブ、スジメ、クロメ、アラメ、カジメ、ワカメ、チガイソ、ヒロメなどのコンブ目植物であるか、又はアカモク、オオバモク、ヒジキ、ノコギリモク、ホンダワラ、ジョロモク、ウガノモク、トサカモク、マメタワラ、フタエモク、タマハハキモク、フシスジモク、ヨレモク、ヤツマタモクなどのホンダワラ科植物であることが好ましい。
本発明では、褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を使用し、成体となったものを更に大型の褐藻類になるまで生育させる方法が含まれるが、大型となる褐藻類は、生育の初期の段階にあたる胞子や幼体において鉄分や栄養塩などに対する応答が遅く生育が緩やかであることから、特にこの段階において所定の鉄分の供給及び光の照射を行って生長を促すことにより、他の微細藻類などの生育や繁殖の影響を受けにくくして効率的に褐藻類を生長させることができる。そのため、好ましくは胞子及び/又は幼体を用いる。
ここで、本発明において、褐藻類における前記胞子、幼体又は成体については、以下のように定義することができる。すなわち、褐藻類には、図1及び図2に示すように、一般的に、少なくとも2種類の生活史を持つ植物が知られており、そのひとつは、コンブやワカメなどのコンブ目植物のコンブ目型生活史であり、もうひとつは、アカモクやオオバモクなどのホンダワラ科植物のヒバマタ目型生活史である。
コンブ目型生活史は、図1に示されるように、母藻から放出された遊走子は、海底などに着生したのちに発芽して雌性又は雄性の配偶体になり、これらが受精して発芽すると芽胞体となり、これが生長して笹葉型の幼胞子体となる。そして、更に生長することで成体になり、藻体が1〜2mとなる場合もある。このコンブ目型生活史においては、「胞子」は遊走子から配偶体に該当し、また、「幼体」は受精によって生じる芽胞体から葉長が数cm程度の幼胞子体になるまでが該当し、更に生長して大型化したものが「成体」に該当する。
一方、ヒバマタ目型生活史では、図2の通り、成熟した成体の生殖器床で受精して幼胚となり、これが離れて発芽体になり、生長を続けて幼体、成体となる。このヒバマタ目型生活史では、「胞子」は無く、受精後の幼胚、発芽体及び幼体が本発明の「幼体」に該当し、これが分枝し、大きく生長した段階が「成体」に該当する。
本発明では、上記褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を鉄濃度が5μg/L以上に調整された調整海水中に入れて生育を行う。好ましくは、鉄濃度が5〜60μg/Lとする。鉄濃度が5μg/L未満であると、褐藻類の生育が著しく遅くなるため、他の藻類や微細藻類の生育や繁殖に負けてしまうおそれがあるため好ましくない。また、本発明で使用する調整海水については、鉄濃度が5μg/L以上であれば、特に限定はされず、海水そのものを用いることができる。海水としては、海域から採取した海水そのものを直接用いてよく、或いは、市販の人工海水(例えば、イワキ社製商品名:レイシーマリンなど)や真水に適宜栄養塩やミネラルを添加して成分の調整を行った人工海水などを用いることもできる。鉄濃度が5μg/L未満の場合には、後述の方法により、鉄濃度を調整したものを用いる。また、これらにUV照射などによる滅菌やろ過などの処理を行ったものでもよい。なお、褐藻類を生育させる際の調整海水の温度については、通常15〜20℃とすることが好ましいが、対象とする褐藻類によって至適温度は異なるため、この限りではない。
鉄濃度の調整方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、海水の交換率を上げることや、海水をろ過して鉄分を摂取する他の藻類を排除することや、鉄を含む試薬などを添加する鉄分の添加による方法が挙げられる。鉄分を添加するための試薬などについては、例えば、FeCl、Fe(SO(NH(硫酸第一アンモニウム鉄)、海藻や植物プランクトン用の市販の含鉄肥料(例えば、第一製網社製商品名:ポルフィランコンコ、KW21、ノリシードなど)、鉄粉、及び鉄鋼スラグなどが挙げられ、これを単独で用いてもよく、或いはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、魚かす、腐植酸(腐植物質)などのキレーターと共に用いることもできる。好ましくは、安価な資材として得ることができる鉄鋼スラグを用い、これを腐植物質と共に混合したスラグ系施肥材を添加することが好ましい。ここで、腐植物質とは、腐植土(腐葉土)などの落ち葉や倒木、間伐材などの植物リターが、それをエネルギー源とする土壌微生物によって分解されてゆく過程で出来てくる暗色で不定形の有機物の総称であり、腐植物質は鉄のキレーターとなる腐植酸を多分に含有していることから、鉄鋼スラグと混ぜて使用することでスラグから溶出した鉄分は腐植酸と錯体を形成し、長時間水域中で溶存態として存在して、藻類が鉄分を摂取することが可能になる。
ここで、腐植物質については、上記のような腐植土のほかに、食品残渣などの有機物や、魚介類の水産加工残渣などを発酵させ得られて、無機態の窒素やリンを豊富に含んだ魚かすなどを用いることもできる。例えば、魚かすの発酵の過程では、有機物はバクテリアによって分解されて無機物となり、得られた腐植物質中には、海藻類が一般的に栄養塩として容易に摂取しうる無機態窒素(硝酸態窒素、アンモニア態窒素)やリン酸態リンが多量に含まれることから、これらの栄養塩類が溶出し、窒素、リンの供給源となる。
一方、鉄鋼スラグとして、好ましくは製鋼スラグを用いるのがよく、鉄分含有量が高炉スラグ(約0.4質量%)に比べて高い製鋼スラグ(約20質量%)の方が鉄分供給の点で優れている。この製鋼スラグのなかでも、転炉系の製鋼スラグは、電気炉系製鋼スラグと比較して成分組成が安定していることから、より好ましくは転炉系の製鋼スラグである。また、転炉前後の工程(溶銑予備処理、2次精錬)を付加された高級鋼製造工程から生成する溶銑予備処理スラグや2次精錬スラグも、転炉系スラグと同様により好ましい。なお、製鋼スラグを用いる場合には、予め炭酸化処理を施した炭酸化製鋼スラグであるのが望ましい。
前述のスラグ系施肥材としての好ましい一形態としては、鉄を15〜25重量%含む炭酸化鉄鋼スラグと、腐植物質及び/又は魚かす(腐植物質、魚かす共に、窒素0.5〜1.5%、リン酸0.5〜1.5%を含有)との配合比率(重量比)が、鉄鋼スラグ:腐植物質及び/又は魚かす=1〜3:1となるように混合すればよい。これらスラグ系施肥材を、例えば、ヤシの樹皮を用いた生分解性かつ透水性の袋体や、透水箇所を有した箱型の重量容器などに充填し、これを褐藻類の生育を行う海水などに浸漬させることにより、海水中に鉄分を溶出させて鉄濃度の調整を行う。また、予め、スラグ系施肥材を海水や真水などに浸漬させて鉄分などを溶出させて得た施肥材溶出液を準備し、この溶出液を褐藻類の生育を行う海水などに添加して鉄濃度を調整することもできる。
本発明では、このような方法により、褐藻類の胞子などを鉄濃度が調整された調整海水中に入れたあとには、これら褐藻類の胞子などに対して、所定の波長及び光強度を有する光を照射する。
ここで、照射する光の波長は400〜500nmとし、好ましくは、440〜480nmとする。この理由については、褐藻類が保有する光合成色素であるフコキサンチンの吸収波長が400〜500nm(吸収極大450nm)であることに基づく。フコキサンチンの吸収波長は、図3に示すとおり、他の光合成色素〔クロロフィルaや、紅藻類や藍藻類が保有するフィコビリン系の色素(フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン)〕とはその範囲及び吸収極大が異なる。緑藻類はクロロフィルa〔吸収波長:350〜450nm、650〜700nm(吸収極大:435nm、680nm)〕が主な光合成色素であり、また、紅藻類および藍藻類が有するフィコビリン系色素(フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン)の吸収波長はそれぞれ495〜570nm、550〜630nm、650〜670nmであるため、400〜500nmの波長を照射することでフコキサンチンを有さない緑藻類、藍藻類、紅藻類の生育や繁殖を抑えることが可能となる。また、照射する光の波長は440〜480nmとすることが、前記他の藻類の光合成色素との区別をより明確にすることができるため好ましい。一方、フコキサンチンを光合成色素として保有しているものとしては珪藻類があるが、珪藻類は生育深度が褐藻類よりも浅く、水表面に近いため、生育のために褐藻類よりも多くの光を必要とすることから、下記で説明する強度の光を照射することによって生育が抑制される。
そして、本発明において照射する光の強度は10μmol/m/s以上40μmol/m/s未満とする。光の強度が10μmol/m/s未満であると、褐藻類の生育が著しく遅くなり、他の藻類や微細藻類の生育や繁殖に負けてしまうおそれがある。また、光の強度が40μmol/m/s以上の場合には、褐藻類の生育促進の効果が飽和してしまう一方で、他の藻類などの生育や繁殖が促進されるおそれがあるため、褐藻類の生育が負けてしまうおそれがある。好ましくは、光の強度を20〜30μmol/m/sとできる。
光を照射する手段としては、公知の方法を用いることができ、例えば、光照射部として400〜500nmの波長を有する発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)などの光半導体素子や、有機又は無機のエレクトルミネッセンス(EL)などの光源を備えた照射装置を用いることができる。
本発明においては、前記褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を、例えば、水槽や培養槽中に予め注入しておいた調整海水中に入れて浮遊させて生育・培養させるか(浮遊培養)、或いは、これら胞子、幼体又は成体が着生しやすい担体に付着させて担体上で生育・培養をさせることも可能である。担体としては、例えば、天然石、人工石、コンクリート製ブロックなどの石材など公知のものを使用することができるが、製鋼スラグを骨材に使用した水和固化体からなる石材であることが好ましい。ここで、製鋼スラグを骨材に使用した水和固化体とは、製鉄プロセスで副産物として生成させる製鋼スラグ、高炉スラグ微粉末及び水を必須成分とし、これらの材料を混練して水和反応により固化させたものであり、必要に応じて、アルカリ刺激剤、フライアッシュ、細骨材相当の高炉水砕スラグなどを含んでいてもよい。このような水和固化体からなる石材は、表面に微細な凹凸があって褐藻類が着生しやすいというメリットがある。担体の大きさについては、水槽や培養槽で生育を行う場合には、その槽の大きさに応じたものを適宜選択することができるが、水流がある場合にはそれによって水中で移動しない程度の大きさのものを選択することがよい。特に、担体上で生育を行った褐藻類の付着する担体を直接海域に設置して生育する場合には、水流や波浪などの影響を受けにくくするために長径が30cm以上のものを用いることが好ましい。また、槽の大きさ等に制約があって、小さな担体を用いて生育せざるをえない場合は、生育した褐藻類を、長径が30cm以上の担体に移植又は付着させて海域に設置することにより、海域で褐藻類を生育させることもできる。
なお、上記の褐藻類の付着する担体を海域に設置して褐藻類を生育させることにより、当該海域を藻場として造成することも可能となる。
そして、本発明においては、これまでのような方法を用いることにより、褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を、他の微細藻類などの生育や繁殖の影響を抑えながら効率的に褐藻類を生育させることができる。その際、生育させた褐藻類は、そのまま、又は、担体付きの場合には担体から引き離して、これを別の担体として前述のような製鋼スラグを骨材に使用した水和固化体等の担体に付着させることにより、褐藻類付きの担体(担体付きの種苗)を製造することができ、それを海域における褐藻類の生育及びそれによる藻場の造成に好適に用いることができる。もちろん、担体上で褐藻類を生育させた場合には、それをそのまま用いて、それを海域における褐藻類の生育及びそれによる藻場の造成に好適に用いることができる。
とりわけ、海域において藻場を造成する際には、以下のような手順で褐藻類を生育させることが好ましい。
すなわち、陸上では、他の藻類や微細藻類などの生育や繁殖の影響を受けやすい褐藻類の胞子及び/又は幼体を対象として、これら胞子や幼体が着生しやすい所定の担体に付着させながら、前述の通りの方法によって鉄分の供給や光の照射を行ない、目的とする褐藻類を少なくとも葉長数cm程度の幼体、又は成体まで生育させて担体付きの種苗を製造する。または、生育させた褐藻類を、海域への設置に適した別の担体に付着させて担体付き種苗を製造することもできる。この際の別の担体としては、好ましくは、前述の通りの製鋼スラグを骨材に使用した水和固化体を用い、これにより褐藻類付きの水和固化体として製造することもできる。そして、その後、この担体付きの種苗を、少なくとも前述の通りのスラグ系施肥材と共に海域に設置することにより、設置した施肥材や海水中の栄養分や自然光の供給を受けながら、人工的な手間やコストを減らして、大型の褐藻類となるまで生育させることができ、それにより効率的に褐藻類の藻場を造成することができる。スラグ系施肥材については、対象の褐藻類の生育に合わせて適宜施工時期を決めることが可能であり、追肥をすることももちろん可能である。
担体付きの種苗を海域に設置する方法としては、セメント剤などを用いて、海域の底部、岩礁域、砂地などに造成された天然石やブロックなどの藻礁などに接着・固定する方法が挙げられるが、これに限定されない。
また、前記担体付きの種苗等と共に設置するスラグ系施肥材は、例えば、ヤシの樹皮を用いた生分解性かつ透水性の袋体や、透水箇所を有した箱型の重量容器などに充填して設置することができる。この際、水流や波浪などの影響により水中で移動や揺動しないように、移動や揺動を規制するための石材などを別途併設してもよい。その際の石材は、大型の水和固化体を用いることが好ましい。生育させる褐藻類、施肥材、石材などの配置は、設置する海域の種々の条件によって変わるため限定はされないが、好ましい一例としては、図7のように、スラグ系施肥材を透水箇所を有した箱型の重量容器などに充填して設置するとともに、その周囲に、生育させる褐藻類及び石材などを適宜配置して藻場を形成することができる。このような方法により、スラグ系施肥材からの栄養分や鉄分が移植した褐藻類に効率的に供給されるため、他の微細藻類などの生育や繁殖の影響を極力少なくして褐藻類を効率的に生育させることができると共に、効率的に藻場の形成を行なうことが可能となる。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
[試験例1]鉄濃度による褐藻類の生育の比較
先ず、異なる鉄濃度(0、5、10、15、30、40、60又は100μg/L)の調整海水をそれぞれ準備した。鉄濃度の調整については、ろ過滅菌した能登湾海水にスラグ系施肥材の溶出液(施肥材溶出液)を添加することにより行なった。この施肥材溶出液は、炭酸化を行なった製鋼スラグと広葉樹の剪定材からなる腐植物質とを2:1(重量比)で混合したスラグ系施肥材300gを海水1L中に浸漬させ、室温及び暗条件下において、14日間100rpmで振とうさせることにより作製し、金属鉄換算で全鉄(金属Fe、FeO、Feなど)が0.32mg/L、無機態窒素(NH−N、NO−N、NO−Nの和)が33.12mg/L、リン酸態リンが0.54mg/L、珪酸態ケイ素が7.63mg/Lの組成を有していた。なお、前記調整海水及び施肥材溶出液中の鉄濃度については、pHが2未満となるように塩酸を添加して、酸可溶鉄として、ルミノール発光法を利用した鉄分析計(紀本電子工業社製FEA−07)で分析を行い、確認した。
そして、前記鉄濃度が異なる調整海水をシャーレに入れ、この中に、それぞれアカモク(ホンダワラ科植物)の幼胚(10個体)を入れ、20℃に設定した培養庫(東京理化器械社製LTI−700)で生育させた。このアカモクの幼胚の近傍で100μmol/m/sとなる白色光(白色LED光源、波長400〜750nm)、又は80μmol/m/sとなる青色光(青色LED光源、波長446nm)をそれぞれ18日間照射して、生育状況の比較を行なった。生育状況の評価は、18日間生育後の藻体をデジタルカメラにより撮影し、その葉の面積を求めることにより行なった。評価結果を図4に示す。
図4の結果から、鉄濃度が5μg/L以上であれば、白色光及び青色光のいずれでもアカモクの幼体を十分に生長することができ、また、光強度によらず、青色光を用いた方が生長をより促すことができることが分かった。
[試験例2]光強度による褐藻類の生育の比較
先ず、滅菌処理をしていない能登湾海水に前記試験例1と同様の施肥材溶出液によって鉄濃度を15μg/Lに調整した調整海水を準備してシャーレに入れ、これに、それぞれアカモク(ホンダワラ科植物)の幼胚(10個体)を入れ、20℃に設定した培養庫(東京理化器械社製LTI−700)で生育させた。このアカモクの幼胚の近傍で光強度が0、5、10、20、40、60又は80μmol/m/sとなる青色光(青色LED光源、波長446nm)を、それぞれ18日間照射して、生育状況を評価した。生育状況の評価は、前記試験例1と同様に、18日間照射後の藻体をデジタルカメラにより撮影し、その葉の面積を求めることにより行なった。評価結果を図5に示す。
図5の結果から、褐藻類の十分な生育を行なうためには、少なくとも光強度が10μmol/m/s以上必要であることが分かると共に、光強度を40μmol/m/s以上としても、生育促進の効果が飽和することが分かる。また、0〜40μmol/m/sの光強度で培養したシャーレでは、アカモクが顕著に生長し、調整海水に用いた能登湾海水中に含まれていたと推察される植物プランクトンや他の藻類の胞子による繁茂はほとんど見られなかった。その一方で、60及び80μmol/m/sの光強度で培養したものについては、アカモクの藻体面積は、40μmol/m/sの場合と同程度であったが、藻体表面に植物プランクトンの付着が見られ、シャーレ内には、植物プランクトンによるコロニーが形成されたり、糸状の緑藻が繁茂したりしていた。以上の結果から、光強度の上限は、過剰な照射を行なうことなく、尚且つ他の微細藻類などの生育や繁殖が促進されるおそれを可及的に排除するために、40μmol/m/s未満とする必要があることが分かる。
[実施例1]
褐藻類としてコンブ目植物のクロメの胞子(遊走子)を用いて、その生育と他の藻類(緑藻類、藍藻類、紅藻類、珪藻類)の生育との比較を行なった。手順は以下のように行なった。
先ず、製鋼スラグを骨材に使用した水和固化体〔新日鐵住金社製商品名ビバリー(登録商標)ロック〕を入れた水槽に、成熟し、子嚢斑を形成したクロメ胞子体を入れ、クロメから放出された遊走子を水和固化体に着生させ、遊走子付きの水和固化体(以下、単に「水和固化体」と呼ぶ。)とした。次いで、これを、鉄濃度が23μg/Lに調整された調整海水5Lを入れた水槽(30cm×30cm×50cm)に入れ、この水和固化体の近傍で10μmol/m/sとなる青色光(青色LED光源、波長446nm)を、一日当たり12時間照射しながら、15℃で5ヶ月間生育させた。水温は、水槽内に投げ込み式クーラー(イワキ社製FC−401AN)を入れ、15℃に保った。鉄濃度の調整については、滅菌処理をしていない能登湾海水に一般的な栄養強化培地であるPES(Provasoli’s enriched sea water)を0.1%添加することで調整し、当該PESには鉄源としてFeClとエチレンジアミン四酢酸(EDTA)とが1:1(モル比)となるように混合した。また、鉄が不足しないように、1週間毎に当該PESを追肥するとともに、前記調整海水を30日毎に全量交換した。なお、前記調整海水中の鉄濃度については、pHが2未満となるように塩酸を添加して、酸可溶鉄として、ルミノール発光法を利用した鉄分析計(紀本電子工業社製FEA−07)で分析を行い、確認した。
そして、上記の手順でクロメを生育させた後、水和固化体上に着生した単位面積当たりのクロメの個体数(個体数/cm)及び他の藻類(緑藻類、紅藻類)の個体数(個体数/cm)を、実体顕微鏡(ニコン社製SMZ745T)を用いて計測した(1cm角を3箇所測定し、その平均値とした)。
結果を以下の表1に示す。また、当該生育後の水和固化体の様子を示す写真を図6(a)に示すが、当該水和固化体には、クロメの胞子体(幼体)が繁茂し、その他の藻類はほとんど見られなかった。
また、上記クロメの生育を30日行なった後の水槽において調整海水を一部採取し、浮遊している植物プランクトン(緑藻類、藍藻類、紅藻類、珪藻類)の量を測定した。測定には、多波長励起蛍光光度計(bbe社製、商品名:Algae Online Analyzer)を用いて、各々のクロロフィルaの濃度(μg/L)を求め、それにより緑藻類、藍藻類、紅藻類、珪藻類の量を比較した。該多波長励起蛍光光度計は、藻類が持つ光合成色素に特有の励起波長(緑藻類:470nm、紅藻類:570nm、珪藻類:525nm、藍藻類:610nm)を照射して、蛍光波長680nmの蛍光強度を測定することにより、4種分類して、それぞれのクロロフィルa濃度を求めることができる。
結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1において使用した青色光を、白色光(白色LED光源、波長400〜750nm)に変更した以外は、実施例1と同様の手順により、水和固化体に着生したクロメ並びに緑藻類及び紅藻類の個体数を求め、また、植物プランクトンの量についても同じように求めた。
結果を以下の表1及び表2に示す。また、当該生育後の水和固化体の様子を示す写真を図6(b)に示す。当該水和固化体には、クロメは全く確認できず、緑藻類及び紅藻類が繁茂していた。
表2の結果から、全クロロフィルa量については、青色光を照射した実施例1では、白色光を照射した比較例1の12%程度に抑えられており、青色光によるクロロフィルaの光合成抑制効果が確認された。また、実施例1では、比較例1に対して珪藻類では25%、また、フィコビリン系の色素を保有する紅藻類では6%程度にそれぞれ抑えられている。すなわち、400〜500nmの青色光を用いることにより、特に、珪藻類及び紅藻類に対する生育抑制効果が大きいことが分かる。
[実施例2]海域における褐藻類の生育、藻場造成
先ず、鉄濃度を15μg/Lに調整した調整海水を準備した。鉄濃度の調整については、滅菌処理をしていない能登湾海水にスラグ系施肥材の溶出液の添加により行なった。この施肥材溶出液は、炭酸化を行なった製鋼スラグと広葉樹の剪定材からなる腐植物質とを2:1(重量比)で混合したスラグ系施肥材300gを海水1L中に浸漬させ、室温及び暗条件下において、14日間100rpmで振とうさせることにより作製し、金属鉄換算で全鉄(金属Fe、FeO、Feなど)が0.08mg/L、無機態窒素(NH−N、NO−N、NO−Nの和)が29.9mg/L、リン酸態リンが0.39mg/L、珪酸態ケイ素が3.72mg/Lの組成を有していた。なお、前記調整海水及び施肥材溶出液中の鉄濃度については、pHが2未満となるように塩酸を添加して、酸可溶鉄として、ルミノール発光法を利用した鉄分析計(紀本電子工業社製FEA−07)で分析を行い、確認した。
そして、前記の調整海水をいれた水槽(1m×3m×0.5m)中に、製鋼スラグを骨材に使用した水和固化体〔新日鐵住金社製商品名ビバリー(登録商標)ロック〕上にアカモクの幼体(幼胚)を着生させた水和固化体を入れて、このアカモクの幼体の近傍で40μmol/m/sとなる青色光(青色LED光源、波長446nm)を照射して、葉長が5cm程度の幼体になるまで生長させてアカモクの種苗(水和固化体付きの種苗)とした。水温は、水槽内に投げ込み式クーラー(イワキ社製FC−401AN)を入れ、20℃に保った。
次いで、前記得られた水和固化体付きの種苗を、海域の底部に移植した。移植の際には、海水中で固化する接着剤(コニシ社製、商品名:水中ボンド)を前記水和固化体に塗布し、これを予め海底に設置した水和固化体〔新日鐵住金社製商品名ビバリー(登録商標)ロック〕に接着させて固定した。また、炭酸化を行なった製鋼スラグ(鉄を15〜25質量%含有)と広葉樹の剪定材からなる腐植物質(窒素:0.5〜1.5%、リン酸:0.5〜1.5%を含有)とを2:1(重量比)で混合したスラグ系施肥材2tを鋼鉄製の箱型容器(1.4m×1.4m×0.5m)に充填して、この施肥材入りの箱型容器を図7のように設置した。そして、このまま半年間アカモクを海域で生育させ、半年後生育状況を観察して評価した。評価方法としては、繁茂したアカモクに対して50cm角の方形枠を用いてランダムに3ヶ所選定し、その枠内のアカモクの葉長を測定することにより行なった。
結果、ほとんどのアカモク(98%)の葉長が1.5m程度まで生長していた。
[比較例2]
前記実施例2において、スラグ系施肥材を設置しないこと以外は、実施例2と同様の方法で海域にてアカモクを生長させて、半年後の生育状況を観察し、同じ評価方法にて評価した。
結果、多くのアカモク(70%)の葉長が1m未満であり、施肥材を用いた実施例2と比較して生育が劣っていることが確認された。
1:施肥材、2:石材、3:褐藻類

Claims (10)

  1. 鉄濃度が5μg/L以上に調整された調整海水中に褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を入れ、波長が400〜500nmであって光強度が10μmol/m/s以上40μmol/m/s未満の光を照射して、褐藻類の生育を行なうことを特徴とする褐藻類の生育方法。
  2. 褐藻類の胞子、幼体又は成体のいずれか1種以上を担体に付着させてこれを前記調整海水中に入れることにより、当該担体上で褐藻類の生育を行なうことを特徴とする請求項1に記載の褐藻類の生育方法。
  3. 請求項1又は2に記載の生育方法によって生育させた褐藻類を、担体に付着して担体付きの種苗とし、次いで、少なくとも鉄鋼スラグ及び腐植物質を混合したスラグ系施肥材と当該担体付きの種苗とを海域に設置して、褐藻類の生育を行なうことを特徴とする褐藻類の生育方法。
  4. 担体に褐藻類の胞子及び/又は幼体を付着させた上で、これを、鉄濃度が5μg/L以上に調整された調整海水中に入れると共に、波長が400〜500nmであって光強度が10μmol/m/s以上40μmol/m/s未満の光を照射することにより、褐藻類を幼体又は成体まで生育させて担体付きの種苗とし、次いで、少なくとも鉄鋼スラグ及び腐植物質を混合したスラグ系施肥材と当該担体付きの種苗とを海域に設置して、褐藻類の生育を行なうことを特徴とする褐藻類の生育方法。
  5. 前記担体が、製鋼スラグを骨材とする水和固化体であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
  6. 前記鉄濃度の調整は、鉄鋼スラグと腐植物質とを混合したスラグ系施肥材を海水中に添加することにより行なわれることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
  7. 前記鉄濃度の調整は、鉄鋼スラグと腐植物質とを混合したスラグ系施肥材を水に浸漬させることにより施肥材成分を水に溶出させて得られた施肥材溶出液を、海水中に添加することにより行なわれることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
  8. 前記褐藻類が、コンブ目植物であるか、又はホンダワラ科植物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
  9. 前記海域に設置されるスラグ系施肥材は、生分解性且つ透水性を有する袋体に詰め込まれているか、又は透水箇所を有した箱型容器に詰め込まれていることを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載の褐藻類の生育方法。
  10. 請求項1又は2に記載の生育方法によって生育させた褐藻類を、製鋼スラグを骨材とする水和固化体に付着して褐藻類付きの水和固化体を製造することを特徴とする褐藻類付きの水和固化体の製造方法。
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