JP2017040461A - 蓄熱器及び蓄熱バーナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蓄熱体が充填された蓄熱部Aを備え、流体が蓄熱部Aを一方向に通過することで当該流体から蓄熱体への蓄熱がなされ、流体が蓄熱部Aを逆方向に通過することで蓄熱体から当該流体への放熱がなされる蓄熱器であって、蓄熱部Aを流体の流れ方向で複数の領域aに区画し、これら複数の領域aには異なる種類の蓄熱体を充填するとともに、複数の領域aのうちの少なくとも1つは、カプセル内に潜熱蓄熱材を封入して構成された潜熱蓄熱体xが充填された領域axとする。
【選択図】図5
Description
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、コンパクトな構造で高い熱交換性能を有し、流体からの高い熱回収量(蓄熱量)が得られる蓄熱器を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような高性能の蓄熱器を備えた蓄熱式バーナーや排熱回収システムなどを提供することにある。
[1]蓄熱体が充填された蓄熱部(A)を備え、流体が蓄熱部(A)を一方向に通過することで当該流体から蓄熱体への蓄熱がなされ、流体が蓄熱部(A)を逆方向に通過することで蓄熱体から当該流体への放熱がなされる蓄熱器であって、
蓄熱部(A)が流体の流れ方向で複数の領域(a)に区画され、これら複数の領域(a)には異なる種類の蓄熱体が充填されるとともに、複数の領域(a)のうちの少なくとも1つは、カプセル内に潜熱蓄熱材を封入して構成された潜熱蓄熱体(x)が充填された領域(ax)であることを特徴とする蓄熱器。
[2]上記[1]の蓄熱器において、複数の領域(a)のうちの少なくとも1つは、顕熱蓄熱体(y)が充填された領域(ay)であることを特徴とする蓄熱器。
[3]上記[2]の蓄熱器において、顕熱蓄熱体(y)が充填された2つの領域(ay)間に、潜熱蓄熱体(x)が充填された1つ以上の領域(ax)が設けられることを特徴とする蓄熱器。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの蓄熱器において、潜熱蓄熱体(x)が備える潜熱蓄熱材が固液相変態する金属又は合金からなることを特徴とする蓄熱器。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの蓄熱器において、潜熱蓄熱体(x)が備える潜熱蓄熱材の固液相変態する際の融解点(但し、固相状態にある潜熱蓄熱材の一部が融解し始める温度)をTM(℃)、凝固開始点(但し、液相状態にある潜熱蓄熱材の一部が凝固し始める温度)をTS(℃)とした場合において、
蓄熱部(A)における流体流れ方向において、流体から蓄熱体への蓄熱期間の終点での蓄熱体温度がTM±50℃となる位置と、蓄熱体から流体への放熱期間の終点での蓄熱体温度がTS±50℃となる位置との間の任意の範囲に、前記潜熱蓄熱体(x)が充填された領域(ax)が設けられることを特徴とする蓄熱器。
[8]燃焼排ガスと支燃ガスを交互に通過させる蓄熱器として、上記[1]〜[7]のいずれかの蓄熱器を備えることを特徴とする蓄熱式バーナー。
[9]排ガスからの熱回収及び蓄熱を行う蓄熱器として、上記[1]〜[7]のいずれかの蓄熱器を備えることを特徴とする排熱回収システム。
[10]熱媒体の循環路において熱媒体からの熱回収及び蓄熱を行う蓄熱器として、上記[1]〜[7]のいずれかの蓄熱器を備えることを特徴とする熱媒体の循環システム。
また、本発明の蓄熱器を備えた蓄熱式バーナーは、燃焼排ガスからの高い熱回収量(蓄熱量)が得られ、この熱で支燃ガスを予熱できるため、バーナー温度が安定化し、従来の蓄熱式バーナーに較べて被加熱物をより均一に加熱することができる。
さらに、本発明の蓄熱器を備えた排熱回収システムや熱媒体の循環システムは、流体からの高い熱回収量(蓄熱量)が得られ、効率的な運転、操業を行うことができる。
本発明の蓄熱器は、蓄熱部Aを流体の流れ方向で複数の領域aに区画し、これら複数の領域aに異なる種類の蓄熱体を充填するとともに、複数の領域aのうちの少なくとも1つを、カプセル内に潜熱蓄熱材を封入して構成された潜熱蓄熱体x(以下、単に「潜熱蓄熱体x」という)が充填された領域axとする。
ここで、蓄熱体への蓄熱、蓄熱体からの放熱がなされる流体は、通常はガスであるが、ガス以外の流体(例えば、熱媒や冷媒として用いられる水、溶液、溶融塩など)であってもよい。
図1は、潜熱蓄熱体xの一実施形態を示す半断面図であり、カプセル1内に潜熱蓄熱材2が封入された構造を有する。本実施形態のカプセル1は球形であるが、カプセル1の形状に特に制限はない。潜熱蓄熱体xの大きさ(径)は、蓄熱部Aに充填する関係上、体積の球形換算で10〜30mm程度であるのが普通である。通常、カプセル1は半割状のカプセル部材を連結(例えば、ネジによる連結)又は接合することで構成される。
また、潜熱蓄熱材2としては、特に金属又は合金からなるものが好ましく、なかでも、特許文献2に示されるような、Si及び/又はBiと、Mg、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、Au、Pbの中から選ばれる1種以上の金属元素を含む合金が好ましい。この潜熱蓄熱材は、固液相変態する材料であり、周囲から熱を吸収した際に固相から液相に相変態して熱を潜熱として蓄え、周囲に熱を放出した際に液相から固相に相変態する(潜熱の放出)。この潜熱蓄熱材は、金属であるため熱エネルギーの迅速な入出力が可能であるとともに、相変態する際の体積膨張率(融解時体積膨張率)が小さいため、蓄熱密度を高くできる利点がある。また、合金を構成する各元素の組成比を変えることで、合金の相変態温度(凝固開始点など)を調整でき、幅広い温度帯の熱回収に適用することができる。
また、潜熱蓄熱材2としては上記以外に、Al−Cu合金、Cu、Al、MgCl2なども使用できる。ここで、Al−92mass%Cu合金では1030〜1050℃の温度範囲で、Cuでは1085℃で、Alでは660℃、MgCl2では710℃で、それぞれ高い蓄熱性能を発揮できる。
また、潜熱蓄熱体xが充填された領域axを複数設けてもよいが、この場合、効率的な蓄熱を行うために、その複数の領域axの潜熱蓄熱体xが備える潜熱蓄熱材は、蓄熱体への蓄熱を行う流体(高温流体)の流れ方向における上流側の領域axほど相変態温度が高いことが好ましい。なお、この場合の相変態温度の定義は、後述する通りである。
蓄熱体への蓄熱を行う流体f1(高温流体)は、出入口30から蓄熱部Aに導入され、蓄熱部Aを通過した後、出入口31から排出される。一方、蓄熱体からの放熱を行う流体f2(低温流体)は、出入口31から蓄熱部Aに導入され、蓄熱部Aを通過した後、出入口30から排出される。
なお、図3の実施形態では、蓄熱部A(容器内部)が網などの通気性のある仕切壁4で仕切られることで、複数の領域aに区画されているが、例えば、複数の領域aをそれぞれ独立した容器に設け、これら容器を連通させるような構造にしてもよい。
図3(イ)の実施形態では、蓄熱部Aは流体流れ方向において3つの領域aに区画され、異なる潜熱蓄熱材を備えた潜熱蓄熱体xが充填された領域ax1〜ax3となっている。これら3つの領域ax1〜ax3の潜熱蓄熱体xが備える潜熱蓄熱材は、蓄熱体への蓄熱を行う流体f1(高温流体)の流れ方向における上流側の領域axほど相変態温度が高くなっている。すなわち、潜熱蓄熱体xが備える潜熱蓄熱材の相変態温度は、領域ax1>領域ax2>領域ax3となっている。
ここで、潜熱蓄熱材の相変態温度とは、融解点(但し、固相状態にある潜熱蓄熱材の一部が融解し始める温度。以下、「融解点」という場合は、この意味である。)、凝固開始点(但し、液相状態にある潜熱蓄熱材の一部が凝固し始める温度。以下、「凝固開始点」という場合は、この意味である。)などの1つ以上を指す。例えば、図3(イ)、(ウ)において潜熱蓄熱材として用いられるAl−Si共晶合金の場合は、相変態温度が高いとは凝固開始点が高いという意味である。
ここで、流体から蓄熱体への蓄熱期間、蓄熱体から流体への放熱期間は、蓄熱器が適用される装置や設備・システムにおいて、それぞれの必要に応じて決められる。
潜熱蓄熱体xが充填された領域axを以上のように設けることにより、潜熱蓄熱材の潜熱蓄熱性能を最大限に発揮させることができる。
図4は、蓄熱式バーナーが設置された加熱炉の一実施形態と、その操業状況を示している。
図4において、加熱炉5の両側部には、蓄熱式バーナー6a,6bが設置され、その燃焼により炉内の被加熱物S(鋼材など)が加熱される。各バーナー6a,6bのバーナー本体7には、本発明の蓄熱器8が付設されている。この蓄熱器8は、例えば、図3(ア)〜(ウ)に示すような蓄熱部Aを有している。
各バーナー6a,6bは交互に使用され(例えば、0.5〜1分毎に交互に使用される)、一方のバーナー6a又は6bの使用時に生じた高温の燃焼排ガスが、使用されていない他方のバーナー6b又は6aを通じて排気され、この際、燃焼排ガスが蓄熱器8内の蓄熱部Aを通過することで、燃焼排ガスから蓄熱体への蓄熱がなされる。また、バーナー6a又は6bの使用時には、燃焼用空気などの支燃ガス(通常、常温)が蓄熱器8の蓄熱部Aを通過してバーナー本体7内に供給され、この際、蓄熱体から支燃ガスへの放熱がなされ、支燃ガスが予熱される。
蓄熱式バーナーを備えた加熱炉で蓄熱燃焼を行う場合には、一定時間毎にバーナー6a,6bの燃焼を切り替える交番燃焼が行われる。切り替え時間は、概ね0.5〜5分間程度と短いのが普通である。
以上の観点から、蓄熱式バーナーの燃焼排ガス温度(炉内ガス温度)に応じて蓄熱器8の蓄熱期間(燃焼排ガスから蓄熱体への蓄熱期間。以下同様。)、放熱期間(蓄熱体から支燃ガスへの放熱期間。以下同様。)の長さが決まり、これに基づく所定の切り替え時間でバーナー6a,6bの燃焼を切り替える。
この実施形態の蓄熱部Aは、図3(ア)の構成を有しており、蓄熱部Aはガス流れ方向において3つの領域aに区画され、中央が潜熱蓄熱体xが充填された領域ax、両端が顕熱蓄熱体yが充填された領域ay1,ay2となっている。
本実施形態の潜熱蓄熱体xは、セラミック製のカプセル内に潜熱蓄熱材(PCM)であるAl−25mass%Si共晶合金が封入されたものであり、また、顕熱蓄熱体yはAl2O3ボールである。Al−25mass%Si共晶合金は、固液相変態する潜熱蓄熱材であり、固液相変態する際の融解点TMが約580℃、凝固開始点TS(℃)が約770℃である。この潜熱蓄熱体xが充填された領域axは、蓄熱部Aにおけるガス流れ方向において、燃焼排ガスから蓄熱体への蓄熱期間の終点での蓄熱体温度が約540℃となる位置と、蓄熱体から支燃ガスへの放熱期間の終点での蓄熱体温度が約800℃となる位置との間に設けられている。ガス流れ方向における蓄熱部Aの厚さは250mmであり、その上面位置を0mm、下面位置を250mmした場合、100mm〜200mmの位置に領域axが設けられている。
この実施形態の蓄熱部Aは、図3(イ)の構成を有しており、蓄熱部Aはガス流れ方向において3つの領域aに区画され、これら3つの領域は、異なる潜熱蓄熱材を備えた潜熱蓄熱体xが充填された領域ax1〜ax3となっている。これら3つの領域ax1〜ax3の潜熱蓄熱体xが備える潜熱蓄熱材は、燃焼排ガスの流れ方向における上流側の領域axほど相変態温度(凝固開始温度)が高くなっている。
ガス流れ方向における蓄熱部Aの厚さは250mmであり、その上面位置を0mm、下面位置を250mmした場合、0mm〜100mmの位置に領域ax1が、100mm〜200mmの位置に領域ax2が、200mm〜250mmの位置に領域ax3が、それぞれ設けられている。
などが挙げられる。また、上記(i)の排熱回収システムとしては、例えば、製鉄プロセスでの排熱回収などのためのシステムが挙げられ、上記(ii)の熱媒体の循環システムとしては、例えば、太陽熱発電システム、自動車や建設機械などのエンジン冷却システム、空調システムなどが挙げられる。
また、本発明の蓄熱器を備えた蓄熱式バーナーは、種々の被加熱物(例えば、鋼材など)の加熱設備に適用できる。この加熱設備は、本発明の蓄熱器を備えた蓄熱式バーナーを用いるため、バーナー温度が安定化し、従来の蓄熱式バーナーに較べて被加熱物をより均一に加熱することができる。
また、本発明の蓄熱器を備えた排熱回収システムや熱媒体の循環システムは、流体からの高い熱回収量(蓄熱量)が得られ、効率的な運転、操業を行うことができる。
蓄熱式バーナーは、バーナー容量200万kcal/h/本とし、蓄熱器は、蓄熱部水平断面積0.5m2、蓄熱部高さ0.27mとした。蓄熱式バーナーの使用条件としては、バーナー吸引率80%、空気比1.1、炉内燃焼排ガス温度1100℃、初期燃焼用空気温度30℃とした。
蓄熱体としてAl2O3ボールを使用し、このAl2O3ボールを蓄熱部全体に充填した。バーナーの切替時間60秒で実施した。この従来例の排熱回収量は30Mcal/tonであった。
・本発明例1
図5に示すような構造の蓄熱器を用い、バーナーの切替時間は60秒とした。
本発明例の排熱回収量は31.5Mcal/tonであった。
・本発明例2
図7に示すような構造の蓄熱器を用いた。この蓄熱器は、領域ax1に潜熱蓄熱材(PCM(1))がCuからなる潜熱蓄熱体xを、領域ax2に潜熱蓄熱材(PCM(2))がMgCl2からなる潜熱蓄熱体xを、領域ax3に潜熱蓄熱材(PCM(3))がAl−13mass%Si共晶合金からなる潜熱蓄熱体xを、それぞれ充填した。バーナーの切替時間は60秒とした。本発明例の排熱回収量は32.5Mcal/tonであった。
2 潜熱蓄熱材
3 容器
4 仕切壁
5 加熱炉
6a,6b バーナー
7 バーナー本体
8 蓄熱器
9a,9b,10a,10b,11a,11b,12a,12b 配管
13a,13b,14a,14b,15a,15b 開閉弁
30,31 出入口
A 蓄熱部
x 潜熱蓄熱体
y 顕熱蓄熱体
a,ax,ax1,ax2,ax3,ay,ay1,ay2 領域
f1,f2 流体
Claims (10)
- 蓄熱体が充填された蓄熱部(A)を備え、流体が蓄熱部(A)を一方向に通過することで当該流体から蓄熱体への蓄熱がなされ、流体が蓄熱部(A)を逆方向に通過することで蓄熱体から当該流体への放熱がなされる蓄熱器であって、
蓄熱部(A)が流体の流れ方向で複数の領域(a)に区画され、これら複数の領域(a)には異なる種類の蓄熱体が充填されるとともに、複数の領域(a)のうちの少なくとも1つは、カプセル内に潜熱蓄熱材を封入して構成された潜熱蓄熱体(x)が充填された領域(ax)であることを特徴とする蓄熱器。 - 複数の領域(a)のうちの少なくとも1つは、顕熱蓄熱体(y)が充填された領域(ay)であることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱器。
- 顕熱蓄熱体(y)が充填された2つの領域(ay)間に、潜熱蓄熱体(x)が充填された1つ以上の領域(ax)が設けられることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱器。
- 潜熱蓄熱体(x)が備える潜熱蓄熱材が固液相変態する金属又は合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱器。
- 潜熱蓄熱体(x)が充填された複数の領域(ax)が設けられるとともに、該複数の領域(ax)の潜熱蓄熱体(x)が備える潜熱蓄熱材は、蓄熱体への蓄熱を行う流体の流れ方向における上流側の領域(ax)ほど相変態温度が高いことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓄熱器。
- 潜熱蓄熱体(x)が備える潜熱蓄熱材の固液相変態する際の融解点(但し、固相状態にある潜熱蓄熱材の一部が融解し始める温度)をTM(℃)、凝固開始点(但し、液相状態にある潜熱蓄熱材の一部が凝固し始める温度)をTS(℃)とした場合において、
蓄熱部(A)における流体流れ方向において、流体から蓄熱体への蓄熱期間の終点での蓄熱体温度がTM±50℃となる位置と、蓄熱体から流体への放熱期間の終点での蓄熱体温度がTS±50℃となる位置との間の任意の範囲に、前記潜熱蓄熱体(x)が充填された領域(ax)が設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蓄熱器。 - 蓄熱部(A)が通気性のある仕切壁を介して複数の領域(a)に区画されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蓄熱器。
- 燃焼排ガスと支燃ガスを交互に通過させる蓄熱器として、請求項1〜7のいずれかに記載の蓄熱器を備えることを特徴とする蓄熱式バーナー。
- 排ガスからの熱回収及び蓄熱を行う蓄熱器として、請求項1〜7のいずれかに記載の蓄熱器を備えることを特徴とする排熱回収システム。
- 熱媒体の循環路において熱媒体からの熱回収及び蓄熱を行う蓄熱器として、請求項1〜7のいずれかに記載の蓄熱器を備えることを特徴とする熱媒体の循環システム。
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