JP2017039986A - アルミニウム合金製車両用ホイール - Google Patents

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慶之 大窪
顕一 堀川
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顕一 堀川
春幸 森
Haruyuki Mori
春幸 森
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Masanori Hara
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Abstract

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、高強度(0.2%耐力)と高靭性(伸び)とを併せ持つアルミニウム合金からなる車両用ホイールを提供することである。
【解決手段】 Si6.5〜11.8質量%、Mg0.20〜0.45質量% 、Cu,Zn,Fe,Mn及びTiからなる群から選ばれる一種又は二種以上を0.1〜1.5質量%含み、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる車両用ホイールであって、前記アルミニウム合金の初晶Al内で測定したSiのX線強度の平均値をSavとし、前記初晶Al内で最も低いX線強度をSminとしたとき、X線強度の低下率((Sav−Smin)/Sav×100)が15%以下である車両用ホイール。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金製車両用ホイールに関するものであり、特に優れた耐力、伸びを有し、例えば17インチ以上の大径ホイールとして好適なアルミニウム合金製の車両用ホイールに係る発明である。
車両用ホイールは近年軽量化、意匠(デザイン)性などから、アルミニウム合金などの軽合金鋳物で製作されてきている。強度部品用として現状最も良好な性能を持つアルミニウム鋳物用合金はJISに定められているAC4C,AC4CH材が中心であるが、この材料は機械的性質と鋳造性とのバランスのとれたアルミニウム合金鋳物材であり、熱処理(T6処理)を施すことにより高強度、高靭性が得られ、自動車のアルミニウム合金製車両用ホイール(以下、アルミホイールと言う場合がある。)として用いられている。この熱処理は溶体化処理、焼入れ処理、時効処理の工程からなる。
溶体化処理は組織を均一化させて溶質元素を十分固溶させ、さらに共晶Siの形態を改良する効果がある。共晶Si粒子は例えばSr元素を添加した改良処理などによって珊瑚状の形態をしているが溶体化処理によって球状化し、応力集中が緩和されて機械的性質が改善される。また、焼入れ処理により過飽和状態でSi、Mgなどが組織に固溶するが、時効処理によってこれらの元素の析出物が析出する。
例えば特許文献1にはアルミホイールの材料として、Si6.5〜7.5wt%、Mg0.7〜1.2wt%、残部Alからなる合金であって、アルミ地とα固溶体および共晶Siとからなる共晶地とから形成されるアルミニウム合金が記載され、共晶地中のMg濃度が1.3〜15wt%である耐食性に優れた材料が記載されている。
また、特許文献2にはAl−Siをベースとする車両材料用アルミダイカスト合金であって、該合金は、重量%でSi:5〜12%、Mg:0.1〜1.0%、Fe:0.16%以上、Mn:1.5%以下、Cu:1.0%以下、Zn:2.0%以下とし、その他、金属組織の微細化のため、Ti:0.03〜0.2%、Sr:0.005〜0.2%を、どちらか一方あるいは両方添加して、残部がAlおよび不可避的不純物からなる合金をダイカストし、ダイカスト後、0〜5分以内で、水焼入れあるいは100℃以下の冷却水溶液にて急冷して得られる車両材料用アルミダイカスト合金が記載されている。本発明によれば低コストな再生塊アルミニウムなどの、Feを多く含む原料を使用した場合であっても、高強度と高靭性とを併せ持つアルミダイカスト合金が得られるとしている。
また、特許文献3にはアルミニウム合金溶湯が、Siを9.0−11.8質量%、Mgを0.20−0.45質量%、Fe、Cu、Mn、ZnおよびTiの総量を0.1−1.5質量%、残部Alならびに不可避不純物を含み、デザイン部を形成するキャビティに充填されたアルミニウム合金溶湯の冷却速度が2℃/秒以上であり、かつ、当該冷却速度は、リム本体部を形成するキャビティに開口した開口部近傍のアルミニウム合金溶湯の冷却速度の1.5倍以上である冷却工程を備え、前記冷却速度は、前記冷却工程における溶湯の温度と時間との相聞を示す線図において、580℃における接線の傾きであるアルミニウム合金製ロードホイールの製造方法が記載されている。本発明によればロードホイール全体が所定の剛性を有するとともに、衝撃的な負荷に対して十分な変形能を有するデザイン部を備えるロードホイールが得られるとしている。
特開平9−165638号公報 特開2011−208253号公報 国際公開WO 2015/016320号公報
特許文献1に記載のアルミニウム合金は比較的多くのMgを含有するため、アルミホイールの材料としては十分な伸びが得られない場合があった。
特許文献2に記載の車両材料用アルミダイカスト合金は比較的多くのFeを含有するため、アルミホイールの材料としては十分な伸びが得られない場合があった。
特許文献3のアルミニウム合金製ロードホイールの製造方法は、溶湯冷却速度の高度な制御技術を必要とする。デザイン部を形成するキャビティに充填されたアルミニウム合金溶湯の冷却速度が、リム本体部を形成するキャビティに開口した開口部近傍のアルミニウム合金溶湯の冷却速度の1.5倍未満では、得られたアルミホイールのデザイン部の伸びが不十分になることがあった。
よって本発明が解決しようとする課題は、高強度(0.2%耐力)と高靭性(伸び)とを併せ持つアルミホイールを提供することである。
本願発明者らは、アルミホイールを構成するアルミニウム合金の初晶Al内におけるSiの分布を最適化することによって0.2%耐力と伸びを同時に増加させたアルミホイールを得ることができることを見出し、本願発明に想到した。
即ち本発明は、Si6.5〜11.8質量%、Mg0.20〜0.45質量% 、Cu,Zn,Fe,Mn及びTiからなる群から選ばれる一種又は二種以上を0.1〜1.5質量%含み、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる車両用ホイールであって、前記アルミニウム合金の初晶Al内で測定したSiのX線強度の平均値をSavとし、前記初晶Al内で最も低いX線強度をSminとしたとき、式(1)により求めたX線強度の低下率が15%以下であるアルミニウム合金製車両用ホイールである。
(Sav−Smin)/Sav×100(%) (1)
アルミホイールを構成するアルミニウム合金の初晶Al内のSiの分布を最適化することによって、高強度(0.2%耐力)と高靭性(伸び)とを併せ持つアルミホイールを提供することができる。
本発明に係る実施例のアルミホイールのアルミニウム合金組織のX線強度を示すグラフである。 本発明のアルミホイールの結晶構造の写真である。 比較例のアルミホイールのアルミニウム合金組織のX線強度を示すグラフである。
アルミホイールの製造方法を説明する。まず、アルミホイールの素材であるホイール素材を形成する。ホイール素材は、例えば、金型キャビティ内に比較的低圧でアルミニウム合金溶湯を充填する低圧鋳造法、アルミニウム合金溶湯を金型の上部から重力によって注湯させるグラビティ鋳造法、ダイカスト機に近い構造の鋳造機を用いてアルミニウム合金溶湯を金型キャビティ内に注湯し溶湯が完全に凝固する直前に金型を押し込んでホイール素材を凝塑性変形させるスクイズ(溶湯鍛造)法、共晶凝固直後のアルミニウム合金溶湯を金型キャビティ内に充填する半凝固鋳造法などによって鋳造することができる。得られたホイール素材に熱処理を施す。本発明に係る組成のアルミニウム合金で鋳造されたホイール素材には、一般的にT6処理と呼ばれる溶体化処理、焼入れ処理、時効処理からなる熱処理が施される。溶体化処理は組織を均一化させて溶質元素を十分固溶させ、さらに共晶Siの形態を改良する効果がある。共晶Si粒子は例えばSr元素を添加した改良処理などによって珊瑚状の形態をしているが溶体化処理によって球状化し、応力集中が緩和されて機械的性質が改善される。また、焼入れ処理により過飽和状態でSi、Mgなどが組織に固溶するが、時効処理によってこれらの元素の析出物が析出する。そして、本発明に係る焼入れ処理では、以下説明するように焼入れで使用する冷却媒体の温度を特定することを一つの特徴としており、これにより初晶Al内のSiのX線強度の低下率を15%以下とすることができる。
熱処理の詳細について説明する。鋳造により製造したホイール素材に500℃以上共晶温度以下の温度で50〜250分保持する溶体化処理を行う。その後、80℃以下の水中に浸漬して焼入れ処理を行う。冷却媒体は水でもよいし油などでもよい。次に100℃以上200℃以下の温度で60〜120分保持する時効処理を行う。従来よりも単時間で製造ができ、かつ機械的強度も従来品と遜色がないものを得ることができる。また、歪み量も少なく、旋盤加工のみでバランス対策が可能なので歪み取りの製造工程が不要である。溶体化処理の保持時間は80分〜200分が好ましく、100分〜150分がなお好ましい。保持温度は520℃以上が好ましく、530℃以上がなお好ましい。また、焼入れ処理の冷却媒体の温度は70℃以下が好ましく、50℃以上が好ましい。50℃未満ではアルミホイールに歪が生じ易くなるため好ましくない。
本発明に係るアルミホイールは、17インチ以上のアルミホイールにすることが好ましい。なぜなら口径が大きくなるほど必要とされる機械的強度は高くなるためである。特にインナー側のビードシート部は、タイヤからかかる応力によって歪みが発生しやすく、最も強度設計の際に注意を払う場所である。本発明の組織形態を持つ車両用ホイールとする事で、大径のホイールであってもインナー側のビードシート部での屈折応力の限界値を底上げでき、かつさらなる軽量化を行うこともできる。
本発明に係るアルミホイールを構成するアルミニウム合金の組成は、Si6.5〜11.8質量%、Mg0.20〜0.45質量% 、Cu,Zn,Fe,Mn及びTiからなる群から選ばれる一種又は二種以上を0.1〜1.5質量%含み、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金である。これらのアルミニウム合金はアルミホイールに求められる0.2%耐力と伸びとを達成し易いことに加えて、内部の熱伝導特性が非常に優れており、部分的な温度差が生じた場合でも内部の熱伝導により均一な冷却となるので、焼入れしてもアルミホイールのディスク面が歪み難いという利点がある。
熱処理後のホイール素材には、通常、加工が施されて最終形状になる。リム部は旋盤加工が施されて均一な肉厚でかつ薄肉の筒状に加工される。また、ディスク面にはバルブ穴、ハブ穴と呼ばれる車体のハブ部とボルトなどで締結される部分がドリル加工で形成される。その後、必要に応じ塗装が施されて最終製品であるアルミホイールとなる。
本発明に係るアルミホイールは、図2に示すように、低倍率で観察するとデンドライト状組織を呈する白地に写る初晶Alと、その周囲の共晶地からなる結晶構造を有する。共晶地はα固溶体と黒地に写る共晶Si粒子とからなる。そして、本発明に係るアルミニウム合金組織の初晶Alにおいては、下記で詳細に説明するようにその内部におけるSiの分布が均一であり、初晶Sl内におけるSiの平均値に対する低下量が低くなっている。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
〔実施例〕
Figure 2017039986
(実施例1)
Al−Si−Mg系合金(JIS H 5202で規定されたAC4CH材相当)であり表1の組成Aからなる溶湯を金型内(約450℃)に注入した。低圧鋳造方案を用いて、ホイールのディスク部中央に湯口を設け、保持炉内の湯面に0.049〜0.063MPaの圧力をかけてストークを介して溶湯を注湯した。こうして得られた17インチ径の車両用ホイール素材を、560℃×3時間で溶体化処理し、温度50℃の水に浸漬して焼入れし、その後180℃×30分で時効処理した。この熱処理後の車両用ホイール素材から試験片を切り出した。切り出した部位はインナーフランジ部である。その表面を研磨して倍率2000倍にした光学顕微鏡によって観察した。図2は実施例1のアルミニウム合金組織を顕微鏡で観察したものである。黒く映る球状の部分が共晶Siであり、共晶Siで囲まれた丸い白地の部分が初晶Alである。SiのX線強度は、アルミニウム合金の共晶Si界面から初晶Alの重心を通り、前記初晶Alの反対側の共晶Si界面まで測定した。具体的には、図2に記載された点線A上において初晶Alに固溶するSiのX線強度を測定した。ここで、上記した重心とは、基本的には初晶Alの外縁で形成される閉図面、図2のように組織写真において初晶Alの一部のみが確認できる場合には、図において実線で示すように、初晶Alの外縁と組織写真の外縁とで形成される閉図面における、重心のことを指す。EPMA(線分析)の測定条件を以下に示す。
[EPMA(線分析)の測定条件]
加速電圧:15kV
電子線径:1μm
照射電流:100nA
分光器結晶:LIFを用いてFeのKαのX線強度を測定
分光器結晶:RAPを用いてMgのKαのX線強度を測定
分光器結晶:PETを用いてSiおよびTiのKαのX線強度を測定
図1にその測定結果の模式図を示す。実施例1のアルミニウム合金組織の初晶Alに含まれるSiのX線強度の平均値をSavとし、前記初晶Al内で最も低いX線強度をSminとしたとき、(Sav−Smin)/Sav×100(%)なる式により求めたX線強度の低下率は5%であった。なお、最も低いX線強度Sminが測定された位置は、初晶Alの外周部であった。
(実施例2)
実施例2では、Al−Si−Mg系合金であり表1の組成Bからなる溶湯を用いたこと、及び温度65℃の水に浸漬して焼入れしたことを除いて実施例1と同様にして車両用ホイール素材を作製し、初晶Alに固溶するSiのX線強度を測定した。上記と同様にして求めた、実施例2のX線強度の低下率は15%であった。実施例2では、初晶Alの中央部は、図1に示す実施例1の初晶Alの中央部とほぼ同じX線強度を示すが、初晶Alの外周部に近づくにつれて徐々にX線強度は実施例1より低下し、最も低いX線強度Sminは初晶Alの外周部で測定された。
(比較例1)
比較例1では、溶体化処理の後、温度85℃の水に浸漬して焼入れしたことを除いて実施例1と同様にして車両用ホイール素材を作製し、初晶Alに固溶するSiのX線強度を測定した。X線強度の測定結果を図3に示すが、比較例1のX線強度の低下率は17%であった。比較例1の車両用ホイールでは、合金組織内で過飽和固溶体が維持できておらず,初晶Alと共晶地の界面で優先的にSi元素が吐き出されたものと考えられる。
Figure 2017039986
実施例および比較例で得られたアルミホイールの機械的特性の測定結果を表2に示す。実施例1,2のホイールは耐力205MPa以上、伸び13%以上であり高い機械的強度を有する。比較例1のホイールは、0.2%耐力、伸び、共に実施例1および2のホイールに対して低い値しか得られていない。そのために薄肉化は難しいことが予想され、軽量化を果たすことが難しいと判断される。

Claims (1)

  1. Si6.5〜11.8質量%、Mg0.20〜0.45質量% 、Cu,Zn,Fe,Mn及びTiからなる群から選ばれる一種又は二種以上を0.1〜1.5質量%含み、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる車両用ホイールであって、
    前記アルミニウム合金の初晶Al内で測定したSiのX線強度の平均値をSavとし、前記初晶Al内で最も低いX線強度をSminとしたとき、式(1)により求めたX線強度の低下率が15%以下であることを特徴とするアルミニウム合金製車両用ホイール。

    (Sav−Smin)/Sav×100(%) (1)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022091944A1 (ja) 2020-10-30 2022-05-05 昭和電工株式会社 自動車のホイール用アルミニウム合金及び自動車のホイール
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