JP2017039963A - 油井管 - Google Patents

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Abstract

【課題】内面が高温になった場合にも、他の油井管又はカップリングとの間の高い密封性能を維持することができる油井管を提供する。
【解決手段】油井管(10)は、ピン(11)を備える。ノーズ部(111)は、ピン(11)の先端部を構成し、締結時においてボックス(21)の内径よりも小さい外径を有する。ピンショルダ面(114)は、ノーズ部(111)の先端面に形成され、外周側が内周側よりもピン(11)の先端側に位置するように傾斜する。ノーズ部(111)とボックス(21)とのすき間の体積V(mm)は、ノーズ部(111)の管軸方向の長さをL(mm)、ノーズ部(111)の管軸方向の中央における外径及び厚みをそれぞれD(mm)及びT(mm)として、式(6)を満たす。ピンショルダ面(114)と管軸に垂直な面とがなす角は、D、L、Tが式(7)を満たすとき、8°以上21°以下である。
5πL/T<V<0.4πLD (6)
TD/L>50 (7)
【選択図】図11

Description

本開示は、油井管に関し、より詳細には、他の油井管と直接又はカップリングを介して連結される油井管に関する。
従来から、油井環境において、マルテンサイト系ステンレス鋼が広く使用されてきた。従来の油井環境は、炭酸ガス(CO)及び/又は塩素イオン(Cl)を含有する。13質量%前後のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼(以下、13%Cr鋼という)は、このような従来の油井環境において、優れた耐食性を有する。
近年、原油価格の高騰に起因して、深層油井の開発が進んでいる。深層油井の深度は深い。そして、深層油井は腐食性が高く、高温である。より具体的には、深層油井は、高温の腐食性ガスを含有する。腐食性ガスは、CO及び/又はClを含有し、さらに、硫化水素ガスを含有する場合もある。高温での腐食反応は、常温での腐食反応よりも激しい。そのため、深層油井に使用される油井用鋼は、13%Cr鋼よりも高い強度及び耐食性を求められる。
ここで、二相ステンレス鋼は、13%Cr鋼よりもCr含有量が高い。そのため、二相ステンレス鋼は、13%Cr鋼よりも高い耐食性を有する。二相ステンレス鋼は例えば、22%のCrを含有する22%Cr鋼や、25%のCrを含有する25%Cr鋼などである。しかしながら、二相ステンレス鋼は合金元素を多く含有するため高価である。したがって、13%Cr鋼よりも高い耐食性を有し、二相ステンレス鋼よりも安価なステンレス鋼が求められている。
この要求に応じて、15.5〜18%のCrを含有し、高温の油井環境において高い耐食性を有するステンレス鋼が提案されている。特開2005−336595号公報(特許文献1)は、高強度を有し、230℃の高温環境において耐炭酸ガス腐食性を有するステンレス鋼管を提案する。この鋼管の化学組成は、15.5〜18%のCrと、1.5〜5%のNiと、1〜3.5%のMoとを含有し、Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C≧19.5を満たし、さらに、Cr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N≧11.5を満たす。この鋼管の金属組織は、10〜60%のフェライト相と、30%以下のオーステナイト相とを含有し、残部はマルテンサイト相からなる。
国際公開第2010/050519号(特許文献2)は、200℃の高温炭酸ガス環境において耐食性を有し、さらに、原油又はガスの回収が一時的に停止されることにより油井又はガス井の環境温度が低下した場合であっても高い耐硫化物応力腐食割れ性を有するステンレス鋼管を提案する。この鋼管の化学組成は、16%超〜18%のCrと、2%超〜3%のMoと、1〜3.5%のCuと、3〜5%未満のNiとを含有し、[Mn]×([N]−0.0045)≦0.001を満たす。この鋼管の金属組織は、体積率で10〜40%のフェライト相と、10%以下の残留オーステナイト相とを含有し、残部はマルテンサイト相である。
国際公開第2010/134498号(特許文献3)は、高温環境で優れた耐食性を有し、常温で優れた耐SSC性を有する高強度のステンレス鋼を提案する。この鋼の化学組成は、16%超〜18%のCrと、1.6〜4.0%のMoと、1.5〜3.0のCuと、4.0超〜5.6%のNiとを含有し、Cr+Cu+Ni+Mo≧25.5を満たし、−8≦30(C+N)+0.5Mn+Ni+Cu/2+8.2−1.1(Cr+Mo)≦−4を満たす。この鋼の金属組織は、マルテンサイト相と、10〜40%のフェライト相と、残留オーステナイト相とを含有し、フェライト相分布率が85%よりも高い。
ところで、これらの文献に開示された15.5〜18%のCrを含有する高Crステンレス鋼において、低温靱性が不十分な場合がある。特開2010−209402号公報(特許文献4)は、低温靱性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管を提案する。この鋼管は、15.5〜17.5%のCrを含有し、ミクロ組織内の結晶粒のうち最も大きいものにおいて、当該結晶粒内の任意の2点間の距離が200μm以下である(換言すれば、結晶粒径が200μm以下である)。また、国際公開第2013/179667号(特許文献5)には、肉厚方向に引いた線分の単位長さ当たりに存在するフェライト−マルテンサイト粒界の数として定義されるGSI値が肉厚中心部で120以上である組織を有することで、優れた耐食性及び低温靱性を兼備することができると記載されている。
15.5〜18%のCrを含有する二相系の高Crステンレス鋼は、22%Cr鋼や25%Cr鋼と比較して高温環境での強度が高い。例えば、250℃の高温環境下では、15.5〜18%のCrを含有する二相ステンレス鋼の強度は、22%Cr鋼や25%Cr鋼の強度より8%程度も高い。油井管の連結に利用されるねじ継手は、管本体の降伏強度の90〜95%という高い荷重で性能試験が実施される。このため、8%の強度の差は極めて大きい。
油井管の連結に利用されるねじ継手の形式は、インテグラル型とカップリング型とに大別される。インテグラル型では、油井管同士が直接連結される。具体的には、一の油井管の端部の内周に設けられた雌ねじ部に、他の油井管の端部の外周に設けられた雄ねじ部がねじ込まれ、油井管同士が連結される。カップリング型では、カップリングを介して油井管同士が連結される。具体的には、カップリングの両端部の内周に設けられた雌ねじ部の各々に、油井管の端部の外周に設けられた雄ねじ部がねじ込まれることにより、油井管同士が連結される。
一般に、雄ねじ部が形成された油井管の端部は、雌ねじ部に挿入される要素を含むことからピンと称される。雌ねじ部が形成された油井管又はカップリングの端部は、雄ねじ部を受け入れる要素を含むことからボックスと称される。
深層油井では、井戸底が250℃超の高温であり、井戸底と井戸口との温度差が大きい。このため、深層油井で用いられる油井管のねじ継手には、高温環境における高い強度が要求される。常温環境で高い強度を有するねじ継手であっても高温環境での強度が低ければ、結局のところ低い方の強度に合わせて油井の設計を行う必要があり、無駄が生じるためである。
また、深層油井の生産対象は、天然ガスであることが多い。よって、深層油井で用いられる油井管のねじ継手には、高圧のガスに対する優れた密封性能も要求される。
優れた密封性能を確保するため、メタル−メタル接触によるシール部に加え、ピンの先端部を構成するノーズ部をねじ継手に設ける技術が知られている。メタル−メタル接触によるシール部は、ピンシール面の径がボックスシール面の径よりもわずかに大きくなっていることにより(以下、この径差を干渉量という)、締結によってシール面同士が嵌め合わされたときに、各シール面が元の径に戻ろうとする弾性回復力によって各シール面に接触圧力が発生し、シール面同士が全周密着する構造である。ノーズ部は、ボックスと干渉しないように構成されており、ピンシール面の弾性回復力を増幅させる。この弾性回復力の増幅効果により、ねじ継手の密封性能が向上する。
油井管の材料として15.5〜18%のCrを含有する二相系の高Crステンレス鋼を選択するとともに、ねじ継手にノーズ部を付与することにより、耐食性、高温環境での強度、及び密封性能を確保することができる。
特開2005−336595号公報 国際公開第2010/050519号 国際公開第2010/134498号 特開2010−209402号公報 国際公開第2013/179667号
ところで、油井管のねじ継手の密封性能、つまりシール部の接触力は、高温環境下であっても温度が均一であれば、シール部の周辺がマクロに弾性である限りにおいて、急激に低下することはない。すなわち、高温による降伏応力の低下によってシール部の周辺がマクロに塑性変形しない限り、密封性能は急激に低下しない。ねじ継手の周囲の温度が均一であれば、熱膨張及び/又は熱収縮や強度の変化はピンとボックスとでほぼ同等であり、シール部の接触力を発生させる干渉量及びノーズ部の剛性がほとんど変化しないためである。
深層油井の生産物の温度は、井戸底の地温と基本的に等しい。生産物の温度は、生産物を地上に汲み上げる過程でいくらか低下するものの、生産物が井戸口に達した時点でもまだ相当に高い。この高温の生産物が連結された複数の油井管の内部を通過すると、特に油井の上部において、これらの油井管の内面と外面との間に温度差が生じる。すなわち、各油井管において、高温の生産物が内部を通過することによって内面が熱くなる一方、外面は冷たいままという現象が生じる。
上述の温度差により、ねじ継手では、ピンとボックスとの間に強度の差や熱膨張及び/又は熱収縮の程度の差が生じ得る。これらの差が大きい場合には、シール部の接触力が著しく低下し、密封性能を喪失することもある。各油井管の内面及び外面の温度は時間が経つにつれて徐々に均一になるが、シール部の接触力が低下して一度リークが発生すると、リークパスが形成されてしまう。このリークパスは、シール部が再度接触したとしても完全には塞がらない。このため、継続してリークが生じる事態となる。
本開示は、内面が高温になった場合にも、他の油井管又はカップリングとの間の高い密封性能を維持することができる油井管を提供することを目的とする。
本開示に係る油井管は、ステンレス鋼からなる。油井管は、他の油井管と直接又はカップリングを介して連結される。ステンレス鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.001〜0.06%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%未満、Cr:15.5〜18.0%、Ni:2.5〜6.0%、V:0.005〜0.25%、Al:0.05%以下、N:0.06%以下、O:0.01%以下、Cu:0〜3.5%、Co:0〜1.5%、Nb:0〜0.25%、Ti:0〜0.25%、Zr:0〜0.25%、Ta:0〜0.25%、B:0〜0.005%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、及びREM:0〜0.05%を含有する。ステンレス鋼は、さらに、Mo:0〜3.5%及びW:0〜3.5%からなる群から選択された1種又は2種を式(1)を満たす範囲で含有する。ステンレス鋼は、残部がFe及び不純物からなる。マトリクス組織は、体積率で、40〜70%の焼戻しマルテンサイト相と、10〜50%のフェライト相と、1〜15%のオーステナイト相とを有する。マトリクス組織を100倍の倍率で撮影して得られた1mm×1mmのミクロ組織画像を、肉厚方向をx軸としかつ長さ方向をy軸とするxy座標系に配置し、1024×1024の各画素をグレースケールで表したとき、式(2)で定義されるβが1.55以上である。
1.0≦Mo+0.5W≦3.5 (1)
ここで、Mo,Wは、Mo,Wの含有量(質量%)である。
ただし、式(2)において、Suは式(3)で定義され、Svは式(4)で定義される。

式(3)及び式(4)において、F(u,v)は式(5)で定義される。
式(5)において、f(x,y)は座標(x,y)の画素の階調を表す。
本開示に係る油井管は、管本体と、ピンとを備える。ピンは、管本体の少なくとも一方の端に連続して形成される。ピンは、他の油井管のボックス又はカップリングのボックスに挿入される。ピンは、ノーズ部と、雄ねじ部と、ピンシール面と、ピンショルダ面とを含む。ノーズ部は、ピンの先端部を構成する。ノーズ部は、締結された状態(隣接するピンシール面が干渉量によって縮径変形した状態)において、同じく締結された状態(隣接するボックスシール面が干渉量によって拡径変形した状態)のボックスの内径よりも小さい外径を有する。雄ねじ部は、ノーズ部よりも管本体側においてピンの外周に形成される。ピンシール面は、ノーズ部と雄ねじ部との間においてピンの外周に形成される。ピンショルダ面は、ノーズ部の先端面に形成される。ピンショルダ面は、外周側が内周側よりもピンの先端側に位置するように傾斜する。ノーズ部とボックスとのすき間の体積V(mm)は、ノーズ部の管軸方向の長さをL(mm)、ノーズ部の管軸方向の中央における外径及び厚みをそれぞれD(mm)及びT(mm)として、式(6)を満たす。ピンショルダ面と管軸に垂直な面とがなす角は、D、L、Tが式(7)を満たすとき、8°以上21°以下である。
5πL/T<V<0.4πLD (6)
TD/L>50 (7)
本開示によれば、油井管の内面が高温になった場合にも、当該油井管と他の油井管又はカップリングとの間の高い密封性能を維持することができる。
図1は、実施形態に係る油井管用のステンレス鋼のミクロ組織の一例を示すミクロ組織画像である。 図2は、図1のミクロ組織画像を2次元離散フーリエ変換して得られた対数周波数スペクトル図である。 図3は、比較例であるステンレス鋼のミクロ組織の一例を示す写真である。 図4は、図3のミクロ組織画像を2次元離散フーリエ変換して得られた対数周波数スペクトル図である。 図5は、実施形態に係る油井管用のステンレス鋼のミクロ組織の一例を示すミクロ組織画像である。 図6は、図5のミクロ組織画像を2次元離散フーリエ変換して得られた対数周波数スペクトル図である。 図7は、比較例であるステンレス鋼のミクロ組織の一例を示す写真である。 図8は、図7のミクロ組織画像を2次元離散フーリエ変換して得られた対数周波数スペクトル図である。 図9は、βと延性脆性の遷移温度との関係を示すグラフである。 図10は、実施形態に係る油井管を示す部分断面図である。 図11は、図10に示す油井管の管軸方向の端部の拡大断面図である。 図12は、図10に示す油井管と異なる構造を有する油井管の部分断面図である。 図13は、図11に示す構造とは異なる構造を有する油井管の管軸方向の端部の拡大断面図である。 図14は、図11及び図13に示す構造とは異なる構造を有する油井管の管軸方向の端部の拡大断面図である。
<1.油井管の材料について>
実施形態に係る油井管は、ステンレス鋼からなる。以下、実施形態に係る油井管の材料として用いられるステンレス鋼について説明する。
ステンレス鋼のマトリクス組織は、フェライト相と、焼戻しマルテンサイト相及びオーステナイト相(以下、実質マルテンサイト相という)とを含む。マトリクス組織において、フェライト相及び実質マルテンサイト相が圧延方向(長さ方向)に沿って延びかつ層状に配列される場合、ステンレス鋼は低温靱性に優れる。一方、マトリクス組織において、フェライト相が網目状に不規則に分布する場合、ステンレス鋼の低温靱性は低い。ステンレス鋼が鋼板の場合、圧延により延びた鋼板の中心軸を圧延方向とする。ステンレス鋼が鋼管の場合、鋼管の中心軸を圧延方向とする。
ここで、本発明者等は、ステンレス鋼のフェライト相及び実質マルテンサイト相が、長さ方向に長く伸びることを特徴とする、ミクロ組織層状度を、ミクロ組織画像を2次元離散フーリエ変換することにより、肉厚方向及び長さ方向の両方を評価して定量化することができることを見出した。以下、この点について詳述する。
ステンレス鋼の任意の板幅方向に垂直な断面から、観察倍率100倍であって1mm×1mmのミクロ組織画像を光学顕微鏡を用いて、グレースケール(256階調)にて撮影して得る。ミクロ組織画像の一例を図1に示す。図1では、ミクロ組織画像をxy座標系に配置している。図1中のy軸は長さ方向であり、x軸は長さ方向に垂直な肉厚方向である。図1において、灰色部分が実質マルテンサイト相であり、実質マルテンサイト相の粒の間に位置する白い部分がフェライト相である。ミクロ組織画像は、x軸方向にM=1024個の画素を有し、y軸方向にN=1024個の画素を有する。つまり、ミクロ組織画像は、M×N=1024×1024の画素数を有する。
ミクロ組織画像から各画素(x、y)(x=0〜M−1、y=0〜N−1)の2次元データf(x,y)を得る。f(x,y)は座標(x,y)の画素のグレースケールでの階調を表す。得られた2次元データに対して、式(5)で定義される2次元離散フーリエ変換(2D DFT)を実施する。M−1=1023、N−1=1023である。
ここで、F(u,v)は、2次元データf(x,y)の2次元離散フーリエ変換後の2次元周波数スペクトルである。周波数スペクトルF(u,v)は一般に複素数であり、2次元データf(x,y)の周期性及び規則性の情報を含む。換言すれば、周波数スペクトルF(u,v)は、図1に示すようなミクロ組織画像内における、フェライト相及び実質マルテンサイト相の組織の周期性及び規則性に関する情報を含む。
図2は、図1に示すミクロ組織画像の対数周波数スペクトル図である。図2の横軸はv軸であり、縦軸はu軸である。図2の周波数スペクトル図は、白黒階調画像(グレースケール画像)であり、周波数スペクトルの最大値が白色、最小値が黒色である。周波数スペクトルの高い部分(図2中の白色部分)は、例えば図2の場合、u軸に延びた形状であり、境界は明確ではない。
ここで、周波数スペクトル図の周波数スペクトルF(u,v)において、u軸上のスペクトルの絶対値の総和Suは、式(3)で定義される。周波数スペクトルF(u,v)において、v軸上のスペクトルの絶対値の総和Svは、式(4)で定義される。さらに、Svに対するSuの比は、式(2)で定義されるβである。なお、Su,Svは、(u,v)空間で座標(0,0)のスペクトル強度を含まない。
また、同様の方法により、図3,5,7に示すステンレス鋼のミクロ組織画像を得る。さらに、図3,5,7に示すミクロ組織画像の各々から対数周波数スペクトル図を求める。図4は、図3に示すミクロ組織画像の対数周波数スペクトル図であり、図6は、図5に示すミクロ組織画像の対数周波数スペクトル図であり、図8は、図7に示すミクロ組織画像の対数周波数スペクトル図である。以下、図1に示すミクロ組織を、組織1といい、図3に示すミクロ組織を、組織2といい、図5に示すミクロ組織を、組織3といい、図7に示すミクロ組織を、組織4という。
組織1の画像(図1)と組織2の画像(図3)とを比較すると、組織1は組織2よりもフェライト相及び実質マルテンサイト相が圧延方向(長さ方向)に延びた形状である。さらに、組織1は、組織2よりもフェライト相及び実質マルテンサイト相の積層周期(肉厚方向に並ぶ周期)が短く、規則的である。組織1の画像と組織3の画像(図5)とを比較すると、組織1及び組織3のいずれも、各相が長さ方向に延びた形状である。さらに、組織3は、組織1と同様に、積層周期が短く、規則的である。組織3の画像と組織4の画像(図7)とを比較すると、組織3は組織4よりも各相が長さ方向に延びた形状である。さらに、組織3は、組織4よりも積層周期が短く、規則的である。
また、組織1〜組織4各々の対数周波数スペクトル図はいずれも、白色部分がu軸に沿って延びる。しかしながら、組織1及び組織4は、組織2及び組織4に比べて白色部分のv軸方向の幅が狭い。βは、組織1が2.024であり、組織2が1.458であり、組織3が2.183であり、組織4が1.395である。要するに、βが低いほど、白色部分はu軸方向に短くなり、v軸方向に広がる。
また、延性脆性の遷移温度は、組織1が−82℃であり、組織2が−12℃であり、組織3が−109℃であり、組織4が−19℃である。なお、遷移温度は後述の実施例と同じ条件での結果である。図9は、βと遷移温度(℃)との関係を示す図である。図9は、次の方法により得られた。化学組成は後述の本実施形態の範囲内であり、βが異なる複数のステンレス鋼を製造した。各ステンレス鋼に対して、後述の低温靱性評価試験を実施して、遷移温度を得て、図9を作成した。図9中の直線は図9中の全てのプロットから最小2乗法により得た線であり、Rは相関関数である。
このように、βが大きくなると、低温靱性に優れる傾向があることが分かった。以上より、βは、前記層状度を指標するものと考えることができる。
本発明者等は、前述の知見に基づいて、実施形態に係る油井管に用いるステンレス鋼を完成させた。以下、当該ステンレス鋼について説明する。
実施形態に係る油井管用のステンレス鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.001〜0.06%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%未満、Cr:15.5〜18.0%、Ni:2.5〜6.0%、V:0.005〜0.25%、Al:0.05%以下、N:0.06%以下、O:0.01%以下、Cu:0〜3.5%、Co:0〜1.5%、Nb:0〜0.25%、Ti:0〜0.25%、Zr:0〜0.25%、Ta:0〜0.25%、B:0〜0.005%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、及びREM:0〜0.05%を含有する。さらに、Mo:0〜3.5%、及びW:0〜3.5%からなる群から選択された1種又は2種を式(1)を満たす範囲で含有する。残部がFe及び不純物からなる。マトリクス組織が、体積率で、40〜70%の焼戻しマルテンサイト相と、10〜50%のフェライト相と、1〜15%のオーステナイト相とを有する。マトリクス組織を100倍の倍率で撮影して得られた1mm×1mmのミクロ組織画像を、肉厚方向をx軸としかつ長さ方向をy軸とするxy座標系に配置し、1024×1024の各画素をグレースケールで表したとき、式(2)で定義されるβが1.55以上である。
1.0≦Mo+0.5W≦3.5 (1)
ここで、Mo,Wは、Mo,Wの含有量(質量%)である。
ただし、式(2)において、Suは式(3)で定義され、Svは式(4)で定義される。

式(3)及び式(4)において、F(u,v)は式(5)で定義される。
式(5)において、f(x,y)は座標(x,y)の画素の階調を表す。
このステンレス鋼は、βが1.55以上であることで、延性脆性の遷移温度が−30℃以下となる。その結果、このステンレス鋼は、低温靱性に優れる。さらに、このステンレス鋼は、高強度を有し、高温での耐SCC性及び常温での耐SSC性に優れる。
上記ステンレス鋼の化学組成は、質量%で、Cu:0.2〜3.5%、及びCo:0.05〜1.5%からなる群から選択された1種又は2種を含有してもよい。
上記ステンレス鋼の化学組成は、質量%で、Nb:0.01〜0.25%、Ti:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、及びTa:0.01〜0.25%からなる群から選択された1種又は2種以上を含有してもよい。
上記ステンレス鋼の化学組成は、質量%で、B:0.0003〜0.005%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、及びREM:0.0005〜0.05%からなる群から選択された1種又は2種以上を含有してもよい。
[化学組成]
実施形態に係る油井管用のステンレス鋼は、以下の化学組成を有する。以降、元素に関する「%」は、質量%を意味する。
C:0.001〜0.06%
炭素(C)は鋼の強度を高める。しかしながら、C含有量が多すぎれば、焼戻し後の硬度が高くなり過ぎ、耐SSC性が低下する。さらに、本実施形態の化学組成では、C含有量が増加するに従い、Ms点が低下する。そのため、C含有量が増加するに従い、オーステナイトが増加しやすくなり、降伏強度が低下しやすくなる。したがって、C含有量は、0.06%以下である。C含有量は、好ましくは0.05%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。また、製鋼工程における脱炭処理に掛かるコストを考慮すれば、C含有量は0.001%以上である。C含有量は、好ましくは0.003%以上であり、さらに好ましくは、0.005%以上である。
Si:0.05〜0.5%
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。しかしながら、Si含有量が多すぎれば、鋼の靱性及び熱間加工性が低下する。Si含有量が多すぎればさらに、フェライトの生成量が増加し、降伏強度が低下しやすくなる。したがって、Si含有量は0.05〜0.5%である。Si含有量は、好ましくは0.5%未満であり、さらに好ましくは0.4%以下である。Si含有量は、好ましくは0.06%以上であり、さらに好ましくは、0.07%以上である。
Mn:0.01〜2.0%
マンガン(Mn)は、鋼を脱酸及び脱硫し、熱間加工性を高める。Mn含有量が少なすぎれば、上記効果が有効に得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、焼入れ時にオーステナイトが過剰に残留しやすくなり、鋼の強度を確保することが困難になる。したがって、Mn含有量は0.01〜2.0%である。Mn含有量は、好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.6%以下である。Mn含有量は、好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.04%以上である。
P:0.03%以下
リン(P)は不純物である。Pは鋼の耐SSC性を低下する。したがって、P含有量はなるべく少ない方が好ましい。P含有量は0.03%以下である。P含有量は、好ましくは0.028%以下、さらに好ましくは0.025%以下である。また、P含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、P含有量は、好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0008%以上である。
S:0.005%未満
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量はなるべく少ない方が好ましい。S含有量は0.005%未満である。S含有量は、好ましくは0.003%以下であり、さらに好ましくは0.0015%以下である。また、S含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、S含有量は、好ましくは0.0001%以上であり、さらに好ましくは0.0003%以上である。
Cr:15.5〜18.0%
クロム(Cr)は鋼の耐食性を高める。具体的には、Crは腐食速度を低くし、鋼の耐SCC性を高める。C含有量が少なすぎれば、上記効果が有効に得られない。一方、Cr含有量が多すぎれば、鋼中のフェライト相の体積率が増加して鋼の強度が低下する。したがって、Cr含有量は15.5〜18.0%である。Cr含有量は、好ましくは17.8%以下であり、さらに好ましくは17.5%以下である。Cr含有量は、好ましくは16.0%以上であり、さらに好ましくは16.3%以上である。
Ni:2.5〜6.0%
ニッケル(Ni)は鋼の靱性を高める。Niはさらに、鋼の強度を高める。Ni含有量が少なすぎれば、上記効果が有効に得られない。一方、Ni含有量が多すぎれば、オーステナイトが多く生成し、その結果、鋼の強度が低下する。したがって、Ni含有量は2.5〜6.0%である。Ni含有量は、好ましくは6.0%未満であり、さらに好ましくは5.9%以下である。Ni含有量は、好ましくは3.0%以上であり、さらに好ましくは3.5%以上である。
V:0.005〜0.25%
バナジウム(V)は、鋼の強度を高める。しかしながら、V含有量が多すぎれば、靱性が低下する。したがって、V含有量は0.005〜0.25%とする。V含有量は、好ましくは0.20%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。V含有量は、好ましくは0.008%以上であり、さらに好ましくは0.01%以上である。
Al:0.05%以下
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。しかしながら、Al含有量が多すぎれば、鋼中の介在物が増加して鋼の靱性が低下する。そのため、上限は0.05%とする。Al含有量は、好ましくは0.048%以下であり、さらに好ましくは0.045%以下である。Al含有量は、好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.001%以上である。
N:0.06%以下
窒素(N)は鋼の強度を高める。しかしながら、N含有量が多すぎれば、オーステナイトが過剰に生成し、鋼中の介在物も増加する。その結果、鋼の靱性が低下する。したがって、N含有量は0.06%以下である。N含有量は、0.05%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。N含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、N含有量は、好ましくは0.001%以上であり、さらに好ましくは0.002%以上である。
O:0.01%以下
酸素(O)は不純物である。Oは鋼の靭性及び耐食性を低下させる。したがって、O含有量は0.01%以下である。O含有量は、好ましくは0.01%未満であり、より好ましくは0.009%以下、さらに好ましくは0.006%以下である。O含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、O含有量は、好ましくは0.0001%以上であり、さらに好ましくは0.0003%以上である。
Mo:0〜3.5%、W:0〜3.5%
モリブデン(Mo)及びタングステン(W)は互いに置換可能な元素であり、両方を含有してもよく、一方だけを含有してもよい。Mo及びWは、少なくとも一方を含有することが必須である。これらの元素は鋼の耐SCC性を高める。一方、これらの元素の含有量が多すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Mo含有量は0〜3.5%であり、W含有量は0〜3.5%であり、Mo及びWからなる群から選択された1種又は2種を式(1)を満たす範囲で含有する必要がある。Mo含有量は、好ましくは3.3%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下である。Mo含有量は、好ましくは0.01%以上であり、さらに好ましくは0.03%以上である。W含有量は、好ましくは3.3%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下である。W含有量は、好ましくは0.01%以上であり、さらに好ましくは0.03%以上である。
1.0≦Mo+0.5W≦3.5 (1)
本実施形態によるステンレス鋼の化学組成は、下記の選択元素を含有しても良い。すなわち、下記の元素は、いずれも本実施形態によるステンレス鋼に含有されていなくても良い。また、一部だけが含有されていても良い。
Cu:0〜3.5%、Co:0〜1.5%
銅(Cu)及びコバルト(Co)は互いに置換可能な元素である。これらの元素は選択元素である。これらの元素は、焼戻しマルテンサイト相の体積分率を増加させ、鋼の強度を高める。さらに、Cuは焼戻し時にCu粒子として析出し、その強度をさらに高める。これらの元素の含有量が少なすぎれば、上記効果が有効に得られない。一方、これらの元素の含有量が多すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜3.5%とし、Co含有量は0〜1.5%とする。さらに、上記効果を十分に得るためには、Cu:0.2〜3.5%及びCo:0.05〜1.5%からなる群から選択された1種又は2種を含有することが好ましい。Cu含有量は、好ましくは3.3%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下である。Cu含有量は、好ましくは0.3%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。Co含有量は、好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下である。Co含有量は、好ましくは0.08%以上であり、さらに好ましくは0.1%以上である。
Nb:0〜0.25%、Ti:0〜0.25%、Zr:0〜0.25%及びTa:0〜0.25%
ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びタンタル(Ta)は互いに置換可能な元素である。これらの元素は選択元素である。これらの元素は鋼の強度を高める。これらの元素は鋼の耐孔食性及び耐SCC性を向上させる。これらの元素が少しでも含有されれば、上記効果が得られる。しかしながら、これらの元素の含有量が多すぎれば、鋼の靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.25%であり、Ti含有量は0〜0.25%であり、Zr含有量は0〜0.25%であり、Ta含有量は0〜0.25%である。さらに、上記効果を十分に得るためには、Nb:0.01〜0.25%、Ti:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、及びTa:0.01〜0.25%からなる群から選択された1種又は2種を含有することが好ましい。Nb含有量は、好ましくは0.23%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下である。Nb含有量は、好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.05%以上である。Ti含有量は、好ましくは0.23%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下である。Ti含有量は、好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.05%以上である。Zr含有量は、好ましくは0.23%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下である。Zr含有量は、好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.05%以上である。Ta含有量は、好ましくは0.24%以下であり、さらに好ましくは0.23%以下である。Ta含有量は、好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.05%以上である。
Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、REM:0〜0.05%及びB:0〜0.005%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、希土類元素(REM)及びボロン(B)は互いに置換可能な元素である。これらの元素は選択元素である。これらの元素は製造時の熱間加工性を改善する。これらの元素が少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca、Mg及びREMの含有量が多すぎれば、酸素と結合して合金の清浄性を著しく低下させ、耐SSC性を劣化させる。また、B含有量が多すぎれば、鋼の靭性を低下させる。したがって、Ca含有量は0〜0.01%であり、Mg含有量は0〜0.01%であり、REM含有量は0〜0.05%であり、B含有量は0〜0.005%である。また、上記効果を十分に得るためには、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、REM:0.0005〜0.05%及びB:0.0003〜0.005%からなる群から選択された1種又は2種を含有することが好ましい。Ca含有量は、好ましくは0.008%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。Ca含有量は、好ましくは0.0008%以上であり、さらに好ましくは0.001%以上である。Mg含有量は、好ましくは0.008%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。Mg含有量は、好ましくは0.0008%以上であり、さらに好ましくは0.001%以上である。REM含有量は、好ましくは0.045%以下であり、さらに好ましくは0.04%以下である。REM含有量は、好ましくは0.0008%以上であり、さらに好ましくは0.001%以上である。B含有量は、好ましくは0.0045%以下であり、さらに好ましくは0.004%以下である。B含有量は、好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0008%以上である。
REMとは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイドの合計17元素の総称である。本実施形態において、REM含有量とは、上述の17元素の1種又は2種以上の総含有量を意味する。
なお、本実施形態によるステンレス鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物とは、ステンレス鋼を工業的に製造する際に、原料として利用される鉱石やスクラップから混入する元素、又は製造過程の環境等から混入する元素を意味する。
[ミクロ組織]
本実施形態によるステンレス鋼のマトリクス組織は、体積率で、40〜70%の焼戻しマルテンサイト相と、10〜50%のフェライト相と、1〜15%のオーステナイト相とを有する。以降、マトリクス組織のこれらの体積率(分率)に関する%は、体積%を意味する。
マトリクス組織中のフェライト相の体積率(フェライト分率:%)、オーステナイト相の体積率(オーステナイト分率:%)及び焼戻しマルテンサイト相の体積率(マルテンサイト分率:%)は次の方法で測定する。
[フェライト分率の測定方法]
ステンレス鋼の任意の位置からサンプルを採取する。ステンレス鋼の断面に相当するサンプルの表面(以下、観察面という)を研磨する。王水とグリセリンとの混合溶液を用いて、研磨された観察面をエッチングする。エッチングにより白く腐食された部分がフェライト相であり、このフェライト相の面積率を、JIS G0555(2003)に準拠した点算法で測定する。測定された面積率は、フェライト相の体積分率に等しいと考えられるため、これをフェライト分率(%)と定義する。
[オーステナイト分率の測定方法]
オーステナイト分率は、X線回折法を用いて求める。ステンレス鋼の任意の位置から、15mm×15mm×2mmのサンプルを採取する。サンプルを用いて、フェライト相(α相)の(200)面及び(211)面、オーステナイト相(γ相)の(200)面、(220)面及び(311)面の各々のX線強度を測定し、各面の積分強度を算出する。算出後、α相の各面とγ相の各面との組み合わせ(合計6組)毎に、以下の式(8)を用いて体積率Vγを求める。各面の体積率Vγの平均値を、オーステナイト分率(%)と定義する。
Vγ=100/{1+(Iα×Rγ)/(Iγ×Rα)} (8)
ここで、Iαはα相の積分強度であり、Rγはγ相の結晶学的理論計算値であり、Iγはγ相の積分強度であり、Rαはα相の結晶学的理論計算値である。
[マルテンサイト分率の測定方法]
マトリクス組織のうち、フェライト相及びオーステナイト相以外の残部を、焼戻しマルテンサイト相の体積率(マルテンサイト分率)と定める。つまり、マルテンサイト分率(%)は100%からフェライト分率(%)及びオーステナイト分率(%)を引いた値である。
[β]
本実施形態のステンレス鋼は、式(2)で定義されるβが1.55以上である。βは、次の方法で求める。ステンレス鋼の任意の板幅方向に垂直な断面(鋼管の場合は、管軸に平行な肉厚断面)から、マトリクス組織を100倍の倍率で撮影する。得られた1mm×1mmのミクロ組織画像を、肉厚方向をx軸としかつ長さ方向をy軸とするxy座標系に配置し、1024×1024の各画素をグレースケールで表す。したがって、グレースケール(256階調)で表されるミクロ組織画像は、ステンレス鋼のうち、肉厚方向及び長さ方向を含む面での断面から得られる。さらに、2次元離散フーリエ変換を用いて、グレースケールで表されるミクロ組織画像から、式(2)で定義されるβを求める。
ただし、式(2)において、Suは式(3)で定義され、Svは式(4)で定義される。

式(3)及び式(4)において、F(u,v)は式(5)で定義される。
式(5)において、f(x,y)は座標(x,y)の画素の階調を表す。
上述のとおり、βと低温靱性とは図9に示す関係を有する。本発明の一実施形態によるステンレス鋼は、マトリクス組織から求めたβが1.55以上であれば、図9に示すとおり、延性脆性の遷移温度が−30℃以下となる。したがって、本発明の一実施形態によるステンレス鋼は通常要求される−10℃において優れた低温靱性を示す。βは、好ましくは、1.6以上であり、さらに好ましくは、1.65以上である。
以上のことから、本実施形態によるステンレス鋼は、高強度を有し、高温での耐SCC性及び常温での耐SSC性に優れ、かつ優れた低温靱性を有する。
[製造方法]
本実施形態のステンレス鋼の製造方法の一例を説明する。上述の化学組成を有する鋼素材(スラブ、ブルーム、ビレット等の鋳片又は鋼片)を適切な温度範囲においてなるべく高い圧延率で熱間圧延することにより、βが1.55以上のマトリクス組織が得られる。本例では、ステンレス鋼の製造方法の一例として、ステンレス鋼板の製造方法について説明する。
上述の化学組成を有する鋼素材を準備する。素材は、連続鋳造により製造された鋳片であってもよいし、鋳片又はインゴットを熱間加工して製造された板材であってもよい。
準備された素材を加熱炉又は均熱炉に装入し、加熱する。加熱された素材を熱間圧延して、中間材(熱間圧延後の鋼素材)を製造する。このとき、熱間圧延工程での圧延率40%以上とする。ここで、圧延率(r:%)は、次の式(9)で定義される。
r={1−(熱間圧延後の鋼素材の肉厚/熱間圧延前の鋼素材の肉厚)}×100 (9)
熱間圧延時における鋼材温度(圧延開始温度)を1200〜1300℃にする。ここでいう鋼材温度とは、素材の表面温度を意味する。素材の表面温度は、例えば、熱間圧延開始時に測定される。素材の表面温度は、素材の軸方向に沿って測定された表面温度の平均である。素材を加熱炉にて、例えば、1250℃の加熱温度で均熱した場合、鋼材温度は実質的に加熱温度に等しくなり、1250℃になる。さらに、熱間圧延終了時の鋼材温度(圧延終了温度)は、1100℃以上が好ましい。
製造工程中、複数の熱間圧延工程が存在する場合、圧延率は、1100〜1300℃の鋼材温度の素材に対して連続して実施された熱間圧延工程の累積の圧延率を意味する。
熱間圧延時に鋼材温度が1100℃を下回る場合、熱間加工性の低下により鋼材表面に多量の疵が発生することがある。したがって、鋼材の加熱温度は高い方が好ましい。一方、層状度を高めるためには高い圧延率で圧延することが好ましい。
熱間圧延後の素板(中間材)に対して焼入れ及び焼戻しを実施する。中間材に焼入れ及び焼戻しを実施することにより、ステンレス鋼板の降伏強度を758MPa以上にすることができる。さらに、マトリクス組織が焼戻しマルテンサイト相を有する。
好ましくは、焼入れ工程では、中間材を一旦常温近傍の温度まで冷却する。そして、冷却された中間材を850〜1050℃の温度範囲に加熱する。加熱された中間材を、水等で冷却し、焼入れしてステンレス鋼板を製造する。好ましくは、焼戻し工程では、焼入れ後の中間材を650℃以下の温度に加熱する。つまり、焼戻し温度は好ましくは650℃以下である。焼戻し温度が650℃を超えると、鋼中にオーステナイトが増加し、強度が低下しやすくなるからである。好ましくは、焼戻し工程では、焼入れ後の中間材を500℃を超えた温度に加熱する。つまり、焼戻し温度は好ましくは500℃を超えた温度である。
以上の製造工程により、βが1.55以上であるステンレス鋼板が製造される。ステンレス鋼は、鋼板に限定されず、鋼板以外の他の形状であってもよい。好ましくは、素材を1200〜1250℃の温度で所定時間均熱し、その後、圧延率50%以上で圧延終了温度1100℃以上の熱間圧延を実施する。この場合、表面疵の発生を抑えつつ高い層状度をもつステンレス鋼材を得ることができる。
<2.油井管の構造について>
本発明者等は、油井管の構造についても検討を重ね、以下のような知見を得た。
上述したように、油井管の内面と外面との温度差が発生し、ピンとボックスとの間に熱膨張及び/又は熱収縮の程度の差や強度の差が生じた場合、ねじ継手の密封性能を維持できないおそれがある。ノーズ部は密封性能の向上に有効な技術であるが、ピンにノーズ部が設けられている場合であっても、ピンとボックスとの間の熱膨張及び/又は熱収縮の程度の差や強度の差が大きければ、ねじ継手の密封性能が著しく損なわれるという事態が生じ得る。
詳述すると、ピンの内面が熱せられた場合、ピンに設けられたノーズ部は熱膨張により拡径する。ノーズ部は、管軸方向にも膨張しようとするが、先端面がボックスの端面に突き当たり、管軸方向にはほとんど膨張することができない。このため、ノーズ部は、径方向に膨張するしかなく、本来の熱膨張による拡径が助長される。熱膨張によってノーズ部の外周面がボックスの内周面と接触した場合、ノーズ部によるピンシール面の弾性回復力の増幅効果が急激に損なわれるのに加え、シール部の干渉量を実質的に減少させることになる。ピンシール面の部分が熱膨張するので一見シール部の接触力が増幅されるかに思われるが、実際にはシール部の接触力が著しく低下し、ねじ継手の密封性能が損なわれる。
本発明者等は、ピンのノーズ部が径方向に大きく熱膨張した場合であってもボックスに接触しないように、ノーズ部とボックスとのすき間を規定すればよいと考えた。本発明者等は、ノーズ部の最先端付近で拡径量が最も大きく、また、この拡径量にはノーズ部の外径、管軸方向の長さ、及び厚みが最も大きく影響していることを見出した。そして、本発明者等は、鋭意検討の結果、ノーズ部の外径、管軸方向の長さ、及び厚みによって規定されるある範囲にノーズ部とボックスとのすき間の体積を収めることにより、熱膨張によるノーズ部とボックスとの接触を防止できることを突き止めた。
実施形態に係る油井管は、油井管は、管本体と、ピンとを備える。ピンは、管本体の少なくとも一方の端に連続して形成される。ピンは、他の油井管のボックス又はカップリングのボックスに挿入される。ピンは、ノーズ部と、雄ねじ部と、ピンシール面と、ピンショルダ面とを含む。ノーズ部は、ピンの先端部を構成する。ノーズ部は、締結された状態(隣接するピンシール面が干渉量によって縮径変形した状態)において、同じく締結された状態(隣接するボックスシール面が干渉量によって拡径変形した状態)のボックスの内径よりも小さい外径を有する。雄ねじ部は、ノーズ部よりも管本体側においてピンの外周に形成される。ピンシール面は、ノーズ部と雄ねじ部との間においてピンの外周に形成される。ピンショルダ面は、ノーズ部の先端面に形成される。ピンショルダ面は、外周側が内周側よりもピンの先端側に位置するように傾斜する。ノーズ部とボックスとのすき間の体積V(mm)は、ノーズ部の管軸方向の長さをL(mm)、ノーズ部の管軸方向の中央における外径及び厚みをそれぞれD(mm)及びT(mm)として、式(6)を満たす。ピンショルダ面と管軸に垂直な面とがなす角は、D、L、Tが式(7)を満たすとき、8°以上21°以下である。
5πL/T<V<0.4πLD (6)
TD/L>50 (7)
上記油井管では、ノーズ部と他の油井管又はカップリングのボックスとのすき間の体積V(mm)が5πL/Tよりも大きく、0.4πLDよりも小さくなるように規定されている。体積Vをこのように規定することにより、油井管の内面が熱せられ、ノーズ部が径方向に熱膨張した場合も、ノーズ部とボックスとの接触を防止することができる。よって、油井管の内面が高温になった場合にも、ピンシール面の弾性回復力の増幅効果が低下するのを防ぐことができるのに加え、シール部の干渉量が実質的に減少することも防ぐことができ、その結果、当該油井管と他の油井管又はカップリングとの間の高い密封性能を維持することができる。
ノーズ部の先端面に設けられたピンショルダ面がボックスの最内奥の端面に突き当たることにより、ボックスの最内奥の端面から受ける反力の径方向成分がピンシール面の接触力を増幅する。このピンショルダ面の効果は、ノーズ部の剛性を確保することにより発揮される。すなわち、ピンショルダ面の効果は、ノーズ部の管軸方向の長さ及び厚みと密接な関係がある。
上記油井管では、ノーズ部がTD/L>50を満たすという条件の下、ピンショルダ面と管軸に垂直な面とが角度が8°以上21°以下に規定されている。これにより、ピンショルダ面は、ピンシール面の接触力を増幅する効果を十分に発揮する。
以下、油井管の構造について、図10〜図14を参照しつつ、さらに詳しく説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
図10は、一実施形態に係る油井管の概略構成を示す部分断面図である。図10では、一の油井管10が他の油井管10と連結された状態を示している。油井管10,10は、管状のカップリング20を介して互いに連結される。油井管10,10及びカップリング20は、上述のステンレス鋼からなる。
油井管10は、ピン11と、管本体12とを備える。ピン11は、管本体12の管軸方向の一方の端に連続して形成される。図示を省略するが、管本体12の管軸方向の他方の端にもピン11が連続して形成されている。すなわち、油井管10の両端部は、それぞれピン11によって構成されている。
ピン11は、カップリング20のボックス21に挿入され、ボックス21と締結される。ピン11は、ノーズ部111と、雄ねじ部112と、ピンシール面113と、ピンショルダ面114とを備える。
ノーズ部111は、雄ねじ部112及びピンシール面113よりもピン11の先端側に配置されている。ノーズ部111は、ピン11の先端部を構成する。ノーズ部111は、締結された状態(隣接するピンシール面が干渉量によって縮径変形した状態)において、同じく締結された状態(隣接するボックスシール面が干渉量によって拡径変形した状態)のボックス21の内径よりも小さい外径を有する。例えば、ノーズ部111の外周面は、ピン11の内周側に窪む凹状面によって構成される。
雄ねじ部112は、ピン11の外周に形成されている。雄ねじ部112は、ピン11において、ノーズ部111よりも管本体12側に配置される。ピン11の外周において、ノーズ部111と雄ねじ部112との間にはピンシール面113が形成されている。
ピンシール面113は、雄ねじ部112側からノーズ部111側に向かって縮径する概ねテーパ状の面である。ピンシール面113は、例えば、円弧を管軸CLの周りに回転させた回転体の周面や、管軸CLを軸とする円錐台の周面を1又は2種類以上組み合わせてなる。
ピンショルダ面114は、ノーズ部111の先端面に形成された環状面である。ピンショルダ面114は、外周側が内周側よりもピン11の先端側に配置されるように傾斜している。すなわち、管軸CLを含む平面で切断した油井管10の断面で見て、ピンショルダ面114は、外周側が内周側よりもピン11のねじ込み進行方向に傾倒する形状を有する。
カップリング20は、管軸方向の両端部各々にボックス21を有する。各ボックス21は、油井管10のピン11が挿入され、当該ピン11と締結される。一方のボックス21を一の油井管10のピン11と締結し、他方のボックス21を他の油井管10のピン11と締結することにより、油井管10,10が連結される。
各ボックス21は、雌ねじ部212と、ボックスシール面213と、ボックスショルダ面214とを備える。
雌ねじ部212は、ピン11の雄ねじ部112に対応して、ボックス21の内周に形成されている。雌ねじ部212は、雄ねじ部112を構成するねじと噛み合うねじで構成される。
ボックスシール面213は、ピンシール面113に対応して、ボックス21の内周に形成されている。ボックスシール面213は、ピン11とボックス21との締結状態において、ピンシール面113に接触する。
ピンシール面113及びボックスシール面213は、干渉量を有する。すなわち、ピンシール面113は、ボックスシール面213の内径よりもわずかに大きい外径を有する。このため、ピンシール面113及びボックスシール面213は、ボックス21に対するピン11のねじ込みに伴って互いに接触し、締結状態では嵌め合い密着して締まりばめの状態となる。これにより、ピンシール面113及びボックスシール面213は、メタル−メタル接触によるシール部を形成する。
ボックスショルダ面214は、ピンショルダ面114に対応し、ボックス21の管軸方向の端面に形成されている。ボックスショルダ面214は、締結状態においてピンショルダ面114に接触する。
ピンショルダ面114及びボックスショルダ面214は、ボックス21に対するピン11のねじ込みにより、互いに接触して押し付けられる。ピンショルダ面114及びボックスショルダ面214は、このような互いの押圧接触によってショルダ部を形成する。
図11は、油井管10の管軸方向の端部の概略構成を示す図である。図11に示すように、ピン11がボックス21と締結されたとき、ピンシール面113とボックスシール面213、ピンショルダ面114とボックスショルダ面214とが互いに接触する。ノーズ部111の外径はボックス21のうちノーズ部111と対向する部分の内径よりも締結状態において小さいため、ノーズ部111の外周面はボックス21の内周面に接触しない。したがって、締結状態において、ノーズ部111の外周面とボックス21の内周面との間にはすき間が生じる。
ノーズ部111とボックス21とのすき間の体積V(mm)は、ノーズ部111の外径をD(mm)、ノーズ部111の管軸方向の長さをL(mm)、ノーズ部111の厚みをT(mm)として、式(6)を満たす。
5πL/T<V<0.4πLD (6)
また、ピンショルダ面114が管軸CLに垂直な面となす角θは、ノーズ部111の外径D、長さL、及び厚みTが次の式(7)を満たすとき、式(10)を満たす。
TD/L>50 (7)
8°≦θ≦21° (10)
上記式(6)を導く前提条件として、熱膨張係数は鋼の一般的な値である16×10−6、ピン11の内外面の温度差は最高で300℃を想定している。体積Vの下限値である5πL/Tは、弾性シェル理論に基づくノーズ部111の先端の径の変化(の予測)を用いたすき間の体積計算式であり、実用の範囲内で近似表記している。体積Vの上限値である0.4πLDは、平均すき間を0.4mmとしたときのノーズ部111とボックス21とのすき間の体積である。
体積Vに上限値を設けた理由として、限られた寸法制約の下でノーズ部111とボックス21とすき間をいたずらに大きくすると、他の構成要素が犠牲になることが挙げられる。例えば、すき間を大きくすることによって、ノーズ部111やボックス21の厚みを小さくしたり、ピンシール面113及びボックスシール面213を急峻化したりする必要が生じる。これにより、無駄の多いデザインになるだけでなく、密封性能や強度等も低下させてしまうことになるため、平均すき間を0.4mmとした。より好ましくは、平均すき間が0.3mm未満であり、体積Vが0.3πLD未満である。
ノーズ部111とボックス21とのすき間の体積Vは、ピン11とボックス21とを締結する前の各部の寸法から導き出される。体積Vは、次のような方法で定義することができる。
例えば、3次元形状測定器(株式会社ミツトヨ製)を用いて、締結前のピンリップ部の3次元輪郭形状及び寸法を測定する。ピンリップ部は、ピン11のうち雄ねじ部112以外の部分であり、ノーズ部111、ピンシール面113、及びピンショルダ面114を含む。また、同じ3次元形状測定器を用いて、締結前のボックスハウジング部の3次元輪郭形状及び寸法を測定する。ボックスハウジング部は、ボックス21においてピンリップ部を受け入れる部分であり、ノーズ部111に対応する部分、ボックスシール面213、及びボックスショルダ面214を含む。
上記の測定結果に基づき、ピンリップ部及びボックスハウジング部について、管軸CLを含む平面で切断した縦断面上の実測の輪郭(形状・寸法)を作成する。当該ピンリップ部の実測の輪郭をシール干渉量の半分に相当する量だけ半径方向内側に平行移動したものと、上記ボックスハウジング部の実測の輪郭とを、ピンシール面113とボックスシール面213、ピンショルダ面114とボックスショルダ面214とがそれぞれ互いに接触するように配置したときに、ピンリップ部の輪郭とボックスハウジング部の輪郭とに挟まれて形成されるすき間(つまり、締結前の形状・寸法で、変形を考慮せずに幾何学的に計算される、ノーズ部111とボックス21とのすき間の縦断面の面積)を管軸CL周りに回転させたものの体積を求める。この体積を、ノーズ部111とボックス21とのすき間の体積Vと定義することができる。
ノーズ部111の管軸方向の長さLは、上記の幾何学的計算で得られたピンシール面113とボックスシール面213との接触部Acにおけるピンリップ部の先端側(ノーズ部111側)の端からピンリップ部(ピン11)の最先端までの管軸方向に沿った長さと定義する。外径D及び厚みTは、それぞれ、ノーズ部111の管軸方向の中央(ピン11の最先端からL/2の位置)における外径及び厚みと定義する。
なお、ピン11において、ピンシール面113とピンショルダ面114との間には、ノーズ部111以外の構成要素は設けられていない。
以上のように、本実施形態に係る油井管10では、ノーズ部111の外径、長さ、及び厚みをそれぞれD、L、Tとして、ノーズ部111とボックス21とのすき間の体積Vが5πL/Tよりも大きく、且つ0.4πLDよりも小さくなるように規定されている。すき間の体積Vをこの範囲内に設定することにより、油井管10の内面の昇温によってピン11が径方向に熱膨張した場合に、ノーズ部111とボックス21とが接触するのを防止することができる。よって、ノーズ部111によるピンシール面113の弾性回復力の増幅効果が低下するのを抑制することができるのに加え、シール部の干渉量が実質的に減少することも防ぐことができ、その結果、油井管10とカップリング20との間の高い密封性能が維持される。
本実施形態に係る油井管10では、ノーズ部111の外径D、長さL、及び厚みTがTD/L>50を満たすことにより、ノーズ部111の剛性が十分に確保されている。この条件の下、ピンショルダ面114と管軸CLに垂直な面とがなす角θは、8°以上21°以下に規定されている。この構成によれば、ピンショルダ面114は、油井管10の内面と外面との間に温度差が生じた場合でも、ピンシール面113の接触力を増幅する効果を十分に維持することができる。よって、油井管10とカップリング20との間の密封性能を確保することができる。
本開示に係る油井管の構造は、上記のものに限定されない。例えば、図10では、一の油井管10がカップリング20を介して他の油井管10と連結されているが、油井管同士が直接連結されるように構成することもできる。
図12は、直接連結された油井管10A,10Aを示す部分断面図である。各油井管10Aは、管軸方向の一方の端部にピン11を有する。各油井管10Aは、管軸方向の他方の端部にボックス21を有する。一の油井管10Aのピン11は、他の油井管10Aのボックス21に挿入され、当該ボックス21と締結される。これにより、油井管10A,10Aは、カップリング20(図10)を介することなく、直接連結される。
ピン11は、さらに、管本体12側の端部において、その外周にピンシール面115を有していてもよい。この場合、ボックス21の内周には、ピンシール面115に対応するボックスシール面215が設けられる。ピン11とボックス21との締結状態において、ピンシール面115及びボックスシール面215は、メタル−メタル接触によるシール部を形成する。
ピン11は、さらに、管本体12側の端面にピンショルダ面116を有していてもよい。この場合、ボックス21には、ピンショルダ面116に対応するボックスショルダ面216が設けられる。締結状態において、ピンショルダ面116及びボックスショルダ面216は、互いに押圧接触してショルダ部を形成する。
図13及び図14は、上記以外の構造を有するピン及び/又はボックスを示す図である。図11に示すピン11では、ピン11の内周側に窪む凹状面によってノーズ部111の外周面が構成されている。これに対し、図13に示すピン11Aでは、ノーズ部111Aの外周面が管軸CLを軸とする円錐台の周面によって構成される。すなわち、ノーズ部111Aの外周面は、実質的にテーパ状をなし、ピン11Aの先端側に向かって徐々に縮径している。ノーズ部111Aの外周面は図示した以外にも、外径側に凸状の曲率面を管軸CLの回りに回転させて出来る凸状回転体または円錐台と凸状回転体の組み合わせの周面によって構成されてもよい。この場合でも、ノーズ部111Aの外周面は、ピン11Aの先端側に向かって徐々に縮径している。
図14に示すピン11Bでは、ノーズ部111Bにピンサブショルダ面117が設けられている。ピンサブショルダ面117は、ピン11Bの先端に向かって縮径し、比較的傾斜が大きいテーパ面である。ピンサブショルダ面117とピンショルダ面114との境界部分により、ピン11Bの最先端部が構成されている。
ボックス21Bは、ピンサブショルダ面117に対応するボックスサブショルダ面217を有する。ピン11Bとボックス21Bとの締結状態において、ピンサブショルダ面117及びボックスサブショルダ面217は、接触する場合もあるし、接触しない場合もある。ただし、締結前の形状・寸法であって変形を考慮しない場合(上述の変形前のピン、ボックスのショルダ面同士とシール面同士を幾何学的に合致させた場合)、ピンサブショルダ面117はボックスサブショルダ面217に接触しない。
以上、実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
以下、実施例によって本開示をさらに詳しく説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<1.油井管の材料について>
表1に示す化学組成を有する鋼種A〜Vの鋼を溶製し、インゴットを製造した。鋼種A〜Vの化学組成は、本実施形態の範囲内である。各インゴットを熱間鍛造して、幅100mm、高さ30mmの板材を製造した。製造された板材を、番号1〜36の鋼素材として準備した。なお、表1に示す化学組成において、各元素の含有量は質量%であり、残部はFe及び不純物である。
準備された複数の素材を加熱炉で加熱した。加熱された素材を加熱炉から抽出し、抽出後速やかに熱間圧延を実施し、番号1〜36の中間材を製造した。熱間圧延時の素材各々の鋼材温度を、表2に示す。本実施例においては、素材を加熱炉にて十分な時間で加熱したため、鋼材温度は加熱温度に等しかった。各番号の熱間圧延での圧延率を、表2に示す。
番号1〜36各々の中間材に対して、焼入れ及び焼戻しを実施した。焼入れ温度は、950℃であった。焼入れ温度での保持時間(熱処理時間)は15分であった。水冷により、中間材に焼入れを実施した。焼戻し温度は、番号1、23〜30、32、33の中間材が550℃であり、番号2〜22、31、34〜36の中間材が600℃であった。焼戻し温度での保持時間は30分であった。以上の製造工程により、各番号の鋼板を製造した。
[ミクロ組織観察試験]
番号1〜36各々の鋼板を幅中央で長さ方向に切断した。切断面(長さ方向をy軸、肉厚方向をx軸とする)のうち、鋼板の中心部分からミクロ組織観察用のサンプルを採取した。採取されたサンプルから、上述の方法で面積率を測定し、フェライト相の体積率と定義した。さらに、オーステナイト相の体積率を、上述のX線回折法により求めた。さらに、焼戻しマルテンサイト相の体積率を、フェライト相の体積率及びオーステナイト相の体積率を用いて上述の方法により求めた。
さらに、観察面内の任意の位置から、観察倍率100倍であって1mm×1mmのミクロ組織画像(たとえば図1に示すような画像)を得た。得られたミクロ組織画像を用いて、上述の方法により、各番号の鋼板のβを算出した。
[降伏強度評価試験]
番号1〜36各々の鋼板の肉厚方向の中央部分から、引張試験用の丸棒を採取した。丸棒の長手方向は、鋼板の圧延方向に平行な方向(L方向)であった。丸棒の平行部の直径は6mmであり、標点間距離は40mmであった。採取された丸棒に対して、JIS Z2241(2011)に準拠して、室温で引張試験を実施し、降伏強度(0.2%耐力)を求めた。
[低温靱性評価試験]
低温靱性評価試験としてシャルピー衝撃試験を実施した。番号1〜36各々の鋼板の肉厚方向の中央部分から、ASTM E23に準拠したフルサイズ試験片を採取した。試験片の長手方向は、板幅方向に平行であった。採取された試験片を用いて、20℃〜−120℃の温度範囲においてシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギー(J)を測定し、延性脆性の破面遷移温度を求めた。
[高温耐SCC性評価試験]
番号1〜36各々の鋼板から、4点曲げ試験片を採取した。試験片の長さは75mmであり、幅は10mmであり、厚さは2mmであった。試験片に4点曲げによるたわみを付与した。このとき、ASTM G39に準拠して、試験片に与えられる応力が試験片の0.2%オフセット耐力と等しくなるように、試験片のたわみ量を決定した。30bar(3.0MPa)のCOと0.01bar(1kPa)のHSとが加圧封入された200℃のオートクレーブを番号1〜36各々に準備した。たわみをかけた試験片をオートクレーブに収納した。試験片は、オートクレーブ内で25mass%のNaCl溶液に720時間浸漬した。溶液は、0.41g/lのCHCOONaを含有したCHCOONa+CHCOOH緩衝系によりpH4.5に調整した。浸漬後の試験片に対して応力腐食割れ(SCC)の発生の有無を観察した。具体的には、試験片に対して、引張応力が付加された部分の断面を100倍の倍率で光学顕微鏡を用いて観察し、割れの有無を判定した。表3において、割れ無しが○であり、割れ有りが×であり、○の場合が×の場合よりも耐SCC性に優れる。さらに、試験片に対して、試験前の重量及び浸漬後の重量の変化量に基づいて、腐食減量を求めた。得られた腐食減量から年間腐食量(mm/Year)を計算した。
[常温での耐SSC性評価試験]
番号1〜36各々の鋼板から、NACE TM0177 METHOD A用の丸棒試験片を採取した。試験片の直径は6.35mmであり、平行部の長さは25.4mmであった。試験片の軸方向に引張応力を負荷した。このとき、NACA TM0177−2005に準拠して、試験片に与えられる応力が、試験材の実測の降伏応力の90%になるように調整した。試験片は、0.01bar(1kPa)のHSと0.99bar(0.099MPa)のCOとを飽和させた25mass%のNaCl溶液に720時間浸漬した。溶液は、0.41g/lのCHCOONaを含有したCHCOONa+CHCOOH緩衝系によりpH4.0に調整した。さらに、溶液の温度は25℃に調整した。浸漬後の試験片に対して、硫化物応力割れ(SSC)の発生の有無を観察した。具体的には、番号1〜36の試験片のうち、試験中に破断した試験片、及び破断しなかった試験片の各々に対して、平行部を肉眼にて観察し、クラック又は孔食の発生の有無を判定した。表3において、クラック又は孔食の発生が無い場合が○であり、クラック又は孔食の発生がある場合が×であり、○の場合が×の場合よりも耐SSC性に優れる。
[試験結果]
表3に試験結果を示す。番号1〜36の鋼板はいずれも、フェライト相の体積率(α分率)、オーステナイト相の体積率(γ分率)及び焼戻しマルテンサイト相の体積率(M分率)が、本実施形態の範囲内であった。番号1〜36の鋼材はいずれも、降伏強度が758MPa以上であり、年間腐食量が0.01mm/Year以下であり、耐SCC性及び耐SSC性が優れた。
番号1、4、7、10、12〜16、19〜36の各鋼材はいずれも、βが1.55以上であった。これらの鋼材は遷移温度が−30℃以下であり、低温靭性に優れる。
また、番号2、3、5、6、8、9、11、17、18の各鋼材はいずれも、βが1.5未満であり、遷移温度が−30℃を上回った。これらの鋼材は低温靭性に劣る。
<2.油井管の構造について>
本開示に係る油井管について、主に構造による効果を確認するため、弾塑性有限要素法による数値シミュレーション解析を実施した。
図10及び図11に示す基本構造を有し、寸法が9−5/8“ 53.5#(外径:244.5mm、肉厚:13.8mm)の油井管について、複数のモデルを作成した。
軸対称の弾塑性有限要素法を用い、各モデルを常温下(25℃)で所定の干渉量及び締付けターン(ショルダリング後+1/100ターン)で締結した。その後、2011年版ISO13679のシリーズA試験を模擬し、常温で内圧、外圧を交互に負荷しながら引張、圧縮をサイクリックに負荷した後、高温(250℃)にして同様の荷重を負荷し、最後にまた常温に戻して同様の荷重を負荷する有限要素解析を実施し、シール部(Ac)の接触力を評価した(解析1)。
また、軸対称の弾塑性有限要素法を用い、各モデルを常温下(25℃)で所定の干渉量及び締付けターン(ショルダリング後+1/100ターン)で締結した後、生産開始/再開時の内面の急速な加熱を想定して、ピン(11)のみを250℃に昇温し、シール部(Ac)の接触力を評価した(解析2)。
各モデルの寸法及び材料、並びにシール部(Ac)の接触力(以下、シール接触力という)の評価を表4に示す。
表4に示す実施例及び比較例1〜4のうち、実施例では、以下の式(6)、(7)、及び(10)を全て満たすモデルを使用した。各式において、D、L、及びTはノーズ部(111)の外径、長さ、及び厚み(単位は各々mm)、Vはノーズ部(111)とボックス(21)とのすき間の体積(単位はmm)、θはピンショルダ面(114)が管軸(CL)に垂直な面となす角である。D及びTは、ピン(11)の最先端から管軸方向にL/2だけ移動した位置におけるノーズ部(111)の外径及び厚みとした。
5πL/T<V<0.4πLD (6)
TD/L>50 (7)
8°≦θ≦21° (10)
実施例に係るモデルの材料は、降伏強度が110ksiであり、上記番号7(鋼種C)の鋼材と同様の化学組成及びマトリクス組織を有するステンレス鋼である。当該ステンレス鋼の0.2%降伏応力は約760N/mm、熱膨張率は16.0×10−6/℃である。表4では、便宜上、当該ステンレス鋼を17Crと表記している。
比較例1では、式(6)、(7)、及び(10)を満たすが、材料が上記実施例と異なるモデルを使用した。比較例1に係るモデルの材料は、2相系の25%Cr鋼である。25%Cr鋼についても、0.2%降伏応力は約760N/mm、熱膨張率は16.0×10−6/℃である。
比較例2〜4では、材料が上記実施例と同じであるが、式(6)、(7)、及び(10)のいずれかを満たさないモデルを使用した。比較例2及び3は、Vが5πL/T以下であり、式(6)を満たさない。比較例2及び3は、式(7)も満たしていない。比較例4は、θが0°であり、式(10)を満たさない。
解析1の過程の結果のうち、最後の常温下において(a)内圧荷重及び圧縮荷重を同時に負荷したとき、並びに(b)外圧荷重及び圧縮荷重を同時に負荷したときの各シール接触力を、実施例を1.00とした場合の相対値で表4に示す。この結果から、(a)(b)のいずれの場合にも高いシール接触力を維持しているのは実施例のみであり、実施例が最も優れた密封性能を有することがわかる。
解析2におけるシール接触力を、実施例を1.00とした場合の相対値で表4に示す。解析2の結果、実施例は、高温におけるシール接触力が最も高く、高温環境での密封性能も最も優れていることがわかる。
10,10A:油井管
11,11A,11B:ピン
111,111A,111B:ノーズ部
112:雄ねじ部
113:ピンシール面
114:ピンショルダ面
20:カップリング
21,21B:ボックス

Claims (4)

  1. ステンレス鋼からなり、他の油井管と直接又はカップリングを介して連結される油井管であって、
    前記ステンレス鋼は、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.001〜0.06%、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.01〜2.0%、
    P:0.03%以下、
    S:0.005%未満、
    Cr:15.5〜18.0%、
    Ni:2.5〜6.0%、
    V:0.005〜0.25%、
    Al:0.05%以下、
    N:0.06%以下、
    O:0.01%以下、
    Cu:0〜3.5%、
    Co:0〜1.5%、
    Nb:0〜0.25%、
    Ti:0〜0.25%、
    Zr:0〜0.25%、
    Ta:0〜0.25%、
    B:0〜0.005%、
    Ca:0〜0.01%、
    Mg:0〜0.01%、及び
    REM:0〜0.05%を含有し、さらに、
    Mo:0〜3.5%、及び
    W:0〜3.5%からなる群から選択された1種又は2種を式(1)を満たす範囲で含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    マトリクス組織が、体積率で、40〜70%の焼戻しマルテンサイト相と、10〜50%のフェライト相と、1〜15%のオーステナイト相とを有し、
    前記マトリクス組織を100倍の倍率で撮影して得られた1mm×1mmのミクロ組織画像を、肉厚方向をx軸としかつ長さ方向をy軸とするxy座標系に配置し、1024×1024の各画素をグレースケールで表したとき、式(2)で定義されるβが1.55以上であり、
    1.0≦Mo+0.5W≦3.5 (1)
    ここで、Mo,Wは、Mo,Wの含有量(質量%)である。

    ただし、式(2)において、Suは式(3)で定義され、Svは式(4)で定義される。

    式(3)及び式(4)において、F(u,v)は式(5)で定義される。

    式(5)において、f(x,y)は座標(x,y)の画素の階調を表す。
    前記油井管は、
    管本体と、
    前記管本体の少なくとも一方の端に連続して形成され、前記他の油井管のボックス又は前記カップリングのボックスに挿入されるピンと、
    を備え、
    前記ピンは、
    先端部を構成し、締結時において前記ボックスの内径よりも小さい外径を有するノーズ部と、
    前記ノーズ部よりも前記管本体側において外周に形成された雄ねじ部と、
    前記ノーズ部と前記雄ねじ部との間において外周に形成されたピンシール面と、
    前記ノーズ部の先端面に形成され、外周側が内周側よりも前記ピンの先端側に位置するように傾斜したピンショルダ面と、
    を含み、
    前記ノーズ部と前記ボックスとのすき間の体積V(mm)は、前記ノーズ部の管軸方向の長さをL(mm)、前記ノーズ部の管軸方向の中央における外径及び厚みをそれぞれD(mm)及びT(mm)として、式(6)を満たし、
    前記ピンショルダ面と管軸に垂直な面とがなす角は、D、L、Tが式(7)を満たすとき、8°以上21°以下である、油井管。
    5πL/T<V<0.4πLD (6)
    TD/L>50 (7)
  2. 請求項1に記載の油井管であって、
    前記ステンレス鋼は、
    前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.2〜3.5%、及び
    Co:0.05〜1.5%からなる群から選択された1種又は2種を含有する、油井管。
  3. 請求項1又は2に記載の油井管であって、
    前記ステンレス鋼は、
    前記化学組成が、質量%で、
    Nb:0.01〜0.25%、
    Ti:0.01〜0.25%、
    Zr:0.01〜0.25%、及び
    Ta:0.01〜0.25%からなる群から選択された1種又は2種以上を含有する、油井管。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の油井管であって、
    前記ステンレス鋼は、
    前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0003〜0.005%、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Mg:0.0005〜0.01%、及び
    REM:0.0005〜0.05%からなる群から選択された1種又は2種以上を含有する、油井管。
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