JP2017039864A - 高減衰組成物、粘弾性ダンパおよび粘弾性支承 - Google Patents
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Abstract
Description
粘弾性体は、主に天然ゴム等のジエン系ゴムを含む高減衰組成物によって形成される。
上記の配合においてシラン化合物は、シリカと反応してその表面を改質することで、当該シリカのジエン系ゴムに対する親和性、分散性を向上し、ジエン系ゴム中に良好に分散させるために機能する。
そこで上記の組成を基本として、粘弾性体の減衰性能をさらに向上させるべく、当該粘弾性体のもとになる高減衰組成物におけるシリカの配合割合を多くしたり(特許文献1)、当該高減衰組成物にさらに微粒子状カーボンブラックを配合したり(特許文献2)、ロジン誘導体や石油樹脂などの粘着付与剤を配合したり(特許文献3)すること等が検討されている。
ガラス転移温度Tgが粘弾性体の使用温度よりも低いゴムを使用して減衰性能の温度依存性を小さくして、温度上昇の影響を低減することも検討されているが、抜本的な解決策とは言えない。
また本発明の目的は、かかる高減衰組成物を用いて形成した粘弾性体を備え、上記のように振動が短いスパンで繰り返されたり比較的長時間に亘って続いたりしても熱が蓄積されにくいため、常に良好な減衰性能を維持できる粘弾性ダンパおよび粘弾性支承を提供することにある。
また本発明は、上記本発明の高減衰組成物からなる粘弾性体を備える粘弾性ダンパである。
さらに本発明は、上記本発明の高減衰組成物からなる粘弾性体を備える粘弾性支承である。
また本発明によれば、かかる高減衰組成物を用いて形成した粘弾性体を備え、上記のように振動が短いスパンで繰り返されたり比較的長時間に亘って続いたりしても熱が蓄積されにくいため、常に良好な減衰性能を維持できる粘弾性ダンパおよび粘弾性支承を提供できる。
本発明は、ジエン系ゴム、シリカ、および窒化ホウ素を含む高減衰組成物である。
発明者の検討によるとシリカも熱伝導に寄与し、当該シリカの配合割合を多くすれば粘弾性体の熱伝導性をある程度は向上できる。しかしその効果は未だ十分ではない上、熱伝導性の向上を目的としてシリカを多く配合しすぎると高減衰組成物の加工性が低下するおそれもある。
しかもシリカとの併用系において窒化ホウ素は、粘弾性体の減衰性能の向上を補助するためにも機能する。
また本発明によれば、かかる高減衰組成物を用いて形成した粘弾性体を備え、上記のように振動が短いスパンで繰り返されたり比較的長時間に亘って続いたりしても熱が蓄積されにくいため、常に良好な減衰性能を維持できる粘弾性ダンパおよび粘弾性支承を形成できる。
ジエン系ゴムとしては、シリカおよび窒化ホウ素を配合することで良好な剛性と高い減衰性能とを発現しうる種々のジエン系ゴムが使用可能である。
かかるジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等の1種または2種以上が挙げられる。これらのジエン系ゴムは、当該ジエン系ゴムに対するシリカの親和性、分散性を向上するために配合されるシラン化合物等との反応性に優れる上、ガラス転移温度が室温(2〜35℃)付近に存在しないため最も一般的な使用温度域である上記室温付近での剛性等の特性の温度依存性を小さくして、広い温度範囲で安定した減衰性能を示す粘弾性体を形成できるという利点がある。
〈シリカ〉
シリカは、先に説明したようにシラン化合物の機能によってジエン系ゴム中に分散されることで、粘弾性体の剛性および減衰性能を向上するために機能する。
シリカの配合割合は、ジエン系ゴムの総量100質量部あたり100質量部以上、特に140質量部以上であるのが好ましく、180質量部以下であるのが好ましい。
シリカの配合割合がこの範囲未満では、たとえ窒化ホウ素と併用しても粘弾性体に高い剛性と良好な減衰性能、そして良好な熱伝導性を付与できないおそれがある。
〈窒化ホウ素〉
窒化ホウ素としては、任意の合成方法によって製造される粒状、粉末状等の種々の性状の窒化ホウ素が使用可能である。
窒化ホウ素の配合割合がこの範囲未満では、シリカとともに窒化ホウ素を併用することによる、粘弾性体の減衰特性や熱伝導性を向上する効果が十分に得られず、特に粘弾性体に熱が蓄積されやすくなって、振動が短いスパンで繰り返されたり比較的長時間に亘って続いたりした際に良好な減衰性能を維持する効果が得られなくなるおそれがある。
〈シラン化合物〉
本発明の高減衰組成物には、従来同様にシラン化合物を配合する。
シラン化合物としては、シリカと反応してその表面を改質することでジエン系ゴムに対する親和性、分散性を向上して、当該シリカをジエン系ゴム中に良好に分散させるために機能する、例えばシリル化剤やシランカップリング剤等の種々のシラン化合物が使用可能である。
で表されるフェニル型シリル化剤が好ましい。
フェニル型シリル化剤の具体例としては、例えばフェニルトリメトキシシラン(R1=メチル基)、フェニルトリエトキシシラン(R1=エチル基)等の少なくとも1種が挙げられる。特に上述した効果の点でフェニルトリエトキシシランが好ましい。
フェニル型シリル化剤の配合割合がこの範囲未満では、上述したシリカの表面を改質してジエン系ゴムに対する親和性、分散性を向上する効果が十分に得られないため、高減衰組成物の加工性が低下するおそれがある。また粘弾性体に高い剛性と良好な減衰性能とを付与できないおそれもある。
〈架橋成分〉
本発明の高減衰組成物には、ジエン系ゴムを架橋させるための架橋成分を配合する。
架橋成分としては、ジエン系ゴムを架橋しうる種々の架橋成分が使用可能である。特に硫黄加硫系の架橋成分を用いるのが好ましい。
このうち加硫剤としては、例えば硫黄や含硫黄有機化合物等が挙げられる。特に硫黄が好ましい。
このうちスルフェンアミド系促進剤としては、例えば大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)NS〔N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〕等が挙げられる。またチウラム系促進剤としては、例えば大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBT−N〔テトラブチルチウラムジスルフィド〕等が挙げられる。
加硫剤、促進剤、促進助剤の配合割合は特に限定されず、粘弾性体の用途等によって異なる減衰性能や剛性等の特性に応じて適宜調整すればよい。
ただし加硫剤の配合割合は、ジエン系ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
またチウラム系促進剤の配合割合は、ジエン系ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
酸化亜鉛の配合割合は、ジエン系ゴム100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
〈その他の成分〉
本発明の高減衰組成物には、上記の各成分に加えて、さらにシリカ以外の他の無機充填剤や軟化剤、粘着性付与剤、老化防止剤等を適宜の割合で配合してもよい。
シリカ以外の他の無機充填剤としては、例えばカーボンブラック等が挙げられる。
またカーボンブラックとしては、その製造方法等によって分類される種々のカーボンブラックのうち、充填剤として機能しうるカーボンブラックの1種または2種以上が使用可能である。
(軟化剤)
軟化剤は、高減衰組成物の加工性をさらに向上するための成分であって、当該軟化剤としては、例えば室温(2〜35℃)で液状を呈する液状ゴムが挙げられる。また液状ゴムとしては、例えば液状ポリイソプレンゴム、液状ニトリルゴム(液状NBR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)等の1種または2種以上が挙げられる。
液状ポリイソプレンゴムの配合割合は、ジエン系ゴム100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、50質量部以下であるのが好ましい。
また他の軟化剤としては、例えばクマロンインデン樹脂等が挙げられる。
クマロンインデン樹脂としては、例えば日塗化学(株)製のニットレジン(登録商標)クマロンG−90〔平均分子量:770、軟化点:90℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:25KOHmg/g、臭素価9g/100g〕、G−100N〔平均分子量:730、軟化点:100℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:25KOHmg/g、臭素価11g/100g〕、V−120〔平均分子量:960、軟化点:120℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:30KOHmg/g、臭素価6g/100g〕、V−120S〔平均分子量:950、軟化点:120℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:30KOHmg/g、臭素価7g/100g〕等の1種または2種以上が挙げられる。
(粘着性付与剤)
粘着性付与剤としては、例えば石油樹脂等が挙げられる。また石油樹脂としては、例えば丸善石油化学(株)製のマルカレッツ(登録商標)M890A〔ジシクロペンタジエン系石油樹脂、軟化点:105℃〕等が好ましい。
(老化防止剤)
老化防止剤としては、例えばベンズイミダゾール系、キノン系、ポリフェノール系、アミン系等の各種老化防止剤の1種または2種以上が挙げられる。特にベンズイミダゾール系老化防止剤とキノン系老化防止剤を併用するのが好ましい。
両老化防止剤の配合割合は特に限定されないが、ベンズイミダゾール系老化防止剤は、ジエン系ゴム100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。またキノン系老化防止剤は、ジエン系ゴム100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
また本発明の高減衰組成物によれば、例えば吊橋や斜張橋等のケーブルの制振部材、産業機械や航空機、自動車、鉄道車両等の防振部材、コンピュータやその周辺機器類あるいは家庭用電気機器類等の防振部材、さらには自動車用タイヤのトレッド等として使用される各種の粘弾性体をも形成できる。
《粘弾性ダンパ》
特に本発明の高減衰組成物を形成材料として用いて、建築物の構造中に組み込まれる粘弾性ダンパの粘弾性体を形成した場合には、当該粘弾性体が高い減衰性能を有するとともに良好な熱伝導性を有することから、前述したように本震後に繰り返される余震や長時間に亘って揺れが続く地震などに対しても熱の蓄積による減衰性能の低下を抑制し、良好な減衰性能を維持して建築物の破損や倒壊等を防止することができる。
《粘弾性支承》
また本発明の高減衰組成物を形成材料として用いて、建築物の基礎に組み込まれる粘弾性支承の粘弾性体を形成した場合には、やはり当該粘弾性体が高い減衰性能を有するとともに良好な熱伝導性を有することから、本震後に繰り返される余震や長時間に亘って揺れが続く地震などに対しても熱の蓄積による減衰性能の低下を抑制し、良好な減衰性能を維持して建築物の破損や倒壊等を防止することができる。
(高減衰組成物の調製)
ジエン系ゴムとしての天然ゴム〔SMR(Standard Malaysian Rubber)−CV60〕100質量部に、シリカ〔東ソー・シリカ(株)製のNipSil KQ〕150質量部、式(1)で表されるフェニル型シリル化剤としてのフェニルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製のKBE−103〕20質量部、および窒化ホウ素〔KENNAMETAL SINTEC社製のBN5000〕30質量部と、下記表1に示す各成分のうち架橋剤、促進剤以外の成分とを配合し、密閉式混練機を用いて混練したのち、さらに架橋剤、促進剤を加えて混練して高減衰組成物を調製した。
液状ポリイソプレンゴム:(株)クラレ製のLIR−50、数平均分子量:54000
カーボンブラック:FEF、東海カーボン(株)製のシーストSO
ベンズイミダゾール系老化防止剤:2−メルカプトベンズイミダゾール、大内新興化学工業(株)製のノクラックMB
キノン系老化防止剤:丸石化学品(株)製のアンチゲンFR
酸化亜鉛2種:三井金属鉱業(株)製
ステアリン酸:日油(株)製の「つばき」
クマロン樹脂:軟化点90℃、日塗化学(株)製のニットレジン(登録商標) クマロンG−90
ジシクロペンタジエン系石油樹脂:軟化点105℃、丸善石油化学(株)製のマルカレッツ(登録商標)M890A
5%オイル処理粉末硫黄:加硫剤、鶴見化学工業(株)製
スルフェンアミド系促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)NS
チウラム系促進剤:テトラブチルチウラムジスルフィド、大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBT−N
〈実施例2、3〉
シリカの配合割合を、天然ゴム100質量部あたり100質量部(実施例2)、180質量部(実施例3)としたこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈実施例4、5〉
窒化ホウ素の配合割合を、天然ゴム100質量部あたり1質量部(実施例4)、80質量部(実施例5)としたこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
いずれも混練は容易であり、加工性は良好(○)と評価した。
窒化ホウ素を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
混練は容易であり、加工性は良好(○)と評価した。
〈比較例2〉
シリカを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈減衰特性試験〉
(試験体の作製)
実施例、比較例で調製した高減衰組成物をシート状に押出成形したのち打ち抜いて、図1に示すように円板1(厚み5mm×直径25mm)を作製し、この円板1の表裏両面に、それぞれ加硫接着剤を介して厚み6mm×縦44mm×横44mmの矩形平板状の鋼板2を重ねて積層方向に加圧しながら150℃に加熱して円板1を形成する高減衰組成物を加硫させるとともに円板1を2枚の鋼板2と加硫接着させて、粘弾性体のモデルとしての減衰特性評価用の試験体3を作製した。
図2(a)に示すように上記の試験体3を2個用意し、この2個の試験体3を、一方の鋼板2を介して1枚の中央固定治具4にボルトで固定するとともに、それぞれの試験体3の他方の鋼板2に、1枚ずつの左右固定治具5をボルトで固定した。そして中央固定治具4を、図示しない試験機の上側の固定アーム6に、ジョイント7を介してボルトで固定し、かつ2枚の左右固定治具5を、上記試験機の下側の可動盤8に、ジョイント9を介してボルトで固定した。
次いで、上記の測定により求めた図3に示すヒステリシスループHのうち最大変位点と最小変位点とを結ぶ、図中に太線の実線で示す直線L1の傾きKeq(N/mm)を求め、この傾きKeq(N/mm)と、円板1の厚みT(mm)と、円板1の断面積A(mm2)とから、式(a):
また図3中に斜線を付して示した、ヒステリシスループHの全表面積で表される吸収エネルギー量ΔWと、同図中に網線を付して示した、直線L1と、グラフの横軸と、直線L1とヒステリシスループHとの交点から横軸におろした垂線L2とで囲まれた領域の表面積で表される弾性歪みエネルギーWとから、式(b):
〈熱伝導性試験〉
実施例、比較例で調製した高減衰組成物をシート状に押出成形し、さらにプレス成形して厚み5mmの試験体を作製し、その厚み方向の熱伝導率を、迅速熱伝導率計〔京都電子工業(株)製のQTM−500〕を用いて測定した。そして比較例1における熱伝導率を100としたときの、各実施例、比較例の熱伝導率の相対値を求め、かかる相対値が101未満のものを不良、101以上のものを良好と評価した。
ただし実施例1、4、5の結果より、高減衰組成物の良好な加工性を維持しながら上記の効果をより一層向上するためには、窒化ホウ素の配合割合を、天然ゴム100質量部あたり1質量部以上、特に20質量部以上とするのが好ましく、60質量部以下とするのが好ましいことが判った。
Heq 等価減衰定数
L1 直線
L2 垂線
W エネルギー
ΔW 吸収エネルギー量
1 円板
2 鋼板
3 試験体
4 中央固定治具
5 左右固定治具
6 固定アーム
7 ジョイント
8 可動盤
9 ジョイント
Claims (7)
- ジエン系ゴム、シリカ、および窒化ホウ素を含む高減衰組成物。
- 前記窒化ホウ素の配合割合は、前記ジエン系ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、60質量部以下である請求項1に記載の高減衰組成物。
- 前記シリカの配合割合は、前記ジエン系ゴムの総量100質量部あたり100質量部以上、180質量部以下である請求項1または2に記載の高減衰組成物。
- 前記ジエン系ゴムは、天然ゴム、イソプレンゴムおよびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高減衰組成物。
- 前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高減衰組成物からなる粘弾性体を備える粘弾性ダンパ。
- 前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高減衰組成物からなる粘弾性体を備える粘弾性支承。
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