JP2017037816A - 固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法 - Google Patents

固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法 Download PDF

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克公 松本
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孝 飯島
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正孝 日吉
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晋也 古川
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Abstract

【課題】燃料電池の運転条件(強酸性条件、高電位条件、及び連続運転時の電位変動)下での凝集や溶解に対する触媒粒子の耐久性を損なわずに、白金原子の触媒活性を高めて白金原子の使用量の低減ができる固体高分子形燃料電池用の触媒粒子、これを用いた触媒及び触媒粒子の製造方法を提供。
【解決手段】白金又は白金を含む白金合金からなる触媒活性粒子と、この触媒活性粒子を構成する金属以外の金属Mの金属酸化物粒子とが複合した触媒粒子であり、金属酸化物粒子の表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相が形成されており、また、金属酸化物粒子の前記ハロゲン含有結晶相と触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合(Xはハロゲン原子)が存在する固体高分子形燃料電池用の触媒粒子、これを用いた触媒。平均粒径0.3〜3nmの白金粒子からなる触媒粒子が金属酸化物粒子の表面に担持している触媒粒子。
【選択図】なし

Description

この発明は、固体高分子形燃料電池用の触媒粒子、及びこの触媒粒子を用いて調製された固体高分子形燃料電池用の触媒、並びに前記触媒粒子の製造方法に関するものであり、特に触媒粒子に含まれる白金原子の触媒活性を高めてこの白金原子の使用量を低減することができる固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法に関する。
一般的な固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性電解質膜を挟んでアノードとなる触媒層とカソードとなる触媒層とが配置され、更にこれらを挟んで触媒層の外側にガス拡散層が配置され、更にこれらを挟んでガス拡散層の外側にセパレーターが配置された基本構造を有し、通常は、必要な出力を達成するために、上記の基本構造を単位セルとし、必要な数の単位セルをスタックして電池を構成している。
このような基本構造の固体高分子形燃料電池から電流を取り出すためには、アノードとカソードの両極に配されたセパレーターのガス流路からガス拡散層を介して、カソード側には酸素あるいは空気等の酸化性ガスを、また、アノード側には水素等の還元性ガスをそれぞれ触媒層まで供給し、各触媒層で起こる還元性ガス及び酸化性ガスの化学反応を利用して電流を取り出す。例えば、還元性ガスが水素ガスであって酸化性ガスが酸素ガスである場合には、アノード側触媒層の触媒粒子上で起こる下記の化学反応(1)と、カソード側触媒層の触媒粒子上で起こる下記の化学反応(2)との間のエネルギー差(電位差)を利用し、電流を取り出している。
→ 2H+2e(E=0V)……(1)
+4H+4e→ 2HO(E=1.23V)……(2)
そして、上記の化学反応(1)及び(2)に利用されるアノード側及び/又はカソード側の触媒層には、これら必要な化学反応(1)及び(2)を促進する機能を有する触媒金属、具体的には白金、パラジウム、金、タングステン、コバルト、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、モリブデン等の純金属や、炭化物、窒化物等の金属化合物が使用可能ではあるが、純金属としてはPtが最も高い反応活性を有することから、一般的には白金(Pt)若しくはPtを主成分とするPt合金が使用されている。ここで、Ptと共に使用される金属元素としては、触媒金属としての活性向上を目的としてCo、Ni、Fe、Pd、Au、Ru、Rh、Ir等があるが、これら金属元素の添加量は、このPt以外の金属元素の添加量が50at%を超えると、触媒金属の粒子表面におけるPt以外の金属元素の存在割合が多くなり、燃料電池の作動下で溶解して発電性能が低下する場合があることから、通常、Ptに対する原子組成百分率として50at%以下である。
また、固体高分子形燃料電池において、アノード側触媒層とカソード側触媒層との間に配置されるプロトン伝導性電解質膜としては、一般に、高分子電解質材料であるパーフルオロスルホン酸ポリマーが使用されており、このポリマーの側鎖にはスルホン酸基が存在するので、これら触媒層に存在する触媒金属は強い酸性条件下に晒されており、しかも、燃料電池の連続運転時には電位の変動が生じるだけでなく、酸化性を有する酸素ガスが供給される。このため、他の触媒金属に比べて優れた耐酸性、耐酸化性、電位変動下で溶解し難い等の性質を有する白金を触媒金属として用いた場合であっても、次第に白金粒子の凝集や溶解が発生し、発電反応に関与する白金粒子の表面積が小さくなり、燃料電池の性能低下が生じるのは避けられない。
加えて、白金(Pt)については、その資源埋蔵量に制約があり、高価であることから、国の産業上の方針として白金触媒の使用量を削減することが挙げられている(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池・水素技術開発ロードマップ2010)。
従って、固体高分子形燃料電池の低コスト化を達成して普及を図るためには、燃料電池の運転条件である強酸性条件下、高電位条件下、及び連続運転時の電位変動の下においても、触媒粒子の凝集や溶解を抑制することができ、長期間に亘って安定した発電性能を発現させることができるという触媒粒子の耐久性を維持しつつ、白金原子の触媒活性を可及的に高めることができ、これによって白金原子の使用量を可及的に低減することができる触媒粒子の開発が必要不可欠である。
そこで、従来においても、固体高分子形燃料電池において、白金使用量を低減し、また、使用する触媒粒子の耐久性の向上を図るための幾つかの試みがなされている。
すなわち、特許文献1には、白金又は白金を含む貴金属合金と、貴金属以外の金属酸化物からなる固体高分子形燃料電池用の複合粒子が記載されており、また、金属酸化物としてTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Sn,In,Hf,Ta,W,Re,Ir又は希土類元素の酸化物が記載されており、更に、具体例として平均粒径5nmの白金とコバルト酸化物との複合微粒子(実施例1)及び平均粒径7nmの白金と銅酸化物との複合微粒子(実施例2)が記載されている。しかしながら、この特許文献1の実施例において実際に作製されている複合粒子は、白金粒子とコバルト酸化物粒子又は銅酸化物粒子との複合粒子であり、白金粒子そのものの触媒活性を高めるものではなく、また、白金原子の触媒活性を高めて白金又は白金を含む貴金属合金の使用量を低減するというものでもない。
また、特許文献2には、Pt及び金属Mを含む合金と、その表面に固定された金属Mのリン酸塩及び/又はフッ化物とを備えた電極触媒が記載されている。しかしながら、この特許文献2には、金属Mのフッ化物に関する実施例はなく、Pt及び金属Mを含む合金の表面に所定のリン含有量で金属Mのリン酸塩が固定されている電極触媒が開示されているに過ぎず、この特許文献2においても、白金原子の触媒活性を高めて白金原子の使用量を低減することについては記載されていない。
更に、非特許文献1には、金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応とハロゲンイオン捕捉剤を用いた加水分解駆動反応とからなる液相析出法が記載されている。しかしながら、この非特許文献1には、加水分解駆動反応により加水分解平衡反応を酸化物側にシフトさせて得られる金属酸化物に関して、金属酸化物粒子を形成させると共に、その表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相を形成させることについては記載されていない。
特開2006-134,613号公報 特開2006-102,568号公報
出来成人、青井芳史「液相析出法(LPD法:Liquid Phase Deposition)による機能性薄膜材料の合成」表面技術、第49巻(1998年)、第30〜34頁
本発明者らは、上述した固体高分子形燃料電池用の触媒粒子に関する技術的背景の下に、触媒粒子の耐久性を維持しつつ、白金原子の触媒活性を可及的に高めることができ、白金原子の使用量を可及的に低減することができる触媒粒子を開発すべく鋭意検討を進めた。
そして、このような検討を進める中で、金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応とハロゲンイオン捕捉剤を用いた加水分解駆動反応とからなる液相析出法を活用することにより、反応系内に金属酸化物粒子を形成させ、しかも、この金属酸化物粒子の表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相を形成させることができることを知見し、また、この液相析出法の反応系内に白金又は白金を含む白金合金からなる白金系金属の触媒金属前駆体化合物を共存させることにより、前記金属酸化物粒子のハロゲン含有結晶相と前記触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合(但し、Xはハロゲン原子である。)が形成され、これによって、金属酸化物粒子と触媒活性粒子とからなる触媒粒子の耐久性を損なうことなく、白金原子の触媒活性を高め、白金原子の使用量を低減できることを知見した。
従って、本発明の目的は、燃料電池の運転条件(強酸性条件、高電位条件、及び連続運転時の電位変動)下での凝集や溶解に対する触媒粒子の耐久性を損なうことなく、白金原子の触媒活性を高めて白金原子の使用量を低減することができる固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このように白金原子の触媒活性を高めて白金原子の使用量の低減が可能であり、燃料電池の運転条件下での発電性能に優れた触媒粒子を用いた固体高分子形燃料電池用の触媒を提供することにあり、更に、新たな触媒粒子の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 白金又は白金を含む白金合金からなる触媒活性粒子と、前記触媒活性粒子を構成する金属以外の金属Mの金属酸化物粒子とが複合した触媒粒子であり、
前記金属酸化物粒子の表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相が形成されており、また、この金属酸化物粒子の前記ハロゲン含有結晶相と前記触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合(但し、Xはハロゲン原子である。)が存在することを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(2) 前記触媒粒子は、平均粒径が3〜10nmであることを特徴とする前記(1)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(3) 前記触媒粒子は、3個以下の単位結晶格子からなる金属酸化物粒子の表面に、平均粒径0.3〜3nmの触媒活性粒子が分散した状態で担持されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(4) 前記触媒活性粒子が白金原子からなる平均粒径0.3〜3nmの白金粒子であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(5) 前記触媒粒子において、X線光電子分光法(XPS)により求められるPt-Pt結合とPt-X結合との比〔(Pt-X)/(Pt-Pt)〕が0.05〜0.5であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(6) 前記金属酸化物粒子のハロゲン含有結晶相と前記触媒活性粒子との間に存在するPt-X結合がPt-F結合であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(7) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Fe、Ge、Nb、Mo、Ru、Pd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、及びBiからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(8) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Mo、Sn、Hf、及びTaからなる群から選ばれた金属であることを特徴とする前記(7)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(9) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti及び/又はSnであることを特徴とする前記(8)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(10) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載された固体高分子形燃料電池用の触媒粒子が炭素担体に担持されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒。
(11) 白金又は白金を含む白金合金からなる触媒活性粒子と、前記触媒活性粒子を構成する金属以外の金属Mの金属酸化物粒子とが複合した固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を製造するための方法であって、
前記金属酸化物粒子の金属Mの金属ハロゲノ錯体についての加水分解平衡反応と、前記金属ハロゲノ錯体よりもより安定な金属ハロゲノ錯体を形成するハロゲンイオン捕捉剤を添加して前記金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法により、表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相を有する金属酸化物粒子を形成し、
また、前記液相析出法の反応系内に白金又は白金を含む白金合金からなる白金系金属の触媒金属前駆体化合物を共存させ、前記金属酸化物粒子の表面に、この金属酸化物粒子との間の少なくとも一部にPt-X結合(但し、Xはハロゲン原子である。)を有する触媒活性粒子を析出させることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(12) 前記触媒活性粒子が白金原子からなる白金粒子であることを特徴とする前記(11)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(13) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Fe、Ge、Nb、Mo、Ru、Pd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、及びBiからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする前記(11)又は(12)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(14) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Mo、Sn、Hf、及びTaからなる群から選ばれた金属であることを特徴とする前記(13)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(15) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Snからなる群から選ばれた金属であることを特徴とする前記(14)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(16) 前記金属ハロゲノ錯体のハロゲン原子XがFであり、前記金属酸化物粒子と前記触媒活性粒子との間に存在するPt-X結合がPt-F結合であることを特徴とする前記(11)〜(15)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子は、触媒活性粒子が金属酸化物粒子と共存して耐久性に優れており、しかも、触媒活性粒子中のPtの一部又は全部が金属酸化物粒子表面のハロゲン含有結晶相との間でPt-X結合を有してPtの触媒活性が高められており、固体高分子形燃料電池用触媒の調製時におけるPt使用量の低減化が可能である。
また、本発明の触媒粒子を用いて調製される固体高分子形燃料電池用触媒は、燃料電池の運転条件である強酸性条件下、高電位条件下、及び連続運転時の電位変動の下においても、触媒粒子の凝集や溶解を抑制することができ、しかも、触媒活性粒子中のPtの一部又は全部が金属酸化物粒子表面のハロゲン含有結晶相との間でPt-X結合を有してPtの触媒活性が高められており、これによって長期間に亘って安定した発電性能を発現させることができる。
更に、本発明の触媒粒子の製造方法によれば、上述したPt原子の触媒活性を高めてこのPt原子の使用量を低減することが可能な固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を調製することができる。
図1は、本発明の触媒粒子の粒子構造を模式的に示す説明図である。
以下、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法について、詳細に説明する。
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子が有する粒子構造を模式的に示したものであり、触媒粒子1は、白金(Pt)又は白金を含む白金合金(Pt合金)からなる白金系金属の触媒活性粒子2とこの触媒活性粒子2を構成する金属以外の金属Mの金属酸化物粒子3とからなる複合粒子である。そして、この触媒粒子1は、好ましくはその粒子径dの平均粒径が3nm以上10nm以下、より好ましくは3nm以上5nm以下 の複合粒子であり、また、前記金属酸化物粒子3は好ましくは1〜3個の単位格子数からなる結晶粒子であって、前記触媒活性粒子2は好ましくは平均粒径0.3nm以上3nm以下の結晶粒子であり、触媒活性粒子2が金属酸化物粒子3の表面の一部又は全体に分散した状態で担持されている。
ここで、粒子径dの平均粒径が3nmより小さい触媒粒子1については、金属酸化物粒子3の結晶成長が進まない未熟な状態であってその製造が困難であり、反対に、粒子径dの平均粒径が10nmより大きくなると、幾何学的表面積が小さくなって電池性能が低くなり、所望の電池性能を発現させることが難しくなる虞がある。また、前記金属酸化物粒子3の単位格子数が3個を超えると、形成される触媒粒子1において、電子伝導性の低い金属酸化物粒子3の領域が大きくなり、この触媒粒子1内部を流れる電子の伝導性(触媒粒子内部の電子伝導性)が損なわれて固体高分子形燃料電池用の触媒とした際に所望の電池性能(セル電圧:0.700V以上、好ましくは0.720V以上)を発揮できなくなる虞がある。更に、前記触媒活性粒子2の平均粒径については、例えば白金(Pt)の場合には約0.3nmが物理的に下限値になり、反対に、3nmを超えて大きくなると、酸化性ガスに暴露される最表面に位置する触媒活性粒子2が金属酸化物粒子3のハロゲン含有結晶相3aから享受する活性向上効果が低くなり、所望の触媒活性が得られなくなる虞がある。
本発明において、前記触媒粒子1においては、この触媒粒子1を構成する金属酸化物粒子3の表面の一部又は全部に金属ハロゲン化物からなるハロゲン含有結晶相3aが形成されており、また、このハロゲン含有結晶相3aと触媒粒子1を構成する触媒活性粒子2との間には触媒活性粒子2の少なくとも一部との間にPt-X結合(但し、Xはハロゲン原子である。)が存在するものである。そして、このPt-X結合については、好ましくは、X線光電子分光法(XPS)により求められるPt-Pt結合との比〔(Pt-X)/(Pt-Pt)〕が0.05以上0.5以下、好ましくは0.1以上0.5以下 であるのがよく、この比〔(Pt-X)/(Pt-Pt)〕の値が0.05未満では、触媒粒子1においてPt-X結合を形成して白金原子の触媒活性を高める効果に乏しく、反対に、この比〔(Pt-X)/(Pt-Pt)〕の値が0.5を超えると、触媒粒子1の調製時に白金原子が触媒粒子1中に取り込まれ難くなり、触媒活性粒子2と金属酸化物粒子3とが複合した触媒粒子1の調製が難しくなる。
本発明において、触媒粒子1を構成する触媒活性粒子2については、上述した化学反応(1)及び(2)を促進する能力を有し、加えて、燃料電池の運転条件下で溶解し難い金属である必要があり、Pt又はPtを主成分とするPt合金が用いられる。ここで、Pt合金とは、Ptの他に、触媒活性粒子2の活性向上等を目的として添加されるCo、Ni、Fe、Pd、Au、Ru、Rh、Ir等の金属元素を含む合金のことであり、これらの添加金属元素は触媒活性粒子2中に原子組成百分率として50at%以下の割合で添加され、この添加量が50at%より高くなると、触媒活性粒子2表面の添加元素の存在割合が多くなり、燃料電池の運転条件下で触媒活性粒子2が溶解し易くなって電池性能が低下する。
また、本発明において、触媒粒子1を構成する金属Mの金属酸化物粒子3において、金属Mとしては、燃料電池の作動条件下において耐溶解性に優れた金属である必要があり、また、比較的良好な電子伝導性を示す金属であることが好ましく、具体的には、Ti、Fe、Ge、Nb、Mo、Ru、Pd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、及びBiからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であり、また、液相析出法により金属酸化物粒子3をより形成し易いという観点から、好ましくはTi、Nb、Mo、Sn、Hf、及びTaからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であり、更に、燃料電池作動下で溶解し難いという耐溶解性の観点から、また、電子伝導性の観点から、最適には金属酸化物が半導体としての性質を有するTi及び/又はSnである。
ここで、触媒粒子1の金属酸化物粒子3表面に形成されるハロゲン含有結晶相3aについては、一般式YaMObc〔但し、MはTi、Fe、Ge、Nb、Mo、Ru、Pd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、及びBiからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属原子であり、Yは−NH4、−H、−Na 、又は−K であり、Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン原子であり、また、a、b、及びcは整数であってc>bであり、更に、a+cの合計が金属Mの原子価数となる。〕で表される金属ハロゲン化合物であると考えられる。そして、金属酸化物粒子3がこのようなハロゲン含有結晶相3aを有する触媒粒子1においては、金属酸化物粒子3の表面でハロゲン含有結晶相3aを形成する金属ハロゲン化合物のハロゲン原子が、この金属酸化物粒子3の近傍で生成した触媒活性粒子2の白金原子との間でPt-X結合を形成するものと考えられる。本発明の触媒粒子1においては、Ptの一部又は全部に電子吸引性に優れたハロゲン原子がPt-X結合を形成して結合し、これによってPtの電子状態をδ+に帯電させ、燃料ガスの酸素ガス(δ-)を静電的に吸着し易くし、結果としてこの触媒粒子1の触媒活性が高められているものと考えられる。
そして、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を製造するための方法については、この触媒粒子を構成する金属酸化物粒子の表面の一部又は全部に形成されるハロゲン含有結晶相と、触媒粒子を構成する触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合(但し、Xはハロゲン原子である。)を形成することができる方法であれば特に制限されるものではないが、好ましくは、前記金属酸化物粒子の金属Mの金属ハロゲノ錯体についての加水分解平衡反応と、前記金属ハロゲノ錯体よりもより安定な金属ハロゲノ錯体を形成するハロゲンイオン捕捉剤を添加して前記金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法により、表面の一部又は全部にハロゲン含有結晶相を有する金属酸化物粒子を形成し、また、前記液相析出法の反応系内に白金又は白金を含む白金合金からなる白金系金属の触媒金属前駆体化合物を共存させ、液相析出法の反応系内で析出してくる金属酸化物粒子と触媒活性粒子との間において、金属酸化物粒子のハロゲン含有結晶相と触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合を形成させる方法であるのがよい。また、特に制限されるものではないが、前記金属Mの金属ハロゲノ錯体の使用量と前記白金系金属(PtM)の金属前駆体化合物の使用量 については、金属Mの金属酸化物粒子と触媒活性粒子との存在割合が、金属Mと白金系金属(PtM)の物質量比(PtM/M)に換算して、0.5以上10以下、好ましくは5以上10以下の範囲となるように、調整するのがよい。
また、上記の液相析出法で使用する金属Mの金属ハロゲノ錯体としては、Ti、Fe、Ge、Nb、Mo、Ru、Pd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、及びBiからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属のフッ化物錯体、塩化物錯体、又はヨウ化物錯体であり、好ましくはTi、Nb、Mo、Sn、Hf、及びTaからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属のフッ化物錯体であり、より好ましくは金属酸化物が半導体としての性質を有するTi及び/又はSnのフッ化物錯体である。具体的には、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸、フッ化スズ酸アンモニウム、フッ化スズ酸等を始めとして、いずれも従来公知のものを使用することができ、また、上記金属Mの金属ハロゲノ錯体については、金属Mの酸化物をフッ化水素(HF)及び/又はフッ化アンモニウム(NH4F)の水溶液中に溶解して調製された金属M酸化物/HF水溶液、金属M酸化物/NH4F、又は金属M酸化物/HF・NH4F水溶液として使用することもできる。また、液相析出法で使用するハロゲンイオン捕捉剤についても、ホウ酸、塩化アルミニウム、金属アルミニウム等を始めとして従来公知のものを使用することができ、また、有機溶媒についても、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレングリコール、エタノール、メタノール、プロパノール等を始めとして従来公知の親水基を有するものを使用することができる。
ここで、一般的な液相析出法については、例えば出来成人、青井芳史「液相析出法(LPD法:Liquid Phase Deposition)による機能性薄膜材料の合成」表面技術、第49巻(1998年)、第30〜34頁等に記載されている。
しかしながら、本発明の製造方法において、液相析出法により生成する金属酸化物粒子の表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相を形成し、また、この金属酸化物粒子のハロゲン含有結晶相と触媒活性粒子との間の少なくとも一部にPt-X結合を形成させるためには、触媒活性粒子のPtと金属ハロゲノ錯体との間で配位子交換が行われることが重要であり、このためには、液相析出法の反応系内に添加する触媒金属前駆体化合物 の白金(Pt)前駆体化合物として水酸基(-OH)を配位子として有する塩基性の Pt前駆体化合物 を用いるのがよい。具体的には、このようなPt前駆体化合物と金属ハロゲノ錯体との混合溶液の熟成期間に、例えば塩基性の性質を有する触媒金属前駆体化合物のPt-OH結合をPt-X結合に配位子変換を生起させることにより、X線光電子分光法で検出されるPt-X結合を有する触媒粒子の調製が可能になるものである。そして、この配位子場交換反応において、触媒金属前駆体化合物のPt-OH結合の全てをハロゲン原子Xと交換させるものではなく、部分的に交換させるものであり、仮に全てのPt-OH結合を完全に交換させてしまうと、金属ハロゲノ錯体は直ちに加水分解されて金属酸化物粒子が析出し、反応溶液が濃く白濁すると共に、Pt-X結合を有する触媒粒子を得ることができなくなる。
また、本発明の製造方法においては、液相析出法によりハロゲン含有結晶相を形成し、このハロゲン含有結晶相と触媒活性粒子との間にPt-X結合を形成させるためには、使用するハロゲンイオン捕捉剤の使用量も重要であり、反応系内におけるハロゲンイオン捕捉剤の使用量が過剰量であると、液相析出法の加水分解駆動反応において安定な錯体〔例えば、金属ハロゲノ錯体のハロゲン原子がフッ素原子(F)であって、ハロゲンイオン捕捉剤がフッ素捕捉剤としてのホウ酸(H3BO3)である場合には、H3BO3+4HF→BF4 -+H3O++2H2Oの反応で生成するBF4 -の錯体〕が形成されてしまい、Pt-F結合を有する触媒粒子の生成が困難になる。言い換えれば、本発明においては、液相析出法において、金属ハロゲノ錯体とハロゲンイオン捕捉剤の使用量に関し、金属ハロゲノ錯体を最適な範囲に制御することが 望ましい。
ここで、前記液相析出法の反応系内に添加する触媒金属前駆体化合物としては、具体的には、次のような物質を例示することができる。例えば、白金(Pt)前駆体物質としては、配位子として水酸基(-OH)を含むテトラアンミン白金(II)水酸化物水溶液〔[Pt(NH3)4](OH)2溶液〕、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム水和物〔Na2[Pt(OH)6]・nH2O〕等を例示することができる。また、コバルト(Co)前駆体物質としてはコバルト(II)アセチルアセトナート〔(CH3COCHCOCH3)2Co〕、ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物〔[Co(NH3)6]Cl3〕等を例示することができ、ニッケル(Ni)前駆体物質としてはニッケル(II)アセチルアセトナート〔(CH3COCHCOCH3)2Ni〕、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物〔[Ni(NH3)6]Cl2〕等を例示することができ、鉄(Fe)前駆体物質としては鉄(III)アセチルアセトナート〔(CH3COCHCOCH3)3Fe〕等を例示することができ、パラジウム(Pd)前駆体物質としてはテトラアンミンパラジウム(II)塩化物(一水和物)〔[Pd(NH3)4]Cl2・H2O〕、ジアンミンジクロロパラジウム(II)〔PdCl2(NH3)2〕、ビス(アセチルアセトナート)パラジウム(II)〔Pd(C5H7O2)2〕等を例示することができ、金(Au)前駆体物質としてはテトラクロロ金(III)酸カリウム(二水和物)〔K[AuCl4]・2H2O〕等を例示することができ、ルテニウム(Ru)前駆体物質としては塩化ルテニウム(III)(三水和物)〔RuCl3・3H2O〕等を例示することができ、また、ロジウム(Rh)前駆体物質としては塩化ロジウム(III)(三水和物)〔RhCl3・3H2O〕等を例示することができ、更に、イリジウム(Ir)前駆体物質としては塩化イリジウム(III)水和物〔IrCl3・xH2O〕等を例示することができる。
また、上記の液相析出法におけるハロゲンイオン捕捉剤の使用量については、用いる金属ハロゲノ錯体やハロゲンイオン捕捉剤の種類によっても異なるが、金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の比率〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC)〕は、XICとMXCの物質量の比率に基づいて、通常5以上10以下、好ましくは5以上8以下であるのがよい。このハロゲンイオン捕捉剤の使用量のX捕捉剤使用比率(XIC/MXC)が5より少ないと金属酸化物粒子が生成し難くなる虞があり、反対に、10より多くなると金属酸化物粒子の粒径が大きくなる虞がある。
なお、本発明の製造方法において、単位格子数1〜3の結晶粒子からなる金属Mの金属酸化物粒子を形成し、また、平均粒径3〜10nmの触媒粒子を成形するためには、金属Mの金属ハロゲノ錯体を有機溶媒中ハロゲンイオン補足剤(及び触媒金属前駆体化合物)の存在下に、50℃以下の温度、好ましくは5℃以上20℃以下の温度で結晶粒子の成長を抑制しながら反応させるのがよく、金属Mの金属酸化物粒子はこの金属酸化物粒子を含む反応混合物溶液として得られる。この触媒粒子の製造の際における反応温度をより低温にすれば、金属酸化物粒子の単位格子は小さくなり、反対に、より高温にすれば単位格子は大きくなり、反応温度が50℃を超えて高くなると、金属酸化物粒子は容易に粒子成長し易くなり、単位格子数は4以上となる。
そして、上記の液相析出法により前記金属酸化物粒子の表面に形成されたハロゲン含有結晶相と前記触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合を有する触媒粒子を製造するに際しては、好ましくは、液相析出法の加水分解駆動反応の開始当初から、あるいは、その反応過程の途中で、反応系内に白金又は白金を含む白金合金からなる白金系金属の触媒金属前駆体化合物を共存させればよく、これによって金属酸化物粒子の表面の一部又は全部にハロゲン含有結晶相を形成させ、また、このハロゲン含有結晶相と前記触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合を有する触媒粒子を析出させ、触媒粒子を含む反応混合物溶液を得ることができる。
このようにして調製された触媒粒子を炭素担体に担持させて固体高分子形燃料電池用の触媒を調製する方法についても、特に制限されるものではなく、従来公知の触媒活性粒子を担持させる各種の方法を適用することができるが、触媒粒子が平均粒径3nm以上10nm以下の複合粒子であって凝集し易い性質を有するので、好ましくは、上で調製された触媒粒子を含む反応混合物溶液中に、所定の炭素担体を添加し、110℃以下、好ましくは室温(10℃)以上100℃以下の温度で保持し、次いで洗浄し、分離し、乾燥して炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を調製する方法等を例示することができる。この触媒調製の際に用いられる炭素担体は、特に制限されるものではなく、燃料電池の技術において従来公知のものを使用することができる。この炭素担体に触媒粒子を担持させる際の反応温度が110℃を超えると、触媒粒子が凝集し易くなり、得られた触媒の平均粒径が5nmを超えて大きくなる虞がある。
なお、このようにして得られた固体高分子形燃料電池用の触媒についても、従来から知られている方法と同様の方法で、固体高分子形燃料電池用の触媒層を形成し、また、この触媒層を用いて固体高分子形燃料電池を製造することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法をより具体的に説明する。
1.触媒粒子及び触媒の調製
本発明の触媒粒子、及びこの触媒粒子が炭素担体に担持された本発明の触媒を調製する以下の実施例及び比較例において、使用する各種ガラス器具やプラスチックビーカー等については、傷等がなく、充分に清浄化したものを使用し、また、白金(Pt)前駆体化合物としては、テトラアンミン白金(II)水酸化物水溶液を濃度0.05mol/Lとなるように蒸留水で希釈したものを使用し、また、ハロゲンイオン捕捉剤(フッ素捕捉剤)として用いるホウ酸については、ホウ酸を0.5mol/Lとなるように蒸留水で希釈したものを使用し、更に、有機溶媒としては、ポリエチレングリコール200又はポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)を使用した。
〔実施例1〜4:金属酸化物粒子がTiO2の場合〕
約500mL容量のプラスチック製ビーカー中に、触媒金属前駆体化合物として白金(Pt)前駆体化合物の0.05mol/L-テトラアンミン白金水酸化物水溶液(Pt前駆体溶液)250mLと、金属ハロゲノ錯体としてTi元素濃度0.05mol/Lの(NH4)2TiF6水溶液(Tiフルオロ錯体溶液)250mLとを仕込み、混合して得られた混合溶液を25℃で約3日間熟成させ、熟成後の混合溶液を得た。この際、攪拌速度を800rpmとし、混合溶液が白濁しないようにゆっくり撹拌しながら混合した。
次に、このようにして調製された熟成後の混合溶液8gを約200mL容量のプラスチック製ビーカー中に量り採り、このビーカー中に、有機溶媒として0.76gのポリエチレングリコール200を添加すると共に、ハロゲンイオン補足剤(フッ素捕捉剤)として濃度0.5mol/Lのホウ酸水溶液2〜4g〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC):5〜10〕 を添加し、 反応温度20℃で15時間保持して反応させ、チタン酸化物粒子(TiO2粒子)と白金粒子(Pt粒子)とが複合した微粒子(触媒粒子)を含む薄白色水溶液を得た。
更に、得られた触媒粒子を含む薄白色水溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.0893gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、得られた触媒粒子と炭素担体の分散溶液を十分に攪拌しながら、この分散溶液中に、還元剤として濃度0.10mol/LのNaBH4水溶液5mLを滴下し、撹拌下に25℃で6時間反応させ、未反応のPtを還元させた。その後引き続き、表1に示す触媒調製時の温度まで昇温させ、蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を得た。
〔実施例5〜8:金属酸化物粒子がSnO2の場合〕
初めに、SnO2粉末をHF水溶液に溶解させ、SnO2粉末が目視で確認されなくなるまで攪拌し、SnO2/HF水溶液を作成した。その後、Sn元素の濃度をICP発光分析装置で分析し、分析後に蒸留水で希釈し、Sn元素濃度が0.05mol/Lとなるように調整して、Sn元素濃度0.05mol/LのSnフルオロ錯体溶液を調製した。
このようにして調製されたSn元素濃度0.05mol/LのSnフルオロ錯体溶液250mLと、白金(Pt)前駆体化合物である濃度0.05mol/Lのテトラアンミン白金水酸化物水溶液(Pt前駆体溶液)250mLとを用い、上記実施例1〜4の場合と同様にしてこれらSnフルオロ錯体溶液とPt前駆体溶液との混合溶液を熟成させ、熟成後の混合溶液を得た。
次に、調製された熟成後の混合溶液8gを約200mL容量のプラスチック製ビーカー中に量り採り、このビーカー中に、有機溶媒として0.76gのポリエチレングリコール200を添加すると共に、フッ素捕捉剤として濃度0.5mol/Lのホウ酸水溶液2〜4g〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC):5〜10〕 を添加し、反応温度20℃で15時間保持して反応させ、スズ酸化物粒子(SnO2粒子)と白金粒子(Pt粒子)とが複合した微粒子(触媒粒子)を含む薄白色水溶液を得た。
更に、得られた触媒粒子を含む薄白色水溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.0893gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、得られた触媒粒子と炭素担体の分散溶液を十分に攪拌しながら、この分散溶液中に、還元剤として濃度0.10mol/LのNaBH4水溶液5mLを滴下し、撹拌下に25 ℃で6時間反応させ、未反応のPtを還元させた。その後引き続き、表1に示す触媒調製時の温度まで昇温させ、蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を得た。
〔実施例9〜12:金属酸化物粒子がNb25の場合〕
先ず、Nb25粉末をHF及びNH4Fの混合水溶液中に添加し、撹拌下にNb25粉末が目視で確認されなくなるまで溶解させ、Nb25/HF・NH4F水溶液を作成した。得られたNb25/HF・NH4F水溶液について、そのNb元素の濃度をICP発光分析装置で分析し、分析後に蒸留水で希釈し、Nb元素濃度が0.05mol/Lとなるように調整し、Nb元素濃度0.05mol/LのNbフルオロ錯体溶液を調製した。
このようにして調製されたNb元素濃度0.05mol/LのNbフルオロ錯体溶液250mLと、白金(Pt)前駆体化合物の0.05mol/L-テトラアンミン白金水酸化物水溶液(Pt前駆体溶液)250mLとを用い、上記実施例1〜4の場合と同様にしてこれらNbフルオロ錯体溶液とPt前駆体溶液との混合溶液を熟成させ、熟成後の混合溶液を得た。
次に、調製された熟成後の混合溶液8gを約200mL容量のプラスチック製ビーカー中に量り採り、このビーカー中に、有機溶媒として0.76gのTritonX-100を添加すると共に、フッ素捕捉剤として濃度0.5mol/Lのホウ酸水溶液2〜4g〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC):5〜10〕 を添加し、反応温度20℃で15時間保持して反応させ、ニオブ酸化物粒子(Nb2O5粒子)と白金粒子(Pt粒子)とが複合した微粒子(触媒粒子)を含む薄白色水溶液を得た。
更に、得られた触媒粒子を含む薄白色水溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.0893gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、得られた触媒粒子と炭素担体の分散溶液を十分に攪拌しながら、この分散溶液中に、還元剤として濃度0.10mol/LのNaBH4水溶液5mLを滴下し、撹拌下に25 ℃で6時間反応させ、未反応のPtを還元させた。その後引き続き、表1に示す触媒調製時の温度まで昇温させ、蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を得た。
〔実施例13〜16:金属酸化物粒子がHfO2の場合〕
先ず、HfO2粉末をHF及びNH4Fの混合水溶液中に添加し、撹拌下にHfO2粉末が目視で確認されなくなるまで溶解させ、HfO2/HF・NH4F水溶液を作成した。得られたHfO2/HF・NH4F水溶液について、そのHf元素の濃度をICP発光分析装置で分析し、分析後に蒸留水で希釈し、Hf元素濃度が0.05mol/Lとなるように調整し、Hf元素濃度0.05mol/LのHfフルオロ錯体溶液を調製した。
このようにして調製されたHf元素濃度0.05mol/LのHfフルオロ錯体溶液250mLと、白金(Pt)前駆体化合物の0.05mol/L-テトラアンミン白金水酸化物水溶液(Pt前駆体溶液)250mLとを用い、上記実施例1〜4の場合と同様にしてこれらHfフルオロ錯体溶液とPt前駆体溶液との混合溶液を熟成させ、熟成後の混合溶液を得た。
次に、調製された熟成後の混合溶液8gを約200mL容量のプラスチック製ビーカー中に量り採り、このビーカー中に、有機溶媒として0.76gのTritonX-100を添加すると共に、フッ素捕捉剤として濃度0.5mol/Lのホウ酸水溶液2〜4g〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC):5〜10〕 を添加し、反応温度20℃で15時間保持して反応させ、ハフニウム酸化物粒子(HfO2粒子)と白金粒子(Pt粒子)とが複合した微粒子(触媒粒子)を含む薄白色水溶液を得た。
更に、得られた触媒粒子を含む薄白色水溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.0893gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、得られた触媒粒子と炭素担体の分散溶液を十分に攪拌しながら、この分散溶液中に、還元剤として濃度0.10mol/LのNaBH4水溶液5mLを滴下し、撹拌下に25 ℃で6時間反応させ、未反応のPtを還元させた。その後引き続き、表1に示す触媒調製時の温度まで昇温させ、蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を得た。
〔実施例17〜20:金属酸化物粒子がTa25の場合〕
先ず、Ta25粉末をHF及びNH4Fの混合水溶液中に添加し、撹拌下にHfO2粉末が目視で確認されなくなるまで溶解させ、Ta25/HF・NH4F水溶液を作成した。得られたTa25/HF・NH4F水溶液について、そのTa元素の濃度をICP発光分析装置で分析し、分析後に蒸留水で希釈し、Ta元素濃度が0.05mol/Lとなるように調整し、Ta元素濃度0.05mol/LのTaフルオロ錯体溶液を調製した。
このようにして調製されたTa元素濃度0.05mol/LのTaフルオロ錯体溶液250mLと、白金(Pt)前駆体化合物の0.05mol/L-テトラアンミン白金水酸化物水溶液(Pt前駆体溶液)250mLとを用い、上記実施例1〜4の場合と同様にしてこれらTaフルオロ錯体溶液とPt前駆体溶液との混合溶液を熟成させ、熟成後の混合溶液を得た。
次に、調製された熟成後の混合溶液8gを約200mL容量のプラスチック製ビーカー中に量り採り、このビーカー中に、有機溶媒として0.76gのTritonX-100を添加すると共に、フッ素捕捉剤として濃度0.5mol/Lのホウ酸水溶液2〜4g〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC):5〜10〕 を添加し、反応温度20℃で15時間保持して反応させ、タンタル酸化物粒子(Ta2O5粒子 )と白金粒子(Pt粒子)とが複合した微粒子(触媒粒子)を含む薄白色水溶液を得た。
更に、得られた触媒粒子を含む薄白色水溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.0893gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、得られた触媒粒子と炭素担体の分散溶液を十分に攪拌しながら、この分散溶液中に、還元剤として濃度0.10mol/LのNaBH4水溶液5mLを滴下し、撹拌下に25 ℃で6時間反応させ、未反応のPtを還元させた。その後引き続き、表1に示す触媒調製時の温度まで昇温させ、蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を得た。
〔実施例21〜24:金属酸化物粒子がTiO2で触媒金属がPtとCo又はNiとの合金の場合〕
約500mL容量のプラスチック製ビーカー中に、白金(Pt)前駆体化合物の0.05mol/L-テトラアンミン白金水酸化物水溶液(Pt前駆体溶液)250mLと濃度0.05mol/Lの(NH4)2TiF6水溶液(Tiフルオロ錯体溶液)250mLとを装入して混合し、得られた混合溶液を25 ℃で約3日間熟成させ、熟成後の混合溶液を得た。この際、攪拌速度を800rpmとし、混合溶液が白濁しないようにゆっくり撹拌しながら混合した。
次に、このようにして調製された熟成後の混合溶液8gを約200mL容量のプラスチック製ビーカー中に量り採り、更にこのビーカー中には、混合溶液中に添加されたPt前駆体に対してモル比でPt:Co又はPt:Niが80:20若しくは70:30となるように、Co前駆体〔ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物 〕又はNi前駆体〔ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物 〕の溶液を加え、また、有機溶媒として0.76gのポリエチレングリコール200を添加すると共に、フッ素捕捉剤として濃度0.5mol/Lのホウ酸水溶液2〜4g〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC):5〜10〕 を添加し、反応温度20℃で15時間保持して反応させ、チタン酸化物粒子(TiO2粒子)と白金合金粒子(Pt・Co粒子又はPt・Ni粒子)とが複合した微粒子(触媒粒子) を含む薄白色水溶液を得た。
更に、得られた触媒粒子を含む薄白色水溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.0893gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、得られた触媒粒子と炭素担体の分散溶液を十分に攪拌しながら、この分散溶液中に、還元剤として濃度0.10mol/LのNaBH4水溶液5mLを滴下し、撹拌下に25 ℃で6時間反応させ、未反応のPtを還元させた。その後引き続き、表1に示す触媒調製時の温度まで昇温させ、蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を得た。
〔比較例1〕
触媒金属前駆体化合物の白金(Pt)前駆体化合物としてジニトロジアンミンPt硝酸塩を用いたこと以外は、前記実施例1〜4と同様に実施し、比較例1の触媒粒子と、この触媒粒子を用いた触媒を調製した。
〔比較例2及び3〕
ハロゲンイオン補足剤(フッ素補足剤)である濃度0.5mol/Lのホウ酸水溶液の使用量を5倍の16g(比較例2)又は32g(比較例3)としたこと以外は、前記実施例1〜4と同様に実施し、比較例2又は3の触媒粒子と、この触媒粒子を用いた触媒を調製した。
〔比較例4〕
触媒金属前駆体化合物の白金(Pt)前駆体化合物として用いた濃度0.05mol/Lのテトラアンミン白金(II)水酸化物水溶液における濃度を5倍の0.25mol/Lとしたこと以外は、前記実施例1〜4と同様に実施し、比較例4の触媒粒子と、この触媒粒子を用いた触媒を調製した。
〔比較例5〕
液相析出法を実施することなく、濃度0.05mol/Lのテトラアンミン白金(II)水酸化物水溶液を用いて、炭素担体の高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕にPt粒子を担持させたこと以外は、前記実施例1〜4と同様に実施し、比較例5の触媒粒子と、この触媒粒子を用いた触媒を調製した。
2.触媒粒子の物性評価
(1) 触媒粒子の粒径の算出方法
触媒粒子の粒径については、透過型電子顕微鏡(TEM;FEI社製Tecnai)により観察されたHAADF−STEM像を用いて算出した。
すなわち、上で得られた各実施例及び比較例の触媒約1mgを測り採り、10mLのエタノールで希釈し、超音波で1分間分散させて銅メッシュグリッドに滴下した。これを1晩真空乾燥させた後、サンプルホルダーにセットし、加速電圧200kVで、大きさ70nm×70nmの任意の視野を測定した。
この粒径の測定方法において、白金又は白金を含む白金合金からなる白金系金属の触媒活性粒子は輝点として観察され、また、この輝点の次に明るい約3〜5nm程度の領域が金属酸化物粒子の領域として観察され、触媒活性粒子が金属酸化物粒子の表面又は内部に存在していることが判明した。前記触媒活性粒子に由来する輝点と、金属酸化物粒子に由来する輝点の存在領域の縦方向と横方向の大きさを算出し、その縦方向の大きさと横方向の大きさとの平均値を1個の触媒粒子の粒径とし、この測定を70nm×70nmの任意の視野中において、それぞれ独立した触媒粒子を20個算出し、同様の操作を異なる70nm×70nmの視野で合計10回繰り返し、合計200個の触媒粒子の粒径を測定して平均粒径を算出した。
なお、触媒粒子の粒径については、以下の方法で求めてもよい。
すなわち、上で得られた各実施例及び比較例の触媒1mgを1cm×2cm程度のプラスチック製の容器に測り採り、ここにエポキシ樹脂を流し込んで1晩硬化させて硬化物を調製する。次いで、得られた硬化物について、ミクロトームを使用し、ダイヤモンドカッターで厚さ20〜60nmの範囲内で所定の厚さにスライスし、切り出された測定試料を銅メッシュグリッド上に担持させ、上記と同様に、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察されるHAADF−STEM像を用いて算出する方法である。
(2) 単位格子数の算出
単位格子数の算出は、透過型電子顕微鏡(TEM)のEDS分析によって算出される金属酸化物粒子中の金属Mの大きさを、各金属酸化物の1つの単位格子の大きさで除することで算出した。この際のTEM測定時の加速電圧を200kVとし、また、EDS測定により検出される特性X線についてはPtの場合にMα線を、Tiの場合にKα線を、また、Sn、Nb、Hf、及びTaの場合にLα線をそれぞれ使用して観察し、解析ソフトウェア(日本電子社製アナリシス ステーション)を用いて解析した。
すなわち、実施例1の場合、TiO2(アナターゼ型)の1つの単位格子の大きさはa=3.79Å及びc=9.51Åであるので、これらa及びcの平均値を算出し、単位格子のサイズを6.61Åと定義し、上記の「触媒粒子の粒径の算出方法」の際に観察された金属触媒粒子のHAADF−STEM像と同領域の3〜10nmの触媒粒子1個上でEDS線分析を実施し、その線分析で検出されるTi元素のピークの半値幅を算出し、この算出された半値幅の大きさ1.0nmを上で定義された単位格子のサイズ6.61Å(0.661nm)で除して単位格子数1と算出した。
また、実施例5の場合、SnO2の1つの単位格子の大きさはa=4.74Å及びc=3.19Åであるので、これらa及びcの平均値を算出し、単位格子のサイズを3.97Åと定義し、実施例1のTiO2の場合と同様に触媒粒子1個上でEDS線分析を実施し、その線分析で検出されるSn元素のピークの半値幅を算出し、この算出された半値幅の大きさ0.7nmを上で定義された単位格子のサイズ3.97Å(0.397nm)で除して単位格子数1と算出した。
以上の如き算出方法に準じて、実施例1〜24で得られた全ての触媒粒子中の金属酸化物粒子の単位格子数を算出した。
(3) X線光電子分光法(XPS)による〔(Pt-X)/(Pt-Pt)〕の算出
XPS測定は、JPS-9100〔日本電子(株)製〕を使用し、線源をAlとして15kVの条件で測定した。試料は、担体炭素に触媒粒子が担持された各実施例及び比較例の触媒を約2mmφのペレット状に成形し、当該試料の平滑面をXPSにより測定した。このXPS測定により算出されるPtの4f結合の内、最大のピーク面積となる4f7/2に対して、ローレンチアンにてフィッティングして波形分離を行い、72eV付近に得られるピークをPt-Pt結合と定義し、また、Pt-Pt結合よりも高エネルギー側に測定される73eV付近のピークをPt-X結合と定義し、Pt-F結合のピーク面積をPt-Pt結合の面積で除することで、XPSにより算出される比〔(Pt-X)/(Pt-Pt)〕の値とした。
3.触媒層、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)の調製
上記各実施例及び比較例で調製した固体高分子形燃料電池用の触媒を用い、また、アイオノマー溶液として5質量%-ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を用い、アルゴン気流中で触媒の質量に対してナフィオン固形分の質量が1.2倍になるようにアイオノマー溶液を加え、軽く撹拌した後、超音波で触媒を粉砕し、次いで撹拌下に触媒とナフィオンとを合わせた固形分濃度が2質量%となるように酢酸ブチルを添加し、触媒層を調製するための触媒層スラリーを作製した。
このようにして調製された触媒層スラリーをスプレー法でテフロン(登録商標)シートの片面に塗布し、80℃のアルゴン気流中10分間、続いて120℃のアルゴン気流中1時間乾燥し、固体高分子形燃料電池用の触媒層シートを得た。なお、それぞれの触媒層シートの調製時にはPt又はPt合金の使用量が0.10mg/cm2となるようにスプレー等の条件を設定し、このPt又はPt合金の使用量は、スプレー塗布前後のテフロン(登録商標)シートの乾燥質量を測定し、その差から計算して求めた。
次に、各実施例及び比較例の触媒を用いて調製した触媒層シートから2.5cm角の大きさの触媒層を2枚づつ切り出し、各触媒層が電解質膜(ナフィオン112)と接触するように2枚の触媒層の間に電解質膜を挟み込み、130℃、90kg/cm2の条件で10分間ホットプレスを行った。室温まで冷却した後、テフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥がし、アノード及びカソードの触媒層を電解質膜に定着させた。更に、市販のカーボンクロス(ElectroChem社製EC-CC1-060)から2.5cm角の大きさのカーボンクロス2枚を切り出し、電解質膜に定着させたアノード及びカソードの触媒層を挟み込むように配置し、130℃、50kg/cm2の条件で10分間ホットプレスを行い、MEAを作製した。
4.固体高分子形燃料電池用触媒の性能評価
以上のようにして作製した各実施例及び比較例のMEAについて、セルに組み込んで燃料電池測定装置にセットし、次の手順で燃料電池の電池性能を評価した。
カソード側に空気を、また、アノード側に純水素を、1000mA/cm2の発電に必要なガス量を100%として利用率がそれぞれ40%と70%となるように供給した。ガス圧は0.1MPaとし、また、セル温度は80℃とした。
先ず、供給する空気と純水素を、各々80℃に保温された蒸留水中でバブリングし加湿した。次に、上記条件でセルにガスを供給した後、200mA/cm2まで負荷を徐々に増加し、200mA/cm2に達した時点で負荷を固定し、10分経過後のセル端子間の電圧を測定した。
固体高分子形燃料電池用の触媒の性能については、このようにして測定されたセル電圧で評価し、このセル電圧が高いほど、触媒、すなわち触媒粒子の電池性能に優れている。
結果を表1に示す。
実施例1〜24においては、セル電圧が0.720V以上で、顕著な発電性能を示した。
また、耐久試験として、電圧を0.6Vにして4秒間保持した後に1.0Vにして4秒保持するサイクルを200回繰り返す耐久試験を実施し、その後、耐久試験前と同様に電池性能を測定した。
結果は、実施例1〜24においては何れもセル電圧が0.70以上を示し、比較例1〜5の場合における耐久試験前のセル電圧や、耐久試験後の電圧を上回った。
1…触媒粒子、2…触媒活性粒子、3…金属酸化物粒子、3a…ハロゲン含有結晶相、d…粒子径。

Claims (16)

  1. 白金又は白金を含む白金合金からなる触媒活性粒子と、前記触媒活性粒子を構成する金属以外の金属Mの金属酸化物粒子とが複合した触媒粒子であり、
    前記金属酸化物粒子の表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相が形成されており、また、この金属酸化物粒子の前記ハロゲン含有結晶相と前記触媒活性粒子の少なくとも一部との間にPt-X結合(但し、Xはハロゲン原子である。)が存在することを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  2. 前記触媒粒子は、平均粒径が3〜10nmであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  3. 前記触媒粒子は、3個以下の単位結晶格子からなる金属酸化物粒子の表面に、平均粒径0.3〜3nmの触媒活性粒子が分散した状態で担持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  4. 前記触媒活性粒子が白金原子からなる平均粒径0.3〜3nmの白金粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  5. 前記触媒粒子において、X線光電子分光法(XPS)により求められるPt-Pt結合とPt-X結合との比〔(Pt-X)/(Pt-Pt)〕が0.05〜0.5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  6. 前記金属酸化物粒子のハロゲン含有結晶相と前記触媒活性粒子との間に存在するPt-X結合がPt-F結合であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  7. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Fe、Ge、Nb、Mo、Ru、Pd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、及びBiからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  8. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Mo、Sn、Hf、及びTaからなる群から選ばれた金属であることを特徴とする請求項7に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  9. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti及び/又はSnであることを特徴とする請求項8に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  10. 前記請求項1〜9のいずれかに記載された固体高分子形燃料電池用の触媒粒子が炭素担体に担持されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒。
  11. 白金又は白金を含む白金合金からなる触媒活性粒子と、前記触媒活性粒子を構成する金属以外の金属Mの金属酸化物粒子とが複合した固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を製造するための方法であって、
    前記金属酸化物粒子の金属Mの金属ハロゲノ錯体についての加水分解平衡反応と、前記金属ハロゲノ錯体よりもより安定な金属ハロゲノ錯体を形成するハロゲンイオン捕捉剤を添加して前記金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法により、表面の一部又は全部に金属ハロゲン化合物からなるハロゲン含有結晶相を有する金属酸化物粒子を形成し、
    また、前記液相析出法の反応系内に白金又は白金を含む白金合金からなる白金系金属の触媒金属前駆体化合物を共存させ、前記金属酸化物粒子の表面に、この金属酸化物粒子との間の少なくとも一部にPt-X結合(但し、Xはハロゲン原子である。)を有する触媒活性粒子を析出させることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  12. 前記触媒活性粒子が白金原子からなる白金粒子であることを特徴とする請求項11に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  13. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Fe、Ge、Nb、Mo、Ru、Pd、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Ir、及びBiからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする請求項11又は12に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  14. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Mo、Sn、Hf、及びTaからなる群から選ばれた金属であることを特徴とする請求項13に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  15. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Snからなる群から選ばれた金属であることを特徴とする請求項14に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  16. 前記金属ハロゲノ錯体のハロゲン原子XがFであり、前記金属酸化物粒子と前記触媒活性粒子との間に存在するPt-X結合がPt-F結合であることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
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