JP2017035408A - 光音響センサー及び電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体レーザーと、圧電素子及びダイアフラムを有するセンサー部と、を組み合わせることで高感度での検出を行う光音響センサー及び電子機器等を提供する。【解決手段】光音響センサー10は、対象物に対して光を照射する光源部100と、光によって対象物から発生した光音響信号を受信するセンサー部200を含み、光源部100は、半導体レーザー110を有し、センサー部200は、圧電素子270とダイアフラム250とを含む超音波センサー210を有する。【選択図】図7
Description
本発明は、光音響センサー及び電子機器等に関する。
従来、光音響効果を利用したセンシング装置が知られている。特に、近年のレーザーの進歩に伴い、光音響効果を利用したイメージング装置が医療分野で盛んに研究されてきている。従来では造影CTやMRI、PETといった非常に高価で、大掛りな医療イメージング装置でしか実現されてこなかったFunctional imagingが、この光音響イメージングで可能になりつつある。このFunctional imagingとは、単純X線や超音波といった信号を基に画像化した解剖学的なイメージングではなく、代謝情報や成分等を画像化する機能的なイメージングを指す。
例えば、特許文献1では検出した光音響信号をデコンボリューション(逆たたみ込み)することで、実用的な装置において吸収分布画像(光音響画像)を生成する手法が開示されている。
また、イメージング装置以外の装置に光音響効果を利用する手法も知られている。例えば特許文献2では、成分濃度測定において光音響効果を利用する手法が開示されている。
しかしながら、生体に照射してよい光強度が定められていることもあり、光音響効果を利用した手法では信号強度が非常に微弱である。そのため、従来のイメージング装置は、固体レーザーをベースとした光源部等を用いて実験レベルで実現されつつある状況である。
また、光源部やセンサー部をどのような構成とするにせよ、光出力信号により発生した光音響信号を効率よくセンシングする(センシングの感度を高くする)ことが非常に重要である。しかし、特許文献1は、光音響信号がコンボリューションによる(たたみ込みが行われた)信号である場合において、デコンボリューションを行うことで適切な信号を出力しようとするものであり、センシング感度を考慮したものではない。また、高感度の検出のための光源部及びセンサー部の組み合わせを開示するものでもない。
また、特許文献2は成分濃度測定を想定しており、イメージング装置ではない上に、センシング感度を考慮したものではない。
本発明の幾つかの態様によれば、半導体レーザーと、圧電素子及びダイアフラムを有するセンサー部と、を組み合わせることで高感度での検出を行う光音響センサー及び電子機器等を提供できる。
本発明の一態様は、対象物に対して光を照射する光源部と、前記光によって前記対象物から発生した光音響信号を受信するセンサー部と、を含み、前記光源部は、半導体レーザーを有し、前記センサー部は、圧電素子とダイアフラムとを含む超音波センサーを有する光音響センサーに関係する。
本発明の一態様では、注入する電流により光の出力信号の制御が容易な半導体レーザーと、特定の周波数において他の周波数に比べて高い感度を有する共振型のセンサー部と、を組み合わせることができる。これにより、効率的に高感度での検出を行うこと等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記光源部は、パルス信号を出力するパルス信号出力部と、前記パルス信号に対してフィルター処理を行うフィルター回路と、を有してもよい。
これにより、パルス信号に対してフィルター処理を行うことで、半導体レーザーに対する入力信号を柔軟に制御すること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記フィルター回路は、第1の周波数特性と、第2の周波数特性を可変に設定可能な回路であってもよい。
これにより、フィルター回路の特性を可変にできるため、光源部が出力する光の出力信号を可変とすること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記フィルター回路は、第1の対象物の測定用の第1の光を照射する場合は、前記第1の周波数特性に設定され、第2の対象物の測定用の第2の光を照射する場合は、前記第2の周波数特性に設定されてもよい。
これにより、対象物に応じてフィルター回路の周波数特性を切り替えることができ、対象物に適した光を照射することで高感度での検出を行うこと等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記フィルター回路は、LC共振フィルター回路であってもよい。
これにより、LC共振フィルター回路により本実施形態のフィルター回路を実現すること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記フィルター回路である前記LC共振フィルター回路は、キャパシターが可変に設定可能であってもよい。
これにより、LC共振フィルター回路のキャパシターを可変とすることで、フィルター回路の周波数特性を可変とすることが可能になる。
また、本発明の一態様では、前記パルス信号出力部は、第2のパルス信号を生成するパルス信号生成部と、前記第2のパルス信号の電圧を増幅して前記パルス信号を生成する電圧増幅部と、を有してもよい。
これにより、第2のパルス信号を増幅することで上記パルス信号を生成することができ、パルス信号としてパルス幅が短く、且つ出力が大きい信号を用いること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記半導体レーザーは、複数のレーザーユニットを有し、前記フィルター回路の出力ノードと電源ノードとの間に、前記複数のレーザーユニットのうちの少なくとも2つのレーザーユニットが、直列に接続されてもよい。
これにより、半導体レーザーが複数のレーザーユニットを有する場合に、半導体レーザー全体としてのインピーダンスを大きくしやすくすること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記センサー部は、前記超音波センサーとして、第1の超音波センサーと、前記第1の超音波センサーとは受信感度周波数帯域の異なる第2の超音波センサーと、を有してもよい。
これにより、特性の異なる複数の超音波センサーを用いることができるため、センサー部の受信感度周波数帯域を柔軟に設定すること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、第1の対象物を測定する場合は、前記第1の超音波センサーにより前記光音響信号を受信し、第2の対象物を測定する場合は、前記第2の超音波センサーにより前記光音響信号を受信してもよい。
これにより、対象物に応じてセンサー部の周波数特性を切り替えることができ、対象物に適した受信感度周波数帯域を用いることで高感度での検出を行うこと等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記センサー部は、前記超音波センサーとして、受信感度周波数帯域の異なる第1の超音波センサーと第2の超音波センサーと、を有し、第1の対象物を測定する場合は、前記第1の周波数特性に設定された前記フィルター回路に基づいて前記第1の光を照射して、前記第1の超音波センサーにより前記光音響信号を受信し、第2の対象物を測定する場合は、前記第2の周波数特性に設定された前記フィルター回路に基づいて前記第2の光を照射して、前記第2の超音波センサーにより前記光音響信号を受信してもよい。
これにより、対象物に応じてフィルター回路の周波数特性、及びセンサー部の周波数特性を切り替えることができ、対象物に適した光の照射、及び受信感度周波数帯域の使用により、高感度での検出を行うこと等が可能になる。
また、本発明の他の態様は、上記の光音響センサーを含む電子機器に関係する。
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.本実施形態の手法
光音響自体の発見は非常に古いものである。短いパルス幅の光を対象物に照射することで、対象物は光吸収量、比熱、体積膨張率等の特性に応じて膨張し、その膨張の際に圧力が発生するため、当該圧力により光音響信号(音響波)が生じる。つまり、短いパルス幅の光(パルスレーザー)の照射と、当該光に基づく光音響信号の検出を行うことで、光音響効果を利用した対象物のセンシングを行うことが可能になる。光音響効果については後述する。
光音響自体の発見は非常に古いものである。短いパルス幅の光を対象物に照射することで、対象物は光吸収量、比熱、体積膨張率等の特性に応じて膨張し、その膨張の際に圧力が発生するため、当該圧力により光音響信号(音響波)が生じる。つまり、短いパルス幅の光(パルスレーザー)の照射と、当該光に基づく光音響信号の検出を行うことで、光音響効果を利用した対象物のセンシングを行うことが可能になる。光音響効果については後述する。
しかし、光音響効果を利用した装置では、種々の要因によりセンシング感度(検出信号の強度)を高くすることが容易でない。例えば、光は対象物内部(狭義には生体内)での散乱の影響が非常に大きいことが知られている。そのため、生体の比較的深い位置まで観察対象とするようなイメージング装置では、対象物に到達するまでの光の減衰度合いが大きく、高感度での観察が困難である。
後述するように、対象物で発生する光音響信号は、対象物で吸収される光の強度に比例するため、光源部が照射する光強度が強ければ、発生する光音響信号の強度も大きくできる。しかし、観察対象が生体であれば、当該生体の損傷を抑止するために国際規格により照射可能な強度が制限される。例えば、IEC(International Electrotechnical Commission)のレーザー規格であるIEC60825等で規格化がされている。
従来見られるイメージング装置では、このような規格等による制限の中で、できるだけ高出力な光源部を用いることで、対象の観察を試みている。例えば、マンモグラフィーに用いられるイメージング装置が研究されているが、マンモグラフィーでは乳房内の皮膚に近い浅い位置から、深い位置まで、腫瘍(癌)の有無を判定できなくてはならない。つまり、深い位置にあり、光散乱による信号強度の減衰度合いが大きい領域を対象としても充分な信号強度を確保する必要があり、光源部は高出力であることが求められる。具体的には、光源部として固体レーザーを含むものが用いられる。
固体レーザーでは一般的に光出力信号(光出力の時間変化を表す信号、波形)は図1に示したようにガウシアン形状となることが知られている。なお、図1ではパルス幅が20nsecのガウシアン波形を示している。後述するように、所与の条件が満たされる理想的な状況では、光音響信号は光出力信号の微分値に比例する信号となるため、図1のガウシアン形状の光出力信号の場合、発生する光音響信号の時間変化は図2の波形に比例したものになる。図2は図1の微分値の波形である。
図2の信号をFFTしたものが図3のA1である。図3の横軸が周波数(Hz)、縦軸が強度(ピークでの強度を1に正規化)を表し、図3は発生する光音響信号の周波数特性であると考えてよい。A1からわかるように、ガウシアン形状の光出力信号の場合、対象物で発生する光音響信号は広帯域となる。例えば、ピークに対する相対強度が0.8以上となる周波数帯域は約20MHz〜60MHzとなる。つまり、固体レーザーを用いた場合、発生する光音響信号は数十MHz程度のオーダーの範囲で充分な強度を有する広帯域での信号となる。
また、図3のA2〜A4は光音響信号のパルス幅を変化させた場合の周波数特性を表し、A1がパルス幅が20nsecの場合の周波数特性であり、A2が10nsec、A3が50nsec、A4が100nsecの場合の周波数特性である。図3からわかるように、パルス幅に応じて発生する光音響信号の特性が変化するが、いずれにせよ、ガウシアン形状の光出力信号を用いた場合、光音響信号はMHz〜数十MHz程度の周波数帯域で充分な信号強度を有する広帯域信号となる。
光音響信号(超音波)は、図30を用いて後述するようにセンサー部に到達するまでの間に減衰し、ピークの周波数が低周波側にシフトすることになる。そして、そのシフト量は伝搬距離に依存する。そのため、上述したマンモグラフィーの例のように浅い領域から深い領域までを観察対象とした場合、発生した光音響信号の低周波側へのシフト量も小さいものから大きいものまで考慮しなくてはならない。
結果として、光音響効果を利用した従来のイメージング装置では、センサー部は広帯域の信号(超音波信号)を受信可能であることが求められる。そのため、一例としてはPVDF(PolyVinylidene DiFluoride)等の広帯域に感度を有するセンサーが用いられる。図4のB1がPVDFを用いた場合のセンサー感度の周波数特性を表す。図4からわかるように、PVDFを用いることで広帯域に感度を有するセンサー部を実現できるため、上述の例のようにセンサー部に到達する信号の帯域が広い場合にも適切なセンシングが可能となる。
しかし、このような光源部とセンサー部との組み合わせにはいくつか問題点がある。第1に固体レーザーは高出力が可能な反面、サイズが非常に大きく、高価である。そのため、イメージング装置全体も非常に大型になるため、移動が難しく、作業性が悪い。さらに、大容量ファイバーを用いた導波が必須であることによる作業性、信頼性の低さも問題となる。また、増幅媒質に光ファイバーを使ったファイバーレーザーは、結晶を用いる一般的な固体レーザーに比べて小型、安価であるが、後述する半導体レーザーに比べればやはり大型且つ高価であり、大容量ファイバーを用いた導波が必須であるという課題も解決されない。
また第2の課題としては、PVDF等のセンサーは広帯域ではあるが感度が低いという点が挙げられる。図4のB2は図11〜図13を用いて後述するダイアフラム250を有する共振型のセンサーの周波数特性である。共振型センサーはダイアフラム構造の固有振動数により周波数特性が決定されるため、図4からわかるように感度を有する周波数帯域は狭いが、特定の周波数(共振周波数)での感度を非常に高くすることができる。このような共振型のセンサーに比べて、PVDFは感度が相対的に低くなってしまう。
つまり、従来手法は広帯域の光音響信号がセンサー部に到達することが前提であり、当該光音響信号を広帯域のセンサー部で検出することを考慮していた。しかし近年、半導体レーザーの高出力化が進んでいる。例えば、数十Aの電流を入力することで100W程度の出力が可能な半導体レーザーも見られるようになった。半導体レーザーは非常に小型であり、価格も固体レーザーに比べて安価である。さらに、信頼性も高いため扱いが容易な装置を実現できるという利点がある。
半導体レーザーは、高出力になったといっても100W程度であり、キロWオーダーでの出力が可能な固体レーザーに比べれば出力が低い。そのため、高感度でのセンシングを行うためには、固体レーザーを単純に半導体レーザーに置き換えただけでは充分とは言えない。
そこで本出願人は、発生する光音響信号の周波数帯域と、センサー部の受信感度周波数帯域を対応させる手法を提案する。例えば、センサー部として、図4のB2に示したように、特定の周波数(図4であればFs)で高い感度を有するセンサーを利用する。このようにした場合、当該センサー部に到達する光音響信号の周波数が、Fsにある程度近い周波数であれば、高感度での信号検出が可能となる。言い換えれば、出力する光が固体レーザーに比べて弱く、対象物で発生する光音響信号の強度も弱い場合であっても、センサー部での検出を充分な感度で行うことが可能になる。例えば、センサー部に到達する光音響信号の周波数がFsとなる理想的な状況であれば、センシング感度をPVDFを用いる場合の8〜9倍程度とすることができる。そのため、半導体レーザーの出力が固体レーザーより弱いことで、発生する光音響信号の強度が相対的に低下したとしても、当該低下分をセンサー部の特性により、ある程度カバーすることが可能になる。
その場合、センサー部に到達する光音響信号の周波数特性(周波数帯域)を制御すること、具体的には対象物で発生する光音響信号の周波数特性を制御することが必要になる。式(2)を用いて後述するように、対象物で発生する光音響信号の周波数特性は、光源部の光出力信号の周波数特性に依存するため、光出力信号の制御ができればよい。この点を考慮すると、光源部として半導体レーザーを用いることが、サイズや価格とはまた異なる利点を生む。具体的には、半導体レーザーの光出力信号は、当該半導体レーザーに入力する電流により容易に制御可能であるという点である。従来手法のような固体レーザーでは光出力信号は図1のガウシアン形状であり、他の形状へ変化させる制御が容易でなかったが、半導体レーザーであれば当該半導体レーザーへの入力信号、及び当該入力信号に基づく光出力信号を後述するフィルター回路130等で容易に制御することができる。
なお、特許文献1や特許文献2のように、光音響効果を用いたセンシング手法は種々知られているが、発生する光音響信号とセンサー部の周波数特性の関係を考慮するものや、半導体レーザーと共振型センサーの組み合わせによる構成を開示しているものは見られない。
本実施形態に係る光音響センサー10は、図5に示したように、対象物20に対して光を照射する光源部100と、光によって対象物20から発生した光音響信号を受信するセンサー部200を含み、光源部100の光の出力信号(以下、光出力信号と記載)の微分値の周波数帯域が、センサー部200の受信感度周波数帯域に対応する帯域となっている。
ここでの「対応する帯域」とは、例えば一方の周波数帯域が特定された場合に、当該周波数帯域に基づいて他方の周波数帯域が特定される関係を表すものである。一例としては、センサー部200の設計(例えば後述する開口部245のサイズ等の設計)により受信感度周波数帯域が所与の範囲に決定された場合に、当該受信感度周波数帯域に基づいて、光出力信号の微分値の周波数帯域が設定される。具体的には、受信感度周波数帯域に基づいて、光出力信号の条件が決まるため、当該条件を満たすように光源部100が構成される。或いは、光源部100の設計により、光出力信号が決定され、それにより光出力信号の微分値の周波数帯域が決定された場合に、当該周波数帯域に基づいて、センサー部200のパラメーター(開口部245のサイズ)が設定されてもよい。つまり、本実施形態において周波数帯域が「対応する帯域となっている」とは、結果として2つの周波数帯域の対応関係が所与の条件を満たしていればよく、具体的な設計順序等は種々の変形実施が可能である。もちろん、周波数帯域の対応関係は設計段階で満たす必要はなく、光源部100及びセンサー部200の少なくとも一方のパラメーターを可変に構成しておき、光音響センサー10を動作させながら、適切なパラメーター設定を行うことで周波数帯域を対応させてもよい。
図6は、本実施形態の手法を説明する模式図である。従来手法では、センサー部200の受信感度周波数帯域C1に対して、例えば光音響信号の周波数帯域がC2のように対応していない状態となっており、効率的なセンシングができない。それに対して、本実施形態では、図6のC1、C3に示したように、光音響信号の周波数帯域と、センサー部200の受信感度周波数帯域を対応させることで、効率的なセンシングが可能となる。
ここで、センサー部200の受信感度周波数帯域とは、センサー部200の受信感度が所与の感度閾値以上となる周波数帯域を表す。また、光出力信号、すなわち光出力の時間変化波形(後述する図28のH2に比例する波形)を微分した波形(図29のI1に比例する波形)も、特定の周波数成分のみから構成されるのではなく、ある程度の周波数の範囲にわたって強度を有する。よって、光出力信号の微分値の周波数帯域についても、当該微分値を周波数解析した際に、所定強度以上となる周波数の範囲を考えればよい。
また、高感度でのセンシングを行うためには、対象物20で発生した光音響信号がセンサー部200に到達した際の周波数帯域と、センサー部200の受信感度周波数帯域が重なることが重要である。その際、光出力信号の微分値の周波数帯域とは、あくまで対象物20で発生する光音響信号に比例するものであって、実際にはセンサー部200に到達するまでの伝搬により周波数帯域の低周波側へのシフトが起こる。つまり、ここでの周波数帯域の対応関係は、当該低周波側へのシフトを考慮した関係とするとよい。
具体的には、光の出力信号の微分値の周波数帯域は、センサー部200の受信感度周波数帯域に比べて高い帯域である。
ここで光出力信号の微分値の周波数帯域がf1以上f2以下の範囲であってピーク周波数がf3であり、受信感度周波数帯域がf4以上f5以下の範囲であってピーク周波数がf6である場合に、帯域同士の高低関係は種々の考え方が可能である。例えば、ピーク周波数同士を比較して、f3>f6であることをもって光出力信号の微分値の周波数帯域は、センサー部200の受信感度周波数帯域に比べて高い帯域であると考えてもよい。或いは、端点同士を比較してf1>f4且つf2>f5を条件としてもよいし、f1>f4又はf2>f5を条件としてもよい。或いは低周波側端点と高周波側端点を比較してf1>f5を条件としてもよい。より具体的には、光の出力信号の微分値の周波数帯域を決定するフィルター共振周波数Ffと、センサー部200の受信感度周波数帯域を決定するセンサー部200の共振周波数Fsとが、後述するようにFf−Fs=α(αは所与の定数)の関係を満たすものであってもよい。
いずれにせよ、光出力信号の微分値の周波数帯域を相対的に高い帯域としておけば、センサー部200までの伝搬により光音響信号が減衰し、図30に示すような低周波側へのシフトが起きる状況において、センサー部200に到達する光音響信号の周波数帯域と、受信感度周波数帯域が重なる状態を実現でき、高感度でのセンシングが可能になる。
また、本実施形態では図7に示すように、光源部100は、半導体レーザー110を有し、センサー部200は、圧電素子270とダイアフラム250とを含む超音波センサー210(超音波センサーデバイス)を有してもよい。
このようにすれば、光源部100を小型化でき、且つコストを抑えることが可能になる。さらに、半導体レーザー110は光出力信号の制御が容易であるため、光出力信号と受信感度周波数帯域を対応させることが容易なシステム(光音響センサー10、或いは電子機器)を実現できる。さらに、圧電素子270とダイアフラム250を含む超音波センサー210は、図4のB2に示したように特定の周波数での感度が非常に高いため、周波数帯域を対応させることで効率的に高感度でのセンシングが可能な光音響センサー10等を実現することが可能になる。
以下、光音響効果の概要を説明した後、本実施形態に係る光音響センサー10のシステム構成例を説明する。さらに、光音響信号の周波数帯域とセンサーの受信感度周波数帯域を対応させるための具体的な手法を説明し、最後に変形例について説明する。なお、以下では生体内部のイメージングを想定して説明を行うが、対象物は生体内部の組織に限定されるものではない。
2.光音響効果の概要
光音響効果の原理について簡単に説明する。光音響効果とは、光エネルギーを吸収した分子が熱を放出し、熱による膨張により光音響信号(音響波)を発生する現象である。具体的には、発生する圧力pと、対象物で吸収される光エネルギーIとは下式(1)の関係を満たす。下式(1)は光音響の波動方程式であり、波が拡散波であり、無限遠で0になるという境界条件で積分解を求めることで下式(2)が取得される。下式(1)、(2)において、vは音速、βは体積膨張率、Cは比熱、r’は熱付与領域、rは検出位置、Vは熱付与領域の体積を表す。
光音響効果の原理について簡単に説明する。光音響効果とは、光エネルギーを吸収した分子が熱を放出し、熱による膨張により光音響信号(音響波)を発生する現象である。具体的には、発生する圧力pと、対象物で吸収される光エネルギーIとは下式(1)の関係を満たす。下式(1)は光音響の波動方程式であり、波が拡散波であり、無限遠で0になるという境界条件で積分解を求めることで下式(2)が取得される。下式(1)、(2)において、vは音速、βは体積膨張率、Cは比熱、r’は熱付与領域、rは検出位置、Vは熱付与領域の体積を表す。
上式(2)からわかるように、圧力p(t)は、対象物I(t)の時間微分値に比例する。なお、実際には、図8に示すように対象物のサイズと発生する超音波の波長との関係によっては、p(t)はI(t)の微分値ではなく、波形が鈍る可能性はある。
光は超音波に比べて非常に高速であるため、生体に対して照射された光は、生体内部のあらゆる領域に対して時間差無しに伝搬すると考えても差し支えない。照射した光を吸収する特性を有する対象物が図8のD1のように光音響信号(超音波)の波長に比べて充分小さければ、当該対象物に吸収された光出力信号の微分値に比例する超音波が当該対象物から放出され、センサー部200に到達して検出されると考えてよい。
しかし、D2のように対象物が超音波の波長に比べてある程度大きい場合、対象物のうちの異なる複数の位置において、吸収した光エネルギーの微分波形に対応する超音波が発生することになる。具体的には、対象物のうち、光の入射側に近い第1の位置D3では、比較的強いエネルギーの光が吸収されることで、振幅値の大きい超音波が発生する。そして、第1の位置D3での吸収や光散乱が生じるため、第1の位置D3に比べて光源部100から遠い第2の位置D4では、吸収可能な光エネルギーが小さくなり、D3に比べて振幅の小さい超音波が発生する。同様に、D2に示した対象物内での位置が光源部100から離れるほど、発生する超音波の振幅は小さいものとなる。なお、ここでは説明の便宜上、光音響信号の発生位置として離散的な位置を用いたが、実際には連続的に考えるとよい。
上述したように、光は対象物の全領域に時間差なく伝搬すると考えてよいため、図8のD2に示した比較的大きい対象物では、振幅及び発生位置の異なる複数の超音波が時間差なく発生すると考えられる。結果として、D2に示した対象物では、図8のD5に示したように複数の微分波形がたたみ込まれた超音波が発生していると考えることができる。たたみ込みにより、中間的な位置で発生した超音波は正負が打ち消し合うことになり、センサー部200で観測される超音波は例えば図8のD6のようになる。なお、D5,D6はともに横軸が時間を表し、縦軸が信号強度を表す。このように、たたみ込みまで考えれば光音響信号は吸収された光エネルギーの微分値そのものとはならない可能性がある。さらに言えば、図8では吸収される光エネルギーが光源部100からの距離に応じてきれいに減少(D2の光吸収係数に従った指数関数D7に従って単調減少)するものとしているが、光散乱を考慮すれば現実的にはここにも誤差が生じる。
ただし、検出対象が毛細血管である場合等のように、対象物が超音波の波長よりも充分小さいと考えられる状況で光音響センサー10を用いることは可能である。また、本実施形態における高感度でのセンシングは、図6のC1,C3に示したように周波数帯域同士がある程度の対応関係を持てば充分であり、例えばピーク周波数同士を厳密に一致させるような細かい制御までは不要である。以上を踏まえ、以下の本明細書では発生する超音波(光音響信号)が、吸収される光エネルギーの微分値に比例するものとして説明を行う。
なお、上述したように、光音響信号は対象物が吸収する光エネルギーIに比例するものである。そのため、検出したい対象物(標的物質)の光吸収の特性も重要となる。例えば、物質ごとに光の波長に対する吸光係数、すなわち光吸収スペクトルの特性が異なることが知られている。よって、所与の物質が第1の波長λ1での吸光係数が大きく、第2の波長λ2での吸光係数が小さい場合、λ1の光の照射に対しては強い超音波が発生する一方、λ2の光の照射に対しては発生する超音波が弱くなる。光音響効果を利用したセンシングでは、対象物(標的物質)固有の吸収波長の光パルスを選択的に照射し、光吸収によって標的物質から発生する光音響信号である超音波をセンサー部200で検出することになる。
ここでの「光の波長」とは、光が電磁波の形で伝搬する際の波長(振動周波数に対応する波長)であり、紫外光、可視光、赤外光等を決定する波長である。光出力信号の微分値の周波数(周波数帯域)とは、光出力の時間変化を表す波形を微分し、当該微分結果を表す時間変化波形の周波数特性(例えばFFTの結果)を表すものであって、光の波長とは異なる概念である点に注意を要する。
標的物質固有の吸収波長の光パルスを選択的に照射する例を図9に示す。図9のE1に示すように、酸化ヘモグロビンHbO2と、還元ヘモグロビンHbとでは光吸収スペクトルが異なる。比較的長い波長であるλ1の光を照射した場合、当該光での吸光係数は酸化ヘモグロビンHbO2の方が大きいため、発生する超音波の強度(例えば電圧値V1)は血管中の酸化ヘモグロビンの量を表す指標値となる。同様に、比較的短い波長であるλ2の光を照射した場合、当該光での吸光係数は還元ヘモグロビンHbの方が大きいため、発生する超音波の強度(例えば電圧値V2)は血管中の還元ヘモグロビンの量を表す指標値となる。そのため、V1/(V1+V2)は酸化ヘモグロビンの比率を表す指標値、すなわち血中酸素飽和度SpO2に相関を持つ値となる。つまり、光音響効果を用いて酸素飽和度の情報を得ることが可能になる。その他、標的物質の有無や濃度の検出等を行う際に、光の波長を選択することは特許文献2等にも開示されている手法である。
以下、光の波長については本実施形態に係る手法の本質ではないため、対象物20をセンシングするに当たって適切な光の波長が選択され、光源部100から照射されているものとして説明を行う。
3.システム構成例
図10は本実施形態に係る光音響センサー10の詳細な構成例である。図10に示したように、光音響センサー10は光源部100と、センサー部200を含む。光源部100は、パルス信号出力部120と、フィルター回路130と、半導体レーザー110を含み、パルス信号出力部120は、パルス信号生成部121と、電圧増幅部123を含む。ただし、光音響センサー10は、図10の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図10は本実施形態に係る光音響センサー10の詳細な構成例である。図10に示したように、光音響センサー10は光源部100と、センサー部200を含む。光源部100は、パルス信号出力部120と、フィルター回路130と、半導体レーザー110を含み、パルス信号出力部120は、パルス信号生成部121と、電圧増幅部123を含む。ただし、光音響センサー10は、図10の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
なお、図10は光音響センサー10の各部の入出力信号の概要を示す図でもある。上述してきたように、本実施形態に係る光音響センサー10のセンサー部200では、G1に示したように、受信感度周波数帯域に対応する周波数帯域の光音響信号を受信したい。そのため、G2に示したように、光出力信号も所望の周波数特性とする必要がある。そして、当該光出力信号を出力するために、半導体レーザー110にはG3に示したようにG2に比例する電圧を印加することになる。本実施形態の光音響信号の光源部100では、G3に示した信号を生成するために、G4に示した比較的高電圧のパルス信号を、フィルター回路130でフィルター処理を行うものとする。また、G4に示した比較的高電圧のパルス信号を生成するために、G5に示した比較的低電圧のパルス信号(第2のパルス信号)を生成、増幅する。以下、光音響センサー10の各部について説明する。
光源部100は、対象物20に対して光を照射する。具体的には、光源部100は半導体レーザー110を有し、当該半導体レーザー110から出力される光を照射する。照射される光の波長(振動周波数、発光色)はバンドギャップのエネルギー差に基づいて決定される。言い換えれば、対象物20の光吸収スペクトルに基づいて、当該対象物20に適した光の波長を特定し、当該波長の光を放出可能な半導体レーザー110を用いればよい。
また、半導体レーザー110は電流が供給されることで(電圧が印加されることで)光を出力するため、光源部100は、電流供給用の構成を有する。具体的には、図10に示したようにパルス信号を出力するパルス信号出力部120と、当該パルス信号に対するフィルター処理を行うフィルター回路130を含む。半導体レーザー110が出力する光の強度の時間変化波形(光出力信号)は、印加される電圧の時間変化波形に比例する。そのため、フィルター回路130の出力を制御することで、光出力信号を制御可能となる。
なお、上述したように光音響効果を利用するためには、パルス信号のパルス幅はnsecオーダーの短い時間とする必要がある。また、半導体レーザー110で高出力を実現するためには高電流(例えば数十A)を供給する必要がある。つまり光源部100では、大出力且つ高速動作が求められる。そのため、パルス信号出力部120は、パルス信号生成部121と、電圧増幅部123を含むとよい。光源部100の各部の詳細については後述する。
図11〜図13に、センサー部200を構成する超音波センサー210の構成例を示す。センサー部200は、1又は複数の超音波センサー210を含み、狭義には複数の超音波センサー210をアレイ状に配置することでセンサー部200を実現してもよい。
超音波センサー210は、ダイアフラム(振動膜、メンブレン、支持部材)250と圧電素子270とを有する。圧電素子270は、第1電極層(下部電極)221、圧電体層(圧電体膜)230、第2電極層(上部電極)222を有する。
図11は、基板(シリコン基板)260に形成された超音波センサー210の、素子形成面側の基板260に垂直な方向から見た平面図である。図12は、図11のA−A’に沿った断面を示す断面図である。図13は、図11のB−B’に沿った断面を示す断面図である。
第1電極層221は、ダイアフラム250の上層に例えば金属薄膜で形成される。この第1電極層221は、図11に示すように素子形成領域の外側へ延長され、隣接する超音波センサー210に接続される配線であってもよい。
圧電体層230は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)薄膜により形成され、第1電極層221の少なくとも一部を覆うように設けられる。なお、圧電体層230の材料は、PZTに限定されるものではなく、例えばチタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO3)などを用いてもよい。
第2電極層222は、例えば金属薄膜で形成され、圧電体層230の少なくとも一部を覆うように設けられる。この第2電極層222は、図11に示すように素子形成領域の外側へ延長され、隣接する超音波センサー210に接続される配線であってもよい。
ダイアフラム250は、例えばSiO2薄膜とZrO2薄膜との2層構造により開口240を塞ぐように設けられる。このダイアフラム250は、圧電体層230及び第1、第2電極層221、222を支持すると共に、光音響信号(超音波信号)を受信することで振動し、当該振動を圧電体層230を伝達する。圧電体層230(圧電素子270)はダイアフラム250の振動に従って伸縮し、電気信号を発生させることができる。
開口240は、基板260(シリコン基板)の裏面(素子が形成されない面)側から反応性イオンエッチング(RIE)等によりエッチングすることで形成される。この開口240の開口部245のサイズによって超音波の共振周波数が決定される。すなわち、図11〜図13に示した超音波センサー210をセンサー部200として利用した場合に、当該センサー部200は上記共振周波数で高い感度を有する。
超音波センサー210の下部電極(第1電極)は、第1電極層221により形成され、上部電極(第2電極)は、第2電極層222により形成される。具体的には、第1電極層221のうちの圧電体層230に覆われた部分が下部電極を形成し、第2電極層222のうちの圧電体層230を覆う部分が上部電極を形成する。即ち、圧電体層230は、下部電極と上部電極に挟まれて設けられる。
このように、センサー部200は、光音響信号である超音波信号を受信する超音波センサー210を有し、センサー部200の受信感度周波数帯域は、超音波センサー210の共振周波数を含む帯域である。
このようにすれば、センサー部200として、特定の周波数に感度を有する共振型のセンサーを利用することが可能になる。そのため、光音響効果による光音響信号(より具体的には対象物20で発生後、センサー部200に到達した状態での光音響信号)の周波数と、センサー部200の共振周波数を対応させることで、高感度での検出が可能になる。図11〜図13の構成であれば、共振周波数は開口部245のサイズにより設定できるため、所望の周波数が共振周波数となるようなサイズの開口部245を用いればよい。
また、本実施形態の手法は光音響センサー10に適用するものには限定されない。例えば、本実施形態の手法は図14に示したように、上記の光音響センサー10を含む電子機器に適用することができる。電子機器は、光音響センサー10と、処理部11と、記憶部12と、表示部13を含む。ただし、電子機器は図14の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
処理部11は、光音響センサー10の検出信号(センサー部200による超音波の検出信号)に基づいて、種々の処理を行う。一例としては、光音響信号の検出結果に基づいて、画像を形成する処理を行ってもよい。また、処理部11は、光音響センサー10の光源部100の制御や、表示制御等の処理を行ってもよい。この処理部11の機能は、各種プロセッサ(CPU等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
記憶部12は、処理部11等のワーク領域となるもので、その機能はRAM等のメモリーやHDD(ハードディスクドライブ)などにより実現できる。記憶部12は、光音響信号の検出結果や、制御用情報等、種々の情報を記憶する。
表示部13は、各種の表示画面を表示するためのものであり、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどにより実現できる。表示部13は、例えば処理部11で形成された画像の表示を行う。
本実施形態に係る電子機器の具体例は種々考えられるが、例えば生体内部の観察(イメージング)を行うための機器であってもよい。その場合、観察対象となる(対象物20として設定される)生体は各部の血管や腫瘍等、種々の対象を想定することが可能である。
4.周波数帯域の設定手法
次に光出力信号の周波数帯域の設定手法を説明する。具体的には、光源部100の各部の詳細について説明する。
次に光出力信号の周波数帯域の設定手法を説明する。具体的には、光源部100の各部の詳細について説明する。
上述したように、光源部100は、パルス信号を出力するパルス信号出力部120と、パルス信号に対してフィルター処理を行うフィルター回路130を有する。そして、フィルター回路130の周波数特性により、光出力信号の微分値の周波数帯域が、センサー部200の受信感度周波数帯域に対応する帯域に設定される。
光音響イメージングでは、光(励起光)は光出力が大きいこと、且つ、光出力の立ち上がり、立ち下がり時間が短い必要がある。具体的には、大出力(数10〜数100A)、高速動作(数10〜数100nsのパルス幅)が求められる。これはアナログ増幅器では実現が難しいため、デジタル増幅器を用いることが望ましい。
このようなパルス信号を出力するために、パルス信号出力部120は、パルス信号生成部121と、電圧増幅部123を含んでもよい。具体的な構成を図15に示す。パルス信号生成部121は、第2のパルス信号を生成し、電圧増幅部123は当該第2のパルス信号の電圧増幅を行う。
具体的には、パルス信号生成部121はゲートドライバーであり、電圧増幅部123は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を含むデジタル増幅器であってもよい。電圧増幅部123は、第1のMOSFET124と、第2のMOSFET125を含む。第1のMOSFET124と、第2のMOSFET125は、第1の電源電圧VDDが供給される第1電源ノードP1と、第2の電源電圧VSSが供給される第2の電源ノードP2との間に設けられる。第1のMOSFET124と、第2のMOSFET125との間に電圧増幅部123の出力ノードP3が設けられる。出力ノードP3及び第2の電源ノードP2は、フィルター回路130の入力ノードに接続され、フィルター回路130に対して増幅後のパルス信号を出力する。
ゲートドライバー(パルス信号生成部121)は、第1のMOSFET124と、第2のMOSFET125のそれぞれのゲート端子に接続され、各MOSFETのオンオフ、具体的にはソースドレイン間に電流が流れるか否かを制御する。ゲートドライバーは、第2のパルス信号として、nsecオーダーで高電位(HIGH)となり、他の時間で低電位(LOW)となる正パルス信号を第1のMOSFET124のゲート端子に供給するとともに、nsecオーダーで低電位(LOW)となり、他の時間で高電位(HIGH)となる負パルス信号を第2のMOSFET125のゲート端子に供給する。
第1の電源電圧VDDを高電圧(例えば数十V)とすれば、出力ノードP3にはnsecオーダーのパルス幅であり、且つ高出力のパルス信号が出力されることになる。なお、第2の電源ノードP2には第2の電源電圧VSSが供給されるが、VSSは例えばグラウンドとすればよい。また、望ましいパルス幅については、フィルター回路130の説明の際に後述する。
しかし、MOSFETを用いた増幅回路の場合、当該MOSFETの出力は矩形波となる。矩形波には、比較的低い周波数の成分から、立ち上がり立ち下がり部分に相当する比較的高い周波数の成分まで含まれるため、このままではセンサー部200が感度を有する周波数との対応が不十分である。そのため、パルス信号出力部120の出力をそのまま半導体レーザー110に供給するのではなく、特定の周波数成分を強調(増幅)するためのフィルター回路130を設けるとよい。
ここでのフィルター回路130は、フィルター共振周波数において、ゲインが1より大きい周波数特性を有するものである。なお、フィルター回路130の入力が、ゲイン倍だけされて出力されることを想定しており、ゲインが1であれば入力と出力の強度が等しいことを表す。
すなわち、本実施形態におけるフィルター回路130とは、フィルター共振周波数を有する共振回路であり、フィルターの共振を利用することで、所望の周波数成分の強度が高い電圧を半導体レーザー110に印加し、それにより所望の周波数成分の強度が高い(所望の周波数成分が増幅された)光出力信号を出力することが可能になる。
言い換えれば、光の出力信号の微分値の周波数帯域は、フィルター回路130のフィルター共振周波数によって設定されることになる。光出力信号の微分値の周波数帯域は、上式(2)等を用いて上述したように、光を吸収した対象物20で発生する光音響信号の周波数帯域に対応する。そのため、フィルター共振周波数により、対象物20で発生する光音響信号の周波数帯域を制御可能となる。
フィルター回路130は、LC共振フィルター回路であってもよい。具体例を図16に示す。フィルター回路130は、図16に示したように、コイルLfと、キャパシターCfを含むLCローパスフィルターであってもよい。LCローパスフィルターのフィルター共振周波数は、コイルのインダクタンスLと、キャパシターの容量Cに基づいて、下式(3)により決定される。
そのため、所望のフィルター共振周波数が決定されたら、当該フィルター共振周波数を実現するようにLとCの値を設定すればよい。具体的には、Lとして10nH、Cとして100nF程度の値を利用してもよい。この場合、10nHという低いL値を実現することは難しいため、基板の寄生インダクタンス(配線のインダクタンス)を利用してフィルター回路130を構成してもよい。
LCローパスフィルターの周波数特性を図17に示す。図17からわかるように、LCローパスフィルターは、フィルター共振周波数Ffにおいて比較的大きいゲインを有するため、所望の周波数成分を効率的に強調することが可能である。
なお、所望の周波数でのゲインを相対的に高くするのであれば、ハイパスフィルターやバンドパスフィルターを用いてもよい。ただし、ハイパスフィルターやバンドパスフィルターはDC成分がカットされAC成分が出力されるため、出力が負電圧となる期間がある。半導体レーザー110は、負電圧が印加されると破壊されるため、ハイパスフィルターやバンドパスフィルターの出力をそのまま半導体レーザー110に出力することで、半導体レーザー110が破壊されるおそれがある。もちろん、バイアス電圧を利用する等、ハイパスフィルターやバンドパスフィルターの出力で半導体レーザー110を動作させることは可能であるが、破壊を抑止するための構成を追加する必要が生じるため、その点でDC成分をカットしないローパスフィルターの方が有利である。
図17では、フィルター共振周波数Ffでのゲインが大きくなるLCローパスフィルターの周波数特性を示した。しかし、本実施形態の構成では、フィルター回路130の出力側には、半導体レーザー110が接続される。半導体レーザー110は、図18に示す等価回路のように、抵抗RLD(及びキャパシターCLD)を有する回路であると考えることができる。つまり、フィルター回路130と半導体レーザー110の等価回路は図19に示したようになる。なお、実際の半導体レーザー110は後述するように図18の等価回路を複数組み合わせたものとなる。
図19に示した回路では、LCローパスフィルターのキャパシターCfと、半導体レーザー110の抵抗RLDとが並列に接続される。そのため、Cfのインピーダンスが、RLDのインピーダンスに比べて大きい場合には、電流はLCローパスフィルターのLfから半導体レーザー110の抵抗RLDに流れてしまい、キャパシターCfに流れなくなってしまう。この場合、LCローパスフィルターの共振が利用できず、フィルター共振周波数Ffで高いゲインを得ることができない。これは、半導体レーザー110の抵抗RLDがダンピング抵抗としてはたらき、LCローパスフィルターの共振がダンピングされていると考えることもできる。
図20は、共振がダンピングされた場合のLCローパスフィルターの周波数特性である。図20からわかるように、この場合にはフィルター共振周波数Ffでのゲインは1(0dB)よりも小さくなり、所望の周波数成分を強調することができない。
よって本実施形態では、発振時(発振状態)における半導体レーザー110のインピーダンスは、フィルター共振周波数Ffにおけるフィルター回路130のキャパシターCfのインピーダンスに比べて大きいものとする。このようにすれば、図16に示したようにフィルター共振周波数Ffでのゲインが1より大きくなるような周波数特性を有するフィルター回路130を実現でき、センサー部200での高感度での光音響信号の検出が可能になる。
図21に示したように、電圧増幅部123(スイッチとして機能するMOSFET)のインピーダンスをZSW、フィルター回路130のコイルのインピーダンスをZL、キャパシターのインピーダンスをZC、半導体レーザー110のインピーダンスをZLDとする。この場合の、各インピーダンスの大小関係によるフィルター回路130の周波数特性の変化を示したものが図22、図23である。図22、図23からわかるように、フィルター共振周波数Ffでのゲインを大きくするには、ZC<ZLDを満たす必要がある。
なお、このような関係は半導体レーザー110のインピーダンスZLD(実質的に抵抗RLDの抵抗値と同視することが可能)を大きくすることでも実現可能である。しかし、半導体レーザー110は電流が注入されることで光を発生するものであるため、抵抗RLDの抵抗値が過剰に大きいことは考えにくい。よって、所望の周波数(フィルター共振周波数Ff)でのゲインを高くするためには、フィルター回路130に含まれるキャパシターCfのインピーダンスを調整することが望ましい。
また、半導体レーザー110は、図18の等価回路で表される1つの素子(レーザーユニット)では出力が低いため、当該レーザーユニットをアレイ化して使用するとよい。その場合、アレイ化の際の接続も種々の手法が考えられる。
ここで、レーザーユニットとは、半導体レーザー110における光の出力単位を表す。半導体レーザー110では、一般的にpn接合領域の両端から電子と正孔を加え、それらの再結合時にバンドギャップに相当するエネルギーの光を放出する。よって、レーザーユニットとは、1つのpn接合領域(及び当該pn接合領域に電圧を印加するための配線や電極等)に対応する素子である。
例えば、図24に示すように、フィルター回路130の出力と、電源ノード(ここでは第2の電源電圧VSSが供給されるノード)との間に、複数のレーザーユニットを並列に接続する手法が考えられる。しかし、本実施形態ではこのような接続は好ましくない。なぜなら、複数のレーザーユニットを並列に接続した場合、半導体レーザー110全体で考えたときの抵抗値は、各レーザーユニットの抵抗値を並列接続したものとなるため、1つのレーザーユニットの抵抗値に比べて小さいものとなってしまう。
上述したように、フィルター回路130のキャパシターCfのフィルター共振周波数Ffでのインピーダンスに比べて、半導体レーザー110の抵抗RLDの抵抗値は大きいことが望ましいところ、並列接続により抵抗値が小さくなることで、LC共振フィルター回路の共振がダンピングされる可能性がある。
図25は1つのレーザーユニットを用いた場合のフィルター回路出力の周波数特性であり、図26は2つのレーザーユニットを並列に接続した場合のフィルター回路出力の周波数特性である。図25、図26の比較からわかるように、複数のレーザーユニットを並列接続することでフィルター共振周波数でのゲインは低くなってしまう。
よって本実施形態では、図27に示したように、フィルター回路130の出力ノードP4と電源ノードP5との間に、複数のレーザーユニットのうちの少なくとも2つのレーザーユニット(図27では111及び112)が、直列に接続される。
このようにすれば、半導体レーザー110全体として見たときのインピーダンス(抵抗値)は、各レーザーユニットのインピーダンスの和となる。そのため、半導体レーザー110のインピーダンスが、フィルター共振周波数Ffでのフィルター回路130のキャパシターCfのインピーダンスより大きい、という条件を満たすことが容易となる。言い換えれば、フィルター共振周波数Ffでのゲインを高くすることが容易となる。なお、複数のレーザーユニットの合成インピーダンス(半導体レーザー110全体のインピーダンス)を大きくすることを考慮すれば、半導体レーザー110が3つ以上のレーザーユニットを含む場合、できるだけ多くのレーザーユニットを直列接続することが望ましく、狭義には全てのレーザーユニットが直接接続されることが望ましい。
以上のように、フィルター回路130を用いることで、パルス信号のうち、フィルター共振周波数Ffにおける成分を強調する(1より大きいゲインで増幅する)ことが可能になる。後段でこのようなフィルター処理が行われることに鑑みれば、パルス信号出力部120が出力するパルス信号のパルス幅についても、望ましい条件が出てくる。
具体的には、パルス信号出力部120は、フィルター共振周波数Ffに対応する共振周期T(T=1/Ff)の1/2に対応する長さをパルス幅とするパルス信号を出力するとよい。図28は、入力するパルス信号と、当該パルス信号をフィルター処理した信号の関係を示す図である。
図28のH1がフィルター共振周期Tの1/2のパルス幅のパルス信号であり、H2が当該パルス信号のフィルター処理後の波形である。図28からわかるように、T/2のパルス幅のパルス信号に対して、フィルター共振周波数Ffでのゲインが1より大きいフィルター処理を行うことで、フィルター処理後の波形はフィルター共振周波数Ffに対応する正弦波の1波長分に近い波形となる。具体的には、正弦波の信号値が増加する期間においてパルス信号が供給され、正弦波の信号値が減少する期間においてはパルス信号の供給が停止しているため、効率的にフィルター共振周波数Ffの正弦波に近い波形を形成することが可能になる。
これに対して、パルス信号のパルス幅がT/2よりも小さいと、正弦波がピークに達する前にパルス信号の供給が停止してしまうため、フィルター出力(及びそれに伴う光出力信号)の出力(振幅)は、パルス幅がT/2の場合に比べて低下してしまう。この点で、パルス幅はT/2未満よりもT/2であることが望ましい。
また、図28のH3がT/2よりも長いパルス幅のパルス信号であり、H4が当該パルス信号のフィルター処理後の波形である。上述したように、フィルター回路130はフィルター共振周波数Ffでの成分を増幅するものであるため、フィルター処理後の波形は、フィルター共振周波数Ffの正弦波に近づこうとする。そのため、フィルター出力(及びそれに伴う光出力信号)は、T/2の時間経過後は減少傾向に転ずる。T/2よりも長いパルス幅のパルス信号を入力した場合、フィルター出力は減少しようとしているのに、パルス信号の入力が継続している状態となるため、H4に示したような波形となる。具体的には、振幅のピークはH2と同様でありながら、H2に比べて振幅の減少が遅く、波形は正弦波からの乖離が大きくなる。
図28のH2とH4を比較すればわかるように、パルス幅をT/2よりも長くしても、光出力信号の強度(振幅、縦軸のピーク)は変化しない。半導体レーザー110を用いる場合、素子の熱的な破壊を抑止するためにはできるだけパルス幅を小さくすることが求められる。つまり、パルス幅をT/2よりも長くした場合、半導体レーザー110の破壊の可能性が高まる、消費電力が増加するといったデメリットが生じるにもかかわらず、図28に示したように光出力信号の強度に対する寄与がない。この点で、パルス幅をT/2より長くした場合に比べてT/2である場合の方が有利である。
また、パルス幅がT/2よりも長い場合、波形が鈍るという問題もある。図29はH2及びH4の微分波形である。I1がH2の微分波形に対応し、I2がH4の微分波形に対応する。上述してきたように、I1,I2は対象物20で発生する光音響信号に比例する信号である。I1からわかるように、パルス幅がT/2である場合には、光出力信号の微分波形も正弦波に近い。つまり、所望の周波数成分が適切に増幅されており、センサー部200の感度周波数帯域との対応関係が明確である。それに対して、I2は波形が鈍っており正弦波との乖離が大きい。つまり、所望の周波数成分以外の成分もある程度の強度を有しており、センサー部200の感度周波数帯域との対応関係が適切でない、言い換えればセンサー部200での共振(ダイアフラム250の共振)を効率的に利用できないということになる。つまりセンサー部200の共振周波数との関係においても、パルス幅をT/2より長くした場合に比べてT/2である場合の方が有利である。
ただし、パルス信号出力部120が出力するパルス信号のパルス幅は、T/2に限定されるものではなく、多少の値の変動があってもよい。例えば、所与のパルス幅変動閾値thを設定し、パルス幅をT/2−th以上、T/2+th以下の範囲のいずれかの値としてもよい。
以上で説明したように、光出力信号の微分値の周波数帯域はフィルター共振周波数Ffにより制御可能であり、センサー部200の受信感度周波数帯域は共振周波数Fs(ダイアフラム250の共振周波数、固有振動数)により制御可能である。
ここで、光出力信号の微分値の周波数帯域は、対象物で発生する光音響信号の周波数帯域に対応する。そのため、仮に発生した光音響信号が周波数特性を変化させずにセンサー部200まで到達するのであれば、フィルター共振周波数Ffと、センサー部200の共振周波数Fsが一致するように設定を行えばよい。
しかし上述したように、光音響信号(超音波信号)は、伝搬とともに減衰し、且つ周波数が高いほど減衰度合いが大きいという特性を有する。そのため、対象物で発生した光音響信号は、センサー部200へ到達するまでに高周波成分が削られ、そのピークが低周波側へシフトする。さらに、そのシフト量は伝搬距離が長くなるほど大きくなる。
図30に、伝搬距離の差による周波数特性の差を示す。図30のJ1が皮膚からの深さが1mmの対象物を検出対象とした場合のセンサー部200で検出される光音響信号の周波数特性を表し、J2が皮膚からの深さが30mmの対象物を検出対象とした場合のセンサー部200で検出される光音響信号の周波数特性を表す。縦軸は強度を表し、ピークでの強度を1に正規化している。また、皮膚表面からの深さは対象物からセンサー部200までの伝搬距離を表すものと考えてよい。J1,J2からわかるように、伝搬距離が長いほど、ピークとなる周波数が低くなる。図30では、発生時の超音波の周波数特性は、J1とJ2で共通としているため、図30からは伝搬距離が長いほど、ピークの低周波側へのシフト量が大きくなることがわかる。
この点を考慮し、フィルター共振周波数は、センサー部200の共振周波数Fsに比べて高い周波数とするとよい。どの程度高い周波数とするかは、検出対象である対象物20とセンサー部200との距離に応じて決定すればよい。生体の例であれば、皮膚表面からの深さに応じて周波数を設定すればよく、対象物20がより深い位置となるほど、フィルター共振周波数Ffを、センサー部200の共振周波数Fsに比べてより高い周波数とすればよい。
5.変形例
以上に示した手法により、光源部100から出力される光出力信号の周波数帯域(発生する光音響信号に対応する光出力信号の微分値の周波数帯域)の制御、及びセンサー部200の受信感度周波数帯域の制御が可能になる。しかし、図30を用いて上述したように、対象物20で発生した光音響信号が、センサー部200に到達するまでの減衰に生じる低周波側へのシフト量は、伝搬距離に応じて異なるものである。
以上に示した手法により、光源部100から出力される光出力信号の周波数帯域(発生する光音響信号に対応する光出力信号の微分値の周波数帯域)の制御、及びセンサー部200の受信感度周波数帯域の制御が可能になる。しかし、図30を用いて上述したように、対象物20で発生した光音響信号が、センサー部200に到達するまでの減衰に生じる低周波側へのシフト量は、伝搬距離に応じて異なるものである。
そのため、センサー部200から遠い距離にある(例えば皮膚表面から深い位置にある)対象物20を観察対象とする場合には、シフト量が大きいために、フィルター回路130のフィルター共振周波数Ffとセンサー部200の共振周波数Fsとの差をある程度大きくする必要がある。一方、センサー部200から近い距離にある(浅い位置にある)対象物20を観察対象とする場合には、シフト量が小さいために、フィルター回路130のフィルター共振周波数Ffとセンサー部200の共振周波数Fsとの差は、深い位置の対象物20を検出対象とする場合に比べて小さくする必要がある。
仮に、所定の深さにある生体だけを観察対象とすればよい場合のように、対象物20の伝搬距離が所定値にほぼ固定される場合には、光音響信号の低周波側へのシフト量は、所与の値、或いは当該値に充分近い値を考えればよい。よってFfとFsとの関係は、多少の誤差は許容されるが、所与の固定値αを用いておおむねFf−Fs=αとなるようにすればよい。
しかし、図31を用いて後述するように、伝搬距離が異なる複数の対象物20を検出対象とする場合、第1の伝搬距離にある第1の対象物で発生した第1の超音波と、第2の伝搬距離にある第2の対象物で発生した第2の超音波とでは、減衰に伴う低周波側へのシフト量が異なる。第2の対象物の方が深いため、第1の超音波のシフト量<第2の超音波のシフト量となる。具体的な状況としては、皮膚表面に近い生体と、ある程度深い位置の生体の両方を観察可能な光音響センサー10を実現する場合、或いは上述したマンモグラフィー等のように、どのような深さにあるか未知である対象物(腫瘍等)をサーチするための光音響センサー10を実現する場合等が考えられる。
よって、第1の対象物を検出対象とする場合には、Ff−Fs=αとなるようにFf,Fsを設定する必要があるし、第2の対象物を検出対象とする場合には、Ff−Fs=β(β≠αであり、ここではβ>α)となるようにFf,Fsを設定する必要がある。この場合、フィルター共振周波数Ff及びセンサー部200の共振周波数Fsの両方を1つの値で固定したのでは、Ff−Fsが固定値となるため上記条件が満たされない。
以上を踏まえ、本実施形態に係るフィルター回路130は、第1の周波数特性と、第2の周波数特性を可変に設定可能な回路であってもよい。上述したように、光源部100の光出力信号(狭義には半導体レーザー110の出力信号)は、フィルター回路130の周波数特性により制御が可能である。よって、フィルター回路130の周波数特性を可変に設定可能であれば、光出力信号の周波数帯域(光出力信号の微分値の周波数帯域)と、センサー部200の受信感度周波数帯域の満たすべき関係が複数通りあったとしても、それらに広く適応可能となる。
上記の例であれば、第1の対象物を検出対象とする場合には、フィルター共振周波数Ff1をFf1=Fs+αとし、第2の対象物を検出対象とする場合には、フィルター共振周波数Ff2をFf2=Fs+βとすればよい。なお、ここではセンサー部200の共振周波数はFsで固定でよく、所与の共振周波数を有する1種の超音波センサーを複数の対象物の検出において利用可能である。
図10等を用いて上述してきたように、フィルター回路130の出力は半導体レーザー110に入力され、当該入力に基づいて半導体レーザー110から照射される光の出力信号が決定される。つまり、フィルター回路130の周波数特性の制御とは、検出対象である対象物に応じて、異なる光を照射するための制御であると考えられる。言い換えれば、フィルター回路130は、第1の対象物の測定用の第1の光を照射する場合は、第1の周波数特性に設定され、第2の対象物の測定用の第2の光を照射する場合は、第2の周波数特性に設定されるものである。
ここで、フィルター回路130の周波数特性が可変に設定可能とは、具体的には当該フィルター回路130のフィルター共振周波数Ffが可変であることに相当する。そのため、フィルター回路130として、図16に示したようなLC共振フィルター回路を用いる場合、フィルター共振周波数Ffは上式(3)となるため、コイルのL値又はキャパシターのC値を可変にすればよい。
その際、コイルのL値は非常に小さく、配線のインダクタンス(寄生インダクタンス)により実現する可能性もあることから、制御が容易であるのはキャパシターのC値である。つまり、フィルター回路130であるLC共振フィルター回路は、キャパシターが可変に設定可能であることが望ましい。
具体的な回路構成例を図32に示す。図32に示すように、フィルター回路130は、コイルLfと、当該コイルLfの一端及び、第2の電源電圧VSSが供給されるノードP6との間に、複数のキャパシターCf1及びCf2が並列に接続される。コイルLfの一端及びノードP6との間では、Cf1と第1の切替スイッチSW1とが直列に接続される。また、コイルLfの一端及びノードP6との間では、Cf2と第2の切替スイッチSW2とが直列に接続される。SW1及びSW2には、共振周波数の調整用信号が入力され、そのオンオフが制御される。
そのため、SW1をオン、SW2をオフとすれば、フィルター回路130はLfとCf1によるLCローパスフィルターとなり、Cf1の容量によりフィルター共振周波数Ffが決定される。同様に、SW1をオフ、SW2をオンとすれば、フィルター回路130はLfとCf2によるLCローパスフィルターとなり、Cf2の容量によりフィルター共振周波数Ffが決定される。さらに、SW1とSW2の両方をオンとすれば、フィルター回路130はLfと、Cf1及びCf2の合成キャパシターとによるLCローパスフィルターとなり、Cf1とCf2の合成容量によりフィルター共振周波数Ffが決定される。なお、ここでは2つのキャパシターのオンオフによる3通りのフィルター共振周波数Ffの変更例を示したが、用いるキャパシターを3つ以上とすることで、より多くのフィルター共振周波数を設定可能にしてもよい。
共振周波数の調整用信号をどのように制御するかは種々の実施形態が考えられる。例えば、対象物20の深さが未知である場合等には、フィルター共振周波数を変えながらセンサー部200でのセンシングを行い、センサー出力が最も大きくなるフィルター共振周波数を採用してもよい。上記の例であれば、Cf1を用いたセンシング、Cf2を用いたセンシング、Cf1とCf2の合成キャパシターを用いたセンシングの3パターンを試行し、そのうちの最もセンサー出力(例えば出力電圧のピーク値)が大きかったものを採用すればよい。
或いは、あらかじめ伝搬距離(対象物20の深さ)が明らかな場合には、当該伝搬距離に応じて最適なフィルター共振周波数Ffをあらかじめ設定してもよい。伝搬距離が長ければフィルター共振周波数Ffが高くなるキャパシターを選択し、伝搬距離が短ければフィルター共振周波数Ffが低くなるキャパシターを選択する。例えば、CTやMRI、超音波画像等、他の手法により対象物20の深さ(位置)を測定し、その後本実施形態の光音響センサー10を用いる場合等であれば、伝搬距離は既知となる。一例としては、腫瘍のサーチをCT等で行い、その後の継続観察において、簡便に利用可能な本実施形態に係る光音響センサー10を利用するといった形態が考えられる。
なお、ここでは伝搬距離の異なる複数の対象物を検出対象とする場合を想定して、キャパシターのC値を可変に設定可能な手法を説明した。しかし、キャパシターを可変に設定することは異なる利点も有する。例えば、上述したようにLC共振フィルター回路のコイルLfのL値は寄生インダクタンスにより実現することがある。その場合、L値の厳密な設計は容易でないし、回路構成(或いは具体的な回路動作状態)によっては他の配線を流れる電流に基づく相互インダクタンスによりL値が決定される場合もある。つまり、フィルター回路130の動作時に、L値が設計と異なる値となっている可能性があり、その場合上式(3)で表されるフィルター共振周波数Ffは所望の値とならない。よって、本実施形態ではキャパシターのC値を可変としておくことで、L値の誤差によるフィルター共振周波数Ffの変動を抑制するものとしてもよい。言い換えれば、L値の変動によるフィルター共振周波数Ffの変動をキャンセルするために、C値を可変に設定してもよい。
また、以上ではフィルター回路130の周波数特性を可変とする手法、言い換えれば照射する光の特性を可変とする手法について説明した。しかし、伝搬距離の異なる複数の対象物を検出対象とするには、FfとFsの関係が複数通りに設定可能であればよく、変更対象はFfではなくセンサー部200(超音波センサー210)の共振周波数Fsであってもよい。
具体的には、センサー部200は図33に示すように、超音波センサー210として、第1の超音波センサー211と、当該第1の超音波センサー211とは受信感度周波数帯域の異なる第2の超音波センサー212と、を含むものであってもよい。さらに具体的には、第1の超音波センサー211の共振周波数Fs1と、第2の超音波センサー212の共振周波数Fs2が異なるものであってもよい。上述したように、超音波センサーの共振周波数はダイアフラム250(狭義には開口部245のサイズ)により設定可能である。
第1の対象物を測定する場合は、第1の超音波センサー211により光音響信号を受信し、第2の対象物を測定する場合は、第2の超音波センサー212により光音響信号を受信する。
上記の例であれば、第1の対象物を測定する場合には、Fs1=Ff−αとなる共振周波数Fs1の第1の超音波センサー211を用いればよいし、第2の対象物を測定する場合には、Fs2=Ff−βとなる共振周波数Fs2の第2の超音波センサー212を用いればよい。なお、ここではフィルター共振周波数はFfで固定でよく、所与のフィルター共振周波数を有する1種のフィルター回路130を複数の対象物の検出において利用可能である。
なお、対象物20の深さ(伝搬距離)によらず、複数の超音波センサーを常時動作させれば、対象物20に応じた超音波センサーの切替は不要なようにも思える。しかし、光音響効果を利用したセンシングでは、情報量が非常に多く、A/D変換処理等の負荷や、検出データを記憶するための記憶容量(メモリー量)も大きくなってしまう。
超音波を出力し、当該超音波の反射波を検出するような一般的な超音波センシングでは、信号の有無、或いは信号の強弱のみの情報(広義には時間軸上での信号)でもある程度の効果が得られる。なぜなら、超音波センシングでは、超音波の送信方向等を細かく制御可能なためである。そのため、時間軸上での検出信号からも、各信号がどの位置の対象物からの反射信号であるかを特定可能であり、より細かい情報がなくてもイメージング(画像形成)が可能である。具体的な超音波イメージング手法については、開口合成等の種々の手法が知られているため、ここでの詳細な説明は省略する。
それに対して、光音響効果を利用する場合、対象物に対して出力されるのは超音波ではなく光である。照射された光の伝搬(例えば生体内での光の伝搬)を制御することは非常に困難であり、超音波のように特定方向だけに伝搬させるといった制御は難しい。そのため、センサー部200で検出される信号は、どのような方向、距離にある対象物で発生した超音波であるかの特定が容易でなく、その特定には例えば周波数変換処理等を行う必要がある。そのため、本実施形態では一般的な超音波センシング等に比べてセンサー部200でのサンプリングレートが非常に高くなり、さらにはサンプリングした信号に対する信号処理の負荷も非常に大きい。
以上のことを考慮すれば、光音響センサー10が複数の超音波センサーを含む場合に、各超音波センサーを常時動作させることは、処理負荷や記憶容量の観点から好ましくない。よって、複数の超音波センサーのうち少数(狭義には1つ)の超音波センサーを、状況に応じて選択的に動作させるとよい。
また、以上ではFsを固定してFfを可変とする例、及びFfを固定してFsを可変とする例を示した。しかし本実施形態の手法はこれに限定されず、FfとFsの両方を可変に設定可能としてもよい。
具体的には、センサー部200は、超音波センサー210として、受信感度周波数帯域の異なる第1の超音波センサー211と第2の超音波センサー212と、を有する。そして、第1の対象物を測定する場合は、第1の周波数特性に設定されたフィルター回路130に基づいて第1の光を照射して、第1の超音波センサー211により光音響信号を受信する。一方、第2の対象物を測定する場合は、第2の周波数特性に設定されたフィルター回路130に基づいて第2の光を照射して、第2の超音波センサー212により光音響信号を受信する。
このように、光源部100側(狭義にはフィルター回路130)及びセンサー部200側(狭義には超音波センサー210)の少なくとも一方の特性を可変とすることで、対象物20からセンサー部200までの伝搬距離が変化する場合等にも高感度でのセンシングを行うことが可能になる。
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光音響センサーや電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
Cf,CLD…キャパシター、Lf…コイル、RLD…抵抗、SW1,SW2…スイッチ、
10…光音響センサー、11…処理部、12…記憶部、13…表示部、20…対象物、
100…光源部、110…半導体レーザー、120…パルス信号出力部、
121…パルス信号生成部、123…電圧増幅部、130…フィルター回路、
200…センサー部、210,211,212…超音波センサー、
221…第1電極層、222…第2電極層、230…圧電体層、240…開口、
245…開口部、250…ダイアフラム、260…基板、270…圧電素子
10…光音響センサー、11…処理部、12…記憶部、13…表示部、20…対象物、
100…光源部、110…半導体レーザー、120…パルス信号出力部、
121…パルス信号生成部、123…電圧増幅部、130…フィルター回路、
200…センサー部、210,211,212…超音波センサー、
221…第1電極層、222…第2電極層、230…圧電体層、240…開口、
245…開口部、250…ダイアフラム、260…基板、270…圧電素子
Claims (12)
- 対象物に対して光を照射する光源部と、
前記光によって前記対象物から発生した光音響信号を受信するセンサー部と、
を含み、
前記光源部は、
半導体レーザーを有し、
前記センサー部は、
圧電素子とダイアフラムとを含む超音波センサーを有することを特徴とする光音響センサー。 - 請求項1において、
前記光源部は、
パルス信号を出力するパルス信号出力部と、
前記パルス信号に対してフィルター処理を行うフィルター回路と、を有することを特徴とする光音響センサー。 - 請求項2において、
前記フィルター回路は、
第1の周波数特性と、第2の周波数特性を可変に設定可能な回路であることを特徴とする光音響センサー。 - 請求項3において、
前記フィルター回路は、
第1の対象物の測定用の第1の光を照射する場合は、前記第1の周波数特性に設定され、第2の対象物の測定用の第2の光を照射する場合は、前記第2の周波数特性に設定されることを特徴とする光音響センサー。 - 請求項2乃至4のいずれかにおいて、
前記フィルター回路は、LC共振フィルター回路であることを特徴とする光音響センサー。 - 請求項5において、
前記フィルター回路である前記LC共振フィルター回路は、キャパシターが可変に設定可能であることを特徴とする光音響センサー。 - 請求項2乃至6のいずれかにおいて、
前記パルス信号出力部は、
第2のパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
前記第2のパルス信号の電圧を増幅して前記パルス信号を生成する電圧増幅部と、を有することを特徴とする光音響センサー。 - 請求項2乃至7のいずれかにおいて、
前記半導体レーザーは、複数のレーザーユニットを有し、
前記フィルター回路の出力ノードと電源ノードとの間に、前記複数のレーザーユニットのうちの少なくとも2つのレーザーユニットが、直列に接続されることを特徴とすることを特徴とする光音響センサー。 - 請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記センサー部は、
前記超音波センサーとして、第1の超音波センサーと、前記第1の超音波センサーとは受信感度周波数帯域の異なる第2の超音波センサーと、を有することを特徴とする光音響センサー。 - 請求項9において、
第1の対象物を測定する場合は、前記第1の超音波センサーにより前記光音響信号を受信し、第2の対象物を測定する場合は、前記第2の超音波センサーにより前記光音響信号を受信することを特徴とする光音響センサー。 - 請求項3において、
前記センサー部は、
前記超音波センサーとして、受信感度周波数帯域の異なる第1の超音波センサーと第2の超音波センサーと、を有し、
第1の対象物を測定する場合は、前記第1の周波数特性に設定された前記フィルター回路に基づいて前記第1の光を照射して、前記第1の超音波センサーにより前記光音響信号を受信し、
第2の対象物を測定する場合は、前記第2の周波数特性に設定された前記フィルター回路に基づいて前記第2の光を照射して、前記第2の超音波センサーにより前記光音響信号を受信することを特徴とする光音響センサー。 - 請求項1乃至11のいずれかに記載の光音響センサーを含むことを特徴とする電子機器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015160065A JP2017035408A (ja) | 2015-08-14 | 2015-08-14 | 光音響センサー及び電子機器 |
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ID=58047126
Family Applications (1)
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JP2015160065A Pending JP2017035408A (ja) | 2015-08-14 | 2015-08-14 | 光音響センサー及び電子機器 |
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-
2015
- 2015-08-14 JP JP2015160065A patent/JP2017035408A/ja active Pending
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