JP2017032687A - 模擬臓器 - Google Patents
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Abstract
【課題】模擬血管周辺の模擬実質の切除の練習用や、切除器具の性能評価用として、複数の模擬血管を適切に配置すること。【解決手段】第1,第2及び第3模擬血管と、第1,第2及び第3模擬血管が埋設された模擬実質と、模擬実質が収容されたケースと、を備える。第1,第2及び第3模擬血管を、模擬実質がケースから露出した面に投影した場合、第1及び第2模擬血管のそれぞれは、所定領域内において第3模擬血管との交点を有する。【選択図】図2
Description
本発明は、模擬臓器に関する。
枠体内に模擬血管を設け、模擬血管の周囲に模擬筋肉層を充填配置した模型が知られている。この模型は、注射の練習用として用いられる。
上記の模型は、複数の模擬血管を取り囲む実質組織を模擬した模擬実質(模擬筋肉層)の切除の練習用として用いたり、切除器具の評価に用いたりすることについて考慮されていなかった。このため、上記先行技術文献には、複数の模擬血管の配置について、詳細に開示されていない。本願発明は、上記先行技術を踏まえ、模擬実質の切除の練習用や、切除器具の性能評価用として、複数の模擬血管を適切に配置することを解決課題とする。
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。
本発明の一形態によれば、第1,第2及び第3模擬血管と;前記第1,第2及び第3模擬血管が埋設された模擬実質と;前記模擬実質が収容されたケースと、を備え;前記第1,第2及び第3模擬血管を、前記模擬実質が前記ケースから露出した面に投影した場合、前記第1及び第2模擬血管のそれぞれは、1つの所定領域内において前記第3模擬血管との交点を有する模擬臓器が提供される。この形態によれば、所定領域内において2つの交点を有する模擬血管によって、血管の交差や分岐を再現できる。ひいては、血管の交差や分岐を模擬した部位について、切除器具による切除の練習ができる。
上記形態において、前記第1模擬血管および前記第3模擬血管の角度、並びに、前記第2模擬血管および前記第3模擬血管の角度は、それぞれ、45度以上60度以下でもよい。この形態によれば、2つの交点同士を接近させやすくなり、所定領域内に2つの交点を配置しやすくなる。
上記形態において、前記第1及び第2模擬血管のそれぞれは、前記第3模擬血管に対し、前記交点において接触していてもよい。この形態によれば、血管の分岐を再現しやすくなる。
上記形態において、前記第3模擬血管が前記ケースに固定される位置は、前記交点における接触位置よりも下でもよい。この形態によれば、第1,第2及び第3模擬血管それぞれの上下方向の位置が安定する。
上記形態において、前記模擬実質は、前記ケースの上端よりも盛り上がった部位を有し;前記盛り上がった部位は、切除器具による前記模擬実質の切除の開始前に除去さてもよい。この形態によれば、切除器具による切除対象となる部位の機械的特性が、長時間に亘る露出によって変化することを抑制できる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現できる。例えば、模擬臓器の作製方法等の形態で実現できる。
図1は、液体噴射装置20の構成を概略的に示す。液体噴射装置20は、医療機関において利用される医療機器であり、患部に対して液体を噴射することによって、患部を切除する機能を有する切除器具である。
液体噴射装置20は、制御部30と、アクチュエーター用ケーブル31と、ポンプ用ケーブル32、フットスイッチ35と、吸引装置40と、吸引チューブ41と、液体供給装置50と、ハンドピース100とを備える。
液体供給装置50は、給水バッグ51と、スパイク針52と、第1〜第5コネクター53a〜53eと、第1〜第4給水チューブ54a〜54dと、ポンプチューブ55と、閉塞検出機構56と、フィルター57とを備える。ハンドピース100は、ノズルユニット200と、アクチュエーターユニット300とを備える。ノズルユニット200は、噴射管205と、吸引管400とを備える。
給水バッグ51は、透明な合成樹脂製であり、内部に液体(具体的には生理食塩水)が充填されている。なお、本願では、水以外の液体が充填されていても、給水バッグ51と呼ぶ。スパイク針52は、第1コネクター53aを介して、根元が第1給水チューブ54aに接続されている。給水バッグ51にスパイク針52の先端が刺されると、給水バッグ51に充填された液体が第1給水チューブ54aに供給可能な状態になる。
第1給水チューブ54aは、第2コネクター53bを介して、ポンプチューブ55に接続されている。ポンプチューブ55は、第3コネクター53cを介して、第2給水チューブ54bに接続されている。チューブポンプ60は、ポンプチューブ55を挟み込んでいる。チューブポンプ60は、ポンプチューブ55内の液体を、第1給水チューブ54a側から、第2給水チューブ54b側に送り出す。
閉塞検出機構56は、第2給水チューブ54b内の圧力を測定することで、第1〜第4給水チューブ54a〜54d内の閉塞を検出する。
第2給水チューブ54bは、第4コネクター53dを介して、第3給水チューブ54cに接続されている。第3給水チューブ54cにはフィルター57が接続されている。フィルター57は、液体に含まれる異物を捕集する。
第3給水チューブ54cは、第5コネクター53eを介して、第4給水チューブ54dに接続されている。第4給水チューブ54dは、ノズルユニット200に接続されている。第4給水チューブ54dを通じて供給された液体は、アクチュエーターユニット300の駆動によって、噴射管205の先端から間欠的に噴射される。このように液体が間欠的に噴射されることによって、少ない流量で切除能力が確保できる。
噴射管205及び吸引管400は、噴射管205を内管、吸引管400を外管とする二重管を構成する。吸引チューブ41は、ノズルユニット200に接続されている。吸引装置40は、吸引チューブ41を通じて、吸引管400内を吸引する。この吸引によって、吸引管400の先端付近の液体や切除片などが吸引される。
制御部30は、チューブポンプ60と、アクチュエーターユニット300とを制御する。具体的には、制御部30は、フットスイッチ35が踏まれている間、アクチュエーター用ケーブル31と、ポンプ用ケーブル32とを介して駆動信号を送信する。アクチュエーター用ケーブル31を介して送信された駆動信号は、アクチュエーターユニット300に含まれる圧電素子(図示しない)を駆動させる。ポンプ用ケーブル32を介して送信された駆動信号は、チューブポンプ60を駆動させる。よって、ユーザーがフットスイッチ35を踏んでいる間は液体が間欠的に噴射され、ユーザーがフットスイッチ35を踏んでいない間は液体の噴射が停止する。
以下、模擬臓器について説明する。模擬臓器は、ファントムとも呼ばれ、本実施形態においては、液体噴射装置20によって一部が切除される人工物である。本実施形態における模擬臓器は、液体噴射装置20の性能評価や、液体噴射装置20の操作の練習などを目的とした模擬手術に用いられる。
図2は、模擬臓器600の上面図である。図3は、図2に示された3−3断面図である。模擬臓器600は、模擬実質610と、収容部材620と、第1模擬血管631と、第2模擬血管632と、第3模擬血管633と、ケース640とを備える。第1模擬血管631と、第2模擬血管632と、第3模擬血管633とをまとめて呼ぶ場合は、模擬血管630という。
ケース640は、第1部材641と、第2部材642とを備える。第1部材641の上に第2部材642が固定されることによって、ケース640が構成される。ケース640がこのように2つの部材から構成されているのは、模擬臓器600の作製を容易にするためである(詳しくは後述)。
第1部材641及び第2部材642は、収容部材620と模擬血管630とを支持するのに十分な剛性を有する。第1部材641及び第2部材642は、上記十分な剛性を有するために、収容部材620よりも十分、弾性率および破断強度が高い材質で形成されている。
本実施形態におけるケース640は、透明な合成樹脂で作製されている。ケース640が透明であることによって、ケース640の側面から収容部材620を視認できる。
収容部材620は、ケース640の中央部に形成された円柱状の窪みの内部に配置されている。収容部材620は、第1収容部材621と、第2収容部材622とが積層されることによって形成されている。収容部材620は、模擬実質610を保持できるように内部が窪んでおり、片側にだけ底がある円筒のような形状を有する。収容部材620は、ケース640よりも柔らかく、模擬実質610よりも硬い材質で形成されている。本実施形態における収容部材620は、模擬実質610と比較して、破断強度が5倍、弾性率も5倍となる材質で形成されている。
模擬実質610は、脳実質を模擬した人工の生体模擬組織である。模擬実質610は、収容部材620の中央部に形成された円柱状の窪みの内部に配置されている。模擬実質610は、液体噴射装置20による切除対象となる部位である。
模擬血管630は、脳血管を模擬した人工組織である。ケース640によって保持されており、模擬実質610に埋設されている。第1模擬血管631、第2模擬血管632及び第3模擬血管633は、3本ともほぼ水平に配置されている。
第1模擬血管631及び第2模擬血管632は、互いに平行に配置されているので、互いの交点を有しない。第1模擬血管631及び第2模擬血管632の距離は、吸引管400を間に挿入できるように、吸引管400の直径よりも大きく設定されている。但し、第1模擬血管631及び第2模擬血管632の距離が大きすぎると、3本の模擬血管630それぞれに近接する模擬実質610を切除することができなくなるので、上記の距離は、吸引管400の直径と同程度から数倍程度に設定される。
第1模擬血管631及び第2模擬血管632のそれぞれは、第3模擬血管633に対する交点を有するように配置されている。ここでいう交点とは、模擬血管630を面S(図3)に投影した場合に、第1模擬血管631及び第2模擬血管632それぞれが、第3模擬血管633に対して交わる部位のことである。面Sは、ケース640の上端に接する面である。図3に示すように、模擬実質610がケース640から露出した面は、面Sに接する。
第1模擬血管631及び第3模擬血管633との交点、並びに、第2模擬血管632及び第3模擬血管633の交点は、図2に示すように、面Sに投影した場合に、何れも所定領域H内に位置する。所定領域Hは、模擬実質610の露出面の領域であると共に、ケース640の形状によって決定される領域でもある。
所定領域Hは、3本の模擬血管630のうち少なくとも2本の周辺部位の上部に位置する領域である。周辺部位とは、模擬血管630の周囲に位置し、模擬手術における摘出の対象になり得る部位である。このため、周辺部位を切除する場合、或いは、所定領域Hにおいて模擬実質610の機械的特性の測定を実施する場合、模擬血管630の損傷等が発生し得る。
第1模擬血管631及び第2模擬血管632はそれぞれ、交点において第3模擬血管633よりも下を走っている。第1模擬血管631及び第2模擬血管632はそれぞれ、交点において第3模擬血管633と接触している(図7,図8参照)。
第1模擬血管631及び第2模擬血管632はそれぞれ、第3模擬血管633となす角度が45度になるように配置されている。この角度は、2つの交点を接近させるために設定された値であり、また、血管の分岐を再現するために設定された値である。
図4は、模擬臓器600の作製手順を示すフローチャートである。まず、第1収容部材621を作製する(S710)。具体的には、別途、用意した型(図示しない)に対して、油性ウレタンの主剤と硬化剤とを混ぜて攪拌した混合物を流し込む。この後、ウレタンがエラストマーゲル状のウレタンゲルとしての第1収容部材621に変化する。
次に、図5,図6に示すように、第1収容部材621を第1部材641の窪みに挿入する(S720)。
次に、模擬血管630を作製する(S730)。本実施形態では、模擬血管630の材料として、PVA(ポリビニルアルコール)を採用する。本実施形態の場合、模擬血管630は中空部材であるので、次の作製方法を採用する。その方法とは、極細線の外周に硬化前のPVAを塗布し、PVAの硬化後に極細線を引き抜くという手法である。極細線の外径は、血管内径に合わせる。極細線は、金属製であり、例えばピアノ線などで形成する。
次に、図7,図8に示すように、模擬血管630を配置する(S740)。具体的には、第1模擬血管631と第2模擬血管632とを所定位置に配置し、その上から、第3模擬血管633を所定位置に配置する。3本の模擬血管630は、同一の高さの面に置かれる。
次に、第2部材642を、第1部材641に固定する(S750)。具体的には、第2部材642を第1部材641の上に載せて、第1部材641と第2部材642とによって模擬血管630を挟み込む。この状態で、ねじ(図示しない)を用いて、第2部材642を第1部材641に固定する。このようにして模擬血管630は、ケース640に固定される。
次に、第2収容部材622を作製する(S760)。作製方法は、第1収容部材621の作製方法(S710)と同様である。但し、第2収容部材622は、第1収容部材621と形状が異なるので、S710とは別の型を用いる。
次に、図9,図10に示すように、第2収容部材622を第2部材642の孔に挿入する(S770)。S770によって、模擬血管630が、第1収容部材621と第2収容部材622との間に挟み込まれる。第2収容部材622は、図10に示すように、S770において、面Sよりも高く盛り上がる。つまり、第2収容部材622は、S760において、第2部材642の高さよりも厚く作製されている。
図9,図10に示すように、第3模擬血管633は、ケース640に固定された位置が、第1模擬血管631及び第2模擬血管632との交点における高さよりも低くなる。このため、第3模擬血管633は、第1模擬血管631及び第2模擬血管632それぞれを、交点において下に押しつける。この力によって、第1模擬血管631及び第2模擬血管632は、交点付近における高さ方向位置のばらつきが抑制される。
次に、図11,図12に示すように、模擬実質610を作製する(S780)。具体的には、収容部材620によって形成された窪みに対して、収容部材620の作製と同様、PVA素材を流し込む。この後、PVA素材を冷凍させる等の硬化処理を行うことで、PVA素材を模擬実質610に変化させる。S780において用いられるPVA素材は、模擬実質610の機械的特性を実現するように調製されている。模擬実質610の機械的特性とは、先述したように、破断強度および弾性率が収容部材620の1/5である。
S780が完了した後、模擬臓器600の使用直前になったら、模擬実質610及び収容部材620の上部を、面Sに沿って除去する(S790)。S790は、液体噴射装置20以外の切除器具(メス等)を用いて実施される。これによって、図2,図3に示される模擬臓器600が完成する。模擬臓器600の使用とは、液体噴射装置20による模擬実質610の切除や、後述する機械的特性の測定のことである。
S790を模擬臓器600の使用直前に実行するのは、模擬実質610の切除や機械的特性の測定を、新鮮な面に対して実行するためである。模擬実質610は、空気に触れると機械的特性が変化しやすいので、収容部材620の上部を蓋として利用することによって、使用時における機械的特性が安定しやすくなる。
ここで、模擬実質610及び収容部材620の機械的特性の測定について説明する。模擬臓器600は、図13に示すように、ケース640から露出した面の一部として、テスト領域Dが用意されている。テスト領域Dは、模擬血管630と離れた部位の上部に位置する領域である。つまり、テスト領域Dは、深さ方向に切除を進めても、模擬血管630の周辺には到達しないので、模擬血管630に影響を殆ど与えずに模擬実質610の押し込み試験や、液体噴射装置20のテストを実施できる領域である。液体噴射装置20のテストとは、液体噴射装置20から噴射される液体によって、正常に模擬実質610が切除できるかを試すことである。
本実施形態においては、テスト領域Dの境界線が実際に示されている訳ではない。このため、ユーザーは、模擬実質610を通して透けて見える模擬血管630の位置から、テスト領域Dのおおよその位置を把握する。所定領域Dは、模擬実質610の露出面の領域であると共に、ケース640の形状によって決定される領域でもある。
図14は、押し込み試験を説明するための斜視図である。押し込み試験には、図14に示すように、ピン800を用いる。押し込み試験には、ロードセル(図示しない)を用い、押し込み力と押し込み深さをリアルタイムで計測する。ピン先810の半径は0.5mmである。
図15は、上記の押し込み試験によって得られる実験データを例示する。縦軸は押し込み力(N)、横軸は押し込み深さ(mm)を表す。ピン800の押し込み速さは、破断強度の測定時は1mm/sec、弾性率の測定時は0.1mm/secである。
図15に示すように、押し込み深さが深さδ2までは、押し込み深さの増大に伴い、押し込み力も増大していく。模擬実質610の弾性率(MPa)は、線形領域の一部として、押し込み深さが深さδ1(<δ2)までの領域におけるデータの傾きに基づき算出する。この算出には、次の式(1)を利用する。式(1)は、ヘルツ−スネドン方程式(Herz Sneddon equation)である。
F=2R{E/(1−ν2)}δ…(1)
式(1)におけるFは押し込み力、Rはピン先の半径、Eは弾性率、νはポアソン比、δは押し込み深さである。深さδ1は、データが線形であると近似できる程度に大きな値に設定するのが好ましい。一方で、ヘルツ−スネドン方程式は、深さδが半径R(=0.5mm)に対して十分、小さい場合に有効であるので、深さδ1を半径Rに対して十分、小さく設定するのが好ましい。式(1)を変形すると、次の式(2)になる。
E={(1−ν2)/2R}(F/δ)…(2)
式(2)におけるF/δは、データの傾きである。ポアソン比νは、模擬実質610がほぼ非圧縮性であることに基づき、推定値として0.49を採用した。半径Rは、先述の通り既知である。よって、データの傾きを測定することによって、弾性率Eを算出できる。
図15に示すように、押し込み力は、深さδ2でピークアウトする。このようにピークアウトするのは、模擬実質610が破断したからだと考えられる。ピークアウト時の押し込み力を最大押し込み力Fmaxとする。破断強度P(MPa)は、次の式(3)によって算出する。
P=Fmax/(πR2)…(3)
上記のように模擬実質610に破断が生じても、テスト領域Dにおいて試験を実施すれば、模擬血管630に損傷等の影響が出る可能性は低い。
同様な手法で、収容部材620の弾性率および破断強度を測定できる。このように模擬実質610と収容部材620とを対象とした測定することによって、弾性率および破断強度について、収容部材620の値が、それぞれ模擬実質610の値の5倍であることを確認した。具体的には、模擬実質610の弾性率が0.005MPa、模擬実質610の破断強度が0.026MPaであり、収容部材620の値はこれらの約5倍であった。
上記のように機械的特性を確認した後、模擬実質610の切除実験を実施した。この切除実験は、液体噴射装置20の性能評価のために実施した。
図16は、切除部位Cを示す。図17は、図16に示された17−17断面図であり、模擬実質610が切除される様子を示す。切除部位Cは、所定領域Hに含まれ、第1模擬血管631と第3模擬血管633との交点近傍であり、且つ、第2模擬血管632と第3模擬血管633との交点近傍である部位として選択されている。このように、血管が密集し、且つ、分岐した部位の付近における実質の切除を模擬することができる。
さらに、先述したように、収容部材620を、模擬実質610とケース640との間に配置することによって、液体噴射装置20のユーザーが覚える違和感を軽減している。この違和感とは、模擬実質610の外縁付近を切除する場合に、ケース640に吸引管400が接触したり、ケース640に液体が噴射されて切除状態が急変したりすることによって、もたらされる感覚である。
また、収容部材620は、液体が噴射されても破断しないように、先述したように、模擬実質610の5倍の破断強度を有する。収容部材620の破断強度は、模擬実質610の破断強度の2倍以上であることが好ましく、5倍より大きくてもよい(例えば10倍)。
一方で、上記の違和感を軽減するために、模擬実質610の5倍の弾性率に抑えられている。収容部材620の弾性率は、模擬実質610の弾性率の10倍以下であることが好ましく、模擬実質610の弾性率と同じでもよい。
図18は、変形例1としての模擬臓器600aを示す上面図である。図19は、図18に示された19−19断面図である。模擬臓器600aは、模擬実質610aと、2つのテスト用模擬実質615aと、収容部材620aと、模擬血管630と、ケース640aとを備える。模擬血管630については、実施形態と同じである。
模擬実質610a及び収容部材620aは、実施形態と比較して、上面から見た場合の面積が異なる以外は同じである。テスト用模擬実質615aは、模擬実質610aと同じ材質で形成されている。テスト用模擬実質615aは、模擬実質610aと領域が分離している。このため、ユーザーは、テスト用模擬実質615aを、機械的特性の測定を実施しても模擬血管630に影響を与えない領域として明確に認識できる。
ユーザーは、テスト用模擬実質615aの中央部を、テスト領域Daとして認識できる。テスト領域Daは、ケース640aから殆ど影響を受けずに押し込み試験が実施できる領域である。
さらに、上記のようにテスト用模擬実質615aが模擬実質610aと分離していることによって、テスト用模擬実質615aの一部を切除することによって、残りのテスト用模擬実質615aがケース640から剥がれ落ちてしまっても、模擬実質610aに影響を与えることがない。模擬実質610aへの影響とは、例えば、模擬実質615aがケース640と共に剥がれ落ちてしまうことである。
図20は、変形例2としての模擬臓器600bを示す上面図である。模擬臓器600bは、模擬実質610bと、模擬血管630と、ケース640bとを備える。模擬血管630については、実施形態と同じである。
模擬実質610bは、切除用模擬物質611bと、2つのテスト用模擬物質615bとを備える。2つのテスト用模擬物質615bはそれぞれ、切除用模擬物質611bと連続した領域として、切除用模擬物質611bから面Sに沿った方向に突き出た領域である。
変形例2では、切除用模擬物質611bとテスト用模擬物質615bとの境界は示されていない。しかし、ユーザーは、切除用模擬物質611bとテスト用模擬物質615bとのおおよその境界を把握できる。なぜなら、切除用模擬物質611bの輪郭を延長した仮想線をイメージすることによって、切除用模擬物質611bの輪郭を閉曲線として認識できるからである。上記のような仮想線のイメージを容易にするために、切除用模擬物質611bの輪郭は、同一の円に属する2つの円弧によって画定されている。
さらに、テスト用模擬物質615bの輪郭についても、円弧によって画定されているので、輪郭を閉曲線として認識することができる。このため、切除用模擬物質611bとテスト用模擬物質615bとのおおよその境界を、容易に把握できる。ひいては、テスト用模擬物質615bの中央部を、テスト領域Dbとして認識できる。テスト領域Dbは、ケース640bから殆ど影響を受けずに押し込み試験が実施できる領域である。
また、上記のように切除用模擬物質611bと、テスト用模擬物質615bとが別々の円の一部としての円弧によって画定されているため、テスト用模擬物質615bの一部あるいは全部を切除しても、切除用模擬物質611bがケース640bから剥がれ落ちにくい。
図21は、図20に示した21−21断面図である。図21に示すように、第1部材641は、複数の凹部645を備える。凹部645は、第1部材641bの底面および側面に設けられた窪みである。
凹部645の内部には、模擬実質610bが形成されている。凹部645の内部に形成された模擬実質610bは、杭のように機能することによって、模擬実質610bがケース640bから剥がれ落ちることを防止する。
図22は、模擬実質610bの形成を説明するための図である。図23は、図22に示された23−23断面図である。模擬臓器600bは、収容部材を有しないので、ケース640bに設けられた窪みに対して、模擬実質610bの原材料を流し込む。そこで、面Sよりも盛り上がった部位を設けるために、型649を用いる。
型649は、図22に示すように、切除用模擬物質611b及びテスト用模擬物質615bに覆い被さるように配置される。型649は、固まった模擬実質610bから外しやすいように、フィルム状の部材で形成される。
本発明は、本明細書の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、先述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、先述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことができる。その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除できる。例えば、以下のものが例示される。
第1模擬血管および第3模擬血管の角度は、45度以上60度以下でもよい。
第2模擬血管および第3模擬血管の角度は、45度以上60度以下でもよく、第1模擬血管および第3模擬血管の角度と異なっていてもよい。
第1模擬血管および第2模擬血管は、平行でなくてもよく、さらには交点を有していてもよい。
第2模擬血管および第3模擬血管の角度は、45度以上60度以下でもよく、第1模擬血管および第3模擬血管の角度と異なっていてもよい。
第1模擬血管および第2模擬血管は、平行でなくてもよく、さらには交点を有していてもよい。
実施形態や変形例1において、収容部材を設けなくてもよい。
テスト領域を、明示してもよい。具体的には、ペン等で境界を描いてもよい。
変形例1のテスト用模擬実質を、収容部材で収容してもよい。
テスト領域を、明示してもよい。具体的には、ペン等で境界を描いてもよい。
変形例1のテスト用模擬実質を、収容部材で収容してもよい。
模擬実質や収容部材の材質は、変更してもよい。例えば、水性のウレタンを用いてもよい。
ケースの材質は、金属(鉄、アルミニウム)や、透明でない樹脂などでもよい。
模擬血管は、中実部材でもよい。
模擬血管は、1本又は2本でもよいし、4本以上でもよい。つまり、少なくとも1本の模擬血管が模擬実質に埋設される構成であればよい。
模擬臓器が模擬する対象は、脳でなくてもよく、例えば肝臓でもよい。
ケースの材質は、金属(鉄、アルミニウム)や、透明でない樹脂などでもよい。
模擬血管は、中実部材でもよい。
模擬血管は、1本又は2本でもよいし、4本以上でもよい。つまり、少なくとも1本の模擬血管が模擬実質に埋設される構成であればよい。
模擬臓器が模擬する対象は、脳でなくてもよく、例えば肝臓でもよい。
実施形態においては、第1部材641の上に第2部材642が固定されることによって、ケース640が構成されることとしたが、これに限定されない。第1部材641と第2部材642とが誤って相対的に移動しないような構成であればよく、2つの部材が接触することによって発生する摩擦力を用いた接続や、2つの部材を着脱可能とした構成であってもよい。
実施形態においては、模擬血管630が、模擬実質610と軟性部材620とケース640とを貫通することで、模擬実質610に埋設される構成としたが、これに限定されない。模擬血管630が、模擬実質610と軟性部材620とケース640とのうち少なくとも1つを貫通する構成としてもよいし、いずれの部材も貫通しない構成としてもよい。模擬血管630の少なくとも一部が模擬実質に埋設される構成であればよい。また、模擬血管がケース640に固定される構成としたが、これに限定されない。ケース640には固定されず、模擬実質との密着によって模擬血管が移動しにくい構成となっていてもよい。
20…液体噴射装置、30…制御部、31…アクチュエーター用ケーブル、32…ポンプ用ケーブル、35…フットスイッチ、40…吸引装置、41…吸引チューブ、50…液体供給装置、51…給水バッグ、52…スパイク針、53a…第1コネクター、53b…第2コネクター、53c…第3コネクター、53d…第4コネクター、53e…第5コネクター、54a…第1給水チューブ、54b…第2給水チューブ、54c…第3給水チューブ、54d…第4給水チューブ、55…ポンプチューブ、56…閉塞検出機構、57…フィルター、60…チューブポンプ、100…ハンドピース、200…ノズルユニット、205…噴射管、300…アクチュエーターユニット、400…吸引管、600…模擬臓器、600a…模擬臓器、600b…模擬臓器、610…模擬実質、610a…模擬実質、610b…模擬実質、611b…切除用模擬物質、615a…テスト用模擬実質、615b…テスト用模擬物質、620…収容部材、620a…収容部材、621…第1収容部材、622…第2収容部材、630…模擬血管、631…第1模擬血管、632…第2模擬血管、633…第3模擬血管、640…ケース、640a…ケース、640b…ケース、641…第1部材、642…第2部材、645…凹部、649…型、800…ピン、810…ピン先
Claims (5)
- 第1,第2及び第3模擬血管と、
前記第1,第2及び第3模擬血管が埋設された模擬実質と、
前記模擬実質が収容されたケースと、を備え、
前記第1,第2及び第3模擬血管を、前記模擬実質が前記ケースから露出した面に投影した場合、前記第1及び第2模擬血管のそれぞれは、1つの所定領域内において前記第3模擬血管との交点を有する
模擬臓器。 - 前記第1模擬血管および前記第3模擬血管の角度、並びに、前記第2模擬血管および前記第3模擬血管の角度は、それぞれ、45度以上60度以下である
請求項1に記載の模擬臓器。 - 前記第1及び第2模擬血管のそれぞれは、前記第3模擬血管に対し、前記交点において接触している
請求項1又は請求項2に記載の模擬臓器。 - 前記第3模擬血管が前記ケースに固定される位置は、前記交点における接触位置よりも下である
請求項3に記載の模擬臓器。 - 前記模擬実質は、前記ケースの上端よりも盛り上がった部位を有し、
前記盛り上がった部位は、切除器具による前記模擬実質の切除の開始前に除去される
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の模擬臓器。
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