JP2017032498A - エンドトキシンの測定用試料の前処理方法 - Google Patents

エンドトキシンの測定用試料の前処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】試料が水系の溶媒に溶解しにくい、または試料を溶解する溶媒がエンドトキシン測定中にALのセリンプロテアーゼを阻害または亢進する場合に、高分子試料中のエンドトキシンを簡易的で安価に低濃度まで測定することを可能とする手段を提供する。
【解決手段】水と相分離する液体中のエンドトキシンを、水で抽出することを含む、エンドトキシン測定用試料の前処理方法により、上記課題は解決されうる。
【選択図】なし

Description

本発明は、エンドトキシンの測定用試料の前処理方法に関する。
エンドトキシンはグラム陰性菌の細胞壁に存在するリポ多糖であり、最も代表的な発熱性物質である。このエンドトキシンに汚染された物質が人体に入ると、発熱やショックなどの重篤な副作用を惹起する虞がある。このため、上記の薬剤などは、エンドトキシンにより汚染されることがないように管理することが義務付けられている。
ところで、カブトガニの血球抽出物(以下、「AL:Amoebocyte Lysate」とも称する)の中には、エンドトキシンによって活性化されるセリンプロテアーゼが存在する。そして、ALとエンドトキシンとが反応する際には、エンドトキシンの量に応じて活性化されたセリンプロテアーゼによる酵素カスケードによって、AL中に存在するコアギュロゲンがコアギュリンへと加水分解されて会合し、不溶性のゲルが生成される。このALの特性を用いて、エンドトキシンを高感度に検出することが可能である。
このエンドトキシンの検出または濃度測定を行う方法としては、エンドトキシンの検出または濃度測定(以下、単に「エンドトキシンの測定」とも称する)をすべき試料(以下、「エンドトキシン測定試料」とも称する)とALとを混和した混和液を静置し、一定時間後に容器を転倒させて、試料の垂れ落ちの有無によりゲル化したかどうかを判定し、試料に一定濃度以上のエンドトキシンが含まれるか否かを調べる半定量的なゲル化法がある。また、ALとエンドトキシンとの反応によるゲルの生成に伴う試料の濁りを経時的に計測して解析する比濁法や、酵素カスケードにより水解されて発色する合成基質を用いる比色法などがある(非特許文献1)。ここで、比濁法や比色法によりエンドトキシンの濃度測定を行う場合、低濃度のエンドトキシンが作用した際のAL自体の濁りや合成基質による発色はきわめて微弱であることから、これらの測定原理を用いたエンドトキシンの濃度測定には検出限界(下限)が存在する。このため、従来、高感度化を図ったエンドトキシンの測定方法が望まれており、種々の技術が提案されている。高感度化を目的とした技術として、例えば、比濁法を発展させて試料を攪拌する方法(攪拌比濁法)、攪拌した試料中に形成されるゲル微粒子を光散乱法によって検出する方法(光散乱法)、ALを微粒子上に結合させて凝集反応を増強した方法(AL結合ビーズ法)などが提案されている。
また、ALは複数のタンパク質分解酵素(セリンプロテアーゼ)の連鎖反応によりゲル化する。したがって、エンドトキシン測定試料中にALのセリンプロテアーゼを阻害または亢進する物質(干渉物質)が含まれていると、試料を十分に希釈するか干渉物質を除去しないとエンドトキシン濃度を正確に定量することができない場合がある。これに対して、エンドトキシンを吸着するアミノ酸、ポリペプチド、ランダムペプチドライブラリーから選別されたリピドA結合ペプチドなどをビーズ状の担体上に結合して、エンドトキシンを含有する試料と混合させてエンドトキシンを担体に固定させるバッチ法が提案されている。このバッチ法においては、エンドトキシンが固定された担体とALとを反応させ、ゲル化またはエンドトキシンの作用によるALの濁度変化を測定する。このようなバッチ法の例としては、エンドトキシンを結合できるパイロセップをセルロースまたはアガロースビーズに結合させてカラムを形成し、これに多量のエンドトキシンを含有する試料を通過させるパイロセップ法が挙げられる(非特許文献2)。このパイロセップ法では、試料通過後のカラムをアルカリ側のバッファーで洗浄してエンドトキシンを解離させ、その後ALと反応させて、カイネティック比濁法によりエンドトキシンを定量する。
ところで、生体適合性高分子を用いて種々の医用材料が製造されており、このような高分子を用いて製造される医用材料がエンドトキシンによって汚染されていると、やはり上記と同様の重篤な副作用が惹起されうる。このため、かような医用材料を構成する原料である高分子に含まれるエンドトキシンの量もまた、厳格に低い値に管理されなければならず、固体表面からエンドトキシンを抽出して測定を行う方法が報告されている(特許文献1)。
しかし、医用材料を構成する原料である高分子の中でも特に生分解性高分子を用いて生体吸収性の医用材料(例えば、縫合糸、ステントなど)を製造する場合、生体内で分解されて体内に吸収されるという性質を有するため、固体表面のエンドトキシンを抽出して測定を行うだけでは不充分な場合がある。さらに、エンドトキシンの測定では、試料が水系の溶媒に溶解し、かつその溶媒がエンドトキシン測定中にALのセリンプロテアーゼを阻害または亢進しないことが測定を行うための条件となるが、高分子試料の場合、この条件に合致できない場合が多くある。対策として、上述した非特許文献2のような方法が知られている。
第十六改正 日本薬局方解説書,B−429〜B−448(2011)廣川書店. 土谷正和、「Talking of LAL 第20話 パイロセップ法」、和光純薬技報、和光純薬工業株式会社、1995年7月15日、第63巻、第3号、p.21
本発明者らの検討によれば、高感度化技術を用いたとしても、試料の種類によっては溶媒に対する溶解度や使用する溶媒のエンドトキシン測定時のALに対する反応阻害により、含まれるエンドトキシンを高感度で測定することはできないことが判明した。すなわち、従来提案されている高感度化技術を用いたエンドトキシンの測定では、試料の種類によっては高感度で(低い検出限界値で)エンドトキシンの測定を行える場合もあるが、試料の種類によっては、感度が低下してしまう(検出限界値が上昇してしまう)ことが判明したのである。このように感度が低下した技術を用いて試料に含まれるエンドトキシンの測定を行って、測定試料である生分解性高分子に含まれるエンドトキシンの濃度が検出限界以下であったとしても、要求される水準(規格値)が検出限界をさらに下回るような場合には、結局のところ当該測定試料が要求水準(規格値)を満たすものであるか否かを判定することはできない。
また、従来提案されている、例えば非特許文献2に記載の方法は、操作が煩雑であり、分析費用が高いため、簡易的で安価に低濃度まで測定が可能な測定方法の開発が望まれている。
そこで本発明は、上述したような従来技術における課題に鑑みなされたものであり、試料が水系の溶媒に溶解しにくい、または試料を溶解する溶媒がエンドトキシン測定中にALのセリンプロテアーゼを阻害または亢進する場合に、高分子試料中のエンドトキシンを簡易的で安価に低濃度まで測定することを可能とする手段を提供することを目的とする。
上記の課題を解決することを目的として、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、(例えば、生分解性高分子のような)試料中のエンドトキシンを測定するにあたり、水と相分離する液体中のエンドトキシンを水で抽出することで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、水と相分離する液体中のエンドトキシンを、水で抽出することを含む、エンドトキシン測定用試料の前処理方法が提供される。
本発明によれば、試料が水系の溶媒に溶解しにくい、または試料を溶解する溶媒がエンドトキシン測定中にALのセリンプロテアーゼを阻害または亢進するなどの理由によって低濃度までエンドトキシンの測定が困難な場合であっても、高分子試料中のエンドトキシンを簡易的で安価に低濃度まで測定することが可能となる。
本発明の一形態によれば、水と相分離する液体中のエンドトキシンを、水で抽出すること(エンドトキシン抽出工程)を含む、エンドトキシン測定用試料の前処理方法が提供される。
エンドトキシン抽出工程では、水と相分離する液体中のエンドトキシンを水で抽出する。ここで、当該工程は、例えば、水と相分離する液体(例えば、有機溶媒)と水との混合溶媒と、試料とを接触させて、試料に含まれる生分解性高分子等の有機溶媒溶解性の成分が溶解された有機層と、試料に含まれるエンドトキシンが溶解された水層とを分離することにより行われうる。
ここで、本発明におけるエンドトキシンの測定対象である「試料」は、生体適合性高分子を含むものであることが好ましく、生分解性高分子を含むものであることがより好ましい。「生体適合性高分子」とは、人体組織と直接接触しても、生理学的な悪影響を及ぼす成分が放出されない高分子を意味し、生分解性高分子はその一例である。また、「生分解性高分子」とは、生体内で分解されうる高分子を意味し、その具体的な形態について特に制限はない。生分解性高分子の一例としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシアルカン酸、カプロラクトン、ビニルアルコール、トリメチレンカーボネート、グリセロール、およびセバシン酸からなる群から選択される1種または2種以上の分子を重合してなるホモポリマーまたはコポリマーが挙げられる。なかでも、乳酸を構成単位として含むポリマーが好ましく、乳酸のホモポリマー(ポリ乳酸)または乳酸−グリコール酸のコポリマーがより好ましい。乳酸のホモポリマー(ポリ乳酸)または乳酸−グリコール酸のコポリマーの分子量は特に制限されるものではないが、Mwが0.5万以上100万以下であることが好ましい。乳酸のホモポリマー(ポリ乳酸)または乳酸−グリコール酸のコポリマーの製造方法としては、直接重合法や開環重合法が知られているが、特に制限されるものではなく、いずれの製法であっても問題ない。また、乳酸−グリコール酸のコポリマーにおけるモノマーの配合比は特に制限されるものではないが、乳酸とグリコール酸との配合比が5:95〜95:5のものが好ましい。乳酸のホモポリマーまたは乳酸−グリコール酸のコポリマーは、乳酸を構成単位として含むポリマーであり、乳酸の構成単位にはL体とD体の光学活性が存在し、それに付随してステレオコンプレックス体も存在するが、特に制限されるものではなく、光学活性にかかわらず測定試料とすることができる。
本工程では、水と相分離する液体中のエンドトキシンを水で抽出するが、この際に用いられる「水と相分離する液体」の具体的な形態について特に制限はない。ただし、「水と相分離する液体」は、エンドトキシン測定用試料を溶解するものであることが好ましい。特に、当該液体は、試料の投入量に対し、10質量%以上を溶解するものであることが好ましい。また、エンドトキシンの抽出効率を向上させるという観点から、水と相分離する液体は有機溶媒であることが好ましい。なお、当該有機溶媒等の液体と水との相分離を促すために、温度管理や第三成分の添加などの操作を行うことも可能である。第三成分を添加する場合、該成分が水層に抽出されその後のエンドトキシン測定時のALに対する反応阻害を示さなければ特に制限はない。
有機溶媒の具体例としては、例えば、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、四塩化炭素、塩化エチレン等の塩素化炭化水素類;フェノール類;芳香族炭化水素類;アセトニトリル;ジメチルホルムアミド;テトラヒドロフラン;ヘキサフルオロイソパノールなどが挙げられる。なかでも、エンドトキシンの定量の際に反応干渉を引き起こしにくいという観点から、上記有機溶媒は、クロロメタン、ジクロロメタンなどのハロゲン系炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、フェノール類、ヘキサフルオロイソパノールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水への溶解度が低く、試料の溶解性が高いという観点からは、ハロゲン系炭化水素類の少なくとも1種であることが特に好ましく、トリクロロメタン(クロロホルム)やジクロロメタンが最も好ましい。水と上記有機溶媒との配合割合についても特に制限はなく、好ましくは1:0.1〜1:10.0(水:有機溶媒の体積比)である。
ここで、本工程においては、例えば、まず、試料と、水と、水と相分離する液体(例えば、有機溶媒)との混合物を生成するが、これら3つの成分の混合順序については特に制限されない。水と、水と相分離する液体(有機溶媒等)との混合溶媒を予め調製しておき、そこに試料を添加してもよいし、試料に対して、水または水と相分離する液体(有機溶媒等)の一方を添加した後に他方を添加してもよい。
上述したように、本工程では、水と、水と相分離する液体と、試料とを接触させる。これにより、試料に含まれる生分解性高分子等の成分は水と相分離する液体の側へと移行して液体層(例えば、有機層)となり、試料に含まれるエンドトキシンは水側へと移行して水層となる。このように、本工程では、有機層等の液体層と水層とが分離されることによって、エンドトキシンを試料(生分解性高分子など)から抽出することが可能となるのである。
ここで、液体層(有機層)と水層との分離を確実に行うためには、上記試料を含む混合物に対して遠心分離操作を行うことによって、液体層(有機層)と水層とを分離するとよい。この際の遠心分離操作の条件については特に制限はなく、適宜設定することが可能である。
上述した前処理方法によって抽出されたエンドトキシンを用いて、例えば非特許文献1に記載されているような従来公知の手法に従い、試料中のエンドトキシン濃度を測定することが可能である。
ここで、特に、生分解性高分子が医用材料等として生体内に導入された場合には、医用材料の外部に付着したエンドトキシンのみならず、材料の内部に埋もれた状態で存在しているエンドトキシンについても正確に測定することができなければ意味がない。この点、本形態に係るエンドトキシンの測定方法によれば、生分解性高分子からなる試料の全体に含まれているエンドトキシンを正確に定量することが可能であるという利点がある。
本形態に係るエンドトキシン測定用試料の前処理方法は、試料(生分解性高分子など)を用いて薬剤を製造するにあたり、その製剤化の工程や品質管理のために用いられる。すなわち、本発明の他の形態によれば、生分解性高分子を含む薬剤の製造方法であって、上述した本発明の一形態に係る前処理方法を行い、得られた水層を用いてエンドトキシン濃度を測定することを含む、薬剤、化粧品用材料、または医用材料の製造方法もまた、提供される。さらに、エンドトキシン濃度の測定値に基づいて、試料からエンドトキシン濃度が規格値未満であるものを選抜する工程(選抜工程)を設けることにより、エンドトキシン濃度が規格値未満の薬剤、医用材料、化粧品材料を製造することもできる。
以下、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。しかしながら、本発明は、以下に示す形態に限定されるものではない。
〈実験の概要〉
第十六改正日本薬局方 一般試験法「エンドトキシン試験法」に準拠して、カイネティック−比濁法によりエンドトキシン試験を行った。
〈参考文献〉
・一般財団法人 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団編:
“日本薬局方技術情報2011”,163−167(2011)じほう.
・第十六改正 日本薬局方解説書,B−429〜B−448(2011)廣川書店.
〈試験材料・試薬・機器〉
・ライセート試薬
カブトガニ血球抽出物ES−II(和光純薬工業株式会社 Lot:KQH0328)
・エンドトキシン標準品(RSE)
Escherichia coli UKT−Bの菌体から精製した凍結乾燥品(20000EU/バイアル) コントロール番号:ENH14000001
・エンドトキシン試験用水
注射用水(100mL)(株式会社大塚製薬工場 製造番号:4F71P)
・クロロホルム
特級(関東化学株式会社 製造番号:311N1035)
・トキシノメーター
ET−6000(和光純薬工業株式会社)
〈試験詳細〉
1)検量線作成と信頼性の確認
試験に用いたガラス製の器具類は、280℃で30分間乾熱処理し滅菌処理を行った。検量線の作成と信頼性確認試験として、RSEをエンドトキシン試験用水で希釈して0.01563、0.0625、0.25EU/mLの3濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、これらの各濃度の溶液およびエンドトキシン試験用水(0.1mL)とライセート試液(0.1mL)を反応させた。
この反応液をトキシノメーターで測定してエンドトキシンによる試薬の活性化に伴って形成されるゲルによる吸光度の増加を透過光量比の減少として測定した。また、測定は37℃±1℃、60分間の条件で行い、測定各数は各3回実施した。
このゲル化反応により、各エンドトキシン濃度Cの対数値と規定した濁度に達するまでの反応時間をゲル化時間(T)から最小二乗法により検量線を作成した。また、3回の測定結果からの検量線の相関係数の絶対値が0.980以上であることが確認された。さらには、希釈用の試験用水からはエンドトキシンが検出されないことが確認された。以上より、作成された検量線の信頼性が確認された。結果を下記の表1に示す。
2)使用した溶媒と希釈倍率の検討
(比較例)
検体はポリDL乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製 PDLLA DA)を検体として使用した。ここで、検体であるポリDL乳酸が非水溶性であることから、使用する有機溶媒の種類およびその希釈倍率について、反応干渉因子試験を行った。ポリ乳酸を溶解できる有機溶媒が少なく、また使用するライセート試薬は水溶液として使用するため、水と相溶し、かつ検体の溶解度が高い有機溶媒が有効であることからアセトンおよびDMSOが望ましいと判断した。検体に対するこの2種の溶媒の溶解性は同程度であったが、DMSOを使用した場合には、溶液の粘性が若干高いこともあり、ここではアセトンを選定した。
検体のアセトン溶液の反応干渉因子試験においては、ライセート試薬水溶液とアセトン溶液とを1:1で混合するが、検体の溶解性が低いことより、水とアセトン溶液とを混合させた時点で検体が析出する可能性がある。そこで、水を混入してもアセトン溶液から検体が析出しない適正な溶液濃度について検討した(下記の表2を参照)。その結果、2mg/mL以下であれば水による試料の析出がないことが判明した。
次に、アセトンを使用した場合にライセート試薬の反応に阻害・促進を与えないアセトン溶液の希釈濃度について検討を行った。アセトン原液を試験用水で各希釈倍率になるように希釈した。その各希釈液にRSEを0.0625EU/mLになるように添加してエンドトキシンの回収率を1)の検量線とトキシノメーターT−6000から測定した(下記の表3を参照)。その結果、希釈濃度が100倍のときにエンドトキシンの回収率が50〜200%の範囲内にあることが確認された。
以上の結果から、使用するライセート試薬のエンドトキシンの検出限界(メーカー保証値:ゲル化感度)は0.015EU/mLであり、表2〜3の結果から、アセトンを使用した場合のエンドトキシンの分析が可能となる最低限界値は、
となる。よって、ポリDL乳酸を検体とする場合、検体を有機溶媒に溶解し、その有機溶媒によるライセート試薬の反応阻害が起こらない希釈倍率でエンドトキシン試験を行うときには、750EU/g以下の分析は不可能であり、要望される規格によっては分析できない可能性があることが判明した。
3)クロロホルムからのエンドトキシン添加回収の可能性の確認
(実施例1)
本試験で使用するクロロホルムについて,エンドトキシンに対する影響並びにライセート試薬に対する反応阻害または促進作用の確認するために以下の2液を調製した。
・a液:クロロホルムに0.1mLおよび希釈用試験用水0.1mLを混合して試験管ミキサーで撹拌し、遠心分離機(4500r/min、5分間、25℃)で遠心分離した。その後、上層(水層)を回収し,この試料溶液を希釈用試験用水で8倍に希釈した。
・b’液:クロロホルムに0.5EU/mLとなるようにRSEを添加し、これにクロロホルムと同量の希釈用試験用水を加えてAと同様に撹拌、遠心分離、上層回収を行った試料溶液を希釈用試験水で8倍に希釈(終濃度:0.0625EU/mL)した。
1)の検量線を使用してET−6000にてa、b’液中のエンドトキシンを分析した。また、分析は各液について2回実施した。その結果、a液においてはエンドトキシンが検出限界以下(0.01563EU/mL以下)であり、b’液におけるエンドトキシンの回収率が50〜200%の範囲にあったことからクロロホルムによる反応の阻害あるいは促進作用はないと判断された。結果を下記の表4に示す。
4)RSEとクロロホルムとの不混和の可能性
使用しているRSEは水溶液の状態であることから、疎水性であるクロロホルムとは攪拌時に混ざらず、希釈用の試験用水を投入した時点でクロロホルムの影響を受けないまま水層に移行した可能性が予想された。そこで、凍結乾燥品のControl Standard Endotoxin(CSE)をクロロホルムで懸濁させた液について検討試験を実施した。CSEにクロロホルムを加えて懸濁液を調製し(1000EU/mL)、同量のエンドトキシン試験用水を加えて激しく攪拌した後に分離した上層(水層)を回収した。この液を計算上0.05EU/mLとなるようにエンドトキシン試験用水で希釈し、カイネティック−比色法で測定したところ、0.04875EU/mLの結果となり、ほぼ100%に近い値で回収できた。このことから、クロロホルムに溶解した検体中のエンドトキシンは、クロロホルム中で影響を受けることなく、同量加えたエンドトキシン試験用水へ移行していくものと判断された。
5)反応干渉因子試験と検体中のエンドトキシン量
検体がライセート試薬に対し反応阻害または促進作用を示すか否かを確認する目的で、反応干渉因子試験を行った。試薬として以下の溶液を調製した。使用した検体は、比較例で使用したポリDL乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製 PDLLA DA)である。
・A液:検体が0.5mg/mLとなるようにクロロホルムに溶解し、クロロホルムと同量の希釈試験用水を添加して撹拌、遠心分離、上層回収を行った。この上層を8倍に希釈用試験用水で希釈した。
・B液:検体が0.5mg/mLとなるようにクロロホルムに溶解し、クロロホルムと同量の希釈試験用水を添加して撹拌、遠心分離、上層回収を行った。この上層液に0.5EU/mLとなるようにRSEを添加した後、8倍に希釈用試験用水で希釈した。
・B’液:検体が0.5mg/mLとなるようにクロロホルムに溶解した液に0.5EU/mLとなるようにRSEを添加した。この液にクロロホルムと同量の希釈試験用水を添加して撹拌、遠心分離、上層回収を行った。この上層を8倍に希釈用試験用水で希釈した。
上記3液について、2)と同様に1)の検量線を使用してET−6000によりエンドトキシンの回収量を測定した。また、分析は各液について2回実施した。結果を下記の表5に示す。B液、B’液のエンドトキシン回収率は、50〜200%の範囲にあることが確認された。また、A液は、エンドトキシンが検出限界以下であった。
B液の結果より、試料溶液の8倍希釈液による反応の阻害または促進作用はないことが確認された。また、B’液の結果より本調製方法において反応の阻害および促進は認められず、試料溶液中のエンドトキシンは損失しないことが確認された。
A液の結果より、試料溶液の8倍希釈液からはエンドトキシンは検出されなかった(検出限界:0.01563EU/mL)。したがって、検体質量当たりに換算したエンドトキシン量は、下記の式により0.250EU/g未満であることが確認された。
(実施例2)
使用した検体を乳酸−グリコール酸のコポリマー(株式会社武蔵野化学研究所製 PGDLLA SA)に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で実施した。結果を下記の表6に示す。
表6に示す結果からわかるように、実施例1と同様、検体質量当たりに換算したエンドトキシン量は0.250EU/g未満であり、試料が乳酸−グリコール酸のコポリマーの場合においても、本発明を適用しうることが確認された。
試料が水系の溶媒に溶解しにくい、または試料を溶解する溶媒がエンドトキシン測定中にALのセリンプロテアーゼを阻害または亢進する場合には濃度によってエンドトキシンの測定を行うことが困難である。しかし、以上に示す結果から、本発明によれば、高分子試料中のエンドトキシンを簡易的で安価に低濃度まで測定することが可能となることがわかる。

Claims (17)

  1. 水と相分離する液体中のエンドトキシンを、水で抽出することを含む、エンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  2. 水と相分離する液体が、エンドトキシン測定用試料を溶解するものである、請求項1に記載のエンドトキシン測定法試料の前処理方法。
  3. 前記試料が生体適合性高分子である、請求項1または2に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  4. 前記試料が生分解性高分子である、請求項3に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  5. 前記生分解性高分子が、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシアルカン酸、カプロラクトン、ビニルアルコール、トリメチレンカーボネート、グリセロール、およびセバシン酸からなる群から選択される1種または2種以上の分子を重合してなるホモポリマーまたはコポリマーである、請求項4に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  6. 前記生分解性高分子が、ポリ乳酸または乳酸とグルコール酸のコポリマーである、請求項5に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  7. 前記試料の投入量に対し、水と相分離する液体中に10質量%以上溶解する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  8. 前記液体が、ハロゲン系炭化水素類の少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  9. 前記混合溶媒における前記水と前記液体との配合割合が、1:0.1〜1:10.0(水:液体の体積比)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  10. 前記液体を含む液体層と前記水を含む水層とを遠心分離によって分離することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理方法。
  11. 前記前処理方法で得た水層を用い、既知の方法でエンドトキシン濃度の測定を行う、エンドトキシン測定方法。
  12. 生分解性高分子を含む薬剤の製造方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理を行い、得られた水層を用いてエンドトキシン濃度を測定することを含む、薬剤の製造方法。
  13. エンドトキシン濃度の測定値に基づいて、前記試料からエンドトキシン濃度が規格値未満であるものを選抜すること、および、選抜された前記試料を用いて前記薬剤を調製すること、を含む、請求項12に記載の薬剤の製造方法。
  14. 生分解性高分子を含む医用材料の製造方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載のエンドトキシン測定用試料の前処理を行い、得られた水層を用いてエンドトキシン濃度を測定することを含む、医用材料の製造方法。
  15. エンドトキシン濃度の測定値に基づいて、前記試料からエンドトキシン濃度が規格値未満であるものを選抜すること、および、選抜された前記試料を用いて前記医用材料を調製すること、を含む、請求項14に記載の医用材料の製造方法。
  16. 請求項12または13に記載の製造方法により製造される薬剤。
  17. 請求項14または15に記載の製造方法により製造される医用材料。
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