JP2017020814A - ヘテロダイン干渉計測装置、及び物品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】計測精度の点で有利な計測装置を提供する。【解決手段】ヘテロダイン干渉計測装置は、基準光と計測光とに基づいて計測値を得る処理を行う処理部を含み、前記処理部は、前記基準光に関する処理を実行する第1処理部と、前記計測光に関する処理を実行する第2処理部とを含み、前記第1及び第2処理部のそれぞれは、アナログフィルタと、前記アナログフィルタからの信号をデジタル信号に変換する変換器とを含む。前記第1及び第2処理部のうちの少なくとも前記第2処理部は、前記変換器からのデジタル信号に対するデジタルフィルタを含み、前記デジタルフィルタは、前記アナログフィルタでの信号の遅延を補償するように構成されている。【選択図】 図1
Description
本発明は、ヘテロダイン干渉計測装置、及び物品の製造方法に関する。
機械加工や検査工程に用いられる測定装置として、ヘテロダイン干渉計が知られている。ヘテロダイン干渉計は、一定の変調周波数frが印加された基準信号と、変調周波数fr成分及び計測対象物の位置情報を含む測定信号とを検出する。測定信号は、計測対象物の移動速度に応じたドップラーシフトを伴うため、fr±fdの周波数となる。これら基準信号と測定信号の周波数の差より±fdを検出し、時間積分により位相差とし、この位相差より計測対象物の位置または変位を算出する。
ここで、基準信号と測定信号は、A/D変換器によりサンプリング周波数fspでサンプリングされデジタル化される。この際、アナログ信号は、サンプリング定理を満足するようローパスフィルタによりfsp/2以下の周波数帯域に制限される。基準信号の周波数fr及び測定信号の周波数fr±fdが上記ローパスフィルタの帯域に近い場合、fr及びfr±fdの信号は、ローパスフィルタの遅延時間の影響を受ける。即ち、ローパスフィルタの遅延時間は周波数fr±fd間で一定ではなく、僅かながら変化する。この僅かな遅延時間の変化が基準信号と測定信号の周波数のずれとなり、結果として位相誤差、即ち計測対象物の位置または変位の測定誤差となる。従って、高精度な測長を要求される場合、信号周波数に対するローパスフィルタの僅かな遅延時間の変化も許容することはできない。
特表2004−501362号公報(特許文献1)には、従来のヘテロダイン干渉計の信号検出方法が開示されている。特許文献1では、信号検出における固定遅延と変動遅延が述べられ、固定遅延は、干渉計におけるケーブル長、光路長、光電検出器の遅延等により発生し、変動遅延は信号周波数によって変わる回路遅延によって発生する、とされている。ここで、変動遅延は、計測対象物の動きに応じて変化する、基準信号と測定信号の周波数の差による信号周波数を算出した後、この信号周波数に応じて予め決められた補正値を用いて補正される。
上記のとおり、ローパスフィルタでの遅延時間が計測信号の有しうる周波数の範囲において一定ではなく僅かに変化し、この遅延時間の変化により計測誤差が生じうる。
また、特許文献1の場合、信号周波数に対する補正値を予めメモリに保存しておき、算出された信号周波数に対する補正値をメモリから読み出し、信号周波数が算出される前の位相値に読み出した補正値を加減算して変動遅延による誤差を低減する。このため、信号周波数の算出、補正値の作成及びメモリへの書き込み、補正値の読み出しと補正演算等を実行するためのリソースや演算負荷が増大するという問題がある。また、信号周波数を算出してから補正値を決定し、補正を行うため、補正が行われるまでの遅延時間や信号周波数に対する補正値の精度等が問題となり、高精度な測長を行うには補正精度が不十分であるという問題がある。
そこで本発明は、例えば、計測精度の点で有利な計測装置を提供することを目的とする。
本発明の一側面によれば、ヘテロダイン干渉計測装置であって、基準光と計測光とに基づいて計測値を得る処理を行う処理部を含み、前記処理部は、前記基準光に関する処理を実行する第1処理部と、前記計測光に関する処理を実行する第2処理部とを含み、前記第1及び第2処理部のそれぞれは、アナログフィルタと、前記アナログフィルタからの信号をデジタル信号に変換する変換器とを含み、前記第1及び第2処理部のうちの少なくとも前記第2処理部は、前記変換器からのデジタル信号に対するデジタルフィルタを含み、前記デジタルフィルタは、前記アナログフィルタでの信号の遅延を補償するように構成されていることを特徴とするヘテロダイン干渉計測装置が提供される。
本発明によれば、例えば、計測精度の点で有利な計測装置を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決のために必須のものであるとは限らない。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るヘテロダイン干渉計測装置の構成を示すブロック図である。光源300は、レーザ光源で、例えば、波長=632.8nmのHeNeレーザ、波長=640〜2880nmの半導体レーザであるDFBレーザやVCSELレーザにより構成される。周波数変調部400は、AOM(Acousto-Optic Modulator:音響光学変調器)等により構成される。周波数変調部400は処理部600からの信号Vfrによって駆動されうる。ここで、信号Vfrは次式で表される。
図1は、第1実施形態に係るヘテロダイン干渉計測装置の構成を示すブロック図である。光源300は、レーザ光源で、例えば、波長=632.8nmのHeNeレーザ、波長=640〜2880nmの半導体レーザであるDFBレーザやVCSELレーザにより構成される。周波数変調部400は、AOM(Acousto-Optic Modulator:音響光学変調器)等により構成される。周波数変調部400は処理部600からの信号Vfrによって駆動されうる。ここで、信号Vfrは次式で表される。
Vfr=Va*sin(2π*fr*t) (1)
信号Vfrによって周波数変調部400が駆動されることで、レーザ光は変調周波数frで周波数変調を受ける。周波数変調を受けたレーザ光は、基準光P1として処理部600に入射する一方、不図示の計測対象物(物体)を含む干渉計500を通じて、計測光P2として処理部600に入射する。処理部600は、基準光と計測光とに基づいて計測値を得る処理を行う。
基準光P1及び計測光P2は、次式で表される。
P1=A/2*{sin(2π*fr*t+θr)+1} (2)
P2=B/2*[sin{2π*(fr+fd)*t+θd}+1] (3)
A:基準光強度
B:計測光強度
fr:周波数変調による周波数シフト
fd:ドップラー効果による周波数シフト
θr:基準光の固定位相
θd:計測光の固定位相
P2=B/2*[sin{2π*(fr+fd)*t+θd}+1] (3)
A:基準光強度
B:計測光強度
fr:周波数変調による周波数シフト
fd:ドップラー効果による周波数シフト
θr:基準光の固定位相
θd:計測光の固定位相
ここで、ドップラー効果による周波数シフトfdは、次式で表される。
fd = j*v/λ (4)
v:計測対象物の移動速度
λ:光源の波長
j:干渉計の構成により決まる次数
v:計測対象物の移動速度
λ:光源の波長
j:干渉計の構成により決まる次数
ドップラー効果による周波数シフトfd(ドップラーシフト)は、計測対象物(物体)の移動速度に応じて発生する。移動速度の方向に応じて+fd又は−fdの極性を有する。例えば、λ=1.55μmの光源で、v=1m/s、j=4の場合、fd=2.58MHzとなる。
図2は、本実施形態における処理部600の構成を示すブロック図である。処理部600は、基準光P1に関する処理を実行する第1処理部100aと、計測光P2に関する処理を実行する第2処理部100bと、デジタル信号処理部200とを含む。デジタル信号処理部200において、タイミング生成部80は、変調周波数fr及びサンプリング周波数fspを生成し、周波数変調駆動部92は、変調周波数frを入力して、周波数変調部400を駆動するための信号Vfrを出力する。
第1処理部100aは、基準光P1を受光する受光部を有する。受光部は、受光器12及びI/V変換器14を含む。基準光P1は、受光器12によって受光され電流に変換される。例えば、受光器12にはPINフォトダイオードやアバランシェフォトダイオード等が用いられる。受光器12の出力はそれぞれ、I/V変換器14に入力されて電圧に変換される。例えば、I/V変換器14は抵抗とOPアンプにより構成される。
第1処理部100aは更に、受光部の後段に設けられたアナログフィルタ150と、アナログフィルタ150を通過した基準光をデジタル信号に変換するA/D変換器18と、A/D変換器18の後段に設けられたデジタルフィルタ170とを含む。アナログフィルタ150は、受光部で受光された基準光の帯域制限を行うように構成されている。例えば、アナログフィルタ150は、高周波帯域の信号成分を制限するローパスフィルタ(LPF: Low Pass Filter)で構成されうる。
計測光P2に関する処理を実行する第2処理部100bも第1処理部100aと同様の構成を備える。すなわち、第2処理部100bは、計測光P2を受光する受光部として、受光器2及びI/V変換器4を含む。第2処理部100bはまた、受光部の後段に設けられたアナログフィルタ110と、アナログフィルタ110を通過した計測光をデジタル信号に変換するA/D変換器8と、A/D変換器8の後段に設けられたデジタルフィルタ130とを含む。アナログフィルタ110は、高周波帯域の信号成分を制限するローパスフィルタで構成されうる。
ヘテロダイン方式では基準光P1と計測光P2は交流信号であるため、アナログフィルタ110,150は、直流成分をカットし、かつ高周波帯域の信号成分を制限するバンドパスフィルタを構成してもよい。その場合、(2)式、(3)式においては、直流成分がカットされ、交流信号であるsin項のみが検出されることになる。また、受光器2,12とI/V変換器4,14では、受光器の周辺容量やI/V変換器の抵抗等によりフィルタが形成され、この形成されるフィルタは一般的には、1次遅れ要素によるLPFとなる。
アナログフィルタ110,150の出力はそれぞれ、A/D変換器8,18に入力され、サンプリング周波数fspでサンプリングされて、デジタル測定信号及びデジタル基準信号に変換される。ここで、A/D変換器に入力されるアナログ信号は、サンプリング定理を満足するローパスフィルタにより、fsp/2(ナイキスト周波数)以下の周波数帯域に制限される。本実施形態では、I/V変換器4,14やアナログフィルタ110,150により1次遅れ要素によるLPFが複数ある場合を考える。基準光及び計測光の各信号検出における、これら複数のLPFによる遅延時間をそれぞれ、tr,tmとおく。各遅延時間trとtmはフィルタ特性により信号周波数によって値が異なる。これらの条件より(2)式、(3)式の直流分を除去して表すと、下記(5)式、(6)式が得られる。
P1’=A/2*sin{2π*fr*(t−tr)+θr} (5)
P2’=B/2*sin{2π*(fr+fd)*(t−tm)+θd} (6)
P2’=B/2*sin{2π*(fr+fd)*(t−tm)+θd} (6)
これらの信号がそれぞれ、A/D変換器18,8でデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部200に入力される。デジタル信号処理部200は、例えばDSP(Digital Signal Processor)により構成されうる。あるいは、デジタル信号処理部200は、例えば、FPGA(Field Programable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されてもよい。
基準光の信号、即ちデジタル基準信号は、位相同期部であるPLL(Phase Locked Loop)250に入力される。PLL250は、デジタル基準信号と同一の周波数を有するsin及びcos信号を生成する周波数信号生成部である。PLL250は、例えば、積分演算器及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)を含む。積分演算器は、デジタル基準信号と生成したsinまたはcos信号とを乗算して位相比較を行い、高調波を除去するフィルタ演算器を閉ループ制御する。VCOは、積分演算器からの信号に基づいてsin及びcosの周波数信号を生成する。なお、VCOに代えて、予め求められたsin及びcosの値を参照テーブルとしてメモリに保存しておき、入力される積分演算器からの信号に基づいて参照テーブルよりsin信号及びcos信号を生成するように構成してもよい。PLL250により、デジタル基準信号と同一の周波数を有する、(7)式、(8)式で表されるsin信号及びcos信号が生成される。
P1_sin = Vb*sin{2π*fr*(t−tr)+θr} (7)
P1_cos = Vb*cos{2π*fr*(t−tr)+θr} (8)
Vb:振幅
P1_cos = Vb*cos{2π*fr*(t−tr)+θr} (8)
Vb:振幅
PLL250で生成されたデジタル基準信号に同期したcos信号とsin信号はそれぞれ、第1同期検波器10及び第2同期検波器20で、計測光の信号、即ち、デジタル測定信号と乗算される。第1同期検波器10及び第2同期検波器20は、例えば、乗算器で構成される。
(5),(6),(7),(8)式より、第1同期検波器10,第2同期検波器20の出力はそれぞれ、次式で表される。
P2’*P1_cos = B/2*sin{2π*(fr+fd)*(t−tm)+θd}*Vb*cos{2π*fr*(t−tr)+θr}
=B*Vb/4*[sin{2π*fd*(t−tm)+2π*fr*(tr−tm)+(θd−θr)}
+sin{4π*fr*t+2π*fd(t−tm)−2π*fr*(tm+tr)+(θd+θr)}] (9)
P2’*P1_sin = B/2*sin{2π*(fr+fd)*(t−tm)+θd}*Vb*sin{2π*fr*(t−tr)+θr}
=B*Vb/4*[cos{2π*fd*(t−tm)+2π*fr*(tr−tm)+(θd−θr)}
−cos{4π*fr*t+2π*fd(t−tm)−2π*fr*(tm+tr)+(θd+θr)}] (10)
=B*Vb/4*[sin{2π*fd*(t−tm)+2π*fr*(tr−tm)+(θd−θr)}
+sin{4π*fr*t+2π*fd(t−tm)−2π*fr*(tm+tr)+(θd+θr)}] (9)
P2’*P1_sin = B/2*sin{2π*(fr+fd)*(t−tm)+θd}*Vb*sin{2π*fr*(t−tr)+θr}
=B*Vb/4*[cos{2π*fd*(t−tm)+2π*fr*(tr−tm)+(θd−θr)}
−cos{4π*fr*t+2π*fd(t−tm)−2π*fr*(tm+tr)+(θd+θr)}] (10)
(9)、(10)式の各最終式右辺の第1項が、計測対象物の移動速度に応じて発生する周波数シフトfdを含むsin項とcos項である。最終式右辺の第2項は不要な高調波で、後段のフィルタにより除去される。
第1デシメーション部30及び第2デシメーション部50はそれぞれ、第1同期検波部10及び第2同期検波部20の出力信号のサンプリング周波数を低減させて位相演算部60に提供する。第1デシメーション部30,第2デシメーション部50はそれぞれ、デシメーション、即ちサンプリングの間引き処理及びフィルタリングを行うデシメーションフィルタを含みうる。サンプリングの間引き処理によって、入力信号のサンプリング周波数が低減される。このデシメーションフィルタは例えば、サンプリング周波数fspで動作する積分演算と間引き後の周波数で動作する微分演算により構成されるCICフィルタ(Cascaded Integrator-Comb Filter)であってもよい。この場合、上記(9)式、(10)式における不要な高調波が除去され、検出すべきドップラー周波数シフトfdを含む成分が検出される。デシメーション後は間引きにより演算周波数が下がっているためデジタル信号処理の演算負荷を低減することが可能となる。不要な高調波を除去した後の信号を表すと、(11)式、(12)式となる。
sin出力 = B*Vb/4*[sin{2π*fd*(t−tm)+2π*fr*(tr−tm)+(θd−θr)} (11)
cos出力 = B*Vb/4*[cos{2π*fd*(t−tm)+2π*fr*(tr−tm)+(θd−θr)} (12)
cos出力 = B*Vb/4*[cos{2π*fd*(t−tm)+2π*fr*(tr−tm)+(θd−θr)} (12)
こうして、(11)式より、速度に対応する位相を有する正弦関数の第1値(上記sin出力)が得られる。また、(12)式より、速度に対応する位相を有する余弦関数の第2値(上記cos出力)が得られる。処理部は、第1処理部の出力と第2処理部の出力とに基づいて、計測対象物の速度の情報を得る。具体的には、(11)式、(12)式で表される信号は位相演算部60に入力される。位相演算部60ではatan演算が行われ、これにより、ドップラー周波数fdによる位相変化が検出される。減算器62は、検出された位相変化値からメモリ64に記憶されたオフセット値を除去する。そして、位置演算部70は、位相変化値を位置又は変位の情報に変換して出力する。
(11)、(12)式の各右辺の2π*fd*(t−tm)は、計測光の処理部における複数のアナログフィルタの遅延時間tmによる信号検出の遅れを示している。また、2π*fr*(tr−tm)は、基準光と計測光の信号検出における遅延時間の差(tr−tm)と変調周波数frとによるオフセット誤差を示している。tmはドップラー周波数シフトfdにより僅かに変化するため、fdによりオフセット誤差が変化する。(θd−θr)は、固定的に発生するオフセット誤差である。
例えば、(4)式において、λ=1.55μmの光源を使用し、j=4とした場合、v=1m/sではfd=2.58MHzとなり、j=4により干渉計の等価波長λ’=光源波長λ*1/4=387.5nm、となる。高精度な位置計測における干渉計の計測誤差は1nm以下であることが求められ、位相検出精度は、等価波長λ’に対して1/1000以下であることが望まれる。特に、オフセット変動に対して厳しく要求される。
デジタルフィルタ130,170は、A/D変換器8,18の前段のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の変化を、デジタルフィルタの周波数に対する遅延時間の変化により補償し、fr±fdの周波数における遅延時間の変化を抑制する。
本実施形態では、アナログフィルタ110,150はそれぞれ、少なくとも1つの1次遅れ要素を含み、デジタルフィルタ130,170はそれぞれ、デジタルハイパスフィルタにより構成される。デジタルフィルタ130の構成例を、図3に示す。デジタルフィルタ170の構成もデジタルフィルタ130と同様であるため、デジタルフィルタ170の説明は省略する。
図3において、アナログフィルタ110は、2つの1次遅れ要素で表されている。T1,T2はフィルタ時定数であり、s=jω=j2πfである。実際には、I/V変換器4も1次遅れ要素となるため、この場合、処理部のアナログフィルタは3つの1次遅れ要素により構成されることになる。
一例として、A/D変換器8のサンプリング周波数fsp=100MHzとすると、処理部からのアナログ信号の帯域は、サンプリング定理を満足させるため、fsp/2以下(ナイキスト周波数以下)、即ち50MHz以下の周波数帯域に制限される。一般に、1次遅れ要素によるLPFのカットオフ周波数fcに対する等価帯域幅fbは、時定数=Tとすると、次式で表される。
fc = 1/(2π*T) (13)
fb = 1/(4*T) (14)
例えば、等価帯域幅をfb=50MHzとするには、Tc=5nsとなり、このときのカットオフ周波数fc=31.8MHzとなる。
fb = 1/(4*T) (14)
例えば、等価帯域幅をfb=50MHzとするには、Tc=5nsとなり、このときのカットオフ周波数fc=31.8MHzとなる。
ここで、処理部のアナログフィルタのカットオフ周波数を、fc=31.8MHz(Tc=5ns)、100MHz(1.59ns)、100MHz(1.59ns)として、3つの1次遅れ要素により構成された場合を考える。図4(a)は、アナログフィルタによる周波数特性を表したもので、上段のグラフがゲイン特性を、下段のグラフが位相特性を表している。図4(a)において、50MHzで、ゲインが−6dB以下、位相が−90度以下となっている。ここで、位相特性には、3つのアナログフィルタの時定数の合計遅延時間=8.183nsによる位相特性(一定遅延時間による位相特性)が破線で表されている。アナログフィルタの位相特性と一定遅延時間による位相特性とは、20MHz程度までは一致しているが、それ以上の周波数では特性にずれが生じ、一定遅延時間による位相特性の方が位相遅れが大きくなることが分かる。つまり、アナログフィルタは、周波数が高くなるにつれ、一定遅延時間特性とは異なり、遅延時間が等価的に短くなることが分かる。
この遅延時間の変化を(11)式、(12)式に代入して考えると、trは変調周波数frが一定であるため、遅延時間は一定であるが、tmは処理部における周波数がfr±fdの範囲で変化するため、その遅延時間は変化する。これをtm’とおくと、sin出力、cos出力は次式で表される。
sin出力 = B*Vb/4*[sin{2π*fd*(t−tm’)+2π*fr*(tr−tm’)+(θd−θr)} (15)
cos出力 = B*Vb/4*[cos{2π*fd*(t−tm’)+2π*fr*(tr−tm’)+(θd−θr)} (16)
(15)式、(16)式の各右辺第2項は、基準光と計測光の信号検出における遅延時間の差(tr−tm’)と変調周波数frとによるオフセット誤差を表す。例えば、fr=20MHzで遅延時間の差(tr−tm’)が1nsある場合、2π*20MHz*1ns=2π*0.02(rad)のオフセット誤差となる。λ=1.55μm、j=4の場合、干渉計の等価波長λ’=光源波長λ*1/4=387.5nm、より、位置オフセット誤差は、0.02*387.5nm=7.75nmとなる。例えば、位置オフセット誤差を1nm以下とするには、(tr−tm’)=50.0psとしなければならない。この値は、変調周波数frが高くなるに従い厳しくなり、例えば、fr=30MHzの場合、(tr−tm’)=33.33psとなる。このように、高精度な位置計測では、処理部のアナログフィルタの遅延時間を、周波数によらず数十psのオーダで一定に維持しなければならない。
cos出力 = B*Vb/4*[cos{2π*fd*(t−tm’)+2π*fr*(tr−tm’)+(θd−θr)} (16)
(15)式、(16)式の各右辺第2項は、基準光と計測光の信号検出における遅延時間の差(tr−tm’)と変調周波数frとによるオフセット誤差を表す。例えば、fr=20MHzで遅延時間の差(tr−tm’)が1nsある場合、2π*20MHz*1ns=2π*0.02(rad)のオフセット誤差となる。λ=1.55μm、j=4の場合、干渉計の等価波長λ’=光源波長λ*1/4=387.5nm、より、位置オフセット誤差は、0.02*387.5nm=7.75nmとなる。例えば、位置オフセット誤差を1nm以下とするには、(tr−tm’)=50.0psとしなければならない。この値は、変調周波数frが高くなるに従い厳しくなり、例えば、fr=30MHzの場合、(tr−tm’)=33.33psとなる。このように、高精度な位置計測では、処理部のアナログフィルタの遅延時間を、周波数によらず数十psのオーダで一定に維持しなければならない。
そこで本実施形態では、図3に示すデジタルフィルタ130(デジタルハイパスフィルタ)を用いて、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少を補償する。先述したように、処理部のアナログ信号帯域は、サンプリング定理を満足するようfsp/2以下(即ち、ナイキスト周波数以下)に制限される。この補償を行うために、アナログフィルタの周波数帯域とデジタルハイパスフィルタの周波数帯域とは、それぞれのカットオフ周波数を含む帯域で重なっている。
一例として、アナログ信号の等価帯域幅をfaとすると、faは、
fa ≦ fsp/2 (17)
となるように設定される。このとき、デジタルハイパスフィルタのカットオフ周波数fhは、アナログフィルタの周波数帯域以上の値、すなわち、
fh ≧ fa (18)
に設定してもよい。
一例として、アナログ信号の等価帯域幅をfaとすると、faは、
fa ≦ fsp/2 (17)
となるように設定される。このとき、デジタルハイパスフィルタのカットオフ周波数fhは、アナログフィルタの周波数帯域以上の値、すなわち、
fh ≧ fa (18)
に設定してもよい。
faがfsp/2に近い場合は、デジタルハイパスフィルタのカットオフ周波数fhは、ナイキスト周波数以上の値、すなわち、
fh ≧ fsp/2 (19)
に設定してもよい。
fh ≧ fsp/2 (19)
に設定してもよい。
ここで、デジタルハイパスフィルタの時定数Thは、
Th = 1/(2π*fh) (20)
である。
Th = 1/(2π*fh) (20)
である。
図4の例では、fa≒fsp/2であるため、デジタルハイパスフィルタのカットオフ周波数fhは(19)式となり、サンプリング周波数の半分、即ち、50MHz以上となる。ここでは、fh=100MHzとして検討を行う。
図3に示すように、ハイパスフィルタ130は、遅延素子136、減算器132、乗算器138、加算器134を含む。例えば、fsp=100MHzにおいて、fh=100MHzとするには、乗算器138のゲインGは、
G=fsp/(2π*fh)=100/(2π*100)=0.159
となる。
G=fsp/(2π*fh)=100/(2π*100)=0.159
となる。
このハイパスフィルタの周波数特性を図4(b)に示す。上段のグラフの実線がゲイン特性、下段のグラフの実線が位相特性を表している。破線は理想ハイパスフィルタ特性を表している。fh=100MHzにおける理想ハイパスフィルタは、100MHzにおいて、ゲインが+3dB、位相が+45度となるのに対し、設定されたデジタルハイパスフィルタは、ゲインは50MHzで最大となり、それ以上の周波数では低下する。また、位相は25MHz付近までは進み特性となるが、50MHzでは0度となることが分かる。つまり、デジタルハイパスフィルタの特性は、サンプリング周波数fspに近づくと理想的なハイパスフィルタとは特性が大きく異なり、fsp/2の周波数では位相進みが0となることが分かる。
このデジタルハイパスフィルタの特性について、図5を用いて考察する。この図は、サンプリング周波数100MHz(10ns)、デジタルハイパスフィルタfh=100MHz、入力信号周波数=50MHzの場合における各部信号を表している。実線は入力信号である。破線は、乗算器138の出力信号、すなわち、減算器132の出力にゲインGを乗算して得た信号である。減算器132で1つ前のサンプル値(遅延素子136の出力)との差分を取り、乗算器138でゲインを乗算する処理を考える。入力信号の周波数がfsp/2であると、fspでサンプリングして差分演算により得られた差分信号は、位相が入力信号と同期する。この差分信号が加算器134で入力信号と加算されると、デジタルハイパスフィルタの出力は、1点破線に示すようになり、入力信号と出力信号の位相が同期することとなる。すなわち、入出力信号の位相差は0度となる。
このように、デジタルハイパスフィルタのカットオフ周波数fhが、(18)式または(19)式のように設定される。これにより、カットオフ周波数fhにより決まる進み時間Thがfsp/2の周波数でゼロになる間に生じる進み時間の減少(即ち遅延時間の増加)により、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少を補償することが可能となる。
次に、図4(a)に示した位相検出部のアナログフィルタの特性を、図4(b)に示したデジタルハイパスフィルタにより遅延時間を補償し、fr±fdの周波数で遅延時間を一定とした特性を、図4(c)に示す。上段のグラフはゲイン特性を、下段のグラフは位相特性を表している。50MHzで、ゲインは−5dB以下、位相は−90度以下となっている。ここで、位相特性には、3つのアナログフィルタの時定数の合計遅延時間=8.183nsとデジタルハイパスフィルタの時定数=−1.59nsとの合計遅延時間=6.59nsによる位相特性(一定遅延時間による位相特性)が破線で表されている。アナログフィルタの位相特性と一定遅延時間による位相特性とは、50MHz程度までよく一致している。つまり、アナログフィルタによる遅延時間の減少を、デジタルハイパスフィルタの進み時間の減少(即ち遅延時間の増加)により補償されていることが分かる。
これらの周波数に対する遅延時間特性を図6に示す。破線は処理部のアナログフィルタによる等価遅延時間を表している。1MHzでは8.18nsであるが、周波数が高くなるに従い遅延時間は減少し、50MHzでは6ns程度となっていることが分かる。一点破線はfh=100MHzとしたデジタルハイパスフィルタの等価遅延時間を表している。1MHzでは位相進みにより−1.59nsであるが、周波数が高くなるにつれ位相進みが減少する(即ち、遅延時間が増加する)。その結果、先述したようにfsp/2=50MHzでは遅延時間はゼロとなる。このように、デジタルハイパスフィルタのカットオフ周波数fhにより決まる進み時間Thがfsp/2でゼロになる間に生じる進み時間の減少(即ち遅延時間の増加)により、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少が補償される。デジタルハイパスフィルタによって補償された特性は、実線のように遅延時間がfsp/2=50MHzまでほぼ一定となり、fr±fdの周波数における遅延時間の変化を抑制することが可能となる。このように本実施形態によれば、アナログフィルタにおける入力信号の周波数の増加による出力信号の遅れの減少が、デジタルフィルタにおける出力信号の進みの減少により補償される。なお、fh=100MHzの理想ハイパスフィルタの遅延時間特性を2点破線で示す。この理想ハイパスフィルタの進み時間は、100MHz程度までほぼ一定であり、このように進み時間が変化しない特性ではアナログフィルタの遅延時間の減少を補償することはできない。
次に、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少による位相のオフセット誤差と、本実施形態のデジタルハイパスフィルタにより遅延時間を補償した場合の位相のオフセット誤差の特性を、図7(a)、(b)に示す。図7において、縦軸は等価波長換算の位相誤差で、mλ(λ’*10−3)とし、各特性は、fr±fd=8±2MHz、18±2MHz、28±2MHz、30±2MHz、40±2MHzのものである。
例えば、40±2MHzの場合、デジタルハイパスフィルタによる遅延時間の補償が無い場合、(a)に示すように4mλのオフセット誤差となり、位置誤差としては1.55nmとなる。これに対し、デジタルハイパスフィルタによりアナログフィルタの遅延時間を補償した場合、(b)に示すように1.3mλ以下のオフセット誤差となり、位置誤差は1/3の0.5nmに低減される。他の周波数においても位置誤差が1/4程度に低減され、極めて良好な特性が得られることが分かる。なお、図7では、±fd=±2MHzとしたが、fdが更に大きな周波数幅となっても、デジタルハイパスフィルタによるアナログフィルタの遅延時間の補償は同様に有効であり、位相誤差は低減される。
また、(15)式、(16)式から分かるように、tm’は、アナログフィルタのみの場合=8.18nsに対し、デジタルハイパスフィルタで遅延時間を補償した場合=6.59nsとなるため、固定的なオフセットが変わる。一方、(θd−θr)は固定的に発生するオフセット誤差である。
そこで、本実施形態では、位相演算部60と位置演算部70との間にオフセット除去部が設けられる。オフセット除去部は、図2に示されるように、例えば、オフセット値を保持するメモリ64と、位相演算部60の出力からオフセット値を減算する減算器62とを含む。処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の変化を補償した後、このオフセット除去部によりデジタルフィルタに関するオフセット値が除去される。
また、(15)式、(16)式の、右辺第1項である2π*fd*(t−tm’)は、計測光の信号検出における複数のアナログフィルタによる遅延時間tm’によって信号検出が遅れることを示している。これは、検出タイミングの遅れを遅延時間tm’により補正し、影響を低減することが可能である。例えば、サンプリングのタイミングをtm’遅らせてサンプルするか、もしくは、位置出力の変化分より計測対象物の移動速度を算出し、その速度に遅延時間tm’を掛けて遅延時間tm’による計測位置ずれを補正すればよい。
このように本実施形態によれば、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少を、デジタルハイパスフィルタの進み時間の減少(即ち遅延時間の増加)により補償し、fr±fdの周波数における遅延時間の変化を抑制することが可能となる。デジタルハイパスフィルタの進み時間の減少は、理想フィルタ特性とは異なっている。カットオフ周波数fhにより決まる進み時間Thがfsp/2でゼロになる間に生じる進み時間の減少(即ち遅延時間の増加)によって、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少を補償することが可能となる。
また、アナログフィルタの周波数に対する遅延時間の変化が大きい場合には、デジタルハイパスフィルタを多段構成としてもよい。即ち、多段構成とすることにより、デジタルハイパスフィルタのカットオフ周波数fhにより決まる進み時間Thがfsp/2でゼロになる間に生じる進み時間の減少量(即ち遅延時間の増加量)を増加させる。これにより、アナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少が補償される。デジタルハイパスフィルタのfhは同一値か、もしくは別々の値でもよい。アナログフィルタの遅延時間の減少量に合わせ、(18)式または(19)式により適切に調整すればよい。
本実施形態におけるデジタルハイパスフィルタの構成は極めて簡便であり、より少ない演算リソース、演算アルゴリズム、演算負荷によりハイパスフィルタを構成することができる。従って、本実施形態によれば、簡便な構成で、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の減少を補償することが可能である。そして本実施形態によれば、計測対象物の位置または変位を測定するヘテロダイン干渉計の信号検出において、デジタル信号処理の演算負荷を低減し、低コストで高精度な位置または変位を測定することが可能となる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。第1実施形態と異なる点は、図2のアナログフィルタ110,150と、デジタルフィルタ130,170である。それ以外の構成は第1実施形態と同じであるためそれらの説明は省略する。第2実施形態におけるフィルタの構成例を図8に示す。第2処理部100bにおけるアナログフィルタ110は、2次遅れ要素で表され、ωnは固有周波数、ζは減衰率である。実際には、I/V変換器4は1次遅れ要素となるため、この場合、第2処理部100bのアナログフィルタ110は2次遅れ要素と1次遅れ要素により構成されることになる。デジタルフィルタ130はデジタルローパスフィルタにより構成される。なお、デジタル基準信号のためのデジタルフィルタ170の構成もデジタル測定信号のためのデジタルフィルタ130と同様であるため、デジタルフィルタ170の説明は省略する。
次に、第2実施形態を説明する。第1実施形態と異なる点は、図2のアナログフィルタ110,150と、デジタルフィルタ130,170である。それ以外の構成は第1実施形態と同じであるためそれらの説明は省略する。第2実施形態におけるフィルタの構成例を図8に示す。第2処理部100bにおけるアナログフィルタ110は、2次遅れ要素で表され、ωnは固有周波数、ζは減衰率である。実際には、I/V変換器4は1次遅れ要素となるため、この場合、第2処理部100bのアナログフィルタ110は2次遅れ要素と1次遅れ要素により構成されることになる。デジタルフィルタ130はデジタルローパスフィルタにより構成される。なお、デジタル基準信号のためのデジタルフィルタ170の構成もデジタル測定信号のためのデジタルフィルタ130と同様であるため、デジタルフィルタ170の説明は省略する。
ここで、一例として、A/D変換器8のサンプリング周波数fsp=100MHz、2次遅れ要素の固有周波数fo=50MHz、ζ=0.6、1次遅れ要素をfc=50MHz、50MHzの場合を考える。図9(a)は処理部のアナログフィルタによる周波数特性を表したもので、上段がゲイン特性、下段が位相特性である。ゲインは50MHzで−6dB以下、位相は−180度となっている。
ここで、2次遅れ要素が含まれる場合の遅延時間特性を見てみる。図10の破線は上記に仮定した2次遅れ要素を含む処理部のアナログフィルタによる等価遅延時間である。2次遅れ要素の固有周波数は50MHzであるが、等価遅延時間は50MHz付近で最大となり、それ以下の周波数及びそれ以上の周波数では小さな値となっている。つまり、10MHz以下では約7.7nsと一定であるが、50MHzに向かって徐々に大きくなり、50MHzで10nsの最大値となった後、それ以上の周波数では急激に減少する。
本実施形態では、少なくとも1つの2次以上の遅れ要素を含むアナログフィルタの遅延時間の変化を、デジタルローパスフィルタにより補償する。即ち、高次の遅れ要素の固有周波数fo付近の遅延時間の増加が、デジタルローパスフィルタのカットオフ周波数fLにより決まる遅延時間TLによってfsp/2でゼロになる間に生じる遅延時間の減少によって補償される。
例えば、デジタルローパスフィルタのカットオフ周波数fL=25MHzとしたときの等価遅延時間特性を図10の一点破線に示す。等価遅延時間は、10MHz以下では約2.3nsと一定であるが、10MHz以上になると減少し、fsp/2の周波数、即ち、50MHzで0となる。これらアナログフィルタとデジタルローパスフィルタの特性を合わせると、実線で示す特性となる。このように、高次の遅れ要素の固有周波数fo付近の遅延時間の増加が、デジタルローパスフィルタの遅延時間の減少によって補償され、遅延時間特性を概ね一定とすることが可能となる。
参考として、図9(b)にデジタルローパスフィルタのゲイン特性と位相特性を、図9(c)にアナログフィルタとデジタルローパスフィルタによるゲイン特性と位相特性を示す。図9(c)の位相特性には、アナログフィルタ特性が破線で表され、10nsの定遅延特性が一点破線で表され、アナログフィルタ及びデジタルローパスフィルタによる特性が実線で表されている。ここで、定遅延特性とアナログフィルタ及びデジタルローパスフィルタによる特性とは良く一致し、重なっている。
なお、図9(b)のデジタルローパスフィルタの特性は、ゲイン及び位相特性ともに、理想的なローパスフィルタとは特性を異にしている。理想ローパスフィルタでは、fL=25MHzで−3dB、−45度の位相遅れとなる。しかし、fsp=100MHz、fL=25MHzによるデジタルローパスフィルタは、ゲインは50MHz以上では減衰せずに逆に0dBに向かい、位相も50MHzで0となる。また、理想的なローパスフィルタの遅延時間TLは6.4nsであるが、デジタルローパスフィルタの遅延時間TLは、図9の一点破線より、約2.3nsと小さな値となっている。これは、デジタルハイパスフィルタを用いる第1実施形態でも説明したように、サンプリング周波数とフィルタカットオフ周波数の相対比によって発生する、デジタルフィルタ固有の特性である。本実施形態では、このデジタルフィルタ固有の遅延時間変化を利用する。即ち、デジタルローパスフィルタのカットオフ周波数fLにより決まる遅延時間TLがfsp/2でゼロになる間に生じる遅延時間の減少によりアナログフィルタの遅延時間の変化が補償される。
ここで、デジタルローパスフィルタと理想的なローパスフィルタの遅延時間特性の差異を見てみる。図12(a)はサンプリング周波数100MHzにおけるカットオフ周波数fLに対する等価遅延時間TLのデジタルローパスフィルタと理想ローパスフィルタの比である。カットオフ周波数fLがサンプリング周波数より十分小さい場合の等価遅延時間TLは、デジタルローパスフィルタと理想ローパスフィルタとでほぼ等しくなる。しかし、サンプリング周波数に近づくに従い、デジタルローパスフィルタの等価遅延時間TLは小さくなり、理想ローパスフィルタとの差は大きくなる。また、図12(b)の実線はデジタルローパスフィルタの等価遅延時間TL特性であり、破線は理想ローパスフィルタの等価遅延時間TL特性である。これより、デジタルローパスフィルタのTLは、10MHz以上の周波数で急激に理想値より減少していることが分かる。ここで、図12(b)により上記のアナログフィルタの遅延時間の変化約2.3nsを補償するために必要なデジタルローパスフィルタのカットオフ周波数fLを求めてみる。この場合、デジタルローパスフィルタの遅延時間TLを約2.3nsとするには、カットオフ周波数fLを約25MHzとする必要があることが分かる。
このように、本実施形態では、デジタルローパスフィルタのカットオフ周波数fLにより決まる遅延時間TLがfsp/2の周波数でゼロになる間に生じる遅延時間の減少により、アナログフィルタの遅延時間の変化が補償される。デジタルフィルタ130(デジタルローパスフィルタ)は、図8に示されるように、遅延素子136、減算器132、乗算器138、加算器134を含む。例えば、fsp=100MHzにおいて、fL=25MHzとするには、乗算器138のゲインGは、
exp{−(2πfL/fsp)} = exp{−(2π*25/100)}
=exp(−1.5808)=0.2079
と設定すればよい。
exp{−(2πfL/fsp)} = exp{−(2π*25/100)}
=exp(−1.5808)=0.2079
と設定すればよい。
次に、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の増加による位相のオフセット誤差と、本実施形態のデジタルローパスフィルタにより遅延時間を補償した場合の位相のオフセット誤差の特性を、図11(a)、(b)に示す。図11において、縦軸は等価波長換算の位相誤差で、mλ(λ’*10−3)とし、各特性は、fr±fd=8±2MHz、18±2MHz、28±2MHz、30±2MHz、40±2MHzのものである。
例えば、40±2MHzの場合、デジタルローパスフィルタによる遅延時間の補償が無い場合、(a)に示すように4.5mλのオフセット誤差となり、位置誤差としては1.74nmとなる。これに対し、デジタルローパスフィルタによりアナログフィルタの遅延時間を補償した場合、(b)に示すように0.8mλ以下のオフセット誤差となり、位置誤差は1/5.6の0.31nmに低減される。他の周波数においても位置誤差が1/4程度に低減され、極めて良好な特性が得られることが分かる。なお、図11では、±fd=±2MHzとしたが、fdが更に大きな周波数幅となっても、デジタルローパスフィルタによるアナログフィルタの遅延時間の補償は同様に有効であり、位相誤差は低減される。
このように本実施形態によれば、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の増加を、デジタルローパスフィルタの遅延時間の減少により補償し、fr±fdの周波数における遅延時間の変化を抑制することが可能となる。デジタルローパスフィルタの遅延時間の減少は、理想フィルタ特性とは異なり、カットオフ周波数とサンプリング周波数により決まる。処理部のアナログフィルタの遅延時間の増加量より、必要な遅延時間の減少量を求め、図12(a)、(b)に示したデジタルローパスフィルタによる遅延時間特性を基にカットオフ周波数と遅延時間を決めてもよい。また、アナログフィルタの周波数に対する遅延時間の変化が大きい場合には、デジタルローパスフィルタを多段構成としてもよい。即ち、多段構成にすることにより、デジタルローパスフィルタのカットオフ周波数fLにより決まる遅延時間TLがfsp/2でゼロになる間に生じる遅延時間の減少量を増加させ、アナログフィルタの周波数に対する遅延時間の増加を補償してもよい。デジタルローパスフィルタのfLは同一値か、もしくは別々の値でもよい。アナログフィルタの遅延時間の増加量に合わせ、図12(a)、(b)を基に決定すればよい。
本実施形態におけるデジタルローパスフィルタの構成は極めて簡便であり、より少ない演算リソース、演算アルゴリズム、演算負荷によりローパスフィルタを構成することができる。従って、本実施形態によれば、簡便な構成で、処理部のアナログフィルタの周波数に対する遅延時間の増加を補償することが可能である。具体的には、アナログフィルタにおける入力信号の周波数の増加による出力信号の遅れの増加は、デジタルフィルタにおける出力信号の遅れの減少により補償されうる。そして本実施形態によれば、計測対象物の位置または変位を測定するヘテロダイン干渉計の信号検出において、デジタル信号処理の演算負荷を低減し、低コストで高精度な位置または変位を測定することが可能となる。
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、種々のデバイスや、部品、素子等の物品を製造する際に用いられうる。本実施形態の物品の製造方法は、上記の計測装置を用いて対象物(物体)の運動状態(例えば、速度、加速度、位置)を計測する工程と、当該工程で計測された当該運動状態に基づいて対象物を処理(加工)する工程とを含む。かかる製造方法によれば例えば、対象物の運動状態が計測装置を用いて計測され、その計測結果に基づいて、対象物が目的とする被処理状態(被加工状態)となるように当該対象物を処理(加工)しうる。本実施形態の物品の製造方法は、計測装置により高精度に対象物の運動状態を計測できるため、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
本発明の実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、種々のデバイスや、部品、素子等の物品を製造する際に用いられうる。本実施形態の物品の製造方法は、上記の計測装置を用いて対象物(物体)の運動状態(例えば、速度、加速度、位置)を計測する工程と、当該工程で計測された当該運動状態に基づいて対象物を処理(加工)する工程とを含む。かかる製造方法によれば例えば、対象物の運動状態が計測装置を用いて計測され、その計測結果に基づいて、対象物が目的とする被処理状態(被加工状態)となるように当該対象物を処理(加工)しうる。本実施形態の物品の製造方法は、計測装置により高精度に対象物の運動状態を計測できるため、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
300:光源、400:周波数変調部、500:干渉計、600:信号処理部
Claims (8)
- ヘテロダイン干渉計測装置であって、
基準光と計測光とに基づいて計測値を得る処理を行う処理部を含み、
前記処理部は、
前記基準光に関する処理を実行する第1処理部と、
前記計測光に関する処理を実行する第2処理部と、
を含み、
前記第1及び第2処理部のそれぞれは、
アナログフィルタと、
前記アナログフィルタからの信号をデジタル信号に変換する変換器と、
を含み、
前記第1及び第2処理部のうちの少なくとも前記第2処理部は、前記変換器からのデジタル信号に対するデジタルフィルタを含み、
前記デジタルフィルタは、前記アナログフィルタでの信号の遅延を補償するように構成されている
ことを特徴とするヘテロダイン干渉計測装置。 - 前記アナログフィルタは、その帯域をナイキスト周波数以下に制限するようなカットオフ周波数を有し、かつ少なくとも1つの1次遅れ要素を含み、
前記アナログフィルタにおける入力信号の周波数の増加による出力信号の遅れの減少は、前記デジタルフィルタにおける出力信号の進みの減少により補償する
ことを特徴とする請求項1に記載のヘテロダイン干渉計測装置。 - 前記アナログフィルタの周波数帯域と前記デジタルフィルタの周波数帯域とは、それぞれのカットオフ周波数を含む帯域で重なっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘテロダイン干渉計測装置。
- 前記アナログフィルタは、その帯域をナイキスト周波数以下に制限するようなカットオフ周波数を有し、かつ少なくとも1つの2次以上の遅れ要素を含み、
前記アナログフィルタにおける入力信号の周波数の増加による出力信号の遅れの増加は、前記デジタルフィルタにおける出力信号の遅れの減少により補償する
ことを特徴とする請求項1に記載のヘテロダイン干渉計測装置。 - 前記処理部は、前記第1処理部の出力と前記第2処理部の出力とに基づいて、計測対象物の速度の情報を得ることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のヘテロダイン干渉計測装置。
- 前記処理部は、前記第1処理部の出力と前記第2処理部の出力とに基づいて、前記速度に対応する位相を有する正弦関数の第1値および前記位相を有する余弦関数の第2値を得、該第1値および該第2値に基づいて前記位相を得ることを特徴とする請求項5に記載のヘテロダイン干渉計測装置。
- 前記処理部は、前記デジタルフィルタに関するオフセット値を前記位相から減じて前記速度の情報を得ることを特徴とする請求項6に記載のヘテロダイン干渉計測装置。
- 請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載のヘテロダイン干渉計測装置を用いて対象物の運動状態を計測する工程と、
前記工程で計測された前記運動状態に基づいて前記対象物を処理する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
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Cited By (1)
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CN111289952A (zh) * | 2020-03-27 | 2020-06-16 | 华清瑞达(天津)科技有限公司 | 雷达目标回波模拟方法及装置 |
-
2015
- 2015-07-07 JP JP2015136365A patent/JP2017020814A/ja active Pending
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CN111289952A (zh) * | 2020-03-27 | 2020-06-16 | 华清瑞达(天津)科技有限公司 | 雷达目标回波模拟方法及装置 |
CN111289952B (zh) * | 2020-03-27 | 2023-08-15 | 华清瑞达(天津)科技有限公司 | 雷达目标回波模拟方法及装置 |
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