JP2017019095A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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秀明 金岡
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Abstract

【課題】被膜の機械特性を向上させ、切削工具の寿命をさらに長寿命化した表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備えた表面被覆切削工具であって、該被膜は、α−Al23層を含み、該α−Al23層は、複数のα−Al23の結晶粒を含み、かつ(001)配向を示し、該結晶粒の粒界は、CSL粒界と一般粒界とを含み、該CSL粒界のうちΣ3型結晶粒界の長さは、Σ3−29型結晶粒界の長さの80%超であり、かつ該Σ3−29型結晶粒界の長さと該一般粒界の長さとの和である全粒界の合計長さの10%以上50%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面被覆切削工具に関する。
従来より、基材上に被膜を形成した表面被覆切削工具が用いられてきた。たとえば、特開2006−198735号公報(特許文献1)は、Σ3型結晶粒界がΣ3−29型結晶粒界に占める割合が60−80%となるα−Al23層を含む被膜を有する表面被覆切削工具を開示している。
また、特表2014−526391号公報(特許文献2)は、Σ3型結晶粒界の長さがΣ3−29型結晶粒界の長さの80%超となるα−Al23層を含む被膜を有する表面被覆切削工具を開示している。
特開2006−198735号公報 特表2014−526391号公報
多結晶のα−Al23からなるα−Al23層を含む被膜において、α−Al23層に含まれる粒界におけるΣ3型結晶粒界の占める割合が高くなるほど機械特性をはじめとする種々の特性が向上し、以って耐摩耗性や耐欠損性が向上することから切削工具の寿命が長くなることが期待される。
しかしながら、近年の切削加工においては、高速化および高能率化が進行し、切削工具にかかる負荷が増大し、切削工具の寿命が短期化することが問題となっていた。このため、切削工具の被膜の機械特性をさらに向上させ、切削工具の寿命をさらに長寿命化することが求められている。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、被膜の機械特性を向上させ、切削工具の寿命をさらに長寿命化した表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明の一態様に係る表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備え、該被膜は、α−Al23層を含み、該α−Al23層は、複数のα−Al23の結晶粒を含み、かつ(001)配向を示し、該結晶粒の粒界は、CSL粒界と一般粒界とを含み、該CSL粒界のうちΣ3型結晶粒界の長さは、Σ3−29型結晶粒界の長さの80%超であり、かつ該Σ3−29型結晶粒界の長さと該一般粒界の長さとの和である全粒界の合計長さの10%以上50%以下である。
上記によれば、被膜の機械特性が向上し、切削工具の寿命をさらに長寿命化することができる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
[1]本発明の一態様に係る表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備えた表面被覆切削工具であって、該被膜は、α−Al23層を含み、該α−Al23層は、複数のα−Al23の結晶粒を含み、かつ(001)配向を示し、該結晶粒の粒界は、CSL粒界と一般粒界とを含み、該CSL粒界のうちΣ3型結晶粒界の長さは、Σ3−29型結晶粒界の長さの80%超であり、かつ該Σ3−29型結晶粒界の長さと該一般粒界の長さとの和である全粒界の合計長さの10%以上50%以下である。この表面被覆切削工具は、被膜の機械特性が向上し、寿命が長寿命化されたものとなる。
[2]上記CSL粒界は、上記Σ3型結晶粒界、Σ7型結晶粒界、Σ11型結晶粒界、Σ17型結晶粒界、Σ19型結晶粒界、Σ21型結晶粒界、Σ23型結晶粒界、およびΣ29型結晶粒界からなり、上記Σ3−29型結晶粒界の長さは、上記CSL粒界を構成するΣ3型結晶粒界、Σ7型結晶粒界、Σ11型結晶粒界、Σ17型結晶粒界、Σ19型結晶粒界、Σ21型結晶粒界、Σ23型結晶粒界、およびΣ29型結晶粒界のそれぞれの長さの総計であることが好ましい。これにより、上記の効果が十分に発揮される。
[3]上記α−Al23層は、2〜20μmの厚みを有することが好ましい。これにより、上記の特性が最も効果的に発揮される。
[4]上記α−Al23層は、表面粗さRaが0.2μm未満であることが好ましい。これにより、被削材と工具刃先との凝着摩耗が抑制され、その結果として刃先の耐チッピング性が向上したものとなる。
[5]上記α−Al23層は、上記被膜の表面側から2μm以内の領域に圧縮応力の絶対値が最大となる地点を含み、該地点における圧縮応力の絶対値は1GPa未満であることが好ましい。これにより、断続切削加工時に発生する機械的、熱的疲労による工具刃先の欠損が抑制され、その結果として刃先の信頼性が向上したものとなる。
[6]上記被膜は、上記基材と上記α−Al23層との間にTiCxy層を含み、該TiCxy層は、0.6≦x/(x+y)≦0.8という関係の原子比を満たすTiCxyを含むことが好ましい。これにより、基材とα−Al23層との密着性が向上する。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本実施形態の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備えた構成を有する。このような被膜は、基材の全面を被覆することが好ましいが、基材の一部がこの被膜で被覆されていなかったり、被膜の構成が部分的に異なったりしていたとしても本実施形態の範囲を逸脱するものではない。
このような本実施形態の表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具として好適に使用することができる。
<基材>
本実施形態の表面被覆切削工具に用いられる基材は、この種の基材として従来公知のものであればいずれのものも使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、立方晶型窒化硼素焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。
これらの各種基材の中でも、特にWC基超硬合金、サーメット(特にTiCN基サーメット)を選択することが好ましい。これは、これらの基材が特に高温における硬度と強度とのバランスに優れ、上記用途の表面被覆切削工具の基材として優れた特性を有するためである。
なお、表面被覆切削工具が刃先交換型切削チップ等である場合、このような基材は、チップブレーカを有するものも、有さないものも含まれ、また、刃先稜線部は、その形状がシャープエッジ(すくい面と逃げ面とが交差する稜)、ホーニング(シャープエッジに対してアールを付与したもの)、ネガランド(面取りをしたもの)、ホーニングとネガランドとを組み合せたもののいずれのものも含まれる。
<被膜>
本実施形態の被膜は、α−Al23層を含む限り、他の層を含んでいてもよい。他の層としては、たとえばTiN層、TiCN層、TiBNO層、TiCNO層、TiB2層、TiAlN層、TiAlCN層、TiAlON層、TiAlONC層等を挙げることができる。なお、その積層の順も特に限定されない。
なお、本実施形態において、「TiN」、「TiCN」、「TiCxy」等の化学式において特に原子比を特定していないものは、各元素の原子比が「1」のみであることを示すものではなく、従来公知の原子比が全て含まれるものとする。
このような本実施形態の被膜は、基材を被覆することにより、耐摩耗性や耐チッピング性等の諸特性を向上させる作用を有するものである。
このような本実施形態の被膜は、3〜30μm(3μm以上30μm以下、なお本願において数値範囲を「〜」を用いて表わす場合、その範囲は上限および下限の数値を含むものとする)、より好ましくは5〜20μmの厚みを有することが好適である。その厚みが3μm未満では、耐摩耗性が不十分となる場合があり、30μmを超えると、断続加工において被膜と基材との間に大きな応力が加わった際に被膜の剥離または破壊が高頻度に発生する場合がある。
<α−Al23層>
本実施形態の被膜は、α−Al23層を含む。このα−Al23層は、当該被膜中に一層または二層以上含まれることができる。
このα−Al23層は、複数のα−Al23(結晶構造がα型である酸化アルミニウム)の結晶粒を含んだ層である。すなわち、この層は、多結晶のα−Al23により構成される。通常この結晶粒は、約100〜2000nm程度の大きさの粒径を有する。
また、このα−Al23層は、(001)配向を示す。ここで、「(001)配向を示す」とは、(001)面に対する法線方向がα−Al23層表面(被膜表面側に位置する表面とする)の法線方向に対して±20°以内となる結晶粒(α−Al23)の割合がα−Al23層中で50%以上となる場合を言うものとする。具体的には、後述の電子線後方散乱回折(EBSD)として知られる走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてα−Al23層の垂直断面(上記α−Al23層表面の法線方向に平行な断面)を観察し、それをカラーマッピングによる画像処理をした場合、α−Al23層に占める上記の結晶粒の面積比率が50%以上となる場合をいうものとする。
そして、上記複数のα−Al23の結晶粒の粒界(以下、単に「結晶粒界」とも記す)は、CSL粒界と一般粒界とを含み、CSL粒界のうちΣ3型結晶粒界の長さは、Σ3−29型結晶粒界の長さの80%超であり、かつΣ3−29型結晶粒界の長さと一般粒界の長さとの和である全粒界の合計長さの10%以上50%以下であることを特徴とする。これにより、本実施形態の被膜(α−Al23層)は、機械特性が向上し、以って切削工具の寿命をさらに長寿命化することができる。
結晶粒界は、結晶粒成長などの物質特性、クリープ特性、拡散特性、電気特性、光学特性、および機械特性に大きな影響を及ぼす。考慮すべき重要な特性としては、たとえば、物質中の結晶粒界密度、界面の化学組成、および結晶学的組織、すなわち結晶粒界面方位および結晶粒方位差である。特に、対応格子(CSL)結晶粒界が特殊な役割を果たしている。CSL結晶粒界(単に「CSL粒界」ともいう)は、多重度インデックス(multiplicity index)Σによって特徴付けられ、それは結晶粒界で接している2つの結晶粒の結晶格子部位密度と、両結晶格子を重ね合わせた場合に対応する部位の密度との比率として定義される。単純な構造の場合、低Σ値の結晶粒界は、低界面エネルギーおよび特殊な特性を有する傾向にあることが一般的に認められている。したがって、特殊結晶粒界の割合およびCSLモデルから推定される結晶粒方位差の分布の制御は、セラミック被膜の特性およびこれらの特性を向上させる方法にとって重要であると考えられる。
近年、電子線後方散乱回折(EBSD)として知られる走査型電子顕微鏡(SEM)に基づく技術が出現し、セラミック物質中の結晶粒界の研究に用いられている。EBSD技術は、後方散乱電子によって発生する菊池回折パターンの自動分析に基づいている。
対象とする物質の各結晶粒について、結晶学的方位は、対応する回折パターンのインデックス後に決定される。市販のソフトウェアにより、組織分析および結晶粒界性格分布(GBCD)の決定がEBSDを用いることによって比較的容易に行なわれる。EBSDを界面に適用することにより、界面の大きなサンプル集団について結晶粒界の方位差を決定することが可能である。通常、方位差分布は、物質の処理条件と関連付けられている。結晶粒界方位差は、オイラー角、角/軸対(angle/axis pair)、またはロドリゲスベクトルなどの通常の方位パラメータによって得ることができる。CSLモデルは、特性決定用のツールとして広く用いられている。
本実施形態のCSL粒界は、通常、上記Σ3型結晶粒界の他、Σ7型結晶粒界、Σ11型結晶粒界、Σ17型結晶粒界、Σ19型結晶粒界、Σ21型結晶粒界、Σ23型結晶粒界、およびΣ29型結晶粒界からなる。ただし、上記の電子線後方散乱回折(EBSD)として知られる走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した場合に、Σ3型結晶粒界以外のいずれか1以上の結晶粒界が観察されない場合でも本実施形態の効果を示す限り本実施形態の範囲を逸脱するものではない。
本実施形態のΣ3型結晶粒界は、α−Al23のCSL結晶粒界の中で最も低い粒界エネルギーを有するものと考えられ、以って全CSL結晶粒界に占める割合を高くすることにより機械特性(特に耐塑性変形性)を高めることができると考えられる。このため、本実施形態では、全CSL結晶粒界をΣ3−29型結晶粒界という表記で表わし、このΣ3型結晶粒界の長さをΣ3−29型結晶粒界の長さの80%超として規定したものである。Σ3型結晶粒界の長さは、より好ましくはΣ3−29型結晶粒界の長さの83%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。このように、その数値は、高くなればなる程好ましく、その上限を規定する必要はないが、多結晶薄膜であるという観点からその上限は99%以下である。
ここで、Σ3型結晶粒界の長さとは、EBSDで観察される視野中のΣ3型結晶粒界の合計長さを示し、Σ3−29型結晶粒界の長さとは、EBSDで観察される視野中の、以下で定義されるΣ3−29型結晶粒界の合計長さを示す。すなわち、Σ3−29型結晶粒界の長さとは、それぞれCSL粒界を構成する、Σ3型結晶粒界、Σ7型結晶粒界、Σ11型結晶粒界、Σ17型結晶粒界、Σ19型結晶粒界、Σ21型結晶粒界、Σ23型結晶粒界、およびΣ29型結晶粒界のそれぞれの長さの総計とする。
一方、このΣ3型結晶粒界は、低い粒界エネルギーを有していることからも明らかなように高い整合性を有する結晶粒界であることから、Σ3型結晶粒界を粒界とする2つの結晶粒は単結晶または双晶類似の挙動を示し、粗粒化する傾向を示す。結晶粒が粗粒化すると、耐チッピング性等の被膜特性が低下するため、粗粒化を抑制する必要がある。そのため、本実施形態では、Σ3型結晶粒界の長さを全粒界の合計長さの10%以上50%以下と規定し、上記の抑制効果を担保したものである。
したがって、Σ3型結晶粒界の長さが全粒界の合計長さの50%を超えると結晶粒が粗粒化するため好ましくなく、また10%未満では上記の優れた機械特性が得られなくなる。より好ましい範囲は、20〜45%、さらに好ましい範囲は30〜40%である。
ここで、全粒界とは、CSL結晶粒界以外の結晶粒界とCSL結晶粒界とを加算したものである。なお、CSL結晶粒界以外の結晶粒界は、便宜的に一般粒界と呼ぶものとする。よって、一般粒界とは、EBSDで観察した場合のα−Al23の結晶粒の全粒界からΣ3−29型結晶粒界を除いた残余部分となる。したがって、「全粒界の合計長さ」とは「Σ3−29型結晶粒界の長さと一般粒界の長さの和」として表わすことができる。
本実施形態において、Σ3型結晶粒界の長さがΣ3−29型結晶粒界の長さの80%超であるか否か、および、Σ3型結晶粒界の長さが全粒界の合計長さの10%以上50%以下であるか否かは、次のようにして確認することができる。
すなわち、まずα−Al23層を後述の製造方法に基づき形成する。そして、形成されたα−Al23層を(基材なども含め)α−Al23層に垂直な断面が得られるように切断する(すなわち、α−Al23層の表面に対する法線を含む平面でα−Al23層を切断した切断面が露出するように切断する)。その後、その切断面を耐水研磨紙(研磨剤としてSiC砥粒研磨剤を含むもの)で研磨する。
なお、上記の切断は、たとえばα−Al23層表面(α−Al23層上に他の層が形成されている場合は被膜表面とする)を十分に大きな保持用の平板上にワックス等を用いて密着固定した後、回転刃の切断機にてその平板に対して垂直方向に切断する(該回転刃と該平板とが可能な限り垂直となるように切断する)ものとする。この切断は、このような垂直方向に対して行なわれる限り、α−Al23層の任意の部位で行なうことができるが、後述のような切刃先端部を含むように切断することが好ましい。
また、上記の研磨は、当該耐水研磨紙#400、#800、#1500を順に用いて行なうものとする(耐水研磨紙の番号(#)は研磨剤の粒径の違いを意味し、数字が大きくなるほど研磨剤の粒径は小さくなる)。
引続き、上記の研磨面をArイオンによるイオンミーリング処理によりさらに平滑化する。イオンミーリング処理の条件は以下の通りである。
加速電圧:6kV
照射角度:α−Al23層表面の法線方向(すなわち該切断面におけるα−Al23層の厚み方向に平行となる直線方向)から0°
照射時間:6時間。
その後、上記の平滑化された研磨面をEBSDを備えたSEMによって観察する。該観察場所は、特に限定されないが、切削特性との関係を考慮すると切刃先端部を観察することが好ましい。切刃先端部とは、通常すくい面と逃げ面とが交差する刃先稜線部を意味するが、刃先稜線部がホーニング加工や面取り加工されている場合は、その加工範囲内の任意の箇所を観察するものとする。
SEMは、HKL NL02 EBSD検出器を備えたZeiss Supra 35 VP(CARL ZEISS社製)を用いる。EBSDデータは、集束電子ビームを各ピクセル上へ個別に位置させることによって順に収集する。
サンプル面(平滑化処理したα−Al23層)の法線は、入射ビームに対して70°傾斜させ、分析は、15kVにて行なう。帯電効果を避けるために、10Paの圧力を印加する。開口径60μmまたは120μmと合わせて高電流モードを用いる。データ収集は、研磨面上、50×30μmの面領域に相当する500×300ポイントについて、0.1μm/ステップのステップにて行なう。
データ処理は、ノイズフィルタリング有りおよび無しで行なう。ノイズフィルタリングおよび結晶粒界性格分布は、市販のソフトウェア(商品名:「orientation Imaging microscopy Ver 6.2」、EDAX社製)を用いて決定する。結晶粒界性格分布の分析は、Grimmer(H.Grimmer,R.Bonnet,Philosophical Magazine A 61(1990),493-509)から入手可能であるデータに基づいて行なう。ブランドンの条件(Brandon criterion)(ΔΘ<Θ0(Σ)-0.5、ここで、Θ0=15°)を用いて、実験値の理論値からの許容誤差を考慮に入れる(D.Brandon Acta metall.14(1966),1479-1484)。任意のΣ値に対応する特殊結晶粒界を計数し、全結晶粒界に対する比として表すことによって確認することができる。すなわち、以上により、Σ3型結晶粒界の長さ、Σ3−29型結晶粒界の長さ、および全粒界の合計長さを求めることができる。
一方、α−Al23層が(001)配向を示すか否かは次のようにして確認することができる。すなわち、上記と同様にしてα−Al23層に垂直な断面が得られるようにα−Al23層を切断した後、同じく同様にして研磨および平滑化処理を行なう。
そして、このように処理された切断面に対して、上記と同様のEBSDを備えたSEMを用いてα−Al23層が(001)配向を示すか否かを確認する。具体的には、上記と同じソフトウェアを用いて各測定ピクセルの(001)面の法線方向と、α−Al23層表面(被膜表面側に位置する表面とする)の法線方向(すなわち該切断面におけるα−Al23層の厚み方向に平行となる直線方向)とのなす角度を算出し、その角度が±20°以内となるピクセルが選択されるようなカラーマップを作成する。なお、この場合、カラーマップは切断面(すなわちα−Al23層)の全面に亘って作成される。
具体的には、上記ソフトウェアに含まれる「Cristal Direction MAP」の手法を用いて、α−Al23層表面の法線方向と各測定ピクセルの(001)面の法線方向とのTolerance20°(方向差が±20°以内となるもの)のカラーマップを作成する。そして、このカラーマップに基づいて上記ピクセルの面積比を算出することにより、その面積比が50%以上となる場合に「α−Al23層が(001)配向を示す」ものとする。
<α−Al23層の厚み>
α−Al23層は、2〜20μmの厚みを有することが好ましい。これにより、上記のような優れた効果を発揮することができる。その厚みは、3〜15μmであることがより好ましく、5〜10μmであることがさらに好ましい。
上記厚みが2μm未満である場合、上記のような優れた効果を十分に発揮できない場合があり、20μmを超えると、α−Al23層と下地層等の他の層との線膨張係数の差に起因する界面応力が大きくなり、α−Al23の結晶粒が脱落する場合がある。このような厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて基材と被膜の垂直断面観察により確認することができる。
<α−Al23層の表面粗さ>
α−Al23層は、表面粗さRaが0.2μm未満であることが好ましい。これにより、切りくずと工具刃先との間の摩擦係数が低減し、耐チッピング性が向上するだけでなく、安定した切りくず排出性を発揮できる。表面粗さRaは、0.15μm未満であることがより好ましく、0.10μm未満であることがさらに好ましい。このように表面粗さRaは、低くなればなる程好ましく、その下限を規定する必要はないが、被膜は基材の表面性状の影響を受けるという観点からその下限は0.05μm以上である。
なお、本願において表面粗さRaは、JIS B 0601(2001)の算術平均粗さRaを意味するものとする。
<α−Al23層の圧縮応力>
α−Al23層は、被膜の表面側から2μm以内の領域に圧縮応力の絶対値が最大となる地点を含み、該地点における圧縮応力の絶対値は1GPa未満であることが好ましい。これにより、断続切削加工時に発生する工具刃先の機械的、熱的疲労に伴う刃先の突発欠損が抑制され、省人/省エネルギー効果を発揮できる。該絶対値は、より好ましくは0.9GPa未満であり、さらに好ましくは0.8GPa未満である。上記絶対値の下限は、特に限定されないが、耐摩耗性と耐欠損性のバランスという観点からその下限は0.2GPa以上である。
ここで、「被膜の表面側」とは、α−Al23層の厚み方向において、基材側とは反対側のサイドを意味し、α−Al23層上に他の層が形成されない場合はα−Al23層の表面を意味する。
なお、本実施形態における圧縮応力は、従来公知のX線を用いたsin2ψ法、侵入深さ一定法等により測定することができる。
<TiCxy層>
本実施形態の被膜は、基材とα−Al23層との間にTiCxy層を含むことができる。このTiCxy層は、0.6≦x/(x+y)≦0.8という関係の原子比を満たすTiCxyを含むことが好ましい。これにより、基材とα−Al23層との密着性が向上する。
該原子比は、より好ましくは0.65≦x/(x+y)≦0.75であり、さらに好ましくは0.67≦x/(x+y)≦0.72である。該x/(x+y)が0.6未満の場合、耐摩耗性が不十分となることがあり、0.8を超えると耐チッピング性が不十分となることがある。
<製造方法>
本実施形態の表面被覆切削工具は、基材上に被膜を化学気相蒸着法により形成することによって製造することができる。被膜のうち、α−Al23層以外の被膜が形成される場合、それらの被膜は従来公知の条件で形成することができる。一方、α−Al23層は、以下のようにして形成することができる。
すなわち、まず原料ガスとして、AlCl3、HCl、CO2、CO、H2S、O2、およびH2を用いる。配合量は、AlCl3を3〜5体積%、HClを4〜6体積%、CO2を0.5〜2体積%、COを0.1〜1体積%、H2Sを1〜5体積%、O2を0.0001〜0.01体積%とし、残部はH2とする。さらに0.1≦CO/CO2≦1、0.1≦CO2/H2S≦1、0.1≦CO2/AlCl3≦1、0.5≦AlCl3/HCl≦1という体積比を採用することが好ましい。
また、化学気相蒸着法の諸条件は、温度が950〜1050℃であり、圧力が1〜5kPaであり、ガス流量(全ガス量)が50〜100L/minである。
そして、このようにして化学気相蒸着法によりα−Al23層を一旦形成した後、アニールを行なう。アニールの条件は、温度が1050〜1080℃であり、圧力が50〜100kPaであり、時間が120〜300分である。またこのアニールの雰囲気は、20〜30L/minの流量のH2とAr(アルゴン)とを流すことにより行なわれる。
このようにして、所望の厚みの本実施形態のα−Al23層を形成することができる。とりわけ、原料ガス中のO2の体積比を上記の範囲としたことにより、爆発等の危険性を低減させつつ十分な成膜速度を確保することができ、また成膜後に上記のようなアニールを行なうことによりα−Al23層中に硫黄等の不純物が残存することを防止できるため、本実施形態のα−Al23層の製造方法として特に優れたものとなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<基材の調製>
以下の表1に記載の基材Pおよび基材Kの2種類の基材を準備した。具体的には、表1に記載の配合組成からなる原料粉末を均一に混合し、所定の形状に加圧成形した後、1300〜1500℃で1〜2時間焼結することにより、形状がCNMG120408NUX(住友電気工業製、JIS B4120(2013))の超硬合金製の基材を得た。
Figure 2017019095
<被膜の形成>
上記で得られた各基材に対してその表面に被膜を形成した。具体的には、基材を化学気相蒸着装置内にセットすることにより、基材上に化学気相蒸着法により被膜を形成した。被膜の形成条件は、以下の表2および表3に記載した通りである。表2はα−Al23層以外の各層の形成条件を示し、表3はα−Al23層の形成条件を示している。なお、表2中のTiBNOとTiCNOは後述の表5の中間層であり、それ以外のものも表5中のα−Al23層を除く各層に相当することを示す。また、TiCxy層は、原子比x/(x+y)が0.7であるTiCxyからなるものである。
また、表3に示すように、α−Al23層の形成条件はA〜GとX〜Zの10通りであり、このうちA〜Gが実施例の条件であり、X〜Zが比較例(従来技術)の条件である。
なお、A〜Gの条件で形成した実施例のα−Al23層のみについて、表4に記載したアニール時間の間、1050℃、50kPa、H2の流量を20L/min、Arの流量を30L/minの条件でアニールを行なった。
たとえば、形成条件Aは、3.2体積%のAlCl3、4.0体積%のHCl、1.0体積%のCO2、0.5体積%のCO、2体積%のH2S、0.003体積%のO2、そして残部H2から組成の原料ガスを化学気相蒸着装置へ供給し、圧力3.5kPaおよび温度1000℃の条件下、流量(全ガス量)70L/minの条件で化学気相蒸着法を実行し、その後、上記の条件で180分間アニールすることによってα−Al23層が形成されることを示している。
なお、表2に記載したα−Al23層以外の各層についても、アニールを行なわないことを除き、同様に化学気相蒸着法により形成した。なお、表2中の「残り」とは、H2が原料ガスの残部を占めることを示している。また、「全ガス量」とは、標準状態(0℃、1気圧)における気体を理想気体とし、単位時間当たりに化学気相蒸着装置に導入された全体積流量を示す(表3のα−Al23層についても同じ)。
また、各被膜の組成および厚みは、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光)により確認し、α−Al23層のΣ3型結晶粒界の長さ、Σ3−29型結晶粒界の長さ、および全粒界の合計長さを、上述の方法により確認した。また、α−Al23層の(001)配向の有無も上述の方法により確認した。
その結果、各被膜の組成および厚みは表5の通りであり、α−Al23層のΣ3型結晶粒界の長さがΣ3−29型結晶粒界の長さの何%であり、かつ全粒界の合計長さの何%になるかを、表4の「Σ3/Σ3−29」、「Σ3/全粒界」の項にそれぞれ示した。また、(001)面に対する法線方向がα−Al23層表面(被膜表面側に位置する表面とする)の法線方向に対して±20°以内となる結晶粒(α−Al23)の割合(%)を、同じく表4の「(001)配向の割合」の項に示した。
Figure 2017019095
Figure 2017019095
Figure 2017019095
<表面被覆切削工具の作製>
上記の表2〜表4の条件により基材上に被膜を形成することにより、以下の表5に示した実施例1〜15および比較例1〜6の表面被覆切削工具を作製した。なお、各層の厚みは、成膜時間を適宜調節することにより調整した(各層の成膜速度は約0.5〜2.0μm/時間である)。
たとえば実施例4の表面被覆切削工具は、基材として表1に記載の基材Pを採用し、その基材Pの表面に下地層として厚み0.5μmのTiN層を表2の条件で形成し、その下地層上に厚み5.0μmのTiCxy層を表2の条件で形成し、そのTiCxy層上に中間層として厚み0.5μmのTiBNO層を表2の条件で形成し、その中間層上に厚み5.0μmのα−Al23層を表3および表4の形成条件Bで作成し、その後、最外層として厚み1.0μmのTiN層を表2の条件で形成することにより、基材上に合計厚み12.0μmの被膜を形成した構成であることを示している。この実施例4の表面被覆切削工具のα−Al23層は、Σ3型結晶粒界の長さがΣ3−29型結晶粒界の長さの88%であり、かつ全粒界の合計長さの30%になる。またこのα−Al23層は、(001)配向を示す(すなわち(001)面に対する法線方向がα−Al23層表面の法線方向に対して±20°以内となる結晶粒(α−Al23)の割合がα−Al23層中で57%である)。
なお、比較例1〜6のα−Al23層は全て本発明の方法に従わない従来技術の条件で形成されているため、それらのα−Al23層は、本発明のような特性を示さない結晶組織により構成されることになる(表3および表4参照)。
なお、表5中の空欄は、該当する層が形成されていないことを示す。
Figure 2017019095
<切削試験>
上記で得られた表面被覆切削工具を用いて、以下の5種類の切削試験を行なった。
<切削試験1>
以下の表6に記載した実施例および比較例の表面被覆切削工具について、以下の切削条件により逃げ面摩耗量(Vb)が0.20mmとなるまでの切削時間を測定するとともに刃先の最終損傷形態を観察した。その結果を表6に示す。切削時間が長いもの程、耐摩耗性に優れ、工具寿命が長くなっていることを示す。また、最終損傷形態が摩耗となるものは、耐チッピング性に優れ、同じく工具寿命が長くなっていることを示す。
<切削条件>
被削材:SUJ2丸棒外周切削
周速:350m/min
送り速度:0.2mm/rev
切込み量:2.0mm
切削液:あり。
Figure 2017019095
表6より明らかなように実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、耐摩耗性および耐チッピング性の両者に優れており、工具寿命が長期化していることは明らかである。すなわち、実施例の表面被覆切削工具の被膜の機械特性が向上していることが確認できた。
<切削試験2>
以下の表7に記載した実施例および比較例の表面被覆切削工具について、以下の切削条件により逃げ面摩耗量(Vb)が0.20mmとなるまでの切削時間を測定するとともに刃先の最終損傷形態を観察した。その結果を表7に示す。切削時間が長いもの程、耐摩耗性に優れ、工具寿命が長くなっていることを示す。また、最終損傷形態が摩耗となるものは、耐チッピング性に優れ、同じく工具寿命が長くなっていることを示す。
<切削条件>
被削材:S50C丸棒外周切削
周速:300m/min
送り速度:0.5mm/rev
切込み量:2.0mm
切削液:あり。
Figure 2017019095
表7より明らかなように実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、耐摩耗性に優れており、工具寿命が長期化していることは明らかである。すなわち、実施例の表面被覆切削工具の被膜の機械特性が向上していることが確認できた。
<切削試験3>
以下の表8に記載した実施例および比較例の表面被覆切削工具について、以下の切削条件により逃げ面摩耗量(Vb)が0.20mmとなるまでの切削時間を測定するとともに刃先の最終損傷形態を観察した。その結果を表8に示す。切削時間が長いもの程、耐摩耗性に優れ、工具寿命が長くなっていることを示す。また、最終損傷形態が摩耗となるものは、耐チッピング性に優れ、同じく工具寿命が長くなっていることを示す。
<切削条件>
被削材:FCD600丸棒外周切削
周速:300m/min
送り速度:0.3mm/rev
切込み量:1.5mm
切削液:あり。
Figure 2017019095
表8より明らかなように実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、耐摩耗性および耐チッピング性の両者に優れており、工具寿命が長期化していることは明らかである。すなわち、実施例の表面被覆切削工具の被膜の機械特性が向上していることが確認できた。
<切削試験4>
以下の表9に記載した実施例および比較例の表面被覆切削工具について、以下の切削条件により逃げ面摩耗量(Vb)が0.20mmとなるまでの切削時間を測定するとともに刃先の最終損傷形態を観察した。その結果を表9に示す。切削時間が長いもの程、耐摩耗性に優れ、工具寿命が長くなっていることを示す。また、最終損傷形態が摩耗となるものは、耐チッピング性に優れ、同じく工具寿命が長くなっていることを示す。
<切削条件>
被削材:FC200丸棒外周切削
周速:500m/min
送り速度:0.25mm/rev
切込み量:1.5mm
切削液:あり。
Figure 2017019095
表9より明らかなように実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、耐摩耗性に優れており、工具寿命が長期化していることは明らかである。すなわち、実施例の表面被覆切削工具の被膜の機械特性が向上していることが確認できた。
<切削試験5>
以下の表10に記載した実施例および比較例の表面被覆切削工具について、以下の切削条件により工具が欠損するまでの切削時間を測定した。その結果を表10に示す。切削時間が長いもの程、耐欠損性に優れ、工具寿命が長くなっていることを示す。
<切削条件>
被削材:SCM440(90°×4溝外周切削)
周速:200m/min
送り速度:0.2mm/rev
切込み量:1.5mm
切削液:あり。
Figure 2017019095
表10より明らかなように実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、耐欠損性に優れており、工具寿命が長期化していることは明らかである。すなわち、実施例の表面被覆切削工具の被膜の機械特性が向上していることが確認できた。
<α−Al23層の表面粗さRaの効果確認>
実施例1、実施例2、および実施例11の表面被覆切削工具に対して、α−Al23層の表面粗さRaをJIS B 0601(2001)に従って測定した。その結果を表11に示す。
次いで、上記の各表面被覆切削工具のα−Al23層に対して以下の条件のエアロラップ処理を行なうことによって、それぞれ実施例1A、実施例2A、および実施例11Aの表面被覆切削工具を作製した。そして、これらの各表面被覆切削工具に対して、α−Al23層の表面粗さRaを上記と同様にして測定した。その結果を表11に示す。
<エアロラップ処理の条件>
メディア:平均粒径0.1μmのダイヤモンド砥粒を含んだ直径1mm程度の弾性ゴムメディア(商品名:「マルチコーン」、ヤマシタワークス社製)
投射圧力:0.5bar
投射時間:30秒
湿式/乾式:乾式。
そして、これらの実施例1、1A、2、2A、11、および11Aの表面被覆切削工具について、以下の切削条件により逃げ面摩耗量(Vb)が0.20mmとなるまでの切削時間を測定した。その結果を表11に示す。切削時間が長いもの程、切りくずと工具刃先との間の摩擦係数が低減し、安定した切りくず排出性を発揮できることを示す。
<切削条件>
被削材:SS400丸棒外周切削
周速:100m/min
送り速度:0.1mm/rev
切込み量:1.0mm
切削液:なし。
Figure 2017019095
表11より明らかなように、0.2μm未満の表面粗さRaを有するα−Al23層を備えた実施例1A、2A、11Aの表面被覆切削工具は、0.2μm以上の表面粗さRaを有するα−Al23層を備えた実施例1、2、11の表面被覆切削工具に比し、切りくずと工具刃先との間の摩擦係数が低減し、安定した切りくず排出性を発揮できることが確認できた。
<α−Al23層の圧縮応力付与の効果確認>
実施例1、実施例2、および実施例11の表面被覆切削工具に対して、α−Al23層において被膜の表面側から2μm以内の領域に応力の絶対値が最大となる地点があることを確認し、その地点における応力の絶対値を測定した。その結果を表12(「応力値」の項)に示す。なお、応力の測定はX線を用いたsin2ψ法により実行し、表12の「応力値」の項において、数値は絶対値を示し、引張応力は「引張」、圧縮応力は「圧縮」と表記した。
次いで、上記の各表面被覆切削工具のα−Al23層に対して以下の条件の湿式ブラスト処理を行なうことによって、それぞれ実施例1B、実施例1C、実施例2B、実施例2C、および実施例11Bの表面被覆切削工具を作製した。そして、これらの各表面被覆切削工具に対して、上記と同様にしてα−Al23層において被膜の表面側から2μm以内の領域に応力の絶対値が最大となる地点があることを確認し、その地点における応力の絶対値を測定した。その結果を表12(「応力値」の項)に示す。なお、実施例1Bと実施例1C、および実施例2Bと実施例2Cの応力の差異は、湿式ブラスト処理の投射圧力の差異によるものである。
<湿式ブラスト処理の条件>
メディア:アルミナメディア(φ50μm)
投射圧力:1〜2bar
投射時間:10秒
湿式/乾式:湿式。
そして、これらの実施例1、1B、1C、2、2B、2C、11、および11Bの表面被覆切削工具について、以下の切削条件により工具が欠損するまでの切削時間を測定した。その結果を表12に示す。切削時間が長いもの程、断続切削加工時に発生する機械的、熱的疲労による工具刃先の欠損が抑制され、その結果として刃先の信頼性が向上したものとなっていることを示す。
<切削条件>
被削材:SUS304(60°×3溝外周切削)
周速:150m/min
送り速度:0.25mm/rev
切込み量:1.0mm
切削液:なし。
Figure 2017019095
表12より明らかなように、α−Al23層において被膜の表面側から2μm以内の領域に応力の絶対値が最大となる地点を含み、その地点における応力が引張応力であるよりも、その絶対値が1GPa未満の圧縮応力である方が断続切削加工時に発生する機械的、熱的疲労による工具刃先の欠損が抑制され、その結果として刃先の信頼性が向上したものとなっていることが確認できた。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (6)

  1. 基材と、該基材上に形成された被膜とを備えた表面被覆切削工具であって、
    前記被膜は、α−Al23層を含み、
    前記α−Al23層は、複数のα−Al23の結晶粒を含み、かつ(001)配向を示し、
    前記結晶粒の粒界は、CSL粒界と一般粒界とを含み、
    前記CSL粒界のうちΣ3型結晶粒界の長さは、Σ3−29型結晶粒界の長さの80%超であり、かつ前記Σ3−29型結晶粒界の長さと前記一般粒界の長さとの和である全粒界の合計長さの10%以上50%以下である、表面被覆切削工具。
  2. 前記CSL粒界は、前記Σ3型結晶粒界、Σ7型結晶粒界、Σ11型結晶粒界、Σ17型結晶粒界、Σ19型結晶粒界、Σ21型結晶粒界、Σ23型結晶粒界、およびΣ29型結晶粒界からなり、
    前記Σ3−29型結晶粒界の長さは、前記CSL粒界を構成するΣ3型結晶粒界、Σ7型結晶粒界、Σ11型結晶粒界、Σ17型結晶粒界、Σ19型結晶粒界、Σ21型結晶粒界、Σ23型結晶粒界、およびΣ29型結晶粒界のそれぞれの長さの総計である、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記α−Al23層は、2〜20μmの厚みを有する、請求項1または請求項2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記α−Al23層は、表面粗さRaが0.2μm未満である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記α−Al23層は、前記被膜の表面側から2μm以内の領域に圧縮応力の絶対値が最大となる地点を含み、前記地点における圧縮応力の絶対値は1GPa未満である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記被膜は、前記基材と前記α−Al23層との間にTiCxy層を含み、
    前記TiCxy層は、0.6≦x/(x+y)≦0.8という関係の原子比を満たすTiCxyを含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
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